道徳の時間における人権教育の実践方法についての研究:―人権教育と道徳教育の意義を踏まえた授業の提案―
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(2) 必要があると考えた。本研究は人権教育を道徳教育に絡め. 5.今後の課題. て実践していくことの可能性を示すとともに,その具体案. ①研究に関して. を提案することに主幹を置いた。. まず,人権と道徳のつながりをより深い次元で追求しな ければならない。そのためには,西欧生まれの概念である. (2)研究の対象と方法. 人権と,日本固有の道徳の違いを歴史的な視点から捉えな. 文部科学省が作成している「人権教育の指導法等の在り. おす必要があろう。相違を漠然とした状態でなく,明瞭に. 方について[第三次とりまとめユ」をもとに,道徳の時間に. することで,重要な共通点も見えてくるはずである。それ. おける人権教育に関わる指導のための実践方法の検討を. ができれば,研究が一層堅実なものとなるであろう。. 打つだ。. また,実践の量的問題も挙げられる。第3章で述べた内. まず、研究の土台として、道徳教育と人権教育について. 容が反映された実践が多くできれば,その後の分析によっ. 根本的な意義から知るために、道徳、人権そのものの知識. て,また新たな成果や課題が見つかるだろう。それを踏ま. を身につけた。その上で、課題を検討し、双方を関わらせ. えて分析を重ねることで,研究はより堅牢なものになって. ることを提案した。その具体的な方法を示し、実践案を作. いくと考えられる。. 成したのち、連携協力校において授業実践を行った。そし. さらに,他の実践との比較も行う必要がある。人権教育. てその授業を、道徳、人権それぞれの意義を視点として、. の主な実践事例との比較によって,自己の実践の長短が導. 評価、分析を行い、再度実践の価値について検討を加えて. き出せるであろう。そうすれば,より評価に客観性を持た. いった。. せることができるのではないか。 ②実践に関して. 4.研究の成果. まず,指導案レベルでの課題を挙げる。授業をする上で. 第1章と第2章において,道徳と人権の概要をまとめ,. 最も重要な指標となるものが指導案である。そのため,研. 道徳教育と人権教育の意義や課題について触れた。それら. 究の内容を反映させた指導案を書くことは必須であろう。. をまとめた上で,第3章にて双方の課題を解決する方法と. 自己の実践を見ると.さらに精緻化を図るためにその点に. して,道徳の時間と人権教育を関連させることを提案した。. 関して改善の余地も見受けられるため,今後の課題として. 人権教育を道徳の時間に行う方法自体は文部科学省も既. 指導案における研究内容の反映のさせ方が求められよう。. に示してあったが,それをさらに詳しく検討し,工夫を施. 次に,授業の内容についてである。この研究で示された. した。そして,第4章において実践事例を紹介した。そも. 授業の形は,かなりフレキシブルなものとなっている。例. そもこの研究の目的は,人権教育を道徳の時間に導入する. えば,道徳的価値を見直すことで,解釈が拡大されること. ことで相互に補完させることにあった。そのために,以上. も予想されうるし,人権教育で身につけたい資質が多様か. の手順を踏むことで,次のような成果を得ることができた。. つ固定されていないため,それを扱う授業自体が多様な在. この研究によって,道徳,人権双方の意義について再確. り方を示すことになろう。柔軟であることは,強みである. 認することができたと同時に,それらの相違点と,類似点. 反面,脆さも含んでいる。ひとつ方向を間違えれば,その. について改めて考える機会を持つことができた。また,今. 意義を見失うことにつながるからである。だからこそ、堅. まで曖昧であった人権教育についてその重要性を示すと. 実であることが同時に求められるのである。この堅実さを. 同時に,その在り方の多様な具体を示すことができたと思. 生み出すものは,授業の目標であると考える。その授業で,. われる。その中で,今後の人権教育に対する見識を広める. 何を取り扱うのかを,道徳,人権双方の意義に沿って明確. こともできた。. にしておくことが何より欠かせないであろう。今後,研究. また道徳の時間に関しても,その足りない部分を補い活. を進めていく上でこの点を押さえておけば,より有意義な. 性化する可能性を示せたのではないだろうか。ここから,. ものとなると考える。. 道徳の時間を有用なものにしていく方法を探っていくこ 指導教員 前芝武史. とができるだろう。. ■135一.
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