, 技術・家庭科の相互乗り入れと共学の実態
永島 利明*・佐藤 聡**
(1987年9月12日受理)
ASurvey of the State of Mutual Extension System and Coeducation in Technology and Home Economics Education in 1985
Toshiaki. NAGAsHIMA*and Satoshi SAToH**
(Received September 12,1987)
Abstract
The revised Course of Study in 1977 stated that boys select more than
one field of home economics and girls one field of technology. This system we
call mutual extension . This paper aims to clarify the differences between.
狽??@actual conditions and the teachers hopes concerning the mutual exter旧ion
system・The results were as follows:(1)About ten percent of all junior highschools didn t practice mutual extension.(2)Schools with a half class system
were Iess than those without that. (3)Technology teachers often taught food and housing, while home economics teachers taught woodwork and electricity.(4)Technology teachers tended to hope to maintain the status quo of mutuaI extension much more than home economics teachers. Both teachers of technology
and home economics often stated that it was difficult for the students to adjust
to the mutual extension system. We concluded that mutual extension must be ノ
made into mixed classes. Students of technology should learn solne fields of home economics.・It should be noted that home economics students have been leaming woodwork, machinery, and electricity since 1958。
はじめに
わが国においても技術・家庭科の共学が進んでいるが,1977年の学習指導要領では相互乗り入 れを定めている。これは女子には技術系列から,男子には家庭系列から1領域以上学ぶという内容
*茨城大学技術科教育研究室(Dept・of Technical Education, Faculty of Ed血cation,Ibaraki University, Mito, Ibaraki,310 Japan)
*,*日立エンジニアリング株式会社(Hitachi Engineering Company, Hitachi,316 Japan)
@
@ r
である。しかし,この実施にはさまざまの障害がある。全面共学が理想であるが,遅々として進ま い。韓国では1989年より技術科も家庭科も共学となる改革を実施するそうであるが,日本もそう した改革を行うべきである。この相互乗り入れの研究は従来の先行研究は各府県に限定される傾向 があるが 〜4)全国的視野で行う必要があると考え,全国の自治体3,330市町村より3分の1を無 作為抽出して,1985年5月に行った。郵送法で行い,技術系列の教師は1,110校より417校(37.
6%),家庭系列は401校(36.1%)回収した。用紙の作成は永島が行い,技術系列はおもに佐藤 が集計分析した。家庭系列は永島が集計分析した。文責は永島が負うものである。なお,この調査
