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一社会の変化にともなう「まちづくり」研究1一※

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〈原著論文〉

      社会の変化と地域再生の視点

一社会の変化にともなう「まちづくり」研究1一※

大 平 滋※※

はじめに

 長期に経済低迷が続き,将来の展望が描ききれなくなっている。少子高齢化にともない人口 構成もいびつなものになっており,戦後作られた国家的な諸制度もピラミッド型の人口構成の

もとでの人口拡大を基本に策定されたことから,その基盤が根底から崩れつつある。

 戦後は,戦前並になることをめざし,人口の急減を補うように人口の増大のもとで,経済は 拡大の一途をたどってきた。戦後の復興期は,貧困化からの脱出と経済の再建,復興であり,

経済成長を見込んで戦後の諸制度は作られてきたといえる。国民はこの過程で,誰もが貧しさ から出発し,誰もが経済成長の恩恵に浴し,富の拡大に伴う豊かさを享受することができた。

人口の少ないもとでの経済の拡大再生産のもとでの企業は,人材の確保が最重要課題となり安 定的な人材確保のために日本型雇用形態といわれる終身雇用,年功序列,新卒採用という慣行 を確立させてきた。この慣行のもとで,安定した雇用状態のもとで会社ともども家庭の経済的 拡大も図ってきた。その結果70年代には「一億総中流」といわれ,この高度経済成長の元で 日本の経済発展の型がつくられた。80年代にはバブル景気を生み,日本の経済界は世界進出し 先進国から警戒され,それと同時に世界はグローバル化の時期を迎えていった。産業構造もソ フト社会化されていき,生産業も工場をアジア諸国等に進出し,大量の人材雇用を行っていっ た工場の流出により,国内産業の構造も変化していった。もはや,大量の安定雇用を支えてい た第二次産業も減少し,それまでの日本経済の型に変化が起きてきた。

 このような国際的な状況の変化と産業の発展としての変化により,日本の経済構造も大きく 変化し,また,人口構成も大きく変化していった。特に,先進国をモデルにして発展してきた 国にとって,人類が経験したことのない規模での少子高齢化の進展や諸々の環境問題など,世 界の先頭をいっている日本にとってそれらの課題は,自らが課題解決していかなければならな

※C乃αη9ε(ゾ3061の0η4酌εy∫ε噸伽ゆ〃OCα〃θpro4召αご0η一C加η98げ50C εごア伽6腕 ア吻〃痂9 rε5eα励1一

※※Shigeru OHIRA 立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科

キーワード:まちづくり,地域再生人口減少と少子高齢化,ライフスタイル,スローシティ

      一1一

(2)

社会の変化と地域再生の視点

いものである。今世紀に入り,長期の経済の低迷,一層のグローバル化の進行,デフレ経済の 深刻さなど,明るい展望を見通せなくなっている。世界全体でもヨーロッパやアメリカの経済 の低迷や資源の枯渇問題や環境の変化による食糧不安など,不安定要素が多くある。

 今までの経済優先の政策とグローバル化の競争のもとで長期のデフレが進行し,そのもとで,

さらなる競争力をつけるということで,非正規雇用を拡大し,雇用の不安定化を生んでしまっ た。その結果,格差が拡大した。もはや,わが国の貧困問題は子どもの貧困も含めて深刻な状 態となっている。このような状況のもとで,市民生活と社会保障を守るという意味で政権交代 が行われた。政策の転換に着手していった矢先に,2011年3月11日の東日本大震災に見舞われ た。この地震は,甚大な被害をもたらしたとともに,日本列島が地震の活動期に入ったことを 印象づけた。この巨大地震は,私たちに衝撃を与え,この巨大地震と同規模の地震が今後,ト ラフト型地震に起こり得て,さらに,その被害が今までの予想をはるかに上回るため,防災の 見直しがなされ,太平洋沿岸地域の防災とまちづくりに多大な影響を与えた。また,巨大地震 によって被害を受けた福島第一原子力発電所の事故により,改めて原子力発電所の危険性とそ の政策の危うさを実感させられた。原子力発電所は今後も大きな問題として,われわれに重く 伸し掛かってくる。

 このように,現在は大きな激動期であり,大転換であると多くの人が実感している。そこで,

本稿では,この大転換期にあたって,大きな社会の変化,特に,人口減少と少子高齢化の進行,

世帯形態の変化,産業構造の変化,ライフスタイルの変化とそれに対応した地域再生とまちづ くりの視点について検討してみたい。

1.人口動態の変化

 人口動態の変化が大きくなってきた。本格的な人口減少の進展とともに少子高齢化という年 齢構成の大きな変化,世帯構成の変化などは,今までの社会づくりの常識が通用しないことを 示している。まちづくりや経済のニーズの掘り起こしにも人口動態の分析は欠かせないもので

ある。

 人口動態の変化は,もうすでに経済や生活に影響を与えてきているが,急激な変化を予測じ ながら対応していくことは生活や経済を維持していくためやまちづくりに不可欠なことであ

る。

 (1)人口減少と少子高齢化

 人口減少や少子高齢化に関する統計や推計が公表され,それに従って,各分野での対策案な どの研究がなされ始めている。しかし,現実にはほとんどの現場では直近の対応に追われてい る事が多く,認識も深まっていない状況である。

