3】基本声調の音韻論的分析、 述
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(2) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). した。一方、1 9 7 0年代か ら中国以外の研究者 による上海語の基本声調お よび変調型 ( 変調が. ud ie. が率いる調査 グループが変調体系の詳細な記述を行い、その頃か ら盛んに行われていた生成音 韻論を用いた分析の基礎 となった。. St. 上海語の基本声調お よび変調型の記述を概観す る上で注意 したいのは、初期の先行研究が. 」 よ りも古い世代的変種 を記述 している 「 新派上海語 ( 現在若年層 と中年層が用いる上海語). ign. 点である。上海語は世代的変種間で音韻体系 ( 子音、母音、声調)が大きく異なるため、先行. re. 研究がどの世代的変種 を扱っているのかを確認 し、本論文の考察対象である新派上海語 との異. Fo. 同をとらえてお く必要がある。本章では新派上海語の記述を中心に扱い、それ よ りも古い世代. ity. of. 的変種に関 しては簡潔 に列挙する。. rs. 2 . 1 . 1 . 基本声調の音声学的記述. ive. まず基本声調 ( 単独音節時の声調)の記述か ら見ていこう。新派上海語 よりも古い世代的変. Un. i n s( 1 8 5 3 ) 、遭元任 ( 1 9 28 ) 、沈同 ( 1 981 ) 、許宝華 ・湯珍 種の声調を記述 した研究 としては、Edk 味ほか ( 1 98 8 ) が挙げ られ る。銭乃栄 ( 2 0 03 ) によると上海語の基本声調を初めて記述 したのは. yo. イギ リスの宣教師 J o s e p hE此i n sである。 彼は上海県城 ( 現在の上海市黄浦区)の方言を記述 し、. ok. 1 85 3年に AGr a mma ro fCo l l q u i a l Chi n e s ea sBk h i b i t e di ' zt he S h a n g h a i Di a Z e c tを出版 した7. Edki ns. (T. の記述によると当時の上海語は 8つの基本声調を有 していた。. sis. ( 4) Ed k i n s( 1 853) が記述 した上海 語. 快 ( 速い) 降. 陽平 :低 平. :. 高. 平. 陽上 :低 慢 ( 遅い) 昇. 陰去. :. 高. 快 昇. 陽去 :低 快 昇. 陰入. :. 高. 短. 陽入 :低 短. lT. 陸上. Do c. to. ra. : 高. の基本声調 ( 銭乃栄 2 0 03 : 1 1を引用). he. 陰平. s). 起きた時の ピ ッチ型)の体系的な記述が登場する。続いて 1 98 0年代か らは復旦大学の許宝華. Edk i r Bに続いて上海語の基本声調を記述 したのは趨元任 ( 1 9 28 ) である.撞元任によると当時の 上海語には 7つの基本声調が存在 した。. 7Edki . u( 1 8 5 3 ) は非常に古い書籍のため筆者はこれを直接参照す ることができなかった.そのため、 Ed k nS( i 1 8 5 3 ) に関 しては全て銭乃栄 0 0 3 ) に従 う。. ( 2. 1 3.
(3) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 陸上 :3♭2』 陰去 :2♭ 3. 陰入 :4#. 陽去 :3♭ 5. 陽入 :23. St u. 陽平 :1 3♭. die. 陰平 :41. s). ( 5)趨元任 ( 1 928: 7 6、77) が記述 した上海語の基本声調島. その後、第二次世界大戦や 中華人民共和国成立後の社会の動揺により中国国内における上海語. gn. 98 0年代まで停滞 した。そのため、古い世代的変種の声調の記述は沈同 ( 1 981 ) まで現 研究は 1. Fo re i. 1 9Sl ) は老年層の上海語話者が使用 した 「 老派上海語」の基本声調 を記述 し、 れなかったo沈同 (. ( 6)沈同 ( 1 981 :1 32 ) が記述 した老派上海語の基本声調. 陽去 :1 3. 陰入 :55. 陽入 :1 3. ity. 陰去 :35. rs. 陰平 :53. of. この世代的変種が 5つの基本声調 を持つ と報告 している。. ive. 一方、許宝華 ・湯珍味ほか ( 1 988) も老派上海語の基本声調を記述 しているが、彼 らは老派上海. Un. ( 7 ) 参照) o 語が 6つの基本声調 を持つ と報告 している (. 陸上 :44. 陰去 ・陽上 :3 4 陽去 :23. 陰入 :塁 陽入 :1 2. (T. ok. 陰平 :53. yo. ( 7)許宝華 ・湯珍味ほか ( 1 988: 57、58) が記述 した老派上海語の基本声甜. es. is. ( 6)と( 7 ) はほぼ同時期に記述を行 ったはずであるが異なる声調体系を報告 している。筆者 は( 6 ) で示 した沈同 ( 1 981 ) の声調体系が後述す る新派上海語の声調体系 とほとん ど同 じである点に. Th. 1 981 ) は許宝華 ・湯珍味ほか ( 1 988) よ りも比較的新 しい変種 を用いる話者か ら 注 目し、沈同 (. al. 1 988 ) の話者が沈同 ( 1 981 ) より 記述 を行ったのではないか と推測す る1 0 。許宝華 ・湯珍味ほか (. Do. ct. or. も保守的な変種を用いた と仮定す ると、上海語の基本声調の数は 8 ( Edki ns1 853)‑ →7( 撞元. 8 槍元任 ( 1 9 2 8 ) は、現在慣習的である漢語の声調表記法 ・ ch aot o nel 曲. r s ,とは異なる表記法を用いてい 5 ) ではまず声調を音楽的な トーンで記述 し、それを 5段階に分割して表記 している。ただし、槍元 る。( 5 ) の表記がどの音の高さと対応するのかを説明していない。また、下線が引かれた調値はその調値 任は( の部分が長くならないことを示すムつまり、陰平 4 1 は 4から1‑そのまま下降することを意味し、陽平 1 呈♭ の場合は 1がある程度長く続いた後に短い 3♭ が後続することを意味する。 9 陰去と陽上は単独音節時にはともに[ 3 4 ] という調値を持つが、変調型が異なる。 1 0 ただし、沈同 ( 1 9 81 ) が記述した変調型は新派上海語の変調型とは全く異なる。. 1 4.
(4) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 任 1 9 2 8 )‑ 6 ( 許宝華 ・湯珍珠 ほか 1 9 8 8 )→ 5 ( 沈同 1 9 8 1 ) と時間が経つにつれて徐々に. St ud ie. 3】陰人 と陽人が ともに持続時間 陽去がそれぞれ高い上昇調 と低い上昇調である点、お よび 【. s). 減少 してい くと解釈できる。また、調値に関 しては 【 1 】陰平が下降調である点、 【 21陰去 と. が短 く、それぞれ高平調 と低い上昇調である点で従来の記述は一致 してお り、これ らの特徴は 新派上海語でも保持 され る11。. 次に、新派上海語の基本声調の記述 を見ていこう。従来の研究は新派上海語の基本声調を以. ei. ( F O )にもとづ く記述の 2種類である。手法の違い. はあるものの新派上海語の基本声調の数 と大まかな調値. ・ F O曲線は全ての研究で一致 してい. Fo r. 音響音声学的な手法を利用 した基本周波数. gn. 1 】 調査者の聴覚印象 にもとづ く記述 と【 2】 下の 2種類の手法で観察 し記述 している。それは、【. of. る。そのため、記述方法の違いが新派上海語の声調体系に大きな問題 を提起す ることはないと 筆者は考える。. rs ity. まず、調査者の聴覚印象にもとづ く記述を概観す る。新派上海語の基本声調 を初 めて報告 し. 1 9 6 0年出版)である.続いて Shem r d(1 9 7 2 ) が基本声調 と たのは 『 江蘇省和上海市方言概況』(. Un ive. 変調 を含めた上海語 の音韻体系を記述 し、 1 9 8 0年代に入 ると復且大学の許宝華率いる調査 グ. 9 il、 ループが新派上海語の基本声調お よび変調 を体系的に記述 した ( 許宝華 ・ 湯珍珠 ・ 銭乃栄 1 1 9 8 2 、1 9 8 3 、 許宝華 ・湯珍珠 ほか 1 9 8 8 ) 。その後、銭乃栄 ( 1 9 9 2 ) が上海語 を含む呉方言全体. yo. 2 0 0 3 ) では 2 1世紀初期の上海語音韻体系の記述を行 の音韻体系の記述を行い、さらに銭乃栄 (. ok. っている。これ らの先行研究が記述 した新派上海語の基本声調は、調値 にわずかな違いは見 ら. (T. れ るものの数 と種類 ( 調類)、曲線性 ( 上昇調 ・下降調 ・平板調)お よび高低域 ( ピッチ レン. Do. ct. or. al. Th. es. is. ‑ 1と表 2 ‑ 1参照)0 ジにおける高 さの位置づけ)がほとん ど一致 している ( 図2. 1 1 ただし、E dki ns( 1 8 53 ) の記述では陽人に上昇が見られるのかは定かではない。. 1 5.
