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わが国の新実用新案法 とその比較法的検討

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(1)

わが国の新実用新案法 とその比較法的検討

久々湊 伸 一

1 . は じめに

わが国の新実用新案法 は,平成 5 年 4 月 1 6 日参議院本会議で可決成立 し,同 月 23 日に公布 された「 特許法等の‑部を改正す る法律 」( 平成 5年法律第26 号) によって抜本的な改正を受けた。以下 はその新実用新案制度を概観 し,その特 徴を把握 し,次にその沿革 と諸外国の法制を調査 しっっ,そ こか ら新制度が真

に有効な制度 とな りうるための確かなる手応えを得ようとす るものである。

2. 実用新案法改正の理由

今回の実用新案制度の改正は,久 しく実体法上 も手続法上 も特許制度 と基本 的に同一内容の実用新案制度をその手続面について抜本的に改正 して現在の状 況 に適合 しようとしたものである

基本的な改正はまず完全な審査制度を廃止 して無審査主義を取 った点であ り,又それによって生ず る権利の有効性を担保 す るためサーチ レポー トの制度すなわち実用新案技術評価書制度を導入 した点 及び存続期間を 6 年に短縮 した点 にある

1)。

立案者の解説によれば,近年の技術革新の進展を背景 として,実用新案登録 1 )今回の改正 の コンセプ トは,昭和 41 年 ( 1 9 6 6 年)の改正案 に一部示 されてい る。

反対 に遭 って廃案 とな ったが,公開後 8 年の存続期 間,簡略審査 ( 形式審査) ,輿 議 申立,効力確認審判を骨子 とす る。文献 1の (2 ・完)206‑208 貢参照。

〔1〕

(2)

出願の対象には,出願後極めて短かい期間に実施が開始 されるものが多 く含ま れてお り,またそれによって保護 される製品のライフサイクル も短縮 され る傾 向にあ るか ら,早期 に権利保護が得 られ る要請が顕著 にな ってい るとされ

2)

従来の実用新案登録制度 は,特許制度 と同様,実体審査を行 った後に登録す る制度 を採用 していたため,慢性的な審査遅滞を改善す ることが困華であ り, 実用新案登録出願を構成す る上記短 ライフサイクルの技術の保護が事実上不可 能 となっていると判断された

3) 0

これまでの実用新案制度 は,小発明を保護す るものとして,保護の対象 とし て特許発明の範囲より限定 した ものになっていること,存続期間が短かいこと 及び登録料その他諸手数料が特許に比 して低額 となっていること等の相違を除 けば,実質的に同一であり, しか も久 しく特許制度 よりも企業の要請に答える ところとな り,出願数が多か った。近年出願数が逆転 して特許出願が多 くなっ たことにより,実用新案制度 は時代的役割を果 し終えたか らこれを廃止すべ L との意見 もあった。私見によれば実用新案制度は中小企業を含めたわが国の技 術革新 に重要な役割を果 しその必要性 は減少 したことは認めるが,諸外国の事 情を も考慮す るとき,わが国の実用新案登録出願がその数字の点か ら言 って も 直ちに廃止す るのが適切な状態に至 っていない。

3. 新実用新 案制度 の特徴

以上のような改正の必要性 に基づ き改正点 は以下の通 りである。

( 1) 無審査主義

早期権利化を図るため, 実体審査を行わずに登録を認めることに した ( 1 4 条) 0 しか し従来の方式審査のみでな く, 基礎的要件 と称する審査を行 う(6条の 2 ) 0 この基礎的要件には ,4 つの項 目が掲 げ られ る。 ( 1 ) 空間形式要件 ( 物品の形状, 2 )文献 1 3 の6 2 頁,文献 1 5 の 4 頁以下。

3 )文献 1 3 の62 頁,文献 1 5 の 5 頁。

(3)

わが国の新 実用新案法 とその比較法 的検 討 3 構造,組合せ) ,( 2) 公序良俗要件 ,( 3) 出願 の単一性要件 ,( 4) 明細書の記載の明 確性要件であ る (6 条 の 2 第 1 号乃至 4 号)。空間形式要件 は,特 に方法,級 成物,化学物質,無定形物,動植物品種の考案を排除す ることにあ り,公序良 俗 に反す る考案 は,公報掲載か ら除外すべ きである。単一性の欠除は従来 よ り 拒絶理 由であ り,無効理 由ではなか ったが,料金面等 出願人間の公平を考慮 し た ものである。又明細書の記載 の明確性 は技術情報 と しての価値を高 めるため に も必要 で あ る

4)。

特許請求 の範 囲の記載不備 な ど も指摘 され る ( 6 条 の 2 第 1 項 3 号 ,5 条 5 項 3 号) 。これ らの内容 について は手続補正指令書 ( 方式)

に対 して指定期 間内 ( 方式要件30日 ;基礎要件6 0日,在外者 3カ月) に手続補 正書を提 出す ることによ り治癒す ることがで きる。その結果出願無効 にされ, 又 は出願の放棄,取下 げがなければ設定登録 され,特許の公開公報 に相当す る 登録実用新案公幸削こ掲載 され る。

( 2 ) 実用新案技術評価書

実体審査 は行わないが,その代 りにフラ ンス等欧州諸国で制度化 されている サーチ レポ‑ 卜に相 当す る技術評価書制度を導入 した。実体審査を経 ないと登 録 された権利の有効性 ははなはだ不安定である。最終的には裁判官の判断に委 ね られ るが,訴訟手続が長び くことが予想 され る。技術性 に対す る専門的で客 観的な判断が要求 され る

この制度 は出願 と同時に又 はそれ以後登録 にな った 後 も請求がで き,請求 によ り審査官が作成す ることにな っている ( 1 2 条) 。 こ の技術評価書 は権利行使の前提 とな り侵害訴訟 の前 に行 う警告 の際に提示す る

ことが要求 され る ( 29 条 の 2)

0

技術評価書請求があった ときは,各請求項 ごとに,( 1 ) 刊行物公知 ( 3 条 1 項 3号) ,( 2 ) 公知刊行物 による進歩性 (3条 2 項) ,( 3) 拡大先後願 ( 3条 の 2 ) ,

( 4 ) 先後腰 ( 7 条 1 項) ,( 5 ) 同 日出願 ( 7 条 2 項),( 6) 関連先行技術文献発見不可 のいずれかの蓋然的な判断をす る。

評価書請求が あ った ときはその 旨公幸削こ掲載 し ( 1 3 条),評価書 自体 は閲覧

4) 文献 24 の 39 頁

(4)

の対象 とす る

( 3 ) 無効審判制度,侵害訴訟

特許制度では訂正無効審判を廃止 したに止まるが,実用新案制度では無効審 判以外の審判制度を廃止 した。無効審判の重要性 は無審査主義の導入により増 大 したと言え る。無効審判請求書の補正 は,審理の迅速化のため,請求の理 由 につ いて も要 旨の変更を認めない ( 38 条 2 項) 。侵害訴訟 に対抗 して無効審判 が請求 され ると,権利の有効性を考慮 して,原則 として4a ) 訴訟手続 は中止 さ れ る ( 40 条 の 2) 。 過失推定の規定( 特 103 条) は実用新案権 には適用 されない。

損害賠償責任の過失の立証責任が実用新案権者 に転換 され るもの とし, しか し 技術評価書における評価書 における評価 に基づいた権利行使,あるいはその他 必要 な注意を もって した権利行使 は,損害賠償責任 を免がれ ることに した ( 29 条の 3 ) 0

( 4) 存続期間

存続期間は出願 日よ り 6 年間であ り ( 1 5 条) ,公告 日よ り 10 年 もしくは出願 日よ り 1 5 年のいずれか早 い時期 とい う従来の期 間か らは大幅な短縮である

5) 。

短 ライフサイクル技術の実状 に基づ き,諸方面の了解 によるもの とされ るが, 権利の有効性の危幌を短かい存続期間で担保す るという意味 もあったか も知れ ない。

( 5) その他の改正 ( j) 補正 ・訂正

特許法 における改正 は,可能な限 り実用新案法に も適用 され新規事項を追加 す る補正 ・訂正 はで きないが,更に登録後の訂正 は訂正審判によ らず,訂正の 4 a) 申立てがあり,中止が明らかに必要がない時以外。明らかに必要がないときは,

