博士(薬学)森 篤雄 学位論文題名
原発性1V 型高トリグ 1J セリド血症の成因解明を可能にした りポ蛋白リパーゼ遺伝子解析法の開発に関する研究
学位論文内容の要旨
最近、1V型高トルグリセルド(triglyceride: TG)血症は小粒子高密度LDL(low density lipoprotein)の生成に深く関わっていることが分かり、これが冠動脈疾患のりスクを上げる こ と も分 か っ てき た 。N型 高TG血 症 の 発症 とTG分 解 酵 素LPL遺 伝子 欠損 症ヘテ口 接合 体との関係を解明することは、早期診断・治療・予防など医療上極めて重要なことである。
今 回 、N型 高TG血症の成 因解明 を目指し 、LPL遺伝子欠 損症ヘテ 口接合 体を検出 するた め に 直接 シ ー クエ ン ス 法を 改 良 した 。 こ れを 用 い てW型 高TG血 症 者32例 中LPL蛋 白量 が 低 値の24例の う ちDNAが 入手 可 能 な10例のLPL遺伝 子を解析 したと ころ、全 例にLPL 遺伝 予欠損症 ヘテ口 接合体を 見出した 。この ことは1V型 高TG血症 の成因にLPL遺伝子異 常 症 ヘテ ロ 接 合体 が 深 く関 与 し てい る こ とを 示 し てお り 、 以 下に その 結果を記 す。
1. lV型高TG血症の病因酵素:LPL遺伝子解析I
今回、1V型高TG血 症はLPL欠損症ヘ テ口接 合体を持 つ者が 食生活な ど環境 の変化によ りTGの 合 成を 亢 進 させ る因子 を得て 、TG分解系 の異常 にTG合成系 の異常 が加わる こと で発 症 す る とい う 仮 説を立 て、N型高TG血 症の原因 遺伝子 がLPL欠 損症ヘ テ口接合 体で ある こ と を 証明 す る ために 、LPL欠 損症ヘ テロ接合 体者か らN型 高TG血症 者を検出 する ことを試みた。
ま ずI型 高TG血 症 を 呈 す るLPL欠損 症 ホ モ 接合 体 者TNを 有 するN家 系に 着 目 し、 血 漿リ ポ 蛋 白 やLPLの遺 伝子 型などに ついて 詳細に調 ベ、LPL遺伝子 のェキ ソン5に1塩 基 の欠失が存在するLPLaritaを発見した。N‑家系にはLPLaritaヘテロ接合体者が8例存在し、
8例 中3例 がN型 高TG血 症 を 示し 他 の5例 は 正 脂 血者 で あ った 。3例の 高TG血 症 者 と他 の5例 の 臨 床デ ー タ を比 較 し た結 果 、3例 の 高TG血 症者は 他の5例と比較 してア ルコー ル摂取 量が有意 に高く 、体格指数も高い傾向が見られた。これらの結果から、LPL欠損症
.ヘテロ接合体者の高TG血症は、遺伝的背景としてしPL欠損症ヘテロ接合体を持ち、さら に環境 因子とし て肝臓 でのTGの合 成を亢 進する因 子が加わることで発症したと推察され た。
2.N型高TG血症の 病因酵素 :LPL遺伝子解 析n
上記仮 説を証 明するた め、次に 姻戚関 係のないIV型高TG血 症者からLPL欠損症ヘテロ 接合体 を検出す ること を試みた 。本研 究では高TG血症者の中から、血清TG値が150ml/dl を超え 、ホルモ ン異常、糖尿病、耐糖能異常がなく、高度肥満もない、姻戚関係のないN 型 高TG血 症者32例( 男22例 、 女10例 )を対象 に、サン ドイッ チEIA法 を用い て免疫学 的に活 性のある しPL蛋白 量を測定 し、健 常人の約半分(150 ng/ml)またはそれ以下の者 をスク リ一二ン グした 。その結 果、32例 中24例(75%)においてしPL蛋白量が正常値の 約半分 以下を示 した。 さらにこ れらに ついてLPL異常 遺伝子をPCR‑SSCP法による二次ス
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クルーニングで探索した。ここで正常のパターンと異なるものについて、サブク口ーニン グに よるシ ークエン ス法を 用いて、 異常遺伝子部位の配列を決定した。LPL工キソン6を PCR‑SSCP法 でスクリ ーニン グするこ とによ って、私 はLPL欠 損症ヘテロ接合体を持つ患 者 を 見いだ し、そ の遺伝子 変異を 新しい変 異LPLobamaとし て同定 すること ができた 。 LPLobamaは 、 エキ ソ ン6の972番目 のCがAに 置 換し 、 そ の結 果239番 目 の アミ ノ 酸 が 終始コドンとなり、未成熟な蛋白となる変異であった。
