英語基礎力と自律学習習慣を身につける音読の取 り組みについて
「 英語 基礎力特訓 プログラム」実践報告
石 川 由紀子
1.は じめ に
本 稿 で は,基 礎 的 な英 語 力 を 身 につ け る方 法 と して 「 音 読 」 に注 目 し,2013 年 度 前 期 に本 学 で実 施 した課 外 活 動 「 英 語 基 礎 力 特 訓 プ ロ グ ラ ム」 の取 り組 み
につ い て報 告 す る。 こ の取 り組 み で は,新 入 生 が 入 学 時 に受 験 した プ レイス メ ン トテ ス トで 基 準 の ス コ ア を 下 回 っ た 学 生 に対 して募 集 を行 い,希 望 して 集 ま っ た 参 加 者20名 は1学 期 間,授 業 外 学 習 と して 自主 学 習 教 材 を使 っ て 音 読 を行 った 。 プ ロ グ ラ ムの 冒頭 に全 員 で トレー ニ ン グ を行 って か ら は,モ ニ タ リ ン グ と して の 個 別 面 談 を3週 間 に一 度 行 った 。 音 読 を継 続 す る こ とで 参 加 者 の 情 意 面 に どの よ う に変 化 が あ った か,面 談 が 自律 学 習 の 継 続 に どの よ う に寄 与 した か を,ア ンケ ー ト結 果 と グル ー プ イ ン タ ビ ュー の 結 果 を も と に検 証 す る。
2.背 景
大 学 全 入 時 代 に入 り大 学 生 の 基礎 力 低 下 が 叫 ば れ る中 で,多 くの 大 学 で 入 学
後 の プ レイ ス メ ン トテ ス ト等 を導 入 し,新 入 生 の 学 力 を も とに リメ デ ィァ ル教
育 や 初 年 次 教 育 に力 を入 れ る よ う に な っ て きた(日 本 リメ デ ィア ル 教 育 学 会,
2012)。 英 語 は特 に学 力 差 が 出や す く,リ メ デ ィ ア ル教 育 が 必 要 とな る対 象 層
は,中 学 ・高 校 教 育 か らの英 語 学 習 に対 す る根 強 い 苦 手 意 識 を持 って い る場 合
が 多 い(上 述,第6章)。 英 語 の リメ デ ィ ア ル教 育 で は,文 法 に焦 点 を 置 く試
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み が多 いが,初 年 次生 の 中学 レベ ル の英 語 の基 礎 を復 習 す る方 法 と して,こ こ で は音 読 に注 目 した。
音 読 に注 目 した の は あ る学 生 が きっ か け とな っ た。 筆 者 が 以前,前 任 校 の セ ル フア クセ ス 施 設 で語 学 ア ドバ イザ ー(Gardner&Miller,1999)と して赴 任 し て い た ころ,プ レイ ス メ ン トテ ス トで初 級 レベ ル の ク ラス に入 り,英 語 の基 礎 か らや り直 した い とい う強 い モ チ ベ ー シ ョ ンを持 っ て い た学 生 が 訪 ね て き た。
彼 は,後 述 す る 自主 学 習 用 の本 を ひ たす ら音 読 し,3か 月 でTOEICを200点 ア ッ プ す る こ とに成 功 した 。 後 に も彼 は 努 力 を継 続 し,そ の 後 長 期 留 学 も果 た し, 数 年 度 に はTOEIC900点 以 上 を取 得 で き る英 語 力 を伸 ば す まで に な った 。
音 読 とは,門 田(2012)に よる と,視 覚 で と らえ た 文 字 イ ンプ ッ トを心 の 中 で 音 韻 符 号 化 し,音 声 と して ア ウ トプ ッ トす る 活 動 で あ り,読 解 に不 可 欠 な 文 字 と音 を結 び つ け る こ と と,語 彙 や 文 法 規 則 を内 在 化 させ る こ と を 自動 化 す る の に非 常 に有 効 な トレー ニ ン グで あ る。 また,繰 り返 し行 う こ と に よ り,読 む 速 度 が 上 が り,結 果 的 に読 解 や リス ニ ン グ力 向 上 に も効 果 を もた らす こ とが 分 か って い る(0℃onmor,etaL,2013;Verhoeven&Leeuwe,2012)。 本 稿 で はそ の 効 果 につ い て,ア ンケ ー トを も と に検 証 した い 。
