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腎虚血再灌流に対するIschemic Preconditioningの 腎保護作用 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 福 澤 信 之

学 位 論 文 題 名

腎虚血再灌流に対するIschemic Preconditioning の 腎保護作用

学位論文内容の要旨

【背景と目的】腎のIschernicpreconmtioning(IP)の免疫反応,病理組織形成における炎 症担当細胞,特に好中球とマクロファージの動態,抗IL110受容体抗体(anti一IトlorAb) がIPに与える影響について検討した 。

【材 料と方法】C57BU6マウスを用い以 下の実験に分類し生存率、腎機能,腎組織像,ケ モカイン産生,腎に浸潤した炎症細 胞数を検討した。

実: 験ヱ32℃45分の 腎虚 血再 灌流障害を与える5日前に腎に32℃30分の短い虚血再灌流 障害 を与 えた 群 をIP群,32℃45分 の腎 虚血 再灌 流障 害を 与え る5日 前Sham手 術を 行っ た 群 をnon一IP群 ,Sham手 術 の5日 前 にSham手 術 を 行 っ た 群 をSham群 と し た 。 実 験21卜10の 効 果 を 減 ず る こと によ るIPに対 する 影響 を検 討す るた め に, 実験1の3 群に 加え ,non一IP群お よびIP群 に対 し, 再 灌流 後30分,9時 間後 にラ ッ トIgGま たは ラット抗マウスIL′10受容体抗体(anti―IL「lorAb)200ロg/bodyを投与した2群を追加 した。

【 結 果 】 実 験 ヱ 生 存 率 と 腎 機能 :non―IP群は4日 以内 に80%の マウ ス が死 亡し たが IP群 は全例生存し,再灌流後の血清ク レアチニン値は有意に低値であった。腎組織像:

再灌 流前 ではnonlIP群と 比較 してIP群 は近 位尿 細管 を中 心に軽度の尿細管壊死および Cast形成を認めた。  一方,再灌流 後ではnon.―IP群の腎に高 度の尿細管壊死,Cast形 成を 認め たがIP群で は明 らか に軽 度で あっ た。 好中 球お よびマクロファージの浸潤:

non−IP群と比較してIP群の再灌流後の腎組織への好中球浸潤は 軽度であった。  一方,

Sham群,non|IP群 ,IP群に おい て, 再灌 流 前か らす でに マク ロフ ァー ジを 認め ,再 灌流 後で はnonーIP群と 比較 してIP群 は高 度 の浸 潤を 認めた。(lRT−PCRおよびELISA 法 に よ る 腎 組 織 中 の ケ モ カ イ ン (CXCL1,CXCL2,CCL2) 産 生 の 評 価 : 再 灌 流 後 の CXCLlおよ びCXCL2発 現量 およ び蛋白濃度はnon.−IP群と比較しIP群に有意な低値を認 めた 。  再灌 流 前で は両 群に 有意 差を 認め なか った 。  一方,CCL2mRNA発現量および 蛋白濃度に関しては再灌流後におけるnon.―IP群と比較してIP群は有意に高値であった。

好 中 球 か ら のMye10peroxldase(MPO) の 放 出 : 再 灌 流 後 のIP群 のMPOレ ベ ル は non―IP群 と比 較し 有意 に低 値であっ た。尿細管のアポトーシスと繊維化:再灌流後の アポ トー シス 細 胞数 はIP群で 有意に少なかった。また,線維化に ついてはnon―IP群で 近位 尿細管,遠位尿細管,腎問質に広 範囲の線維化を認めたがIP群では軽度であった。

実 験2腎 虚 血 再 湛 流 後 の 腎 組織 中IL.一10mRNAの発 現量 :再 灌流 後で はIPはnon−IP と比 較し 有意 に 発現 して いた 。  生存率と腎機能:再灌流45日後 の生存率はIP十IgG群 およびIP十anti―IL′10ぬb群ともに100%であり有意差を認めなかった。  しかし,腎機 能に 関し てIP十antiーIL′10rAb群はIP十 培G群 に比 しsーCrおよ びBUNの有意な上昇を 認 め た 。 ケ モ カ イ ン の 産 生 と 好 中 球 お よ び マ ク ロ フ ァ ージ 浸潤 細胞 数:CXCL1およ びCXCL2のmRNA発現 量は ,IP十ant―I卜1( )rAb群はIP十IgG群と比較し有意に高く,