(5) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ∫c 暮 T3. 也. T2. 乱T4. gn. St ud ie. s). 乱丁l. of. Fo r. ei. a . T5. rs ity. . ■l . ■l ■■. 図2 ‑ 1 . Sh e Wd( 1 9 72: 5 9 ‑ 6 2 ) が記述 した新派上海語の基本声調. Un ive. ( 縦軸は模式化 された話者の ピッチ レンジ、横軸は模式化 された母音の持続時間を表す。なお、 実線部は音韻的な弁別に関わる部分、点線部は余剰的な部分を示す。). yo. ‑ 1 .先行研究による新派上海語の基本声調の調値 表2. 漢語名. ( 1 9 6 0 ). (T. 声調名. ok. 江上12. ( 1 9 81 ). 許 ・湯ほか ( 1 98等 ). 銭 ( 1 99 2 ). 銭 ( 203 ). 5 3. 5 2. 5 2. 陰去. 3 4. 33 4. 3 3 4. 陽去. 1 4. 1 1 3. 2 23. 陰入. 5. 皇き. 5. 陽入. 2. 1 2. 1 2. es. is. 陰平. ‑ 1と表 2 ‑ 1を見ると、全ての先行研究で陰平、陰去、陽去、陰入、陽人の 5種類の基本声 図2 調が記述 されている130また、ピッチの曲線性 と高低域 も先行研究間でほ とんど一致 しているo. Do. ct. or. al. Th. 許 ・湯 ・銭. 1 2『江蘇省和上海市方言概況』( 江蘇省和上海市方言調査指導組 1 9 60) を指丸 1 3sh e . a, A( 1 97 2) は基本声調の漢語名を挙げていないが、各基本声調の例 として提示された語 を見ると他 の先行研究 と声調の種類が一致 していることが分かる。. 1 6.
(6) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). すなわち、陰平は高いピッチからの下降調、陰去は高い上昇調、陽去は低い上昇調、陰人 と陽. s). 人はともに持続時間が短 く、陰人は高い平板調、陽人はピッチが低 く上昇調か平板調 として記. ud ie. 述され る。 次に、音響音声学的手法を用いた新派上海語の基本声調の記述を概観す る。音響音声学的手. St. k o l o v( 1 9 65 ) である.その後、 ze ea nd 法を用いて新派上海語の基本声調を初めて記述 したのは So Mad d i e s o n( 1 9 7 9 ) 、Ro s e( 1 9 9 3 ) 、遊汝傑 ・楊剣橋 ( 2 0 01 ) 、朱暁農 ( 2 0 05 ) が音響音声学的な記述. ign. を行っている。 これ らの記述 と上述 した聴覚印象にもとづ く記述はほぼ一致 してお り、音響音. re. 声学的記述は聴覚印象による記述の妥当性を裏付けている。ただ し、複数の言 緒 の発話を分析. Fo. s e( 1 9 9 3 )と朱暁農 ( 2 05 ) は、一部の声調で話者間に変種が存在することを指摘 した。 した Ro. of. s e( 1 9 9 3 ) は T3に̀ ds hg ' と̀ d i p p i n g ' の 2種類の変種があ り、前者の方が後者 よりもピ 例えば、Ro. 5. Th. es. 甘. is. (T. 王. ok. 1. yo. O. Un. l. ive. 士. rs. ity. ‑ 2参照) 0 ッチが早 く上昇することを指摘 した ( 図2. 1 8. 「二「 = 二 1 5. 2 0. 呈 5. 3 8. 13. 8. 5. 1 8. 図2 ‑ 2. Ro s e( 1 9 9 3: 2 01 ) による新派上海語の基本声調. Do ct. or al. ( 1‑Tl 、2‑T2、3‑T3、4‑T4、5‑T5 o X軸は 1目盛 り 1 0ミリ秒、Y軸は Z‑ s c o r eを表すO). 2を見ると、T3の 2つの変種の うち̀ is r i n g' は8 0ミリ秒 ( Ⅹ 軸の 8の 目盛 り)あた りか ら 図 2‑. d i p p ng' i は1 2 0ミリ秒 ( Ⅹ軸の 1 2の 目盛 り)あた りか ら緩や ピッチが急激に上昇 し始めるが、̀ かに上昇を始める。 しかし、この 2つの変種の上昇幅には顕著な差が見 られず、ともに音節末 では約 0. 5の値 ( zI S C O r e )を取る.朱暁農 ( 20 05 ) は T3に加えて TlとT5にも話者間で変種が 存在することを指摘 した。具体的に言 うと、下降調である Tlではピッチが急激に下降す る変. 1 7.
(7) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 種̀ S 血g htf i l l i ng'と緩やかに下降す る変種̀ d e l a Fe df dl ng' i があ り、持続時間の短い T5には T3. die. s). と同 じよ うに̀ iS r ng' i と̀ di p pi ng' が存在す ることを指摘 している ( 図 2‑ 3参照) .. St u. 亡 ー ̀ ■ー け ■, 一 、 . . . . .. . .. . . . . . Tl d l ' 、 . .. Fo re i. l l t. of. ∴ 工. I+ t t. t. ( Ti s:S 血g ht f dl ng、 Tl i d:d e l a ye df a l l ng) i. ity. F nT] ONf %) T18. rs. E QUAuSm. gn. ‑ t l t . . 〜 . . i .. C T5 r:r iS ng、T5 i d:d i ppi ng ). ive. 図2 ‑ 3 .朱暁農 ( 2 05: 9 6、20 4) が記述 した Tl ( 左図) とT5 ( 右図)の 2種類の変種. Un. ( Ⅹ軸は標準化 した持続時間、Y軸は対数化 した Z‑ s c o 陀 を表す。). yo. 図 2‑ 3を見ると、Tlの 2種類の変種の うち̀ S 血i htf g a l l '( Ti s )では音節頭か らピッチ下降が始. ok. まるが、̀ d e l a ye df a T l l '( Tl d)では 2 0%時点か ら下降が始ま り8 0 %時点か ら 1 00%時点にかけて. (T. 急激に下降す る.また、T5では r is i n g'( T5 r )の方が ピ ッチの上昇が早 く始ま り上昇幅 も̀ di p pn ig' ( T5 d) よりも大きくなる。. is. ここで注意 したいのは、Ros e( 1 9 9 3 ) も朱暁農 ( 20 05 ) もこれ らの変種は弁別的ではない と考え. es. ている点であるo Lたがって、Ros eも朱暁農 も他の先行研究 と同様 に新派上海語の基本声調. Th. の数 は 5つであると解釈す る。なお、Ro s e( 1 9 93 ) と朱暁農 ( 2 05 )が指摘 した基本声調の変種. Do. ct. or. al. は本論文が扱 う話題 とは直接関係 しないため、本論文ではこれ らの変種 を区別 しない。. 2 . 1 . 2 .変調型の音声学的記述 次に、 従来の研究による上海語の変調型の記述 を見ていこ う1 4 。上海語の変調型の記述は 1 97 0 1 4 本論文では声調のピッチが変化する現象を 「 変調」、変化後のピッチ型 もしくは調値を 「 変調型」 と呼 んで区別する。. 1 8.
(8) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 年代か ら本格的に始まった。 そのため、新派上海語よりも古い世代的変種の変調を扱った研究. die. による断片的な報告などに限られる。そこで本節では老派上海語の変調型は扱わず、調査研究 の蓄積がある新派上海語の変調型に焦点をあてて レビューを行 う。以下では新派上海語のみを. St u. 「 上海語」 と呼ぶ。. 広用式変調」と 「 窄用式変調」とい う2種類の変調が存 第 1章で述べたように上海語には 「. gn. 在 し、従来の研究では両方の変調型を記述するものもあれば、片方の変調型 ( 大半は広用式変. Fo re i. 調)の記述にとどまるものもある。また、前節で見た基本声調の記述 と同様に変調型の記述で. 1 】聴覚印象にもとづ く記述 と 【 2】音響音声学的な手法を用いた記述の 2種類が行われて も【 いる。. of. まず、聴覚印象にもとづいた上海語の変調型の記述を見ていこう。上海語の広用式変調の変. ity. h e ra r d( 1 9 7 2) である.S h e r a r dは、複数音節からなる語で 調型を初めて体系的に記述 したのは S. 肌. 5‑ =Tl. 桓. ミ. I. yo. 1. Un. ive. 4参照) 0 式変調の変調型を図示 した ( 図 2‑. rs. は第 1音節の声調が語全体のピッチを決定するとい う広用式変調の特徴を指摘 した上で、広用. 2. 5ユ=T2. I. (T. ok. 柵. es. is. Cα汀仇仇 3. Do. ct. or. al. Th. 珊 汀t 靴鳳 q. 肌. s). 1 粥l ) による記述や許宝華 ・湯珍珠ほか ( 1 988 ) や銭乃栄 ( 1 9 9 2、2 03 ) は非常に少なく、沈同 (. 糊耽. S. 5五菜T3. I. sl空T4. sl= ETS. S I S S SS. J. s y s・ d. I. s. 図 2‑ 4. S h e m d( 1 97 2: 9 2) が記述 した広用式変調の変調型. l は第 1音節、Sは後続音節、右の縦線は ピ ッチ レンジを ( 第 1音節の声調は筆者が加 えた。S 表す。). 1 9.
