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宿泊施設の事業性に影響を及ぼす立地の構成要因

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

宿泊施設の事業性に影響を及ぼす立地の構成要因

阿比留, 大吉

https://doi.org/10.15017/4060176

出版情報:九州大学, 2019, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

宿泊施設の事業性に影響を及ぼす立地の構成要因

阿比留 大吉

The Location factors affecting a business potential of accommodation facilities

Daikichi Abiru

2020 年 3 月

(3)
(4)

 本論文は ,2013 年以降に急増する訪日外国人観光客への宿泊施設の供給不足に対応するた め , 各地で急増しているホテルの立地分析手法の発展途上性に着目し , 事例研究からホテル 立地選定手法を導出することを試みた . 序章では本論の概要と方針について述べた .

 福岡県福岡市と愛知県名古屋市で営業を行うホテル建築を対象として , 事例分析から帰納 法的アプローチによりホテル立地の傾向を明らかにする . 収容人数の総量 , 平均収容人数 , 客室数の総量 , 平均客室数 , 収容人数 , 客室数 , 平均価格 , 価格上昇率という 8 つをホテル の事業性に関する項目とし , これらの事業性に立地の構成要因が及ぼす量的影響を重回帰分 析により分析した . 立地の構成要因については , 車移動圏 , 徒歩移動圏 , 敷地 , アクセスと いう 4 つの視点を導入する .

 第 1 章 先行研究レビューでは , 立地論や小売業における立地論 , ホテル立地研究の概説 を行った . ホテル立地については様々な研究がされてきたが , ホテル立地に関する分析手法 は立地論の系譜では研究されていないようである . ホテルに特化した立地に関して , 車移動 圏 , 徒歩移動圏 , 敷地 , アクセスという 4 つの視点を組み合わせるところに独自性がある .

宿泊施設の事業性に影響を及ぼす立地の構成要因

阿比留 大吉

The Location factors affecting a business potential of accommodation facilities

Ⅰ部 - 序論

キーワード : 立地論 , ホテル , 事業性

 第 2 章は , 車移動圏の人口動態や経済活動とホテルの事業性との関係について調査分析を 行った . 最寄 IC が所属する区や学区内の流通や人口などの情報を取得し , 重回帰分析を行っ た . 調査結果から , 区別自動車数が小さく , 区別事業所数が大きいほど宿泊供給量が大きく なる一方で , 平均通過台数が大きいほど , 施設あたりのキャパシティは大きくなる . そして 区別事業所数が大きいほど施設あたりの客室数が大きくなることが明らかになった .

第 3 章は , 徒歩移動圏の人口動態や経済活動とホテルの事業性との関係について調査分析を 行った . 最寄駅が所属する 500m メッシュ圏内の流通や人口動態などの情報を取得し , 重回 帰分析を行った . 調査結果から , 居住エリアより商業エリアの方が宿泊供給量が大きくなる 一方で , 人口が小さく , 全産業従業者数が大きいほど施設あたりの収容能力が大きいことが 明らかになった .

Ⅱ部 - 本論

(5)

第 4 章は , 敷地とホテルの事業性との関係について調査分析を行った . 敷地面積や路線価な どの敷地に関する情報を取得し , 重回帰分析を行った . 調査結果から敷地面積が大きく容積 率が大きい立地が収容人数 , 客室数ともに大きくなると言える . 価格について , 敷地面積が 大きいほど高くなり , 路線価が大きいほど価格上昇率は低くなることが明らかになった .

第 5 章は , アクセスとホテルの事業性との関係について調査分析を行った . ホテルから主要 交通拠点や主要観光施設との距離 , 他の都市からの結節点となる交通拠点との距離を取得 し , 重回帰分析を行った . 調査結果から , 最寄観光施設に近いほどが客室数を確保できると 言える . 価格は , 海や駅近くは高く設定できるが , 海や観光地や新幹線駅の近くでは需給に よって価格変動が大きくなることが明らかになった .

第 6 章では , ホテル立地の構成要因について , 本論で調査分析を行った 15 の重回帰式を立 地の構成 , 各章の変数を足し合わせた 17 つを立地の構成要因とし総括した . これまでの調 査分析をもとに , 経営方針から立地を選択する手法を 3 つ提示した .A) 収益を最大化させる 選択手法 ,B) 立地的リスクを最小化させる選択手法 ,C) 客室タイプ指向を判断する手法につ いて車移動圏 ( 区 , 学区 ) の選択 , 徒歩移動圏 ( 駅 ) の選択 , 敷地の選択 , アクセスの選択 という 4 つの選択における手法から立地選択手法を提案した .

第7章は , 研究の目的を再掲し , 本論の総括を行った . 車移動圏と徒歩移動圏の2つの広 域には , 共通項と差異が存在する . 流通量 (IC での車 , 駅の乗降車 ) が大きく , 昼間人口 ( 事 務所数 , 昼間人口 ) が大きく , 世帯数 ( 世帯数 , 人口総数 ) が少ないとその領域でのホテル の数は増える . 車移動圏では , 主要観光地との合計距離が大きくなる郊外エリアで平均収容 人数が大きくなる一方で , 徒歩移動圏では昼間人口が大きく , 人口総数が小さく , ホテルか ら駅までの距離が近いほど平均収容人数が大きくなる . 敷地とアクセスについては , 最寄観 光施設の近く , 敷地面積や容積率が大きい敷地では収容能力が高くなり , 最寄駅の近く , 敷 地面積や容積率が大きい敷地で高単価になる . 港の近く , 郊外立地 ( 路線価が低い敷地 ), 商業地域の中心部では週末の需要が高くなり , 新幹線駅の周辺 , 敷地面積と容積率が低い立 地では一週間の需要が安定する .

 本研究により , ホテルにおける立地特性と , 分析結果を応用した新規立地における立地選 定手法を提案した . 複数の指標により立地を複合的に評価したことで経営戦略に基づく立地 選定手法が導出可能となった . 一方で , 都市交通インフラの経年変化や開業年が考慮されて いないこと , 個別の収益についての言及ができないことが今後の研究課題である .

Ⅲ部 - 結論

(6)

序章

1.1. 先行研究の調査目的と調査方法 1.2. 立地論

 1.2.1. 農業立地論 (Johann,1826)  1.2.2. 工業立地論 (Johann,1826)  1.2.3. 中心地理論 (Walter,1993) 1.3. 小売業における立地論

 1.3.1. チェックリスト法 (Nelson,1958)  1.3.2. Huff モデル (Huff,1964)

 1.3.3. 類比法 (Applebaum,1964)  1.3.4. 重回帰分析 (Davies,1975) 1.4. ホテル立地に関する研究

 1.4.1. 快楽的価格設定方式を適用した台北のホテル客室分析  (Chen,C.F.,& Rothschild,R.,2010)

先行研究レビュー 第 1 章

1. 研究の背景 2. 研究の課題と目的 3. 研究対象の選定  3.1. 都市の選定

 3.2. 宿泊施設の予備調査  3.3. 調査対象ホテルリスト  3.4. ホテルの事業性に関する項目 4. 研究方法

 4.1. 研究アプローチ

 4.2.車移動圏における立地調査分析  4.3.徒歩移動圏における立地調査分析  4.4.敷地における立地調査分析

 4.5.アクセスにおける立地調査分析 5. 研究の意義

6. 用語の定義 7. 本研究の構成

22 22 22 23 24 24 25 25 26 26 27 27 2 4 5 5 5 7 7 9 10 12 12 13 13 13 14 17

(7)

