研 究 論 文
白鋳鉄 による粉砕サーメ ッ ト粒子の鋳 ぐるみ性評価
池 浩 之
,
*後 藤 正 治,**勝負葎 善 行,
* 麻 生 節 夫,**小 松 芳 成
, *
* 小 西 信 夫 ***St udyonMi e r os t r uc t ur eofCe r me tPowde rLaye rI ns e r t e dbyMol t e nWhi t eCas tl r on Hi r oyukiI KE†,Sho j iGoT OI
†,Yos hi yukiSYoB UZ AWAI,se t s uoAs o
ITYos hi nar iKoMAT S U† †andNobuoKoNI S HI
††fl no r de rt oi mpr ov ewe arr e s i s t anc eofwhi t ec as ti r on,c e r me tpowde rl aye ronl yandc e r me t powde rl aye rmi xe dwi t hs omeme t al l i cpowde rwe r ei ns e r t e dbymol t e n2 7mas s % Crwhi t ec as t i r onat1 7 7 3 K . Var i ouss i z e soft hec e r me tpowde rwe r eadopt e df ort hei ns e r t at i on. Themi c r o‑
S t r uc t ur eofs ur f ac eandve r t i c alc r os s ‑ S e c t i o noft hei ns e r t e dl aye rwase xami ne dt oi nve s t i gat e c as t a bi l i t yoft hemol t e nc as ti r onf ort he s epowde rl aye r. Ther e s ul t so bt ai ne dar easf o l l ows .
(1)Fort hec e r me tpowde rs i z eofmor et han 3. 4mm,t hei ns e r t e dl aye rs howss at i s f ac t or y me t al l ogr aphi cs t r uc t ur e . ( 2 )Fort hec e r me tpowde rs i z eofl e s st han3. 4mm,manyvoi dsar e l oc at e di nt hei ns e r t e dl aye randc e r me tpowde rr e mai n,butgoodme t al l ogr aphi cs t r uc t ur ei s obt ai ndbyt headdi t i onofNipowde rorCrpowde r. ( 3 )Fort hemi xe dc e r me tpowde radde d 5 0 vo
l.%Nipowde r,ac ompr e s s i onme t hodt omakeac o mpac ti savai l abl et oo bt ai nagoodmi c r o‑
s t r uc t ur eo fi ns e r t e dl aye r. ( 4) A s us pe ns i onme t hodf ort hec e r me tpowde ri nt hemol di sal s o e f f e c t i vet oo bt ai nt hegoodmi c r os t r uc t ur ebe c aus ei ti se as yt oobt ai nagoo dadmi s s i onoft he mol t e nc as ti r o ni nt ot hec e r me tpowde r.
K q Wor d s: i ns e r t ,s ur f ac ehar de ni ng,whi t ec as ti r on,c e r me t ,mi c r os t r uc t ur e ,C ompos i t e
1 . 緒 言
Ti C
などの硬質粒子を主成分 とす るサーメッ トは,耐摩耗性, 耐熱性 および耐酸化性 に優れ るために切削用チ ップや耐摩耗材 料 として多用 されている。最近, これ らの使用済み廃材 の有効 活用が クローズア ップされている。 そ こで著者 らはサーメ ッ ト 廃材をスタンプ ミルによ り粉砕 し, この廃材サーメッ ト粒子を 強化材 とした高耐熱,高耐摩耗性鋳 ぐるみ材料の開発に取 り組 んでいる(1)。 ここで鋳 ぐるみ母材 と して用いた材料 は, ステ ン レス鋳鋼や耐熱鋳鋼 に比較 して安価 で しか も耐熱性や耐摩耗性 が優れる2 7%
クロム白鋳鉄溶湯を用 いた。 しか し,粉砕前 の切 削用サーメ ッ トチ ップ自体 を2 7%
クロム白鋳鉄溶湯 (以下 自鋳 鉄溶湯 とい う)で鋳 ぐるみ複合化 し,組織評価 を行 った結果(2),サーメ ッ トチ ップと母材である白鋳鉄 との接合界面 には,約
1 0
〟m
と薄 く,強度 も高 くない相互拡散層が生 じるだ けで, ま 平成1 5
年3 月 2 6
日受付*岩手県工業技術 セ ンター 材料技術部
〒0 2 0 ‑ 0 0 8 5
岩手県盛岡市飯 岡新 田3‑3 5 ‑2
**秋 田大学工学資源学部 材料工学科
〒0 1 0 ‑ 0 0 8 5
秋 田市手形学園町1 ‑1
***㈱小西鋳造
〒0 2 7 ‑ 0 0 0 6
岩手県宮古市壷秋ヶ崎上 町6 ‑1 4