文献 28 の 95 頁参照。

5) 沿革によれば最初の明治 38 年 ( 19 05 年)法では ドイツ母法と同じく基本期間 3 年

で 3 年の延長を認める 6 年であった ( 1 0 条)。明治 4 2 年 ( 1 909 年)の改正は存続

期間には及ばず,大正 5 年 ( 1 91 6 年)の改正において更に 4 年の更新,即ち 10 年

の保護が認められた。大正 1 0 年 ( 1 9 21 年)法では更新乃至は延長は不便であると

して登録の日から画一的に 1 0 年とした。文献 1 の( 1 ) 37 2 頁 ,381 頁 ,389 頁, (2 ・

完)の 1 86 頁参照。

(5)

わが国の新 実用新案法 とその比較法 的検 討 5 請求 によ り, 実用新案請求の範囲における請求項の削除に限 られ る ( 1 4 条の 2 ) 。 自発的な補正 は政令で定め られた出願 日よ り 2 カ月以 内に限 り認 め られ (2 条 の 2 第 1 項),方式審査及 び基礎的要件 の審査 につ いて前述の ごと く

6)

補正指 令書 に示 された指定期間内に手続補正書を提 出で きる

桓) 同一 出願

従来の取扱 い,手続 と異な り,早期登録を達成す るため,同一の考案 あるい は同一 の発 明 と考案 につ いて同 日出願が あ った ときは,特許 出願 は拒絶理 由 ( 無効理 由)を,実用新案登録 は無効理 由を有す ることに した (7 条)。 この ような状態の発生 した場合 に全ての出願 に権利を与えないわけではな く,実用 新案登録 については請求項を削除す る訂正 ( 1 4 条の 2 )の範囲内において,特 許 出願 について補正 ( 訂正)を行 うことによ り,拒絶理 由,無効理 由を解消 し

うる。

い) 出願変更,分割,国内優先権

特許 出願又 は意匠登録 出願か ら実用新案登録 出願‑の変更 は,依然可能であ るが,実用新案の存続期間が出願か ら 6 年 とされた ことに応 じて,原 出願か ら 5 年 6 月 まで又 は最初の拒絶査定の謄本の送達 日か ら 3 0 日以 内に限 り変更で き る ( 1 0 条) 。逆の実用新案登録 出か らの出願変更 は,出願が係属 してい る限 り 可能である ( 特 4 6 条,意 1 3 条)。

分割 出願 は,補正の変形種 と考え られ るか ら,分割 出願ので きるのは,補正 ので きる時期, 自発補正ので きる出願 よ り 2 月 (2 条の 2 ,施行令),及 び基 礎的要件不備 による補正指令の指定期 間内 とされ る。

特許出願又 は実用新案登録 出願を基礎 とす る国内優先権の主張を従来 と同様 に可能 と したが,先の出願 日か ら 1年を経過 しない内に登録 された実用新案 を 基礎 とす る国内優先権 の主張 はで きない ( 8 条 1 項 5 号)。出願手続が特許庁 に係属 しない ものについて手続 を再開す ることは不可能である。

6) 3 頁参照。

(6)

4. 実用新案制度の成立 と変遷

( 1) 世界的な実用新案制度のは じまり

実用新案制度 は ドイツが発祥地である。 ドイツの最初の実用新案法 は1 891 年 6 月 1日の法律であるが, これは1 87 6 年の意匠法 と1 977 年の特許法 による 保護ではカバーで きないとされた対象を保護することを 目的として成立 したも のである 。1 87 6 年 1 月 1 1日の 「 意匠とひな型の著作権に関す る法律 ( 意匠法 ) 」 は,工業的意匠の保護を定めていて,小発明の保護を排除 しているわけではな かった。実際に発明で特許要件を具備 しない技術的改良が意匠法に基づいて寄 託 され ることを予想 していた。 しか しなが ら 1 878 年 9 月 3日の ライ ヒ高等商 事裁判所の判決は,美的意匠のみに意匠保護を認め,実用的意匠は保護 しない との判断を示 した

7) 。

Eul er は ,「1 887 年の特許 ア ンケー ト」によ り 「 実用意 匠 」( Nut z l i chke i t smus t er)制度の導入を提案 し,特許能力ある発明の発明 的質の要件を引下げることを防 ぐため実用新案制度の成立を見た。始めこの制 度 に反対 した Kohl er の見解に従 っていたライ ヒ裁判所 も,「 作業用具 または 実用品」 という文言 について,保護の目的が模造又は図面 により提出されたひ な型にあることを認め

8)

,形式だけでな く構成 ( Kons t rukt i on)の改良が保 護 され

9)

,既知の形式における特定の材料の使用が実用新案 として保護 され るもの とした。1 923 年 には補助的実用新案制度を設 け,1936 年 にはその時点 までに改正 された特許制度の実用新案への準用を定めたが, 「ひな形( model l ) 」 とい う文言を保護対象か ら削除 したことが,ラヒイ裁判所 に対 し実用新案 は新 規な有形的形式形成のみが保護 されるとす る判断を うなが した。 これが ドイツ の実用新案の実際的価値を減少せ しめたのか も知れない。その後1 986 年,1 990 年の改正により現行の ドイツ実用新案法が形成された

10)

7) ROHG 〔ライ ヒ高等商事裁判所判例集 〕 2 4 巻 1 0 9 頁以下。内容 は文献 3 a の 3 0 頁以下。

8)RGZ3 3 巻 9 9 頁以下。

9)RGZ3 5 巻 9 0 頁以下 。1 0 ) 詳細 は文献 7

1 0 ) 詳細 は文献 了。

(7)

わが国の新実用新案法 とその比較法的検討 7

( 2 ) わが国の実用新案制度のは じまり

わが国の実用新案制度 は,明治 3 8 年 ( 1 9 0 5 年)に上記 ドイツ法を模範 と し て制定 された1 1 ) 。議会 における法案の審議では上記の ドイツの制定理 由と同 様 に,発明 と意匠の中間にある実用新案 はそれぞれの制度では保護 されていな いが,保護の必要なことが強調 され,反対 に特許 されているものの中には実用 新案に過 ぎないようなもの も含まれてお り,実際に実用新案を保護する必要が あれば特許法 ・意匠法の改正によって十分 に可能で,わざわざ実用新案法の制 定を見 るまで もないとした反論 もあったが,立案者は実用新案 は発明に比較 し て軽いが, 日本の工業や世界全体 において も有利なるものを保護することを民 間は渇望 していると述べた 1 2 ) 0

制定 された実用新案制度 は特許制度よりも利用 され,有用な考案 も必ず しも 特許発明に劣 らない状態であったが,それだけに又その弊害 も露呈 したため改 正提案の度 ごとに廃止の意見が提示された。 しか し結局 は廃止 されるには至 ら なか った。昭和 2 8 年の特許庁の会議では,有益な意見がでている。実用新案の 中の低い考案 に 1 5 年の長い保護期間を与えるべきではない。実用新案には個人 の ものや中小企業の ものが多 く表彰 され る優秀な もの も多い。優秀なもの も多 いが特許発明としない方がよいもの も多い。実用新案の中で特許 にも意匠にも な ら‑ ないものが 5% にすぎないという試算であるが,そ うだとす ると,実用新 案法を廃止 して も効果がな くて犠牲が多いという意見 もある。大企業を代表す る意見は廃止の方向であ り,中小企業を代弁する意見は実用新案の意義を認め ようとして来たように思われる。

( 3) 最近における実用新案制度の意義

アメ リカは,イギ リスと同様実用新案の制度を持たない。利用発明に基づ く 裁定実施権制度 は基本発明を有す るアメ リカの利益 に反 し,特に実用新案権の 場合に弊害が際立っ ことが指摘 され,実用新案制度廃止の圧力 となる。

近年に至 って,特許制度の‑‑モナイゼ‑ションの動 きの中で,実用新案制 ll )文献 4 の571 頁

1 2 )文献 3 の3 8 頁

(8)

度を再検討す る論議が生 じ,国際的な問題 となった。審査促進の要請を考慮 し た議論 もあるが,又その中で実用新案制度が新たな角度か ら国際的にも注 目を 浴びている。

