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炎症反応が腫瘍の肝、肺転移形成に及ぼす影響に関する研究

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Academic year: 2021

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論文の要旨

申請者 堀口 寛之

研究論文題目

炎症反応が腫瘍の肝、肺転移形成に及ぼす影響に関する研究

1 目 的

近年、多くの癌腫において術後感染性合併症が長期予後を悪化させるとの報告が なされているが、その機序は十分には解明されていない。 本研究では、感染性侵 襲が腫瘍の転移や増殖に影響を与える際に重要な役割を果たす転移先臓器側の因 子と腫瘍細胞側の因子に着目し、肝転移及び肺転移マウスモデルを用いてその機序 について検討した。

2 材料及び方法

(1) 腹腔内感染が悪性腫瘍の肝転移に及ぼす影響に関する検討

盲腸刺通結紮法(Cecal ligation and puncture: CLP)にて腹膜炎モデルを作成した マウスの脾臓に大腸癌細胞株 (NL17) を接種し、腹膜炎併発肝腫瘍モデルマウスを 作成した。術後の血清中 Hepatocyte growth factor (HGF)値の測定と NL17 細胞接種 後 14 日目における肝転移形成状況の確認を行った。また、 recombinant mouse HGF (rmHGF)の腹腔内投与や、癌細胞株における c-Met ノックダウン(c-Met KD NL17) が肝転移形成に与える影響について検討した。

(2) 急性肺傷害及び細菌性肺炎が悪性腫瘍の肺転移に及ぼす影響に関する検討 マウスの気管内に Lipopolysaccharide(LPS) もしくは緑膿菌を投与して、急性肺 傷害 (Acute lung injury: ALI)または細菌性肺炎 (Pseudomonas pneumonia: PP)の病 態を作成した上で、尾静脈から NL17 細胞を注射した。これら二つのタイプの肺 感染併発肺腫瘍転移モデルについて、 NL17 細胞接種後 14 日目における肺での腫 瘍形成状況を検討した。また、 HGF/c-Met カスケードが肺での腫瘍形成能に与え る影響について検討した。

(3) 急性肺傷害及び細菌性肺炎が肺での細胞接着分子の発現に及ぼす影響に関する 検討

ALI 群および PP 群における肺転移形成への接着分子の関与を検討するために、

両群での肺内 E-selectin 濃度の測定を行った。次いで、LPS 刺激した NL17 での 細胞接着因子の発現を計測し、LPS 刺激が持つ NL17 細胞の浸潤能増強効果に対

する抗 ICAM-1 中和抗体の影響について検討した。

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3 成 績

(1) 腹腔内感染による腫瘍肝転移促進効果に対する HGF/c-Met カスケードの関与 CLP 群は対照群と比較して、術後 1 日目の血清中 HGF 値は高値を示し、術後 14 日目の肝転移形成も促進していた。 HGF/c-Met カスケードの関与を検討したと

ころ、 rmHGF 腹腔内投与で肝転移形成が促進されたのに対し、 c-Met KD NL17

細胞を使用すると CLP 群での肝転移形成が抑制された。

(2) 急性肺傷害及び細菌性肺炎を併発した腫瘍肺転移での HGF/c-Met カスケードの 関与

ALI 群および PP 群では、NL17 投与後 14 日目の肺腫瘍形成は有意に促進され

たが、 rmHGF 腹腔内投与でも肺転移形成は促進されず、 HGF/c-Met カスケードの

関与は認められなかった。

(3) 急性肺傷害及び細菌性肺炎が肺での細胞接着分子の発現に及ぼす影響

ALI 群および PP 群での肺内の E-selectin 濃度は、対照群と比較して有意に高値 を示した。 LPS 刺激により NL17 における ICAM-1 や VCAM-1 などの細胞接着分 子の発現が亢進した。 また LPS 刺激により NL17 細胞の細胞浸潤能が亢進したが、

この浸潤能は抗 ICAM-1 中和抗体の投与で一部抑制された。

4 考 察

本研究では、腹腔内感染による肝転移形成の促進と、急性肺傷害・細菌性肺炎に よる肺転移形成の促進を、マウスモデルで確認した。腹腔内感染による肝転移形成 促進の機序として、 HGF/c-Met カスケードの関与が示唆された。一方、急性肺傷害・

肺炎による肺腫瘍形成促進の機序としては明確 HGF/c-Met カスケードの関与は見 られず、炎症により惹起された転移臓器側と腫瘍細胞に発現する細胞接着分子とそ のリガンドの発現増強が転移促進に寄与していると考えられた。

以上から、感染性侵襲時における腫瘍細胞の転移形成能の獲得には、転移臓器側 の因子と腫瘍細胞側の性質の両者の因子が関わっており、その機序は肝臓と肺で異 なっている可能性が示唆された。

5 結 論

本研究では、マウス腹膜炎モデルで肝転移形成が促進され、マウス急性肺傷害や

細菌性肺炎モデルで肺転移形成が促進されることが示された。そのメカニズムとし

て、腹膜炎モデルにおける肝転移形成には HGF/c-Met カスケードが、急性肺傷害や

肺炎モデルでは細胞接着分子発現増強が関与している可能性が示唆された。

参照

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