†I wa t el n d u s t r l a l Re s e a r c hl n s t l t u t e , 3 ‑ 3 5 ‑ 21 1 0 k a s h l n d e nMo r i o k a c i t y0 2 0 ‑ 0 8 5 2I wa t ep r e f e c t u r eJ a p a n
E‑ ma l l : i k e @s v O 2 . k ュ n. p r e f . i wa t e . j p
††Fa c u l t yo fEn g i n e e r i n ga n dRe s o u r c eS c l e n
Ce , Ak i t aUn i v e r s l t y
,1 ‑ 1Te g a t aGa k u e n c h oAk i t ac l t y0 1 0 ‑ 8 5 0 2Ak i t ap r e f e c t u r eJ a p a n 千†千Ko n l S h lFo u nd r y CO. , LTD, 6 1 1 4Ku wa g a s a k l k a mi ma c h l Mi y a k o
c i t y0 2 7 ‑ 0 0 0 6I wa t ep r e f e c t u r eJ a p a n
た接合面 に空隙が観察 され るなど母材 との接合の点で難点があ ることが懸念 されている。一方,同 じ高硬度材料である超硬合 金 チ ップ と自鋳鉄 との接合界面 に生 じる反応層 の厚みは約
1 5 0
〟m
と比較 的厚 く,良好 な接合強度が得 られ ることが分か っ ている。 そ こで, サーメ ッ ト粉砕粒子 にNi
やCr
などの金属 粉末 を同時添加 して接合性を向上 させ,母材である白鋳鉄 との 鋳 ぐるみ複合化状態 についてモデル実験 を行 うことにより詳 し く検討 して きた(1)。 その結果,サーメ ッ ト粒子単独では白鋳鉄 とは複合化で きないが,Ni
およびCr
粉末を5 0v o
l.%以上添加 す ることによりサーメ ット粉末 も白鋳鉄溶湯で完全 に鋳 ぐるみ 複合化で きることが分か った。 そ して,Ni
粉末添加の場合 は, サーメッ ト粒子の組織形態が崩 され,鋳 ぐるみ層の硬度の低下 を招 くが,Cr
粉末添加で は, サーメ ッ ト粒子 の組織形態 は維 持 され, しか も多量 のM
7C
3炭化物の析 出やTi C
の鋳 ぐるみ層 への分散強化 などにより高硬度の鋳 ぐるみ層が得 られることな どが分か った。 しか し,母材 と完全 に密着接合 し,接合不良や 鋳 ぐるみ層内にポアなどが生 じない鋳 ぐるみ層を形成す るため にはサーメ ッ ト粒子のサイズや鋳 ぐるみ条件 によって大 き く左 右 されることが推察 された。そ こで本研究では,あ らか じめスタンプ ミルで破砕 した種 々 の粒度のサーメ ッ ト粉砕粉末を用 いて,それのみ, あるいはそ れに
Ni
やCr
粉末 などの金属粉末 を同時添加 した ものを,鋳 型内に充填 し,白鋳鉄潜湯を母材 として種々の条件で実際に鋳 ぐるみむ ことにより,鋳 ぐるみ試験片を作製 した。そ して試験 片の表面や断面 についてマクロ, ミクロ観察を行 い最適な鋳 ぐるみ条件を兄 いだす ことを目的 とした。
8
池 浩之 ・後藤正治 ・勝負津善行 ・麻生節夫 ・小松芳成 ・小西信夫2 .
実 験 方 法試 験 に 用 い た サ ー メ ッ トは
, Ti CN‑ 1 9ma s s %‑ Mo
2C‑ 2 4 ma s s %Ni
の組成 に調製 しボール ミル,乾燥,成型,焼結 を得 て,JI S
抗折 力試験片形状( 2 5 . 0×8. 0×8. 0mm)
に作製 した も ので あ る。 ここでTi CN
を主 成 分 と したサ ー メ ッ トを用 い た の は,N
添加 合 金 はTi CN
粒子 が微 粒 とな り強度(3)が高 く, また耐熱性(4)も優 れ ること, さ らに通常工具 と して利用 されて い るサ ーメ ッ トはN 添加 合金 で あ る ことな どの理 由に よ る。この試 験 片 を ス テ ン レス鋼 製 ス タ ンプ ミル にて
>3 . 4mm
,1 . 4 ‑3 . 4mm, <1 . 4mm
の サ イ ズ に粉 砕 して サ ー メ ッ ト粉 砕 粒 子 と した。 サ ー メ ッ トの形状 と粉 砕後 の粉砕 粒 子 の外 観 をFi gur e
lに示す。 これ らのサーメ ッ ト粉砕粒子 を単独, あ るいは Ni
粉末 (<4 5〝m)
やCr
粉末 (<1 0/ Jm) を 5 0v o l . %混
合 して被鋳 ぐるみ材 と したO この強化 材1 0
gをFi gur e2
に示 す よ うにセ ラビーズ製炭酸 ガス鋳型内底部 にそのまま充填 した。そ して
1 7 7 3K
で溶解 した 白鋳 鉄 溶 湯 (組 成 :Fe ‑ 2 . 7ma s s %C‑
2 7 mas s %Cr ‑ 0. 8mas s %Si ‑ 0. 8 ma s s %Mn)
を鋳 型 内 に注 湯 し サ ー メ ッ ト粒子 鋳 ぐるみ試 験片 を作製 した。 本実 験 で はFi g‑
ur e2
に示 す よ うに鋳型寸 法 (上側鋳型 の直径 を¢2 8‑4 8
, 高 さ6 0mm
に, 下 側 鋳 型 の直径 を¢2 5 ‑4 5
, 高 さを1 5 ‑2 0mm
に変化) を変化 させ溶湯 の容積比率 を変化 させ た。得 られた試 験片 につ いて は,鋳 ぐるみ部 の底面郡 および断面郡周辺 の組織 観察 を行 い,鋳 ぐるみ複合化 の評価 を行 った。3.