欧州では多数の国が欧州特許条約 ( EPC) の支配の下 にあ り,各国の特許 法を これに沿 った制度にする義務を負 っているが,加盟国の技術水準は必ず し

も一定 していないため, AI PPI は 1 9 8 6 年 ロン ドン総会で実用新案制度を世界 的 レベルで検討 し,その意義 と必要性を認めるに至 っている。南北問題の解決 にも実用新案制度の選択が効果を奏す るであろうという認識が当然なが ら問題 となって来よう。

5. 諸外国の実用新案制度

したが って諸外国が実用新案制度を認識す る必要性 は,今 日的問題であるこ とが判 る。まず ドイツの現行制度か ら始めて各国の制度を概観 し,その比較法 を行い,新法の理解に資することに したい 1 3 )

0

( 1) ドイツ

ドイツの実用新案法 は,制定以来意匠法 と同様無審査による登録を認めると ころに特徴がある。特許法の定める新規性,進歩性については,侵害事件にお いて比較的緩やかな保護基準 ( 相対的新規性,発明的進歩性がわずか)におい て裁判所が保護能力を判断す る。

㈹ 保護の対象

保護の対象は特許法の対象である発明とほとんど一致す るように接近せ しめ られた。すなわち空間形式要件が排除され

14)

,電気回路が認 め られ るだけで 1 3 ) 主 として文献 10 の 101 頁 を参照 したが,文献 29 の 1 281 頁 によれば,スウェーデ ンが 含 まれ,反対 にグアテマラ,マ レー シア ,OAPI は含 まれていない。又文献 9 の 6 2 頁 は制度化を考えている国 として フィンラン ド,イ ン ドネシア,南アフ リカを挙 げてお り,又文献 32 及 び 33 によればオラ ンダが制度化を論議 していることが判 る。

1 4 )1 986 年 の改正で は,論争が活発化 して決着が付かなか ったか らであろ う 。1 991 年

の国際取引における取締 を強化す る改正の際に達成 した。

(9)

わが国 の新実用新 案法 とその比較法 的検討 9 な く,化学物質,組成物 も対象に含め られた。方法 は依然 として除外 されてい る。空間形式要件の除外理 由は,その限界 についての客観的に統一 した判断が 困難で訴訟手続に不必要な時間がかか って しまうことであろう

( D) 無審査主義

無審査主義の手続 は,いわゆる方式審査 にとどまるが,不登録事 由として( 1 ) 公序良俗違反 ,( 2 ) 動植物の種 ,( 3 ) 方法を挙げている ( 2 条) 。新規性,進歩性 および産業上の利用可能性等の実体審査 は登録前 には判断 しない。

い) 登録の繰延べ

出願か ら 1 8 カ月まで登録の繰延べが可能である。実用新案か ら特許への出願 変更 は認め られていないが,出願か ら 3 カ月以降に国内優先権を主張 して特許 出願をす ることがで きる。その場合 にあ らか じめ実用新案の登録の繰延べを申 請 してお く必要がある。登録繰延べの認め られる理 由は,実施が遅れ る場合技 術内容の公表を引延ばすためである

( ⇒ 権利の有効性を確保す る手段

実用新案登録が取消 され ると,権利者 には過失の推定が働 くので,権利行使 には高度の注意義務を負 ってお り,公的なサーチ レポー ト, 自己による調査お よび専門家の鑑定が欠かせないとされる。

㈹ 不服 申立,審判

実用新案権の有効性の判断は,か って専 ら裁判所の専権 にあったが,現在 は 特許庁に対 し登録の取消請求がで きる。侵害訴訟中で権利の有効性を争 うこと

もで きるが,裁判で は当事者 に対す る拘束力が生ず るに過 ぎない。

N 存続期間

存続期間は久 しく出願 日より 6 年であったが,実用新案制度の重要性が認識 されて 1 9 86 年 に 8 年 に延長 され,1 990 年法 によ り更 に1 0 年 に延長 された。 出 願の時点で 3年間の存続が認 め られ,更に 3年, 2年, 2年の延長が認め られ

ることになる

( 卜 ) 分 岐 出願

特許出願 日より 1 0 年以内であって,特許付与前 あるいは出願の拒絶があって

(10)

一定期間内に,実用新案を分岐す る出願をす ることがで きる。特許出願の維持 が困難であ る場合 に実用新案 と して存続 させ るとい うための場合 や,併願 と

し,登録になった実用新案権で権利行使することができるという利点がある。

( 2 ) デ ンマーク

デ ンマー クの実用新案法 は ,1 9 9 2 年 2 月26 日法律第 1 3 0 号 として可決 され, 7 月 1 日よ り施行 された最新の法律であるので,比較的詳細に解説 したい

15)

0

欧州で各国が実用新案法を検討 しているが,デ ンマーク法 は ドイツ法を模範 としている。法律の名称 は,原語を直訳 した ものは ドイツ語の 「 実用意匠」で はな く 「 実用ひな型」,又英語, フランス語の ut i l i t ymodel 乃至は mode l e d'ut i l i t 6に対応 し,原語で は brugsmodel である

その理 由は意匠法 の意 匠, ドイツの 「 装飾意匠」( Geschmacksmus t er ) と混同を避 けるため とさ れる

1 9 9 4 年 はデ ンマ ーク特許法施行 1 0 0 年 に当 る。実用新案制度 の導入が デ ン マ‑クで論議 され るようにな ったのは 6 0 年代であるとされ, この国のほとんど の企業がそ うであ る中小企業の保護育成に合致す る制度であるとの認識があ る。 ドイツ法を模範 に した理 由は,デ ンマーク企業の関心事 は,国内段階での 保護であ り,隣国 と同一の制度であることが有利であるというにある。ちなみ

に ドイツはデ ンマークの総輸入額の 2 5% を占めている。

㈹ 保護の対象

デ ンマークの実用新案 は,産業上利用で きる技術問題の解決を示すあ らゆる 製品である。空間形式要件 は, ドイツの新法 と同様 に課せ られない。 この法律 で問題 とされ るのは特許法上必要 とされる発明の進歩性を有 しない ものについ て第三者 による不正侵害に対抗す る公正かつ短期の保護を必要 とす る手工業的 性質の発明である。化学物質 自体,医薬,食品 も実用新案 として保護 され る。

方法 は ドイツ法同様実用新案の対象 としない。 もっともこの点について ドイツ

法が改正 され るとこれに迅速 に応 じられ るよ うに産業大臣への授権を法第 4 7 条

1 5 ) 文献 31 の 4 5 3 貢以下。

(11)

わが国の新実用新案法 とその比較法的検討 ll に規定 している。武器 は実用新案登録で きない ことに している

( 。) 新規性

新規性 は, ドイツ実用新案法,デ ンマーク特許法 と同様の定義で,絶対的新 規性を保護す る欧州特許条約 5 4 条 ,5 5 条 と同 じである。

(, ) 無審査主義

ドイツ実用新案法に従 い,デ ンマークも無審査主義を採用 している。特許法 との主な区別が この点にあることは ドイツ法及 びわが国の新法 と同一である。

方式要件等の審査を次の点について行 うこともほぼ同一である

(i )製品の産業上利用可能性。

(j i)不登録事 由 ( 方法,動植物) 。又武器 も登録 されない。

(i n) 単一性。すなわち 2 以上の相互 に関係のない製品を含んではな ら ず,出願時の内容を逸脱 してはな らない。

( ⇒ 登録の繰延べ

出願 日より 1 5 カ月の範囲内で登録の繰延べを申請で きる。 これ も ドイツ法 に 従 うものであるが,わが国にはない制度である。製品の実施 まで内容の公表を 引延ばす ことを認めるものである 。1 5 カ月の期間は,パ リ条約の優先権が1 2 カ 月以内の主張を有効 にで きるよ うにす るためとされ る。

㈹ 審査請求

無審査主義ではあるが,登録前の実体審査 ( 新規性 と進歩性)の請求を認め ている。わが国の技術評価書 ( サーチ レポー ト)の請求が登録前 にで きる点で 同様の制度であ り, この点で ドイツの制度 と異 なる。又第三者 も審査請求がで きる。審査済の登録が表示 され る

この制度 により実用新案権の法的有効性の 存否について不必要な手続 と紛争を回避で きる。かか る審査の可能性 はわが国 同様デ ンマーク法の特色 というべ きである。