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3. LPL遺 伝 子 異 常 症 ヘ テ ロ 接 合 体 検 出 を 目 指 し た直 接 シ ーク エ ン ス法 の 改 良 : N型 高TG血症 の成因を 解明す るために 、多く の本症患者のLPL遺伝子を迅速かつ正確・
に解析する必要性が生じた。直接シークエンス法は、サブクローニングを行って塩基配列 決定する方法と比ベ迅速且つ簡便であり、また正常アレルと変異アレルを同時に検出でき ることから、ヘテロ接合体の検出に大変適している。しかしは良い条件のシークエンス用 プライマーがデザインできなしゝこともあり、特定の部位の塩基配列が決定できない場合も ある。
LPL遺伝予は いずれの エキソ ンともそ の両側 にあるイ ントロ ン配列情 報が40塩基とご く 限ら れ て いる 。 従っ て鋳型と なるエ キソンをPCR増幅 するプ ライマー と、PCR増幅産 物をシークエンスするためのプライマーをデザインするには、工キソンの両側に隣接して いるイ ン卜口 ン情報の40塩基を 十分に有 効利用 する必要 があっ た。PCR増幅用プライマ ー‐の作製用に、40塩基のイントロンの5 側から20〜 30塩基をLPL遺伝子特異的な配列と して用 いた。 更にこれ らの配 列の5 末端に9塩 基のタグ 配列を 付加して 鋳型DNAを増幅 す るPCR増幅 用 プ ライ マーとし た。次 にエキソ ン1〜9のPCR産物 の塩基配 列決定 用に、
それぞ れシー クエンス 用プライマーを作製した。一つのPCR産物のシークエンス用ブライ マーとして、PCR産物を5 末端から読むものと3.末端から読むものと二種類作製した。シ ークエ ンス用 プライマ ーの配 列はPCR増幅用 プライマ ーの5 側の20塩基と同 じで、9塩 基のタグ配列を含んでいた。この工夫によルシークエンス用プライマーからアクセプ夕一 及びドナーまでの距離が19塩基となり、アクセプター及びドナー配列を読み易くすること をがで きた。 シークエ ンス用 プライマ ーのTm値 は、付加した9塩基のタグ配列のA+T/G+C 比を調整することで、48〜 58℃の範囲に設定した。プライマーのTm値をこの範囲に設定 すると非特異的なバンドがない低バックグラウンドのラダーパターンが得られた。この方 法をLPLarita及びLPしobamaのヘテ口接合体の検出で評価したところ良好であった。この 方法を更に改良して低パックグラウンド化を図り、オ一卜シークエンサーへの応用も可能 に した 。 こ れら の 方 法 を用 い てN型 高TG血 症 者 でLPL蛋白 量 低 値者24例 中10例に つい てLPし遺伝子の解析を行った。
4.改 良 型直 接 シ ーク ェ ン ス 法を 用 い たN型 高TG血 症 者からのLPLヘ テロ接合 体の検 出 遺 伝 的背 景 の 不明 なlV型高 丁G血症 者32例 中 、LPL蛋 白量 が 低 値の24例 中DNAが入 手できた10例につ いてLPL遺伝子 異常を解 析した 結果、全 例に遺伝子変異ヘテロ接合体 を検出することができた。10例の内訳は、LPLaritaアレルのへテ口接合体1例、LPLobama (239Cys‑+stop)アレル のへテ 口接合体1例 、LPLkobe (261Ala→ Thr)アレルのへテ口接 合体2例、LPLmima (270Phe→ Leu)アレルのへテロ接合体1例、LPLtokushima‑l (278Cys
→A rg)アレルのヘテロ接合体1例、しPLtokushima‑2 (43Asn→ Ser)アレルのへテ口接合体 1例、LPLosaka(イン 卜ロン3の変 異)アレ ルのへ テロ接合体3例であった。今回同定さ れたLPL変異で 、LPLaritaを除 く6種類の変異はすべて新しく同定されたものであった。
今回の研 究結果 より、N型高TG血症は遺 伝的背 景にLPL遺伝子ヘ テ口接 合体を持 つ者に 環境因子 としてTG合成亢進 を引き起こす付加が加わることで発症することが強く示唆さ れた。
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
野 村 靖 幸 有 賀 寛 芳 大 熊 康 修 松 本 健 一
学 位 論 文 題 名