はすでに発表した半数学級の調査と同時に行った。相互乗り入れの実態
相互乗り入れの実施率は技術系列では89.4%,家庭系列では90.3%であった。ほぼ1割の学校が 実施していない。第1表はおもなその理由を示したもので,第7表の理由とクロスしたものである。
学級規模別にみると,両者ともに9学級以下の学校では技術・家庭科の専門でない教師が担当せざ るを得ない状況があるために実施していない。これらの小規模校は技術や家庭の免許状をもつ教師 がいないので,この教科を担当する意欲がないのに,校内の事情により持たざるをえないからであ る。16学級以上では性別による役割分担を背定している教師が多いために,実施できないケースが 多い。10〜15学級はその中間であるが,役割分担の肯定タイプが多い。非実施校では家庭系列の担
当者の方が技術系列の担当者より役割分担意識がたかい。第1表 相互乗り入れ非実施校教師の意識
系列 級規模理由 3〜5 6〜9 10〜15 16〜21 22〜27 28〜
合計 %
専門ではないから
0 2(2} 0 0 0 0 2 4.5
別学がよいから
4q) 7(3)①△
2① 8① 2△0
2352.3
技術 共学が望ましい
2(1)
5(2)3 2
3△3
1840.9
不 明
0 0 0 0 0 1 △ 1
2.3別学がよいから 1(1} 5(3}
5(1} 7 3 3①△
2461.5
家庭 共学が望ましい
4(2) 4(4) 2(1) 1 1
1230.8
不 明
0 2 ① 0 1〔11 0 3
7.7カッコは技術または家庭科の免許を持たないものが担当しているものがいる学校である。○のなかの数字は 半数学級を全校で行っているもの,△のなかの数字は一部がそれを行っているものをさす。技術系列と家庭 系別の有意差P<0.05
技術・家庭科のいろいろな会合でいわれることは,半数学級の実施が共学や相互乗り入れを阻害
しているということである。そこで半数学級を一部または全部で行っている実施校と非実施校に分
類して,炉分布で有意差を検定してみた。その結果を第2表に示す。明らかに有意差があることを
示した。半数学級の実施校ではこれをしないと,定員が超過してしまうという学校も一部にはある。
しかし,実施校では平均以上の授業時間を持ちながらも,なお努力しているところが多い。相互乗
り入れは,これと矛盾するものではなく,両立させるべきものである。半数学級をしないと,時間数が少くなるという意見があるが,ある程度,他教科をもつことも避 けられない。生徒数が減少した場合や時間数の削減した場合には授業時間数が減少することは避け がたいことである。この場合になるべく半数学級を実施し,最小限の他教科をもつ必要もあるであ ろう。子どもの減少した国,例えばスウェーデンではかっての1教科制から2教科制へと移行しつ つあることも参考になるであろう。実習をともなう技術・家庭科で,日本のように45名で授業を行
うのは例外であり,これでは学習効果が減少する。
第2表 半数学級の実施と相互乗り入れ
相互乗り入れ している
していない
合 計 非実施校%半数学級を一部または全部している 65 10 75
13.3
実施していない
670
73743 10.9
P〈0。05
相互乗り入れの領域の履習数は1領域303校(89,9%),2領域28校(8,3%),3領域5校
(1.5%),4領域0,5領域1校(0.3%)であった。家庭領域は1領域300校(94.9%),2領
域12校(3.9%),3領域3校(0.9%),4領域1校(0.3%)であった。両者の履習領域数に有意差があるかどうか劣2分布によって検定したところP〈0.05であきらかに有意差がみられた。技術系 列には2領域以上の履習数が多いので,このような結果になるのである。また,このことは女子の 技術教育の減少を示している。女子が1領域の履習者が大部分であることは,前学習指導要領が各 学年105時間でしかも住居(木製品の設計,製作が含まれていた)が30〜35%,家庭機械20〜25%
家庭電気25〜30%の配当例と比較して減少しているといえる。5)
履習の学年による相違を示したものが,第3
第3表 学年の履習割合(カッコ%,以下同じ) 表である。家庭系列は1年の食物1が大部分で系列 1年 2 年 3 年 あり,住居がそれにつづく。2年でも食物1が
技術
222(64.3) 60(17.4) 63(18.3) 多い。3年も同じ傾向があるが,保育が加わる。
家庭
249(73.9) 52(15.4) 36(10.7)
