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海産魚類仔稚魚の栄養要求に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)高橋隆行 学位論文題名

海産魚類仔稚魚の栄養要求に関する研究 学位論文内容の要旨

  1960年代以降において海産魚類の人工孵化技術の研究・開発により、マダイ、ヒ ラメ、トラフグおよびシマアジなど主要増養殖対象魚種の種苗生産技術が確立され た。また、種苗生産対象魚種の拡大および生産尾数の飛躍的な増大が果たされてきた。

しかし、種苗生産量産化技術の確立された魚種においても形態異常や体色異常が発生 しており、更なる質的改善が望まれている。また天然種苗に比較して人工種苗は、放 流した際に捕食され易いことなどが指摘されている。一方、プリ類やマハタ、ウナギ などの魚種にいては、量産化技術が依然確立されていない。したがって、増養殖業の 更なる発展のためには、有用な形質を持った健苗の大量、且つ安定した種苗生産技術 の確立が嘱望される。そのためには、親魚養成技術や採卵技術、仔稚魚の飼育技術、

栄養要求の解明、疾病対策など多くの知識や知見の集積が必要である。中でも、海産 魚類仔稚魚の栄養要求にっいては解明すべき課題が多い。そこで本研究では、海産魚 類仔稚魚期に給与する生物餌料(ワムシおよびアルテミア)の栄養価にっいて調べる とともに、その調整技術の確立を検討した。さらに、ワムシに不足する栄養素と推定 されたタウリンの強化方法を検討し、その効果を実証した。最後に、人工配合飼料研 究 開 発 に お い て 海 産 魚 類 稚 魚 期 の 栄 養 要 求 多 様 性 に つ い て 検 討 し た 。   現在、海産魚類種苗生産に不可欠な生物餌料であるワムシおよびアルテミアは、消 化吸収性には優れるが、その栄養価は質・量ともに不足する成分が多く、栄養強化が 必須である。そこで、市販されている生物餌料栄養強化剤を用いてワムシおよびアル テミアの栄養強化方法とその栄養価について検討した。その結果、生物餌料の栄養強 化に影響を及ばす要因として、栄養強化剤の種類、その添加量、強化時間、強化密度、

強化水温などに左右され、それらにより生物餌料に含有される脂質含量およびEPA やDHAなどのn‑3HUFA含量に差異 が生じるこ とが明らか となり、種 苗生産対象魚 種の栄養要求を理解した上で各種栄養強化条件を設定する必要があることを示した。

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また、ワムシおよびアルテミア中のビタミン含量には、海産魚類の要求量以下である ビタミンが存在し、改善が必要であることを示唆した。

  自然界の動物プランクトンと比較してワムシ中に微量しか含有されないタウリン という物質に着目し、タウリンが海産魚類仔魚期において必須性およぴ有効性のある 物質であるか検証を試みた。そのためにはワムシにタウリンを強化する必要があり、

最初に、ワムシの栄養強化水槽にタウリンを直接溶解させる方法により強化を試み た。その結果、ワムシは水中に溶解しているタウリンを取り込み、蓄積することを初 めて明らかにした。また、栄養強化水槽中のタウリン濃度とワムシ中に蓄積されたタ ウリン量は、直線的な比例関係となることを確認し、アルテミア幼生および天然コペ ポーダレベルまで強化可能であることを明らかにした。ワムシヘのタウリン強化量 は、強化開始16時間で一定となり、またタウリンを強化したワムシ中のタウリン含 量の消失については、強化終了8時間後においても終了直後の70%以上含有してお り、仔魚に摂餌されるまで十分量が維持されていた。以上の結果より、直接法による ワムシヘのタウリン強化方法が確立された。また、同様な直接法により、数種水溶性 ビタミンのワムシへの強化も可能であることを確認した。

  ワムシヘのタウリン強化方法を確立したことにより、海産魚類仔魚期におけるタウ リンの必須性や有効性について検討することが可能になった。そこで、タウリン強化 ワムシを用いて、ヒラメ、マダイ、トラフグ、アユなどの海産魚類孵化仔魚の飼育試 験を実施した。その結果、ヒラメ、マダイ、アユ、マダラにおいてタウリン未強化ワ ムシ給与区に比較してタウリン強化ワムシ給与区で成長性およぴ飢餓耐性に対する 活カが有意に改善された。但し、ワムシヘのタウリン強化量と成長性船よぴ飢餓耐性 活力向上効果の関係は明確にはならなかった。試験終了時の供試魚中タウリン含量よ り、ワムシに強化されたタウリンは、仔魚に吸収、蓄積されることが確認され、ワム シ中の強化量に比例して仔魚中蓄積量も増加した。以上の結果より、タウリンはトラ フグを除く、ヒラメやマダイ、アユ、マダラぬど海産魚類の仔魚期において、成長改 善や活力向上に必須および有効な物質であることが明らかになった。換言すると、タ ウ リン は ワム シ に不 足 する 栄 養素 の ーっ で あり 、EPAやDHAなどのn‑3HUFAと同 様に栄養強化する必要があることを解明した。

