児童期・青年期における仲間関係の排他性に関する
研究 −対人受容性と仲間集団の閉鎖性に着目して
−
著者
松本 恵美
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
11301甲第18243号
URL
http://hdl.handle.net/10097/00124256
博 士 論 文
児 童 期 ・ 青 年 期 に お け る
仲 間 関 係 の 排 他 性 に 関 す る 研 究
- 対 人 受 容 性 と 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 に 着 目 し て -
i 本 論 文 の 要 旨 一 般 に , 明 確 な 仲 間 集 団 を 形 成 す る 児 童 期 中 期 以 降 , 自 集 団 の 基 準 に 合 わ な い 他 者 に 対 す る 排 他 性 が 増 加 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 ま る こ と に よ り , い じ め や 仲 間 外 れ と い っ た 問 題 が 起 こ り , 児 童 ・ 生 徒 の 社 会 性 の 発 達 や 対 人 関 係 の 発 達 が 阻 害 さ れ る と 考 え ら れ る 。 そ の た め , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 を 明 ら か に し , 仲 間 関 係 を 良 好 に 保 っ て い く 方 法 を 検 討 す る こ と は 重 要 な 課 題 で あ る と 言 え る 。 そ の よ う な 観 点 か ら , 本 研 究 は , 児 童 ・ 生 徒 の 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 諸 要 因 を 明 ら か に す る こ と を 第 1 の 目 的 と し た 。 ま た , 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 個 人 内 要 因 で あ る 対 人 受 容 性 に 着 目 し , 対 人 受 容 性 の 形 成 に 影 響 を 与 え る 要 因 を 明 ら か に す る こ と を 第 2 の 目 的 と し た 。 本 論 文 は 3 部 か ら 構 成 さ れ る 。 第 Ⅰ 部 で は , 仲 間 関 係 の 機 能 , 仲 間 集 団 の 発 達 , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 関 す る 先 行 研 究 を 概 観 し た 。 そ の 上 で , 従 来 , 仲 間 集 団 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 と し て , 個 人 間 要 因 と 個 人 内 要 因 の 両 方 の 要 因 を 取 り 上 げ た 研 究 が 少 な い こ と を 指 摘 し た 。 ま た , 個 人 内 要 因 に つ い て は 仲 間 集 団 の 評 価 と 関 連 し て い る 要 因 の み が 着 目 さ れ て き た こ と を 問 題 点 と し て 指 摘 し た 。 そ こ で , 本 研 究 で は , 個 人 間 要 因 で あ る 「 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 」 と 個 人 内 要 因 で あ る 「 対 人 受 容 性 」 を 同 時 に 取 り 上 げ る こ と に し た 。 ま た , 対 人 受 容 性 に 関 す る 先 行 研 究 が 少 な い こ と を 指 摘 し ,対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 と し て ,「 他 者 と の 関 わ り 経 験 」,「 興 味・関 心 の 広 さ 」,「 知 識 の 広 さ 」を 取 り 上 げ , こ れ ら の 要 因 間 の 関 係 を 含 め た モ デ ル を 提 案 し , 検 証 す る こ と に し た 。 第 Ⅱ 部 は 5 つ の 研 究 を 通 し て 児 童 ・ 生 徒 の 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 お よ び 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て 検 討 し た 。
ii 研 究 1 で は , 小 学 4, 6 年 生 を 対 象 に 対 人 受 容 性 お よ び 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 を 測 定 す る 尺 度 を 作 成 し た 。そ の 結 果 ,対 人 受 容 性 尺 度 は , 児 童 の 対 人 受 容 性 を 測 定 す る 尺 度 と し て 適 切 で あ る が , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 尺 度 は 修 正 す る 必 要 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 研 究 2 で は , 研 究 1 の 対 人 受 容 性 尺 度 を さ ら に 改 善 し た 上 で , 小 学 5 年 生 と 中 学 2 年 生 を 対 象 に 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 , 他 者 と の 関 わ り 経 験 と 興 味 ・ 関 心 の 広 さ が 影 響 を 及 ぼ し て い る こ と が 示 さ れ た 。 知 識 の 広 さ の 影 響 に つ い て は 有 意 傾 向 の み が 示 さ れ た 。 そ の 原 因 と し て , 特 定 の 領 域 に 関 す る 専 門 的 な 知 識 が 十 分 に 考 慮 さ れ て い な か っ た こ と が 考 え ら れ た 。 研 究 3 で は , 特 定 の 領 域 に 関 す る 専 門 的 な 知 識 と そ の 領 域 に お け る 受 容 性 と の 対 応 関 係 を 明 確 に し た 上 で , 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て 再 検 討 し た 。 そ の 結 果 , 研 究 2 と 同 様 の 結 果 が 示 さ れ , 対 人 受 容 性 に は 他 者 と の 関 わ り 経 験 お よ び 興 味 ・ 関 心 の 広 さ が 影 響 を 与 え て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 知 識 の 広 さ に つ い て は , 項 目 を 改 善 し て も 対 人 受 容 性 と の 関 連 は 示 さ れ な か っ た た め , 知 識 の 広 さ が 対 人 受 容 性 に 与 え る 影 響 の 程 度 は 小 さ い こ と が 示 唆 さ れ た 。 研 究 4 で は , 研 究 1 の 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 尺 度 を 改 善 し た 上 で , 小 学 5 年 生 と 中 学 2 年 生 を 対 象 に 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 対 人 受 容 性 が 負 の 影 響 , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 が 正 の 影 響 を 与 え て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 し か し , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 尺 度 の い く つ か の 項 目 に お い て 修 正 の 必 要 性 が 示 唆 さ れ た 。 研 究 5 で は , 研 究 4 の 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 尺 度 を 改 善 し た 上 で , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て 再 検 討 し た 。 ま た , 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て は , 要 因 と し て 「 自 尊 感 情 」 を 追 加 し て 再 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 , 研 究 4 と 同 様 の 結 果 が 示 さ れ , 対 人 受 容 性 と 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 が 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 重 要 な 影 響 を 与 え て い る こ と が 改 め て 確 認 さ れ た 。 し か し , 自 尊 感 情 に つ い て は , 対 人 受 容 性 へ の 正 の 影 響 が 示 さ れ た も の の , そ の 影 響 は 小 さ
iii い こ と が 示 唆 さ れ た 。 第 Ⅲ 部 で は , 研 究 1 か ら 研 究 5 の 結 果 を 踏 ま え て , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る 諸 要 因 の 関 連 を モ デ ル と し て 提 示 し た 。 す な わ ち , 個 人 間 要 因 で あ る 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 と 個 人 内 要 因 で あ る 対 人 受 容 性 の 両 要 因 が 仲 間 集 団 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え , さ ら に 他 者 と の 関 わ り 経 験 と 興 味 ・ 関 心 の 広 さ が 対 人 受 容 性 に 影 響 を 与 え る と い う モ デ ル で あ る 。 な お , こ の モ デ ル は 頑 健 性 が 高 く , さ ら に は 児 童 期 に も 青 年 前 期 に も 適 用 可 能 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 を 踏 ま え , 児 童 期 ・ 青 年 期 の 仲 間 関 係 の 排 他 性 へ の 介 入 と し て 対 人 受 容 性 を 高 め る と い う 個 人 へ の 介 入 と 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 を 低 め る と い う 個 人 を 取 り 巻 く 環 境 へ の 介 入 の 両 方 が 必 要 で あ る こ と が 提 案 さ れ た 。 最 後 に , 今 後 の 発 展 と し て , モ デ ル の さ ら な る 精 緻 化 , 介 入 方 法 や 介 入 効 果 の 検 討 , お よ び 幅 広 い 年 齢 を 対 象 に し た 発 達 的 変 化 の 検 討 が 望 ま れ る こ と を 指 摘 し た 。
iv
目 次