N 不服 申立 ・審判

異議 申立 は規定 していない。出願人が権利を取得す る時点で,不必要 な妨害

か ら防 ぐためとされ る。登録後 は,実用新案登録を争 うい くつかの手段を認め

る。まず無効訴訟を裁判所 に提起できる

これは特許法で も認め られているも

(12)

のである。又特許庁 に対 して登録の全部又は一部の取消を求める審判がある。

この制度は新法の改正によるもので,同時に特許法にも導入 された。

特許庁の出願又は登録に対する判断に対 しては,特許庁審判部への不服の審 判の請求がで きる。登録後 は特許庁の許可の取消又 は登録 に対す る判断に対 し て訴を提起できる。

( 卜 ) 存続期間

存続期間は出願 日より 1 0 年である

出願によりまず実用新案登録 は 3 年間有 効 とされ,更に 2 回の 3 年又は 4 年の延長がせ きる.費用は1 0 年間で約 1 , 800

ドイツマル クで,その中の約520 ドイツマル クが出願料である。審査請求の費 用が約800 ドイツマル クで,それを含めた全額が約2, 600 ドイツマル クとい う

ことになる。 これに対 し特許及び意匠を同 じく 1 0 年間について計算すると維持 費はそれぞれ約 4 , 000 ドイツマルク ,930 ドイツマルクとなるとされる。

研 分岐出願

わが国にはな く ドイツの実用新案制度で有効である制度 として分岐出願があ る。わが国 と異なり ドイツ及びデ ンマークでは両出願の競合を認める。先に し た特許 出願を基礎に してその全部又 は一部を実用新案出願 とすることがで る。

デンマークには法律に明文はないが,問題 とされよう

分岐できる時期 は,特 許出願の最終的な決定があった後 2 カ月以内で遅 くとも出願 日より 1 0 年以内に 行使 しなければな らない。分岐の申請は実用新案出願提出の際に しなければな らない。分岐制度 は特許出願の補助 として利用 され る。例えば特許出願の調査 によって特許付与の見込みが濃厚になった時点で分岐実用新案出願を行い迅速 な保護を受けて権利行使ができるようになる。分岐出願で きるのは新法施行 日 1 99 2 年 7 月 1 日以後 になされた特許 出願に限 られ る。

( 3 ) フランス

フランスは,久 しく無審査主義の特許制度を保持 していたが, 1 968 年 1 月

2 日法律第68‑ 1 号 ( 1 969 年 1 月 1 日施行) によって大改正を行 い,早期公

開制度 と新規性調査 ( サーチ レポー ト)の制度 ( 新規性等の実体審査までは採

用す るに至 らなか った)を導入 し,その際 この調査 の手続 を経 ない実用証

(13)

わが国の新実用新案法 とその比較法 的検討 1 3 ( c e r t i f i c atd' ut i l i t 6 ) の制度 も併せて導入 したのである

16)

O

この実用証の制度 は新規性調査 と存続期間の相違を除けば特許制度 と全 く同 一であるとされる。存続期間は特許が出願より 2 0 年であるのに対 して,実用証 は出願 日より 6 年である。わが国の新実用新案制度は,存続期間についてフラ ンスの制度を踏襲 したと言える。

新規性はいわゆる絶対新規性で内外国を問わない公知 による ( 8 条 )0 「 技術 水準」 という言葉を使用す る。公序良俗 に反する発明は勿論であるが,植物の 品種 は ,1 9 7 0 年 6 月 1 1 日の植物品種に関す る法律 によって保護 され ることに し,それについて及 び動物の種及 び動植物の生産の本質的に生物学的方法,つ まりバイオテクノロジーの分野については特許法では保護 しない (7条) .

発明とみなさない もの として, a) 発見,科学の理論,および数学の方法, b) 美学の創作, C) 精神的行為の遂行,遊戯,または経済的活動の分野にお ける計画,法則または方法およびコンピュータ ・プログラム, d) 情報の提示 を挙げている (6条) 。

特許の新規性調査の請求に伴 って,実用証出願‑の変更の手続がある。新規 性調査の手続 は,出願 日 ( 又は優先権主張 日)か ら 1 8 カ月まで繰延べす ること がで きる ( 2 0 条 1項)

新規性調査の請求は書面でなされ,出願公開 ( 1 8 カ月 経過前で も出願人が希望すれば公開されることもある)後であれば第三者 も請 求す ることができ ( 2 0 条 1 項),請求があったことは出願人に通知 され,出願 人は 3 カ月以内に取下げ又 は実用証出願‑の変更ができる。

実用証の発明の対象では ,1 9 6 8 年法では医薬 は除外 されていたが ,1 9 7 8 年 法ではこの除外 も撤廃 されている。

実用証の出願は, 3 つの場合を分 けることがで きる。始めか ら実用証出願を 提出する場合,特許 出願を自発的に実用証出願に変更す る場合,それ と実用証 出願への変更が職権によって自動的に行われる場合である。実用証出顔‑の自 発的変更は,出願 日より 1 8 カ月までに しなければな らない。職権による自動的

1 6 ) 文献 3 の 1 4 1 頁以下,文献 1 7の 1 3 8 0 頁以下参照。

(14)

な変更は,新規性調査を1 8 カ月繰延べ請求 したままに してお くと,その経過の 時点で実用証出願に変更される。調査請求を して も手数料納付がなされないと 同 じ取扱いを受ける。

特許及び実用証を無効にす るためには, もっぱ ら無効訴訟を提起す ることに なる

無効訴訟の判決が確定す ると,国家登録原簿 に登録 され,1 97 8 年法 により, 無効 は絶対的効力を有するものとされた ( 50 条の 2) 。

実用証について権利行使を行い侵害訴訟を提起す る場合には,原告にサーチ レポー トの提出が義務付け られている。わが国のように警告の段階では義務付 けられていない。侵害訴訟で権利の有効無効が判断されるので,無過失の賠償 責任の問題が生ずることも少ない。

( 4 ) イタ リー

イタ リーの実用新案 は,19 40 年 8 月25 日の工業的モデルに関す る勅令 1 411 号によって制定 された。多 くの条文 は特許法を準用 してい1 7 ) 0

保護の対象 は,「 機械又 はその部品,器具,道具その他一般に有用な物体に 対 し,応用上又は使用上特別な効能又は便宜を与えることのできる新規なモデ ル」である。「プロセス,方法,電気回路」は一般 に実用新案の対象 にな らな いとされる。

方式審査のみが行われ,審査官は自ら調査を しないので新規性の審査 は行わ れない。

実用新案出鹿は出願 日 ( 又 は優先 日)か ら 1 8 カ月後出赦公開される。存続期 間はまず出願 日か ら 5 年 とされ,更に 5 年の更新ができ,最長1 0 年である。実 用新案権に対抗す るためには実用新案無効訴訟を提起 しなければな らない。出 願 日より 4 年の問にその技術が実施 されないと強制実施権の請求を求めること ができる。明細書は印刷されず,内容を確かめるためには閲覧申請 によ らねば な らない。

1 7 ) 文献 1 7 の 1 3 7 8 貢以下参照。

(15)

わが国の新実用新案法 とその比較法的検討 15

( 5 ) スペイ ン

スペイ ンは,久 しく無審査主義 の特許制度 を維持 して釆 たが,1 98 6 年 に大 改正を行い審査主義に移行 した。その際に無審査主義の実用新案制度 を設 け, 法第 1 4 部1 43 乃至 1 54 条 に規定 している。特許出願で はサーチ レポー トの請求 の制度を設 け,又異議 申立制度 も規定 しているが,経過措置で実体審査 はまだ 行われていない

18)

0

実用新案制度の保護の対象は空間形式要件が課せ られてお り ( 1 43 条 1 項), 又植物変種 は特別法 ( 1 975 年 3 月 1 2 日の法律 1 2/1 975 号)で保護す ることと

し実用新案の対象 よ り除外 している ( 同条 3 項) 。新規性等の実体審査 は行わ ないが,その新規性 は国内公知である ( 1 45 条) 0

方式審査によ り登録を妨げる畷庇 につ きその解消を うなが しそれが治癒 され た ときは, ク レーム及 び図面 ( 明細書全体 は公告 しない,1 52 条 2 項)によ り 公告 し,公告 日より 2 カ月以内に異議 申立がで きる ( 1 49 条) 。異議 申立の手続 では実体的要件の欠如が異議理 由となる。

