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     ニカラベンによる肝温虚血再灌流障害の軽減)

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)横田良一      学位論文題名

A Novel Hydroxyl Radical Scavenger ,Nicaraven ,     Protects The Liver From Warm Ischemia     And Reperfusion Injury

     (/ ヽイドロキシルラデイカルスカベンジャー:

     ニカラベンによる肝温虚血再灌流障害の軽減)

学位論文内容の要旨

背 景

  

現 在、 肝移植は生体 肝移植及び脳死肝移植が行われているが、心停止後ドナ ーの肝臓は温 虚 血 時間 が長く使用で きない。心停止後ドナーからの肝移植実現には、虚血再 灌流障害の強 カ な 軽減 が必要である 。肝虚血再灌流障害においては、活性酸素種が深く関与 し、なかでも ハ イ ドロ キシルラディ カルは生体内に消去系がなく、強い障害性を持っため、 その制御が虚 血 再 灌流 障害を軽減す るためには重要と考えられる。新しいハイドロキシルラ ディカルスカ ベ ンジャー、ニカラベンは水溶性と脂溶性の

2

つの媒性を持ち、細胞内外に速やかに到達し、

ハ イ ドロ キシルラディ カルを効果的に消去することができる。二カラベンの虚 血再灌流障害 に お け る 効 果 は 、 脳 、 心 臓 、 腎 臓 ては 報告 され てい るが 、肝 臓で は報 告さ れて いな い。

方法

  

雌性ピーグル犬を用い、肝門部及び肝静脈を

2

時間遮断し、門脈血は内頚静脈にバイノくス する完全肝温虚血モデルを作成した。コント口ール群(n =12 )と治療群(n 二ニ

6

)の2 群とした。二 カ ラ ベ ン は 、 虚 血 前

60

分問 と再 灌 流

30

分前 より

3

時 間、

2m g/kg/min

に て静 脈内 持続 投与 した。検討項目は、循環動態、レーザードッブラー法による肝組織血流量、肝逸脱酵素

(ALT)

、 肝 組 織 過 酸 化 脂 質

(Phosphatidylcholinehydroperoxide (PCOOH)

phosphatidylcholine (PC)

,phosphatidyl‑ethanolamine (PE) 、組織学的肝障害、肝組織好中球浸潤 、肝エネルギ ー代謝産物、

2

週生存率である。

結果

  2

週生存率はコントロール群て25 %(3/12) 、治 療群では100 %

(6/6)

てあった。(P く

0.01)

治 療群では、肝組織て の過酸化脂質生成が抑制され、肝組織血流量と循環動態 が改善し、AI 」T と

ET‑1

の上昇、組織 学的肝障害と肝組織好中球浸潤が抑制された。

考察

  

心 停止 後ドナーのモデル として、ブリングル法では肝静脈血の流入が問題となり 適切では

なく 、肝 門部及び肝静脈を クランプする完全肝温虚血モデルを作成した。クランブ の完全性

はICG 残存 率が 虚血 中90 %以 上で ある こと で 確認 した 。ハ イボ キサ ンチ ンー キサ ンチ ン系

によ る再 灌流後のスーバー オキサイドによる生体膜の損傷は肝虚血再灌流障害の重 要な因子

(2)

と考えられている。スーノくーオキサイドはハイド口ゲンベルオキサイドとなり、フェントン 反応によルハイドロキシルラディカルが生成する。ハイドロキシルラディカルは非常に反応 性が高く、生鉢膜蛋白や脂質を過酸化する。また、スーバーオキサイドには消去系のスーバ ーオキサイドジスムターゼが存在するのに対して、ハイドロキシルラディカルには特異的な 消去系が存在しない。これらのことから、ハイドロキシルラディカルを消去することが障害 を軽減するために重要てあると考えられ、消去剤を用いた多くの実験カ

i

報告されている。し かしこれらは、in vitro ては効果が認められても、invivo では効果が一定していない。こ の矛盾は生体内ての薬剤の分布と関係があると考えられ、この点てニカラベンは両媒性てあ ることから、生体内で細胞内外に分布し有効に作用すると考えられる。ニカラベンの有効性 は、ラットの心臓虚血再灌流、脳外科領域てはネコの脳虚血、人のくも膜下出血での報告が あるが、同様にハイド口キシルラディカルが重要な働きをしていると考えられる肝虚血再灌 流障害における報告はなく、これがはじめての報告である。ニカラベン投与量については、

脳 、 心臓 の 報 告か ら

10‑5

10 ‑3M

の血 中濃度が必 要と考え られ、こ れを得る ために

1

〜5mg/kg/min で予備実験を行った。その結果、Im g/k g/min では十分な効果が得られず、

2mg/kg/min

で は副作用な しに効果 が得られ 、5mg/kg/min では徐脈が出現したことから

2mg/kg/min

を至適投与量と決定した。

  