(9) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 図2 ‑ 4ではTXが第 1音節である語で起きる広用式変調の変調型が co n t o t uxに示 される ( 例. h e r a r d らなる音韻語を模式化 したものであ り上記の変調型は音節数に関係なく実現すると S. die. n bu r5である)。各変調型には 5つの音節が書かれているが、これ らは N音節か の変調型は Co. St u. ( 1 9 7 2 : 9 2 ) は主張するoS h e mr d( 1 9 7 2 ) の記述には後述する他の先行研究 とは異なる点が 1点存在. CONTOUR2 )とT4( CONTOUR4 )の語でピッチが全体的に高 する.それは第 1音節が T2(. gn. h e r a r d以外の記述ではT 2とT 4が第 1音節 となる変調で 平 となる点である.後述するように S. Fo re i. は第 1音節か ら第 2音節にかけてピッチが上昇 し、第 3音節以降では ピ ッチが下降する。 この 飴 a ndMa d d i e s o n( 1 9 7 9 : 1 2 7 、1 2 8 ) はS h e mr d( 1 9 7 2 ) のインフォーマン トが同 じ 相違点に関 して Z. 呉方言に属する寧波語 ( 漸江省)の影響を受けているのではないかと推測する。 しか し、寧波. of. 9 9 2 )で Co n t our 2とCo n t o u r 4に対応する変調のピッチ曲線は高平調にはならな 請 ( 銭乃栄 1. ity. ea n dMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) の推測も誤っているのではないかと筆者は考える ( 結果 とし いため、Ze. rs. S h e r a r d( 1 9 7 2 ) は窄用式変調に関 しては言及 していない. て不一致の理由は不明である) oなお、. ive. 1 9 8 0年代になると、許宝華率いる復旦大学の調査グループが上海語の変調 ( 広用式 ・窄用. Un. 1 9 8 1 、1 9 8 2、1 9 8 3 ) は、広用 式)の詳細かつ体系的な調査を行った. 許宝華 ・湯珍珠 .銭乃栄 ( 2】 式変調が多 くの語 ・句構造に適用可能なのに対 して、窄用式変調は 【 l 】動詞+目的語、 【. yo. 動詞+補語、【 3】主語+述語、【 4】並列構造の句に適用 されると報告 した。また、これ らの研. ok. 究は広用式変調 と窄用式変調の変調型を体系的に記述 しただけではなく、2、3音節からなる. (T. 句で広用式変調 と窄用式変調が組み合わさる場合の調値 も詳細に記述 した。これ らの研究をさ. 1 9 8 8 ) は、許宝華の調査グループによる ( 音声だけ らに整備し発展 させた許宝華 ・湯珍珠ほか (. is. 1 9 8 8 ) はなく語嚢や統語 も含めた)上海語記述の集大成であるといえる。許宝華 ・湯珍味ほか (. es. では、許宝華 ・湯珍珠 ・銭乃栄 ( 1 9 8 1 、1 9 8 2 、1 9 8 3 ) の記述に加 えて 4 、5音節か らなる句で広. Th. 1 9 8 8 ) 用式変調 と窄用式変調が組み合わさる藤倉の調値 も報告 しているo許宝華 ・ 湯珍味ほか (. Do. ct. or. al. による広用式変調 と窄用式変調の変調型をそれぞれ表 2 ‑ 2および 2 ‑ 3に示す。. 20. s). n t o u rl、T5が第 1音節の場合の変調 えば、Tlが第 1音節である語で起きる変調の変調型は Co.
(10) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 1 9 8 8 : 2 4 ) による広用式変調の変調型. 第 1音節の声調. 2音節語. 4音節語. Tl( 陰平日5 3 ]. [ 5 5 . 21 ]. 【 5 5 . 3 3 . 2 1 ]. 【 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 】. [ 5 5 . 3 3 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. T2 ( 陰去)【 3 4 】. 【 3 3 . 4 4 1. 【 3 3 . 5 5 . 2 1 ]. 【 3 3 . 5 5 . 3 3 . 21 】. [ 3 3 . 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. T 3( 陽去)[ 2 3 】. [ 2 2 . 4 4 ]. [ 2 2 . 5 5 . 2 1 ]. 【 2 2 . 5 5 . 3 3 . 21 ]. [ 2 2 . 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. T 4( 陰入日 堕】. 担呈. 4 4 ]. 匹. 5 5 . 21 ]. 【 塾5 5 . 3 3 . 21 ]. 臣呈 . 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. T5( 陽入日 坦】. [ 吐. 2 3 ]. ui. 2 2 . 2 3 ]. a. [ 吐. 2 2 . 2 2 . 2 3 ]. 巨星 . 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. 5音節語. die. St u. Fo re i. b . 巨星. 5 5 . 3 3 . 21 ]. gn. 3音節語. 陰去. [ 3 4 ]. ive. 44. 文頭. 陽去. 【 2 3 ]. ity. [ 5 3 ]. rs. 陰平. of. 表2 ‑ 3 .許宝華 ・湯珍味 ほか (1 9 8 8 : 2 5 ) による窄用式変調の変調型. 環 境 声 調. 陰入 泣き ]. 陽入. 4 4. [ 坦】. ≧≧. yo. Un. 単音節語に後 続す る場合. 33. 3 3. 3 3. es. is. (T. ok. 広用式変調の 最終音節 15. 1 9 9 0年代以降では銭乃栄 ( 1 9 9 2 、1 9 9 7 ) が広用式変調 と窄用式変調の変調型 を記述 したが、そ. Th. の調値は表 2 ‑ 2および表 2 ‑ 3とほぼ一致 している。本論文では特に言及が無い限 り許宝華 ・湯. Do. ct. or. al. 1 9 8 8 ) が示 した変調型に従 う。 珍珠ほか ( 次に、音響音声学的な手法を用いた上海語の変調型の記述 を概観す る。広用式変調の変調型. を音響音声学的に記述 した研究 としては、Zee a ndMa d d e i s o n(1 9 7 9 ) 、遊汝傑 ・楊剣橋. 朱暁農. ( 2 0 0 1 ) 、. ( 2 05 ) 、Ch e n( 2 08 ) が挙げ られ る。一方、窄用式変調 を扱 った音響音声学的研究は管見. の限 り存在 しない。Ze ea n dMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) とC h e n( 2 0 0 8 ) は 2音節語か ら4音節語までを調査 1 5 許宝華. ・湯珍珠ほか (1 9iS: 26 ) によると、広用式変調の最終音節は窄用式変調の下段の調値を取るこ とがある。. 21. s). 表2 ‑ 2 .許宝華 ・湯珍珠ほか.
(11) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 対象 として広用式変調が適用 された音節の基本周波数 ( FO )曲線 を音響音声学的に記述 した。. re i. 0. 5. 0. 0. 1 QL 2 0. 3 0 . 4 0. 5 0慮 0. 7. Fo. 0. 2 0. 3 0, 4 ホbr mat 章 z edTi me. 馳r m丑I kedTi me. Un. ive. rs. ity. 2. 8 8. 0 0 一 1 ≠ QJPやZ ! [ 僧EJ B苫. of. 0, 1. gn. 2. 8. 8. n V nV ‑ ・ ) 1 EP 血 且l 空と 古童. 2 8 8 0 0 ︼ 1 一 凸 駄F D肘 ! PLA L 古ヱ. 0. St ud ie. s). ch e nによる 2音節語か ら4音節語の FO曲線を図 2 ‑ 5に示す。. o. 0 0. I 0. 2 0. 3 0. 4 0. 5 0. 6 0. 7 0. 8 0. 9 触r m遜l 蛭edT暮 me. ky. 図2 ‑ 5 . Ch 印( 2 08: 25 5 ) による広用式変調が適用 された語の FO曲線. (T o. ( 上段左 :2音節語、上段右 :3音節語、下段 :4音節語、凡例は第 1音節の声調を示す。). is. ‑ 5と許宝華 ・湯珍味ほか ( 1 9 8 8 ) の記述 ( 表2 ‑ 2)を比較すると、T5が第 1音節である 3音 図2. he s. 節語以外では ( 細部には違いが見 られるものの)全体的なピッチの動向は一致 していると言え. al T. る。一方、T5が第 1音節である 3音節語の FO曲線 を見ると第 2音節で FOが上昇 した後に第 3音節で F Oが下降 してお り、調値による記述【 止. 2 2. 2 3 ]と一致 していないoLか し、Ch e n( 2 0 08 ). Do ct. or. は T5が第 1音節の場合には最終音節まで FOが低 く推移 して最終音節で FOが上昇する変種が. 観察 された と報告 してお り、この変種が[ 吐 22. 23 ]と対応す ると考えられる ( この変種は図 2‑ 5 の FO曲線には反映 されていない) 0Zee肌dMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) とCh 飢( 2 08 ) 以外では、遊汝傑 ・ 楊剣橋 ( 2 01 ) と朱暁農 ( 2 05 ) が 2音節語までの FO曲線を音響音声学的に記述 した。これ らの. 記述では発話者間のバ リエーションがわずかに見 られるものの表 2 ‑ 2で示 した調値 とほぼ一致 しているoなお、第 4章では広用式変調が 3、4音節語に適用 された藤倉に第 3音節以降で‑. 22.
(12) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 律に起きるピッチ下降を音響音声学的に記述 し、Ch ら n( 2 08 ) が示 した FO曲線 ( 図2 ‑ 5 )とは異. die. s). なる結果が得 られたことを示す。. St u. 2 . 2 .上海語の基本声調および変調の音韻論的分析. 次に、従来の音韻論的研究が上海語の基本声調および変調をどのように分析 したのかを見て. ピ. ッチの決定に関与 しない。 このような特徴を持つ変調は漢. Fo re i. 定 し、第 1音節以外の声調は語の. gn. 1 . 2節で述べたように上海語の広用式変調では第 1音節の声調が語全体のピッチを決 いこう。2.. 語諸方言においては上海語など一部の呉方言で しか観察 されてお らず、他の多 くの方言 ( 例え ば北京語、天津語、関南語など)では変調が起きても各音節の声調が語のピッチの決定に関与. of. C . f .Ch e n2 0 0 0) .そのため、上海語の広用式変調の特殊な振る舞いは漢語声調音韻論の する (. ity. 2. 2. 3節 中心的な話題の 1つ として扱われてお り、多 くの先行研究がその分析を試みている16 (. rs. 参照)。 これ らの先行研究の多 くは生成音韻論の展開の中で発達 してきた 自律分節素理論. ive. ( a u t o s e gme n t lt a h eo r y) もしくは韻律理論 ( me t dc lt a h eo r y) を利用 しているため、先行研究の 分析方法や着眼点を知るためにはこれ らの理論の主要な分析装置を理解す る必要がある。そこ. Un. 2. 1 で以下では、まず 自律分節素理論 と韻律理論において上海語声調の分析に関連する概念を2.. yo. 2. 2節で概観す る。 節で概説 し、次に広用式変調の分析の基礎 となる基本声調の音韻表示を 2.. (T. ok. 2. 3節で従来の研究による広用式変調の音韻論的分析を詳述する。 そ して、2.. es. is. 2 . 2 . 1 .自律分節素理論と韻律理論 自律分節素理論は Go l d s mi h( t 1 9 7 6 ) が提案 した音韻理論であるo この理論では声調が分節音. Th. ( 子音や母音)や韻律構成素 ( モーラや音節)の境界を横断 して振る舞 うことを分析するため. al. r )に属 していると解釈する。また、こ に、声調は分節音や韻律構成素 とは異なる音韻層 紬e. 8 ) に示す。( 8 ) では声調 と音節を線で る。 自律分節素理論における音節 と声調の関係の一例を(. 結ぶことによって声調が音節に連結 していることを表現する。. Do. ct. or. の理論では声調が音声的に実現す ることを分節音や韻律構成素 と連結す るととらえて表示す. 1 6 ‑方、窄用式変調の音韻論的分析は広用式変調よりも盛んではなく、先行研究の数も多くない. 傑 1 9 9 5、Ch e n20 0 0など) 0. 2 3. ( 石汝.