 日本の人口は,2008年12月の1億2,809万9,000人をピークに,徐々に人口減少が始まってい

る。そして,20!1年前は年少人口13.1%,生産年齢人口63.6%,老齢人口23.3%となった(1>。

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緩やかな人口減少はそれほど大きく社会に影響を与えないと考えられるが,この人口構成の変 化の方が社会に大きな影響を与えてくる。先にも触れたが,日本の戦後の社会制度や経済政策 などは,少数の高齢者と若年層の増大のもとでの人口増加を前提に作られている。まさに,ピ ラミッド型人口構成を前提に作られている。人口構成が,この典型的なピラミッド型でなく なった時点で,今までの特に社会保障制度は行き詰ってきたのである。現実的には年金問題な どの社会保障などが最重要課題として表面化している。

 もう一つは,家族構成の変化である。家族内でのケアを前提に構築されている社会保障制度 は,前提となっていた拡大家族の減少や家族構成が夫婦と二人の子どもという標準世帯が減少 することにより,基盤そのものが崩れだしている。家族構成の変化をもたらしたものは,意識 の変化だけではなく,経済の低迷と大きく変化した雇用形態が大きく影響しているといえる。

人口問題研究所の今後の予想としては,2055年には8,993万人となり高齢化率は40.5%となると

いわれている(2)。

 人口減少と少子高齢化がもたらされる影響については,次のような点がすでに指摘されてい

る。

 過疎化と高齢化の進行により,限界集落が生まれてきており,いずれ消滅するであろう消滅 集落は,2008年目国土交通省の統計によれば10年以内に消滅するものが423集落,いずれ消滅 するものが2,658と指摘されている(3)。ある面では,戦後の高度経済成長期は人口増大期であり,

人口分布が拡大し,大都市圏に人口が集中し,大都市近郊に住宅地を増大させていった歴史で もあった。現在はそのピークを過ぎて,適正規模の人口に戻っていっているにすぎないのであ ろう。五木寛之が「下山の思想」ωで指摘したように,今は頂上から下山を始めた時期になり,

どのように下山するかが大切だといわれるように,ひたすら頂上をめざす時期とは違う手法(歩 き方)が求められているのであろう。

 同様に,経済産業省(2005年)によれば,都市雇用圏の減少がはじまり,2030年予想では全 269の都市雇用圏のうち,拡大するのは35の都市雇用圏のみで,234は減少するとされている(5>。

特定の大都市圏以外は今後減少の一途を辿ることがわかる。特定の都市圏以外は,今後人口減 少とともに厳しい財政難にあえぐことになる。人口減少と少子高齢化は,国家的にも現在に起

きている財政難が一層深刻になっていき,社会の投資余力の減少ばかりか,2020年度には新規 の社会資本投資,既存施設の更新さえできない社会となっていくといわれている(6)。戦後に投 資してきた社会資源も50年が過ぎ,耐用年数が限界になってきているが,それに対するリノベー ションすら難しいものになってきている。

 これに追い打ちをかけるように,2011年3月11日の東日本大震災は甚大な被害を及ぼした。

この巨大地震以降,地震の活動期に入った日本列島では,今までの予測をはるかに大きく上回 る想定被害の変更が行われ,それに伴う耐震補強および津波対策は最優先課題となってきてお り,時間との競争で実効ある整備をしていかなければならない実情である。

 さらに,地方の人口減少は地域公共交通の衰退をもたらしている。「交通弱者」、ということ

      一3一

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杜会の変化と地域再生の視点

がいわれて久しいが,国土交通省(2007年)によれば地方の旅客数は過去10年間で2割減,20 年問で4割減となり,地域鉄道事業者の約8割,定期航路(こうろ)事業者の約7割が赤字と いわれている(7>。公共交通機関の危機であると同時に,自家用車という交通手段を持たない「交 通弱者」にとっては日常生活そのものがなりたたない状況が生まれて,深刻さを増している。

 (2)標準世帯の減少と単独世帯の増加

 最近の世帯数の将来推計から今後の世帯の状況を検討してみたい。国立社会保障・人口問題 研究所の「日本の世帯数の将来推計」(2008年3月推計)によれば,「今後増加するのは『単独 世帯』,増加から減少に転じるのは『夫婦のみの世帯』『ひとり親と子から成る世帯』,減少す るのは『夫婦と子から成る世帯』『その他の一般世帯』である」(8)。内容をみると,「単独世帯」

は「2005年の1,446万世帯から増加し続け2030年には378万世帯多い1,824万世帯となり,一般世 帯総数に占める割合も29.5%から37.4%と79ポイントも上昇する。2006年以降は『単独世帯』

が最も多い類型になる」。続いて,「夫婦のみの世帯」は「当面増加するが,2016年以降減少に 転じる。2005年の964万世帯から2015年の!,019万世帯までは増加した後,減少に転じ2030年に は939万世帯となり,一般世帯総数に占める割合は19.2%となる」(9)。余り大きな変化は生じな

い。

 都道府県別統計では,平均世帯数は,「2005年の2.16人(東京都)〜3.09人(山形県)から,

2010年にはすべての都道府県で3人未満となり,2030年には1.97人(東京都)〜2.55人(山形県)

となる」。また,一般世帯の家族類型別割合では,最大の割合を占める家族類型は,「2005年で は29県で夫婦と子から成る世帯であったが,2020年以降はすべての都道府県で単独世帯とな る」。世帯主が65歳以上の世帯は,「すべての都道府県で増加」し,「2020年以降にすべての都 道府県で30%以上となり,2030年には秋田県など33道県で40%以上となる」(lo)と推計されて