特許出願の方式審査で審査官が職権で実用新案‑の変更を指令す ることが行 われている。

存続期間は出願 日よ り 1 0 年間である ( 1 52 条 2 項) 。

成立 した実用新案権 はマ ドリッ ドの地方裁判所 に無効の訴えを提起 して無効 にすることがで きる。裁判所 は記録を特許庁に回付 して3 0 日以内に意見を提出 す るよう求めることになっている。

( 6 ) その他の国 ( J) 大韓民国

韓国 は1 990 年 1 月1 3 日に実用新案を公布 した ( 法律第 4 209 号,1 990 年 9 月 1 日施行) 。わが国の旧実用新案法 ( 1 992 年の改正以前の法律)を母法 とす る。

1 国が他国の法律 を継受す ると言 って もこれ程直接継受 している例 も少ないか もしれない。

1 8 ) 文献 1 7 の 1 37 9 頁以下参照。

(16)

相違点を述べ ると, 出願審査の請求がで きる期間が出願 日よ り 4 年でな くて 3 年で ある ( 1 2 条 2 項)。通常実施権の許与 の審判 ( 33 条) はわが国の強制許 諾の裁定 に該 当 しよ う

わが国の拒絶査定 に対す る不服の審判 は, 旧法の抗告 審判 とい う名称を使用 している。わが国の判定 に対応す るのは権利範囲の確認 の審判 とな っている ( 35 条で準用す る特許法 1 35 乃至 1 37 条)0

存続期間 ( 公告 よ り 1 0 年 で,出願 よ り 1 5 年 を超 え られない ) ( 22 条 1 項), 新規性 ( 国内公知公用,国内外国刊行物記載 ( 4 条),準公知乃至 は拡張先願

(4 条 3 項) は同一である。

( T j ) 中華人民共和国

1 9 85 年 4 月 1 日か ら施行 され る特許制度 に実用新案 の制度 が規定 され,存 続期間は特許が 出願か ら 1 5 年,実用新案 は 8 年 とされ るが,更 に改正草案が 出

されて特許 20 年,実用新案 1 0 年 に改正 され とい うことである

19)

中国 も,韓国や台湾 と同様,技術革新が進んでい るため,工業所有権制度 を それに応 じて改正 しているが,実用新案制度 は実体審査主義を取 ってお らず, 方式審査 よ りは内容の密 な初期審査を行 い,技術内容 の開示 と しての明細書や 特許請求の範囲の書 き方 の指導 を行 うとい うことであ る

20)0

)

台湾

台湾 の実用新案制度 は, 台湾特許法 ( 1 9 44 年 5 月 29 日公布, 1 9 49 年 1 月 1 日施行)第 2 章 9 5 条乃至 11 0 条 に規定 されてい る。台湾の特許 ・実用新案制度 の母法 はわが国の法律 であることは明 らかである。

保護 の対象 は,「 物品の形状,構造又 は装置 について実用 に適す る新案」で あ り, いわゆ る空間形式要件 を課 してい る ( 95 条)。新規性 は国内公知であ る

( 96 条 1 号) 。

審査 は,実体審査 を行 い特許法第 1 章 3 節 27 乃至 31 条及び 33 条乃至 41 条の規 定を準用 している。異議 の申立 は公告の 日か ら 3 カ月以内に行 うことがで きる

( 1 01 条)。

1 9 ) 文献 8 の 6 3 5 頁参照。

2 0 ) 文献 了の 6 37 頁参照。

(17)

わが国の新実用新案法 とその比較法的検討 17 実用新案の存続期間は公告 日より1 0 年で出願 日より 1 2 年を超えることがで き ない ( 99 条 2 項) ( ちなみに特許 は公告 日より 15 年で出願 日よ り 1 8 年を超え る

ことができない) 。

登録後の手続 として訂正の請求,取消事由の告発の制度を設 ける ( 104 条及 び特許発明に関す る56 条,60 条等の準用 ( 11 0 条) ) 0

巨 ) フイ リッピン

1 947 年か ら施行 されているが,1968 年 に改正 されている

2

1 ) 0

保護の対象 は「 家具, 工業製品の形態, 構造,組合」で,実体審査が行われ, 存続期間は登録 日より最長1 5 年 とされ,基本期間が 5 年で, 2 回にわたる 5 年 の延長を認めている。

( , i ; ) オース トラ リア

1 979 年法 によ り施行 され, 1 990 年 に改正 ( 1991 年 4 月30 日施行) されてい る

22)

0

保護の対象 は特許発明と同一で, 方法 も登録可能である。 実体審査が行われ, 新規性は国内公知,国内文献公知を取 っている。公告す るが異議 申立 は認めな い。 クレームについては 1 つの独立 クレームと 2 つの従属 クレームを認める

存続期間は基本期間が出願 日又は付与 日か ら 1 年で,延長が認め られ,存続期 間の最長 6 年である ( 特許 は出願より 16 年である) 0

N マ レーシア

1 983 年 9 月 1 日の特許法について,1986 年 10 月 1 日の改正 によ り実用新案 が導入されている。実体審査を行 ってお り,保護の対象 として方法 も認めてい る。 存続期間は出願 日より 10 年間で, 基本が 5 年で更に 5 年の延長を認める( 35 秦) 。期間を延長す る場合 は実施が前提 となっている

23)

0

2 1 )文献 1 0 の 1 01 頁参照。

2 2 ) 文献 1 0 の 1 01 頁参照。

2 3 ) 文献 1 0 の 1 01 頁参照。

(18)

( ト ) ポル トガル

1 9 4 0 年か ら施行 されているが ,1 9 8 7 年 1 月 2 7 日に改正 された

24)

保護の対象 は , 「 道具等の物品で実生活上の必要を満足 させ るもの」である。

実体審査が行われ,公告 して 9 0 日以内に異議申立す ることを認めている。存続 期間は許可 日より 1 年であるが,更に 1 年ずっ延長でき,無制限に何回 も延長 で きることになっている

( チ) ポーラン ド

1 9 7 3 年 1 月 1 日か ら施行 され ( 1 9 7 2 年 1 0 月 1 9 日改正) ,1 9 8 4 年 4 月 2 6 日に改 正 されている ( 7 月 1 日施行)

25)

保護の対象は,「 物品の形状,構造,組合」に限 られている ( 7 7 条) 。実体審 査が行われ,存続期間は 1 0 年である。基本期間が 5 年で, 5 年の延長を認める

( 8 0 条 2 項) 。

出願後 1 8 カ月経過後公開され,異議申立ができるようにされている。その後 実体審査を している。

( リ ) ギ リシャ

1 9 8 8 年 1 月 1 日か ら施行 され,保護の対象 は 「 形状,形態」 に関 し, プロ セスは登録できない。無審査主義で,存続期間は出願 日より7年である。フラ ンスの制度に似て,特許出願 日より 4 月の間にサーチ料が支払われない特許出 願 は実用新案出願 に変更 される

26)

。 しか し新規性の判断基準 は,特許 ともど

も国内公知である。

( 5 E ) ブラジル

ブラジルの実用新案制度 は ,1 9 7 1 年 1 2 月 21 日に施行 され,保護の対象 は, 空間形式要件を課せ られ,「 物品の形状,配列」 となっている。実体審査が行 われ,存続期間は出願か ら 1 0 年である

2

7 ) 0

2 4 ) 文献 1 0 の 1 0 1 頁参照。

2 5 ) 文献 1 0 の 1 01 頁参照。

2 6 ) 文献 1 0 の 1 01 頁参照。

2 7 ) 文献 1 0 の 1 0 1 頁参照。

(19)

わが国の新実用新案法とその比較法的検討 1 9 レ L ) メキシコ

メキ シコは ,1 991 年 6 月 27 日に新法を公布 し,同28 日よ り施行 している

28)

。 メキ シコの実用新案 は, 空間形式要件を備えた もの, すなわち「 物体,用具, 装置又 は工具であ り,性質,構成,構造及 び形状 の変形 の結果 として 」 「これ らの部品あるいは実用面での利点に関 して異なった機能を提供す るもの 」 であ る ( 28 条) 。存続期 間は,特許が出願 日か ら 20 年であるのに対 して,実用新案 が出願 日か ら 1 0 年である。