(13) s). 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ign. T. ( 声調層). OI. ( 音節層). St ud ie. ( 8 )自律分節素理論における音節 と声調の関係 ( ロ:音節、T:声調). re. 自律分節素理論では、声調 と連結する単位 を 「 声調連結単位」( t o n ebe a ingm r it : TBU)と呼ぶo. Fo. ( 8 ) では音節が T BUであるが、どの単位 ( 分節音、モーラ、音節)が T BUとなるのかは言語に. of. BUとな り、それは上海語にも当てはまる ( C . f . Ba o よって異なるo 漢語では一般的に音節が T 1 9 9 9 、Yi p2 02 ) 0. ity. 自律分節素理論を概説 した Yi p( 2 02 :7 2 ‑ 7 6 ) は、声調が分節音や韻律構成素 とは異なる層に. Un ive rs. 存在することによって声調言語で観察 され る 5種類の特徴を妥当に分析することが可能にな ると指摘す る。5種類の特徴 とは、【 a】声調を持つ分節音 と実現す る分節音が異なること. ( Mo b i l i t y)、 l b】声調 を持つ分節音が削除 されて も、声調 は削除 されず に実現す ること ( S t a b i l i y) t 、【 C 】1つの声調が複数の TBUに共有 されること ( On e ‑ t 0 ‑ ma n y ) 、E d 】複数の声調. o. が 1つの T BUに連結すること ( Ma n y ‑ t c H) n e ) 、【 e ]声調を持たない分節音や音節が存在するこ. ky. To n e l e s ss e g me n t s /s y l l a b l e s )である. 自律分節素理論がこれ ら 5つの特徴をどのように表 と (. Do. ct. or al. Th. es. is. (T o. 9 ) に示す。 現するのかを(. 24.
(14) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 9 )自律分節素理論による声調言語の 5つの特徴の表示 げi p 2 02 : 7 4 、7 5 ) a . Mo b i l i t y( 第 1音節の声調が第 4音節で実現す る). s). C r C F C F 顎i C F. ー. T. re i. ity. rs. D Z t : T. T. of. k 】. h. Fo. T. 第 1音節の声調が全ての音節 と連結す る) c . on e . t 0 ‑ m叩y (. gn. Ⅴ‑. TT. T T T. ] 【 q 折/ /. ⁝zt. C. 」. Ⅴ̲. C. VI. C. T. J. >‑. T. C. ‑. T. V. C. V. I. b . S t a b i l 吋 ( 2番 目の Vが削除 されても、その V と連結 していた声調は残 る). St ud ie. ロ ロ O ロ. o. T. T. T. T. Un. t '̲. びI. ロI. qI. ive. d. Ma r t y 心 o n e( 第 3音節に 2つの声調が連結す る). (T o. OO■. he s. is. O. ky. e . To n e l e s ss y l l a b l e s( 第2 、3音節が声調 と連結 しない). al T. Yi pが指摘 した上記の 5種類の特徴に加え、自律分節素理論は音節 と連結 しない声調 を表現す. Do ct. or. a t i n gt o n e ' と呼ばれ、( 1 0 ) のように表示 され るo ることも可能である。 このような声調は: ' no. ( 1 0 )̀ 恥a t i n gt o n e ' の表示 ( 2番 目以降の声調は音節 と連結 していない) C Fロ C F. T. T. T. T. 25.
(15) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 声調言語で見 られる( 9 ) と( 1 0 ) のような特徴は、声調 とTBU ( 分節音、モーラ、音節など)を異. St ud ie. 自律分節素理論では言語によって TBU の単位が異なること古 城 に述べたが、声調は声調層. s). なる層に分離 した自律分節素理論的表示によって初めて透明に記述することが可能 となった。. においてどのような単位で表示 され るのだろうれ 従来の研究では、1種類の声調素性で声調 を表す解釈 と2種類の声調素性の組合せで声調を表す解釈が提案 されている。まず、前者の解. ign. 釈では声調を 【 +/ ‑ h i h]とい う 1種類の素性で表示す る( g el e me n t s1 9 8 3 .S id n e r1 9 9 0、Hy ma n. 1 9 9 3 ) .この解釈では高いピッチの声調を【 +h i h]( g もしくは H) 、低いピッチの声調を[ ‑ hi h日 も g. re. しくは L)と表示する。また、H、Lに加 えて中間の値であるM を設定 して 3段階の高さを表. Fo. 示す る研究 も多い17 ( s e l ki r ka ndS h e n1 9 9 0な ど)O 一方、後者の解釈では レジスター素性. of. i +/ ‑ Up e pr ]と トーン素性 [ +/ ‑ h i h]とい う2種類の声調素性を組み合わせて声調を音韻的に表 g 示する ( Yi p1 9 8 0 ) 。この解釈では、まず レジスター素性が話者の ピ ッチ レンジを二分 し、 トー. ity. ン素性がそれぞれのレジスター内をさらに二分 して高 さを表示する.例 として、 【 5 5 、4 4、3 3 、. Un ive rs. 1 1 1とい う 4段階の水平調がレジスター素性 と トーン素性の組合せによって どのように表示 さ 11 ) に示す。 れるのかを(. ( ll ) レジスター素性 と トーン素性による声調の表示例 げi p2 0 0 2: 4 3 ). +h i h g. (T ok. +Up er p. トーン素性. yo. レジスター素性. ‑ h i h g. 4 4 h i h g. +h i h g. 33 mi d. ‑ h i h g. 1 1 l o w. Th. es. is. ‑ Up er p. 5 5 e xt r ah i h g. or al. +/ ‑ h i h] g の声調素性のみを用いる解釈 より レジスター素性 と トーン素性を組み合わせた解釈は[. も多 くの声調を表示す ることが可能なため、声調の数が比較的多い漢語の音韻論的研究で主に. Do. ct. 用い られる ( Yi p1 9 8 0 、1 粥9など)0 声調素性を用いた解釈では、音節内でピッチが変化する曲線声調 ( c o n t o t qt o n e )を水平声調 の連続 として解釈 し、複数の声調素性 を並列することでその曲雛. を表現す る。例 として、表. 1 7 H、M、Lを用いる場合は、[ '/ ‑ h i h] g という二元的 ( b i na r y)な粛性ではなく一元的 ( L it m a r y)な素性を 用いているといえる。. 26.
(16) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 2. 2 ‑ 4では北京語の基本声調の基底表示 を示す。なお、Yi p(02 ) は 1種類の声調素性 を用いた解. ie s). 釈、Ti p( 1 9 8 0 ) は 2種類の声調素性 を組み合わせた解釈である1 8 。どち らの解釈でも上昇調であ. St ud. る TZは LH、下降調である T4は HLで表示 され る。. 声調名. T1. T2. T3. T4. 漢語名. 陰平. 陽平. 上声. 調値. 5 5 ( 高平調). 3 5( 上昇調). 21 ( 4 )〔 低平調). ign. 表2 4.北京語の基本声調の基底表示. Yi p(0 0 2: 1 8 0 ). 2. H. LH. L. Yi p( 1 9 8 0: 28 3 ). [ +Up p e r ] , HH. l +Up er p ] , LH. 去声. Fo. re. 5 3( 下降調). l +Up er p ] , HL. of. l ‑ Up er p ] , LL. HL. rs ity. 声調素性 を理論的に考察 した研究 ( 声調素性論)では、声調素性の種類に加 えて声調素性が TBU とどのよ うに連結す るのか とい う問題に関 しても多 くの議論がなされている。 しか し、. ive. 声調 とTBU の連結に関す る問題 は上海語の声調音韻論の話題 とは直接関連 しないので本論文. Un. ㌔ では扱わない1. 次に、韻律理論 ( me b i c ldl a e O r y)を解説す るo韻律理論 ( Li be r ma n1 9 75、Ha y e s1 9 8 0、1 9 95、. ok yo. Ha l l ea ndVe r g n a u d1 9 8 7など)は英語な どのス トレスや リズムの構造 を分析す るために提案 さ れた理論である。この理論ではス トレスの階層性を捉 えるために韻律構造 と呼ばれ る音韻的な. Do. ct. or. al. Th. es. is. 分析 される。. (T. 構造を提案 したo例 えば、̀ A血b L ma' 匝bb 畠ma ] に見 られ るス トレスの階層性は図 2 1 6のよ うに. この 2つの解釈はどちらが優れているのかを決定することは難 しく、現在ではどちらの解釈も広く使 われているoなお、Yi p( 1 9 8 0 ) は トーン素性【 + h i h] g をH、[ ‑ h i h] g をLと書き換えてお り、水平声調の基底 表示では同じ値の トーン素性を2つ並列させている。 1 9 声調とTBU に関する議論に関してはYi p( 1 9 9 5 ) や Ba o( 1 9 9 9 ) が詳 しい. l S. 27.