2.1. はじめに  2.1.1 背景と目的   2.1.2. 車移動圏の定義   2.1.3. 主要観光施設について 2.2. 調査分析方法

 2.2.1 調査分析対象  2.2.2. 調査

  2.2.3. 分析の概要 2.3. 調査結果 2.4. 考察 2.5. 本章の結論

第 2 章  車移動圏における立地調査分析

3.1. はじめに  3.1.1 背景と目的

  3.1.2. 徒歩移動圏内の定義 3.2. 調査分析方法

 3.2.1 調査分析対象  3.2.2. 調査

  3.2.3. 分析の概要 3.3. 調査結果 3.4. 考察 3.5. 本章の結論

第 3 章  徒歩移動圏における立地調査分析

  1.4.2. 海岸の風景と宿泊施設の快楽的価格 (Jacqueline Hamilton,2007)  1.4.3. 観光都市のホテル立地:マドリード 1936‒1998(Ainhoa Urtasun   &IsabelGutiérrez,2006)

 1.4.4. ホテルの立地展開と稼働率 ( 鶴田 ,2000)

 1.4.5. 仙台市における宿泊機能の立地特性 ( 松村 ,1996)

 1.4.6. 宿泊費用に対する労働人口と施設規模の影響とその地域的差異に関する考察  ( 高橋 ,2016)

 1.4.7. 都市における宿泊施設の立地と推移(石澤 ,1991)

1.5. まとめと本研究の独自性

目 次

56 56 56 57 57 57 58 62 68 69 36 36 36 37 38 38 39 41 46 51 52 28 28

28 29 29

30 30

(8)

4.1. はじめに  4.1.1 背景と目的

 4.1.2. 主要観光施設について 4.2. 調査分析方法

 4.2.1 調査分析対象  4.2.2. 調査

4.2.3. 分析の概要 4.3. 調査結果 4.4. 考察 4.5. 本章の結論

第 5 章 アクセスによる立地調査分析

5.1. はじめに  5.1.1 背景と目的  5.1.2. 地価の推移 5.2. 調査分析方法  5.2.1 調査分析対象  5.2.2. 調査

  5.2.3. 分析の概要 5.3. 調査結果 5.4. 考察 5.5. 本章の結論

第 4 章 敷地による立地調査分析

第 6 章 ホテルの事業性に影響を及ぼす立地の構成要因と     立地選定手法の提案

6.1. ホテルの事業性に影響を及ぼす立地の構成要因 6.2. 立地選定手法の提案

98 102

86 86 86 87 87 87 88 91 95 96 72 72 73 74 74 74 75 78 83 84

(9)

結 論

7.1. 研究の目的 7.2. 本論の総括

7.3. フォーカスイン・アウト法 7.4. 今後の展望

参考文献

謝辞

付録

第 7 章

目 次

112 122 114 116

117

121

123

(10)

第Ⅰ部

序 論

(11)
(12)

1. 研究の背景

2. 研究の課題と目的

3. 研究対象の選定  3.1. 都市の選定

 3.2. 宿泊施設の予備調査  3.3. 調査対象ホテルリスト  3.4. ホテルの事業性に関する項目

4. 研究方法

 4.1. 研究アプローチ

 4.2.車移動圏における立地調査分析  4.3.徒歩移動圏における立地調査分析  4.4.敷地における立地調査分析

 4.5.アクセスにおける立地調査分析

5. 研究の意義

6. 用語の定義

7. 本研究の構成

2

4

5 5 5 7 7

9 10 12 12 13 13

13

14

17

(13)

1. 研究の背景

 2020 年 , 東京オリンピックが開催され , その後は国内で統合型リゾートの設置が予定され ている .

平成 29 年 3 月には観光立国推進基本計画が閣議決定されるなど近年では観光に関する政策 が複数実施されている .

 観光立国推進基本計画によると , 平成 27 年度には 20.4 兆円の国内旅行消費額を令和 2 年 には 21 兆円の規模とすることを目標としており , 平成 27 年度に 1974 万人であった訪日外国 人旅行者数を 4000 万人とすることを目標としている( 注 1).

 平成 30 年版観光白書によれば , 訪日外国人旅行客は年々増加しており 2018 年において 3,119 万人( 注 2)となった .( 図 1) 

序章

 2017 年度の日本人国内延べ旅行者数は 6 億 4751 万人となり , 前年度比では 1.0% 増加して いる .2014 年度はやや減少したが ,2015 年度より増加し続けている( 注 3). このように日本の 観光業はまだ成長の過程にある .

 一方で , 日本経済研究所の調査によると ,2030 年には出張市場は約 2.8 兆円 , 比率にして 2015 年から 15% 縮減しうる . 縮小幅の大きいパック・団体旅行参加市場では ,22% の減少が予 想され , 出張団体旅行による宿泊市場についても 19% の減少が予想される( 注 4). つまり近年 の宿泊施設の利用形態は , 出張旅行の割合が減少し , 観光旅行が増加している状況とも言う ことができる .

 旅行業の成長に伴い宿泊市場も影響を受け , 日本国内のホテル・旅館等における延べ宿泊 者数は ,2018 年は5億 902 万人泊にのぼる . また , 地方部の宿泊のシェアが前年に引き続 き4割を上回っている( 注 5 ). 加えて , 全国の宿泊施設の建築着工床面積は増加しており , 国 土交通省の「平成 30 年版土地白書」によると 2012 年から増加に転じ ,2016 年以降は過去最 高水準( 注 6)にある ( 図 2).

521 614 673 733 835 835

679 861 622 836 1,036 1,341 1,974

2,404

2,869 3,119 3,500

3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500

0 2003 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

( 年 )

( 万人 )

資料:日本政府観光局資料に基づき観光庁作成

図 1. 訪日外国人旅行客推移

2

(14)

 このような状況下において , 宿泊施設の建設ラッシュが続いているということだが , 宿泊 客室数の需要予測に関して ,2020 年の宿泊需要は 2015 年比 1 割程度増加する . 標準的なシナ リオでは ,2015 年の稼働可能客室数に対し , 東京・大阪を中心に 4.4 万室が不足する( 注 7)と いう計算もある ( 表 1).

52 68 74 93

196

280 2,118 304 1,992 1,482 1,022 873 867

792

350 300 250 200 150 100 50 0 (10,000 ㎡ ) ( 棟 )

2500 2000 1500 1000 500

0

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 ( 年 ) 資料 : 国土交通省「建築着工統計調査」に基づき観光庁作成

図 2. 宿泊業における建築物の着工棟数及び床面積の推移 ( 全国計 )

シナリオ 1 シナリオ 2 シナリオ 3 シナリオ 4 シナリオ 5 シナリオ 6 シナリオ 7 シナリオ 8 シナリオ 9

標準 標準 標準 上振れ 上振れ 上振れ 下振れ 下振れ 下振れ

標準 上振れ

分散 標準 上振れ

分散 標準 上振れ

分散

日本人 外国人

2015 年実績

2030 年 参考 標準 標準

(6 千万人 ) 55,435 58,128 55,435 57,909 60,602 57,909 51,494 54,187 51,494

10.0 15.3 10.0 14.9 20.2 14.9 2.2 7.5 2.2

23.7 27.3 23.7 22.7 26.2 22.7 25.5 29.3 25.5

60.4 59.4 62.0 60.7 59.7 62.2 59.9 58.8 61.6

0.359 0.379 0.349 0.354 0.372 0.345 0.368 0.389 0.357

43,990 72,984 39,249 54,131 86,361 48,957 29,669 56,745 26,185

13 15 12 14 18 13 12 13 9 58,396 15.8 33.8 57.5 0.416 101,009 17 50,408 13.0 63.4 0.307

延べ宿泊者数

変化率 外国人

シェア シェア

地方 MLD

不足客室数 不足 県数 ( 県 ) ( 室 ) ( 万人 ) (%) (%) (%) _

( 注 )1. 不足客室数は ,2015 年の稼働可能な客室数に対する不足数 .

     2. 地方は , 三大都市圏 ( 埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫 ) 以外の道県 .      3.MLD は延べ宿泊者数の県別格差を表す指数 .