新規性 について,特許では 「 国内あるいは海外 における口頭若 しくは書面 に よる説明,利用等の手段 によるか,流布若 しくは情報 とかの他の手段 によ り, 公衆が利用す ることがで きる技術知識」である技術水準に含 まれていない こと を新規性の要件 としている ( 1 2 条) 。 これに対 し実用新案の新規性 は,「メキ シ

コで公 に既に公知である技術的知識」である。

( ヲ) ウルグアイ

ウル グアイは実用新案, 工業的意 匠法 ( 法第 1 4549 号,1 976 年 8 月 14 日施行) によ り新規であ り( 内外国公知 ,3 条㈹) ,かつ産業上利用可能 な実用新案を, 工業所有権庁の交付す る実用新案特許証 によ り特許す る ( 1条) 。実用新案 と

は 「 器具,道具その他の既知の物でその用途を改善 し又はその 目的 とす る機能 上の効果を改善す るもの」である ( 2 条) 2 9 ) 0

実用新案特許 出願に対 しては,異議 申立をす ることがで き,実体審査が行わ れ る ( 7 条) 0

実用新案特許の存続期間はまず 5 年であ り,更に 5 年の更新がで きる。

( 7) モ ロッコ ( タ ンジール地域)

モ ロ ッコ王国 は191 6 年の法律で これを施行 し , 1 953 年 に改正 しているが, タ ンジール地域で は1938 年 に施行 され,1 949 年 に改正 してお り,統一法令 は まだ公布 されていない。保護の対象 は外形,物品であ り,無審査である

30)

。 28 ) 文献 7 参照。

29 ) 文献 1 0 の 1 01 貢参照。

3 0 ) 文献 1 0 の 1 01 貢参照。

(20)

存続期間は出願 日よ り 1 0 年である。

㈲ OAPI

OAPI とはアフ リカ工業所有権機構 の略である。加盟国1 2 カ国。1 98 2 年 2 月 8 日に法律が施行 された 3 1 ) 。

無審査の実用新案で,存続期間は出願 日より 8 年,基本期間が 5 年で,更に 3 年延長で きる。 3 年以内に実施 しないと侵害訴訟を提起で きな くなる。保護 の対象 は,用具,物の外形,構成 とされている。

( 3) その他

以上の外 に,実施 している国及び予定 している国 として文献 に示 されている 国は,スウェーデ ン, フィンラン ド,オラ ンダ,アイルラ ン ド,チ ェコスロバ キア,イ ン ドネシア,南アフ リカ連邦,チ リがある

32)

0

6. 諸制度 の検討

前節で諸外国の制度を概観 して判 るように,わが国の制度 は主 として ドイツ の制度を模範 に した。存続期間については少数派の フランス,オース トラ リア の 6 年 に従 った点, ドイツ,デ ンマーク, フランスの如 く空間形式要件を撤廃 していない点, ドイツ,デ ンマークのように分岐出願制度を採用 していない点 に相違がある。以下では諸外国の制度でわが国が採用 していない制度及び新法 においてその採用を止めた ものについてその内容を検討 し,その採用の可能性 あるいは採用を止めた ことの妥当性 について調べてみたい。

( 1) 分岐出願

これは ドイツで採用 され,デ ンマークで も認め られ るとされている制度であ るが,特許庁 出願か ら分岐 しこれ と併存する実用新案登録 出願の ことで,進歩 性の点で特許 されない場合に実用新案 として維持す る場合,審査が長引 く特許 出願の発明に侵害品が出たので訴追す るため分岐出願 によ り実用新案登録を得 3 1 )文献 10 の 1 01 頁参照。

32) 文献 5 の 572 頁,文献 19 の 769 貢,文献 29 の 1281 頁,文献 32 及 び 32 参照。

(21)

わが国の新実用新案法 とその比較法 的検討 21 る場合,特許 出願手続の段階で特許性の感触を得たので,まず実用新案 として 早期 に権利化 し実施 し又は許諾を進める場合 にこれを利用で きる

この制度の機能の一部 ( 上記 3 つの うちの第 1 の場合)は,出願変更 によっ て達成す ることがで きる。併願すなわちダブルパテ ン トを認めてよいか とい う 問題がある。わが国ではダブルパテ ン トについては厳格な態度を取 っているこ とは,新法がすべてを無効 にす ることに した ことで も窺え る (7 条) 。 しか し 権利主体が同一で権利の得喪 について相互 に関係がある場合 は,ダブルパテ ン トの弊害は生 じないか ら,その点で分岐出願を敬遠す る必然性はないよ うに思 われ る。

一方分岐出願を積極的に認める必要性 は,権利が特許請求の範囲によって厳 格 に枠付 け られているのか ( 我が国ではその傾 向が強い) ,あるいは詳細な説 明の内容全体が権利の内容を決定 しているか ( 従来のフラ ンスの制度)によっ て異 なろう

特許,実用新案が両方 とも密度の濃い実体審査を伴 う従来の制度では, この 分岐出願の効用 はほとんどないわけで,無審査主義の新 しい制度を実施 して行 く中で この制度の要請が高 くなって来た段階でその実施を考慮すればよいと考 える。

( 2 ) 自動変更

これはフラ ンスの実用証出願で採用 されてお り,ギ リシャが取入れた制度で ある。特許出願では出願 日より 1 8 カ月以内に新規性調査の請求を しなければな らな くなっているが,この調査 の請求がなされないときは, 取下 げと見 なさず, 実用証出願に変更 されたもの とする。存続期間の相違以外 は,新規性調査のあ

るな しの相違で区別 されるフランスな らではの制度であるのか。審査請求の期

限が 7 年 とい うような長期にわたるわが国の制度では,必要的に実用新案 に変

更 させ る必然性 はな く ,1 8 カ月 とい う比較的短かい期間内に新規性調査請求を

義務付 けた ことと関係を持っように思われ るか ら,実用新案を無審査 に した こ

とによ り制度選択の可能性 は出て来 た ものの,わが国で直ちに制度化す ること

は困難であ り,出願変更の限度でその機能の一部を達成す ることで我慢 しなけ

(22)

ればな らないであろう。

( 3 ) 登録繰延申請

これは ドイツ及びその制度を継承 したデ ンマーク,それにフランスで制度化 されている。出願か ら 1 8 カ月を限度 として登録を繰延べできると,実施化 まで 内容の公表を差控えることができ,同時に出願の変更を行 うことができる

こ の制度 は,従来の制度では公開が 1 8 カ月経過後行われることになっていて, 自 発補正の期間を 1 5 カ月までに限定 していたことが この制度 に相当すると見 るこ ともできるが,新実用新案制度では早期登録を目標 としているので,登録繰延 べ制度 は利用が可能である。従来わが国の特許実用新案制度において補正,戟 下げと公開の関係 において手続の行違いが生ずる可能性があった ことを考える

と,新実用新案制度では,通常は早期の登録 (6 カ月を予定)を行 うが 1 8 カ月 程度の繰延べを出願 された考案の実施状況に従 って申請で きるよ うにす ること

も木 目細かなサー ビスということができる

もっとも用意 した制度をほとんど すべての出願が採用することにで もなれば, この制度が生かされないことにな り,短 ライフサイクル技術 とは言 って もそれ程早期の権利化は望 まれてないこ とを証明す ることになるか も知れない。

( 4 ) 空間形式要件の撤廃

わが国の新実用新案制度 は,空間形式要件によって限定 された技術分野にお いて特に短ライフサイクルの技術の迅速な保護の要請があるとの認識,及び実 用新案制度を積極的に拡大 しようとする意図はないとの認識に基づいていると 思われるO 空間形式要件を定めない国は,フランス,ドイツ,デ ンマーク,オー ス トラ リアであるが,全ての技術分野,例えば化学物質,医薬などについて も 短ライフサイクルの技術改良があるという認識に立てば,空間形式要件を実用 新案について も外そ うとい うことになろう

ただ し存続期間が 6 年 とい うのは 医薬や化合物には適 しないか も知れない。

序でに言えば,方法の実用新案を認める国は,空間形式要件を課 していない

(フランス,オース トラ リア,マ レーシア)。 ドイツ及びデ ンマークは空間形

式要件を課 していないが,方法の実用新案は認めない。その理由はしか し必ず

(23)