(17) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). W or d. \\\. 苫. s). へ. St ud ie. //. F A. qw ). O( S ). ロ( S ). l a. A. b a. 可叩. ma. ign. 図2 ‑ 6. Ka g e r( 1 99 5: 3 69 ) による̀ Al ab a ma'[ 畠l a b 畠ma ] の韻律分析20. Fo. re. ( S‑ s t r o n g、W ‑we a k). ' Al a b a ma ' の韻律構造は音節 ・フッ ト ( f wt )・音韻語の 3段階か ら構成 され る。韻律音韻論で. of. は同 じレベルの韻律構成素間でス トレスの強弱を決定す る必要があ り、̀ Al a b a ma ' の例ではフ. ity. 6のように強ス トレス ( S)と弱ス トレス ( W)が付与 され る21。 ッ トレベル と音節 レベルで図 2‑. Un ive rs. また、 この語の強勢の強 さはフッ トと音節のス トレスの累計によって決定 され る。 す なわち、 b a ' が第 1強勢 とな り、フッ トは弱ス トレス フッ トと音節で強ス トレスを付与 され る第 3音節̀ だが音節 に強ス トレスを持つ第 1音節 ̀ A' が第 2強勢 となる2 2 。音節か ら発話までの韻律構造の. 0. 一例 として Yi p( 20 2) が挙げるモデル を図 2 ‑ 7に示す。図 2 ‑ 7の韻律構造は、音節 ( O). ( Utterance). o. ット( め) ‑音韻語 ( pw) ‑音韻句 ( ph P) ‑イン トネーシ ョン句 ( I P) 一発話. ‑ フ. or al. Th. es. is. (T o. ky. の 6段階か ら構成 されている2 3 .. Do. ct. 2 0. 韻律構造の表記方法としては、図 2・ 石のような樹形図だけではなく格子 ( m甜 i 血1 如d) を用いた表記 紘 ( Li b e r mB u l1 9 7 5 )も提案されている0 21 ス トレスの決定方法は言語によって異なる ( a . f . Ka g e r1 9 9 5 ) 0 2 2 ̀ Al d) a ma ' の例では音節のス トレスの方がフットのス トレスよりも強いと解釈する。したがって、音節 レベルで強ス トレスを持つ第 1音節は、フットレベルで強ス トレスを持つが音節レベルでは弱ス トレス である第 4音節よりも強い強勢を持つ。 音節のス トレスがフットのス トレスよりも優先される。 2 3 語 によっては、モーラやアクセン ト句 ( Acce nt u al Phrw ) が韻律構成素として認められることもあ る ( C . f . P i e r r h u mb e r t a n dB∝ k mB u l1 9 9 8 ) .. 28.
(18) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). hbnAt i on dP hr w. :. c e ⅡI. IP. ign. Fo. re. 〜 ・中∧ I 血・ ∧. ‑ ▲中∧. St. ud ie. ′ へ / ヽ \ h P P h P P h P P h PP P h o 血 痕ca l P hr a s e: ∧ ∧ l ′〆↑ \ \ W P WP WP WP WP WP WP W P b T I O l o 由ca l Wo n t : P ∧ ∧ ∧ I∧ F o o t : +40+ ヰ ヰ車中 ヰ ∧∧∧ ∧ ∧ ∧ ∧∧ ∧ qqqqqqqqqq qq qqqqqqqqqqqq S y hb l e :. s). Ut t m. of. 図2 ‑ 7. Ti p( 2 0 0 2: 1 1 7 ) による韻律構造の例. ity. 韻律理論では一般的にフットレベルまでのス トレスを考察対象 としてお り、音韻語以上のレベ. rs. C . f .Ha y e s1 9 9 5 、Ka g e r1 9 9 5 ) .また、図 2 ‑ 7 ルでのス トレスを議論することはほとんどない (. ive. で示 したような韻律構造は統語構造 とは必ず しも一致 しない とい う点にも注意が必要である。. Un. 多くの言語でス トレス位置と統語構造が対応 しない例が観察 されてお り、そのような言語では 韻律構造 と統語構造が一致 していない ( この間題に関 しては I n k e l as a n dZee1 9 9 0を参照) o. yo. 以上見てきたように、韻律理論は主に表層に現れるス トレスを韻律の階層構造か ら分析 し解. ok. 1 】統語構 決するために提案 された音韻理論であるO‑方、ス トレス言語ではない漢語では 【. (T. 2】ス トレスの概念を用いて変調 造 とは一致 しない変調の適用範囲を分析するため、および 【 の仕組みを説明するために韻律理論が導入 された。. is. 9 8 0年代から漢語諸方言の変調がどのような範囲で適用 まず 【 1 】の問題か ら解説 しよう。 1. es. Yi p1 9 8 0、Wr ig ht1 9 8 3、S h i h1 9 8 6、Ch e n1 9 8 7な されるのかを分析する試みが行われ始めた (. Th. ど) 。漢語方言では変調の適用範囲が統語構造 とは完全には一致 しないケースが多 く存在す る. or al. ため、変調の適用範囲を分析する際にはこの不一致を考慮に入れなければならない。変調の適. Do ct. 上声)変調の例を( 1 2) に示す。 用範囲と統語構造が完全には一致 しない例 として、北京語の T3(. 29.
(19) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 1 2 )北京語 T3 ( 上声)変調の適用が統語構造 と一致 しない例 ( ch e n2 00: 3 6 9、 ローマ字表. s). 記は中国語の表記法 「ピンイン」に従 う). die. 北京帯 T3変調 :T3‑ T2l ̲ T3. (T2. T3). [邸 ne i 種 血o n g ] 酒j i u l好h ao b. [ wh i c h. k i n d. (T2. wl n e. g o o d. (T2. T3). T3). 「どの酒がいい ?」. C .【 紙 血i [ 老l a o 虎h u1 1 胞p a o. (T3. 7 2. 72. of. T3). [ 【 胎d a n小 x i a o ]鬼 g u i ]. l o ok ‑ f o r ( T3. c o r wa r d l y 2 2. d e v i l. T3). Un. 72. 「 弱虫をさがす」. ive. 拭血 d .【. r un. y. ig t e r. 「 紙の虎が走る」. rs it. p a p e r. gn. T3). re i. (T2. g o v e mo r. Fo. S 山k e‑d o wn. St u. a . [ 打d a 倒 da o ][ 省s h e n g 長z h a ng ] 「 省長を打倒す る」. yo. ( 1 2 ) の 4つの句は全ての音節が基底形では T3か ら構成 されている ( つま り、基底形では汀3 . T3 .. ok. T3 . T3 / となる) 。したがって、隣接 した 三つの T3には T3変調が適用 され るが、どの音節に T3. (T. 変調が適用 されるのかは句によって異なる。 まず、 ( l ュ a ,b ) と( 1 2 C ,d ) の間で異なる音節に T3 変調が適用 される点か ら統語構造の違いが ( 少なくとも部分的には)T3変調の適用に影響を. is. 与えていることが分かる。一方、( 1 2 a )と( 1 2 b ) お よて 旦1 2 C ) と( 1 2 d ) では統語構造が異なっている. es. のに全 く同 じ音節に T3変調が適用 され る。( 1 2 ) の例は T3変調の適用範囲が統語構造に影響を. Th. 受けつつ も、統語構造だけでは完全には捉 えられない ことを示唆 している。以上のような T3. al. 変調の特徴を分析す るため、従来の研究は T3変調の適用範囲 としてフッ ト ( S h i h1 9 8 6、満勝. 0. Do. ct. or. 利 1 9 9 8 )、韻律語 ( 満勝利 209 )や̀ Mi n i ma lRh yd i cUm m it ' 2 4( ch e n2 0 0 0 ) な どの韻律構成素を 導入 した解釈 を提案す る25。. 2 4. Ch e n( 2 0 0) はス トレスの付与が義務的であるフッ トの代わ りにス トレスの付与を一切考慮 しない ̀ Mi ni ma l Rh y hmi t cUn i t ' を提案 したOフッ トと̀ Mi n血a lRh 叫l mi cUn i t ' は韻律構造においてともに音節の上. 位に位置する構成素である。 2 5 ] 掠 語の韻律構造に関しては現在でも議論が行われている. これ らの議論に関しては王洪君. 第 4章が詳 しい。. 30. ( 2 0 0 8 ) の.
(20) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 漢語声調音韻論が韻律理論を導入 した第 2の理 由は、【 2】ス トレスの概念を利用 して変調の. . I . 2節で述べたよ うに上海語の広用式変調は 声調が変化する変調の両方が観察 されている26 2. ud ie. 。. s). 仕組みを説明するためである。漢語諸方言には、先行要素の声調が変化す る変調 と後続要素の. 第 1音節の声調が語全体のピッチを決定 し、後続要素の声調はピッチの決定に一切関与 しない。. St. これに対 して関南語では句末の音節のみが単独音節時の声調を維持 し、先行する全ての音節で. re. みが単独音節時の声調を維持 してお り、先行す る音節では調値が変化す る。. Fo. 1 3 )関南語の変調の例 ( Ch e n2 0 0: 439 ) ( yi. ign. Ch e n2 00、Yi p20 0 2) 。例 えば、( 1 3 ) の句では最終音節の ki n「 速い」の はピッチが変化す る (. s i 且 k' a ki n. 5 3 5 3. 5 3. 変調後の調値 2 2. 4 4 4 4. 53. ive. rs. 単独音節時の声調 4 4. ity. of. h e wr it e mo r ef a s t 「 彼はより速 く書 く」. Un. Yi p( 1 98 0 ) 、Dua nmu( 1 9 93、1 9 95 ) 、岩 田 ( 20 01 ) は、このような変調の方向性 を分析す るために. ス トレスの概念を導入 し、声調を維持す る音節にはス トレスが付与 され、声調が変化する音節. yo. にはス トレスが付与 されない と解釈 した。また、これ らの研究ではス トレスが付与 される単位. ok. としてフッ トなどの韻律構成素を漢語に導入 した。. (T. 以上、自律分節素理論 と韻律理論 を解説 した。漢語声調音韻論では各声調が どのよ うな声調 素性 を持ち、変調が起きた時にこれ らの声調素性が どのよ うに音節 と連結す るのかを分析す る. is. ために自律分節素理論 を採用 した.一方、変調が どのような適用範囲 と方向性 を持っのかを分. es. 析す るために韻律理論 を導入 した。以下の節では、これ らの理論が上海語の基本声調お よび変. Do ct. or al. Th. 調の分析にどのように適用 されたのかを説明す る。. 2 . 2 . 2 .上海語の基本声調の基底表示 上海語の基本声調 を音韻的に分析 した従来の研究では、声調素性 を利用 して基本声調の基底 表示を設定す る。これ らの研究では重視する設定基準が異なるため、基底表示の数や種類 には. 2 6 岩田 ( 2 0 01 ) は通方言的な執 融. ゝ ら漢語の変調の方向性について考察している.. 31.
