別紙1
論 文 審 査 の 要 旨
報告番号 甲 ・乙 第 3053 号 氏 名 岩崎 このみ
論文審査担当者
主査 教授 宮﨑 隆
副査 教授 中村 雅典
副査 教授 嶋根 俊和
(論文審査の要旨)
学位申請論文「Longitudinal follow-up of facial growth of patients with unilateral cleft lip and palate following modified Veau-Wardill-Kilner palatoplasty」について、上記の 主査 1 名、副査 2 名が個別に審査を行った。
本 研 究 は 当 チ ー ム に お い て プ ッ シ ュ バ ッ ク 口 蓋 形 成 術 含 む 全 治 療 を 終 了 し た 片 側 性 唇 顎 口 蓋裂患者(UCLP)の顎顔面咬合形態についての長期結果について非症候性 UCLP62 名を対象に 検討した。当チームでは口唇形成術(鬼塚法)、初回口蓋形成手術(プッシュバック法)、初回 骨 移 植 術 を 行 な っ て い る 。 評 価 は 、 Ⅰ 期 矯 正 診 断 時 (以 下 Phase1)、 Ⅱ 期 矯 正 診 断 時 (以 下 Phase2)、保定時(以下 Phase3)の 3 段階で行った。頭部 X 線規格写真を用いて、距離および角 度を計測し、顎顔面の前後・垂直・正中を評価 した。全時期で上顎の劣成長による下顎前突傾 向を示した。Phase3 では下顎の後方移動によって上下顎関係が改善、カモフラージュ治療が 行われていた。全時期で咬合平面は裂側に上方傾斜し、上下前歯と下顎骨正中は裂側に偏位し ていた。以上の結果から、複合的な長期治療を施行した当チームの最終予後は、顎顔貌形態は 下顎前突傾向と正中偏位が残存しており治療体系の抜本的な見直しが必要と考えられた。
本論文の審査において、副査の中村委員および嶋根委員から多くの質問があり、その一部と それらに対する回答を以下に示す。
中村 委員の質問 とそれらに 対する回答 :
1. これまでの症例での機能的異常に差はないのか。
(機能面で問題となるのは、発声時に咽頭弁が適切に閉鎖しないことによって空気が鼻に漏れ る鼻咽腔閉鎖機能不全(VPD)や鼻口蓋瘻孔による食物の鼻腔への流入である。VPD は、軟口 蓋が短いあるいは軟口蓋が動かないといった理由で起こる。原因は、軟口蓋の組織量の少なさ、
手術による瘢痕、軟口蓋を挙上する筋肉(口蓋帆挙筋)の動きの悪さ、その筋肉を動かす神経 の障害が挙げられる。Push back 法、Furlow 法では言語成績には有意な差は認められなかった。
一方、鼻口蓋瘻孔による障害には有意差を認めた。)
2. これまでの症例で見られる偏位を起こす原因は何か。
(上顎正中の偏位は、鼻上顎複合体の偏位が一因として考えられる。)
(主査が記載)
嶋根 委員の質問 とそれらに 対する回答 :
1. Furlow 法、Two flap 法の利点・欠点。手術方法の改善点はあるか。
(Furlow 法は、軟口蓋の口腔側と鼻腔側に作成した 2 つの Z 形成により口蓋の延長を図ると ともに、口腔側と鼻腔側の粘膜弁に筋を付着させ、それらを組み合わせることにより muscle sling を確実の形成する方法 である。利点として、硬口蓋への侵襲が少ないため、良好な顎発 育が期待される。一方欠点は、Z 形成では横方向への距離の短縮が生じることより、裂幅が広 い症例では一次閉鎖が困難となることがあり、減張切開が必要になることがある。また、口唇 口蓋裂で硬口蓋の閉鎖が必要な場合、通常鋤骨粘膜弁が用いられるが、口腔鼻腔瘻の発生頻度 が高い。
Two flap 法は、2 つの口蓋粘膜骨膜弁を 形成し、脆弱な部分を自己組織 (鼻粘膜の Z 形成等) で被覆する方法であり、口蓋後方へ移動する。利点は良好な言語成績、および良好な咬合関係 であり、広い裂型にも適応可能 である。一方、欠点は muscle-sling の形成が不十分になるこ とである。)
2. セ フ ァ ロ グ ラ ム の 現 存し た 症 例 を 抽 出 し た 場合 、 外 科 矯 正 の 割 合 が多 く な る こ と は 必 然 で あ り 、 適 切 な 治 療 方針 の 樹 立 の た め に 、 評価 は 重 要 で あ る 。 他 院で Ⅱ 期 治 療 を 行 っ た 患者さんをフォローするためにはどうすれば良いと考えるか。
(多施設共同研究を行う。昭和大学への通院が終わった患者さんに、定期的な通院のプロトコ ールを構築する。)
両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認した。
主査 宮﨑委員 の質問とそ れらに対す る回答:
1. 口唇口蓋裂は遺伝するのか。
(口唇口蓋裂の患者のうち 19%に家族歴がある。口蓋裂は他の裂型より発生率が 2 倍高い。さ らなる研究が必要とされている。)
2. 外科矯正前の治療方針決定はどのようにしているのか。
( 三 次 元 歯 列 画 像 と 顔 面 骨 格 画 像 の 統 合 に よ る 実 体 石 膏 モ デ ル を 用 い た 手 術 シ ミ ュ レ ー シ ョ ンを行っている)
主査の宮﨑委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張 をさらに確認するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。
以上の審査結果から、本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判断した。
(主査が記載)