第 Ⅰ 部 問 題 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 第 1 章 仲 間 集 団 の 発 達 第 1 節 仲 間 集 団 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 第 2 節 仲 間 集 団 の 機 能 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 第 3 節 就 学 前 の 仲 間 集 団 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 10 第 4 節 児 童 期 の 仲 間 集 団 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11 第 5 節 青 年 期 の 仲 間 集 団 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 第 2 章 仲 間 関 係 の 排 他 性 に つ い て 第 1 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 16 第 2 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 環 境 要 因 ・ ・ ・ 18 第 3 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 個 人 内 要 因・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・21 第 4 節 対 人 受 容 性 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 23 第 5 章 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 26 第 3 章 本 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 29v 第 Ⅱ 部 児 童 期 ・ 青 年 期 に お け る 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 関 連 要 因 の 検 討 第 4 章 対 人 受 容 性 に 関 す る 予 備 的 研 究 (研 究 1) 1. 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 34 2. 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 35 3. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39 4. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 44 第 5 章 児 童 期・青 年 期 の 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 の 検 討 (研 究 2) 1. 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 46 2. 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 50 3. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 54 4. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 63 第 6 章 児 童 期 ・ 青 年 期 の 対 人 受 容 性 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 の 再 検 討 : 知 識 に 着 目 し て(研 究 3) 1. 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 65 2. 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 67 3. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 71 4. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 83 第 7 章 仲 間 関 係 の 排 他 性 , 対 人 受 容 性 , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 の 関 係 に 関 す る 検 討(研 究 4) 1. 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 87 2. 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 91 3. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 95 4. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 104
vi 第 8 章 仲 間 関 係 の 排 他 性 , 対 人 受 容 性 , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 の 関 係 性 の 再 検 討(研 究 5) 1. 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 108 2. 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 110 3. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 114 4. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 123 第 Ⅲ 部 討 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・125 第 9 章 本 研 究 の ま と め 第 1 節 得 ら れ た 知 見 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 126 第 2 節 仮 説 の 検 証 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 131 第 3 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 , 対 人 受 容 性 , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 の 関 係 性 モ デ ル の 意 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・135 第 4 節 本 研 究 の 発 達 心 理 学 的 意 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・138 第 5 節 本 研 究 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・142 論 文 目 録 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・145 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・147 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・148 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・157
1
第 Ⅰ 部
2 は じ め に 現 在 の 教 育 現 場 は , い じ め や 不 登 校 な ど , 様 々 な 問 題 を 抱 え て い る 。 こ れ ら の 問 題 の 背 景 の 一 つ と し て , 対 人 関 係 , 特 に 仲 間 関 係 に お け る ト ラ ブ ル が 考 え ら れ る 。 児 童 ・ 生 徒 た ち に と っ て , 一 日 の 大 半 を 共 に 過 ご す 仲 間 や 学 級 集 団 と の 関 係 は , 快 適 な 学 校 生 活 を 送 る 上 で 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。 よ っ て , 仲 間 や 級 友 と の 間 に お け る ト ラ ブ ル を う ま く 対 処 で き ず , 良 好 な 仲 間 関 係 を 保 つ こ と が で き な く な る と , そ れ が 原 因 で 仲 間 外 れ や い じ め に 繋 が っ た り , 精 神 的 に 不 安 定 に な り 不 登 校 に 繋 が っ た り す る と 考 え ら れ る 。 文 部 科 学 省 が 行 っ た , 平 成 28 年 度 「 児 童 生 徒 の 問 題 行 動 ・ 不 登 校 等 生 徒 指 導 上 の 諸 課 題 に 関 す る 調 査 」 に よ る と , 小 ・ 中 ・ 高 ・ 特 別 支 援 学 校 に お け る い じ め の 認 知 件 数 は 約 32 万 3 千 件 で あ り , い じ め を 認 知 し た 学 校 数 は 約 2 万 5 千 件 (全 学 校 数 の 68.3% )に も 上 る 。 ま た , 小 ・ 中 学 校 に お け る , 不 登 校 児 童 生 徒 数 は , 約 13 万 3 千 人 , 高 等 学 校 に お け る 不 登 校 生 徒 数 は 約 4 万 8 千 人 で あ り ,事 態 が 深 刻 で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。 い じ め や 不 登 校 な ど の 問 題 が 急 増 す る の は , 小 学 校 高 学 年 か ら 中 学 校 に か け て の 期 間 で あ る と さ れ て お り(黒 川・吉 田 ,2009;有 倉 , 2011), と り わ け 小 ・ 中 学 生 の 仲 間 関 係 を 良 好 に 保 っ て い く こ と が 重 要 な 課 題 で あ る と 言 え る 。 こ の 時 期 に 問 題 が 急 増 す る 背 景 の 一 つ と し て , 仲 間 関 係 の 変 容 が 挙 げ ら れ る 。 児 童 期 後 期 か ら 児 童 は , 少 人 数 で 構 成 さ れ る 固 定 化 さ れ た 仲 間 集 団 を 形 成 す る よ う に な る と 言 わ れ て お り , 仲 間 集 団 を 形 成 す る と 少 人 数 の 仲 間 と 強 く 結 び つ き , 特 定 の 仲 間 に 対 す る 親 密 性 が 高 ま る よ う に な る 。 一 方 で , 自 集 団 以 外 の 他 者 や 他 集 団 を 寄 せ 付 け な い 強 固 な 排 他 性 を も つ よ う に な る (三 島 , 2007; 石 田 ・ 小 島 , 2009)。 そ し て , 高 い 排 他 性 を 持 つ よ う に な る と , 同 じ 集 団 に 所 属 し て い な い 他 者 と の 関 わ り が 減 少 し , 自 集 団 の 基 準 に 合 わ な い 他 者 や , 少 し で も 異 質 な 部 分 が 感 じ ら れ る 他 者 に 対 し て ネ ガ テ ィ ブ な 態 度 を と る よ う に な る と さ れ て い る 。 こ の