いる。

 いわゆる標準世帯といわれた「夫婦と子から成る世帯」はどうかというと,「1985年をピー クに既に減少局面に入っているが,今後それが加速し,2005年の1,465万世帯から2030年には 1,070万世帯まで減少する。かつて一般世帯総数の40%以上を占める主要な類型であったが,

2005年時点で29.9%と割合をかなり低下させており,2030年にはさらに21.9%まで低下すると 見込まれる」(11)。さらに「その他の一般世帯」の大部分はいわゆる直系家族だが,「1980年代 後半には減少に転じている。減少は今後も続き,2005年の621万世帯から2030年には544万世帯

となる。一般世帯総数に占める割合も,2005年の12.7%から2030年には11.2%まで低下する」(12)

と指摘されている。かつて標準世帯とされ,産業界の家づくりや酒づくりのコンセプトになっ

ていた核家族もすでに世帯の主要部分から外れ,「単独世帯」にその座を譲りつつあり,2030

年には「単独世帯」が標準世帯の中心になっている。また,家族の理想とされていた直系家族

も11〜12%程度で推移していくので,珍しい世帯の形態に属するものとなっている。いずれも

1980年代後半からその変化は始まっていたが,社会保障やその他の社会制度もこの変化を無視

しつづけ,いまだに家族像の基本をこの世帯に求めており,現実と大きな隔たりがあり,早急

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な現実に見合った制度改革が求められる。

 さらに重要なことは,世帯主の高齢化である。世帯主年齢が65歳以上の一般世帯の総数は,

「2005年の1,355万世帯から2030年の1,903万世帯へと1.40倍に増加することになる」。世帯主年 齢が75歳以上の世帯では,「2005年の554万世帯から2030年の1,110万世帯へと2.00倍」となる。

総世帯数に占める世帯主が65歳以上の一般世帯の割合は,「2005年の27.6%から2030年の39.0%

へと大幅に上昇する」。なおかつ,世帯主が65歳以上の世帯に占める世帯主が75歳以上の世帯 の割合も,「2005年の40.9%から2030年の58.3%へと増大し,世帯の高齢化は一層進む」(13)。こ のように,2030年の日本の中心的な世帯は,「単独世帯」で,世帯主が65歳以上の高齢化した

ものである。おのずと,制度はもちろんのこと,まちづくり,産業構造やサービスの内容など の見直しが迫られていることは明らかである。

2.産業構造の変化

 産業構i造の変化は,1980年代以降大きく変わってきている。社会のソフト社会への移行とグ ローバル化の進展が大きな要因といわれている。まさに時代の要請であった。ソフト社会への 移行は,知的な価値というアイデアなどのソフトに価値を見出すという点と情報化社会の出現 である。産業別でいうならば第2次産業から第3次産業の移行であり,第3次産業では,高度 に知的な部門とサービスー般に分かれる。統計でみると,「15歳以上就業者数(6,151万人)を 産業3部門別にみると,第1次産業は315万人(15歳以上就業者数の5,1%),第2次産業は1,592 万人(同25.9%),第3次産業は4,138万人(同67.3%)」という状況である。15歳以上就業者数 の推移をみると,「第3次産業は調査開始以来増加が続いている。一方,第1次産業は昭和30 年以降,第2次産業は平成7年以降それぞれ減少が続いている。」(2005年国勢調査,総務省 統計局)(14>という状況である。この産業構造の変化の最大課題は,安定した雇用の確保がで

きないことである。戦後の日本型雇用形態を築いていった牽引車であった第2次産業の低迷は,

グローバル化社会での競争において,今後も引き続いていくであろう。少なくなった第2次産 業においても正規雇用のもとでということがむずかしくなっている。賃金の安い海外への進出 はもちろん,グローバル化の中で変化に対応していくために,企業としては,絶えず経営方針 が見直されるため,流動的な雇用形態にならざるをえない。このことは,地域社会にとっても,

工場誘致型のまちづくりや企業に頼った財政には大きなリスクが伴うことを示している。

 一方,第3次産業では,知的な部門では,長期的な安定した雇用ではなく能力給や業績主義

が中心となり,大部分を形成するサービス業では,少数の正規雇用とそのもとでの嘱託派遣

やアルバイトなどの非正規雇用が中心となってきている。数字でみると「15歳以上就業者の平

成12年〜17年の増加率を産業小分類(就業者数10万人以上)別にみると,「労働者派遣業」が

131.1%増と2倍を超える増加となっている。」(15)といわれている。この不安定雇用が,生活の

不安定さと所得の大幅な減少を生み出している主な要因といえる。この非正規雇用の拡大によ

       一5一

(6)

社会の変化と地域再生の視点

り,今まで標準と考えられていた「夫婦と子から成る世帯」を維持することすらできない状況 を生んでおり,「単独世帯」が中心となる社会を生み出している大きな要因となっている。も はやセーフティネットとしての家族の存在すら危うい。

3.ライフスタイルの変化

 (1)ライフスタイルはどのように変化してきたか

 人口の減少と少子高齢化,世帯の変化と同時にもう一つ考慮しなければならない点は,ライ フスタイルの変化であろう。ライフスタイルの変化は,時代の影響を大きく受けるが,二つの 側面を持つと考える。一つは生活に対する価値観の変化である。その価値観は時代特有のもの とその個人特有のものがある。やや積極的な側面を持つものといえる。もう一つはその時代の 状況で,個人に与えられた環境のなかで必要に迫られて形成されてきたものであり,いわば生