( 資料 ) 観光庁「宿泊旅行統計調査」等より , みずほ総合研究所試算

2020

表 1. 不足客室数試算結果概要

 日本国内の概要としては前述した通りであるが , 都市によって需要が変化する度合いは異 なっている . 東京・大阪・名古屋とその周辺エリアや北海道 , 九州などでは宿泊需要の増加 が見込まれる一方 , 他の多くの県では延べ宿泊者数の明確な増加は見込みづらい状況であ る .

(15)

2. 研究の課題と目的

 都市比較などのマクロな視点においては , 都市別に需給のバランスには差がある一方で , ホテル経営者が判断しなければならないのは都市の中でどこに立地を置けばいいのかという 選択である .

 本研究では , 現在営業しているホテルの事業性と立地との関係を定量的に把握すること で , 事業性の視点からホテルの立地特性を明らかにし , ホテルの立地選定手法を導出するこ とを目的とする .

 宿泊の需要自体を予測することは困難である . 一方で現時点でのホテルの供給状況を把握 し , 立地を取り巻く環境を知ることで潜在的な立地特性について明らかにすることができる のではないだろうか . これにより , 都市の中で偏在するホテル事業の開業機会の発見を期待 し , また立地選択におけるリスクマネジメントについても資することができるのではないだ ろうか . ホテル開業を前提とした立地選択に具体的な指針の一つを示すことを目指す .

序章

北海道 東北 関東

( 除く東京 )

東京 甲信越・北陸

東海 近畿

( 除く大阪 )

大阪 中国 四国 九州 沖縄

全国

1.0 0.0 4.0 17.7 0.0 3.0 3.2 14.3 0.0 0.0 0.4 0.4

2.8 0.0 8.5 33.7 0.1 7.1 7.0 23.1 0.0 0.0 1.2 2.9

1.0 0.0 0.5 6.3 0.0 0.0 2.2 11.7

0.0 0.0 2.0 2.6

2.8 2.1 7.6 13.8

1.7 4.5 3.4 4.5 2.0 1.0 1.4 3.8

1.7 2.1 3.6 4.0 1.7 1.4 0.2 9.8 2.0 1.0 1.0 3.4

0.0 2.1 0.9 19.9

1.6 2.6 3.7 18.6

2.0 1.0 0.2 0.9

1.8 2.1 7.1 7.5 1.7 4.5 1.2 7.2 2.0 1.0 0.6 1.2

4.5 37.9

22.3 48.5

44.0 86.4 26.2

不足客室数 (①) オープン計画

② 需給バランス (① -  ②) ( 千室 )

シナリオ 1 シナリオ 5 シナリオ 9 シナリオ 1 シナリオ 5 シナリオ 9

( 注 )①の不足客室数は本稿試算値 .②のオープン計画は『週刊ホテルレストラン』(2015 年 6 月 5 日号 ,2016 年 6 月 3 日号 ) のデータを元に ,2016 年 1 月〜2020 年 12 月に開業予定のホテル客室数を集計したもの .

( 資料 ) オータパブリケーションズ「週刊ホテルレストラン」等より , みずほ総合研究所作成

表 2.2020 年における需給バランス

 延べ宿泊者数が増加する県の中で客室が不足するのは東京・大阪とごく一部の県にとどま

( 注 8), 延べ宿泊者数の増加と客室不足は必ずしも直結しないとも言える ( 表 2).

 ホテルの開業において , 変化しつつある利用形態に伴い時代の要請を受けた的確な状況判 断が求められている . 都市によって , また都市の中での立地においても宿泊の需要は大きく 異なっていることだろう .

4

(16)

3. 研究対象の選定

3.1. 都市の選定

3.2. 宿泊施設の予備調査

 日本の市町村で人口順位が 2018 年 4 月 1 日時点で上か ら 10 の都市を並べると東京特 別区部・横浜市・大阪市・ 名古屋市・札幌市・福岡市・神戸市・川崎市・京都市・ さいた ま市である . この中で同様の比較ができる都市を研究対象とすると , 条件として独立した経 済圏を持つ都市であること , 新幹線が停車する駅などの主要交通拠点を有することこの 2 つ を満たす都市は福岡市と名古屋市と札幌市である .

 東京特別区部・さいたま市・横浜市・川崎市 , 大阪市・ 神戸市・京都市の組み合わせは , 都市の距離も近く独立した経済圏とは言い難い . 独立した経済圏を持つ都市としては , 名古 屋市 , 札幌市 , 福岡市が上げられる . ここで3都市の面積を比較すると , 福岡市 343.4

, 名古屋市 326.4

, 札幌市 1121

, と福岡市と名古屋市は同等規模でかつ , 札幌市はこの2 都市と比較して 3 倍以上の規模である . 今回は距離を取り扱うことも鑑みて研究対象から除 外する .

 この福岡市・名古屋市における交通拠点と宿泊施設との距離について共通した結論を得る ことができれば , 他の大都市においても有用な結果を期待することができ , 単純な構造から 研究を進めることで経済的な関連が強い首都圏の都市や大阪・神戸・京都の経済圏などの複 雑な都市についても発展させられるのではないかと考えた .

 本研究について研究対象を決定するため , 予備調査を行った . 福岡市 , 名古屋市において 旅館業法の旅館営業許可を取得している全ての宿泊施設のうち , 風営法 4 号ホテルに該当す るレジャーホテル 108 件 ( 福岡市 12 件 , 名古屋市 96 件 ) を除外する全 299 件 ( 福岡市 81 件 , 名古屋市 218 件 ) を参照する . このうち , 宿泊施設の施設タイプに関して , 旅館業法で定め られた「ホテル」,「旅館」,「簡易宿泊施設」の 3 つを比較する . 比較内容は事業性と定義 したそれぞれの宿泊施設において収容人数 , 客室数 , 平均価格 , 価格上昇率の 4 種類のデー タを取得し , 箱ひげ図を作成した ( 図 3, 図 4, 図 5, 図 6). これらの図から , ホテルが他の施 設タイプと比較して , 最大値と最小値の値が最も離れている . ホテルは営業の形態が多様で あることもあり , このような幅を持っているものと考えられる .

(17)

図 6. 価格上昇率

図 3. 収容人数 図 4. 客室数

図 5. 平均価格

01234

ホテル 簡易宿泊所

名古屋市 旅館

ホテル 簡易宿泊所

福岡市 旅館 (%)

02004006008001000

ホテル 簡易宿泊所

名古屋市 旅館

ホテル 簡易宿泊所

福岡市 旅館 ( 名 )

010,00020,00030,000

ホテル 簡易宿泊所

名古屋市 旅館

ホテル 簡易宿泊所

福岡市 旅館 ( 円 )

0100200300400500600

ホテル 簡易宿泊所

名古屋市 旅館

ホテル 簡易宿泊所

福岡市 旅館 ( 室 )

 施設タイプに関して , 旅館業法で定められた「ホテル」,「旅館」,「簡易宿泊施設」の 3 つのうち , ホテルとして営業許可を取得した建築物を分析対象とする .

宿泊施設を事業として捉えた際に旅館や簡易宿泊施設と比較してホテルが最も収益性が高い ことを表している . さらに , 先行研究( 注 9)でも見られるようにホテルと都市の関係は台湾 , ドイツ , マドリードなどで行われている . ホテルについて調査分析を行うことは事業として の魅力だけではなく , 日本に留まらず広く示唆をもたらす可能性が大いにあるからである . 以上の理由でホテルを選択した .