技術系列では1年では木工が多く,金工1,電気1がそれに続く。2年,3年はともに電気1
が多い点に特徴がある。家庭系列は技術系列と
第4表 指導内容等の類型比較すると,1年に集中している。これに対し
指導内容別・共学
担当教師 校数 割合て技術系列は家庭系列よりも2〜3年にある。
両性異なる 別学 家庭科 163
23.9
κ2検定の5%の危険率で有意差がある。両性異なる 別学 技術科 218
32.0 指導内容を両性とも同じ,異なるとし,指導
両性同じ 共学 技術科 12718.6 形態を共学,別学とし,担当教師を技術科・家
両性同じ 共学 家庭科110 16.1 庭科として分類してみると,第4表のようにな
両性同じ 別学 家庭科 375.4 る。別学は技術系列が多い。共学は技術系列が
両性同じ 別学 技術科 274.0
やや多い。その中間型は技術系列が家庭系列よ
り少ない。別学志向は家庭科教師よりも技術科教師が強い。
内容の同一性では,技術科教師の方がその志向が強い。第4表は第5表より作成した。
第5表 相互乗り入れの実態
領 学 指導 学 領 学 指導 学
指導内容 担当教師
校
指導内容担当教師 校
域 年 形態 数 域 年 形態 数
男女異なる
別学 家庭科教師 93男女異なる 別学 技術科教師 91
男女同じ 共学
家庭科教師 951 男女同じ 共学
技術科教師 841 男女同じ 別学
家庭科教師 23男女同じ 別学 技術科教師 9
男女異なる 別学
技術科教師 10 木工12 男女異なる 別学
技術科教師8 男女同じ 共学
技術科教師2 男女異なる 別学
家庭科教師3
家 男女異なる 別学
家庭科教師 223 男女異なる 別学 技術科教師 3
食物1
2 男女同じ 別学
家庭科教師 10技 2 男女異なる 別学 技術科教師 2
木工11
男女異なる 別学
技術科教師1 3 男女異なる 別学 技術科教師 1
男女異なる 別学
家庭科教師15 男女同じ 共学
技術科教師 18金工1 コ
3 男女異なる 別学
技術科教師1 男女異なる 別学 技術科教師 7
庭 男女同じ
別学 家庭科教師1
金工H2 男女同じ 共学 技術科教師 1
男女同じ 共学
家庭科教師4 男女同じ 共学
技術科教師2
食物豆 2
男女異なる 別学
家庭科教師3 術
機械12
男女異なる 別学
技術科教師2
1 男女同じ 共学
家庭科教師2 3 男女異なる 別学
技術科教師2
被服1
男女異なる 別学
技術科教師2 男女異なる 別学
技術科教師9
2
男女異なる 別学
家庭科教師2 男女同じ 別学
技術科教師2
系 1
男女異なる 別学
技術科教師ユ7 男女同じ 共学 技術科教師 1
男女同じ 別学
技術科教師4 系 男女異なる 別学
家庭科教師1
1
男女同じ 共学
家庭科教師2 男女異なる 別学
技術科教師 22男女同じ 共学
技術科教師1 男女同じ 別学
技術科教師7
住 居
男女異なる
別学 技術科教師5 2 男女同じ 共学
技術科教師7
2
電気1列 男女同じ 別学
技術科教師 3−一一一一男女異なる 別学
家庭科教師3
男女異なる
別学 技術科教師4 男女同じ 別学
家庭科教師3
3 男女同じ
共学 技術科教師1 列 男女異なる 別学
技術科教師 27男女異なる
別学 家庭科教師1 男女異なる 別学
家庭科教師13
男女異なる 別学
家庭科教師7 3 男女同じ 共学
技術科教師8
保育
3
男女同じ 共学
家庭科教師6 男女同じ
別学 技術科教師2
男女同じ 共学
家庭科教師1
学校数男女異なる
別学 技術科教師4
合計682 栽 培
3
男女同じ 共学
技術科教師2
1
回答者がどの領域を担当しているか,質問したところ,技術科の教師は木工61.0%,金工7.3%,
電気17.9%,栽培1.6%,食物4.9%,住居5.7%を指導していた。家庭科の教師は食物77.7%,
被服0.8%,住居1.7%,保育2.5%,木工4.1%,金工1.7%,機械0.8%,電気9.9%を指導 していた。前述のように相互乗り入れは1領域以上となっている。1領域の指導時間は20〜35時間
となっているが,実際の1クラス,年間の指導時間がどうなっているかを示したものが第6表である。第6表 相互乗り入れの指導時間数 (%)
間系列
3〜5
6〜1011〜15 16〜20 21〜25 35 合 計
平均時分技術
12(5.3) 20(8.9) 2(0.9) 142(62.8) 24(10.6) 26(11.5) 226(】00.0)