きるための知恵から生まれてきたものである。

 ライフスタイルの変化は,時代とともに変化するとともに個人の生活においても,年齢や家 族関係によって変化するものである。三浦展はこのライススタイルの変化を消費社会の視点か

ら次のように指摘している。戦後から現代までの歴史を四つに分けている。

 第一の消費社会(1921−1941)は,大都市中心で中流の誕生である。戦後は第二の消費社会

(1945−1974)からはじまり,やや長い。現在の日本の経済や社会のルーツみたいなものが多い。

経済として,高度経済成長,オイルショックなどがあり,人口増加をたどり,「一億総中流」

といわれ,消費生活では大量消費アメリカ志向といわれ,豊かさと世間並みのシンボルとし ての三種の神器,3C,そしてマイカー,マイホーム,家族関係では,核家族と主婦が標準と して登場してきた。

 第三の消費社会(1975−2004)は,オイルショック後の低成長からそれを乗り越えてからの 好景気そしてバブル景気。さらに金融破綻を経験し構造改革,それにともなう格差拡大。人口 は微増し,高齢者率は6%から20%へ大きく伸びた。消費のトレンドとしては,個性化,多様 化,差別化,ブランド志向といわれ,量から質への時代。一家に数台,一人一台が実現され単 身者が増加し,「パラサイトシングル」という言葉も生まれた。

 第四の消費社会(2005−2034)は,現代であり当分この傾向が続くと指摘されている。二つ の大震災を経験し,不況の長期化,雇用の不安定化という社会背景である。人口減少による消 費市場の縮小は続き,高齢者率も20%から30%へと増加する。消費のトレンドとしては,ノン ブランド・シンプル・カジュアル・日本志向・地方志向であり,単独世帯の増加と高齢化社会 の進行により,シェア志向,つながり,数人で一台,カーシェア,シェアハウス,前世代のシ ングル化(16)などが指摘されている。

 この変化は,現象面から導きだしているものであるが,現代および今後の社会を見ていくた

めには,過去のキーワードに注意を払っていても意味がなく,第四の消費社会の中身を検討し

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ながら対応していく方が意味があるであろう。

 (2)シングル化が及ぼす影響

 単独世帯の増大は先ほど指摘したが,ライフスタイルとしてのシングル化の進行を別の角度 から検討してみたい。

 2005(平成17)年の総務省「国勢調査」をもとにした分析では,「25〜39歳の未婚率は男女 ともに引き続き上昇している。男性では,25〜29歳で71,4%,30〜34歳で47.1%,35〜39歳で 30.0%,女性では,25〜29歳で59.0%,30〜34歳で32.0%,35〜39歳で18.4%となっている。

さらに,生涯未婚率を30年前と比較すると,男性は2.12%(1975年)から15.96%(2005年),

女性は4.32%(1975年)から7.25%(2005年)へ上昇している」(17)。未婚者の増大と晩婚化が すすむ。この現象の背景には,意識の変化だけではなく,大きな要因として安定した職と次世 代を育成する家族としての生活を維持していくだけの経済的な基盤が確保できていないことで ある。グローバル化社会での企業の生き残り策を競争原理にのみ託したことによる弊害である。

その結果は,働く者にとっては長時間労働や低賃金,不安定な雇用関係という,市民生活にとっ ては不安定で将来の展望がみえないものになっている。

 さらに,今後は2010年で男女300万人(34−44歳)といわれている「パラサイトシングル」(18)

といわれた人たちの高齢化も危惧される。複数成員の家族で家計を支えながら,お互いに助け 合っていくという家族の基本的なセーフティネットそのものが脆弱となり,さらに地域そのも ののセーフティネットそのものが機能しなくなっている現代社会では,社会全体としての新た なセーフティネットの創造が急がれる。

4.地域再生とその視点

 人口の急激な減少,少子高齢化の進行,家族や世帯構成の変化,産業構造の変化,グローバ ル化の進展などが地域社会に直接的に影響を与え始めている。そして,従来型の枠組みの景気 変動で経済を考えることが有効でなくなってきている。地域再生においては,成功または機能 しているまちづくりから検討してみると,有効な方向としていくつかの点があげられる。ここ では地域内循環型経済の構築と地域コミュニティの再生について検討してみる。

 (1)地域内循環型経済の構築

 地域内循環型経済とは,ここでは「地域資源の積極的な活用が図られるなど地域に根ざし,

地域内調達率が高く,投資が地域内で繰り返し行われることにより雇用・所得が持続して生み 出される,地域内でモノや資源等が循環する地域経済」(19)とする。地域が存続していくため には,地域住民の生活が確保されなければならない。そのためには生活のための雇用の維持と 創出が求められる。大都市圏では大きな市場があるためと競争原理が働き,効率さが要求され るが,地方都市などの市場の小さなエリアでは,効率だけの基準で競争を行っていったならば,