序章

6

(18)

 ホテルのデータについては , 福岡県福岡市の「福岡市内旅館業営業許可施設一覧 ( 平成 30 年 9 月 30 日現在 )」, 愛知県名古屋市の「旅館行法に基づき許可を受けた施設の一覧について」

に公表されている旅館業施設一覧 ( 平成 30 年 7 月末現在 ) を使用した . なお , ここに記載さ れている全てのホテル 353 件 ( 福岡市 67 件 , 名古屋市 286 件 ) のうち風営法 4 号ホテルに該 当するレジャーホテル 108 件 ( 福岡市 12 件 , 名古屋市 96 件 ) を除外する . また ,web 販売し ていない , もしくは営業が確認できない宿泊施設 18 件 ( 福岡市 1 件 , 名古屋市 17 件 ) も除 外する . それらを除いた全 227 件 ( 福岡 54 件 , 名古屋 173 件 ) のサンプル , つまり web 販売 もしくは営業が確認できるもので , 単独で存在するホテルを今回分析するサンプルとして取 り扱う . ホテルリストについては付録 (p.128-132. 表 8-1.) に示す .

3.3. 調査対象ホテルリスト

3.4. ホテルの事業性に関する項目

 事業性を収容人数 , 客室数 , 平均価格 , 価格上昇率 , 収容人数の総量 , 客室数の総量 , 平 均収容人数 , 平均客室数という 8 項目をホテル事業における重要な指標として定義する . ホテルの最大収容数を収容人数 , 最大客室数を客室数とする . また二週間における販売価格 の平均値を平均価格 , 一週間の価格変動に対する上昇分の割合のことを価格上昇率とする .  収容人数の総量とはある領域内における全ホテルの収容人数を足し合わせたもので , 平均 主要人数とはその総量を規定した領域内での施設数で割った値のことと定義する . 客室数の 総量 , 平均客室数についても同様である .

 一般的に事業という視点においてホテルタイプによって収益の種類や戦い方が異なる . さ らにチェーン経営であれば一つの敷地に対する収支から , ある法人格全体の収益性を推し量 ることなどできない . さらにオーナーが経営 , 運営を行う単独型経営 , 所有 , 経営 , 運営を 分離させるチェーン型経営など経営形態による事業の評価指標は多分に存在する . このよう に複雑かつ個別の法人によって経営に関する重要項目が異なる中で , 汎用性が高い指標とし て前述した 8 つを本研究における分析の目的項目とする . この 8 つの指標はホテル個別の経 営課題や魅力度などの一切を排除し , あらゆるホテルタイプに共通した立地の性質について 述べるための出発点として有効なものであると考えられる . つまり , ここで言う事業性とは コストなどの経営主体の情報を排除し , 宿泊費の売上推計に関するもののみを指す . イン ターネットなどで取得可能な情報から売上に関する数値を組み立てることで , 個別のホテル 経営に関する事業評価のための道筋を作ることができると考える .

(19)

図 7. ホテルの事業性を評価する指標

 一週間の中での価格変化に限定した理由は , ホテルの価格の変化は季節による年間の価格 変化と一週間の価格変化の大きく二種類が存在する .

その2つにおいて , 年間の価格変化は大きく日本国内において似た傾向となる . 例えば , ゴールデンウィークがある 5 月 , 夏休みがある 8 月などは全国的に宿泊費は上昇する傾向に ある ( 図 8). 一方 , 一週間の価格変化はより小さいスケールで違いが発生しており , 立地に よる偏在性が認められるものである . 例えば , 中心部でかつ駅が近いほど週末の価格が高く なるというようなことである . このような理由から , 立地の特性を考察するにあたり , 年間 の価格変化よりも一週間の価格変化を分析に利用することが適切だと考えられる( 注 10).

序章

25,000

20,000

15,000

0

1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

図 8. 過去 10 年間の宿泊価格のシーズントレンド

収容人数 客室数 平均価格

価格上昇率

規模・客室タイプ ホテルのグレード

1 週間のトレンド 収益

収容能力 価値

収容人数の総量 客室数の総量

平均収容人数 平均客室数

規模・客室タイプ

 この 8 項目に関して , 例えば収容人数に対する客室数の増減を見ることで客室タイプにつ いて言及することができ , 収容人数と平均価格を掛け合わせることで最大収益について言及 することができる . さらに価格上昇率によりその立地がもたらす一週間の需要の変化につい て言及することができる . さらに規定した領域内の収容人数の総量から競合の激しさについ て , 平均収容人数から施設辺りの収容能力について言及することができる ( 図 7).

8

(20)

4. 研究方法

 これまで小売業の立地選定に関する研究は , チェックリスト法 ,Huff モデル , 類比法 , 重 回帰分析など , 様々な研究がされてきた . ホテルに関する分析手法は唯一 , 重回帰分析だけ が使用されているようである . この 4 つの手法を比較検討し , 研究目的を達成する方法とし て重回帰分析が適切であることを論証する . チェックリスト法では , 小売業において事業に 関連する項目をリスト化することで立地の適性を見極めるものである . この小売業に最適な チェックリストがホテルに適切かというと , 小売事業における重要な指標とホテル事業にお いて重要な指標は同様でないため適切とは言い難い .Huff モデルについては品揃えの数など を変数とした理論であることからホテル事業に使用する方法として適切とは言えない . 類比 法は同様の店舗の情報を活用して新規店舗の立地選定に応用するという考え方である . つま り前述したこの 3 つの手法は小売業の枠組みの中で初めて機能する分析手法である . これと 同時に新しいホテルという立地にこれらの理論を使用することは緻密さに欠けると考えられ る . 一方で重回帰分析では , これまで関連性が謳われていない事象を組み合わせ , それらの 関係を統計的に説明するものであるため , 前例を必要としない点で新しい立地分析手法とし ては適切であると考えられる .

 これら 8 つの値をホテルの事業性を評価する上で重要でかつ立地選定に大きく影響を受け る要素群だと捉えることができる . つまり ,「どこでどんな施設をいくらで売るべきか」と いう立地選定とホテルのグレードや規模は相互に考慮されながら事業計画と立地選定を同時 に考察され得るものである .

 さらにこれら 8 つの要素のうち平均価格以外の収容人数 , 客室数 , 価格上昇率の項目は , 開業後変えることが比較的困難である . キャパシティに関しては収容人数 , 客室数は同様に 旅館業法 , 建築基準法 , 消防法や各行政区の衛生に関する条例などの制約を受け , 変更する 場合には建築そのものの改築を余儀なくされる .

 平均価格に関して , 市場原理によって価格が上昇もしくは下降することがあるが , 施設グ レードによって基本的な価格帯は決まる . 客室面積が広くや施設内設備が充実しているシ ティホテルやリゾートホテルは高く売ることが可能である . つまり高単価な立地を知ること は高いグレードの立地傾向を知ることとほとんど同じ意味である .

 価格上昇率に関しては宿泊施設が建つ立地において , 週末など一週間のうちのあるタイミ ングにおいて施設の価値とは離れて宿泊需要が高くなることによって価格が上昇を起こす現 象である . これはグレードによってのばらつきはあるだろうが , 立地選択によって土地が持 つ一週間のトレンドは大きく変化することが考えられる .

