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日本の歴史 22

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Academic year: 2021

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日本の歴史 22

日本の歴史 38

『ヨーロッパに消えた

      サムライたち』

太田尚樹著 (筑摩書房 ちくま文庫 2007)

本書の請求記号 210.52‖Ota

稲垣 宏行

 本書によれば、スペイン(イスパニア)南部の 町コリア・デル・リオ近隣には、「ハポン(スペイ ン語で日本の意味)」という苗字を持つ602名の 人々がおり、しかも彼らは、自分たちが仙台藩 士・支はせくらつねなが倉常長率いる「慶長遣欧使節団」の「末裔」

だと信じていると言います。その理由は500年以 上前の日本の情勢にあります。仙台藩主・伊達政 宗は当時日本を支配していた徳川幕府に対抗する 勢力を国外に求めていたのです。そのために自藩 とスペインとの通商締結を望みました。

 慶長18(1613)年、政宗の命によりスペインへ 派遣された支倉以下26名の使節団は手厚く歓待さ れました。スペインにも日本でキリスト教を広めた いという目的、そして欧米諸国で「黄金の島」とし て知られていた日本との通商という狙いがあったか らです。ともあれ双方の利害が一致していたことも あって、支倉らはスペイン国王フェリペ3世だけで はなく、法王パウロ5世とも謁見を果たしました。

 使節団はスペインに至る際、太平洋と大西洋を 横断しています。これは、日本人として初めての ことです。また、支倉にはスペイン国王の前で堂々 と演説をしたという話もあります。ただ、彼自身 はスペイン語を殆ど話せなかったようです。それ でも演説が出来たのは通訳として同行したスペイ ン人神父フライ・ルイス・ソテロのお陰だったと言 います。本書でも大きな存在感を持つソテロ。ただ、

彼は支倉とは対照的に人徳に乏しかったようです。

やはりここまでこぎ着けたのは、支倉自身の力によ るところも大きかったのかもしれません。

 しかし、次第に日本で進行するキリスト教弾圧、

そして宣教師らの調査の結果、日本が「黄金の島」

では無いと見なされたことから支倉らは途端に冷 遇され、結局、成果を得られぬまま帰国を余儀な くされました。しかも、帰国してもスペインでの 活動内容すら封殺されてしまいました。支倉がス

ペインでキリスト教の洗礼を受けていたため、そ のことが幕府に咎められると政宗が恐れたため です。ただ、そこには支倉ら家臣たちを守りたい という思いもあったようです。彼らの活動が明ら かにされたのは、明治6(1873)年、岩倉具視が 欧米視察でイタリアを訪れ、支倉の署名が入った 文書を目にしてからでした。

 本国とスペイン、両国の政治的思惑に長らく翻 弄されてきた支倉とその使節団の者たち。徳川幕 府もスペインとの通商締結を試みる仙台藩を危険 視し、またスペインから銀の製錬技術を入手する ため、使節団にスパイを送り込んだと本書は述べ ています。加えて日本では前述のようにキリスト教 弾圧が行われていました。真実を守ることの困難 さが本書を通じて感じられます。

 しかし、その足跡はコリア・デル・リオに支倉 の銅像と共に残りました。スペインに造詣深い著 者は現地調査の結果、使節団の内、約8名がス ペインの風土に惹かれたこと、日本でキリスト教 弾圧が激しいことを理由に、スペインに留まった ことを明らかにしています。そして著者は、コリア・

デル・リオの稲作手法が日本のそれと似通ってい ること、生まれた子どもに蒙古斑があることなど から、この町の「ハポン」姓の人々が、現地に残っ た使節団の「末裔」である可能性を強く主張して います。

 彼らの業績は今、本書も含めた多くの形で我々 の前に示されています。ただし、幕府への発覚 を恐れて秘匿された可能性のある資料も少なくな いと著者は述べています。それでも、真実を追究 しようとする姿勢がある限り、いつかその全貌は 明らかにされることでしょう。支倉と使節団に関 するさらなる発見が待たれます。

いながき ひろゆき(司書・情報サービス課)

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図書館員の文献紹介

参照

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