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第4章 日本語教育における「ほめ」と「謙遜」

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第4章  日本語教育における「ほめ」と「謙遜」

日本語教育における「ほめ」や「謙遜」の扱われ方、学習者の使用実態を分析し、日本 語教育における、或いは学習者の「ほめ」と「謙遜」の姿や意識などについて考えること にする。さらに、それらの問題点を踏まえ、本研究での成果を日本語の待遇コミュニケー ションの在り方の一例として、教育現場で効果的に示すことを試みることにしたい。

第1節  日本語教科書における「ほめ」と「謙遜」の傾向

第1項  対象とした教科書 

  まず、日本語教育の場で「ほめ」がどのように扱われているのかを、教科書を用いて調 査する。第2章で調査した談話例における実態と比較をするため、初級、中級教科書のう ち、文型や文法事項に偏らず、話す力や聞く力を伸ばすことにも重点が置かれている以下 の教科書を調査対象とした。特に会話文例等に日常談話の要素を盛り込むことが強調され たものもここに含まれている。

<初級>

・スリーエーネットワーク(2002)『みんなの日本語  初級Ⅰ、Ⅱ』(以下「みんな」)

・ 筑 波 ラ ン ゲ ー ジ グ ル ー プ (1992)『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE VOLUME TWO,THREE』凡人社(以下「SFJⅡ」、「SFJⅢ」)

・文化外国語専門学校(2003)『新文化初級日本語Ⅰ、Ⅱ』凡人社(以下「新文化」)

・岡野喜美子、長谷川ユリ、大塚純子、塩崎紀子、アン・松本・スチュアート(1994)

『TOTAL JAPANESE Conversation1』凡人社(以下「TJC」)

<中級>

・水谷信子(1993)『総合  日本語中級』凡人社(以下「総合」)

・名古屋大学総合言語センター日本語学科(1998)『現代日本語コース中級Ⅰ、Ⅱ』名 古屋大学出版会(以下「現代」)

(2)

・日米会話学院日本語研究所(1987)『日本語でビジネス会話  中級編』凡人社(以下

「ビジネス」)

・(参考)姫野昌子・伊東祐郎(2007)『日本語基礎B(’07)―コミュニケーションと異 文化理解―』放送大学教育振興会(以下「放送大学」)

まず、初級教科書について、「みんな」は、職場、家庭、学校、地域などで日本語による コミュニケーションを必要とする人を対象とし、「聞く」、「話す」が中心の構成とされてい る。

「SFJ」の目標は、日本で日本語母語話者と円滑なコミュニケーションができることで、

その構成は、NotesとDrillsの二分冊から成り、文法だけでなく会話に関して詳細な説明 がなされている。

「新文化」は、日本の大学や専門学校への進学を希望する、初めて日本語を学ぶ学習者 を対象とし、その目標は「第一に、文法を体系的に習得」し、「第二に、日本の生活で日々 直面する場面でコミュニケーションができるようにすること」となっている。テキストは 文型を現実的で自然な場面に組み込んでストーリーが構成され、「本文」、「文型」、「練習」

から成る。

「TJC」では、主に英語圏の大学生が対象で、「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバ ランスよく学ぶことを目標としている。その構成は「会話の本」と「読み書きの本」から 成り、「会話の本」では「自然な会話を重視し、口頭のコミュニケーション能力の養成」を 目指している。「生きた談話の中でどのような機能をもち、実際にどう運用されているかが 学習でき」、人間関係に留意した練習問題も出される。

次に中級教科書について、まず「総合」は、本文の後で、本文に関連する「自然な」会 話が続くことに特徴がある。

「現代」は、円滑なコミュニケーションを支える口頭表現能力を養成することに主眼が 置かれる。中級段階の話しことばの指導に重点を置き、日常会話から、「感謝する」などと いった会話の目的や、言語行動の種類別に章が立てられ、典型的な表現を文脈の中で練習 するようになっている。L.11のテーマには「ほめる・けんそんする」がある。

「ビジネス」は、日本企業で働いたりビジネス活動をする外国人が対象である。「自分の 意図が相手に的確に伝わるように表現すること」と、「言語行動をより効果的に達成するた

(3)

めの話の運び方、対応の仕方」を身に着けることが目標で、場面や状況と達成すべき言語 行動の目標によって課が構成されている(「依頼」、「予約」、「訪問」など)。

最後に、参考として挙げたのは、2007年度の放送大学のテキストである。日本語能力試 験3級終了レベルの学習者を対象にした第Ⅰ部と、日本人教師や上級の学習者を対象にし た第Ⅱ部から構成されており、「コミュニケーション能力と異文化理解能力の養成を図りつ つ、基本的な文法事項の復習と、日本の社会と文化の一端を紹介する」教材として位置づ けられている。各課は「出会いのあいさつ」、「別れのあいさつ」、「電話の終了」、「謝罪の 会話」、「贈答の会話」など機能場面別になっており、本文会話例のほか、異文化コミュニ ケーション理解に関して外国人にインタビューする形式の会話や、その課に関して説明が なされた「異文化メモ」なども特徴的と言える。「ほめやねぎらいの会話」は全15課の中 の13課目で扱われている。

第2項  初級教科書における「ほめ」

「みんな」では、「会話」、「練習」のいずれにおいても、全体を通じて「ほめ」が頻繁に 現れていた。対象別では、「外見」、「持ち物」、「才能・達成」、「性格・行動」、「恩恵」、「作 品・パフォーマンス」、「家族」と網羅しているし、方法についても、前半では「すてきで すね」(7課)、「すごいですね」(12,36課)といった直接的な評価であるものの、24課の

「すてきなかばんですね」以降、26 課などで「おもしろいデザインの靴ですね。」などと 修飾語の形での例も現われる。ちなみに、「おもしろいデザインの靴ですね」の後には「ど こで買ったんですか」といった「ほめ固め」もあり、さらにこの形式が「練習」にもある ことから、(本来は「ほめ」のスタイルの定着を目的としたものではないにせよ)結果的に 学習者にも受入れられたり身に付いたりするものと思われる。

配慮を要する場での例として、最終課の 50 課では、公の場での「すばらしいスピーチ でした」といった丁寧度の高い表現の例も見られた。 

また目上に対する例として、若い女性職員が初老の教員に向かって「(部屋を)整理する のが上手なんですね」(第38課、会話)というものもあった。相手の専門ではないにせよ、

目上への表現形式として、「上手」は「語の丁寧度」の点から不適切な例と言える。34 課 の「外見ほめ」の例文でも、「少し細くなりましたね。ダイエットしたんですか」があるが、

(4)

現形式としては、あまりに直接的な表現ではないだろうか。初級という、語彙や文型など の制約が多い中、致し方ない部分もあるが、指導の際には、文体的特徴に関して一言注意 すべきであろう。

  その他、「家族ほめ」に関する問題もあった。調査では人間関係に関わらず謙遜が多い傾 向を指摘したが、「みんな」で扱われた「家族ほめ」は、教育・指導的立場の目上から受け たものであるため、「そうですか。ありがとうございます」などと受入れている(2)。他に、

ペットの「ほめ」に対する下方修正の応答例(3)も示されているが、ペット以外での一般 的な話題としての「ほめ」が見られないため、「家族ほめ」の謙遜という特徴的な傾向が示 されにくいと言える。