(21)

4.1. 研究アプローチ

 ホテル事業において , 車移動圏 , 徒歩移動圏 , 敷地 , アクセスという因子から前述した事 業性を評価する . 農業立地論で取られた農家は彼の利益最大化を期待するという立場を踏襲 し , ホテル事業を説明する立地の構成要因について述べる . 本研究ではホテル立地をホテル 客室の魅力度などホテル事業主の資源によって獲得され得る一切の条件を排除し , 立地のみ によって売上の傾向を見ることを目指す . その立場から , ホテルを利用する動機がホテル以 外にあると仮定する . ホテル利用において「ホテルが立地する都市までの交通結節点 , ホテ ル , 複数の目的地」は , 工業立地論における仕入先 , 工場 , 市場と同様の関係にあると捉え ることができる . つまりホテル利用者にとって , ホテル立地とは交通結節点からホテルまで のアクセス , そしてホテルから目的地までのアクセスの最小化を期待する ( 図 9). 目的地は 観光 , 出張 , 会合など様々なものが考えられ , 複数の目的地を想定してホテルは選択される . ホテル利用者毎の旅行目的は異なり , さらに目的地は複数存在する場合もある . このため , 目的地が集積する土地へのアクセスが良いほどホテルの利用機会が大きく , ホテル立地にお いてリスクが低いとも言える . さらに , 移動手段によって最小時間距離が変わること , 宿泊 目的が多様であることから目的地を人口動態や経済活動に置き換える必要がある . これをホ テル立地における立地理論の構成要因とする . ここでは目的地を観光施設 , 事業所 , 人口な どの人口動態や経済活動とすることで宿泊における目的地の多くを含有できると仮定する . さらに移動手段においてアクセスは移動時間 , 利便性 , 移動範囲などが変化することから , 車移動と徒歩移動の 2 つから交通結節点を中心とした領域を移動圏として設定する . その範 囲の中での人口動態や経済活動の量がホテル立地を誘発する可能性からホテル事業との関係 性を検証する .

目的地

IC

徒歩移動圏

新幹線駅・空港・港 ホテル

他都市 IC

目的地

目的地

車移動圏

図 9. 移動手段別のアクセス

序章

10

(22)

車移動圏

図 10. 立地を構成する要因

4. アクセス 3. 敷地

2. 徒歩移動圏 1. 車移動圏

駅 徒歩移動圏

敷地

ホテルの事業性と都市の主要交通結節点 , 主要観光地施設 , 駅などのアクセスとの 関係について調査分析を行う .

IC が所属する学区 , 区におけるホテル群 の立地と人口動態 , 経済活動の関係につ いて調査分析を行う .

IC 駅を中心とする 500m メッシュ圏内にお けるホテル群の立地と人口動態 , 経済活 動の関係について調査分析を行う .

ホテルの事業性と敷地面積 , 容積率 , 路 線価という敷地条件との関係について調 査分析を行う .

 さらに , 農業立地論で挙げられている位置地代( 注 11)の考え方をホテル立地にも応用し , 地 価や敷地を含む敷地条件として立地選択の1つの指標として補完する . これにより , 車移動 圏 , 徒歩移動圏 , というある領域の中における立地傾向を明らかにし , 敷地の傾向を見るこ とで個別の敷地についての言及を可能にする . 最後にホテルの敷地から最寄駅 , 最寄 IC, な どの交通結節点 , 観光施設までの距離などの総合的なアクセスについて調査し , 最小化すべ き主要な交通施設もしくは観光施設などのホテル立地における重要な拠点について明らかに する . 以上より , 研究アプローチとして車利用者におけるインターチェンジ , 徒歩利用者に おける駅 , といった交通結節点を中心に都市レベルで立地を捉え , 個々のホテル毎の敷地 , 敷地からそれらの交通拠点や観光施設までのアクセスという , スケールが異なる 4 つの視点 を導入する ( 図 10).

(23)

1) 車移動圏・・・・最寄 IC ごとの周辺地域の人口動態や経済活動に関する要素 2) 徒歩移動圏・・・最寄駅ごとの周辺地域の人口動態や経済活動に関する要素 3) 敷地・・・・敷地面積等の物理的要素 , 地価等の価値的要素

4) アクセス ・・都市の主要交通施設 , 主要観光地施設からの距離などの要素

 工業立地論から展開する理論研究ではなく , 重回帰分析を既存ホテルの実例に用いること で , 帰納法的に既存ホテルの傾向を知るためのアプローチをとる . この研究結果から車移動 圏 , 徒歩移動圏 , 敷地 , アクセスなどからホテル立地に関する理論研究へと発展させ得るこ とを期待する .

4.2. 車移動圏における立地調査分析

 ホテルの最寄 IC について ,IC が所属する区 , 学区を車の移動範囲を設定し , その領域にお いて学区内の世帯数 , 面積辺りの区別事業所数 ,IC の1日平均通過台数 ,IC から主要観光施 設までの合計距離 , ホテルから IC までの距離の合計を取得する . 事業性に関する指標とし て収容人数の総量 , 客室数の総量の 2 つを目的変数 , 前述した 5 つのうちホテルから IC ま での距離の合計を除く 4 つの情報を説明変数として重回帰分析を行う . また , ホテルから最 寄 IC までの距離の合計をホテル施設数で除したものを平均距離とし , これに学区内の世帯 数 , 面積辺りの区別事業所数 ,IC の1日平均通過台数の 5 つを説明変数とし ,IC 辺りの収容 人数や客室数をホテル施設数で割った平均収容人数 , 平均客室数を目的変数として重回帰分 析を行う . 宿泊供給量が大きい IC の特徴や施設辺りの収容能力が大きい IC の特徴について 考察する .

4.3. 徒歩移動圏における立地調査分析

 ホテルの最寄駅について , 駅が所属する 500m メッシュ圏内を徒歩の移動範囲を設定し , そ の領域における全ての流入出人口から領域内の人口 , 労働者数 , 昼間人口 ( 学校や病院など の労働以外の活動者数 ), 駅の乗降者数 , 駅からそれぞれのホテルまでの距離の合計を取得 する . 事業性に関する指標として収容人数の総量 , 客室数の総量の 2 つを目的変数 , 前述し た 5 つのうちホテルから駅までの距離の合計を除く 4 つの情報を説明変数として重回帰分析 を行う . また , 最寄駅から宿泊施設までの距離の合計を宿泊施設数で除したものを平均距離 とし , これに人口 , 労働者数 , 昼間人口 , 駅の乗降者数の5つを説明変数とし , 駅辺りの収 容人数や客室数をホテル施設数で割った平均収容人数 , 平均客室数を目的変数として重回帰 分析を行う . 宿泊供給量が大きい駅の特徴や施設辺りの収容能力が大きい駅の特徴について 考察する .

序章

12

(24)

 全てのホテルについて , 敷地の敷地面積 , 容積率 , 路線価を取得する . 路線価は全ての面 する路線における数値を全て取得する .

事業性に関する指標として収容人数 , 客室数 , 平均価格 , 価格上昇率の 4 つを目的変数 , 前 述した敷地に関する 3 つを説明変数として重回帰分析を行う . 敷地とホテルの事業性との関 係を考察する .

 全てのホテルについて最寄観光施設 , 最寄駅 , 最寄 IC, 新幹線駅 , 空港 , 港 , 主要観光施 設 10 施設までの距離の合計の 7 つを取得する . 事業性に関する指標として収容人数 , 客室数 , 平均価格 , 価格上昇率の 4 つを目的変数 , 前述した距離の 7 つを説明変数として重回帰分析 を行う . アクセスとホテルの事業性との関係について考察する .

4.3. 敷地による立地調査分析

4.4. アクセスによる立地調査分析

5. 研究の意義

 ホテル立地研究の重要性について述べる . 都市機能としてのホテルという視点では , ホテ ルの建設ラッシュが進む中で都市の中のホテル立地が偏在する状況から , 新たな立地機会を 発見することで都市内での偏りを均すきっかけとなり得る . 土地の利活用を加速させ , 土地 という資源の最適化に寄与することができる . ホテル経営者の視点では , 新たな立地機会の 発見により , 取得できる土地群からより最適な立地選択を可能にし , これまで手がけてきた 業態にふさわしくない土地を取得できる状況だとしても新業態の開発などに役立てることが できる . つまり , 立地による失敗を大幅に削減し , 立地から挑戦できるガイドラインとなる ことを期待する . これにより , これまでより低いリスクで開業に臨むきっかけとなり得る .  立地論としてのホテル立地研究の重要性について , これまでの立地論は距離と重さを基準 として特定の仕入れ地 , 目的地との関係からモデル化を行っている . 一方で小売業における 理論では特定の店舗の魅力 , 商圏という距離からモデル化を行っている . ホテル立地はある 種の経由地としてホテルを捉え , それを不特定かつ複数の目的地に対して立地の最適化を試 みる必要性があるところにホテル立地の重要性がある . これはホテルだけではなく , 経由地 として機能する建築や都市機能についても応用可能であるだろう . この重回帰分析の結果が ホテル立地の理論研究の礎の一つとなる . 立地を構成する要因を研究する意義は , ホテルの 魅力度など経営者によって開業後比較的変更可能な指標を除き , 開業前にホテル以外の要因 によってホテル事業の売上や競合環境などがどの程度決まっているのかということを推し量 るためである .

