症状コントロールが出来たころより, 自 の闘病生活や ホスピスのことを伝えたいと希望し, ホスピス関係の機 関誌に闘病記を掲載. 家族との温泉旅行の目標を達成後 スピリチュアルペインの表出があった. これまでの S氏 の生き方や会話時の表情の変化から「生きる希望」に繫 がるのではないかと え, レシピ集を作成. 最初は看護 師がリードしていたレシピ集作成であったが, 患者が リードしていくレシピ集作成へと変化して行った. そし て,S氏自身の力でレシピ集は完成した.レシピ集を手に した S氏は「子供達に残すものができた. これで私が死 んだ後も生き続けることができる」と話し, S氏が亡く なった後, 夫は「妻は生き抜くことが出きた」と語った. 【 察】 S氏にとって料理は好きなことの一つであ り, 20年間会社勤めをしながら家族のために料理を作っ てきたことは誇りに思うことであった. そのような背景 からレシピ集作成は S氏のライフレビューをするきっ かけとなり, スピリチュアリティを覚醒させ, 一人の人 間としての存在価値を取り戻したのではないかと え る. 【おわりに】 この事例から, 患者に寄り添い, 患者 と向き合い, 傾聴し, その人らしさを引き出していくケ アのプロセスが重要であること. そして, 最後まで見守 り支え続けることの大切さ, 患者のスピリチュアルケア は家族のケアにも繫がることを学んだ. 15.自宅と病院が遠距離であっても,終末期の在宅療養 を可能にした連携 ―訪問看護の立場からの検討― 亘 智絵,鳥海 尚美,大沢 広美 荒井 千夏 (訪問看護ステーションたてばやし) 在宅への移行の際, 往診医への引継ぎまたは紹介がな い状態で退院というケースは珍しくない. 患者家族は 「信頼関係ができている病院主治医から離れたくない, 見捨てられる」という思いが強く, また症状悪化時の処 置, 例えば穿刺排液など開業医では物理的に難しい場合 もあるためである. しかし病院主治医は通常往診しない ため, 症状悪化や緊急時の対応への不安が大きい. 病院 と訪問看護 ST との連携により, 入退院を繰り返しなが ら, 病院と自宅が遠距離であるにもかかわらずサポート 感を持ち終末期を過ごす事ができた事例を経験したので 報告する. 【事 例】 A 氏 60歳代女性,子宮体癌,肺転 移, 右胸水貯留. 病院で胸水穿刺などの治療後, 2週間毎 の受診で胸水の確認や穿刺で症状コントロールしながら 在宅に移行. 病院は自宅から車で 1時間以上の距離があ り, 状態観察のため, 訪問看護開始となった. A 氏は「福 祉の世話になるなんて」と,初めは拒否的であった. 【連 携の実際および 察】 退院前に訪問看護 ST と病院側 スタッフが顔をあわせて, 問題点・疑問点を明確にし検 討したことで, 症状アセスメント, マネジメントができ, 受診のタイミングを判断することができた. すでに信頼 関係が築けていた病院側が, 訪問看護師を信頼すべき存 在と言ってくれたことで, 当初困難と思われた受け入れ がスムーズになり, モルヒネに対する抵抗感も徐々に払 拭された. また訪問看護師が A 氏の家に何回も足を運 び, 傾聴し, 症状悪化時にも丁寧に対応したことで信頼 関係が築けた. 感冒や胃腸炎時の対応では, 地域の診療 所医師と連携し, 患者家族も「何かあったらすぐ来ても らえる」という安心感をもつことができた. 入院中およ び在宅での様子は PCT 看護師・訪問看護師の間で情報 換し, ケアの方向性などについて電話やメールで話し 合うことができた. 退院時のみではなく退院後の症状 コントロールも視野に入れて, 訪問看護師が病態を理解 し症状に対応する 用薬の準備や対処法を確認しておい たこと, 退院後も病院と訪問看護 ST との連携を取りな がら, アセスメントと評価を繰り返しケアを継続したこ とで, 病院と自宅が遠距離であっても終末期における在 宅生活の継続が可能となったと思われる. 最後は病院で 亡くなったが, 在宅では安心して過ごし, 家族旅行を楽 しむなど, QOL の高い生活を送ることができた. 16.在宅移行後に QOLが向上した一症例 ―医療を暮 らしにあわせる― 見 忍,津久井利恵,福田 元子 萬田 緑平,小笠原一夫 (緩和ケア診療所・いっぽ) 【はじめに】 私は, 癌の患者さんが自宅に帰る=短い予 後イメージをし て い た. し か し A さ ん は, CV以 外 の ルートを結果として外す事が出来, 私達の予想を遙かに 上回る長い期間において, 症状のコントロールを可能と した. 病院訪問時の A さんは, ベットに横たわり, O2, CV, 塩モヒの持続注入, イレウスチューブを 用中で あった. 家に帰りたいです 帰りたい.」涙を溜ながら訴 えた A さんの目は真っすぐで, そこに強い意志を感じ た.そして「家に帰るお手伝いをさせてください」と握手 をした. そこから始まった A さんの暮らしを中心とした ケアを紹介する. 【患者紹介】 40代 女性 娘と息子 夫 婦 孫 と 同 居. 2008年 1月 膵 頭 部 癌 と 診 断 2月 胃空腸バイパス術施行, 術後腸閉塞症状あり CV管理. 癌性疼痛に対して放射線療法, 温熱療法施行 5月 腹 痛,嘔吐増強,癌性腹膜炎・腸閉塞に対してイレウス管挿 入,疼痛コントロール開始.在宅の希望あり,5月 17日退 院. 緩和ケア診療所いっぽでの在宅ケア開始. 【問題点 と経過】 ①嘔気・嘔吐に伴う苦痛 チューブの違和感, 拘束感による苦痛あり. 入院時, 排液は 2000ml前後で あったが, 退院直後 700ml前後に減少した時点で, 5/21 185
15. 自宅と病院が遠距離であっても,終末期の在宅療養を可能にした連携―訪問看護の立場からの検討―(第18回群馬緩和医療研究会)
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