3 よ う に , 児 童 期 ・ 青 年 期 に お け る 排 他 性 の 高 さ は , 教 育 現 場 に お け る 様 々 な 問 題 と 関 わ っ て い る 。 そ の た め , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が ど の よ う な 要 因 に よ っ て 影 響 を 受 け て い る か に つ い て 明 ら か に す る こ と は , 教 育 現 場 に お け る い じ め や 不 登 校 と い っ た 問 題 を 解 決 し , 子 ど も た ち を 支 援 し て い く 上 で , 有 意 義 で あ る と 言 え る 。
4 第 1 章 仲 間 集 団 の 発 達 一 般 に 良 好 な 仲 間 関 係(peer relation )を も つ こ と は , 社 会 性 や 社 会 的 ス キ ル を 獲 得 し て い く 上 で 重 要 で あ る と 言 わ れ て い る 。 特 に 子 ど も が 成 長 し 社 会 的 接 触 が 家 族 か ら 仲 間 世 界 へ と 広 が っ て い く 児 童 期 ・ 青 年 期 で は , 家 族 集 団 に 代 わ っ て 仲 間 集 団 が 準 拠 集 団 と な り , 社 会 化 エ ー ジ ェ ン ト と し て 重 要 な 役 割 を 果 た す よ う に な る 。 ま た , 児 童 期 か ら 青 年 期 に か け て は , 親 か ら の 心 理 的 離 乳 に よ る 離 脱 と 自 己 の 社 会 意 識 の 拡 大 に よ り , 家 族 集 団 や 学 校 集 団 か ら 解 放 さ れ た 場 面 で の 自 由 な 活 動 を 欲 し , 精 神 的 依 存 の 対 象 が 親 か ら 仲 間 に 移 行 し て い く 時 期 で あ る 。 そ の た め , 学 校 場 面 で の 仲 間 関 係 は , 社 会 化 経 験 の 基 礎 と な る と と も に , 自 己 の 確 立 に と っ て も 大 き な 影 響 力 を 持 ち , 情 緒 的 満 足 や 心 理 的 充 足 を 得 る 上 で も 重 要 な 役 割 を 果 た す(國 枝 ・ 古 橋 ,2006; 松 永 , 2011)。 し か し 一 方 で , 教 育 現 場 に お け る い じ め や 不 登 校 と い っ た 問 題 の 背 景 に , 子 ど も た ち の 仲 間 関 係 に お け る 問 題 が あ る と さ れ , 仲 間 関 係 に 関 す る 研 究 や 仲 間 関 係 に つ ま ず い た 子 ど も に 関 す る 研 究 が な さ れ て き た 。 第 1 章 で は ま ず , 仲 間 集 団 と は 何 か を 説 明 し た 上 で , 仲 間 集 団 が 果 た す 機 能 に つ い て 述 べ て い く 。 第 1 節 仲 間 集 団 と は
Bossard & Boll (1971)は 仲 間 (peer )と い う の は 消 極 的 に 考 え る と 大 人 で な い 人 , 親 で な い 人 , 先 生 で な い 人 の こ と で あ り , 積 極 的 に 考 え る と 相 対 的 に 同 じ 年 齢 の , ま た 同 性 の 少 な く と も 年 長 者 に 関 す る か ぎ り で は 対 等 の 地 位 で 交 際 す る こ と の で き る , 他 の 子 ど も の こ と で あ る と し て い る 。 加 え て , 対 等 な 立 場 で あ る こ と が 仲 間 に と っ て 重 要 な 条 件 で あ る と し , 仲 間 集 団 と は , 親 や 他 の 大 人 に 対 し て 持 つ よ う な 従 順 的 な 地 位 に い な い , 他 の 子 ど も と 形 成 す る 集 団 で あ る と し た 。 住 田(1995)は , 仲 間 を 「 相 互 に 共 通 な 関 心 に よ っ て 選 択 さ
5 れ , 共 通 の 集 団 行 動 を と る 同 世 代 の 他 人 の こ と 」 で あ る と し , そ う し た 仲 間 が 相 互 に 抱 い て い る 「 わ れ わ れ 意 識 」 を 仲 間 意 識 と い い , あ る 共 通 の 関 心 を 契 機 に , 仲 間 を 成 員 と し て 構 成 さ れ た 小 集 団 が 仲 間 集 団 で あ る と 述 べ て い る 。 ま た , 仲 間 と し て 選 択 す る 条 件 に は , 相 互 に 対 等 な 社 会 的 地 位 に い る こ と に 加 え て , 同 世 代 で あ る こ と の 2 つ が 重 要 で あ る と 指 摘 し て い る 。 こ れ は , 世 代 が 異 な っ た り , 社 会 的 地 位 が 異 な る 場 合 に は , 相 互 に 社 会 的 区 別 ま た は 社 会 的 距 離 を 意 識 す る た め ,「 わ れ わ れ 意 識 」を 抱 き に く く ,仲 間 と し て 選 択 さ れ る こ と が な い こ と か ら , 重 要 な 条 件 で あ る と 述 べ て い る 。 こ れ ら の 2 つ の 条 件 は 発 達 段 階 に よ っ て 重 要 度 が 異 な る と さ れ , 仲 間 選 択 の 条 件 は 発 達 と と も に 変 化 す る 。 児 童 期 で は , 社 会 的 区 分 が 意 識 さ れ る こ と は あ ま り な く , 同 世 代 で 共 通 の 関 心 を も っ て い る こ と が 仲 間 の 条 件 で あ る 。 青 年 期 に な る と , 同 世 代 で あ る こ と と 同 時 に , 同 等 の 社 会 的 地 位 と い う 条 件 が 仲 間 選 択 の 基 準 と な り , そ の 基 準 に よ っ て 選 択 さ れ た 仲 間 は 強 固 で あ り , か つ 固 定 的 で あ る 。 さ ら に 大 坊 ・ 奥 田(1996)で は , 仲 間 関 係 と は , 個 人 の 意 思 に よ っ て 選 び 築 か れ る 関 係 で あ る た め , お 互 い の 立 場 の 「 対 等 性 」 に 加 え て , 関 係 構 築 の 「 自 発 性 」,お 互 い が 影 響 し 合 う「 相 互 的 互 恵 性 」に 特 徴 づ け ら れ た 関 係 で あ る と し て い る 。 そ の 中 で も 仲 間 関 係 の 最 も 大 き な 特 徴 は お 互 い の 対 等 性 で あ る と し , 立 場 お よ び 発 達 段 階 や 欲 求 ・ 思 考 パ タ ー ン の 対 等 で あ る 仲 間 と の 相 互 関 係 の 中 で , 社 会 的―認 知 的 葛 藤 を 経 験 し , 本 気 の 争 い や 葛 藤 の 中 で , 社 会 性 や 社 会 的 能 力 を 発 達 さ せ て い く と 述 べ て い る 。 子 ど も に と っ て , 家 族 集 団 , 仲 間 集 団 , 学 校 集 団 の 3 つ の 集 団 が 特 に 重 要 な 意 味 を も つ と さ れ て い る が , 対 等 な 仲 間 と 交 流 す る 機 会 を 与 え る 仲 間 集 団 は , 特 に 児 童 期 ・ 青 年 期 に お い て 重 要 で あ る と さ れ ,発 達 し て い く 上 で 必 要 な 機 能 や 役 割 が あ る と さ れ て い る(Harris, 1995; Parker & Gottman, 1989; 住 田 , 1995)。 よ っ て 次 節 で は , 仲 間 集 団 の 機 能 や 役 割 に つ い て 整 理 し て い く 。
6 第 2 節 仲 間 集 団 の 機 能 仲 間 集 団 に は 様 々 な 機 能 が あ る と さ れ て お り , 仲 間 集 団 活 動 に 対 す る 欲 求 満 足 の 充 足 , 仲 間 集 団 に 所 属 す る こ と に よ っ て 得 る 情 緒 的 満 足 や 心 理 的 充 足 , 仲 間 集 団 的 活 動 を 通 じ て の 集 団 規 範 へ の 適 合 , 自 己 や 他 者 の 評 価 基 準 と し て の 仲 間 集 団 規 範 な ど が 挙 げ ら れ る (Sullivan, 1953 ; Bandura & Walters, 1963; 住 田 , 1995)。 こ れ ら の 機 能 の 中 で も 児 童 ・ 生 徒 に と っ て 重 要 で あ る と さ れ て い る の は , 社 会 化 す る 機 能 で あ り , 子 ど も た ち は 仲 間 集 団 の 成 員 と の 直 接 的 接 触 に よ る 相 互 作 用 を 通 し て , 社 会 の 価 値 や 規 範 態 度 を 習 得 し , 社 会 の 成 員 と し て 一 定 の 思 考 や 行 動 様 式 を 形 成 し て い く 。Sullivan(1953) は , 児 童 期 以 降 仲 間 関 係 が 子 ど も の 社 会 化 に 与 え る 影 響 の 重 要 性 を 強 調 し て い る 。Sullivan は , 児 童 期 以 降 , 子 ど も た ち は 同 年 配 の 子 と 接 触 し , そ の 子 ら と ぶ つ か り , 調 整 し あ う 中 で , 社 会 的 に ど の よ う な 差 異 な ら よ し と さ れ , ど の よ う な 差 異 な ら よ し と さ れ な い の か と い っ た 内 容 を 把 握 す る 能 力 を 向 上 さ せ る と 述 べ た 。 ま た , 児 童 期 は 小 児 期 に 家 庭 で 培 わ れ た 文 化 的 な 歪 み や 価 値 の 偏 り な ど を 修 正 す る 最 初 の 発 達 段 階 で あ る と し , 家 庭 を 離 れ , 仲 間 関 係 の 中 で 他 の 児 童 は 権 威 的 人 物 か ら ど う み ら れ て い る か , お 互 い に ど う み て い る か を 眼 の あ た り に す る こ と で , 児 童 は 文 化 的 価 値 を 修 正 し , そ の 後 の 対 人 関 係 で 重 要 に な る 社 会 ス キ ル を 学 ん で い く と し て い る 。
Bandura & Walters(1963)に お い て も 仲 間 が 社 会 化 に 与 え る 影 響 に つ い て 指 摘 さ れ て お り , 子 ど も た ち は 仲 間 か ら の 直 接 的 な 助 言 や , 仲 間 の 行 動 の 間 接 的 な 観 察 か ら 社 会 に つ い て 学 び , 社 会 に お け る 適 切 な 行 動 を 学 ぶ と し て い る 。 こ の 社 会 学 習 理 論 を 基 本 と し た 視 点 で は , 仲 間 は , 互 い の 行 動 を コ ン ト ロ ー ル し 互 い の 行 動 に 変 化 を 与 え る エ ー ジ ェ ン ト で あ る と 見 な さ れ て い る 。 よ っ て , 子 ど も た ち は 社 会 的 に ふ さ わ し く な い 行 動 に 対 し て 無 視 を す る か , も し く は 罰 を 与 え る よ う に な り , 文 化 的 に 適 切 で あ る と 見 ら れ る 行 動 に 対 し て は 肯 定 的 に 反 応 す る よ う に な る と さ れ て い る 。 さ ら に ,Be st(1983)は ,