たちまち地域の経済は破綻し,日本の各地にみられるシャッター通りの商店街,そして,基本

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社会の変化と地域再生の視点

的生活を営むための商業施設がなくなり地域での生活が成り立たなくなる。これを防ぐために も,地域産業を維持し活性化するためには,少なくなった地域の消費を地域内で循環すること により地域を維持していくことが必要である。このことは地域をあげて,または,行政の基本 としてしっかりとらえていくことが求められる。消費の効率のために,より安いところにとい う方式でなく,地域内の消費で,地域で賄えるものは地域で供給するという,各地で広がりつ つある「地産地消」の取り組みの徹底である。一般的に行われている食材ばかりでなく,あら ゆる消費財を地元の企業や商店から賄うことにより,地域の産業が維持できるようにすること である。効率や安上がりだけの価値観でいけば,大企業である全国チェーンの企業の方が有利 であるが,地元依存をすることは地域の産業ばかりか地域の生活を守ることでもある。特に,

役所をはじめ公共施設,学校,第三セクターなど,何等かに地域に関わる機関,施設は地元優 先で利用し,地域の安定に配慮する必要がある。商店街でも,お互いが商店街を利用し,維持

と活性化を図り,場合によっては利用することによって商店街の課題を発見し改善していくこ とができる。地方の商業圏の小さいところは,このような地産地消ができなければほどなく,

まちは縮小し,まちとしての機能を失っていくであろう。

 (2)地域コミュニティをどう再生するか

 地域コミュニティを再生するためには,まず,地域再生のコンセプトへの共通理解が必要で ある。自分の住んでいる地域社会をどのように理解し,どのようにしたらよいのか住民が主体 的に考えていき,その地域の望ましい将来ビションを共通認識することである。多くの行政が 実施してきた行政中心や国の各種の支援事業だけに頼るだけの方法では立ち行かなくなってい る。多くの地域再生の成功事例をみても,地域のキーパーソンが地元を知り尽くし,地元の生 き残る方策を模索し,アイデアと住民の協力のもとで行われたものだけが残っている。かつて の戦後の高度経済のまちづくりは,行政主導や国の支援事業を利用したもの。成功事例の形だ けを導入したもの。そのどれもが,個性のないまちづくりを行い,支援事業が終わったとたん にいつのまにかその事業の痕跡も失う。全国に同じような,施設が建設され,時を同じくし て,商店街のシャッター通り化と同時に,まちの寂れが広がっていった。

 また,企業誘致型のまちづくりでは限界がきているといえる。グローバル化と産業構造の変 化により,厳しい競争に追い込まれている企業は,正規雇用が激減した現在では,安定した雇 用の確保にもならず,いつでも業務縮小や業務転換によりいつ撤退するか分からない状況に なっているため,長期展望を持てる安定したものになっていない。よりリスクを伴うものとなっ

ている。

 それぞれの地域で,その地域の状況にあった再生を住民主体で構築していくことが最善のも のといえる。そのためにはまず「地域への愛着と誇りをもち,地域の魅力を見つめ直す」(20>

ことが必要である。まちづくりで有名になると,その地には必ず,全国チェーンが入ってくる。

全国チェーン店や新しく参入してきた企業やお店などが,その地域の一員として活動するなら

ば問題はないが,場所だけを借りて,企業コンセプト最優先で地域のコンセプトを無視したや

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り方で活動するならば,まちづくりを混乱させてしまう。全国展開している企業の問題点は,

自社の発展だけが目的のため,その地域での消費的魅力が失われたならばすぐに撤退する点で ある。そのため,ブームで急発展(かつての清里など)した所では,急にその時代のトレンド のお店や企業が入ってくるが,撤退も早いため,より廃れ感が強い。これらに関して,地元に 住んでいない地主が多いところも同様な現象がおきる。

 (3>地域伝統産業・6次産業の育成と観光

 地方の農村漁村,山間部などでは「高齢者等の介護・福祉や耕作放棄地空家などの社会課 題の顕在化」(21)が進んでいる。これらの課題は,課題であると同時に,地域再生を遂げるた めの「地域コミュニティによる多彩な小規模ビジネスの創造」(22)のヒントにもなる。特に,

人口減少や高齢化は詳細な現在の統計と今後の推移も公表されている。それぞれの地域で,そ の地元やその近隣地域の動態を検討し,まちづくりの具体的課題やそれに対応したまちづくり の具体的な道筋を作成することが緊急課題となっている。

 地域づくりで成功している事例をみると,強みとして地域伝統産業をもっているところと観 光資源があるところである。そのような歴史的積み上げがないところでも,地域の特徴やそこ ならではのもの(環境や産物,人材など)を見つけ出し,育成していくことが必要である。特 に,伝統産業や観光資源などが乏しいところでは,6次産業の育成が一つの方向性であろう。

農産物や海鮮物などは,生産の変化が大きく,季節や天候に大きく影響を受ける。また,一次 産物は価格が安く,安定しないという弱点がある。そのため,一次産物を加工し,生産流通,

販売などを自ら行い,付加価値をつけ,安定供給を図ることができる6次産業は産業の継続化 と雇用の確保という意味でも有望な事業といえる。

 また,観光は有望な産業といえる。国内的に見れば,高齢者が増加する社会にとって,特に 定年退職者のニーズの上位に来るのは旅行であるため,産業としても期待される。2007年時点 で,「国民一人当たりの宿泊旅行回数は約1.5回,宿泊日数は約2.4泊と低迷しており,観光立国 の目標である一人当たりの4泊の宿泊日数の達成とは程遠い」(23)という状況である。さらに,

