• 検索結果がありません。

22 29 日本の歴史 日本の歴史

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "22 29 日本の歴史 日本の歴史"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

36

図書館員の文献紹介

日本の歴史

22

日本の歴史

29

『平家の群像 :

   物語から史実へ』

高橋昌明著(岩波新書 岩波書店 2009)

本書の請求記号 210.39‖Tak

稲垣 宏行

 平清盛は、治承 3(1179)年の後白河法皇幽 閉やその翌年の福原遷都など強硬な政治姿勢か ら傲慢な人物だと一面的な見方をされる傾向が ありますが、清盛以外の平家の人間も同様の見 方をされているようです。例えば、清盛の孫維これもり

には、治承4(1180)年の富士川の合戦で水 鳥の羽音に驚き戦わずして撤退したことから臆 病というイメージが定着しています。逆に、清 盛の四男知とももりは優れた武将として知られていま す。彼が壇ノ浦海戦で安徳天皇らを守って源氏の 軍勢と勇敢に戦い、敗北して入水自殺した場面は 有名です。しかし、著者はそうしたイメージの多 くは平家物語によるものだと述べています。

 平家物語は琵琶法師の語り物としても有名 で、後代の文学作品に多大な影響を及ぼしまし た。ただし、その性質は軍記物語で、歴史的資 料ではありません。平家に関する研究書を多く 手掛ける著者は、平家物語の問題点を『玉葉』

など他の文献も交えて指摘しています。そして 人物評価では、維盛と清盛の五男重しげひら衡を中心に 置いています。

 何故、歴史上余り重要と言えない維盛と重衡 を前面に出したのでしょうか。著者は本書の序 章で、平家が清盛一人によって動かされていた わけではなく、また一族の者たちも各々の思惑 で行動しており、時には主導権争いが見られた ことを主な理由として挙げていますが、維盛の 家系には、この傾向が強く表れているようです。

清盛の長男にして維盛の父重盛が安元 3(1177)

年の鹿ヶ谷の陰謀に関与していた藤原成親の妹 と結婚していたために政治的立場が危うくなっ た際、三男の宗盛が主導権を狙う動きを見せた こともそれを物語っています。

 維盛と重盛は、平家物語の影響から一般に嫡

流に当たると考えられていますが、著者は、実 際はそうではなかったとしており、維盛は、実 は重盛の嫡子ではなかった可能性を挙げていま す。重盛も清盛の実子ではなかったと見ており、

この父子の立場が盤石でなかったことを指摘し ています。

 維盛と重衡についてですが、維盛は「光源氏 の再来」と言われるほどの美丈夫と『建けんれいもんいんうきょう

京大だいぶしゅう夫集』などで評されています。しかし、

和歌はあまり得意とせず、狩りに勤しんでいた 武士らしい一面を著者は挙げています。富士川 の合戦でも、『玉葉』の中で敗戦後に維盛が撤 退は不本意だったと語っていたことや、合戦に ついての平家物語の描写が敵方である東国の資 料を多く取り入れたものであることなどから、

著者は一般に定着した維盛が臆病という評価に 疑問を呈しています。

 重衡は牡丹の花に喩えられるほど優美な人物 で、常勝将軍と評されるほどの戦功の持ち主と 言われています。戦と言えば、平家一門では知 盛が思い浮かぶでしょう。ところが著者は、知 盛は持病を患っていて、正史ではそれほど活躍 できなかったのではないかと推測しています。

因みに、重衡は幼い安徳天皇の養育に関わって おり、また心遣いの細やかさから宮中において 好評を得ていました。

 本書の魅力は、人物の詳細な描写によって一 般のイメージとは異なる実像を浮き彫りにして いることもそうですが、それでいて平坦な記述 になっていないのは、著者の平家に対する思い 入れや知識の深さによるところが大きいと思い ます。

いながき ひろゆき(司書・情報サービス課)

参照

関連したドキュメント

ともわからず,この世のものともあの世のものとも鼠り知れないwitchesの出

本県は、島しょ県であるがゆえに、その歴史と文化、そして日々の県民生活が、

ピンクシャツの男性も、 「一人暮らしがしたい」 「海 外旅行に行きたい」という話が出てきたときに、

手動のレバーを押して津波がどのようにして起きるかを観察 することができます。シミュレーターの前には、 「地図で見る日本

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも

層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として各時間帯別