浸潤 好中 球数 も 有意 に多 かっ た。  一方,CCL2の発現量は,IP十ant―I卜10rAb群はIP

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十 IgG群 と 比 較 し 有 意 に 低 く , 浸 潤 好 中 球 数 も 有 意 に 少 な か っ た 。

【 考 察 】IP群 で は 再 灌 流 後 の 腎 組 織 中 のCXCL1,CXCL2のmRNA発 現 量 , 蛋 白 濃 度 に おいていずれもnon−IP群と比較し低値であり,好中球浸潤 も少なかった。  また好中球 活 性 を 示 すMPOの 放 出 はIP群 で 減 少 し た 。  こ の現 象は 好中 球そ のも ののMPO放 出が 抑制されたのか,好中球数減少 に伴う相対的な減少なのかは不明である。  マクロファー ジも初期の炎症反応を担う細胞 のーつであり主に死細胞やアポトーシス細胞の貪食や炎症 性サ イ トカ イン の産 生を 行っ てい る。 今回 の結 果ではマ ウスの腎にはresidentのF4/80 陽性細胞,すなわち組織中のマ クロファージが存在しており,non―IP群では虚血再灌流 後にその数は有意に減少していたが,虚血再灌流障害後にマク口ファージが死滅するのか,

それ と も腎 組織 外へ 移行する のかは不明である。予備実験として腎虚血再灌流後にCCL2 とマ ク ロフ ァー ジの 変化を調 べ得た結果では,再灌流24時間後ではマク口ファージ浸 潤 細胞 数 は減 少し ,再 灌流5日 後か らCCL2およ びマ ク口ファージ浸潤細胞数が増加して い た。  本実 験で はnon一IP群 では 再 灌流 後に 減少 したのに反し,IP群では有意に増加 し ていた。  しかしこの結果がIP,すなわち初回の短時間の虚血再灌流障害後の影響による CCL2産生およびマクロファージ の浸潤が2回目の再灌流24時 間後に一致したものなのか,

それ と もIPの効 果に より腎組 織へのマクロファージ浸潤が亢進したのかは不明である 。 マクロファージ数が著明に増加 したことに関連して,活性化マクロファージ由来の炎症性 サイトカイン産生が亢進すれば 好中球の浸潤も亢進し腎組織障害は促進されると考えられ る。 し かし ,本 実験 ではIP群 の腎機能は極めて良好であり病理組織学的にも障害は少 な かった。従ってマクロファージ の炎症性サイトカイン産生を抑制する何らかの因子が働い ている可能性が示唆された.本 実験においてはanti‑IL―lOr圸を投与することにより腎機 能が悪化し,浸潤好中球数の増 加と浸潤マクロファージ数の減少を認めた。  これはマク ロファージにあるIL′10レセプ ターに作用しシグナル伝達が阻害されたために炎症性サイ トカイン産生が促進され,その 結果として好中球浸潤も増加したものと考えられる。  ま た,アポトーシス細胞数と腎機 能障害の程度は相関すると報告されている。  本研究にお いて もIP群 で有 意にCXCL2の 発現 が 抑制 され てお り,IP後からマクロファージによる ア ポトーシス細胞の貪食が起こりNitric0姐deによルケモカイ ンの産生が抑制され好中球減 少に至ったと考えられた。  さ らに腎のIPによって尿細管上皮のアポトーシスは抑制され ており,結果として腎機能は良 好に保たれていた。  これは腎の虚血再灌流障害において 尿細管上皮細胞のアポトーシス の誘導が腎問質の線維化をも誘導する重要な因子であると の報 告 と合 致す る。 本研 究で はIP群に おい て再 灌流30日 後の腎問質の線維化はnon−IP 群に比し極めて少なかった。こ れは尿細管上皮のアポト←シスの誘導が抑制されたことが 一因として挙げられる。

【結 論 】腎 臓のIPは 虚血再灌 流後に腎組織の好中球浸潤を軽減させる臓器保護効果が あ る. 一 方,IPは 虚血 再灌流後 のマク口ファージの浸潤を増強させる。また腎虚血再灌 流 後の組織障害の軽減にIL一10が 関与することが示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

腎虚血再灌流に対するIschemic Preconditioning の 腎保護作用

  腎のIschemic preconditioning(IP)の免疫反応 病理組織形成における炎症担当細胞,

特 に好中 球とマク 口ファージの動態,抗IL―10受容体抗体(anti―IL―lOrAb)がIPに与え る 影響に ついて検 討した.C57BL/6マ ウスを 用い以下 の実験に 分類し 生存率,腎機能,