(21) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 様々な解釈が提案 されている.本節では、従来の研究が提案 した上海語の基本声調の基底表示. die. 従来の研究では、【 1 】単独音節時の調値、【 2】頭子音 と音節構造の相補分布、【 3】広用式変. s). を整理す る。. St u. 調の分析の一貫性 とい う 3種類の基準にもとづいて上海語の基本声調の基底表示を設定す る が、どの基準を重視するのかで基底表示の数 と種類が異なる。以下では、先行研究が提案 した 上海語の基本声調の基底表示を重視 した基準ごとに解説す る。. gn. 1 】単独音節時の調値を重視 した基底表示を見ていこ う。この基準を重視 した解釈で まず、【. Fo re i. は、上海語の 5種類の基本声調の調値に対応 した基底表示を設定す る。例 として、Ch e n( 2 00 ) の第 5章で提案 された基底表示を表 2 ‑ 5に示す。なお、陰人 と陽人の基底表示に付 されている. of. " q "は、その音節の末尾音が声門閉鎖音であることを意味す る。. :. T2. 漢語名. 陰平. 調値. 5 3. 音韻表示. HL. T4. T5. 陰去. 陽去. 陰入. 陽入. 3 4. 23. 皇き. 1 2. LH. Hq. Lq. Un. ive. T3. rs. Tl. MH. yo. 声調名 .. ity. 表 2‑ 5. Ch e n( 20 0 221 ) による基本声調の基底表示. ok. この他にもZe ea ndMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) が提案 した 4種類の基底表示 も調値 との対応 を比較的重視. (T. した解釈であると言える ( Tl:ノ m/ 、TZ:仇m/ 、T3:瓜H/ 、T4:丑机 T5:瓜H/ ) .. 2】頭子音 と音節構造の相補分布 を重視 した基底表示 を見ていこう。上海語には 5種 次に、【. es. is. o n s e t )および音節構造か 類の基本声調が存在す るが、どの声調が出現するのかは音節頭子音 ( らかな りの程度予測す ることが可能である。上海語の基本声調の出現分布 と頭子音および音節. Th. 6に示す。なお、表 2‑ 6では当該の声調が出現す る環境を+、出現 しない環 構造の関係 を表 2‑. N " 、. 音節末子音が声門閉鎖音の音節 を " CVq "と表す。. Do. ct. or. al. CV 境を‑、 例外的に出現す る環境を ( +)で示 し、開音節お よび音節末子昔が鼻音の音節 を ". 32.
(22) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). Tl ( 陰平). T2 ( 陰去). T3 ( 陽去). T4 ( 陰入). T5 ( 陽入). 調値. 5 3. 3 4. 23. きき. 1 2. 音節構造. cvN. C∀N. CVN. CVq. 無声子音27. +. 共鳴音. +. St ud ie. 声調名. ign. CVq. re. 有声阻害音. Fo. 表2 ‑ 6を見ると、まず TlとT2は同 じ環境で出現す るため音韻的に対立す ることが分かる。一. of. 方、ともに上昇調であるT2と T3は、少数の例外2 島 を除けば頭子音の種類によって相補分布の 関係 にあると解釈す ることが可能である。すなわち、頭子音が無声子音の場合には T2、共鳴. ity. 音か有声阻害音である場合には T3が現れ るため、TZと T3は音韻的には対立 しない と解釈 し. Un ive rs. て同一の基底表示を与える。同様 に、T4と T5も 1例29を除けば頭子音の種類 によって相補分 布の関係 にあるため、共通の基底表示 を持っ と解釈できる。次に、声調の出現分布 と音節構造 CVN) で現れ、 の関係 に注 目したい。Tl、T2、T3 は開音節お よび音節末子音が鼻音の音節 ( ¶ 、T5は音節末子昔が声門閉鎖音の音節 ( cvq)のみで現れ る。すなわち、音節構造か ら Tl 、. o. T 2、T3と T4、T5の どちらが出現するのかは予測す ることが可能であるoさらに、広用式変調. ky. 表 2‑ 7) を持つ点に注 目す ると3 0 、T2 ( およ の変調型では T2、T3と T4がほとん ど同 じ調値 (. (T o. び T3) と T4 ( および T5 ) は音節構造の種類 によって相補的に分布 してお り、音韻的には対. Th. es. is. 立せずに同一の基底表示を持つ と解釈す ることが可能である31。. 2 7 零声母 ( Z 耶. ni i i ta l)を含む0. 】「 美」 は頭子音が共鳴音であるにもかかわらずT 2として現れ、T3の[ mE2 3 ]「 慢」 な. or al. 28 例え明 mE 3 4. どと声調のみで対立する。 ( 走にょうに百)」は頭子音が共鳴音にも関わらず T4となり、T5を持つl mA71 2 ]「 麦」 などと声調のみで対立する。ただし、例外はこの 1例に限られる。 3 0 表2 ̲ 7を見るとT3の変調のみ第 1音節の調値が異なるが、この調値の違いは第 1音節の頭子音の有 声性に起因すると解釈する。 31 ここで問題になるのは、T5変調がT 2、T3、T4変調とは全く異なる調値を取る点である ( 2. 1 1節表 2 1 2参照) 。この点に関して Dum u( 1 9 9 5 、2 0 0 8 ) は、T5変調ではT 2、7 3、T4変調とは別の変調規則 ( い e dge ・i n‑ assc ci di on' )が適用されるため、同一の音韻表示を持っていても異なる調値を取ると解釈 わゆる̀ する ( 広用式変調の分析に関しては 2 1. 3節参照) O. Do. ct. 29 l mA?5 5 ]「 口. 33. s). 表 2‑ 6.基本声調の出現分布 と頭子音および音節構造の関係 ( ch e n20 0 :1 4).
(23) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 表2 ‑ 7 . T2、T 3 、T 4が第 1音節の語で起きる広用式変調の変調型 ( 許宝華 ・湯珍珠 ほか 1 9 8 8 ). 3音節語. 4音節語. 5音節語. [ 3 3 . 4 4 ]. [ 3 3 . 5 5 . 21 ]. [ 3 3 . 5 5 . 3 3 . 21 ]. [ 3 3 . 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. T3( 陽去日2 3 ]. [ 2 2 . 4 4 ]. [ 2 2 . 5 5 . 21 ]. [ 2 2 . 5 5 . 3 3 . 21 ]. [ 2 2 . 5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. 陰入)は 皇 ] T4 (. 担. 4 4 ]. 巨星 . 5 5 . 21 ]. [ 塾5 5 . 3 3 . 21 ]. [ 塾5 5 . 3 3 . 3 3 . 21 ]. ign. St ud. T2 ( 除去日 3 4 】. 結果 として、この解釈では T2、T 3 、T 4、T5を 1つの基底表示にま とめ、Tlのみが これ らの. re. 声調 と音韻的に対立す ると考える。この解釈には上海語声調の音韻表示の数 を最小限に抑 えら. Fo. 3お よび T4と T5で観察 され る対立や T5変調) れる利点があるものの、多 くの例外 ( TZと T. of. 孤I nu( 1 9 9 5 、1 9 9 9 、2 0 0 8 ) や金順徳 を無視 しなければ成立 しない とい う問題点 も存在す るoDu. ity. 1 9 9 5 ) 、 C h e n( 2 0 0 0 ) の第 1章がこの解釈 を採用 している ( 表2 ‑ 8参照)0 (. Tl. TZ. T3. T4. T5. 漢語名. 陰平. 陰去. 陽去. 陰入. 陽入. 3 4. 2 3. 5 5. I L 2. LH. LH. LH. LH. Un. HL. yo. 音韻表示. ok. 5 3. ive. 声調名. rs. ‑ 8 .相補分布 を重視 した基本声調の基底表示 ( Du m u1 9 9 5など) 表2. 調値. (T. 最後に、【 3】広用式変調での分析の一貫性 とい う基準を重視 した基底表示 を取 り上げる。上 海語の声調音韻論 を扱 った研究の多 くは広用式変調 を分析す ることを目的 としている。そのよ. sis. うな研究では可能な限 り調値 に対応 させつつ も広用式変調の分析 に矛盾が出ないよ うな基底. .. he. . 3節参照)o以下、表 2 ‑ 9では Yi p( 1 9 8 0 ) 、 表示を設定す る ( 広用式変調の分析 に関 しては 22. al T. 沈同 ( 1 9 8 5 ) 、徐雲揚 ( 1 9 8 8 ) 、S e l k i r ka n dS h e n( 1 9 9 0 ) が提案 した上海語の基本声調の基底表示 を. Do. ct. or. 列挙す る。. 3 4. s). 2音節語. ie. 第 1音節の声調.