わが国の新実用新案法 とその比較法 的検討 2 3 Lも明白妥当とは思われず,デ ンマークでは, ドイツが改正 して方法を認めた 場合の ことを考慮 して,法律 によ らない改正の権限を担 当大臣に授権 してい

る。

( 5) 存続期間

存続期間は,その起草点が出願 日,登録 日 (ウル グアイ,マ レーシア) ,公 告 日 ( 台湾,韓国)の相違があるが ,10 年の国が実用新案制度のある 21 カ国中 1 3 カ国に及 び,あと, 8 年の国が 2 カ国 ( 中国, OAP I ) , 7 年が 1 カ国 ( ギ リシャ) , 1 5 年が 2 カ国 (フイ リッピン,マ レーシア) ,無期限 1 カ国 ( ポル ト ガル)で,わが国が新 しく採用 した 6 年 は,諸国中の最短で, フランスとオー ス トラリアと同一である。

国際的統一の観点か らすれば出願 日より 1 0 年 とするのがよいということにな る

しか し単 に期間を統一 したか らと言 って国際的統一に結び付 くとは限 らな い。実用新案制度が近年見なおされて来たのは,特許制度が国際的な統一に向 う中で,各国の国情に応 じた制度を構築す るということが肝要であるか ら,そ の点の検討を踏まえた上での結論でなければな らないであろう

そこで 6 年を採用 したのは短 ライフサイクル技術の保護を目的とし,諸方面 の意見を求めて決定 されたとされ る。久 しく実体審査を経て有効性が確立 して いる実用新案か ら無審査であるため有効性の不確定な実用新案に変更になるわ けであるか ら,実用新案 としては専 ら短 ライフサイクルの技術を保護すればよ いと考えたのであろう。

( 6 ) 実体審査

実体審査を採用す る国 は,スペイ ン,台湾, 韓国, フイ リッピン,ブラジル, ポーラン ド,ポル トガル,マ レーシア, グアテマラ,オース トラリアである

スペインは久 しく無審査の特許制度を保持 していたが審査主義に切換えた国で あ り,同時にわが国の従来の実用新案制度を導入 した ものである。 しか し実際 には審査能力が形成 されず,立法通 りの制度は達成されていないようである。

メキシコも同様である。台湾,韓国は,わが国の従来の制度を継受 した国であ

る。

(24)

わが国の新実用新案制度 は,従来の実体審査を有す る実用新案制度が歴史的 役割を果た し,新 しい役割を課せ られて登場す るわけであるか ら, この点では 当面問題 はない。

( 7 ) 異議 申立制度

この制度 は,従来のわが国の実用新案制度 において採用 されていた制度で, スペイ ン,ポーラ ン ド,ポル トガルは実体審査を経て更 に審査の確実性を高め るための ものである

スペイ ンは しか し実体審査が実施 されていないので異議 申立 も実際には有効 には働かないのではないか。 ウルグアイは もっぱ ら異議 申 立制度 によって実体審査を行 う制度である。 ウルグアイの無審査主義を基調 に して異議 申立のあった場合 にのみ実体審査を行 うとい うの も省力化の面でいい よ うに思われるが,異議 申立があれば実体審査を行わねばな らず,異議 申立が 多 くなればその前 に実体審査を経てお くべ きであるということになる。

わが国の新制度 はサーチ レポー トとい う実体審査の資料を準備 し, これに対 し公的な意見を求める制度 を導入 し, この手続を遅 くとも侵害訴訟の申立 ( よ り詳 しく言えば警告の際に添付す る)の条件 と していることによ り実体審査に よる権利の有効性をで きるだけ保持するよ うに し裁判所 における手続の長期化 を防 ぐ。

( 8) 実施義務

グアテマラ,マ レー シア,イタ リー,OAPI は実用新案制度 に実施義務を 課 している。OAPI は, 3 年以 内に実施 しない と,独 占権 を喪失 し,侵害訴 訟がで きな くなるとす る。マ レーシアでは存続期間をまず 5 年 とし, 5 年 の延 長がで きることにな っているが,実施が延長許可の条件 とな っている。イタ リーでは,出願 日よ り 4 年以内に実施 しなか った ときは,強制実施制度 により 実施請求が認め られ る。 グアテマラは,マ レーシアと同一内容 と思われ るが, 存続期間を1 0 年 とし, 5 年以内の実施を義務付 けている。

実施義務について は,わが国では問題 となっていない。強制実施の規定があ

るが,不実施 による独 占権の排除までは必要がないと見てお り,約定許諾 によ

り実施権を付与す ることで差支えないであろう

(25)

わが国の新実用新案法 とその比較法的検討 2 5 ( 9) 実用新案制度の類型

以上においては,実用新案制度を採用 している諸国の制度の諸 々の規定がど のようになっているかとい うことを見て来たが,更に大 きくい くつかの類型を 見出 し,諸国の制度をどのような類型に分類することができるかを考察 して見 ることが有益であろうと思 う。 しか し実用新案制度は特許制度か ら見れば極め て少数であるにも拘 らず,多種多様であって類型化 と分類に困難があろう

類型化の方法 も多種多様 となろうと考えるが,まず審査主義によるか無審査 主義によるかの区別が最 も重要であるように思 う

実体審査をする国は,スペイ ン,ブラジル,ポル トガル,グアテマラ,ポー ラン ド,オ‑ス トラ リア,フイ リッピン,台湾,韓国 となっている。台湾,韓 国はわが国の従来の実用新案制度の継受 によるものであることは明 らかである が, ラテ ン系 ( スペイ ン,ブラジル,ポル トガル, グアテマラ)及 び米国系 ( オース トラリア,フイ リッピン)があ り,ポーラン ドは東欧である。 これ ら の諸国特にラテン系の諸国は特許制度 も無審査主義であったが,国是 として技 術開発に力を入れている国が,審査主義の実用新案制度を採用 している。

無審査主義の諸国を列記すると, ドイツ,フランス,デ ンマーク, 日本,モ ロッコ,イタ リー,ウルグアイ , OAPI ,マ レ‑シア,ギ リシャ,中国である。

ドイツ系 とフランス系に大別 され るのではないか と思 うが,その分類だけで も 困難をおぼえる。

実体審査を行 う国は,長い存続期間を認めてよいと考えるが どうなっている であろうか。

〔 審査 国〕無 制 限 1 カ国 ( ポル トガル), 1 5 年 2カ国 (フイ リッ ピン, マ レーシア) ,1 0 年 6 カ国 ( スペイ ン,台湾,韓国,ブラジル,ポーラ ン ド, グアテマラ) , 6 年 1 カ国 ( オース トラ リア) 。結果 として平均1 0.1 年 と見 るこ とができる ( 無制限のポル トガルは計算か ら除いた)

0

〔 無審査 国〕 1 0 年 4カ国 ( 独,デ ンマー ク,伊,モ ロ ッコ) , 8 年‑ 2 カ国

( 中国, OAP I ), 7 年 1 カ国 ( ギ リシャ), 6 年 2 カ国 ( 仏, 日本) 。平均す

ると 8 . 3 年 となる。

(26)

以上の結果 は予想 した ところを示 していると考えてよかろう

そ うなると審 査国であ りなが ら 6 年 しか認めない制度 ( オース トラ リア)は果 して利用 され るか どうか疑問 とい うことになる。オース トラ リアを除けば,審査国では1 0 年 以上であ り,無審査国は1 0 年乃至 6 年であるとい うことになる。

実体審査 と空間形式要件 との関連があるか どうかを調べ ると,空間形式を問 わない国は少な く 4 カ国であ り,独,仏,オース トラ リア,デ ンマークである が, これ らの国の内実体審査をす るのはオース トラ リアのみである。

審査国,無審査国を問わず,新規性 について世界公知か国内公知かの分類が ある。特許制度まで国内公知の制限的な国 もあるが,特許制度 は世界公知を取 りなが ら,実用新案制度では国内公知を採用す る国がある。 これ らの分類 と他 の規定 との関係を調査す ることも有益であると考える。

以上の分類 は,比較法による法系の考察 とは異 なる。法系を調べ るには対象 国の法規の全体を完全に把握す ることが最少限必要である。本論では割愛せざ るを得ない。最後 に一言述べれば,実用新案制度 を有す るとい うことが, この 制度 に関す る限 り ドイツ法系であると言 って もよいように思 う。デ ンマーク, 日本 は完全 な ドイツ法系であ り, 日本法を継受 した韓国,台湾 も同様である。