18・33 家庭4(1.9) 32(14.8) 10(4.6) 140(64.8) 2(0.9) 28(13,0) 216(100.0)
17・26指導時間の平均は技術系列が18時間33分,家庭系列17時26分である。両系列ともに学習指導要領 の1領域の最低指導時間である20時間の2分の1である10時間以下が1割以上もあり,問題がある。
これでは十分な指導ができず,教育の質を問われるであろう。相互乗り入れが学習指導要領にある ので,やむを得ずするというのではなく,普通教育として必要であるから行うのである。完全共学
でないと,両性の平等の技術・家庭科の実現は困難であろう。教師の意識
家庭科教師のなかには「技術科の教師が熱心ではないから,別学にしています」という声をよく 聞く。技術科の教師にも家庭科の教師に対して同じ発言が行われることがある。どちらも共学の運 動に熱心なタイプであることは共通している。実態はどうであろうか。
相互乗り入れに関する教師の意識を調べたものが,第7表である。両者の間には5%の危険水準 で有意差がある。技術科の教師の方が別学意識が強い。第7表に示す通り,技術系列の共学志向の 教師(設問5と7の合計)は39.6%であり,家庭系列のそれは41.9%である。第5表において,技 術系列と家庭系列を分離して計算しなおしてみると,実際に共学をしている技術科の教師は36.8%
であり,家庭科の教師のそれは32.6%である。ここに実際と意識に若干のずれがみられる。
(第7表の設問1〜3を合計した)別学志向の技術科の教師は42.7%であり,家庭科教師は36.4%
である。これは第4表において,指導内容は同じであるが,別学にするという履習方法が技術科教 師は家庭科教師より多くなっていることにあらわれているであろう。なお,その他の意見はつぎの
通りである。技術系列
1.指導要領の領域と学年のワクがあるので,共学にする学年,領域が限定される。
2.半数学級が定着してからすすめるべきである。
3.共学や相互乗り入れは教科の発展を阻害する。もっと「ヤグラ」をしっかりすべきである。
4.男女の能力差,技術技能差はほとんどない。
5.子どものときからの生活体験に大きな開きがあるので,共学はよくない。
6.第7表の1と3であるが共学は可能。領域選択,組合わせの問題から共学の拡大は困難であ
る。
第7表 相互乗り入れ領域の共学に関する教師の意識
設問「相互乗り入れの領域を男女共学(同一教材を同時に学習)すること
技術系列 家庭系列
について,下記の中から先生のお考えに近いものを一つ選んでください」 人数割合
人数割合
1.技術系列・技術系列どちらについても,男女の基礎学力(知識・技能)
48 11.5 43 10.7
の差があるので,現時点の共学は無理である。2.知識面での男女の能力差はあまり問題はないが,技能・技術の面の差
96
23.0
4411.0
が大きいので,男女別学がよい。
3.共学にしてもよい領域があるが,むずかしい領域もあるので,共学に
34
&2
5914.7
しがたい。
4.男女の性差を考えると,同じ領域を学習させるにしても,教材や内容
59
14.1
6716.8 を変える方がよい。
5.教員組織や施設・設備等の事情が許せば,できるだけ男女共学が望ま
153
36.7
16140.2 しい。
6.生徒や父母の意見を取り入れるとよいと思う。
2 05 3 0.7
7.万難を排して男女共学にするべきであると思う。 12 2.9
7
L78.時間が短かく,人間関係がうすく,生徒指導が困難である。
0 0 2
0.59,そ の他
7
1.77
1.710.無 答
6
1.48
2.0P<0.05
7.お互いの協力という意味での協力的精神が必要である。
家庭系列
1.特に問題なく実施している。3校
2.時間数がもっとほしい。3.食物は共学でもよい。
4.共学はしたいが,評価がむつかしい。
相互乗り入れは第5表でみるように,技術科の教師が家庭系列を担当している場合もあるし,逆 の場合もある。相互乗り入れするとき,担当教師はどうするのがもっともよいと考えているのであ ろうか。第8表はこれに対する教師の回答を示したものである。
技術科の教師の74。0%,家庭科の教師の66.6%が「技術科の教師が技術系列を家庭科の教師が家
庭系列を教える」というかたちがよいと答えている。しかし,この方法はある程度の学級規模がな
いと実施できない。文部省の調査によると,技術系列の免許外の教師は27.5%,家庭系列は274%
という。6)これが事実とすれば約3割の学校は正規の教育をうけた教師がいないということにな る。技術・家庭科のすべての領域を教えることは,誰れにとっても困難であろう。しかし,技術科