また,授 業 と は直 接 関 係 の ない 課 外 プ ロ グ ラ ムで は,自 主 学 習 の 継 続 が 大 き な課 題 と な る。 上 述 した よ う な非 常 に高 い モ チ ベ ー シ ョ ンを 自力 で 維 持 で きる 学 生 を除 い て は,最 初 はや る気 が あ っ た と して も,数 か 月 に渡 り自主 学 習 を続 けて い くの は容 易 で は ない 。 筆 者 が 以 前 実 施 した取 り組 み で も,英 語 の基 礎 を 復 習 す る よ うな 教 材 の オ プ シ ョ ンを 与 え て,そ れ を も と に 自分 で 学 習 を計 画 し,オ ンラ イ ン上 で 学 習 した 内 容 を報 告 しフ ィー ドバ ックす る ポ ー トフ ォ リオ を活 用 し た が,高 い 継 続 率 を維 持 す る こ と は難 しか っ た(石 川,2012)。 そ こ で本 取 り組 み で は,1つ の 教 材 を指 定 し,学 習 内 容 や 計 画 もあ らか じめ 提 示 し, 一 斉 に計 画 通 りに進 め る こ と と した。 また,オ ンライ ン上 ではな く,1対1の 面 談 形 式 を と り,な るべ く顔 を合 わせ て学 習 者 一 人 一・ 人 にサ ポ ー トが 行 き届 く
よ うな ア ドバ イ ジ ング方 式 を試 み る こ と と した。
以 下,本 取 り組 み の概 要 と,ア ンケ ー トお よび グ ル ー プ イ ン タ ビュ ー を も と
に,こ れ ら の 取 り組 み の 効 果 を 検 証 す る 。
3.本 取 り組 み の 概 要
本取 り組 み で は,講 談 社 『 英 会 話 ・ぜ っ た い ・音 読 続 入 門編 』(國 弘 正雄 ・ 千 田潤 一 監 修,2004)を 教 材 と して使 用 し,授 業外 の 時 間 で参 加 者 は各 自,音 読 トレー ニ ング メ ニ ュ ー に 沿 っ て 学 習 した 。ま た,参 加 者 を3グ ル ■d‑一 ・ プ に分 け,
3週 間 に一 度 グ ル ー プ ご とに 集 ま り,全 体 で挨 拶 を し た後 に個 別 面 談 を行 い, 進捗 状 況 の確 認 を行 っ た 。 夏 休 み 前 に,再 び 参 加 者 全 員 で 集 合 し,振 り返 りを 行 う と と も に,夏 休 み の 学 習 につ い て 話 し合 い を行 った 。
3.1.参 加 者
4月 の 入 学 時 に行 わ れ た プ レイ ス メ ン トテ ス トの 結 果 を も と に,一 定 基 準 の ス コ ア を下 回 った 学 生 を対 象 に,4月 後 半 よ り参 加 者 の 募 集 を行 った 。5月 に 行 わ れ た オ リエ ンテ ー シ ョ ンで は37名 が 参 加 を希 望 し,そ の うち 書 類 選 考 で 20名 を プ ロ グ ラ ム 参 加 者 と し て選 抜 した。 選 考 基 準 と して,入 学 時 の プ レ イ ス メ ン トテ ス トの ス コ ア,履 修 英 語 科 目数 土 曜 に 開 講 さ れ て い る 課 外 の TOEIC講 座 の 参 加 有 無,自 己 ア ピー ル文 の4項 目 と した。 な るべ く英 語 の 履 修 科 目が 少 な く,土 曜 講 座 の 選 考 に も漏 れ て し まい,英 語 学 習 の 機 会 が 少 ない と思 わ れ る学 生 を選 抜 した 。そ の結 果 英 語 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン学 科 か ら9名, 現 代 ビ ジネ ス 学 科 か ら11名 の,計20名 の1年 生 が プ ロ グ ラ ム に参 加 した。
3.2.音 読 研 修 セ ッ シ ョ ン
オ リ エ ン テ ー シ ョ ン 後 に 参 加 者 の 選 抜 を 行 っ た 後,翌 週 に 音 読 の 進 め 方 を ト レ ー ニ ン グ す る研 修 を 行 っ た 。 こ の 際,『 英 会 話 ・ぜ っ た い ・音 読 続 入 門 編 』 の 巻 頭 に 記 さ れ て い る 音 読 の 意 義 を 皆 で 読 み 合 わ せ て 確 認 し,音 読 ト レ ー ニ ン
グ メ ニ ュ ー を 確 認 し た 後,Lesson1の メ ニ ュ ー を 一 緒 に 学 習 し た 。 ま た,同
じ週 に 行 わ れ た1年 生 対 象 の 研 修 合 宿 の 際 も,プ ロ グ ラ ム 参 加 者 は 宿 舎 で 集 合
し,Lesson2を 一 緒 に 音 読 し て 学 習 し た 。