(25)

6. 用語の定義

宿泊施設

 本研究では宿泊施設は「旅館業における営業許可を取得し宿泊を業として営むことができ る施設のうち , 複合ではない建築物のこと」と定義する . 旅館業の定義については旅館業法 第二条に順ずる .

ホテル

ホテルとは ,「旅館業法で定められるホテル営業と申請した事業体のうち , ホテル営業を営 む機能をもつ複合ではない建築物のこと」と定義する . ホテル営業( 注 12)の定義は旅館業に おける衛生等管理要項 1 総則 第 2.(1).2) に順ずる .

観光施設

 観光旅行と呼ばれる保養 , 遊覧を目的とした旅行または旅行者に対して , 歴史・文化・自 然景観などの遊覧資産が適宜整備されている観光地のうち個別の敷地や施設のことを観光施 設とする . 一般に観光地とは商店街など都市においても個別の敷地や施設を超えて広域的に 語られることがあるため , 観光施設と呼ぶこととする .

収容人数

宿泊施設において ,1 日に宿泊が可能な最大人数のことと定義する . 旅館業法で用いられる 収容人員と同義である .

客室数

宿泊施設において ,1 日に宿泊者が利用できる客室の最大数のことと定義する .

平均価格 

平均価格とはその施設の二週間の販売価格を各 OTA サイトで収集した平均値と定義する . な お , 価格はシングルルームの 1 名 1 泊の価格のみとした .

OTA とは Online Travel Agent の略称で , 宿泊施設や旅行ツアーの予約について , オンライン 上 ( インターネット ) で取引を行うサービスのことである . 日本企業はじゃらん , 楽天トラ ベル , 海外企業は Booking.com,Expedia などがある .2016 年度の調査によると OTA を含むオン ラインでの予約割合は国内旅行で 82.9%, 海外旅行で 63.7% という状況である( 注 13).

序章

14

(26)

価格上昇率

価格上昇率とは , 一週間の最低価格を基準として最高価格となった上昇分の割合と定義す る .

収容人数の総量

収容人数の総量とは , 規定した領域内における全ホテルの収容人数を足し合わせたものと定 義する .

平均収容人数

平均収容人数とは , 収容人数の総量を規定した領域内における施設数で割った値のことと定 義する .

客室数の総量

客室数の総量とは , 規定した領域内における全ホテルの客室数を足し合わせたものと定義す る .

平均客室数

平均客室数とは , 客室数の総量を規定した領域内における施設数で割った値のことと定義す る .

延宿泊者数

延宿泊者数とは , 宿泊者の延べ人数をいう .1泊2日で 1 名が宿泊した際の延宿泊者数は 2  名という数え方をする .

観光庁「宿泊旅行統計調査」より定義・慣例的に使用されているものを引用する .

実宿泊者数

実際に宿泊手続きを行った人数のことをいう . 子供や乳幼児も1名とし ,1 泊 2 日で 1 名が 宿泊した際の実宿泊者数は 1 名という数え方をする . 観光庁より慣例的に使用されているも のを引用する .

(27)

定員稼働率

定員稼働率とは , 延宿泊者を総収容人数で除して算出したものをいい , 総収容人数と は , 収容人数に各月の日数を乗じて算出したものをいう . 観光庁より慣例的に使用されているも のを引用する .

客室稼働率

客室稼働率とは , 利用客室数を総客室数で 除して算出したものをいい , 総客室数とは , 客 室数に各月の日数を乗じて算出したものをいう . 観光庁より慣例的に使用されているものを 引用する .

住居地域

都市計画法で定められている用途地域のうち , 主として居住環境を保全するために定める地 域を指す . 第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域 , 第一種中高層住居専用地域 , 第二種中高層住居専用地域第二種住居地域のことである .

比較的住居地域 という文言を用いる場合は , 商業における用途制限を基準として , 第一 種低層住居専用地域 , 第二種低層住居専用地域 , 第一種中高層住居専用地域 , 第二種中高層 住居専用地域 , 第一種住居地域 , 第二種住居地域 , 準住居地域 , 田園住居地域 , 近隣商業地域 , 商業地域の順に居住性が高いこととする .

商業地域

都市計画法で定められている用途地域のうち , 主に商業などの業務の利便性の増進を図る地 域を指す . 商業地域 , 近隣商業地域のことである . 比較的商業地域 という文言を用いる 場合は , 商業における用途制限を基準として , 商業地域 , 近隣商業地域 , 田園住居地域 , 準 住居地域 , 第二種住居地域 ,, 第一種住居地域 , 第二種中高層住居専用地域 , 第一種中高層 住居専用地域 , 第二種低層住居専用地域 , 第一種低層住居専用地域の順に商業性が高いこと とする .

序章

16

(28)

7. 本研究の構成

本研究は , 序章から第 7 章までの 8 章で構成される ( 図 11).

 序章は , 研究の背景 , 研究の課題と目的 , 研究対象の選定 , 研究方法 , 用語の定義 , 本研 究の構成について述べる .

 第 1 章では , 立地論 , 小売業における立地論 , ホテル立地に関する研究という 3 つの視点 から , ホテルの立地を取り扱う先行研究を整理して本研究の独自性を明らかにする .

 第 2 章では , 車移動圏における立地調査分析に関して , 車移動圏内の人口動態や流通量と ホテルの事業性との関係について述べる . 具体的には , 最寄 IC が所属する区や学区圏内の 状況に関して , ホテルから最寄 IC までの平均距離 , 主要観光施設までの合計距離 , 学区世 帯数 , 面積辺りの区別事業所数 ,IC の通過台数の 5 つの指標とホテルの事業性との関係につ いて , 最寄 IC が所属する区や学区内の特徴から論じる .

 第 3 章では , 徒歩圏における立地調査分析に関して , 徒歩移動圏内の人口動態や流通量と ホテルの事業性との関係について述べる . 具体的には , 最寄駅が所属する 500m メッシュ圏内 の状況に関して , ホテルから最寄駅までの平均距離 , 駅の乗降者数 , 人口総数 , 昼間人口 , 全産業従業者数の 5 つの指標とホテルの事業性との関係について , 最寄駅が所属する 500m メッシュ圏内の特徴から論じる .

 第 4 章では , 敷地による立地調査分析に関して , 敷地条件とホテルの事業性との関係につ いて述べる . 各宿泊施設の敷地面積 , 容積率 , 路線価という敷地に関する 3 つの条件とホテ ルの事業性との関係について論じる .

 第 5 章では , アクセスによる立地調査分析に関して , 主要観光施設と主要交通拠点などこ れらの距離とホテルの事業性との関係について述べる . 具体的には最寄観光施設 , 最寄駅 , 最寄 IC, 新幹線駅 , 空港 , 港 , 主要観光施設 10 施設までの距離の合計の 7 つによるアクセス とホテルの事業性との関係について論じる .

 第 6 章では , ホテルの事業性に影響を及ぼす立地の構成要因について述べ , 新規ホテル開 業における立地選定手法を提案する .