中国の知的財産権法 は, 日本法を直接継受す ることをいさざよ しとせず,比較 法による深い洞察の結果か ら立法 しているので,中国の独 自性が出ているとい うことが言えるが,実用新案制度 に関す る限 り ドイツ法を直接継受 した と言 っ た方がよかろう。中南米に実用新案制度が多 く誕生 しているの も, この地域 に 対す る ドイツ法の伝播を物語 るものであろ うか。

7. 結

わが国の実用新案制度 は,その歴史的使命を果 し,新たな別の使命を課せ ら れて再出発 しようとしている。量的に特許 出願よ りも多か ったが, この ところ 急激 に減少 しているとは言え

33)

,世界的に見て年間1 0 万件 とい う数字 は

34)

, 33 )文献 4 の 1 1 頁。

34 )平成 3 年で特許 出願36.9 万件,実用新案登録 出願11 .5 万件,文献 15 の 5 頁。

(27)

わが国の新実用新案法 とその比較法 的検討 27 末だ直ちに制度その ものを廃止すべ き根拠にはな らない。特許出願 と共に世界 的に見て驚異的な出願件数が示す ものは, この技術的所有権 ( 特許権及び実用 新案権を言 う : t e c hni s c heSc hut z r e c ht ) 制度の圧倒的な成功である。

この成功によって生 じた重要 な問題 は審査遅延による滞貨をいかに して削減 す るかである

35)

。権利化が遅れて権利行使が 出来ない とその財産権制度 は価 値が下 るか らである。早期公開 と審査請求制度がその課題 を部分的 に果た し た。滞貨の問題 は審査請求の実数 に対す る滞貨数の割合の推移を基礎 に して判 断 さるべ きであろ う3 6 ) 。実用新案制度の改正の 目的の 1つ はかか る滞貨の削 減‑の寄与であ り,その寄与がで きなければ この改正 は失敗であるとい う観点 が成立す る。具体的には改正前の特許,実用新案の出願年度別の審査請求数 に 比較 して改正後の特許出願の審査請求数を実質的に減少せ しめることがで きる かどうかである

短 ライフサイクルの技術,周辺防衛的な技術を含めて実用か ら特許 に流れた現象が,審査遅延のため存続期間 1 0 年の制度では役割を果せな いとい う理 由によるものであれば, これ らは新実用新案制度 に呼び戻す可能性 がある。絶対的に公告か ら 15 年又は出願か ら 20 年 とい う存続期間が必要 にな っ て来た とい うことであれば, これ らの ものは実用新案制度をい くら改善 して も 呼び戻せない部分である

従来の審査主義の実用新案登録出願の中で,やは り 審査 して もらわないと困 るとい うものについては,新実用新案を回避 して特許 出鹿酌こ流れ, これを一段 と増加 させ る可能性が ある。 6 年 とい うよ うに思 い 切 って期間を短か くしたか らには, これは覚悟の上の ことであろうと思 う

明 らかに短 ライフサイ クルの技術が実用新案制度 に残ればよい とい うことにな る

しか し制度利用者の挙動 には測 り知れないところがある。期間は少 々短か いが,出願後短期間で登録 になるとい うメ リッ トを重視す ると,かえ って特許 出願の相当の割合が新実用新案 に流れ ることも考え られ る。 こうなれば滞貨の 35 )米国では制度改正を求めたが,議会の拒否にあった特許庁は,機構改革により多少

粗雑な審査 もやむを得ないとして,滞貨一掃を断行 したのである。

36 ) 文献 4 の75 頁 に特許審査請求の推移が示 されている 。46 年乃至57 年の数値 は確定数

であり,出願数 は漸増 しているか ら ( 同書 1 1 頁参照) ,審査請求数 は安定 し漸増 し

ているとして も微増 と考え られる。

(28)

削減に期待が持てることになり,改革は成功 したと見 ることができるであろう

( 本論 は 「 小樽商科大学平成 5 年度教育研究学内特別経費」による研究成果の

一部である)

(29)

わが 国 の新実 用新案法 とその比 較法 的検 討 2 9

参 照 文 献

1.紋谷暢男 「 我が国実用新案制度の下 における保護客体の推移 ( 1 )(2 ・完 ) 」成渓法 学創刊号 ( 1 9 6 9 年) 3 5 9 ‑3 8 9 頁, 6 号 ( 1 9 7 4 年) 1 7 7 ‑21 3 頁。

2. 橋本良郎 『フランス特許制度の解説』発明協会 1 9 8 3 年 4 月 1 4 1 ‑1 5 0 頁 3. 安藤元三 「 実用新案の存廃の主な視点」特許管理 3 5 巻 1 号 1 9 8 5 年 3 7 ‑4 5 貢

3a. 紋谷暢男 「ドイツにおける実用新案法制定 の背景」特許研究 2 号 1 9 8 6 年 2 8 ‑3 4 頁

4. 工業所有権法研究 グループ編 『四訂版知 っておきたい特許法 』1 9 9 0 年 5. 吉藤幸朔 『 特許法概説 〔 第 9 版〕 』有斐閣 1 9 91 年 7 月 5 7 1 ‑5 9 4 頁

6. 拙論 「ドイ ツ実用新案法 における保護対象の拡大 ‑ 1 9 9 0 年の知的財産権海賊製 品防止法の副産物 ‑‑1 特技懇 1 5 8 号 1 9 9 1 年 1 8 ‑2 4 貢

7.BernardG6mezVega 安形雄三,田代忠雄訳 「メキ シコ工業所有権法の一部改 正 」AI PPI3 6 巻 1 1 号 1 9 91 年 61 2 ‑6 2 4 貢

8. 都塵芽 「中国専利法 ( 特許法)の改正 について 」AI PPI3 6 巻 1 1 号 1 9 9 1 年 6 3 5 ‑6 3 8 頁

9. 松井祥二 「 新 たなる光を受 ける実用新案制度一一」特許制度の‑‑モナイゼ‑シ ョン の中での小発明保護‑ 」AI PPI3 7 巻 2 号 1 9 9 2 年 5 7 ‑6 2 頁

1 0 . 佐藤辰彦 ・大塚忠 「これか らの実用新案制度 につ いて」パテ ン ト 4 5 巻 5 号 1 9 9 2 年 8 7 ‑1 0 1 頁

l l . 日本特許協会 「 特許 ・実用新案制度 の見直 しにつ いて」特許管理 4 2 巻 7 号 1 9 9 2 年 1 0 0 5 ‑1 0 0 9 頁

1 2 . 玉井克哉 「 特許法 における無審査主義の復権 ?‑ ドイツ実用新案法の最近の動 き に寄せて」 ジュ リス ト 1 0 0 5 号 ( 1 9 9 2 , 7.1 5 )5 5 ‑5 9 頁

1 3 . 特許庁工業所有権制度改正審議室 「 特許 ・実用新案制度の見直 しにつ いて一一三工業 所有権審議会基本問題検討小委員会報告の概要」 ジュ リス ト 1 0 0 5 号 ( 1 9 9 2 . 7.1 5 ) 6 0 ‑6 3 頁

1 4 . 玉井克哉 「 無審査特許 と しての再生か緩慢 な死か‑ わが実用新案法の改正論議 に 寄せて」 ジュ リス ト 1 0 0 7 号 ( 1 9 9 2 . 9. 1)6 3 ‑6 8 貢

1 5 . 特許庁工業所有権制度改正審議室 「 特許 ・実用新案制度 の見直 し‑ 三工業所有権審 議会基本 問題検討小委員会報告 につ いて」民事法情報 7 2 号 ( 1 9 9 2 . 9.1 0 ) 4‑ 5 頁

1 6 . 特許庁工業所有権改正審議室 「 工業所有権審議会基本問題検討小委員会報告 につ い て」( D②発明 8 9 巻 1 0 号, 1 1 号 1 9 9 2 年 2 0 ‑27 頁及び 1 2 ‑1 8 頁

1 7 . 実用新案制度調査団 「 実用新案制度調査用概要報告」特許管理 4 2 巻 1 0 号 1 9 9 2 年 1 3 7

3 ‑1 3 8 2 頁

参照

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