  「SFJ」の「家族ほめ」は、相手の子供の写真を見て「あら、かわいいわね」に対して、

「はあ、どうも。」(第十課、Model Conversation「−客間で−」)と答えるやり取りで、

やはり謙遜は表れていなかった。店員が商品を薦める際に「とてもよくお似合いですよ」

と言い「ううん……。でも」と答える「外見ほめ」や、先行要素に「ほめられ主体」ネガ ティブ話題というFTAがある場合の「ほめ」による緩和の例が見られたが、恒常的上下関 係における目上への「ほめ」はなかった。

「新文化」では後半の23課以降において、「外見」、「恩恵」、「性格・行動」、「人」など の多様な対象が見られた。方法では、丁寧体を用いる相手に対して、「そのスーツすてきで すね。私もそんなのを着てみたいです」、「(贈られたネクタイについて)ああ、いい色です ね。前からこんなネクタイがほしいと思っていたんです。どうもありがとうございます。」

(共にp49,第23課、練習)など、「感情」も多く用いられていた。

目上への例については、次の二例が確認できた。(1)では、目上の専門に関わる対象に ついて、「ほめ主体事実」として、(2)は根拠の明白な相手側のパフォーマンスについて、

「ほめられ主体」を主体にするのではなく、「試合」が良かったと表現したり、「感情」な どによって「工夫」された表現が示されている(ゴシックは大野による)。

  (1)A:願書の書き方はわかりましたか。

        B:ええ。佐々木先生に詳しく教えていただいたのでよくわかりました。 

(「新文化」p107,第29課、練習)

  (2)(サッカー部の部室で)

        チン:先輩、今日の試合、いい試合でしたね。感動しました。

(5)

        先輩:うん、みんな、最後までよくがんばったよ。あ、そろそろみんなが来る時 間だけど、準備できた?  <以下省略>

(「新文化」p162,第36課、本文)

「TJC」では、11課で、相手の家族写真を見て「へえ、妹さんですか。かわいいですね。

森さん、兄弟は何人ですか。」と「ほめる」1例のみで、応答はその質問に答える形で談話 が展開していき、やはり謙遜傾向は示されていなかった。

いずれもコミュニケーションを重視した教科書ではあるが、「ほめ」という言語行動に限 定すれば、1章分で取り上げているものから、あまり扱われないものまで、かなり偏りが ある。

  とはいえ、全体的な特徴として、「持ち物」、「恩恵」をはじめとした瞬時に判断できる物 理的対象のほか、日本語の上達に関する「才能・達成ほめ」は多く示されていた。中でも、

「持ち物」は、物理的対象である上に、内面の対象と比べて「相手の本質」との関連が小 さいことから「ほめ」やすい対象であるが、初級でも早い段階から評価語「すてき」、「い い」、「似合っている」、「きれい」、「すごい」、「立派」などによる言い切りの形が多用され ていた。

「内面ほめ」の評価語に関しては、「丁寧度」という点において、目上に対する使用で 注意すべき例も見られた。応答との関連では、「家族ほめ」に対する謙遜、という特徴的な スタイルがいずれの教科書でも示されていなかった。一方で、初級であっても「ほめ」が 談話に組み込まれている例が多かった点は長所と言える。

第3項  中級教科書における「ほめ」

まず「総合」では、同一の「会話文」で、同僚が「弁当を作るために努力したこと」に ついて「へえ、大したもんだね。」と言ったり、弁当のできばえについて「でも、よくでき てるじゃないか」という例があったのみだった。

「現代」は、「ほめる・けんそんする」が1章として立てられており、扱われる形は非常 にバラエティーに富んでいた。「練習」で提示された対象も「持ち物」、「達成」、「性格・行 動」、「持ち物」、「作品」など多岐に亘り、次の例(3)、(4)のような目上に対する「ほ

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が提示されることにより、そういった方法が印象強くなるであろうし、(4)からは、FTA

(「依頼・要求」)に「ほめ」を組み合わせる方法や、その際に「すごく」や「と思う」等 で和らげる「工夫」も表されている。

(3)キム:小川さん、きょうの発表よくわかりました、わたしにも。

小川:そう、それはよかった。

キム:わたしなんかとてもあんなふうにはまとめられません。

小川:そんなことないよ。 

キム:いえ、本当に勉強になりました。

小川:そんなに言われるとてれちゃうなあ。

キム:あれだけたくさんデータを集めるのはたいへんだったでしょうね。

小川:いや、それほどでもないよ。

キム:そうですか。でも、たのむ時の表現ってたくさんあるもんなんですね。

小川:まあね。うん。      (「現代Ⅱ」p30,第11課<会話1>)

 

(4)すごくおもしろいお話だ。

[A…学生  B…Aの先輩]

      A:先輩、さっきなさった発表についてなんですが。

      B:うん、何。

      A:もう少しくわしくうかがってもいいですか。すごくおもしろいお話だと思 ったもんですから。

      1.わたしも勉強したい

      2.データをうまく使っていらっしゃる       3.分析の方法がおもしろい

      4.いい資料を集めていらっしゃる       5.新しい方向が示されている

(「現代Ⅱ」p44,第11課<練習2>)

「ビジネス」では、職場や仕事上関わりのある相手との会話が大半だが、後半は2ペー ジ以上に亘る長めの本文において、「ほめ」が挨拶の場や、FTA と組み合わせられる場合

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など様々な形で確認できた。上司の奥さんが作った料理に関する「ほめことば」も多様で、

「ほめ固め」の有り様が伺えた(4)

参考として、13課のテーマで「ほめやねぎらいの会話」が扱われている「放送大学」で は、各会話例は比較的短いものの、影響の大きい諸条件に関する説明や例文も多く、要点 が押さえられた内容となっている。「基本会話」の二つ目は、次に示すような目上への「持 ち物ほめ」であった。

(5)《会話2》部長が社員にネクタイをほめられて、喜んでいます。

      社員「今日の部長のネクタイ、すてきですね」

      部長「え、そうかなあ」

      社員「本当です。色もいいし、背広ともよく合っていますよ」

      部長「それはうれしいね。娘が選んでくれたんだよ」

(「放送大学」p133,第13課、基本会話)

  また、教員がモンゴル出身の学習者に、日本語の「ほめ」に関して尋ねる「インタビュ ー」では、目上へのほめ方が難しいこと、授業に関しては「よく教えてくださってありが とうございます」のような感謝の言葉にすること、謙遜の応答が多いことなどが述べられ ている。授業の「ほめ」は、多くの初級教科書で扱われていることや、「放送大学」でもあ えてこの問題が取り上げられていることからも、学習者にしばしば生じうる意図であり身 近な問題であるために問題意識が高い対象と言えるのかもしれない。また、「異文化メモ」

では、「目下の人が目上の人をほめること」は普通はせず、「どうでしたか」などと意見を 求められた場合、即ち本研究で言う「誘発」があった場合に初めて、感想や感謝の形式で 答えるべき、としている。ちなみに、ここで紹介された「感想」や「感謝」の形式は、「す ばらしかったです」、「大変勉強になりました」など、本研究で指摘した、評価語に関する