7 性 別 に よ る 仲 間 関 係 の 違 い に 着 目 し , 性 に 関 す る 社 会 化 の 側 面 か ら 仲 間 関 係 の 役 割 に つ い て 述 べ て い る 。 仲 間 関 係 は 性 別 に よ っ て 異 な る 文 化 を も つ こ と は 多 く の 研 究 で 指 摘 さ れ て き て お り , 男 子 は 競 争 的 な 活 動 を 中 心 的 に 行 い , 人 数 の 多 い 仲 間 集 団 を 形 成 し , 女 子 は や り 取 り の あ る 活 動 を 中 心 的 に 行 い , 男 子 よ り 親 密 な 少 数 の 仲 間 集 団 を 形 成 す る と さ れ て い る(Crick & Ladd, 1990; 落 合 ・ 佐 藤 , 1996; Kupersmidt & Dodge, 2013)。 Best(1983)は , こ の よ う な 別 々 の 性 文 化 で 育 つ こ と に よ っ て 子 ど も た ち は イ ン フ ォ ー マ ル な 仲 間 規 範 を 習 得 し , 男 子 や 女 子 は ど の よ う に 行 動 す べ き な の か , 性 別 に 沿 っ た 態 度 や 行 動 を ど の よ う に 発 達 さ せ て い く の か と い っ た 性 役 割 や 価 値 に つ い て 知 る よ う に な る と 述 べ て い る 。 そ し て , 男 子 も 女 子 も 全 く 異 な る ス テ レ オ タ イ プ 的 な 見 方 で 互 い を 見 る よ う に な り , そ う し た ス テ レ オ タ イ プ を 作 り 出 す 方 法 を 知 る よ う に な る と 指 摘 し て い る 。 こ の こ と か ら , 集 団 成 員 と の 直 接 的 接 触 の 中 で , 児 童 ・ 生 徒 は そ の 集 団 特 有 の 価 値 や 規 範 な ど を 内 面 化 し て い く こ と が わ か る 。 こ の よ う に 仲 間 集 団 は 子 ど も が 社 会 化 し て い く 上 で な く て は な ら な い 存 在 だ が , 社 会 化 の み で な く 社 会 的 ス キ ル を 獲 得 し て い く 上 で も 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。Parker & Gottman(1989)は ,社 会 的 価 値 や 規 範 の み で な く , 仲 間 と の 相 互 作 用 を 通 じ て 発 達 す る 社 会 的 ス キ ル の 重 要 性 を 指 摘 し て い る 。Parker & Gottman(1989)は ,仲 間 集 団 の 機 能 が 発 達 段 階 で 異 な る こ と を 指 摘 し , 仲 間 集 団 の 機 能 を 幼 児 期 か ら 青 年 期 に か け て の 発 達 段 階 ご と に 区 別 し て 述 べ て い る 。 発 達 段 階 ご と に 分 け て み る と , ま ず 幼 児 期 に お け る 仲 間 関 係 は , 遊 び に お け る 興 奮 と 楽 し み を 増 幅 し , 興 奮 し た 状 態 に お け る 行 動 の 調 整 を 助 け る 役 目 を 担 う 。 次 の 児 童 期 で は , 行 動 規 範 に 関 す る 知 識 の 獲 得 お よ び 適 切 な 自 己 主 張 の ス キ ル の 獲 得 を 助 け , 青 年 期 で は , 自 分 自 身 を 見 つ め な お す 手 助 け を し , 感 情 や 考 え を 統 合 す る の を 助 け る 役 割 を 担 っ て い る 。 こ の こ と か ら , 児 童 ・ 生 徒 は 仲 間 と の 関 わ り を 通 し て , 社 会 性 だ け で な く 対 人 関 係 に お い て 必 要 な 社 会 的 ス キ ル も 学 ん で い る こ と が わ か る 。 さ ら に Harris(1995)で は ,仲 間 集 団 の 役
8 割 と し て 社 会 化 や 社 会 的 ス キ ル の 獲 得 へ の 影 響 だ け で な く , 人 格 発 達 に 及 ぼ す 影 響 も 強 調 さ れ て い る 。Harris(1995)は , 仲 間 集 団 は 家 族 集 団 以 上 に 子 ど も の 社 会 化 お よ び 人 格 発 達 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る と 主 張 し , そ の 理 由 と し て , 仲 間 集 団 が 集 団 規 範 の 重 要 性 や 内 集 団 び い き , 外 集 団 へ の 敵 意 な ど , 集 団 内 お よ び 集 団 間 の 過 程 を 通 し て 直 接 文 化 が 伝 え る こ と を 挙 げ て い た 。 こ の よ う に , 集 団 内 , 外 の 過 程 を 通 し て 児 童 ・ 生 徒 の パ ー ソ ナ リ テ ィ 特 性 は 修 正 さ れ , 形 成 さ れ て い く 。Adler & Adler(2017)に お い て も ,仲 間 集 団 は 子 ど も の 社 会 性 と 同 時 に 子 ど も の ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 形 成 に 重 要 な 影 響 を 与 え る と 指 摘 さ れ て い る 。 特 に 青 年 期 前 期 に お け る 役 割 の 大 き さ が 強 調 さ れ て お り , 青 年 期 の 仲 間 文 化 に は , イ デ オ ロ ギ ー や 生 活 ス タ イ ル の 規 範 , 価 値 が 組 み 込 ま れ て お り , 生 徒 は 仲 間 と の 相 互 作 用 や 自 分 自 身 の 行 動 と 仲 間 集 団 の 規 範 を 照 ら し 合 わ せ る こ と に よ っ て 社 会 的 に 相 応 し い 行 動 を 学 ぶ 。 そ れ と 同 時 に , 自 己 の 存 在 の 核 心 を な す 自 己 概 念 を 確 立 し て い く と 考 え ら れ る 。 こ の よ う に , 仲 間 関 係 は 児 童 ・ 生 徒 の 社 会 性 お よ び 社 会 的 ス キ ル に 影 響 を 与 え る と 同 時 に , 子 ど も た ち の ア イ デ ン テ ィ テ ィ 形 成 に と っ て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が , こ れ ま で の 研 究 に よ っ て 明 ら か に な っ て き て い る 。 一 方 で , 仲 間 関 係 が 与 え る ネ ガ テ ィ ブ な 影 響 と し て , 仲 間 や 仲 間 集 団 か ら 否 定 さ れ 孤 立 す る こ と に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る 自 尊 心 の 低 下 や , 孤 独 感 お よ び 問 題 行 動 の 増 加 な ど が あ る 。 そ の 他 に も 仲 間 関 係 に お け る ト ラ ブ ル は 長 期 欠 席 , 成 績 の 悪 さ , 中 途 退 学 と の 関 連 が あ る こ と が 明 ら か に な っ て い る(佐 藤・佐 藤・高 山 ,1990; Kupersmidt & Coie, 1990; DeRosier, Kupersmidt & Patterson, 1994; 前 田 , 1995; Gazelle& Ladd, 2003)。 学 校 に お け る ス ト レ ッ サ ー に 注 目 し た 研 究 に お い て も , 半 数 以 上 の 生 徒 が 「 仲 間 関 係 」 に 関 す る ス ト レ ス を 強 く 意 識 し て お り , 仲 間 か ら の ひ や か し や , 人 格 を 傷 つ け ら れ る よ う な 言 動 に 対 し て 高 い ス ト レ ス を 感 じ て い る こ と が 示 さ れ て い る(木 村 他 , 2001)。 ま た , 児 童 期 に い じ め に あ い , 別 室 登 校 し て い た 女 子 中 学 生 た ち が 別 室 で の 仲 間 と の 交 流 を 通 し て ク ラ ス へ 復 帰 や
9 自 傷 行 為 等 の 行 動 の 消 失 が 起 こ っ た 事 例 か ら も(吉 井 , 2004), 仲 間 と の 交 流 が 児 童 ・ 生 徒 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る こ と は 明 ら か で あ る 。 こ の よ う に 児 童 ・ 生 徒 は 仲 間 関 係 か ら ポ ジ テ ィ ブ お よ び ネ ガ テ ィ ブ な 影 響 を 受 け て い る こ と が 先 行 研 究 か ら 明 ら か に な っ て お り , 児 童 ・ 生 徒 が 仲 間 関 係 を 形 成 し , 良 好 に 保 っ て い く 方 法 に つ い て 検 討 す る こ と は , 子 ど も 達 の 健 全 な 発 達 を 促 す 上 で 重 要 な 課 題 で あ る こ と が わ か る 。 本 章 で は 仲 間 集 団 の 機 能 に つ い て 述 べ た が , こ れ ら の 機 能 や 役 割 は 発 達 段 階 に よ っ て 異 な る こ と が 示 さ れ て お り , そ の 前 提 と し て 仲 間 関 係 の 特 徴 が 発 達 段 階 ご と に 形 態 的 に も 質 的 に も 変 化 す る こ と が 考 え ら れ る 。 よ っ て 次 節 で は , 幼 児 期 か ら 青 年 期 に か け て の 仲 間 集 団 の 特 徴 を 発 達 段 階 ご と に 分 け て 述 べ て い く こ と と す る 。
10 第 3 節 就 学 前 の 仲 間 集 団 子 ど も は 3・ 4 才 ご ろ か ら グ ル ー プ で 遊 ぶ の を 好 む よ う に な り , 組 織 的 な 遊 戯 活 動 を 好 ん で 行 う よ う に な る と さ れ て い る 。Bossard & Boll (1971)は 就 学 前 の こ の 集 団 を 「 遊 戯 集 団 」 と 呼 び , 就 学 後 の 仲 間 集 団 と は 異 な る 特 徴 を も っ て い る と 指 摘 し て い る 。 そ し て , 遊 戯 集 団 は 仲 間 集 団 の 中 で 最 も イ ン フ ォ ー マ ル な も の で あ り , 共 通 の 遊 び を と も に 経 験 し て い る 同 年 齢 の 子 ど も と 形 成 す る 集 団 で あ る と し て い る 。 つ ま り , 就 学 前 の 仲 間 集 団 に お け る 仲 間 は , 自 分 の す ぐ 近 く に い る 同 じ 遊 び を 行 っ て い る 子 で あ り , ど う い う 遊 び 仲 間 を 選 択 す る か と い う 点 で は ,そ の 種 類 や 範 囲 は 比 較 的 制 限 さ れ て い る が , 遊 び を 共 有 し て い る 子 ど も で あ れ ば 誰 で も 成 員 と し て 受 け 入 れ る た め , 集 団 の 成 員 は 流 動 的 で あ り , 集 団 の 人 数 は 比 較 的 大 き い 。 住 田 (1995)も 就 学 前 の 幼 稚 園 児 の 仲 間 集 団 の 特 徴 と し て , 他 の 発 達 段 階 の 場 合 よ り 仲 間 集 団 の 成 員 の 人 数 が 多 く , 仲 間 で な く て も 知 っ て い る 子 ど も と な ら 誰 と で も 遊 ぶ と い う 仲 間 関 係 の 柔 軟 さ を 挙 げ て い る 。 こ の よ う に , こ の 時 期 の 仲 間 集 団 の 成 員 は 同 級 生 が 多 い が 異 年 齢 の 仲 間 も お り ,異 性 を 含 ん だ 混 合 集 団 が 形 成 さ れ る 場 合 も あ る 。ま た , 仲 間 関 係 は 広 く 成 員 が 流 動 的 で , 入 れ 替 わ り が 激 し い 仲 間 集 団 で あ る こ と が 特 徴 で あ る と い え る 。 さ ら に , こ の じ き の 仲 間 集 団 は , 共 通 の 遊 戯 活 動 を 行 っ て い る 他 児 を 仲 間 集 団 の 成 員 と み な す と い う 比 較 的 大 き な 集 団 で あ る た め , 子 ど も た ち は 仲 間 集 団 に 所 属 し や す い と 推 測 で き る 。 さ ら に , 成 員 が 固 定 化 さ れ て お ら ず , 仲 間 集 団 は 遊 戯 中 の 一 時 的 な も の で あ る こ と が 多 い た め , 一 度 活 動 に う ま く 参 加 で き ず , 仲 間 集 団 に 入 る こ と が で き な か っ た 子 ど も で も , 次 の 遊 び に お い て は 仲 間 集 団 に 入 れ る 可 能 性 が あ る 点 が 特 徴 的 で あ る と い え る だ ろ う 。