参加率と参加希望率にはギャップがあり,潜在的な可能性を秘めたものである。この低迷の理 由には,観光の魅力が関係しているといわれる。リピーターの多い旅行内容から分かってくる ことは,観光資源として「個性のある地域の生き生きとした暮らしそのものが人を魅了し,惹 きつけている」(24)ということであり,「生き生きとした生活」が営まれているのかということ が重要となってくる。また,海外の旅行者を考えても,日本の文化社会は世界的に見れば独特 の文化をもっており,魅力あるものである。このような,可能性を占めているほか,まちの観 光が盛況になれば,すそ野が広い観光は多くの関連産業を活発化させ,雇用などにもよい影響 を与えるものである。

一9一

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社会の変化と地域再生の視点

5.生活とまちづくりのデザイン

 高齢化社会では,従来型のまちづくりでは限界がある。特に,人生80年といわれる時代にお いて,定年退職後や子育てを終えたあとの20年以上の人生をどう豊かに暮らすかということが 重要になっている。最近は,年金問題をはじめに財政難からその社会保障制度の存続そのもの が疑問視され,ますます仕事の延長がいわれており,老後の生活の不安ばかりが喚起されてい る。経済的な不安は重要な課題であるが,もう一つは,充実した生活を送れるかが重要である。

ただ経済的な安定ばかりでなく,豊かさや幸福な人生を送るために必要な充実や生きがいなど が重要となってくる。そのためにも,そのような価値観を取り入れた生活やまちづくりが求め られる。ここでは,このような生活とまちづくりのデザインのヒントになる点を検討してみた

い。

 (1>スローシティづくりのためのサードプレイスの創造

 人の生活において,家は基本になりまさに第一の場所であり,職場や学校は第二の場所であ る。日本の生活では,ほとんどの場合この第一の場所と第二の場所だけて過ごしている。欧米 の生活では,この他に重要な場所として「憩いと交流の場」となるゆとりを実感できる場とし てカフェやパブなどの第三の場所としてのサードプレイスがある。この場所がくつろぎや交流 を生み出し,第三の居場所ともなっている。職場や学校からリタイアした場合は,この第三の 場所がなくてはならないものとなる。また,失業や職がない場合も,家庭以外に居場所がある ことは重要である。地域での居場所であり,地域でのつながりの基礎になる。カフェやパブな どのお店は日本にもあるが,大切なのはそこへ来る人たちの繋がりである。たまり場である。

ここでの関係性が地域づくりの基礎的な関係性を強化させるものである。このサードプレイス が根付いていない日本では,地域でのこのような基本的なネットワークがないため,孤立化さ れやすい。最近指摘されている若者を中心とした「無縁社会」といわれる現象や高齢単独世帯 の孤立化は,サードプレイスを作ってこなかったからともいえる。サードプレイスはなにもカ フェやパブばかりでなく,地域の公共的な総合型スポーツクラブなども該当する。地域に居場 所がある生活を創造することが,これからの社会にとっての切り札になる。

 (2)生活の見直しと交流の場の創造

 生活の見直しのためには,地元地域に居場所があり,安全・安心と豊かな人間関係があるこ とが重要である。人口減少と少子高齢化の進行は,明確で具体的なまちづくりのコンセプトと 丁寧な計画がないと,気が付いた時には,生活基盤となる最低限のセーフティネットを崩し,

一斉に噴出する課題に何もできなくなる。歪な人口構成と急激な高齢化は,まちづくりを難し くする。従来型の経済発展的なまちづくりはむずかしくなっている。これからは,世界規模の 人口増加とそれに伴う資源や水・食糧不足が明らかになっており,地球の環境維持も限界に達

している。もはや,急激な経済発展が限界になっており,緩やかな減速とともに,適正規模で

(11)

の循環型社会が求められている。

 日本においても,人口減少とともに適正規模での人口やそれに見合った経済活動での安定し た社会づくりが必要となってきている。経済最優先ではなく安全・安心が確保された,生活の 質の高いまちづくりを志向して行くこと。この生活の質を高めるうえで重要な点は,人との関 係性である。高度経済成長では,その進行過程で地域や家族との関係性を切ってきた。今,こ の一旦切れたつながりを丁寧に紡ぎ直すことが求められている。家族の関係性も世帯類型の推 移をみても分かるように,従来型の家族だけで支え合うことが難しくなっている。新たな,新

しい型の交流の場を積極的に作っていき,ゆるやかなネットワーク的な関係性を基盤としたま ちづくりが求められる。また,生活をうるおいや充実したものにするためにできることとして,

サードプレイスについて述べたが,それと連動する形として,まちづくりの中心となるものと して,「マルシェ(市)」とライフスタイルの一つの表れである散歩について述べてみたい。

 サードプレイスには,それぞれの個人が家庭や職場以外に自分の居場所を地域に持つことで ある。かつて社会教育の分野では公民館がその役を担っていた。現在でも細々と場所の提供を 行っているが,かつての盛況さはない。ヨーロッパに多くあるカフェやパブなども地域のたま り場としての歴史を築き,生活の中に根付いてきた。日本においては現状ではこのような人間 関係を基礎にしたカフェは余り根付いていないがUR都市機構などのリノベーションの一環 として,団地内にネットワークの中心となるデッキやカフェの設置なども行われている(25)。