「工夫」に相当するものであり(5)、実態に即した説明だと言える。

この他、第Ⅱ部「日本語教師用」では、3課で扱う「別れのあいさつ」に関して、「相手 にいいことがあったときは『(本当に)よかった(です)ね』と共感を示すことが大切。こ の表現も覚えさせたい。」としており、日本語談話の特徴としての談話終了時の「ほめ」に ついて触れている。総じて、多角的な点から適切な解説がなされていると言えよう。

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中級で扱われる「ほめ」は、取り立てて扱われるか否かによっても、初級以上に教科書 による提示量に差があると言える。初級に比べて談話例は長くなり、語彙量も増えること から、「ほめ」の方法や「ほめ固め」などの後続要素が、実際の談話に近い適切な形になっ ている場合が多い。但し、初級に比べて「ほめ」が行われる人間関係や対象が多様化、或 いは複雑化するかと言えばそうでもなく、注意すべき目上への「ほめ」や、「家族ほめ」の 談話は極端に少ない。また、「ほめ」から始まる会話例が多いことから、後続要素はあって も、実際の談話で多い「ほめの導入」のための先行要素が連なったパターンや、FTAとの 関連までは理解しにくい。さらに、理解するという点に関して言えば、確かに教科書で示 されていれば学習者はそのスタイルを把握することはできようが、果たして、本文や練習 からどの程度まで、その傾向を読み取り意識化することができるのかといった点も問題と なろう。「放送大学」ではその点、的を射た説明があり、しかもそれが、教員と留学生のイ ンタビュー談話という身近な人間関係で行われていることからも、理解を深められる教材 の一つと考えられる。

以上から、学習者がどこまで理解できるかについてはここでは問題にしないことにして、

教科書に示された「ほめ」の有り様が、日本語における「ほめ」のあるべき姿としての判 断材料になるのであれば、多く提示されていた「持ち物」などの物理的対象や日本語の上 達に関する応答は表現しやすい一方で、目上への「ほめ」や非物理的対象に関する「ほめ」、

また「家族ほめ」の応答は「ほめ」にくく、或いは誤解を生じる確率も高くなることが予 測できる。傾向としての実態を示すだけでなく、選択する表現形式の文体的特徴などにも 留意すべきだといえる。

「家族」や非物理的な「内面」に関する「ほめ」や目上への「ほめ」は、そもそも、「持 ち物」のように直接的な表現では指摘しにくい上に、学習者の大きな手がかりの一つとな る教科書などで扱われる機会も少ない。「ほめ」で用いられる表現形式は「限定的」(熊取

谷1989)であり、かつ「えらい」のように間違えやすい表現もあることから、注意を要す

る表現のみを紹介するだけでも有効だと考えられる。

第4項  初級教科書における「謙遜」 

日本語教科書での「謙遜」がどのような形で示されているのかについて、前項までに倣 って確認することにしたい。「ほめ」の指摘との重複も出るが、「謙遜」の視点から捉える

(9)

ことによって、「ほめ」のさらなる把握ができるものと思われる。対象とした教科書は、初 級、中級共に「ほめ」と同じであるが、「謙遜」では、教科書毎ではなく特徴ごとにまとめ ることにする。

まず、初級教科書で扱われていた「謙遜」のパターンは、主に次の2種類であった。

①恩恵を与える際の「自発的謙遜」

  第2項の結果と関連するが、「自発的謙遜」については、「謙遜主体」が相手に物を贈っ たりご馳走したりする場合など、恩恵を与える際の例が確認できた。「新文化」では、(6)

の学習後、第30課の文型でも出されていた。以下、「謙遜」に当たる部分はゴチにする。

(6)(良子が先生宅を訪ねる)

良子:あのう、これは母が作ったお菓子なんです。お口に合わないかもしれません が、どうぞ召し上がってください。

奥さん:まあ、すみません。

先生:ありがとう。      (「新文化Ⅱ」p32,第21課 本文2)

②「才能・達成ほめ」への謙遜

  「SFJⅡ」では(7)で、テニスの部分に、バレーボール、ピアノ、歌、絵、日本語な どを入れる練習をさせ、「ほめ」の後に「謙遜」する流れを定着させようとしている。ここ では、才能、或いは長年の練習や努力による達成についての「ほめ」(以下、「才能・達成 ほめ」)を受けた場合は、否定することを示している。この「謙遜の仕方」について、「SFJ

Ⅲ」では、「日本人に日本語をほめられた時、たとえ実際に上手くても、お礼ではなく否定 的な応答をした方が賢明」との説明が英語でなされ、具体的な応答表現として、「いいえ。

そんなこと(ないですよ)。」、「いいえ。それほどでも(ないですよ)。」、「いいえ。まだ…

…(上手じゃないですよ)。」、「いいえ。とんでもありません。」が挙げられている。

(7)A:○○さんはテニスが上手ですね。

        B:いいえ、(まだ)下手です。    (「SFJⅡ」p95,Lesson13)

(10)

これに対して「みんな」では、(8)のように「才能・達成ほめ」への「受入れ+否定」

型が示され、後の課では「持ち物ほめ」への「受入れ+回避」型の練習が出されていた。

「謙遜」(否定)が受入れや回避などと組み合わされている点で、より複雑な応答法である。

また、指導・監督的立場にある目上の者が、目下に対して指導内容等について「ほめる」

のは「ほめ主体」が相手を認める行為でもあるために受入れやすくなる、という傾向を考 慮すれば、日本語の上達に関する「ほめ」も、「ほめられ主体」自身が努力してそれなりの 上達を実感しているのであれば、完全に否定するばかりではなく、(8)のように、一旦お 礼を言うという形は実態に即したスタイルではないかと考えられる。

  (8)日本語が上手になりましたね。

        …ありがとうございます。でも、まだまだです。

(「みんなⅠ」p154,第19課 例文)

第5項  中級教科書における「謙遜」 

① 恩惠を与える際の「自発的謙遜」

初級で「新文化」が扱っていたのと同様の用法が、相手に恩恵を与える際の「自発的謙 遜」である。「ビジネス」で、近所に引越し祝いを渡す場面(9)、上司にお中元(お歳暮)

を送る場面(10)や、直接訪問した際に手土産を渡す場面等、本文や練習で取り上げられ ていたのは、計6箇所であった。相手への恩恵となる贈答や、相手のために何か行動を起 こす際に「謙遜する」という言語行動や態度が、重要視されている。ビジネスで日本に関 わる者が、現実的に直面するであろう場面が一連の流れの中で示されている点は、初級に 比べて、「謙遜」の用い方などがより具体的に理解できると言える。ちなみに、(10)、(11)

など大半の場合は、練習冊で同表現を使用した談話練習ができるようになっていた。

(9)A:今度、上の405号室に越して来たジョンです。はじめまして。どうぞよろし くお願いします。あの、これはつまらない物ですが…

B:まあまあ、これはごていねいにありがとうございます。遠慮なくちょうだい いたします。日本語、お上手ですね。どちらからおみえになったんですか。

(「ビジネス」p33,第六課 類話5「引っ越し」)

(11)

 

