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土 地 総 合 研 究 2011 年冬号 38

【特集 中古住宅流通活性化をめぐる法的諸問題】

全体紹介

わが国の住宅流通の7割以上は新築物件であ り、欧米と比べて中古住宅の流通が遅れている。

今後の低炭素社会、循環型社会構築の観点から、

むしろ中古物件を流通させ、より長期間にわたり 建物を使用するようなシステムを構築する必要が ある。中古住宅流通制度研究会(研究代表:明海 大学不動産学部小川清一郎教授)では中古住宅の 流通を阻害する様々な要因をいくつかの法的観点 から検討し、外国法との比較を通じて、中古住宅 流通の活性化を図る政策提言を検討した。具体的 な研究項目は、以下のとおりである。

中古住宅の流通を阻害する要因として、第一に、

不動産情報の不透明性がある。物権行為の独自 性・無因性を認めないわが国で、登記官以外にそ の有効性を審査する機関が存在しないため紛争が 生じる場合が多い。他方、ドイツでは、原因行為 についての有効性を審査する機関として公証人が 存在し、紛争の防止、契約当事者の啓発など重要 な役割を担っている。日本における不動産取引の 紛争防止についても、司法書士や公証人の役割に 期待すべきである(小川清一郎「ドイツの不動産 取引における公証人の役割」)。

第二の要因として、欠陥問題が生じた場合の救 済策の不備がある。中古住宅を購入し思わぬ欠陥 があった場合の救済策について、現行のシステム では綻びが目立つ。売主の瑕疵担保責任につき、

改正民法案における論議も大きな変化は期待でき ない。そこで、現在の保険システムが今後はより 重要になってくるが、特に一般消費者に対する周 知がまだ足りず、啓蒙活動が必要である。また、

売り手側の意識改革も積極的に呼びかける必要性 がある(浜島裕美「『中古住宅流通促進』の観点か ら見た、売主の瑕疵担保責任—現行法体制と改正民

法案の問題点と、今後の展望—」)。

第三の要因として、相続による分割が住宅の流 通を阻害していることを挙げることができる。不 動産を円滑に流通させるためには、相続人が当該 不動産に対して有する持分のみを譲り受けるので はなく、相続システム全体のなかで不動産を位置 づけ、流通させる必要がある。そのためには、生 前から不動産の維持管理のサービスを提供し、相 続発生前から相続対策をも含めた対策を講じ、相 続発生時には相続人と連携し不動産を有効に活用 するよう支援するシステムを構築する必要がある

(大杉麻美「中古住宅の流通活性化の視点からみ る相続財産~相続財産『共有』を手がかりに~」)。

第四の要因として、住宅税制の問題がある。こ れまで税制等の特別措置が新築中心に講じられて きたことも、相対的に新築住宅取引を促進させて きたと考えられる。そこで、中古住宅にかかる税 制を見直す必要があるが、その際、低炭素社会、

循環型社会構築の面からEU諸国のようにエネル ギー効率を重視した住宅の流通促進を考える必要 がある。わが国でも統一されたエネルギー効率に かかる認証制度を制度化するとともに、中古住宅 と新築住宅の中立性を阻害しない税によるインセ ンティブが必要である(柴由花「既存住宅にかか る規制的手法と経済的手法」)。

各論文は、財団法人不動産流通経営協会の研究 助成(平成 21 年度)により作成した報告書『中古 住宅流通活性化をめぐる法的諸問題』を土台にま とめたものである。論文掲載にあたり御配慮いた だいた財団法人不動産流通経営協会ならびに財団 法人土地総合研究所に深謝申し上げる。

中古住宅流通制度研究会代表 明海大学不動産学部教授 小川 清一郎

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