(24) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 表 2‑ 9.広用式変調の分析を重視 した基本声調の音韻表示. T2. T3. T4. T5. 漢語名. 陰平. 陰去. 陽去. 陰入. 陽入. 調値. 5 3. 3 4. 23. 55. Yi p(1980). +U,HL. + U, L. ‑ U, LH. +U, L. 沈同 ( 1 9 8 5 ) 3 2. +高一 下, 一 高. 一 高一 下, +高. 一 高十下, +高. 一 高一 下, 十高. 一 高十下, +高. 1 988) 徐雲揚 (. HL. MH. LH. MH. LLM. S&S(1990). Ⅰ i L. MH. LH. MH. LH. ie. T1. St ud. 声調名. s). ( S&S: se u dr ka n dS h e n、+/ ‑ U: +/ ‑ Up er p ). 1 2. of. Fo. re. ign. ‑ U, L H. 表 2‑ 9に示 した 4種類の解釈は T2と T4に同一の基底表示を設定す る. ( Yi p: / + U, L / 、沈同 :/ ‑. ity. e l k i f ka n dS h e n: n v m/ ) . このように基底表示を設定す るとT2と T4の 高一 下,+高/ 、徐雲揚、s. rs. どち らかの基底表示が調値 と対応 しなくなって しま うが、TZ変調 と刊 変調 を統一 して分析す. ive. ることが可能になる ( 表 2‑ 7で示 したよ うに T2変調 と T4変調 は全 く同 じ調値 を取る) 。また、 徐雲揚 ( 1 988) は T5に瓜LM/ とい うLow を 2つ連続 した基底表示 を設定す るが、これは T5が. Un. 第 1音節の場合に起きる広用式変調の特殊な音韻的振 る舞い ( 2. 2. 3. 1節参照)を簡潔に分析す. yo. るために設定 された基底表示である。. ok. 以上、重視 され る設定基準 ごとに上海語の基本声調の基底表示 を見てきた。上海語の声調 を. (T. 扱った研究の多 くは広用式変調 を分析す ることが最大の 目的であるため、調値 とは必ず しも対 応 しない基底表示 を設定す ることが少な くない。一方、調値 に正確に対応 させた基底表示は広. sis. 用式変調の分析を必ず しも射程には入れていないため、変調 を体系的に分析す ることは難 しい。. he. つま り、基本声調の基底表示の優劣 を評価す るためには、調値 との対応性だけではなく変調の. al T. e l k i f ka n dS h e n(1990) 分析 も考慮に入れ る必要があるoなお、本論文では特に言及が無い限 りS の基底表示に従 う ( 表 2‑ 9参照) 。 この基底表示は体系的な変調分析 を可能に しつつ も調値 と. える。. Do. ct. or. の最低限の対応は維持 してお り、先行研究の中で最 もバランスの取れた解釈であると筆者 は考. ( 1 9 8 5: S i ) は、[ ' / 一 高】 およ明 ' / ‑ ¶ という2つの声調素性を用いており、【 ←高 一f] が H、[ ‑ 高 一f] が M、ト高 +下l が Lを意味する。また、後半の[ +/ 一 高] は前半の声調素性と比較してピッチが高くなる場 合は 【 +高1 、低くなる場合には ト高】 となる。. 3 2 沈同. 35.
(25) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 次に、従来の研究による上海語変調の音韻論的分析を見てい こう。上海語変調の音韻論的分. St ud. 析は 1 98 0年前後か ら行われているが、これ らの研究の大半は広用式変調のみに対象を限定 し. ie s). 2 . 2 . 3 .広用式変調の音韓論的分析. てお り、窄用式変調 を分析 した研究は石汝傑 ( 1 9 95 ) や Che n( 20 00) な ど少数 に限 られ るo窄用 式変調 に関 しては第 5章で詳細に論 じるため、本節では広用式変調の分析のみを扱 う。. ign. 2 . 2節で述べたよ うに広用式変調 を音韻的に分析 した先行研究の多 くは、 自律分節素理論 も. re. 2. 3. 1節で 自律分節素理論を用いた分析 、2. 2. 3. 2 しくは韻律理論を利用 している33。 以下では、2.. Fo. 節で韻律理論 を用いた分析を解説す る。なお、以下の節では第 1音節の声調を変調の名前 とし. of. て用いる。例えば、Tlが第 1音節の場合 に起きる変調 は Tl変調、T5が第 1音節の変調は T5. rs ity. 変調 と呼ぶ。. ive. 2 . 2 . 3 . 1 .自律分節理論を用いた広用式変調の分析. Un. まず、自律分節素理論を用いた分析か ら見ていこ う。従来の研究は広用式変調で声調 と音節 が どのよ うに連結す るのかを分析す るために自律分節素理論 を利用 した。この理論 を上海語の. ok yo. ea ndMa dd i e s o n( 1 9 7 9 ) であるoZeea ndMa ddi e s onが 広用式変調の分析 に初めて導入 したのは Ze. 1 】第 1音節以外の声調 を全て削除 し ( 声調削除)、【 2】第 1 提案 した広用式変調の分析は、【. (T. 音節の声調 を第 1音節 と第 2音節 に 1対 1の関係で連結 し ( 声調連結)、【 3】第 3音節以降に w の声調 を挿入す る34( Lo w 挿入) とい う 3段階の音韻操作か ら構成 され る. は Lo. Z e ea nd. Do. ct. or. al. Th. es. is. による 2音節語 と 3音節語の分析 を( 1 4) に示す。 Ma d di e s o n( 1 97 9 ). これらに加えて、王理嘉 ( 2 0 0 8 ) や高橋 ( 2 0 1 0 ) は最適性理論 ( o p 血 叫 也叩 )を広用式変調の分析に 適用している。 しかし、これらの研究は従来の音韻解釈を最適性理論で表現し直すことが目的であるた め、本節では扱わない。 3 4徐雲揚 ( 1 9 8 8 脚 降の研究では挿入されるLo wをデフォル ト声調と解釈するO 33. 36.
(26) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 1 4 ) Z ke 弧dMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) による 2音節語 と 3音節語の分析 ( 調値は許宝華 ・湯珍珠ほか. L H. 声調連結35. gn. 声調削除. 軸 ∧L q 八L ・汀 八M. re i. 音韻表示. St ud ie. ∧ H ∧L ∧. L H. H. d i. →. 凸 ‑. Pi. L. d i. [ 2 2 . 4 4 】「エ レベーター」. d‑ ‑. a . T3変調 2音節語 " d i ( T3m, Hn P i C r l 瓜しげ. s). 1 9 8 8にもとづ く). Z l丘 y i ,→. rs it. y. H. 声調削除. 声調連結. M. q. H. A y@. L. Lo w挿入. ive. 音韻表示. Ay 8ー i T. i T. of. 」. T 八 M i. Fo. b . T2変調 3音節語 " i T C T 2 / MHr ) zl r T 3瓜H仰 y e F C r 3瓜Hげ' [ 3 3 . 5 5 . 21 ]「 幼稚園」. Un. 1 4 a ) では第 1音節の まず、声調削除では第 1音節以外の声調が全て削除 される。その結果、( LH、( 1 4 b ) では MHが残 る。次に声調連結では、削除を免れた第 1音節の声調を第 1音節 と第. yo. 2音節 に 1対 1の関係で連結す る。( 1 4 a ) では第 1音節に L、第 2音節に Hが連結 し、( 1 4 b ) では. ok. 1 4 a ) では声調連結によって全ての音節 第 1音節に M、第 2音節に H が連結する。2音節語の(. (T. 1 4 b ) では声調連結が終 に声調が連結 し、P. . H]とい う表層表示が出力 され る.一万 、3音節語の( わっても第 3音節には声調が連結 していないため、 Lo wの声調を挿入 して第 3音節 と連結 させ. is. る ( L. W挿入).その結果、P . H. L] とい う表層表示が出力 され る.. l. he s. 上記の分析は T5変調以外の広用式変調に適用す ることが可能である。一方 、T5変調は他の. lT. 変調 とは異なる変調パタンを持つため、Ze ea n dMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) は別個の分析 を提案す る. こ の分析では第 1音節の声調の連結の仕方が他の変調 とは異なる。以下では、3音節語を例 とし. Do ct. or a. ee n adMa d d i e s o nによる T5変調の分析 を示す。 てZ. 3 5. ndMa d d i e s o n( 1 9 7 9 : 1 2 2 ) では、この後に第 2音節の Hを M†に変更する音声的な規則を適用 し. zeez. ているが ( 1 4) では省略する。. 37.
(27) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 1 5 )Z k ea ndMa ddi e s o n( 1 9 79:1 2 6) による T5変調 3音節語の分析. i n. H. bi →. L H. 声調削除. iー. 班. L. 声調連結. H. 交差解消. ign. 音韻表示. 箇‑ f1 緋 i. l L. re. T5変調で も他 の変調 と同様 に第 1音節以外 の声調 を削除する。( 1 5 ) では声調削除に よ り第 1音. Fo. 節の LH が残 る。続 いて第 1音節の声調 を後続音節 に連結す るのだが、T5変調では第 1音節の. of. 声調連結) 。 このよ うに連結す ると、L と第 2音 声調 LH の うち Lを全ての音節 と連結す る ( 節お よび第 3音節 を連結す る線が H と第 1音節 を連結す る線 と交差 して しま う。 自律分節素. ity. 理論 ( Gol 由m仙 1 9 7 6) では連結線 の交差が禁 じられているため、 この交差 は表層表示 を出力. rs. ea ndMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ) は H と第 1音節 の連 す るまでに解消 され なければな らない3 6 .そ こで Ze. Un. z ee. ive. 結線 を削除 し代わ りに H を第 3音節 と連結 させ る音韻操作 を設定す る ( 交差解消)。その結果、. 1 5 ) の表層表示は町. LLH]となる37o (. ndMa a d di e s o n( 1 9 7 9) が提案 した上記 の解 釈は、広用式変調 の特徴 を透 明かつ簡潔 に分析. yo. Yi p1 9 8 0、沈同 1 9 85、徐雲 す ることに成功 してお り、これ以降の広用式変調 の音韻論的研 究 (. ok. 揚 1 988、S el ki d(a ndShe n1 99 0) は この解釈 を踏襲 してい る ( ただ し、後述す る金順徳 1 9 95. (T. を除 く) oそのため、Z既 a ndMa dd i e s o n以降の広用式変調の音韻論的研究は、 【 1】基本声調の. 2】追加的に設定 され る音声的な規則、お よび 【 3】T5変調 4音節語 で現れ る変種 基底表示、【. is. の扱い方 とい う周辺的な問題 に異 な る解釈 を提案す るにす ぎない。以下、これ らの問題 を簡潔. es. に解説す る。. Th. まず、従来の研 究は基本声調の基底表示 に様 々な解釈 を提案 してい る。 これ は既 に 2 . 2. 2節. Do ct. or al. で も述べた ことであるが、先行研究 には調値 との対応 を重視 した基底表示 を設定す る研究 もあ. れ ば広用式変調 の分析 をよ り体系的に進 めることを 目指 した基底表示 を設 定す る研 究 もある。 以下では、T4 ( 陰入日 塁] の基底表示 を例 として見てい こ う.ze ea n dMa d di e s o n( 1 9 7 9 ) や Yi p. 3 6. z e ea n dMdd i e s o n( 1 9 7 9 ) は連結線の交差の禁止は表層表示における制限であると解釈するため、 ( 1 5 ). のように派生の中間段階で連結線が交差することは容認する。 3 7 Dud. mu( 2 0 0 8 ) は第 1音節の声調が語全体に連結することをもっと明確に示すために、 LとH をそれぞ. れ第 1音節と第 3音節に連結 し、第 2音節は補間 ( n it e r p oht i o n)によってピッチが決定されるとい う解 釈を提案する.この解釈では、3音節語の表層表示はP. . 臥q となるO. 38. s). l A U L HAb LH LA. ' ' [ 出. 22. 23 ]「 録 音機」. ud ie. t G i C rl叫. St. " l o p( T5瓜Hni n( Tl叫.