  海産魚類仔魚期においては、消化器官が未発達であり、人工配合飼料の単独飼育は 依然不可能であり、生物餌料が不可欠となっている。しかし、胃腺が分化して成魚型     ー232一

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の消化系が完成する稚魚期においては、人工配合飼料の有効利用により生物餌料の大 部分を代替可能となるが、それ単独で必要十分な栄養価が求められるため、各魚種の 栄養要求の把握が必要である。本研究では、トラフグ稚魚期のりン要求量を把握する ため、実用飼料におけるりン酸塩の適正添加量を検討した。飼育試験の結果、成長や 飼料効率などの飼育成績および試験終了時における軟X線撮影による脊椎骨形態異 常発生率もりン酸塩混合物1.0%以上にて改善された。さらに、供試魚全魚体中のミ ネラル分析により、全魚体中のりンおよびカルシウム含量は、リン酸塩混合物1.5% 以上の添加により、ほば一定となった。また亜鉛、鉄、銅などの微量元素はりン酸塩 混合物の添加量が増加するに従って全魚体中含量が低下した。以上の結果より、トラ フグ稚魚期における実用飼料へのりン酸塩混合物の至適添加量は、飼育成績および脊     1

椎骨形態異常発生率から判断すると1.0%以上であり、魚体成分も考慮すると1.5% であり、その際の有効性リン含量(水溶性リン含量)は、飼料中0.55および0.64% であることを示した。

  最後に、ヒ・ラメ無眼側体色異常(黒化)の発生に及ばす因子の解明のために各種飼 料原料の相違による黒化出現率を比較した。その結果、幾っかの原料ロットにおいて 黒化発生が助長されることが確認され、ビタミンD以外の栄養要因によっても黒化 出現を助長する物質が存在することが明らかとなった。また、栄養的要因以外に黒化 出現に大きく影響を及ばすことが推定されるストレス要因について、コルチゾルを飼 料に段階的に添加して飼育試験を実施した。その結果、コルチゾル高濃度添加区   (O.lmgg茄よび1.Omg/g)で成長性および飼育成績が低下した。また、コルチゾル の添加量に比例して黒化度十3の出現率が増加し、コルチゾルが黒化出現の因子であ ることを示唆した。

  以上本研究において、ワムシおよびアルテミアの栄養価の過不足と実用的た生物餌 料の栄養強化方法を明らかにした。また、ワムシヘのタウリン強化方法を初めて確立 し、海産魚類仔魚期におけるタウリンの必須性や有効性について解明した。きらに、

稚魚期の栄養要求多様性に対応するために人工配合飼料研究開発を進めた。これらの 結果は、海産魚類仔稚魚期の栄養要求研究を進展させ、種苗生産技術の向上に繋がる ことが期待される。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

足 立 伸 次 原    彰 彦 都 木 靖 彰 東 藤    孝

学 位 論 文 題 名

海産魚類仔稚魚の栄養要求に関する研究

  1960年 代 以 降 に お い て 海 産 魚 類 人 工 孵 化 技 術 の 研 究 ・ 開 発 に よ り 、 種 苗 生 産 対 象 魚 種 の 拡 大 お よ び 生 産 尾 数 の 飛 躍 的 な 増 大 が 果 た さ れ て き た 。 し か し 、 種 苗 生 産 量 産 化 技 術 が 確 立 さ れ た 魚 種 に お い て も 形 態 異 常 や 体 色 異 常 が 発 生 し 、 更 な る 質 的 改 善 が 望 ま れ て い る 。 一 方 、 有 用 魚 種 に お い て も 量 産 化 技 術 が 依 然 確 立 さ れ て い な い 魚 種 も 存 在 す る 。 増 養 殖 業 の 発 展 の た め に は 、 有 用 な 形 質 を 持 っ た 健 苗 の 大 量 、 且 つ 安 定 し た 種 苗 生 産 技 術 の 確 立 が 嘱 望 さ れ る 。 そ の た め に は 、 親 魚 養 成 技 術 や 成 熟 ・ 採 卵 の コ ン ト ロ ー ル 技 術 、 仔 稚 魚 の 飼 育 技 術 の 向 上 が 必 要 で あ る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 海 産 魚 類 仔 稚 魚 の 栄 養 要 求 を 解 明 し 、 種 苗 生 産 技 術 の 向 上 に 寄 与 す る こ と を 目 的 と し た 。   現 在 、 海 産 魚 類 種 苗 生 産 に 不 可 欠 な 生 物 餌 料 で あ る ワ ム シ お よ び ア ル テ ミ ア の 栄 養 価 は 質 ・ 量 と も に 不 足 す る 成 分 が 多 く 、 栄 養 強 化 が 必 須 で あ る 。 本 研 究 で は 、 ワ ム シ お よ び ア ル テ ミ ア の 栄 養 強 化 方 法 と そ の 栄 養 価 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 生 物 餌 料 の 栄 養 強 化 は 、 栄 養 強 化 剤 の 種 類 、 そ の 添 加 量 、 強 化 時 間 、 強 化 密 度 、 強 化 水 温 な ど に 左 右 さ れ 、 種 苗 生 産 対 象 魚 種 の 栄 養 要 求 を 理 解 し た 上 で 各 種 栄 養 強 化 条 件 を 設 定 す る 必 要 が あ る こ と を 示 し た 。