11 第 4 節 児 童 期 の 仲 間 集 団 前 述 し た 通 り ,幼 児 期 の 仲 間 集 団 は 遊 戯 中 の 一 時 的 な 集 団 で あ り , 仲 間 で な く て も 知 っ て い る 子 ど も と な ら 誰 と で も 遊 ぶ た め , 成 員 は 固 定 化 さ れ て い な い 。 し か し , 児 童 期 で は , 年 齢 と 主 に 心 理 的 に つ な が っ た 特 定 の 親 し い 仲 間 を 求 め る よ う に な る 。 特 に 児 童 期 中 期 に は い る と 仲 間 集 団 の 成 員 は 固 定 化 し , 仲 間 集 団 が 明 確 に な っ て く る と さ れ て い る 。 こ れ は , 児 童 期 に な り , 仲 間 の 概 念 や 仲 間 に 求 め る 内 容 に 変 化 が 起 こ っ た た め で あ る と 考 え ら れ る 。 児 童 期 初 期 の 段 階 で は , 近 く に 住 み 一 緒 に 遊 べ る 人 , 面 白 い お も ち ゃ を 持 ち 一 緒 に 遊 ん で く れ る 人 と い っ た よ う な , 共 行 動 を 仲 間 に 求 め る が , 児 童 期 中 期 に な る と , 価 値 や 関 心 , 規 範 な ど の 共 有 を 仲 間 に 求 め , 内 面 の 共 有 を 求 め る よ う に な る(Bigelow, 1997)。 自 己 開 示 を 行 い , 互 い に 内 面 を 共 有 す る こ と に よ り , 特 定 の 他 者 と の 親 密 性 が 高 ま る と 考 え ら れ る 。 松 永(2011)の 児 童 期 の 仲 間 の 概 念 の 発 達 的 変 化 を 検 討 し た 研 究 に お い て も , 小 学 1 年 生 の 時 点 で は 行 動 を 共 に す る 同 年 齢 児 を 仲 間 と 捉 え て い る 児 童 が 多 い が , 小 学 3 年 生 に な る と 親 友 と い う 概 念 が 現 れ 始 め , 特 定 の 他 者 を 仲 間 と と ら え る 児 童 が 増 加 し , 仲 良 し の 数 人 の 他 者 が 仲 間 で あ る と 考 え 始 め る こ と が 示 さ れ て い た 。 こ の よ う に , 児 童 期 初 期 か ら 児 童 期 中 期 に か け て は , 行 動 を 共 有 す る こ と を 重 視 す る 仲 間 集 団 か ら , 内 面 的 な 付 き 合 い を 重 視 す る 仲 間 集 団 に 変 化 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 内 面 の 共 有 を 重 視 す る よ う に な る 理 由 と し て は , こ の 時 期 か ら 親 か ら の 心 理 的 離 乳 が 始 ま り , 大 人 か ら の 独 立 に 伴 う 孤 独 感 を , 仲 間 と の 親 密 な 関 係 を 築 く こ と に よ っ て 補 お う と し て い る こ と が 考 え ら れ る 。 保 坂 ・ 岡 村(1986)は 児 童 期 か ら 青 年 期 に か け て の 仲 間 集 団 の 発 達 に つ い て 仮 説 を 提 示 し , 児 童 期 後 半 か ら ギ ャ ン グ ・ グ ル ー プ , 思 春 期 前 半 に チ ャ ム ・ グ ル ー プ , 思 春 期 後 半 に ピ ア ・ グ ル ー プ と い っ た 仲 間 集 団 が 出 現 す る こ と を 指 摘 し た 。 ギ ャ ン グ ・ グ ル ー プ は , 閉 鎖 性 が 強 い 仲 間 集 団 で あ り , 同 一 行 動 に よ る 一 体 感 が 重 視 さ れ , 同 じ
12 遊 び を 一 緒 に す る 者 が 仲 間 で あ る と 述 べ ら れ て い る 。 現 在 は , 仲 間 関 係 の 特 徴 に 変 化 が み ら れ , 保 坂 ・ 岡 村(1986)が 提 示 し た よ う な 3 つ の 仲 間 集 団 に 分 か れ て い な い と い う 指 摘 が あ り(保 坂 , 2010; 黒 沢 ・ 有 本 ・ 森,2003; 國 枝 ・ 古 橋 , 2006), 児 童 期 の 仲 間 集 団 を ギ ャ ン グ ・ グ ル ー プ と 区 切 る の は 適 切 で な い と 考 え ら れ る 。 近 年 の 研 究 に お け る 児 童 期 の 仲 間 集 団 の 特 徴 と し て , 一 貫 し て 挙 げ ら れ て い る 特 徴 は , 児 童 期 中 期 か ら 後 期 に か け て 特 定 の 親 密 な 仲 間 と 固 定 化 さ れ た 仲 間 集 団 を 形 成 す る よ う に な る こ と で あ る 。 そ れ に 加 え て , 同 調 性 お よ び 閉 鎖 性 の 高 い 仲 間 集 団 を 形 成 す る こ と が 指 摘 さ れ て お り , 児 童 期 後 期 に は 固 定 化 さ れ た 仲 間 と 同 調 性 お よ び 閉 鎖 性 の 高 い 仲 間 集 団 を 形 成 す る こ と が わ か る 。
13 第 5 節 青 年 期 の 仲 間 集 団 青 年 期 に な る と , 自 我 意 識 が 明 確 に な り , 自 他 の 社 会 的 区 別 を 認 識 す る よ う に な る た め , 同 世 代 , 同 等 の 社 会 的 地 位 で あ る こ と が 仲 間 を 選 択 す る 上 で の 重 要 な 基 準 と な る 。 そ の 基 準 に よ っ て 選 択 さ れ た 仲 間 と の 関 係 は 強 固 で あ り , 成 員 も 固 定 化 さ れ て い る 。
青 年 期 に 現 れ る 仲 間 集 団 を Bossa rd & Boll (1971))は「 ク リ ー ク 」 と い う 言 葉 を 用 い て 説 明 し て い る 。 ク リ ー ク は , 直 接 の 社 会 的 参 加 が 可 能 な 小 集 団 で あ り , 同 じ 社 会 的 地 位 を も ち , 他 人 を そ の 集 団 か ら 排 除 す る こ と に つ い て 同 意 し て い る 人 々 か ら 成 立 し て い る , と 定 義 さ れ て い る 。 こ の 集 団 に は 明 確 な 所 属 性 が あ り , 集 団 を 団 結 さ せ る 成 員 間 の 親 密 な 相 互 作 用 , 強 い 団 結 心 , そ し て 共 通 の 行 動 型 が あ る と さ れ て い る 。 ま た , 情 動 面 で の 意 味 と し て は , 強 い 友 情 と 相 互 援 助 す る 強 い 責 任 , 自 集 団 に 対 す る 優 先 権 を 与 え る な ど , 仲 間 集 団 内 の き ず な が 強 く , 外 集 団 に 対 し て 排 他 的 で あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 仲 間 集 団 は そ れ 自 身 の ル ー ル や 慣 例 を も っ て お り , そ の 成 員 の 行 動 は , ク リ ー ク に よ っ て 統 制 さ れ て お り , ク リ ー ク が 安 定 し て い れ ば い る だ け , そ の 成 員 の 活 動 と 交 際 へ の 統 制 は 強 ま る と さ れ て い る 。 保 坂 ・ 岡 村(1986)は , 青 年 期 の 仲 間 集 団 の 発 達 と し て , 思 春 期 前 半 に チ ャ ム ・ グ ル ー プ , 思 春 期 後 半 に ピ ア ・ グ ル ー プ と い っ た 仲 間 集 団 が 出 現 す る と し て い る 。 チ ャ ム ・ グ ル ー プ は , 互 い の 共 通 点 や 類 似 点 を 言 葉 で 確 認 し 合 い , 自 分 た ち が 同 質 で あ る こ と を 重 視 す る 同 年 齢 の 同 性 集 団 で あ る 。 ギ ャ ン グ ・ グ ル ー プ の 特 徴 が 同 一 行 動 に あ る と す る な ら ば , こ の チ ャ ム ・ グ ル ー プ の 特 徴 は 同 一 言 語 に あ る と さ れ ,内 面 的 な 互 い の 類 似 性 の 確 認 に よ る 一 体 感 を 重 視 す る 。 個 人 よ り 集 団 の 意 思 を 尊 重 し , 集 団 の 維 持 を 目 的 と す る 仲 間 集 団 で あ り , 女 子 に 特 徴 的 に み ら れ る と さ れ て い る 。 一 体 感 や 同 調 性 を 強 く 求 め る 集 団 で あ る た め , 同 調 圧 力(peer pressure )が 最 も 生 じ や す い グ ル ー プ で あ る と さ れ て い る 。 一 方 で , ピ ア ・ グ ル ー プ は , 互 い の 違 い を 認 め 合 い ,互 い の 価 値 観 や 理 想 な ど を 語 り 合 う 関 係 で あ る 。
