博士(工学)項 東輝 学位論文題名
予見制御による走行移動体の振動・姿勢制御に関する研究
学位論文内容の要旨
近年の メカ ト口二 クス技 術の成 果に より口 ボット に様々 な可能 性を 与える ことが 期待されるよ うにな った。 産業 用ロボ ットが 一歩リ ードし て実 用化さ れ現代 社会の 経済 発展に 大きな貢献を果 たして いる。 産業 用口ボ ットの 成功に 刺激さ れて ,ロボ ットの 活動範 囲を さらに 広げて社会生活 の改善 や安全 に役 立つ, いわゆ る先端 (ある いは 極限) ロボッ トの出 現が 望まれ ている。種々開 発され ている 極限 ロボッ トにお いて, その作 業目 的を果 たすた めに, 作業 環境に 応じて,自律的 に移動 し作業 しな ければ ならな いので ,自律 移動 技術は 工場外 の極限 領域 で作業 するロボットに とって 欠かせ ない もので ある。
宇宙口 ボッ トにお いて, 月や惑 星を 探査す る惑星 探査ロ ボット ,農 業にお いての 農作物収穫と 薬剤散 布ロボ ット ,森林 におい ての搬 送口ボ ットナょどの極限ロボットがすでに提案されている。
これら の宇宙 ,農 地,森 林など の分野 での応 用を 考えた 口ボッ トはす べて 作業環 境が整備されて いない 不整地 とし ている 。口ボ ットは 移動す ると き不整 地の凸 凹によ る影 響を克 服しながら作業 しなけ ればな らな い。こ のよう な作業 環境に 対し て対応 できる のは車 輪型 移動ロ ボットが考えら れる。
本論文 では ,上述 したよ うな不 整地 を走行 する車 輪型移 動ロボ ット を意識 して, 走行路面の凸 凹によ る移動 体の 振動お よび姿 勢の制 御問題 に関 して論 じてい る。
不整地 走行 時には 口ボッ トの機 動性 を高め るため に,ま た積荷 の安 全性と 環境セ ンサの安定保 持のた めに, 路面 凸凹の 影響に よる口 ボット 車体 の動揺 や上下 動を抑 制す ること が重要である。
そのた めには ,従 来のば ねとダ ンパの ような パシ ッブな 要素に 加え, アク チュ工 一夕によって制 御され たカを 発生 する能 カをも っアク ティブ サス ペンシ ョンの 使用が 提案 されて いる。いかに良 いアク ティブ サス ペンシ ョン機 構の制 御系が 構成 される かとい う問題 は, いかに より良い移動ロ ボ ッ ト の 振 動 ・ 姿 勢 制 御 が で き る か と い う 問 題 に と っ て 重 要 な 意 味 を も っ て い る 。 今まで のア クティ ブサス ペンシ ョン 機構の 制御に 関する 研究は ほと んど上 下方向 の自由度しか 持たな い一輪 移動 体を制 御対象 として 行われ てき た。四 輪をも つ移動 ロボ ットの 振動および姿勢
制御 問題を 考える ことに なる と,四 輪に対 応する 四っの サス ペショ ン機構 の相互干渉はどうして も存 在する 。上下 方向の 振動 のみに 注目し た従来 の研究 では 振動制 御の制 限性能はいくら良いと いっ ても, 四輪を もつ移 動ロ ボット の場合 にその まま適 用す ると口 ボット 全体の制振性能が必ず しも 良いと は言え ない。 四輪 をもつ 移動口 ボット を制御 対象 として いる研 究もあるが,動的モデ ルを 導出せ ずに四 っのサ スペ ンショ ン機構 を別々 に制御 して いる。 本来で あれば四輸モデルを導 出し ,その 相互干 渉を考 慮に 入れた上で振動制御問題を扱うべきであると本論文では考えている。
本論 文では 四輪を もつ 移動体 に対し てアク テ三 工一夕 を考慮 し,路 面凸凹による車体の上下,
口ー リング および ピッチ ング 方向の 変位( あるい は角度 )を 表せる 振動モ デルを導出する。さら にこ のモデ ルに基 づいて ,路 面の前 方情報 を利用 するデ ィジ タル最 適予見 サーボ系を構成するこ とに よって ,各方 向の振 動を 抑制し ながら ,移動 体の姿 勢制 御もで きるこ とを示している。ここ で構 成され る最適 予見サ ーボ 系はフ ィード バック 制御と フィ ードフ オワー ド制御を併合した制御 系で あり, 路面凸 凹の影 響を 積極的 に除去 するこ とがで きる 。さら に普通 のサーボ系やプロセス 系に おいて 制御目 的を達 成す るため には, 必然的 にエネ ルギ ーを注 入する ことが必要なのに対し て, 振動制 御にお いては 不要 な振動抑制が目的であるので,省工ネルギーも重要である。とくに,