我々は、再灌流直後にスーバーオキサイド、ハイドロキシルラディカルが大量に発生し、

生体膜の脂質過酸化を起こすとの仮説て研究を行っている。実際にラディカルスカベンジャ ーであるラザロイドの実験では、肝臓ヘ虚血前に薬剤を到達させ虚血中に保っための前投与 と再灌流直後から発生するスーバーオキサイドを消去するための後投与の両方を行った群が 最も効果的であった。このため、ニカラベンは虚血前60 分間と再灌流30 分前から3 時間の 前後投与とした。

  

二カラベン1 分子はだ゜dimerization により2 分子のハイドロキシルラディカルを消去す る。ニカラベンがハイド口キシルラディカルを消去することによって脂質過酸化を抑制する ことは、CL‑HPLC 法により過酸化脂質の定量を行い確認した。過酸化脂質測定は、マロン ジアルデヒドの測定を行った報告が多いが、感度と特異性の点で問題性が指摘されている。

我々は、最近確立され、生体膜脂質の主要構成成分であるPC 、PE とその一次過酸化物であ る

PCOOH

PEOOH

を 測 定 す る 方 法 を 行 い 、 そ の 比 で あ る

PCOOH/PC

PEOOH/PE

を 脂 質 過 酸化 の 指 標と した。

PCOOH/PC

PEOOH/PE

は再灌流

15

分 後にピー クとなり 、コン ト ロール詳で は前値の15 及び6 倍となったが、治療群ては4 及び1.5 倍とその増加は有意 に抑制された。

  

肝組織血流量は再灌流後15 分で、コントロール群では虚血前値の

27

%に対して、治療群 では105 %と有意に高値であった。これは、肝実質細胞と異なり活性酸素種からの防御系が 発達していない類洞内皮細胞が、その攻撃から守られた結果、微小循環が保たれたためと考 えられる。類洞内皮細胞が障害されると1 )エンドセリン、工イコサノイド、NO などの血管 作動性物質が活性化、2 )接着分子の発現と好中球活性化、3 ) PAF 、サイトカイン活性化、

が起きる。その結果、微小循環は低下すると考えられる。

  

エンドセリンは強カな内因性血 管収縮物質てあり、活性酸素種により上昇するとの報告があるが、コントロール群に比べて 治療群では再灌流後有意に上昇が抑制された。様々な接着分子を発現した類洞内皮細胞ヘ浸 潤した好中球も、さらに活性酸素種を産生し微小循環障害を起こす。治療群では再灌流後の 肝組織への好中球浸潤が抑制された。

  

虚血前投与により虚血中の高工ネルギ一代謝産物の減少及びハイボキサンチン、キサンチ ンの蓄積が抑制された。脂質過酸化は虚血中にも起きるとの報告がある。虚血中に細胞膜が 障害を受けると、細胞内

Ca

を汲み出す

ATP

を消費することになる。ニカラベンは虚血中、

生体膜の脂質過酸化を防ぐために、ATP 低下とハイボキサンチン、キサンチン蓄積を抑制、

ひ いては再灌 流後のハ イドロキ シルラデ ィカルの産生を抑制している可能性もある。

36 ‑

(3)

結諭

  

ニカラベンは肝組織脂質過酸化を抑制し、肝温虚血再灌流障害を軽減した。ニカラベンは、

心 停 止 後 ド ナ ー か ら の 肝 移 植 を 可 能 に す る 有 カ な 候 補薬 剤に なり うる と考 えら れる 。

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

A Novel Hydroxyl Radical Scavenger ,Nicaraven ,     Protects The Liver From Warm Ischemia     And Reperfusion Irijury

(/ ヽイドロキシルラデイカルスカベンジャー:

ニカラベンによる肝温虚血再灌流障害の軽減)

    本邦にお いてもH齬翻干移植カsiM{ffテされているが、ドナー数は不足し、その解決策のーっとして心停止後 ドナ ー から の肝 臓 移植 があ げられる。その実 現には、肝温虚血 再灌流障害(以下同 障害)の強カな軽 減が必 要で あ る。 再灌 流 後の スー バーオキサイド゛ 、さらにフェント ン反応から生成する ハイドロキシルラ ディカ ルは、生体内 に消去系がなく生 体日莫を過酸化し 同障害の重要な因子 とされる。ハイド ロキシルラディカルの 消去 が 同障 害を 軽 減す るた めに重要であると 考えられ、実際こ れを消去する薬剤を 用いた多くの実験 が報告 されているカs、未だ 臨昧応用可能な薬剤 はない。両帝 離也:)新しいハイド□キシルラディカルスカベンジャ ー、ニカラベ ンは細胞内タuこ速やかに至 |ほし、ハイドロ キシルラディカルを効果的に消去すると考えられ、