 第 7 章では , 結として第 2 章から第 5 章までで得られた成果を要約し , 結論を述べ , 研究 を総括して今後の課題について述べる .

(29)

序章

1. 研究の背景 2. 研究の課題と目的 3. 研究対象の選定

4. 研究方法 5. 研究の意義 6. 用語の定義

1.1. 先行研究の調査目的と調査方法 1.2. 立地論

1.3. 小売業における立地論 1.4. ホテル立地に関する研究

4.1. はじめに 4.2. 調査分析方法 4.3. 調査結果 4.4. 考察 4.5. 本章の結論 3.1. はじめに

3.2. 調査分析方法 3.3. 調査結果 3.4. 考察 3.5. 本章の結論

5.1. はじめに 5.2. 調査分析方法 5.3. 調査結果 5.4. 考察 5.5. 本章の結論 2.1. はじめに

2.2. 調査分析方法 2.3. 調査結果 2.4. 考察 2.5. 本章の結論

7.1. 研究の目的 7.2. 本論の総括

Ⅰ - 序論

Ⅱ - 本論

Ⅲ -  結論

第 7 章 結 ( おわりに )

参考文献・謝辞 序章 はじめに

第 1 章 先行研究レビュー

第 5 章 第 4 章 第 2 章

第 3 章 アクセスによる立地調査分析

敷地による立地調査分析

徒歩移動圏における立地調査分析 車移動圏における立地調査分析

最寄駅ごとの周辺地域の人口動態や経済活動に 関する要素

最寄 IC ごとの周辺地域の人口動態や経済活動に 関する要素

都市の主要交通施設、主要観光施設からの距離 などの要素

敷地面積等の物理的要素、路線価等の価値的要素

付録・資料編

図 11. 本研究の構成 6.1. ホテルの事業性に影響を及ぼす立地の構成要因

6.2. 立地選定手法の提案

第 6 章 ホテルの事業性に影響を及ぼす立地の構成要因と立地選定手法の提案

7.3. フォーカスイン・アウト法 7.4. 今後の展望

1.5. まとめと本研究の独自性 7. 本研究の構成

18

(30)

注釈

注 1)参考文献 18 P.17 注 2)参考文献 23 P.6 注 3)参考文献 22 P.3 注 4)参考文献 16 P.8 注 5)参考文献 23 P.20 注 6)参考文献 47 P.4 注 7)参考文献 14 P.1 注 8)参考文献 14 P.9

注 9) 第 1 章先行研究レビュー ,1.4. ホテル立地に関する研究の 7 つ ( 本論 p.35-38.) を参照 . 注 10)参考文献 48, 参考文献 49, 参考文献 50, 参考文献 51, 参考文献 52, 参考文献 53, 参 考文献 54, 参考文献 55, 参考文献 56, 参考文献 57 の 4 種類の宿泊料 (1 泊 2 食平日 ,1 泊 2 食休日 ,1 泊朝食付平日 ,1 泊朝食付休日 ) の平均値より作成した .

注 11) 位置地代とは , チューネンによる議論の中で用いられる用語だが、土地の価値と等価 であると理解されている . 農民が損失を出すことなく , 土地を使用するために支払うことの できる最大額に相当する .

注 12)「ホテル営業」とは , 宿泊の態様が洋風であるような様式の構造及び設備を主とする 施設であって簡易宿所営業及び下宿営業以外の営業をいう . この場合 , 少なくとも客室以外 のロビーその他客の共用に供し得る施設 , 食堂に備える設備等は , 洋式による構造及び設備 の一環となるものであること .

注 13)参考文献 7 P.19

(31)
(32)

1.1. 先行研究の調査目的と調査方法

1.2. 立地論

 1.2.1. 農業立地論 (Johann,1826)  1.2.2. 工業立地論 (Johann,1826)  1.2.3. 中心地理論 (Walter,1993)

1.3. 小売業における立地論

 1.3.1. チェックリスト法 (Nelson,1958)  1.3.2. Huff モデル (Huff,1964)

 1.3.3. 類比法 (Applebaum,1964)  1.3.4. 重回帰分析 (Davies,1975)

1.4. ホテル立地に関する研究

 1.4.1. 快楽的価格設定方式を適用した台北のホテル客室分析  (Chen,C.F.,& Rothschild,R.,2010)

 1.4.2. 海岸の風景と宿泊施設の快楽的価格 (Jacqueline Hamilton,2007)  1.4.3. 観光都市のホテル立地:マドリード 1936‒1998(Ainhoa Urtasun   &IsabelGutiérrez,2006)

 1.4.4. ホテルの立地展開と稼働率 ( 鶴田 ,2000)

 1.4.5. 仙台市における宿泊機能の立地特性 ( 松村 ,1996)

 1.4.6. 宿泊費用に対する労働人口と施設規模の影響とその地域的差異に関する考察  ( 高橋 ,2016)

 1.4.7. 都市における宿泊施設の立地と推移(石澤 ,1991)

1.5. まとめと本研究の独自性

22

22 22 23 24

24 25 25 26 26

27 27

28 28

28 29 29

30

30

(33)

1.1. 先行研究の調査目的と調査方法

1.2. 立地論

 本章では , 立地に関する先行研究について調査し , ホテル立地への応用可能性とその限界 について述べる . 立地選定における先行研究は多くの事例があり , 関連する代表的なものに ついて述べる . これまで立地論に関する研究は農業立地論 , 工業立地論 , 中心地理論という 一次産業や二次産業に関する立地理論が主流であった . 加えて小売業の立地選定に関する研 究は , チェックリスト法 ,Huff モデル , 類比法 , 重回帰分析など , 様々な研究がされてきたが , ホテルに関する分析手法は立地論の系譜では明言されていないようである . ホテルの立地県 研究について , ホテルの魅力度と立地の関係 , 景色と客室価格の関係 , 交通拠点などの都市 システムと人口動態などの諸要素との関係 , ホテルの規模 , サービス , 価格と立地の関係な どが研究されてきた . これらの先行研究を概説し , 本研究の独自性について述べる . 調査方 法については , ホテル立地に関する中で引用数が多い論文を代表的なものとして参考した .

1.2.1. 農業立地論 (Johann,1826)

 Johann(1826) によると農場の収益は土地の利用方法と輸送費に依存し , 周囲の田園地帯の 経済は , 各産業がそれによって最適な利益をもたらすようなやり方による経済行動に応じて 再配置されるべきという立地理論である . この理論によると都市の中心から郊外に行くにつ れて農業の類型の配置が変わる . この配置は距離と利益から計算され , それらの業種毎の最 適立地による都市モデルをチューネン圏と呼ぶ ( 図 1-1). これは農業における生産と都市の 中心部である市場への距離と地価から立地を決定する方法論であり , 目的地が多様でかつ他 都市からのアクセスを考慮すべきホテル立地に直接利用することは難しい .

第 1 章 先行研究レビュー

 立地論は Johann(1826) に提唱された農業立地論をきっかけに自己利益の最大化という立場 から立地選定のモデル化を行ってきた経緯がある . 例えば農業立地論では農民は彼の農場で 上がる利益を最大化することを期待するという前提から出発し , 工業立地論においては商品 や原料の重量と仕入先や市場と工場の距離が最小となることを前提としている .

このように物を作って運ぶ産業と現地でサービスを提供する小売などの販売業 , そして現地 で無形のサービスを提供するホテルとでは利益最大化に対する考え方がビジネスモデルの違 いから異なる . このビジネスモデルの違いが立地選定の判断指標を根本から異なるものとす るのではないだろうか . まずは以下に農業立地論 , 工業立地論 , 中心地理論の 3 つを概説し , ホテル立地への応用可能性について述べる .