14 よ っ て , 共 通 性 や 類 似 性 の み で な く , 互 い の 異 質 性 を ぶ つ け 合 う こ と に よ っ て , 他 者 と の 違 い を 明 ら か に し , 自 立 し た 個 人 と し て 互 い を 尊 重 し 合 う こ と が で き る 集 団 で あ る 。 ま た , 異 質 性 を 認 め る こ と が で き る 特 徴 で あ る た め , 年 齢 に 幅 の あ る 男 女 混 合 の 集 団 で あ る と さ れ て い る 。 第 4 節 で も 触 れ た が ,現 代 の 仲 間 関 係 に お い て ,保 坂・岡 村 (1986) が 示 し た チ ャ ム ・ グ ル ー プ お よ び ピ ア ・ グ ル ー プ と い う 型 の 仲 間 集 団 は 必 ず し も 形 成 さ れ な い と 考 え ら れ る 。 近 年 の 仲 間 集 団 の 発 達 に 関 す る 研 究 の 多 く は チ ャ ム ・ グ ル ー プ や ピ ア ・ グ ル ー プ に こ だ わ ら ず , 発 達 段 階 に よ っ て 仲 間 集 団 に ど の よ う な 特 徴 が あ る か と い う 点 に 焦 点 を 当 て , 研 究 さ れ て い る 。 落 合 ・ 佐 藤(1996)の 中 学 生 ・ 高 校 生 ・ 大 学 生 を 対 象 に 行 っ た 研 究 で は , 中 学 生 に お い て 同 調 性 が 最 も 高 く , 自 己 開 示 し 積 極 的 に 相 互 理 解 し よ う と す る 特 徴 が 最 も 低 い こ と が 示 さ れ た 。 一 方 で 高 校 生 , 大 学 生 と 年 齢 が 上 が る に つ れ て 同 調 性 は 低 下 し , 相 互 に 積 極 的 に 理 解 し よ う と す る 付 き 合 い 方 が 増 え る こ と が 示 さ れ て い た 。 榎 本(1999)で は , 中 学 生 ・ 高 校 生 ・ 大 学 生 を 対 象 に 検 討 が さ れ て お り , 結 果 と し て , 中 学 生 や 高 校 生 で は 親 密 確 認 や 共 有 活 動 , 閉 鎖 活 動 と い っ た 友 人 と の 類 似 性 を 重 視 し 他 者 を 入 れ な い 特 徴 を 持 つ よ う な 活 動 が 多 い が , 大 学 生 に な る と お 互 い を 尊 重 す る 相 互 理 解 活 動 が 増 え る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 こ の よ う に , 青 年 期 の 中 で も 特 に 中 学 生 が 形 成 す る 仲 間 集 団 は , 同 調 性 が 高 く , 閉 鎖 性 の 高 い 集 団 で あ る こ と が わ か る 。 ま た , 青 年 期 の 仲 間 関 係 に お け る 異 質 拒 否 傾 向 と 被 異 質 視 不 安 を 検 討 し た 研 究 に お い て , 中 学 生 の 被 異 質 視 不 安 が 最 も 高 い こ と が 示 さ れ て お り , 特 に 青 年 期 前 期 に お い て は 仲 間 集 団 に お け る 同 調 性 を 重 視 し て お り , そ の た め に 自 分 た ち と は 異 質 の 他 者 を 拒 否 す る 気 持 ち が 高 い こ と が 示 唆 さ れ て い た(高 坂 , 2010)。 さ ら に , 石 田 ・ 小 島 (2009)で は , 中 学 生 に お け る 仲 間 集 団 の 特 徴 お よ び 構 造 が 検 討 さ れ て お り ,「 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 」,「 仲 間 集 団 の 階 層 性 」,「 仲 間 集 団 の 凝 集 性 」 と い っ た 仲 間 集 団 の 特 徴 を も っ て い る こ と が 示 さ れ た 。 こ の 結 果 か ら , 青 年 期 前 期 に
15 は , リ ー ダ ー を 中 心 と す る 階 層 的 な 関 係 の あ る , 自 分 の 仲 間 集 団 以 外 の 他 者 と あ ま り 寄 せ 付 け な い 排 他 的 で 凝 集 性 の 高 い 仲 間 集 団 を 形 成 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 石 田 ・ 丹 村(2012)に お い て も , 中 学 生 の 仲 間 集 団 の 特 徴 と し て 「 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 」,「 仲 間 集 団 の 階 層 性 」,「 仲 間 集 団 の 凝 集 性 」 が 示 さ れ て お り , 安 定 し た 特 徴 で あ る こ と が わ か る 。 さ ら に 石 田 ・ 丹 村(2012)は , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 お よ び 階 層 性 が 同 調 志 向 と 関 連 し て い る こ と も 明 ら か に し て い る 。 以 上 の こ と か ら , 青 年 期 後 期 に な る と 同 調 性 や 閉 鎖 性 と い っ た 特 徴 は 低 下 し て い く 傾 向 に あ る が , 青 年 期 前 期 で あ る 中 学 生 に お い て 形 成 さ れ る 仲 間 集 団 は , 児 童 期 以 上 に 同 調 性 が 高 く , 自 集 団 以 外 の 他 者 を 受 け 付 け な い 閉 鎖 性 を も っ た 集 団 で あ る こ と が 推 測 さ れ る 。 こ の よ う に , 児 童 期 お よ び 青 年 期 前 期 の 仲 間 集 団 は 特 徴 と し て , 閉 鎖 性 の 高 さ が あ り , こ の 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 は , そ の 集 団 に 所 属 し て い る 成 員 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る 。 よ っ て , 次 章 で は , 仲 間 集 団 を 形 成 す る こ と で 高 ま る と さ れ て い る 「 仲 間 関 係 の 排 他 性 」 に つ い て 整 理 し て い く こ と と す る 。
16 第 2 章 仲 間 関 係 の 排 他 性 に つ い て 第 1 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 と は 第 1 章 で 述 べ た よ う に , 仲 間 集 団 の 特 徴 と し て , 集 団 を 形 成 す る と 他 集 団 に 対 し て 排 他 的 に な る こ と が 挙 げ ら れ る 。 特 に , 児 童 期 中 期 以 降 の 仲 間 集 団 で は , 成 員 が 固 定 化 さ れ た 明 確 な 仲 間 集 団 を 形 成 す る よ う に な る た め , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 く な る こ と が 強 調 さ れ て い る 。仲 間 関 係 の 排 他 性 と は ,集 団 や 関 係 に お い て ,「 自 分 の 仲 間 で あ る か ど う か に よ っ て 相 手 に 対 す る 態 度 を 変 え た り , 自 分 の 仲 間 と 活 動 す る こ と に 比 べ , 仲 間 以 外 の 児 童 と 活 動 す る こ と を 楽 し く な い と 感 じ た り す る 程 度 の 強 さ 」 で あ る と 定 義 さ れ る(三 島 , 2004)。 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 ま る と , 自 集 団 と 他 集 団 と の 差 を 明 確 に し , 自 集 団 の 基 準 に 合 わ な い 他 者 や , 少 し で も 異 質 な 部 分 が 感 じ ら れ る 個 人 を 排 除 す る よ う に な る と さ れ て い る(石 田 ・ 小 島 , 2 0 0 9 ; 黒 沢 , 2011)。 級 友 や 仲 間 か ら 排 他 的 な 態 度 を と ら れ , 学 級 内 で 孤 立 す る こ と は , 子 ど も の 不 安 や 孤 独 感 , 憂 う つ 感 な ど を 強 め , 自 尊 心 を 低 め る こ と が 指 摘 さ れ て い る(Gazelle & Ladd ,2003; 佐 藤 他 ,1 9 9 0 ; 前 田 ,1995)。そ の 他 に も ,竹 川 (1993)の い じ め と 仲 間 関 係 の 関 連 に つ い て 検 討 し た 研 究 で は , 小 学 校 に お い て い じ め の な い 学 級 に 比 べ て , い じ め の あ る 学 級 で は , 仲 間 関 係 が よ り 親 密 で あ り , 仲 間 で な い 者 同 士 の 関 係 は よ り 排 他 的 で あ る こ と が 示 さ れ て い た 。 こ の 結 果 か ら , 仲 間 関 係 の 排 他 性 の 高 さ が 児 童 期 に お け る い じ め の 発 生 に つ な が る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 ま た , 仲 間 関 係 の 排 他 性 は 児 童 の 学 習 意 欲 や 学 校 適 応 に も 影 響 を 与 え る こ と が 示 さ れ て お り , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 低 い 児 童 の 方 が 高 い 生 徒 よ り も , 学 習 の 班 活 動 中 に 班 成 員 か ら 受 け る サ ポ ー ト が 多 く , 明 る く 優 し い 雰 囲 気 の も と で 学 習 活 動 を 行 っ て お り ,授 業 へ の 集 中 や 意 欲 的 な 態 度 が 高 い こ と(黒 川 ・ 吉 田 ,2009), 他 の 集 団 に 所 属 す る 他 者 に 対 す る 排 他 的 な 考 え 方 や 行 動 傾 向 は 心 身 の 不 健 康 を 媒 介 し , 間 接 的 に 児 童 の 学 校 適 応 に 負 の
17 影 響 を 与 え る こ と(三 島 , 2010)な ど が 明 ら か に な っ て い る 。 こ れ ら の 研 究 か ら 仲 間 関 係 の 排 他 性 は , い じ め や 仲 間 外 れ の 増 加 や 学 校 適 応 や 学 習 意 欲 の 低 下 と い っ た 教 育 現 場 に お け る 多 く の 問 題 と 関 わ っ て い る こ と が わ か る 。 よ っ て , 明 確 な 仲 間 集 団 を 形 成 し 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 ま る 児 童 期 ・ 青 年 期 に , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 く な り す ぎ る こ と を 防 ぐ こ と は , 児 童 ・ 生 徒 が 快 適 な 学 校 生 活 を 送 る 上 で 重 要 な こ と で あ る と い え る 。 先 行 研 究 に お い て も , 仲 間 関 係 の 排 他 性 の 関 連 要 因 に 関 す る 多 く の 研 究 が 行 わ れ て き て い る 。 よ っ て , 次 節 で は こ れ ま で に 明 ら か に な っ て い る 仲 間 関 係 の 排 他 性 の 関 連 要 因 に つ い て ま と め る こ と と す る 。