の教師が家庭系列の1〜2領域,家庭科の教師が技術系列の1〜2領域を担当することはさほど困難ではないであろう。事実,技術科の教師が食物,住居を,家庭科の教師が木工,電気をもつ例は
よくみられる。「ひとりの教師が技術系列の家庭系列も教える」のが理想であるが現在の教員養
成では,その専攻しか教えないことになっている。家庭科の教師の方がこの支持率は4.2%で,技
術科の教師の19%よりたかい。この問題(第8表)にっいては,5%の危険水準で有意差がある。
技術科の教師の方がより現状維持的である。
その他としては,技術系列では,①それぞれの教師の専門領域から決めたらよい。②1学級を技 術と家庭のふたりの教師でもつ,という意見がみられた。家庭系列では,①年配の教師は研修会で 新しいことを補う。②大学の教育と現場で教える内容の差は大きいので,研修で補う。③家庭科の 教師でもすべてを知っているのではないので,その点を補う必要があるというように,研修を重視
第8表 相互乗り入れ担当教師のあり方
設問 相互乗り入れをするとき,担当教師はどうするのが最もよいと思
技術系列
家庭系列いますか。
人数 割合 人数割合
1.技術科の教師が技術系列を家庭科の教師が家庭系列を教える。
309 74.0
26766.6
2 男子生徒は男子の教師が女子生徒は女子の教員が教える。 12 2.9 123.0
3.ひとりの教師が技術系列も家庭系列も教える。
8
1.9 174.2
4.3が理想であるが,職場の実状に合わせると1である。 78
18.7
9724.2
5 わからない。
8 1.9 5
1.36.そ の他
2 0.6 3 0.7
「
する意見がみられた。
大学を卒業した現職の教員は現職教育で新しいことに対応することが可能であるが,将来技術・
家庭科の教師になることを希望する人たちの養成はどうすべきであろうか。教員養成のあり方は未 来のこの教科のあり方を決定する大きな要因である。第9表は教員養成のあり方を質問した結果を
示したものである。「現状のままでよい」というものが第1 第9表 教員養成のあり方 位で技術系列では46.3%,家庭系列で35.7
%である。第2位は「技術科の教員養成に
技術系列 家庭系列あ り 方 も家庭科の領域を加える」というものであ
人数 割合 人数 割合る。
現状のままでよい
193 46.3
14335.7
第1〜第2は両系列とも共通している。
技術科にも家庭科の領域を加える 98
23.5 117 29.2
しかし,第3位は技術系列では別教科論に
両方とも他教科の領域は不要 67 16.141
102もとつく家庭不要観が16.1%であるのに対 わからない 38 9.1 77 】9.2
して,家庭系列はわからないという無関心
無 答
12
2.918 4.5
が19.2%となっている。
そ の 他
9
2.15
1.2結果は以上の通りであるが,相互乗り入
れや共学をもっと進めていくとすれば,教
員養成が現状のままでよいとは考えられな
い。この点では「技術科の教員養成にも家庭科の領域を加える」が2割以上いることは心強いもの
を感じている。その他はつぎの通りである。技術系列
1.免許状を技術か家庭のいずれかに区分すべきである。
2.免許状は現状のままでよいが,互いに他の系列を理解するため,研修は必要がある。
3.教科が技術・家庭科なら,免許状もそうすべきである。
4.免許状よりも,相互乗り入れを実現しやすい条件(学級の生徒数を減らす,設備の充実)を
整えることが大切である。5.新な免許を作ることが望ましい。
6.現状で進み,将来は男子も家庭科領域,女子も技術科領域の指導ができるようにする。
7.家庭科の領域を勉強したい。
8.免許法を改正し,技術家庭科という免許を出したらよい。大学の課程も変更すべきである。
9.大学の授業で学ぶ内容の量と質,それに時数の関係があるので結論が出せない(大学の問題
である)。
家庭系列
1.教科内容の再検討が先決である。
/ 2.技術・家庭という免許状にすべきである。
3.一人であらゆる領域をするのは困難である。
4.一人の人間には得意,不得意があるので,専攻制にして濃い指導がしたい。
5.共学の可能な領域から免許取得の条件に加える。
評価と工具等
技術・家庭科で相互乗り入れをするとき,問題があるのは,評価または評定である。一人の教師 が技術系列も家庭系列も評価をするときは問題がない。しかし,技術系列と家庭系列のふたりの教 師が生徒ひとりにひとつの評価を決定しなければならないことが多いので,さまざまの問題が生ず