同障 害 に対 する 軽 成効 果を 検 討し た。 雌 陸ピ ーグ ル 犬を 用い た2時 儲夢 嚮温虚血モデ)t/で、ニカラ ベンを 虚 血 前60分 間 と 再 灌 流30分 前 よ り3時 恩 頚 静 脈 よ り 投 与 し た 。 治 摩 群 で は 、 有 意 に 生 繍 肝 組 叢 血 流 量、循環動態 カ識ぞ善丶肝過酸f凹旨質生 成.肝逸悦酵薬勧 眼肝静脈血中エン ドセリン−1上昇、肝組織津書と 好中球浸潤カ 寸q瑞IJされた。肝実質細胞 と異なり活f錨磐瓢いらの防御系カェ発達していない類洞内皮細抱が、

その攻撃から 守られ、肝‑I旨質 過酸fヒカs瞞止肝 静脈血中エンドセリ ン‑1上昇を扣瑞|L微小循f勅瀕能れ、そ の後 の 肝実 質細 胞 障害 を軽 減したためと考え られた。二カラベ ンは肝温虚血再灌流 障害を軽減した。 また、

肝温虚血時間 の長い心停止後の ドナーからの肝移 植のための有カな薬 剤となる可能性カ ェあると考えられた。

  審査にあた って、加藤教授か ら全身の血圧への 景彡響について、ニ カラベンは肝臓に 特異的に有効なのか、

薬剤 使 用量 の設 定 につ いて 、前段与の意義丶 ハイボキサンチン 蓄積抑制の織事、過 酸化脂質の経時的 変化、

虚血再灌お都 章害におけるニカ ラベンの意義につ いて質問があった。 申請者tま、ハイドロキシルラディカルお よびニカラベ ンに関する文献、 申請者自身の実験 データを用いて、全 身の血圧に対する 直接作用はないこと、

血圧′m亀まハイド口 キシルラディカルを 消去し虚血再灌荘 瀦鑵諱呈減の結果と考えられること、投与量は文献 と予 備実験から決 定したこと、前段 与由童血中の障害を4WIJす るためであること、 ハイボキサンチン 蓄積抑 制に っ いて は、 棚 亨は 明ら カ′ではなく今後 の研究が必要であ ること、脂質過酸化 は再濯流15分後に ビーク を認めその後 イ氏下すること、100%の生 存を得たことカゝらもニカラベンの重要f生は高いと考えられることを 匝塔した。次 いで、浅香孝姑受 からノヽイド口キ シルラディカルの損|lとミ皿暇SODよりも有効なのカ丶虚血再

38 ‑

   

(5)

灌滴障害におけ る好中球の重要は 虚血中のATP低下の抑乕|‖ こついて、四塩化炭 素、エンドトキシ ンなどに よる活性埴壹素 の障害で用いたか 、肝冷保存に有用か について質問があった。申請者fま、フリーラディカルと ハイドロキシル ラディカル、SOD、奸中球に関する文南ふ申ヨ青者自身の実嘉貪うぇータを用いて、ハイドロキシ ルラディカルの 而VI VOでの直接の損I健は困難であり、従来より鋭敏な脂質i醪珂ヒ(畊餅票を用いてこれを証明 したこと、SODについてほ 翁価が一定してい ないこと、スーリ ヾーオキサイドより もハイドロキシル ラディカ ルの 方 力羈 曜牲 が 高いことから二カラ ベンの方が有効と 考えられること、 好中球は再灌流後期 で肝組繊に浸 潤し 重 要で ある と 考えられること、ATP低下の 抑制については今後 の研竇めs必要と考えられる こと、四塩化 炭素、エンドト キシン投与モテシ レにニカラベンは用 いていないこと、 冷保存にも応用可能でその実験も期待 され る こと を回 答 した 。最 後 に、 藤堂 教 嫐ら 活陛 酸 素に よる 障害とェン ドセリン産生の関係 について、心 停止後ドナーか らの肝移植に向け て、今後どのような 実験系を検討すべ きかにっいて質問 カsあった 。申請者 は、 ハ イド ロキ シ ルラ ディ カ ルお よび ニ カラ ベン 、 工ン ドセ リ ン、 内皮 細 脆障 害に 関する文i申請者自身 の実験データを 用いて、ハイドロ キシルラディカルに よる血管内皮障害 によってエンドセリンカ漣!生される こと、灌1潮女でcD使用、H蔵器保 存液で¢蜘カ淇B待されると 回答した。

  こ の 論文 はニ カ ラベンカ嗣褞虚血再 灌流障害を軽減し 丶今後の心停止後 ドナーからの肝移植 の可能陸を示 唆したことで高 く評価され、その 臨床応用ヘ向けて更 なる研究が期待さ れる。

  審 査 員一 同は 、 二カラベンによる肝 温虚血再灌流障害 の軽減という新し い知見を明らかにし た本研究の成 果を高く評価し 、大学院譟隈にお ける研鑚や取得単位 なども併せ申i青者カ縛士( 医学)学位を受け るのに充 分な資格を有す るものと半嵯した 。

参照

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