18 第 2 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 環 境 要 因 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る 要 因 と し て , 仲 間 集 団 や 学 級 集 団 か ら の 影 響 と い っ た 環 境 要 因 と 個 人 の 特 性 と い っ た 個 人 内 要 因 が 挙 げ ら れ る 。 し か し , こ れ ま で の 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 関 す る 先 行 研 究 で は , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る 要 因 と し て 環 境 要 因 も し く は 個 人 内 要 因 の ど ち ら か 一 方 に の み 焦 点 を 当 て た も の が 多 く , 両 要 因 を 同 時 に 取 り 上 げ た 研 究 は あ ま り な さ れ て き て い な い 。 そ こ で ま ず , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え て い る 要 因 を 環 境 要 因 と 個 人 内 要 因 に 分 け て 述 べ て い く 。 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え て い る 要 因 と し て ま ず , 学 級 雰 囲 気 が 挙 げ ら れ る 。 学 級 全 体 の 一 体 感 が 強 く , 学 級 の 児 童 ・ 生 徒 み ん な が 仲 間 で あ る と い う 認 識 が 強 い 学 級 で は , 自 集 団 と 他 集 団 の 境 界 が 低 く , 自 集 団 以 外 の 他 者 と も 活 発 に 交 流 す る た め , 仲 間 関 係 の 排 他 性 は 低 く な る こ と が 考 え ら れ る 。 三 島(2012)で は 児 童 期 に お け る 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 学 級 雰 囲 気 の 関 係 に つ い て 検 討 し , 女 子 児 童 に お い て の み で は あ る が ,「 離 散 的 な 学 級 雰 囲 気 」を 強 く 認 識 し て い る 児 童 ほ ど , 排 他 的 な 考 え や 行 動 傾 向 が 強 い こ と を 明 ら か に し た 。 青 年 期 に お け る 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 学 級 雰 囲 気 に つ い て も 検 討 が な さ れ て お り , 中 学 生 と 高 校 生 を 対 象 に 研 究 が 行 わ れ て い る 。 青 年 期 前 期 で あ る 中 学 生 を 対 象 に し た 三 島(2013)の 研 究 で は , 児 童 を 対 象 と し た 研 究 と 同 様 の 結 果 が 示 さ れ ,女 子 に お い て ,「 離 散 的 な 学 級 雰 囲 気 」 を 強 く 認 識 し て い る 児 童 ほ ど , 排 他 的 な 考 え や 行 動 傾 向 が 強 い こ と が 示 さ れ た 。高 校 生 で は ,女 子 の み で な く ,男 子 に お い て も「 離 散 的 な 学 級 雰 囲 気 」 の 強 化 が 他 集 団 の 成 員 に 対 す る 排 他 性 を 強 め る こ と が 示 さ れ て い た 。 こ れ ら の 結 果 か ら , 学 級 内 の 雰 囲 気 が 児 童 ・ 生 徒 , 特 に 女 子 児 童 お よ び 女 子 生 徒 の 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え て い る こ と が わ か る 。 こ れ ら の 学 級 雰 囲 気 と 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 関 す る 研 究 で は ,「 離 散 的 な 学 級 雰 囲 気 」が 強 い 学 級 は ,学 級 と し て 一 つ に ま と ま っ て い る と い う 一 体 感 が 低 く , 個 々 の 仲 間 集 団 に 離 散
19 し て い る と 児 童 ・ 生 徒 が 強 く 感 じ る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 こ の こ と か ら , 離 散 的 な 雰 囲 気 の 学 級 で は , 同 じ 仲 間 集 団 に 所 属 し て い る 児 童 は 互 い に 活 発 に 交 流 し 仲 間 に 対 す る 親 密 性 は 高 ま る こ と が わ か る 。し か し 一 方 で ,仲 間 以 外 の 児 童 と の 関 係 が 疎 遠 と な る た め , 外 集 団 の 他 児 に 対 す る 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 ま る こ と が 推 測 で き る 。 ま た , 離 散 的 な 雰 囲 気 が 強 ま っ た 学 級 で は , 既 存 の 仲 間 集 団 か ら 排 除 さ れ る と , 他 の 仲 間 集 団 に 所 属 す る こ と が 難 し く , そ の 後 学 級 内 で 孤 立 す る こ と が 容 易 に 予 測 で き る 。 そ し て , そ の こ と が 児 童 に 高 い 不 安 を 引 き 起 こ し , こ の 不 安 が 仲 間 と の 親 密 性 を 高 め る と 同 時 に 他 集 団 に 対 す る 排 他 性 を 高 め る こ と が 考 え ら れ る 。 学 級 雰 囲 気 だ け で な く , 個 人 が 所 属 し て い る 仲 間 集 団 の 特 徴 の 一 つ で あ る , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 も 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え て い る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。仲 間 関 係 の 排 他 性 を 考 え て い く 場 合 , 個 人 の 感 情 や 欲 求 の レ ベ ル で 理 解 さ れ る 排 他 性 の 他 に , 個 人 が 所 属 し て い る 仲 間 集 団 が も つ 閉 鎖 性 が 考 え ら れ る 。仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 は , 自 分 の 所 属 し て い る 仲 間 集 団 が 排 他 的 で あ る と 認 知 す る 強 さ の 程 度 の こ と で あ り , 自 集 団 が 自 集 団 以 外 の 他 者 に 対 し て ど の よ う な 態 度 や 行 動 を と っ て い る と 感 じ て い る か を 測 定 し た も の で あ る 。 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 は ,集 団 内 の 関 係 性 の 深 ま り と と も に 高 ま る も の で あ り , 閉 鎖 性 が 高 い ほ ど 斉 一 性 の 圧 力 が 高 ま り , 集 団 規 範 か ら 逸 脱 し た 者 は 無 視 や 排 除 と い っ た 制 裁 が と ら れ る と さ れ て い る(有 倉 , 2011)。 特 に 児 童 期 中 期 以 降 ,所 属 す る 集 団 の 同 一 性 を 重 視 す る よ う に な り , 所 属 す る メ ン バ ー の 行 動 や 仲 間 集 団 の 規 範 に 自 分 自 身 も 合 わ せ る よ う に な る た め(Abrams, Rutland, & Cameron, 2003), 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 が 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す こ と が 考 え ら れ る 。 石 田 ・ 丹 村(2012)は 中 学 生 に お け る 仲 間 集 団 の 特 徴 と 個 人 の 仲 間 集 団 と の 関 わ り 方 に つ い て 検 討 を 行 い , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 お よ び 階 層 性 は 個 人 の 評 価 懸 念 お よ び 同 調 志 向 と の 間 に 正 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ る こ と を 示 し , 閉 鎖 性 や 階 層 性 が 高 い 集 団 に 所 属 し て い る 生 徒 ほ ど 仲 間 か ら の 評 価 を 気 に し , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 の 高 さ に 自 分 を 合 わ
20 せ よ う と す る 傾 向 が 強 い こ と を 明 ら か に し た 。 こ れ ら の 結 果 , 仲 間 関 係 の 排 他 性 は , 個 人 が 所 属 し て い る 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 か ら 影 響 を 受 け , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 が 高 い 集 団 に 所 属 し て い る ほ ど , 仲 間 集 団 と の 同 調 性 が 強 く な り , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 に 沿 う よ う に 自 分 自 身 の 排 他 性 も 高 ま る こ と が 推 測 で き る 。 黒 川 ・ 三 島 ・ 吉 田(2006)で は , 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 の 関 係 性 を 検 討 す る た め に , 個 人 と 集 団 関 係 を 示 す 変 数 と し て 仲 間 集 団 の 成 員 か ら の 拒 否 に 対 す る 敏 感 性 を 用 い , 仲 間 集 団 の 他 成 員 か ら の 拒 否 に 対 す る 敏 感 さ が 高 い 児 童 ほ ど 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 の 偏 差 が 小 さ い こ と を 明 ら か に し た 。 こ れ に よ り , 特 に 拒 否 に 敏 感 な 者 は , 仲 間 集 団 の 規 範 か ら 外 れ 仲 間 集 団 か ら 排 除 さ れ な い よ う に , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 に 合 わ せ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 こ の よ う に , 先 行 研 究 で は , 個 人 の 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る 要 因 と し て , 主 に 学 級 雰 囲 気 や 仲 間 集 団 の 特 性 と い っ た 環 境 要 因 に 焦 点 を 当 て て い る も の が 多 く み ら れ る 。 し か し , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に は 学 級 や 仲 間 集 団 と い っ た 個 人 間 要 因 の み で な く , 個 人 内 要 因 も 影 響 を 与 え て い る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 次 節 で は , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え て い る 個 人 内 要 因 に つ い て 述 べ て い く 。