(10)A:会社員  B:課長  Aは、いつもお世話になっている課長にお歳暮を贈る。

A:あの、課長、ちょっと。

B:何だい。

A:実は、昨日伊勢丹デパートから、ちょっとした物を送らせていただきました ので、お受け取り下さい。会社でお渡しするのもどうかと思いまして…。

B:何だい、いったい。改まって、そんなことしなくてもいいんだよ。

A:いえ、ほんの気持ちだけです。いつもいろいろお世話になっておりますので。

B:そうかい。それはありがとう。それじゃありがたくいただきます。

A:本当なら、お宅までごあいさつに行かなくてはいけないんですが…。

B:いやいや、気持ちだけで十分だよ。

A:は、どうも。どうか今後ともよろしくお願いいたします。

(「ビジネス」p58,第十課 類話3「お歳暮(お中元)」)

  (11)サイモンさんは課長の自宅に招待されて訪問する。

サイモン:今日はお招きいただいてありがとうございます。

課長婦人:いいえ、何もおかまいできませんが…。さあ、どうぞお上がりくださ い。

サイモン:ありがとうございます。では失礼します。あの、これ、つまらない物 ですが、どうぞ。

課長婦人:まあ。ごていねいに、どうもありがというございます。では、遠慮な くちょうだいします。でも、これからは、どうぞ何も持たずにいらっしゃって 下さいね。      (「ビジネス」p94〜95,第十六課 本文会話)

② 談話の流れの中での様々な「ほめ」への「謙遜」

「現代」や「ビジネス」では、「ほめ」の応答としての「謙遜」が複数例挙げられていた。

以下の例では、「謙遜」に先行する「ほめ」に波線を付している。

まず(12)は、初級教科書でも見られた「才能・達成ほめ」への謙遜である。学習者の 最も卑近な例として、ここでも日本語の能力についての「ほめ」が挙げられている。但し、

(12)

の流れ(この例では「謙遜固め」)までが記されており、より実際の談話を意識した例にな っている。

(12)小川:シルバさん、日本語うまくなったね。

シルバ:そんなことありません。まだまだです。

小川:そうかな。

シルバ:ゼミでも、発表してるうちはいいんですけど、議論になると、ついてけな いんです。 

小川:そう。

シルバ:それに、言葉の使い方もわからないことがあるし。

小川:ふうん。

(「現代Ⅱ」p31〜32,第11課「ほめる・けんそんする」<会話2>)

(13)、(15)は、弁当や発表などといった、「ほめられ主体」の「作品ほめ」での「謙 遜」である。いずれも「ほめ」が一度では終わらず、「謙遜」をしても再び「ほめ」られる 点が特徴的である。繰り返される「ほめ」に対して、(13)では、「大した」ことはないと いう意味の情報や、好ましい状態が継続しない可能性を提示することで、「ほめられ主体」

が、自身の評価をより低く認識していることを示そうとしている。(13)をもとに行う(14)

の練習例は、このような、「ほめ」による評価を下方修正するという方法の定着を図るもの であった。以上の例は、「ほめ」を全面的に直接否定するのではなく、否定か受入れかを断 言しない回避型を用いた応答法である。なお、一本線は、教科書で、入れかえ部分を示す ために引かれていたものである。

  (13)(同僚Bを昼食に誘うが、弁当を持ってきたと断られる。)

B:ゆうべの夕食のおかずを多めに作っておいて、けさは自動炊飯器でめしを炊い て、入れてきたんだ。

A:へえ、大したもんだね。

B:いや、やってみたら思ったより簡単だったよ。

A:でも、よくできてるじゃないか。

B:何日続くかわからんけど。

(13)

A:とにかく、じゃ、行ってくるよ。   (「総合」p30,レッスン2 会話文Ⅱ)

(14)基本型1

      A:大したもんですね。

B:いえ、やってみたら、思ったより、簡単でしたよ。

A:でも、よくできてるじゃありませんか。

入れかえ語句

1.楽でした  2.すぐできました  3.やさしかったです  4.時間がかかりま せんでした       

基本型2

A:いい(1)ネクタイですね。

B:いえ、じつは(2)安物なんですよ。

A:でも、とてもいいじゃありませんか。

  入れかえ語句

1.(1)かばん  (2)安物

2.(1)ハンドバッグ  (2)ブランドものじゃない 3.(1)時計  (2)だいぶ古い

4.(1)車  (2)中古 (「総合」p40,レッスン2 ディスコース練習2)

既出例であるが、(15)は、「ほめ主体」の「キム」が丁寧体を使用している一方、「小 川」は使用していない。留学生である「キム」の、日本語習得度の設定等も関係している かもしれないが、「キム」は、「小川」よりも同等、或いは目下の立場と考えられる。(13)

の相手は同僚であったが、(14)や(15)の例から、教科書では、目上以外に対しても「謙 遜」が行われることを示している。

(15)キム:小川さん、きょうの発表よくわかりました、わたしにも。

小川:そう、それはよかった。

キム:わたしなんかとてもあんなふうにはまとめられません。

(14)

キム:いえ、本当に勉強になりました。

小川:そんなに言われるとてれちゃうなあ。

キム:あれだけたくさんデータを集めるのはたいへんだったでしょうね。

小川:いや、それほどでもないよ。

キム:そうですか。でも、たのむ時の表現ってたくさんあるもんなんですね。

小川:まあね。うん。      (「現代Ⅱ」p30,第11課<会話1>)

目上や疎へのやりとりが談話の流れと共に示されている例もあった。(16)で否定され る「ほめ」は、二十五周年を迎えて盛大なパーティーができること、外資系でトップを争 うほど成功したことや、薬品以外にも進出し成功していることについての「才能・達成ほ め」である。「謙遜」の方法としては、「(他者の)おかげで」と表現して「ほめ」られる理 由を自分以外にシフトさせたり、「ほめ」られた後で「ほめ主体」をほめ返したり、「いえ いえ」、「ええ」、などで軽く否定(や肯定)をしてから、その逆の肯定的要素(否定的要素)

を述べたりと、様々であった。また、「ほめ」に繋がりうる質問(下線部)に対して謙遜に よる応答をする例もあり、このやりとり(【  】内に相当)は、練習冊でも談話練習が行え るようになっている。

(16)(スミスの会社の東京支店が二十五周年を迎えパーティーを開き、他社の野田部 長も招待された。)

野田:本日はご招待下さいましてありがとうございます。

スミス:いえ、お忙しい中をわざわざおいでいただきまして、ありがとうございま した。

野田:なかなか盛大なパーティーですね。東京に支店を出されてもう二十五年にな るんですか。

スミス:ええ、皆さまのおかげで、無事に二十五周年が迎えられました。

野田:いや、いや、これはやはり社員の方々の努力の成果ですよ。

(中略)

野田:外資系の会社では業界の一、二を争うシェアをもっておられるそうですね。

これだけ競争相手の多い中で堅実にやってこられて成功なさったんだから、大し たものですよ。

(15)

スミス:いえいえ。ところで、野田さんはうちの社長をご存知ですか。

野田:ええ、カナダに行った時、バーナーさんのご紹介で一度お目にかかったこと があります。研究肌の方のようですが、薬品以外の分野でもなかなかやってらっ しゃるようですね。