る。評価について難易観を示したのが第10表である。
評価がむずかしいと答えたものが,両系列ともに4割を 第10表 評価 観
こえる。技術系列では「そう思わない」が家庭系列よりも
技術系列 家庭系列 多い。 「わからない」は技術系列よりも家庭系列に多い。評価の難易
人数 割合 緻 割合
評価がむずかしいと回答したもので,その理由を示した
評価がむずかしい 19446.5
19849.4 ものが第11表である。もっとも多いのは,「評価の一貫性
そう思わない 196
47.0 149 37.1 がもてない」というものである。例えば,技術系列は得意
わからない 276.5
5413.5 であるが,家庭系列は苦手であるという子どもがいる。こ
のケースでもひとつの評定を出さなくてはならない。この
ために教師間の調整がむずかしいと答えているものが,技術科の教師では26.8%,家庭系列では
24.2%もいる。それを避けようとすれば,別学になってしまう。また,相互乗り入れを1領域しか
行っていない学校では「20〜35時間なので,評価がむずかしい」。これは時間数を増やさなければ
解決できないであろう。また,「学校行事等で進度差ができる」ことも多い。進度のはやいクラス
もおそいクラスも同一の観点で評価すれば,不公平は避けられない。これ以外にも8つの項目があ
る。その他としては,家庭系列には,①乗り入れ時期と学期評価時間の区切れが悪くあわない。
第11表 評価がむずかしいという理由
技術系列 家庭系列
内
人数
割合人数
割合1.20〜25時間の短時間なので,評価がむつかしい 60
31.0
6130B
2.指導要領など公簿記入がむつかしい 105.2
10 5.1a 学校行事等で進度ができる 28
14.4
3417.2
4.評価の一貫性がもてない 92
47.4
10653.5
5.技術科と家庭科の教師間の調整がむつかしい 52
26.8 48 24.2
α 生徒の性別による力の差がある 25
13の
178.6
7.男女間の得意な分野間の評価法が明確でない 10
5.2
211α6
8.系列間男女の意識差がある
7
3.6 18 9.19.男女の経験の差がある 21
10.8
178.6
1α基準になるものが確立していない 15 7.7 23
11.6
11.文章で評価すべきである
4
2.14 2.0
12.技術科と家庭科が別々に評価すべきである 12
6.2
231L6
13.そ の 他
0 0 4 2.0
複数回答があるので 100%にならない。
②学期途中が領域交代をすると,評価がむつかしい。③技能教科に相対評価をとりいれることに問
題がある。④分野別に評価する,があった。「評価がむつかしくない」と回答したもののその理由を示したものが第12表である。両系列とも に「評価の観点を決めて総合的に判断すればできる」が5割以上をしめている。「テストや実習 で評価できる」という意見は2割以上に達している。
第12表 評価がむつかしいと思わない教師の評価法と評価観
技術系列 家庭系列
内 容
人数 割合 人数 割合 1.評価の観点を決めて,総合的に判断すればできる
108 55.1
8154.4
2.両系列がきめ細かい連絡をする 2010.2
2114.1
3.到達度評価をする 14 7.1 14
9.4
4.テストや実習で評価できる 39 2α0 33
22.1
5.技術系列と家庭系列が別々に評価する 29
14.8
2919.6
6.評価項目の割合(%)を決め,偏差値に換算する9 4.6 3 2.0
7.そ の他
4 2.0 0 0
複数回答があるので,100%にならない。
相互乗り入れする場合,特に技術科の場合,工具や機械が不足しているという声がある。 「そう 思う」は170人(40.8%), 「思わない」218人(52.3%),「わからない」29人(6.9%)であっ
た。わからないというのは,相互乗り入れをしていない学校に多い。第13表はその解決策を示した
ものである。
4割の学校で女子のための工具や機械の不足で困っているが,その解決策として,「女子の分は
毎年公費で買っている」が44.1%である。第13表 工具不足の解決策(技術系列)
このほか,男子のものを借りたり,生徒
解 決 方 法人数
割合の家からもってこさせたり,現在ある工
1.女子の分は毎年公費で買って準備する 7544.1
具類を整備して,まかなっている。2.男子の個人持ちのものを借りる 30
17.6 「工具のある分野を選択する」が2割
3.家庭系列の予算で買ってもらう7 4.1