腎組織像,ケモカイン産生,腎に浸潤した炎症細胞数を検討した. 32℃45分の腎虚血再灌 流 障害を 与える5日前に 腎に32℃30分の虚血 再灌流障害を与えた群をIP群とし,non−IP 群 ,Sham群の3群で 比較検 討した. また,ILー10の効果 を減ず ることに よるlPへの影響 を検討するために,ラットIgGまたはanti一IL―lOrAbを投与した群に分け比較検討した,

non−IP群 は4日 以内に80%のマウスが死亡したがIP群は全例生存し,再灌流後の血清クレ ア チニン 値は有意 に低値であった.腎組織所見において再灌流後ではnonーIP群の腎で高 度 の尿細 管壊死 Cast形成を 認めたがIP群では明らかに軽度であった,  再灌流後の好 中球浸潤はIP群で軽度であった.また,マクロファージの浸潤はIP群では高度であった.

再 灌流後 のIP群のCXCL1およびCXCL2発現量および蛋白濃度はnon―IP群と比較し有意に少 な く,IP群 の再灌流 後のCCL2mRNA発 現量お よび蛋白濃度は有意に多かった.再灌流後の IP群 のMPOレベルはnon―IP群と比較 し有意 に低値であった,アポトーシス細胞数はIP群 で 少なく ,線維化 はIP群で 軽度であ った,IPの再灌流 後のIL−lOmRNA発現量はnon−IP と 比較し 有意に多 く発現し ていた .腎機能 はIP +antiーIL一lOrAb群でIP +IgG群に比し

‑.Crの 有意な 上昇を認 めた.CXCL1およ びCXCL2のmRNA発現量は,IP +ant−IL―lOrAb群 はIP +IgG群 と比較し 有意に 多く,浸 潤好中 球数も有 意に多か った, また,CCL2の発現 量は.IP +ant―ILーlOrAb群において有意に少なく,浸潤マクロファージ数は有意に少なか っ た.以 上より腎 臓のIPは 虚血再灌 流後に腎 組織中の浸潤好中球数を軽減させる臓器保 護 効果,IPは虚血再 灌流後 のマク口 ファージ の浸潤の増強を示すこと,腎虚血再灌流後 の組織障害の軽減にIL‑10が関与を示した.

  口 頭発表 において 笠原正 典教授よ り,腎臓 以外の他の臓器でもIPによって浸潤マク口 フ ァージ 数やIL‑10産生が増加するような知見の有無についての質問があった.この質問 に 対し,IPにおけるIL‑10産 生の増加 は肺や 肝臓で認 められる という 報告はあるが,浸 潤 マク口 ファージ 数の増加 に関し ては報告 がないことを回答した,また,IPに関する好 中 球や単 球以外の 細胞浸潤 形態に ついての 質問があった.この質問に対し,腎の早期の 虚 血再灌 流におい て好中球 や単球 以外のT細胞,B細胞の浸潤は認められなかったこと,

樹 状細胞 に関して は今後の 研究課 題である ことを回答した,また,マク口ファージにお け るケモ カインの 発現制御 のメカ ニズムに ついての質問があった.この質問に対し,マ ク ロファ ージはNO,Heat shock proteinなど の臓器保護効果を有する分子によって,好

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中球 遊走ケモカインの産生の制御が行われていると回答した .ついで,上出利光教授よ り浸潤好中球数および浸潤マク ロファージ数の虚血再灌流直前や再灌流24時間後以外の動 態に ついて質問があった,この質問に対し,IP後の浸潤好中 球数の経時的変化は再灌流 直前 ではほとんど浸潤なく24時間をピークに減衰し,マク口 ファージについては,24時 間後 以降は測定データがなく今後の研究課題であると回答し た,また,IPが他の臓器に 与え る影響についての質問があった,この質問に対し,腎のIPによる他臓器への保護的 効果 については不明であると回答した,また,マク口ファー ジのサプセットの判別方法 につ い て質 問が あっ た, この 質問 に対 し, マク ロフ ァージ は好炎症性のMl,抑制性の M2に 分 類 さ れ ,M2はCD23やCD168な ど の 標 識 で 解 析 可 能 で あ る と 回 答 し た ,   こ の論文は,腎虚血再灌流におけるIPの腎保護作用のメカ ニズムに関する研究の先駆 けと なることで北海道医学雑誌において高く評価され,今後 のIPのメカニズムの解明お よびその知見が臓器移植に臨床 応用されることが期待される.

  審 査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程に おける研鑽や取得単位など も併 せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格 を有するものと判定した,

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