工ネ ルギ一 補給が 困難そ ある 極限の 状況で 利用さ れる移 動口 ボット では省 工ネルギーは極めて重 要で ある。 予見制 御では 未来 情報を 有効に 利用す るため アク テュ工 一夕の 動作に無駄か少なくエ ネル ギーが 十分に 利用さ れる という 効果が 示され る。
一方 ,実際 の移動 体の 振動姿 勢制御 への応 用を 考える 場合に は路面 の凸凹変位の計測値はセン サの もつ物 理的な 制約に よっ て,車 輪から の相対 変位の 形で しか得 られな いものである。もし,
四輪 をもつ 移動体 のーっ の車 輪にあ たる路 面の凸 凹変位 を常 に基準 変位に すれば,ほかの三っの 車輪 にあた る路面 の変位 はこ の基準 変位に 対して の相対 変位 となる 。これ で,現在時刻の路面の 変位 は移動 体の姿 勢とサ スペ ンショ ン機構 の状態 により 容易 に算出 するこ とができる。このこと を考 慮して ,本論 文では この ような 相互変 位を採 用した 振動 モデル を導出 し,ローリングとピッ チ ン グ 方 向 の 振 動 を 抑 制 し な が ら , 姿 勢 制 御 が で き る 制 御 法 も 提 案 し て い る 。 また ,本論 文では ,四 輪をも つ移動 体が不 整地 走行時 に要求 される 制御指標と特徴などに応じ て , ど の 程 度 路 面 情 報 を 利 用 で き る か に よ り , 可 能 な 四 っ の 制 御 方 式 を 提 案 し てい る 。 @ 移 動 体 の 前 輪 と 後 輪 の 未 来 路 面 情 報 を 全 部 利 用 す る 全 予 見 制 御 方 式 ◎ 移 動 体 の 前輪 の サ スペ ンショ ン機 構を路 面情報 のセン サ系と し, それを 利用す ること によ り , 後 輪の サ ス ペ ション 機構 のみに 予見フ ィード フエ ワード 補償を 施す部 分予見 制御 方式 ◎ 現 在 時 刻 の 路 面 情 報 の み を 利 用 す る フ イ ー ド フ オ ワ ー ド 補 償 制 御 方 式
@ 路面情 報を一 切利 用しな いフィ ―ドバ ック制 御方 式
本論 文は次 のよ うな構 成とな ってい る。第1章 では, 研究 の背景 ,現状 および 本研 究の特 徴に っ い て述べ ている 。第2章で はまず ,ア クティ ブサス ペンシ ョン 機構の 構造に っいて 検討し ,設 計 したア クティ ブサス ペンシ ョン 機構に 基づい て,移 動体 の振動 ・姿勢 制御を実現するための移 動 体の上 下,口 ーリン グおよ びピ ッチング方向の変位を表せる振動モデルを導出している。また,
路 面変位 の計測 の作業 を容易 にす る移動 体の姿 勢制御 に注 目した 相対変 位を採用したもうーっの 振 動 モ デ ルを 導 出 し て いる 。第3章と 第4章では 後述す る内 容の基 礎とし て,工 ラー システ ムを 用 い た最適 サーボ 系と最 適予 見サ― ボ系な どの構 成に っいて 述べて いる。 第5章では 上述し た移 動 体の前 輪のサ スペン ション 機構 を路面 情報の センサ 系と し,そ れを利 用することにより,後輪 の サスペ ンショ ン機構 のみに 予見 フィ― ドフォ ワード 補償 を施す 部分予 見制御方式を実現するた め に,必 要とす る最適 部分予 見サ ーボ系 の構成 法を開 発し ,その 具体的 な構成にっいて述べてい る 。また ,係数 行列の 理論計 算に よって ,新し く開発 され た最適 部分予 見サーボ系は今まで構成 さ れ ている 最適予 見サー ボ系 との間 に統一 性を有 して いるこ とを明 らかに してい る。 第6章 では 移 動体の 振動・ 姿勢制 御にお ける 四っの 制御方 式にっ いて それら の二次 形式評価関数値を比較す る こ とによ ってそ れぞれ の制 振性能 を評価 してい る。 第7章 では 数値実 験によ り,そ れぞれ ニつ の 振動モ デルを 用いて 構成さ れた 制御系 の移動 体の振 動と 姿勢制 御への 有効性が示されている。
第8章 で は 本 論 文 全 体 に 関 し て の 結 論 や 今 後 の 課 題 な ど に っ い て 述 べ て い る 。
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 土谷 武士 副 査 教 授 長谷 川 淳 副 査 教 授 島 公 侑