21 第 3 節 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す 個 人 内 要 因 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 関 連 し て い る 個 人 内 要 因 の 一 つ と し て ま ず , 仲 間 集 団 へ の 所 属 理 由 が 指 摘 さ れ て い る 。 佐 藤(1995)は , 高 校 生 女 子 を 対 象 と し て , 仲 間 集 団 に 所 属 す る 理 由 が 仲 間 関 係 の 排 他 性 と ど の よ う な 関 連 が あ る か に つ い て 検 討 を 行 い , 仲 間 集 団 へ の 所 属 理 由 の う ち ,「 浮 い た 存 在 に な り た く な い 」と い っ た 消 極 的 な 理 由 は 排 他 的 な 仲 間 集 団 を 望 む 傾 向 と 関 連 し て い る こ と を 明 ら か に し て い る 。 こ の 結 果 か ら , 青 年 期 女 子 に お い て は , 仲 間 か ら 拒 否 さ れ る こ と へ の 恐 怖 や , 学 校 生 活 に お い て 一 人 に な る こ と を 避 け よ う と す る 気 持 ち が 強 く , そ の 気 持 ち か ら 他 集 団 を 寄 せ 付 け な い 強 い 排 他 性 と 集 団 内 の 強 い 親 密 性 を 望 む こ と が 示 唆 さ れ る 。 し か し , こ の 研 究 の 対 象 は 女 子 生 徒 の み で あ る た め , 男 子 生 徒 に お い て も 仲 間 集 団 の 所 属 理 由 が 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 及 ぼ す の か と い っ た 点 や , 青 年 期 に お い て も 同 様 の 関 係 性 で あ る の か と い っ た 点 は 明 確 に な っ て い な い 。 仲 間 集 団 へ の 所 属 理 由 以 外 で 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る 個 人 内 要 因 と し て 取 り 上 げ ら れ て い る も の と し て , 個 人 の 「 仲 間 か ら 受 け る 制 裁 の 予 測 認 知 」 が あ る 。 黒 川 ・ 三 島 ・ 吉 田(2006)は , 仲 間 か ら 受 け る 制 裁 の 予 測 認 知 が 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 与 え る 影 響 に つ い て 児 童 を 対 象 に 検 討 を 行 い , 女 子 児 童 に お い て , 仲 間 か ら の 制 裁 の 予 測 認 知 は , 仲 間 関 係 の 排 他 性 を 高 め る 規 定 因 と し て 機 能 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。 女 子 児 童 は 仲 間 か ら の 制 裁 を 予 測 す る こ と で 不 安 を 喚 起 さ せ , 集 団 外 の 他 者 と の 関 わ り を 持 た な い よ う に な る こ と が 示 唆 さ れ た 。 女 子 は 「 自 分 の 属 し て い る グ ル ー プ か ら は み 出 な い よ う に 並 々 な ら ぬ 努 力 を し て い る 」 と い う こ と も 指 摘 さ れ て お り (保 坂 , 1993), 女 子 は 仲 間 か ら の 制 裁 さ れ る 不 安 や 仲 間 か ら 拒 否 さ れ る 不 安 が 高 い た め , 自 集 団 の 成 員 と の 親 密 性 を 高 め よ う と す る 一 方 で , 自 集 団 の 成 員 以 外 に 対 す る 排 他 性 が 高 く な る こ と が 考 え ら れ た 。 上 記 で 述 べ た 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る と さ れ て い る , 仲
22 間 集 団 へ の 所 属 理 由 と 仲 間 か ら の 受 け る 制 裁 予 測 は , 個 人 内 要 因 で は あ る が , 仲 間 や 仲 間 集 団 と 関 連 の あ る 要 因 で あ り , こ れ ま で の 研 究 で は , 仲 間 や 仲 間 集 団 と は 関 連 の な い 個 人 内 要 因 は 検 討 さ れ て こ な か っ た 。 ま た , 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 仲 間 集 団 へ の 所 属 理 由 お よ び 仲 間 か ら の 受 け る 制 裁 予 測 と の 関 連 を 検 討 し た 研 究 は , 対 象 が 女 子 児 童 ・ 生 徒 の み で あ っ た た め , 男 子 児 童 ・ 生 徒 の 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 対 し て も 影 響 を 及 ぼ す か ど う か に つ い て 明 ら か に な っ て い な い 。 仲 間 関 係 の 排 他 性 の 関 連 概 念 の 研 究 と し て 受 け 入 れ と 排 除 の 判 断 に 関 す る 研 究 が あ り , ど の よ う な 特 徴 を も つ 相 手 で あ る と 受 け 入 れ や す く , ど の よ う な 特 徴 を も つ 他 者 は 排 除 さ れ や す い か と い っ た 内 容 が 研 究 さ れ て き た 。 相 手 を あ り の ま ま 受 け 入 れ る 「 受 容 性 」 と い う 概 念 は , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 高 け れ ば 低 く な り , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 低 け れ ば 高 く な る と い う 様 な ,1 次 元 上 の 両 極 の 関 係 で あ る と 考 え ら れ や す い 。 し か し , 先 行 研 究 に お い て 仲 間 関 係 の 排 他 性 も 受 容 性 も 男 子 よ り 女 子 の 方 が 高 い と い う こ と が 明 ら か に な っ て お り , 仲 間 関 係 の 排 他 性 も 受 容 性 も 高 い 児 童 ・ 生 徒 が い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ の こ と か ら , 仲 間 関 係 の 排 他 性 と 受 容 性 は 単 純 な 両 極 の 関 係 性 で は な い こ と が 考 え ら れ る 。 特 に , 対 人 関 係 全 体 に お け る 受 容 性(対 人 受 容 性 )は , す べ て の 対 人 関 係 に お け る 相 手 を 受 け 入 れ る 気 持 ち の 程 度 で あ り , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 限 ら ず , 社 会 的 な 偏 見 や ス テ レ オ タ イ プ に も 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る 。対 人 受 容 性 が 高 い と , 相 手 の 特 徴 に よ っ て 拒 否 す る こ と が 減 り , 仲 間 関 係 の 排 他 性 が 減 少 す る こ と が 考 え ら れ る 。 よ っ て 本 研 究 で は , 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え る 個 人 内 要 因 と し て 「 対 人 受 容 性 」 を 取 り 上 げ , 検 討 を 行 う こ と と し た 。 そ こ で 第 4 節 で は , 対 人 受 容 性 に 関 す る 研 究 つ い て 整 理 し て い く 。
23 第 4 節 対 人 受 容 性 と は 第 3 節 で も 述 べ た よ う に , 先 行 研 究 か ら , 仲 間 集 団 へ の 所 属 理 由 や 仲 間 か ら の 受 け る 制 裁 予 測 と い っ た 個 人 内 要 因 が 仲 間 関 係 の 排 他 性 に 影 響 を 与 え て い る こ と が 示 さ れ て き た 。 し か し , こ れ ま で 取 り 上 げ ら れ て き た 仲 間 集 団 へ の 所 属 理 由 や , 仲 間 か ら の 制 裁 に 対 す る 不 安 の 高 さ は , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 と 関 連 の あ る 要 因 で あ り , 仲 間 集 団 の 特 性 と 離 れ た 個 人 内 要 因 の 影 響 に つ い て は 検 討 な さ れ て き て い な い 。 そ こ で 本 研 究 で は , 仲 間 集 団 の 閉 鎖 性 と い っ た 特 徴 と 直 接 的 な 関 連 の な い , 対 人 受 容 性 を 取 り 上 げ , 仲 間 関 係 の 排 他 性 へ の 影 響 に つ い て 検 討 す る こ と と し た 。 受 容 と は , あ り の ま ま の 特 徴 を 受 け 入 れ る 態 度 で あ り , 自 己 も し く は 他 者 の パ ー ソ ナ リ テ ィ を 受 け 入 れ る 肯 定 的 な 態 度 や 構 え の こ と を 指 す(川 岸 , 1972)。 対 人 受 容 性 が 高 い と , 否 定 的 な 特 徴 を も つ 他 者 で あ っ て も 積 極 的 に 受 け 入 れ , 特 徴 や 集 団 の 違 い に よ っ て 相 手 を 差 別 し た り , 相 手 に 対 し て ネ ガ テ ィ ブ な イ メ ー ジ を 持 ち に く く な っ た り す る と 考 え ら れ る 。 よ っ て , 対 人 受 容 性 が 高 い 児 童 ・ 生 徒 は , 仲 間 関 係 に お い て も 他 集 団 の 成 員 や 自 集 団 の 規 範 か ら 逸 脱 し て い る 他 者 に 対 し て 排 他 性 が 低 い こ と が 考 え ら れ る 。 前 述 し た 通 り , 先 行 研 究 で は 対 人 受 容 性 に の み 着 目 し た 研 究 は 見 ら れ ず , 排 除 の 逆 の 概 念 と し て 受 容 性 が 取 り 上 げ ら れ , 他 者 を 拒 否 す る 側 面 と 他 者 を 受 け 入 れ る 側 面 の 両 方 が 取 り 上 げ た 研 究 が な さ れ て き て い る 。 Killen et al. (2001)は 集 団 か ら の 排 除 と 受 け 入 れ の 判 断 に つ い て 検 討 し , ど の よ う な 特 徴 を も つ 他 者 は 排 除 し や す く , ど の よ う な 特 徴 を も つ 他 者 は 受 容 し や す い の か を 明 ら か に し た 。 ま た , 排 除 と 受 容 の 判 断 の 発 達 的 変 化 を 検 討 し , 発 達 と と も に 排 除 と 受 け 入 れ の 基 準 に 変 化 が み ら れ る か に つ い て の 検 討 も 行 っ て い る 。 受 け 入 れ も し く は 拒 否 の 対 象 と な る 特 徴 に は ,「 性 別 」と「 人 種 」と い っ た 社 会 的 カ テ ゴ リ ー を 取 り 上 げ て お り , 結 果 と し て , 児 童 ・ 生 徒 は 人 種 や 性 別 の 違 い に よ っ て 相 手 を 排 除 す る こ と は 不 公 平 で あ る 判 断 す る こ と