3.3.『 英 会 話 ・ぜ っ た い ・音 読 続 入 門 編 』 音 読 メ ニ ュ ー
『 英 会 話 ・ぜ っ た い ・音 読 』 シ リ ー ズ は,中 学1・2年 生 の 英 語 教 科 書 か ら 本 文 を 抜 粋 し,CDの 音 声 を 聞 き な が ら何 度 も 繰 り返 し音 読 し て,英 語 の 基 礎
を 復 習 す る 内 容 と な っ て い る 。 入 門 編 は,シ リ ー ズ3つ の レ ベ ル の 一 番 難 易 度 の 易 し い も の で,次 に 標 準 編 挑 戦 編 と続 く。 全 部 で12の レ ッ ス ン が 収 録 さ れ て お り,毎 日 メ ニ ュ ー 通 り に 行 え ば,2か 月 で12レ ッ ス ン を6周 繰 り返 す よ う に な っ て い る 。 音 読 メ ニ ュ ー は,① ま ず テ キ ス ト を 見 な い でCDを 聴 く,
② 次 に テ キ ス ト を 見 な が らCDを 聴 く,③ テ キ ス トを 黙 読 し て 意 味 を 理 解 す る,
④CDを 聴 き な が ら1文 ず つ 音 読 す る,⑤CDに 合 わ せ て テ キ ス ト を 音 読 す る,
⑥ 仕 上 げ の 音 読 を す る,の6ス テ ッ プ と な る 。 最 後 の 仕 上 げ の 音 読 で は,時 間 を 測 り,毎 分 何 語 読 む こ と が で き た か を 感 想 と と も に 記 録 す る シ ー トが 巻 末 に あ り,3周,4周,と 繰 り返 す う ち に,自 分 の 音 読 速 度 が 上 が っ て い く こ と を 実 感 す る こ と が で き る 。 ま た,3周 目 か ら は,音 読 を し な が ら ノ ー ト に 筆 写 す る メ ニ ュ ー も 加 わ る 。 各 メ ニ ュ ー に は,さ ら に 詳 し い 解 説 と 留 意 点 が 指 示 さ れ て い る の で,詳 細 は 本 書 を 参 照 さ れ た い 。
3,4.面 談(ア ドバ イ ジ ン グ)
プ ロ グ ラム 参 加 者 は,上 述 した 通 り,プ ロ グ ラム 開 始 時 に一 斉 トレー ニ ン グ
を行 った 後 は,各 自で 音 読 メニ ュー を学 習 した 。 参加 者 に よ る と,上 述 の6ス
テ ッ プの メ ニ ュ ー を終 え る には 一 日30〜60分 程 度 の 時 間が 必 要 で あ った 。5
月 か ら プ ロ グ ラ ム を開 始 し,7月 の 学 期 末 まで に土 日 を除 い て 毎 日 メニ ュー を
行 う こ と と し,全 員4周 目のLesson6ま で 到 達 す る こ と を 目標 と した。 『 英 会
話 ・ぜ っ たい ・音 読 』 は 自学 自習 用 の 教 材 で あ り,本 来 は各 個 人 で 学 習 で き る
内容 で は あ るが,課 外 プ ロ グ ラ ム と して行 う際 に(単 位 取 得 や 宿 題 な ど と して
加 点 され な い状 況 で)個 人 で の学 習 を継 続 す る こ とが で き るか が 最 大 の懸 念 で
あ っ た た め,週1回 の 面 談 を行 う こ と と した。 但 し,毎 週20名 全 員 と個 別 で
面 談 す る こ とは 不 可 能 で あ っ た た め,20名 を3グ ル ー プ に分 け,グ ル ー プ ご
と に一 人10分 の面 談 を行 い,残 りの 参 加 者 は 同 室 でCDプ レー ヤ ー を使 用 し音
読 を 行 っ た 。10分 間 の 面 談 で は,各 参 加 者 の 進 捗 状 況 を 尋 ね る と と も に,限 ら れ た 時 間 で は あ る も の の,な る べ く語 学 学 習 ア ドバ イ ジ ン グ(Carson&My‑
nard,2012)の 手 法 を 用 い,各 個 人 の 目 標 確 認 や,生 活 リ ズ ム の 整 理,細 か い 学 習 法 の 工 夫 な ど に つ い て ア ドバ イ ス を 行 う よ う に し た 。
4.取 り組 み 成 果 の 分 析 4.1.プ ロ グ ラ ム 全 体 に つ い て
プ ロ グ ラ ム 終 了 後 の ア ン ケ ー トで は,参 加 者20名 中,15名 か ら 回 答 を 得 た 。 参 加 者 か ら概 ね 高 い 評 価 を 得 る こ と が で き た(図1)。
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