  自 然 界 動 物 プ ラ ン ク ト ン と 比 較 し て ワ ム シ 中 に 微 量 し か 含 有 さ れ な い タ ウ リ ン と い う 物 質 に 着 目 し 、 タ ウ リ ン が 海 産 魚 類 仔 魚 期 に お い て 必 須 性 お よ ぴ 有 効 性 の あ る 物 質 で あ る か 検 証 を 試 み た 。 ま ず 、 ワ ム シ の 栄 養 強 化 水 槽 に タ ウ リ ン を 溶 解 さ せ る 直 接 法 を 用 い る こ と に よ っ て 、 ワ ム シ が 水 中 に 溶 解 し て い る タ ウ リ ン を 取 り 込 み 、 蓄 積 す る こ と を 初 め て 明 ら か に し た 。 次 に 、 栄 養 強 化 水 槽 中 の タ ウ リ ン 濃 度 と ワ ム シ 中 に 蓄 積 さ れ た タ ウ リ ン 量 は 、 直 線 的 な 比 例 関 係 と な る こ と を 確 認 し 、 ア ル テ ミ ア 幼 生 お よ び 天 然 コ ベ ポ ー ダ レ ベ ル ま で 強 化 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 ワ ム シ 中 に 強 化 さ れ た タ ウ リ ン は 、 強 化 終 了8時 間 後 に お い て も 終 了 直 後 の70% 以 上 含 有 し て     ‑ 234

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おり 、仔魚に摂餌されるまで十分量が維持されるなど、直接法によるワムシへのタウ リン 強化方法を確立した。さらに、同様を直接法により、数種水溶性ビタミンのワム シへ の強化も可能であることを明らかにした。次に、タウリン強化ワムシを用いてヒ ラメ 、マダイ、トラフグ、アユなどの海産魚類孵化仔魚期におけるその必須性や有効 性を 検証する飼育試験を実施した。その結果、各魚種においてタウリン未強化ワムシ 給与 区に 比較 して タウ リン 強化 ワムシ 給与 区で 成長 性及 ぴ飢 餓耐性に対する活カが 有意 に改善することが明らかとなった。試験終了時の供試魚中タウリン含量より、ワ ムシ に強化されたタウリンは、仔魚に吸収、蓄積されることが確認され、ワムシ中の 強化 量に比例して仔魚中蓄積量も増加していることが明らかとなった。以上の結果よ り、 タウリンはトラフグを除く、ヒラメやマダイ、アユ、マダラなど海産魚類の仔魚 期に おいて、成長改善や活力向上に必須および有効な物質であることが明らかになっ た 。 換 言 す る と 、 タ ウ リ ン は ワ ム シ に 不 足 す る 栄 養素 の ― っ で あ り 、EPAやDHA な ど のn‑3HU FAと同 様 に 健 全 な 種 苗 を 得る ため には 栄養強 化す る必 要が ある こと を解明した。

  人 工配合飼料は、それ単独で必要十分を栄養価が求められるため、各魚種の栄養要 求の 把握が必要である。本研究では、トラフグ稚魚期のりン要求量を検討する目的に て実 用飼料におけるりン酸塩の適正添加量を検討した。その結果、飼育成績および脊 椎骨 形態 異常 発生 率の 防除 は、 リン酸塩混合物1.0%以上にて改善された。さらに、

供試 魚全 魚体 中の ミネ ラル 分析 により、その至適添加量は、1.5%であることが解明 され 、そ の際 の有 効性 リン 含量 (水溶 性リ ン含 量) は、 飼料 中0.64%であることを 示した。

  ヒ ラメ無眼側体色異常(黒化)発現因子の解明のためにヒラメ飼育試験を実施した 結 果 、 ビタ ミンD以外 の栄 養要 因に よっ ても 黒化 出現 を助長 する 物質 が存 在す るこ とが 明らかとなった。また、栄養的要因以外に黒化出現に大きく影響を及ばすことが 推定 されるストレス要因について、コルチゾルを飼料に段階的に添加して飼育試験を 実施 した 。そ の結 果、 コル チゾ ルの添 加量 に比 例し て黒 化度+3の出現率が増加し、

コルチゾルが黒化出現の因子であることを示唆した。

  以 上本研究において、ワムシおよぴアルテミアの栄養価の過不足と実用的な生物餌 料の 栄養強化方法を明らかにした。また、ワムシへのタウリン強化方法を初めて確立 し、 海産魚類仔魚期におけるタウリンの必須性や有効性にっいて解明した。さらに、

稚魚期の栄養要求多様性に対応し、人工配合飼料研究開発を進めた。これらの成果は、

海産 魚類仔稚魚期の栄養要求研究を進展させ、種苗生産技術の向上に関して極めて重 要な 知見を提供したものと高く評価され、本論文が博士(水産科学)の学位を授与さ れる資格のあるものと判定した。

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参照

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