スミス:まあ、今は、どこも多角経営ですからね。

野田:ところで、どうですか。最近は。

スミス:ええ、おかげさまで。まあ、何とか、日本での仕事にも慣れてまいりまし た。

野田:それはけっこうです。

スミス:お宅の方はいかがですか。

野田:一時は円高の影響で貿易部門は打撃を受けて業績が落ちましたが、まあ、今 はおかげさまで徐々に持ち直してきております。

【スミス:それは何よりです。ところで部長はゴルフがお好きだと伺っておりますが、

よくおやりになるんですか。

野田:ええ、もっとも、下手の横好きというのでしょうか。腕の方は一向に上がら なくて。】 

スミス:いえ、ごけんそんを。一度お手合わせを願いたいですね。

(「ビジネス」p102〜103,第十七課 本文会話)

日本語教科書で提示される「謙遜」は、①物品や行動などによる恩恵を与える際の「自 発的謙遜」と、②「ほめ」の応答としての「受動的謙遜」の二種である。

初級では、①は、ほぼ固定した用い方で提示されており、②は、「才能・達成ほめ」に限 られ、「謙遜」との隣接ペアで例文が終わるものが中心であった。

中級では、初級の例と比較して、①ではその表現形式や状況が、②では「ほめ」の種類 や人間関係のバリエーションが、多様化していた。特に、「謙遜」は単純な否定で完結する のではなく、「シフト」や「ほめ返し」などを重ねる方法が談話展開の中で示されていた。

以上から、日本語教科書で学習者が学びうる特徴として、「才能・達成ほめ」では、完全 に「ほめ」を否定して言い切る形を含め、「謙遜」が現れやすいという点が挙げられる。ま た、「謙遜」が向けられる相手の典型例は目上であるものの、それ以外の場合もあること、

(16)

第2節  アンケート調査から見た日本語母語話者の「ほめ」の実態

一定の人間関係や場の下、一定の意図を実現する際の「ほめ」というように、条件を統 制することによる考察もまた、「ほめ」という言語行動を明らかにする上で必要となる。そ こで本稿では、学生が目上に対して「ほめ」を意図として持った場合を対象別に4種想定 し、各々の表現方法や表現形式を分析することにする。併せて日本語学習者にも同様の調 査を行い、両者をより顕著に特徴付けることを目的とし、その結果、教育への何らかの示 唆になればと考える。

第1項  考察の手順と調査方法

   

1.考察の手順・仮説 

  アンケート調査によって、学生が大学の教員に対して「ほめ」を意図した場合の表現を 記述させ、その表現方法と表現形式を分析する。母語話者と学習者には、表現の違いこそ あっても同一内容の調査を行うことで、各々の特徴の比較も行う。

  まず、アンケートの質問項目となる「ほめ」の対象については、日本語の「ほめ」の対 象が「外見」、「持ち物」、「才能・達成」、「性格・行動」、「人全体」、「作品」、「家族」等に分 けられることから、このうちの①「才能・達成」(本調査では特にこの中の「専門」)、②「持 ち物」、③「家族」、④「性格・行動」を扱うことにする。同じ人間関係でも、「ほめ」の対 象が異なれば表現の仕方も変わると考えるためである。

  次に分析の観点だが、表現方法については、形の上で誰について言及しているのかとい う点を第一の基準とする。目上を評価する、という難しい言語行動を行う中で、言及内容 の主体の設定は相手への配慮に大きく関わると考えるためである。例えば、「先生、すごい ですね」と直接的に評価するよりも、「私にはできません」と表現主体自身について、或い は「誰にもできません」と第三者について述べる方が、より間接的で配慮した表現を用い ていると考えられる。この種類や頻度は、学習者よりも母語話者の方が多彩に現れること が予測できる。

(17)

  なお、意図の実現とはいえ、実際の話しことばの調査ではないため、得られた回答は、

各被験者の認識の中で使用しうる表現と言わねばならない。また、学習者のレベルは、表 現意図を自分なりに実現することが可能となる中級以上とした。

  最後に、本稿における「学習者」の扱いであるが、今回の被験者は様々な言語文化を背 景に持つ、様々な国からの出身者が含まれるため、種々の考え方や使用が混在した結果が 現れるに過ぎず、一括りにすることが難しい点は否めない。しかしながら、母語話者とそ うではない者という対比で捉えた結果、明らかに異なっている点には注目する意義がある はずで、そのような目的から調査を行った。

2.アンケート調査の概要 

実施したアンケート調査の概要は次の通りである。

<母語話者>

・実施日  …2008年10月23日(木)、10月31日(金)

・対象者  …早稲田大学教育学部国語国文学科1〜4年生、文学研究科大学院生計106(男 43、女63)名

・実施授業…早稲田大学大学院文学研究科「日本語学講義(2)」(10/23,2限)、早稲田大 学教育学部国語国文学科「日本文法C」(同3限)、「日本文法D」(同4限)、「日本語 学演習ⅡC」(同5限)、「日本語学演習ⅠC」(10/31,4限)、「特殊演習 N」(同6限)

(いずれも早稲田大学教育学部松木正恵教授担当)

<学習者>

・ 実施日  …2007年7月4日(水)、2008年10月15日(水)、10月20日(月)

10月24日(金)

・対象者…早稲田大学日本語教育研究センター、関東学園大学、明治大学国際日本学部、

埼玉大学国際交流センター所属の留学生計113 (男60、女53)名

(出身別内訳は、中国43名、韓国22名、台湾11名、マレーシア6名、インド4名、ア メリカ、インドネシア、ドイツ、ベトナム各 3 名、イギリス、オーストラリア、タイ、

フランス各 2 名、エジプト、カザフスタン、シンガポール、スイス、ベルギー、香港、

モンゴルが各1名である。)

・実施授業…早稲田大学日本語教育研究センター「口頭表現4A」(7/4,3限)・「口頭表現

(18)

藤有紀講師担当)、明治大学国際日本学部「日本語ⅡA(読解)」(10/20,4 限)・「日本 語ⅡA(作文)」(同 5 限)(佐藤有紀講師担当)、埼玉大学国際交流センター「日本語

Ⅰ作文b」(10/24,1・2限)・「中級読解」(同3・4限)・「中上級文法」(同5・6限)

(大野担当)

  アンケートの内容(母語話者の場合)は下の通りで、学習者向けのものは、表現を幾ら か易しくしている。

*あなたが、教師(大学の若めの女性教員)に次のような内容・気持ちを伝えた

い場合、その教師に対してどのように言いますか。それぞれの場面を想像しながら、実 際にあなたが言うように記述してください(何も言えない場合があれば無理に答えず、

「言えない」と回答してください)。

①  今受けた先生の授業がとてもよかったことを伝えたい。

②  先生の持っている傘をほめたい。

③  先生に見せてもらった写真に、先生のご主人が写っていた。そのご主人のことを ほめたい。

④  見知らぬ老人に道をたずねられた先生が、老人の荷物を持ち道案内していた。そ の様子の一部始終を目撃した後で先生にばったり遭遇したため、先生にそのことに ついて言いたい。

 

  この調査を行う際の注意事項として、ここでの「ほめ」が必ずしも上から下への評価に 限らず、良いという好意的な気持ちを伝えたい意図がある場合のことだと説明した。

また、実際にどのように言うかを想像しながら回答することを、繰り返し強調した。こ こで想定する「先生」の例としては、調査を実施した大学等の授業における担当教員を挙 げた。親しい教員という漠然とした設定を避けるためで、厳密には、全ての被験者にとっ て親しさが同程度の教員をそれぞれ設定すべきところであるが、15人程度の語学のクラス で教員との直接的なやりとりも多い学習者にとっては、総じてその差は比較的少ないもの と見なした。母語話者にも基本的には授業の担当教員を想定させたが、学習者と同一の条 件である「若めの女性教員」(6)で他に親しく言葉を交わすことができる先生がいれば、そ