このような意識のもとでの自主運営のカフェの実践やワンデイシェフの実践(26>なども見られ るようになっているが,まちづくりの一環として広がっていくことが期待される。

 さらに,交流の場の中心として「マルシェ(市)」などが常設されることがまちの活気とと もに,豊かな人間関係を築いていくうえで重要となる。ヨーロッパのまちづくりの基本は歴史 的に市庁舎と広場が中心となり発展してきた。その広場には定期的にマルシェ(市)が開かれ てきた。日本でも歴史的に市は存在し,交流の場として機能していたはずである。しかし,こ の市場は高度経済期にスーパーマーケットになり,今日は,さらに,ショッピングモールへと 発展している。このショッピングモールが賑わっている一つの理由は,モールそのものが一つ のまちとなり,そこには広場(イベント会場となる)をもち,多様なお店が集まり,フードコー

トもあり,一日滞在することができる。まさに,かつてのまちの凝縮となっている。そのため,

郊外のショッピングモールのみが活気があり,まちの中心地が寂れていきシャッター通りとな り,衰退の歯止めが利かなくなっている。

 ショッピングモールは,企業の努力で次々と時代のニーズに答えながら発展していくであろ う。しかし,かつてのまちの中心地や市街地にも,一定の人口があり,生活空間としての機能 がある。郊外にあるショッピングモールの弱点は,車での移動が前提になっているため交通弱 者には不便であり,また,疑似的なまちであるため,家族や仲間では楽しめるが,お店との関 係性が顧客という関係のため,交流の広がりがむずかしい。そのため,まちの中心地に常設ま たは定期的なマルシェ(市)が開かれ対面販売がなされることにより,人々の交流の場になる。

       一11一

(12)

社会の変化と地域再生の視点

ファーマーズ・マーケットなどは,顔が見える形での提供や販売ばかりか,そこでの会話が生 産者と消費者にとって,消費者のニーズや生産物の正しい認識につながり,安全な農産物など を求めて,地産地回が促され,地域循環型経済を安定させる効果がある。かつて経営の効率化 を第一優先にしたスーパーマーケット方式が導入されて以来,豊富な商品を自由に選ぶという 方式に慣れてきた消費者であるが,そこでは生産者との関係が切れ,商品に対する正しい知識 や認識も失われ,商品を購入する場だけになってしまった。各地に広がっている道の駅などの 農産物売り場も,地場のものを手頃値段で提供しているため人気があるが,やはりここの売り 場方法も,対面ではなくスーパーマーケットと同じ方式である。マルシェ(市)が求められる のは,この対面方式を通しての交流を大切にする点である。交流を通して,産物の情報だけで はなく,生活全般の交流が展開される。時には訪れた客同士のつながりが築かれる可能性も秘 めている。この点からも地域に根ざしていく基盤を築いていくものとして大切だといえる。

 次に久繁哲之介が日本における散歩とイタリアのパッセジャータを次の表のように比較し ているので紹介したい。

・散歩とパッセジャ一旦(イタリア)

日本の散歩 イタリアのパッセジャータ

誰が 高齢者が主 多くの市民

いつ

朝が主 夕方が主

誰と

犬or独りで

仲間と

服装 サンダルに軽装 お洒落

目的

気分転換・健康増進 都市や人との交流

経路・行先 街路を経て公園へ 街路を経て広場へ

経路の選定 車両・人の通行が少ない安全街路 商店・人の多いにぎわいのある街路 経路上の商店外観 閉店時は暗色なシャッター 閉店時でも酒落たショーウインドウ

出典:久繁哲之介『日本版スローシティ』(27>

 このパッセジャータ的なものは,イタリアばかりでなくヨーロッパに広く広がっているが,

この習慣が都市部のまちづくりにも大きく影響しているように思える。カントリーサイトでは イギリスのフットパスがあり,ドイツでは自然の中を歩くワンダーフォーゲルが発達し,そみ 過程でユースホステルも生まれてきたという歴史があり,それぞれの国で日常生活での歩くこ とや自然や町のなかでの過ごし方が,そのまちづくりやその景観と深く関わっていることが分 かる。では,このパッセジャータがどのように街並みづくりや生活に大きく影響しているので あろうか。イタリアなどのまちでは,確かに多くの市民が,夕方になるとカップルをはじめ,

仲間と連れ立ってそれなりにお洒落をして,街並みを散策している。長い歴史をかけてこのよ

うな習慣ができ,それにふさわしく街並みも美しくされている。閉店後のお店もショーウイン

ドウでお洒落に飾られ,このような演出をするために,シャッターではなく,ショーウインド

ウになっている。ゆっくりと歩きながらおしゃべりを楽しんだり,ショーウインドウをのぞい

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たりしている。また,カフェでも外のテーブル席でいつまでも交流を楽しんでいる。つまり,人々 をまちに集めるということは,まちを活性化させるということだけではなく,市民の居場所と 交流の場をつくろうとする実践でもある。