をしめる。この例では,子どもを発達さ
4.工具のある分野を選択する 3721.8
せるという視点からではなく,工具の有
5.現在ある工具類を整備してもらう 3118.2
6.生徒の家からもってくる 35
20.6 無が選択を決めてしまうという不合理が
7.全員に購入させる
1
0.6ある。
8,そ の 他
5 2.9
その他としては,①実施時期をずらす。②工具の工夫,または工具を使わないで
複数回答があるので,100%にならない。もできる教材を考える。③工具を用いな い「キット」的なものを考える。④両系列の備品を共用する。⑤工具や服装のことを考えると,乗
り入れがむつかしい,があった。つぎに,第14表に示すように工具に困っていないと回答しているもので,その理由としてあげて
いるものは「学校備品で間に合う」60.6第14表 工具不足のない理由
%でもっとも多く,ついで「学校備品を
対 策 人数
割合 整備している」が25.2%である。これは比較的財政力のある自治体の中学校であ
1.女子の工具は学校の備品で間に合うユ32 60.6
ろう。
2.男子の個人のものを借りる 17 7.8
しかし,まったく問題がないわけでは 3.人数が少ないのでなんとかなる
5
2.3 ない。「男子個人のものを借りる」,「で4.できる分野に変える
17
7.8きる分野に変える」,「工具を使わない
5.学校備品を整備している 5525.2
ような キット.的なものに変える」な
6.全員が購入する
4
1.8どである。これでは工具不足を解消でき
7.生徒の家から持ってくる 10
4.6
ず,教育効果を低下させかねない。8,半学級にしているので備品で間に合う
6
2.8なお,参考までに技術科の教師に対し
9.そ の他
3
1.4て「男子生徒に家庭領域で学ばせたいも
複数回答があるので,100%にならない。
のがあれば,どの領域ですか」と質問し
てみた。
その結果,被服146人(11.0%),被
服皿3人(0.7%),被服皿11人(0.2%),食物1197人(47.2%),食物皿56人
一
(13,4%),食物皿24人(5.8%),住居140人(33.6%),保育128人(30.7%),全領域4人
(1.0%),無答70人(16.8%)であった。(全領域については提示しなかったので,回答者が少な
かったと思われる)。また,家庭科の教師に対しても「女子生徒に技術領域で学ばせたいものがあ れば,どの領域ですか」と質問したところ,木工156人(13.5%),木工皿3人(1.5%),金工10
人(2.4%),金工皿2人(0.5%),機械132人(8.0%),機械∬6人(1.5%),電気1206人(514%),電気∬24人(12.0%),栽培100人(24.9%),無答48人(12.0%)であった。家庭系列で
は,食物1,住居,保育が,技術系列では電気1,栽培の履習希望が多い。
おわりに
この調査によって相互乗り入れを実施していない学校が約1割あること,半数学級の実施校では 相互乗り入れが非実施校よりひくいこと,家庭系列では2領域以上の履習が技術系列より低いこと,
技術科の教師が食物や住居を教えたり,家庭科の教師が電気や木工をもつこと,技術科の教師の方 が別学意識は強いが,共学の実施率は高いこと,評価がむつかしいと考えるものが4割をこえるこ
とがわかった。これらの点はいずれも完全共学にすれば解決できる問題である。また,相互乗り入 れのための工具が不足している学校が技術系列では4割をこえる。これは教育財政当局や管理者が この教科に無理解であることが最大の理由である。その障害を除く実践を堀り起していくことが今
後の課題である。注
P)倉盛三知代・梅原清子,「技術・家庭科の『相互乗り入れ』に関する取り組み一和歌山県の実態」,『日本 家庭科教育学会誌』26巻2号,1983,pp.30−45.
2)菊地るみ子, 「高知県の実態からみた中学校の家庭科の問題点」,同上,pp.51−56.
3)久保木道子, 「技術・家庭科における相互乗り入れ,男女共学の実態と教師の受け止め方」,『日本家庭 科教育学会誌』27巻2号,1984,pp.20−2a
4)小川裕子, 「技術。家庭科『相互乗り入れ』の定着状況一山口県における1981年と1983年の実態比較 より一」,『日本家庭科教育学会誌』28巻2号,1985,pp.15−20.
5)文部省,中学校指導書技術・家庭編,開隆堂,1970,p.226.
6)津止登喜江, 「教育課程の改善にっいて」,『日本家庭科教育学誌会』30巻1号,1987,p.75.