(19)

の先生とのやり取りを想像するよう指示した。具体的に何を「ほめる」かについては各自 の判断に任せた。細かな対象に関しても何らかの特徴が出る可能性があるためである。

最後に、言いにくい場合は、「言わない」と回答して構わないという点は、母語話者学習 者共に口頭でも伝えた。

   

第2項  調査結果

   

1.「ほめ」の方法 

目上に対して「ほめ」意図を実現させる際の方法は、言語表現上の配慮の表れのバリエ ーションとも見なせるが、「誰についての(誰を主語とした)言及なのか」という観点か ら、「ほめられ主体」、「ほめ主体」、それ以外の第三者(その他)に分け、第2章第4 節での分類を用いたところ、回答で確認できた「ほめ」の方法は以下の 12 種に分類する ことができた。 

   

≪相手への言及≫

(1)評価:「A(相手)はH(評価語)である」という直接的な評価の形式

(例「先生のご主人はやさしい」)。Hは主観的で人により判断が異なる可能性を持つ。

ただし、「と思う」が付いたり(「先生のご主人は優しいと思います」)、H が修飾語 となる場合(「優しいご主人ですね」)などはいくらか婉曲的になるため、その場合 は「和らげ」付き、と考えることにする。

(2)相手事実…「ほめられ主体事実」のことで、「A(相手)が〜した」という現実的で 客観的な事実を述べる。

「A(相手)が H(評価語)で〜した」もここに含める。この場合は評価語入り相 手事実と考える(例「先生はわかりやすく教えてくださった」)。評価語を言い切りの 形にしないために評価するという印象が弱められ、同じ語を用いても、「評価」(例「先 生が教えてくださったことはわかりやすかった」)より配慮があると言える。他の方法 を和らげた組み合わせは他に、「A(相手)がK(感情)で〜した」などがある(例「楽 しく教えてくださった」)。

≪「ほめ主体」自身についての言及≫

(20)

      同じ事実でも、「ほめ主体」に引き寄せた言及により、評価性が弱くなる。「私なん かでは、なかなか先生みたいにはできないです。」のような「謙遜」も、現実性や確実 性に関わらずここに分類した。「B(「ほめ主体」)がH(評価語)で〜した」も含める

(例「興味深く拝聴しました」)。この場合は、評価語入り「ほめ主体」事実となる。

(4)感情…「ほめ主体」の感情で、主にその時その場で感じた好悪や感動等。

(5)羨望…好ましい状態にある相手を羨ましく思うことを表明する方法。「いいなあ」、

「うらやましい」、「私もほしい」など。

(6)意志…感情の中でも特に、相手の影響を受け、発話時にある程度の実現の可能性を もって前向きに決意するもの(例「私も先生のような人間になれるよう頑張ります」)。

(7)感謝…「ありがとうございます」、「おかげさまで」など。

≪第三者についての言及≫

(8)第三者事実…「C(第三者、複数や一般の人なども含める)が〜した」

  「みんなも興味を持ちました」、「この傘は大流行しています」等、「ほめ主体」や相手 以外が主語になる場合で、対象が客観的に評価が大きいことを示す。

<その他>

(9)質問…「そのカサ、どこで買われましたか」等、対象に関する情報要求。

(10)ねぎらい…「お疲れ様です」、「大変だったでしょう」などが見られた。

(11)その他…「これからもよろしくお願いします」など愛顧を願う表現など。

(12)無言…あえて何も言わない。或いは言えない場合など。

 

  「ほめ」の談話においては、これらの方法が必ずしも単独で用いられるわけではなく、

相手とのやりとりの中で、種々の、或いは同じ方法が繰り返し使用される。今回の調査に おいても同様で、「無言」の場合を除き、一人の被験者が複数の方法を使っている回答が多 く見られた。そこで、言語表現による方法が使用された場合の方法の合計数(7)を、「ほめ」

の対象別に調査したところ、表37のような結果となった。

  「ほめ」の方法の総数や一人当たりの平均使用数は、予想に反していずれの対象でも学 習者が母語話者を大きく上回った。つまり、上記のどの対象を「ほめ」ようとする場合で も、学習者が母語話者よりも多くの方法を使っていたことになる。 

(21)

[表37:方法の対象別総数と平均]

      対象  ①授業   ②傘  ③夫  ④道案内  被験者  方法数  (専門)  (持ち物) (家族)  (性格・行動) 

総数  165 152 140 169

母語話者 

平均  1.56 1.43 1.33 1.59

総数  313 231 257 255

学習者 

平均  2.82 2.10 2.47 2.34

今回扱った具体的な対象物やアンケートでの提示の仕方等に起因する「ほめ」やすさや 制約が各対象で均一であるとは考えにくいため、対象間の比較を安易に行うことはできな いが、その点を承知の上で見ると、「ほめ」を実現させる方法の平均数が多い順は、母語話 者で「④道案内、①授業、②傘、③夫」となるのに対して、学習者では「①授業、③夫、

④道案内、②傘」となっていた。ポライトネスの観点から、より多くの方法を用いるのは より配慮を要する対象であるためと考えるならば、①「授業」は配慮を要し、②「傘」は さほどでもないという傾向は重なるものの、母語話者と学習者では対象によって必要な配 慮の大きさ、「ほめ」やすさの意識に違いがあり、学習者の方がその配慮に慎重なようであ る。

次に、方法別の全使用数の分類結果は、表38、表39の通りであった。以下、回答を引 用する場合には、(  )内に母語話者、学習者の別を「母」、「学」で、またデータベース上 の被験者の通し番号を数字で表し、続いて性別を、最後に学習者の場合は出身国を示すこ とにする。必要な場合には、学習者の日本語学習暦もその後に記す。

対象別にみると、まず①「授業(専門)」を「ほめる」場合は、学習者の方法数は平均 2.82と最も多いにもかかわらず、他の対象で使用者が圧倒的に多い「評価」が約3割に留 まり、代わりに、「「ほめ主体」事実」(例1)や「感情」(例2)、「感謝」(例3)やその 組み合わせ(例4、例5)など、「ほめ主体」側の言及として表現する工夫が顕著であっ た。学習者と比べると、母語話者の「ほめ主体」言及は多いとは言えない。

例1)「A先生、今日いろいろ勉強になりました。」(学111・女・カザフスタン)

例2)「先生、今日の授業とても感動しました。」(学70・女・韓国)

(22)

例3)「先生、たくさん面白くて大切な文法や言葉を教えて、どうもありがとうございま した。」(学2・男・フランス)

例4)「先生、いつも授業をいただいてありがとうございます。大変いい勉強になります。

先生のおかげで、日本語が話せるようになりました。ありがとうございます。」(学 19・男・ドイツ)

例5)「先生、今日はありがとうございました。すごく楽しかったです。こういう内容が すごく面白くて、本当に楽しみながら大変勉強にもなりました。来週も先生の授業 を楽しみにしています。」(学53・女・中国)