(28) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). ( 1 98 0)は T4に調値 と対応する基底表示 ( それぞれ H、【 + Up p e r , L] )を設定 しているが、この. die. pは T4変調では 1つの声調が第 1音節 と第 2音節の両方 と連結するとい う例 Ma d d i e s o nと Yi. St u. 4変調 2音節語の分析を( 1 6 ) に示すo 外を認めたO例 として、T. 町 八HL. ( 1 6)Z e ea ndMa d d i e s o n( 1 9 79:1 2 2) による T4変調 2音節語の分析 什4:叫. gn. ∴f ‑. ‑ …. 声調連結. ity. 声調削除. of. H. 音韻表示. Fo re i. 1. つ r ● II k‑. ' 也i I ?c r 4叫 G y( Tl旧しげ' [ 塾 44]「 急 の需要」. … t‑. rs. ( 1 6) で声調削除を適用すると第 1音節の H Lか残 らない。そのため、声調連結ではこの H が. 3 g. ive. 例外的に第 1音節 と第 2音節の両方に連結 し、P. H]とい う表層表示を出力する .これに対 し. Un. icZke )( 1 98 8 ) などは T4に/MH/ とい う基底表示を設定 した. この基底表示は T4 て、徐雲揚 伊r の調値 【 塑】 とは一致 しないが、広用式変調の分析を体系的に行 うことができるとい う利点があ. ok. yo. 1 7 ) に示す. るo徐雲揚の角 締 引こ従った T4変調 2音節語の分析を(. (T. ( 1 7)徐雲揚 ( 1 9 88: 3 40、3 41 ) による T4変調 2音節語の分析. ( T4:瓜m/ ). Th. M. es. is. ぬ. ね. 」 訂. s TC r2/ MI 叩'B l. 441「 咳をする」. 八M 八 Tb H ハ. " k h a ?( T4叫. 声調削除. MH 声調連結. or. al. 音韻表示. Do. ct. ( 1 7 ) では声調削除が適用 されると第 1音節の MHのみが残 る。続いて声調連結では第 1音節の. MH が第 1音節 と第 2音節にそれぞれ 1対 lで連結 し、表層表示は【 M. H]となるo( 1 6 )と( 1 7 ) を. z e ea ndMa d di e s o n( 1 9 7 9 ) は自ら収集 した FO曲線にもとづいて T 2変調 2音節語の表層表示をP. H] と解 釈する。. 3 8. 39. s). nd 基底表示では声調削除が適用 され ると 1つの声調 しか残 らな くなるoそのため、Zeea.
(29) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 比較す ると、調値 と対応 した基底表示を設定 した( 1 6 ) では第 1音節の H が複数の音節に連結す. die. 一致 しない基底表示 を T4に設定 しなければな らないO このよ うに広用式変調を分析 した先行 研究の中には調値 との対応 を優先す る解釈 と変調の体系的な分析 を優先す る解釈の違いが存. St u. 2. 2節 も参照) 0 在す る ( 基本声調の基底表示に関 しては 2.. 先行研究間で見解が異なる 2点 目の問題 は、どのような音声的規則 を追加で設定す るのか と. gn. dMa dd i e s o n( 1 9 7 9 ) による広用式変調の分析はピッチの大まかな動向を い う問題である.Zee an. Fo re i. 捉えることは可能であるが、調値のわずかな差を表現す ることは難 しい。そのため、複数の先 行研究が表層表示を調値に正確に対応 させ るための音声的な規則 を追加で設定す る。先行研究. of. 1 8 ) に挙げる。 が提案 した音声的な規則の例を(. ity. ( 1 8 )先行研究が提案 した音声的な規則. rs. a . Ze ea ndMa d d i e s o n( 1 9 7 9 ). ive. H下降規則 : H‑ M†/LorM ̲#. Un. b.沈同 ( 1 9 8 5 ). [ 十下】挿入規則 ( 全ての語で適用):@‑. [ + 下]/ TI T2. yo. C .徐雲揚 ( 1 9 8 8 ). ok. L上昇規則 1:L ‑ M/ H̲L. (T. M̲L L上昇規則 2:L ‑ L† /. is. 2L† /L̲L L上昇規則 3:L ‑ 1/. es. ここで注意 したいのは、表層表示 と調値が どこまで正確 に対応す る必要があるのかに関 して先. Th. 行研究間で態度が異なるとい う点である.例 えば、徐雲揚 ( 1 9 8 8 ) は調値‑の対応 を重視 し多 く. al. の音声的規則を設定す るが、後述す る韻律理論を利用 した研究 ( s e l k i 止肌dS h e n1 9 9 0、Du m u. or. 2 08 な ど)は調値 とのわずかな違いは弁別的なものではない と判断 し、音声的な規則 をほ と. Do. ct. んど設定 しない。また、音声的な規則を大量に設定す ると音韻分析の経済性が損なわれ るとい う問題点 も存在す る。そのため、音声的な規則 を追加すればす るほど優れた解釈になるとは必. ず しもいえない。 先行研究の間で解釈が異なる問題の 3点 目は、T5変調 4音節語で観察 され る変調変種 を音 韻論的分析 で どの よ うに扱 うのか とい う点であ るo T5変調 4 音節語 には 匹 . 5 5 33 . 21 ]と. 40. s). る例外 を認 めなければならないが、声調 と音節が 1対 1の連結関係 を維持す る( 1 7 ) では調値 と.
(30) 東京外国語大学博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies). 【 ユ ⊥22. 22. 23 ]とい う 2種類の変種が現れるが、この 2種類の変種のどちらを音韻的な分析の対. die. 辺. 5 5. 3 3. 21 1 を分析対象 としているが、徐雲揚 ( 1 988 ) は【 ⊇. 55 . 33. 21 】 は T3変調 との誤読である 【. s). ndMa dd i e s o n( 1 9 79) 、Yi p( 1 98 0) は 象 と して扱 うのかは先行研究 に よって異 な る. Zeea. 2 2. 22. 23 ] を分析対象 として扱 う。また、沈同 ( 1 98 5 ) と金順徳 ( 1 995 ) は両方の変 と解釈 して臼上.. St u. 種を考察対象 としてお り、それぞれに異なる声調連結規則を適用する0T5変調 4音節語で観 察 される変調変種の問題は第 3章で詳細に論 じる。. gn. 2】音声的規則、【 3】T5変調の 以上見てきたように先行研究は 【 1 】基本声調の基底表示、【. Fo re i. ndMa ddi e s o n( 1 9 79 ) が提案 した声調削 変種の扱いに関 して様々な解釈を提案 しているが、zkea. w挿入からなる分析を採用する点ではほとんどの研究が一致 している。ただ 除、声調連結、Lo 1 9 95 ) だけは Ze ea n dMa d di e s o nの分析を採用せず独 自の解釈 を提案 したO以下で し、金順徳 (. of. ea ndMa ddi e s onの解釈が複雑であると指摘 は、金順徳の解釈を簡単に解説する.金順徳は Ze. rs. ity. 8は金順徳が提案 した変調曲線であるo し、代わ りに 「 変調曲線」とい う概念 を提案 したo図 21. (T. ok. yo. Un. ive. A. ( A‑Tl 、ち‑T2、C‑T3、D‑T4、E‑T5). es. is. 図 2‑ 8.金順徳 ( 1 99 5: 201 ) が提案 した変調曲線 と各声調が指定す る始点. Th. 金順徳によると、全ての広用式変調は上記の変調曲線に従ってピッチが変動 し、第 1音節の声. al. 図 調はこの変調曲線の始点を決定する役割を持つ。 すなわち、Tl変調では変調曲線の頂点 (. or. 2‑ 8の A) が始点 となるためピッチは下降 し、T2変調か ら T5変調はそれぞれの始点 ( B、C、. Do. ct. D、E) か らピッチが上昇 した後に下降する。 この解釈 自体は非常に簡常であるが、金順徳は. ndMa d di e s o n( 1 9 79 ) この解釈を形式化す る際に大量の規則群を設定 したため、結果的に Zeea. とは比較にならないほど複雑な解釈になって しまった。 そのため、金順徳 ( 1 9 95 ) 以外にこの解 釈を採用する研究は管見の限 り存在 しない。 d d i e s o n( 1 9 79 ) 本節を要約すると、自律分節素理論を用いた広用式変調の分析では Zee andMa. 41.
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