おわりに

 もうすでに始まっている地域社会やまちの変化を,人口減少,少子高齢化,産業構造の変化,

世帯形態の変化などから,今後の推移を加味しながら今後の「まちづくり」のあり方を概観し てきた。何もせずに流れに任せていたら,各地で地域やまちは寂れ,都市機能の充実した大都 市は,今後急激に増えていく単独世帯でもなんとか生活していけるが,経済基盤の弱い地方都 市では高齢者や単独世帯などのセーフティネットが崩れていき,ついには生活基盤そのものが 崩れていくことが明らかである。一つのまちを形成している東京近郊の団地などでは高齢化が 進行し,人口も減少し,高齢者の単独世帯が多くなっている。そのため,近くにあった商店街 がなくなり,病院などもなくなり,最後のスーパーマーケットが撤退すると,日々の生活のた めに遠くのスーパーマーケットに行かなければならない。このような場合,車がなければ交通 弱者になり,また,体調を崩せばすぐに生活に支障をきたす。地域のコミュニティがうまく機 能していないところでは,孤独死が問題になっている。現在は,地元のボランティアなどによ る活動も始まっているが,その参加者も高齢になりつつある。このような状況は全国に急激に 広がっていくことが予想される。

 現在,多くのまちでは行政主導のまちづくりが行われたり,まちづくりスローガンが作成さ れたりしたいる。しかし,今後の日本の人口動態の変化や高齢化や単独世帯の進行が指摘され,

その推移も公表されているにもかかわらず,そのような状況ではどのような課題が出てきて,

そのような変化にどのように対応し,それをまちの人材や地域資源などを考慮しながらの具体 的にどのように対応していくのかをきちんと受け止めて対策を作成し,実行に移しているとこ ろが少ないように見える。数字の変化だけで,高齢者の増加と生産者人口の減少,それにとも なう財政負担増だけを考慮すれば多くの自治体が破たんの危機に遭遇することもあるであろ

う。

 このような危機を迎えないためにも,変化の状況をしっかりと認識したうえで,具体的な対

応を立てるべきである。地域の生活基盤を確保するうえでも,多様な世代の交流がなされ,地

域での産業や雇用の確保などを創造していくことが大切となる。地域再生には,地域の課題が

あり,それを解決するためには,人材が必要となり,そこには雇用が生まれる。また,高齢者

福祉や交通弱者などの対応には,経費がかかるが,経費削減の一つとしてボランティアの活用

や,地域での助け合いということが重要になってくる。そのようなネットワークを構築してい

くことが重要な鍵となってくる。今後,予想される状況に流されていくならば,まちは活気を

失い,寂れていくばかりである。それを回避するためにはそれぞれの地域をどのようなまちに

      一13一

(14)

社会の変化と地域再生の視点

していくのかというコンセプト(概念・考え方)が必要である。上からのコンセプトづくりで はなく,専門家に依頼したものや,まちづくりの成功事例を模倣したものでない,そのまち独 自のコンセプトをつくる。そこでは,次世代を担う子どもや若い人,新しい人とともにコンセ プトをつくり共通理解をしていくことが大切である。次の課題として,楽しいまちであり,支 え合いや誇りを見出せるまちにしていくことがどのように実現できるのか,まちづくりの事例 の実践活動を中心に検討してみたい。

引用文献

(1)統計局,統計Today No52

(2> 国立社会保障・人口問題研究所「人口の推移と将来人口」2008年

(3)国土交通局「維持・存続が危ぶまれる集落の新たな地域運営と資源活用に関する方策検討調査   報告書」2008年,p30

(4>五木寛之『下山の思想』三冬舎新書,2011年

(5)井上建二『地域の力が日本を変える一コミュニティ再生と地域内循環型経済へ』学芸出版社,

 2011年,p21

㈲ω㈹働⑩ω働03岡㈲圃⑳⑬⑲⑳⑳圃㈱⑳㈲ 同前,p24

同前p25

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」(2008年3月推計)

同前 同前 同前 同前 同前

統計局,2005年国勢調査「皿 変化する産業・職業構造」

同前

三浦展『第四の消費一つながりを生み出す社会へ』朝日新聞出版,2012年,p33 総務省,2005年国勢調査

前掲『第四の消費一つながりを生み出す社会へ』p166

前掲『地域の力が日本を変える一コミュニティ再生と地域内循環型経済へ』p44

同前

同前,p59

同前

同前,p118 同前,p119

UR都市機構では,1960年に建築した築50年の団地を,家族構成やライフスタイルの変化に対応  するものとしてリノベーションを行い,団地型シェアハウスや菜園付きスローライフ対応に取り組  んでいる(りえんと多摩平)。そこでは,共有スペースとしてのかたらいのテラスやアトリエなどを

 設置している。http:〃bluestudio,typepadjp/tamadaira/archive&html

㈱ 覧裕介監修『地域を変えるデザイン』英治出版,2011年pp226〜229 吻 久繁哲之介『日本版スローシティ』学陽書房,2008年,p33

一14一

(15)

参考文献

(1)井上建二『地域の力が日本を変える一コミュニティ再生と地域内循環型経済へ』学芸出版社,

 2011年

2つ﹂4ドD6 五木寛之『下山の思想』幻冬舎新書,2011年

覧裕介監修『地域を変えるデザイン』英治出版,2011年 2005年国勢調査,総務省統計局

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」2008年3月推計 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」2009年12月推

7891011 計

平成23年版 子ども・子育て白書

久繁哲之介『日本版スローシティ』学陽書房,2008年

久繁哲之介『地域再生の罠一なぜ市民と地方は豊かになれないのか?』筑摩書房,2010年 三浦展『第四の消費一つながりを生み出す社会へ』朝日新聞出版,2012年

藻谷浩介『デフレの正体一経済は「入口の波」で動く』角川書店,2010年

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