近 年,宇 宙,農 地,森 林な どの分 野での 応用を 考えた 極限 作業ロ ボット が提案されている。こ れら のロ ボット は作業 環境が 整備さ れて いない 不整地 として いる 。この ような作業環境に対して 対応 でき るもの として 車輪型 移動口 ボッ トが考 えられ る。
不 整地走 行時に は口ボ ット の機動 性を高 めるた めに, また 積荷の 安全性 と環境センサの安定保 持の ため に,路 面凸凹 の影響 による 口ボ ット車 体の動 揺や上 下動 を抑制 することが重要である。
本論文では,不整地を走行する車輪型移動口ボットを意識して,走行路面の凸凹による移動体 の振動および姿勢の制御問題に関して論じている。
今までのアクティブサスペンション機構の制御に関する研究のほとんどは上下方向の自由度し か持たない一輪移動体を制御対象として行われてきた。四輪をもつ移動口ボットの振動および姿 勢制御問題を考えることになると,四輪に対応する四っのサスペンション機構の相互干渉はどう しても存在する。本研究は四輪モデルを導出し,ト―夕ルシステムの観点からその相互干渉を考 慮 に 入 れ た 上 で , 制 御 問 題 を 扱 う べ き で あ る と い う 立 場 に 立 っ て い る 。 本論文出は四輪をもつ移動体に対して,路面凸凹による車体の上下,ローリングおよびピッチ ング方向の変位(あるいは角度)を表せる振動モデルを導出している。さらにこのモデルに基づ いて,路面の前方情報を利用するディジタル最適予見サ―ボ系を構成することによって,各方向 の振動を抑制しながら,移動体の姿勢制御をできることを示している。ここで構成される最適予 見サーボ系はフィードバック制御とフィードフォワード制御を併合した制御系であり,路面凸凹 の影響を積極的に除去することができる。エネルギー補給が困難である極限作業環境で利用され る移動口ボットでは省工ネルギーは極めて重要である。予見制御では未来情報を有効に利用する ためアクチュエータの動作に無駄が少なくエネルギーが十分に利用されるという効果が示され る。
一方,実際の移動体の振動・姿勢制御への応用を考える場合には路面の凸凹変位の計測値はセ ンサのもつ物理的な制約によって,車輪からの相対変位の形でしか得られないものである。もし,
四輪をもつ移動体のーっの車輪にあたる路面の凸凹変位を常に基準変位にすれば,ほかの三っの 車輪にあたる路面の変位はこの基準変位に対しての相対変位となる。これにより,現在時亥qの路 面の変位は移動体の姿勢とサスペンション機構の状態により容易に算出することができる。本論 文ではこのような相対変位を採用した振動モデルを導出し,口ーリングとピッチング方向の振動 を抑制しながら姿勢制御ができる制御法も提案している。
また,本論文ではどの程度路面情報を利用できるかによって,可能な四っの制御方式を提案し ている。
@ 移 動 体 の 前 輪 と 後 輪 の 未 来 路 面 情 報 を 全 部 利 用 す る 全 予 見 制 御 方 式 ◎移動体の前輪のサスペンション機構を路面情報のセンサ系とし,それを利用することによ り,後輪のサスペション機構のみに予見フィードフエワード補償を施す部分予見制御方式
◎ 現 在 時 刻 の 路 面 情 報 の み を 利 用 す る フ ィ ー ド フ エ ワ ー ド 補 償 制 御 方 式
@路面情報を一切利用しないフィードバック制御方式
本論文では部分予見制御方式を実現するために,必要とする最適部分予見サーボ系の構成法を 開発し,その具体的な構成にっいて述べている。また,係数行列の理論計算によって,新しく開 発された最適部分予見サーボ系は今まで構成されている最適予見サーボ系との間に統一性を有し ていることを明らかにしている。
移動体の振動・姿勢制御における四っの制御方式にっいてそれらの二次形式評価関数値を比較 することによってそれぞれの制御性能を評価している。最後に数値実験により,それぞれニっの 振動 モデルを用いて構成された制御系の移動体の振動と姿勢制御への有効性を示している。
これを要するに,著者は不整地走行移動体の振動・姿勢制御に関する研究において制御対象の モ デ リ ン グ や 制 御 系 構 成 な ど の 面 で 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て , 著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。