 

例6)「今日の授業スゲー面白かったっすよ。」(母1・男)

例7)「先生、今日の授業とてもおもしろかったです。すごく興味が持てました。」(母 20・女)

[表38:母語話者の「ほめ」の方法]

第三者 につい ての言

和らげ 付*1

①授業 105 16 2 24 16 0 3 14 0 1 0 0 4  (専門) 64% [15%] 1% 15% 10% − 2% 8% − 1% − − 4%

②傘 109 26 6 4 2 6 1 0 2 22 0 0 3  (持ち物) 72% [24%] 4% 3% 1% 4% 1% − 1% 14% − − 3%

③夫 115 75 1 0 1 11 1 0 0 11 0 0 11  (家族) 82% [65%] 1% − 1% 8% 1% − − 8% − − 10%

④道案内 44 11 43 37 12 0 17 0 4 11 1 0 27

(性格行動) 26% [25%] 25% 22% 7% − 10% − 2% 7% 1% − 25% 169 106 152 106 140 105 その

165 106 無言

*2*3

有効 回答 者数 感謝 第三者

事実 質問 ねぎ らい 相手への言及 ほめ主体についての言及 その他

評価 相手 事実

ほめ 主体 事実

感情 羨望 意志

*1「和らげ付」とは「と思う」等の和らげ表現が付加されたものと、評価語で言い切らない形のものであ る。実数は「評価」全体の内数を、[  ]内の比率は、評価使用全体に占める和らげ付加の比率を表して いる。表3の他の方法についても同じ。

*2組合せができない「無言」だけは、有効回答者数に占める比率で表している。

*3各対象の「ほめ」の、「無言」を除いた11種の方法の使用者合計を表している。

(23)

[表39:学習者の「ほめ」の方法]

和らげ

和ら げ付

 事実 和ら げ付

事実 和ら げ付

①授業 102 19 17 73 3 37 0 7 63 5 1 3 5 0  (専門) 33% [19%] 5% 23% [4%] 12% 2% 20% 2% 0% 1% 2%

②傘 169 29 10 1 5 4 5 4 0 4 1 29 0 1 2  (持ち物) 73% [17%] 4% [10%] 2% 2% 2% 2% 2% [25%] 13% 0% 2%

③夫 186 67 12 1 2 5 14 1 4 3 2 30 0 0 0  (家族) 72% [36%] 5% [8%] 1% 2% 5% 0% 2% 1% [67%] 12%

④道案内 107 35 42 48 25 0 19 1 9 0 4 0 3 (性格行動) 42% [33%] 16% 19% 10% 7% 0% 4% 2% 3%

有効 回答 者数

111 110

質問 ねぎ らい

その

無言 感情 羨望 意志 感謝

ほめ主体についての言及 その他

相手への言及 第三者につ

いての言及  第三者  ほめ主体

評価 相手事実

313 231 257 255

104 109

②「傘(持ち物)」では、母語話者、学習者の傾向がほぼ同じであった。直接的な方法で ある「評価」が全体の7割を占め、「和らげ」付加率も 2 割前後に留まる点から、さほど 配慮を要しない対象であるといった被験者の認識が伺える。相手への質問が13〜14%ある のは他の対象と比べても多い方であるが、その大半が、例9や例 10 の波線部(大野によ る)のように購入した場所を尋ねるものであった。

例8)「先生のかさはきれいですね。とても似合いますね。」(学20・男・台湾)

例9)「あの、先生すみません。先生のかさは可愛いですよね。どこで買いましたか。」

(学21・男・スイス)

例10)先生!持っていらっしゃるカサほんとうにカワイイですね。今着ていらっしゃる

服ともすごく似合うし、柄もカワイイです!どこで買いました!? (学75・女・韓国)

例11)「先生の傘、素敵ですね。」(母43・男)

例 12)「そのカサ、良いですね〜。私ビニールがさなんで、こういうおしゃれなの欲し

いなあ。」(母57・女)

③「夫(家族)」も、母語話者では方法数が最も少なく、また母語話者でも学習者でも「評 価」の比率が高いことから「ほめ」やすい対象だと言える。ただし、この場合は、判断材

(24)

う点も大きい。②「傘」の場合と異なる点として、特に母語話者では「評価」が「和らげ 付」となっていたものが65%と圧倒的に多かった点にある。例16では「優しそうな方」

と評価語を修飾語にすることで言い切りの形にせず、さらに「思います」を加えているこ と、また例17では、「独り言」として表現することで「相手側の物事を評価している」と いう印象を薄れさせている。

例13)「ええ〜、先生の未(ママ)ですか?びっくりしたぁ!Brad Pittと間違いました よ。かっこいい。先生と似合うよ!うらやましいなぁ〜。」(学5・男・韓国)

例 14)「あのスーツ着ている人は先生のご主人ですか。先生はきれいで、ご主人はかっ

こいいで、二人は本当に似合いますよね。」(学81・女・香港)

例 15)「A先生、ご主人がかっこういいですね。優しそうですし〜幸せですね〜。」(学

102・女・中国)

例16)「先生のご主人優しそうな方ですね。とってもお似合いだと思います。」(母100・

女)

例 17)「(笑いながら)頼れそうな方だなあ(→思ったことをそのまま独り言にする)」

(母105・男)

さらに母語話者には、「何も言えない」と答えた者が11名いた。言語表現上の工夫をす るのではなく、そもそも目上の評価に繋がるような表現自体を控えることは大きな配慮で ある。母語話者では、「和らげ付」や「無言」など、方法数のみからは判断できないような 配慮が多く表れていた。

④「道案内(性格・行動)」は、母語話者では最も方法が多様であり、他の対象と比較し ても「評価」は26%と格段に少なかった。「無言」も26名いたが、学習者ではわずか3名 であった。

例18)「先生は本当にマザーテレサのようにお優しいですね。」(学6・男・アメリカ)

例19)「先生はすごく思いやりがありますね。私たちの見習うべき手本です!」(学47・

女・中国)

(25)

例 20)「先生、さっき大学の近くを歩いていた時通りかかった老人に手伝ってあげたこ とを見ました。先生、本当にやさしいですね。」(学104・女・香港)

例 21)「さっき先生がおじいさん助けてるの見ましたよー。今時そんな親切な人いない

からびっくりしました。」(母21・女)

例22)「先程、人助けをしていらしゃいましたよね。私も先生を見ならいたいです。」(母 29・女)

例 23)「先程、たまたま見たんですが、先生、おばあさんの道案内をされていましたよ

ね。私だったら、指で方向を示して終わりにしてしまうのに、荷物を持って案内な さってて…。」(母93・女)

以上から、学習者は多くのストラテジーを用いることによって配慮を表そうとし、母語 話者は表現こそ少なくとも、内容に応じたストラテジーを選択したり、「和らげ」によって その評価性を調整したり、時には指摘しないことこそが最も適切で配慮ある方法だと考え る被験者も多いようであった。

 

2.評価語使用のバリエーション 

目上に対しても、「評価」による「ほめ」は被験者や対象を問わず最頻出の方法であった が、同じ評価語を用いて表現する方法には、(1)「A(相手)がH(評価語)である」とい う直接的な「評価」以外に、(2)「と思います」、「だなあ」などの「和らげ表現」を加えた もの、(3)評価語を修飾語化、名詞化して言い切りを避けるもの、さらには、(4)「A が H で〜した」(「相手事実」など)のように見かけ上は他の方法とする場合があった。形式上、