22

(34)

1.2.2. 工業立地論 (Alfred,1909)

 工業立地論 (Alfred,1909) は工業製品の生産コストを最小化するため , 製品重量 , 原料重量 , そして仕入先 , 提供先までの距離を因子として立地選定を行うモデルである ( 図 1-2.). 農業 立地論との違いは , 原料の仕入れ先が生まれることにより生産工程や生産コストの要因が増 え , 立地の最適化に市場だけではなく仕入れ先 , 原料重量という原料仕入輸送コストという パラメーターが付加されたところにある . 複数のアクセスを取り扱う部分では参考可能であ るが , 商品や仕入れが存在しないホテルにおいてこの理論を直接利用することは現実的では ない .

Market

Raw Material2 Raw Material1

Factory

d 3 w 3

d 2

w 2

d 1 w 1

図 1-2. 輸送費最小化モデル

1 2 3 4

図 1-1. チューネン圏のモデル

黒点 : 都市の中心 1: 酪農と園芸農業 2: 林業と薪炭業 3: 穀作 , 畑作農業 4: 牧畜

円の外 : 農業が採算性 をもたない原野

d3

w3 d2 w2

d1

w1仕入原料の重量 仕入原料の重量

商品の重量

仕入先から工場までの距離

仕入先から工場までの距離

工場から市場までの距離

(35)

1.3. 小売業における立地論

第 1 章 先行研究レビュー

 チェックリスト法 ,Huff モデル , 類比法 , 重回帰分析の 4 つを以下に概説する . これらは 特に小売の出店に際する立地選定について , 来店ポテンシャルや売上を推計するためのモデ ルである .Huff モデルなどは人口動態や距離などから小売における立地ポテンシャルを算出 可能である . これらは小売事業においては当然有効であるが , ホテル事業には使用されてい ないようである . 一方で , 重回帰分析は目的変数や説明変数の設定の自由度が高いことから 応用可能であると考えられる .

 中心地理論 (Walter,1933) とは , 都市機能の規模と分布を示す都市地理学における理論で ある ( 図 1-3.). サービスを含む財の到達範囲が大きいものを「高次な財」とし , 財を消費者 に供給する機能を中心地機能と呼んでいる . 例えば大学や市役所 , 新幹線駅など , 特定の都 市の中において激しい競合を強いられないサービスから都市の中心地が構成されやすいとい うものである . この研究はグリッドによって都市の形成プロセスについては言及可能である が , 建築単体における収益については言及できない .

1.2.3. 中心地理論 (Walter,1993)

 図 1-3. 中心地システムと補完区域

24

(36)

 チェックリスト法は正確な立地評価を行うため , それぞれの住所における区分や種類 , データを一覧にするシンプルな方法論である .Nelson は立地に 8 のカテゴリーと 36 の種類 があることを提唱したと言われている . 人口動態やその構成 , 収入 , 失業 , 物価上昇 , 販売 業績 , 取引地域の構成 , 競合 , 店舗のポジション , などの外的要因 . 売上予測 , 販売地域 , 商品の生産性 , 在庫と在庫の所在 , 不動産の種類などの内部的要因が含まれる . これは相対 的に用地を評価するために小売業者の中で幅広く用いられている立地決定のための分析手 法である .Applebaum,Eisenpris,Kane はこの考えを拡大させ , より包括的なチェックリストカ テゴリーとデータの種類を開発した .4 つの大きなカテゴリーとして , 人口動態 , 小売販売 , 費用 , そしてインフラが挙げられる ( 表 1-1.). この手法は小売事業には用いられているが , ホテル事業には使用されていないようである .

1.3.1. チェックリスト法 (Check list method : Nelson,1958)

1.3.2.Huff モデル (Huff,1964)

 Huff モデルは、消費者の買物行動における店舗や商業中心地選択の確率が , 店舗の品揃え 量に比例し , 居住地から店舗までの距離に反比例するという仮説から小売商圏を計算する空 間相互作用モデルである . 店舗に消費者を引き付ける確率から , 可処分所得 , 人口 , または その他の変数に基づいて , 各起点の販売ポテンシャルを計算できる ( 図 1-4.).Reilly(1929) と Converse(1949) による都市間の小売の吸引力を対象にした小売引力の法則の研究から , 1960 年代に Huff モデルと発展した .Huff モデルは , 小売流通の都市内空間構造を分析するた めのモデルで , 近年では GIS の文脈でも言及されている .Huff モデルは特定地域の商業集積 間の競争構造を把握するために用いられたり , 大型店が出店する際に地域の小売競争に及ぼ す競争的インパクトや開発代替案のシミュレーション等に関する評価のために利用されてい る ( 田村 ,1974). この手法も同様に買い物などの小売販売には用いられているが , ホテル事 業には使用されていないようである .

出典 : retail marketing - Malcolm Sullivan,Dennis Adcock,P.112,Table5.5,Cengage Learning EMEA,2002,P.350

立地要素に関するチェックリスト

人口動態 小売販売 費用 インフラストラクチャー

人口規模と成長率 精神運動発達指数 / 名 生活様式

周辺分析 購買行動 主な雇用者達 季節による変化

店舗数 ( 全店舗 , 競合 , それ以外 )

市場への適応計画 処分方法

競合による需要効果 競合以外の店舗による 需要効果

開業費用

購入もしくは賃貸費 , 土地の調達 , 店舗建設費 , 開発免許取得費 運営費用

固定資産税 , 保守点検費 , セキュリティ費用 , 配達費と人件費 , 商品開発費

人通りと動線 公共輸送の輸送容量 , 費用と利便性 敷地までのアクセス ( 通勤 , 配達 ) 交通網の密度とアクセス 駐車場の広さ , 視認性

表 1-1. 小売業態のためのチェックリスト

図 6. 価格上昇率図 3. 収容人数図 4. 客室数図 5. 平均価格01234ホテル 簡易宿泊所名古屋市旅館ホテル簡易宿泊所福岡市旅館(%)02004006008001000ホテル簡易宿泊所名古屋市旅館ホテル簡易宿泊所福岡市旅館( 名 )010,00020,00030,000ホテル簡易宿泊所名古屋市旅館ホテル簡易宿泊所福岡市旅館( 円 )0100200300400500600ホテル 簡易宿泊所名古屋市旅館ホテル簡易宿泊所福岡市旅館( 室 )  施設タイプに関して , 旅館業法で定められた「ホテル」,「旅
図 7. ホテルの事業性を評価する指標  一週間の中での価格変化に限定した理由は , ホテルの価格の変化は季節による年間の価格 変化と一週間の価格変化の大きく二種類が存在する
表 2-3. 主要観光地との距離一覧 第 2 章  車移動圏における立地調査分析 福岡市の主要観光施設 JR博多シティ キャナルシ ティ博多 マリノアシティ福岡 博多リバレイン ヤフオクドーム ベイサイドプレイス博多 福岡タワー 海の中道海浜公園 福岡市動植物園 マリゾン 名古屋の主要観光施設 熱田神宮 東山動植物園 名古屋港水族 館 名古屋城 名古屋市科学館 農業文化園・戸田川緑地 愛知県美術館 名古屋市農業センター 久屋大通庭園フラリエ 東谷山フルーツパーク 空港通 1.5 2.4 12.5 3.1 8
表 2-4. 分析を行うデータセット 表 2-5. 分析を行うデータセット ( 正規化 ) 第 2 章  車移動圏における立地調査分析最寄IC一覧所属区所属学区(小学校)区面積(k㎡)IC辺りの施設数(件)区別事業所数(件)客室数の総量(室)収容人数の総量(名)平均客室数(室・平均)(名・平均)平均収容人数ICからホテルまでの距離の総量(km)ICからホテルまでの平均距離(km)ICから主要観光地までの合計距離(km)学区世帯数合計(世帯)面積辺り事業所数(件/k㎡)ICの平均通過台数(台/日)空港通博多区
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