(1)に比べて(2)や(3)、また(4)がさらに評価性が弱まるものと考えられるが、その使用は表 40のようであった。

  (2)のような「和らげ表現」付加は形式の上でも単純なため、学習者が行いやすいのか、

母語話者よりも比率が高かった。但し全体的には、母語話者の方が(1)の言い切りが少ない 傾向にあり、「ほめ意図」を確実に伝えながらも評価性を和らげられる形として好まれてい

たのは、(3)の修飾語化や名詞化による言い切りの回避であった。この傾向は、学習者と比

較しても顕著であると言える。

(26)

[表40:評価語使用のバリエーション]

   

(1)評価語のみ の言い切り 

(2)評価語+

和らげ表現 

(3)言い切りで ない評価語 

(4)評価語を付加 した他の方法 

計 

245  20  108  14  387 

母語話者 

63.3%  5.2%  27.9%  3.6%  100% 

414  55  95  25  589 

学習者 

70.3%  9.3%  16.1%  4.2%  100% 

3.「ほめ」の表現形式 

  配慮という点から「ほめ」の方法を述べる際、どのような表現形式を用いるのか、とい った点も見逃せない。そこで、それぞれの対象で使用された形式を挙げ、検証することに する。以下では、母語話者、学習者で見られた表現を多い順に列挙し、(  )内にその使用 数(8)を示す。また、母語話者で用いられた形式のうち、学習者には一人も使用されてい なかった語には下線を付した。同様に学習者の場合も、下線で特徴的な語であるとわかる ようにした。相手を不快にさせうる不適切な表現と判断できる語には、各語の前に×を付 けた。

①「授業(専門)ほめ」の形式

・母語話者…面白い/面白かった(37)、分かりやすい/分かりやすかった(26)、*いい/よ かった(23)、ためになる/なった(13)、ありがとう(14)、興味深い(がわい た)(9)、楽しい/楽しめる(8)、素晴らしい(4)、好き(4)、勉強にな る/なった(4)、有意義(2)

・学習者  …ありがとう(50)、いい/よかった(31)、面白い/面白かった(31)、分かりや すい/分かりやすかった(20)、勉強になる/なった(20)、楽しい/楽しめる(15)、

理解できる/理解しやすい(10)、おかげ(8)、好き(8)、素晴らしい(8)、

役に立つ/立った(7)、興味深い(がわいた)(6)、お疲れ様(3)、関心(2)、

詳しい(2)、解ける(2)、簡単(2)、(1例→いきいき、活気、)

(27)

  母語話者では「面白い」の使用が最多であった。「興味深い」という意義を持つことから 本稿では評価語として扱っているが、感情的な意義が評価性を和らげることで好まれるの だろうか。「いい、良かった」に関しては、「先生、今の授業すごくよかったです。」(母26・

女)のような不適切な使い方が15名に見られた。

学習者で、感謝の「ありがとう」、「(先生の)おかげ」が非常に多かったのは、方法の結 果とも一致する。母語話者に多かった「ためになった」はゼロであることからも、紹介し てもよい語だと考えられる。使用された語彙は、母語話者にないものが多く、その観点や 形式も多岐に亘ると言える。

この他、「すごく」、「とても」等の強調語を少なくとも1回以上使用していた被験者が、

母語話者で77名、学習者で 82名と共にかなりの割合で確認できた。強調語の使用とは、

評価の肯定的な意味合いを強調させることによる配慮であったが、目上の専門を「ほめる」

場合は、語レベルでの配慮が盛んに行われると言えよう。

②「傘(持ち物)ほめ」の形式

・母語話者…素敵(43)、いい(26)、かわいい(17)、おしゃれ(13)、似合う(5)、き れい(4)、センスの良さ/センスがいい(3)、ぴったり(2)、大人(1)

・学習者  …きれい(39)、かわいい(25)、素敵(23)、似合う(23)、いい(12)、おし ゃれ(6)、さすが(3)、かっこいい(3)、持ちやすい(3)、大きい(3)、

相変わらず(2)、合う(2)、上品(2)、流行/はやっている(2)、ふさわし い(2)、(以下1例→明るい、大人気、セレブ、独特、便利、立派)

  広い対象に用いることができ、かつ待遇度が高い「素敵」の使用が、母語話者で特に多 かった。母語話者で他に 2 桁数用いられたのは、「いい」、「かわいい」、「おしゃれ」など 学習者も用いる語で、度数3以上の語は7語と非常に限定的だった。一方で、学習者は 3 人以下にしか用いられない語が多く、それぞれが「ほめ」うる観点からの、バラエティー に富んだ語彙であった。

  強調語については、母語話者は19名と少なく、学習者は43名であった。母語話者は、

他の対象と比べても、ありきたりの無難な語で「ほめ」、強調語による配慮もさほど必要な い対象として認識する傾向にある。

(28)

③「夫(家族)ほめ」の形式

・母語話者…優しい/優しそう(31)、かっこいい(27)、素敵(23)、[先生と]お似合い(10)、

羨ましい(7)、ダンディー(6)、いい(6)、仲がよさそう(3)、イケメン(2)、

幸せそう(2)、(以下1例→家庭的、渋め、背が高い、ハンサム、真面目、

立派)

・学習者  …かっこいい(38)、優しい/優しそう(23)、幸せ/幸せそう(21)、素敵(18)、

いい(13)(頭、性格がいいも含める)、羨ましい(10)、ハンサム(8)、立 派(7)、[先生と]似合う(6)、背が高い(5)、[俳優/モデル]みたい/に似てい る(4)、イケメン(2)、きれい(2)、知識/学識がある(2)(以下1例→男ら しい、穏やか、家庭的、公務員、しっかり、社長、紳士、細やか、強そう、

釣り合う、元気、)

  ②と同じく、母語話者では多用される語が少なく、強調語を付加した者も 14 名であっ た。学習者では「幸せそう」の多用が特徴的で、「俳優」や「社長」、「紳士」など、好まし い対象を挙げる例が見られた。強調語は 37 名が使用しており、学習者の方がより強く、

具体的に「ほめ」ようとする者が多いようである。

④「道案内(性格行動)ほめ」の形式

・母語話者…見習う(12)、親切(11)、優しい(9)、さすが(7)、すごい(6)、尊敬(6)、

なかなか(できない)(3)、×感心した(2)、素晴らしい(2)、びっくり(2)、

(以下1語→温かい、×えらい、感動した、見本、マメ)

・学習者  …優しい(50)、親切(13)、感動した(13)、さすが(9)、×えらい(9)、見 本/手本/模範(8)、見習う(4)、尊敬(4)、素晴らしい(6)、すごい(3)、

立派(3)、思いやりがある(2)、(以下 1 語→×感心した、温かい、×気前 のよい、なかなか(できない)、マザーテレサのよう) 

強調語は母語話者では7名と少ない一方で、学習者は 47 名とここでも多く見られた。

学習者では9名が「えらい」を使用していたため、注意を促す必要がある。ただし、母語 話者の回答の中にも、「えらい」や「感心した」のような目上が用いる評価形式が確認でき た。

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