実 験 結 果3 .1
鋳 ぐるみ に及 ぼす粒度 の影響Fi gur e3
は >3. 4mm,1 . 4‑3 . 4mm, <1 . 4mm
の3
種 類 の サ ーメ ッ ト粉砕粒子 を単独 で鋳型 内 に充填 した後, 白鋳鉄溶湯 で鋳 ぐるんだ試料 の底面 と鋳 ぐるみ層近傍 断面 にお けるマ クロ 組織 で あ る。>3 . 4mm
のサ ーメ ッ ト粒子 の場合 は,一部 に母 材 とサ ーメ ッ ト粒子が接合 で きて いない部分 が観察 され る もの素材物性学雑誌
の, サー メ ッ ト粒子 の ほぼ全体 を母材 が覆 ってお り,良好 な複 合 化 が な され て い る こ とが分 か った。 一 万
,1 . 4 ‑3. 4mm
,< 1 . 4mm
のサ ー メ ッ ト粒子 を用 いた場合 は, 溶 湯 が サ ー メ ッ ト粒子 間 を埋 めつ くしてお らず, また, サー メ ッ ト粒子 内の焼 結 も全 く進行せず,鋳型 内 に残留 して しま った。 このよ うに, サ ーメ ッ ト粒子 の粒度 によ って鋳 ぐるみ性 が異 な ったが, これ はサ ーメ ッ ト粒子 の粒度 が大 きい ほど白鋳鉄 溶湯 とサーメ ッ ト 粒子 が直接接触 しやす く, またサ ーメ ッ ト粒子 間隙 も大 き くな る ことか ら,>3 . 4mm
のサ ー メ ッ ト粒子 の場 合 は,粒子 間 に 溶湯 が容易 に流動侵入 し, サ ーメ ッ ト粒子全体 と溶湯 が直接接 触 したため に複合化 が可能 であ った と考 え られ る。一方, それ 以下 の粒度 のサーメ ッ ト粒子 を用 いた場合 は, サ ーメ ッ ト粒子 が密 に充填 され,溶湯 の進入 間隔が小 さ くな り,溶湯 の進入径 路 も増加 した ことに加 え,元来 サ ーメ ッ トと自鋳鉄溶湯 との濡 れ性 が悪 いため, 白鋳鉄溶湯 とサ ーメ ッ ト粒子 が直接接触 す る ことが少 な くな り, サ ーメ ッ ト粒子 間隙 に溶湯が流動侵入 す る ことがで きなか った もの と考 え られ る。 また溶湯進入経路 の増 加 とサ ーメ ッ ト粒子 との接触面積が増加す るため白鋳鉄溶湯 の 冷却速度 がか な り大 き く, サーメ ッ ト粒子 が複合化 す るための 十分 な熱量,す なわ ち反応 に必要 な熱量 が 白鋳鉄潜湯 か らサー メ ッ ト粒子 に伝 わ らなか ったために, ほとん どの粒子 が複合化 せず鋳型 内 にその まま残留 した もの と考 え られ る。3 .2
鋳 ぐるみ に及 ぼす容積比率 の影響本 研 究 で は, 鋳型 内 に充填 した サ ー メ ッ ト粒 子 の量 を
1 0g
一定 と したO その理 由 は, サーメ ッ ト粒子 の粒径が大 き く異 なることか ら,体積 を一定 にす ると,細 か いサ ーメ ッ ト粒子 の場 合 は粒子 が多量 に必要 にな る こと, また
>3 . 4mm
の粗 大 な粒 子 の場合,体積 を一定 にす る ことが困難 とな るためで あ る。 し か し,鋳 ぐるみ にお ける被鋳 ぐるみ材 と母材溶湯 との容積比率 の影響 につ いて は これ まで に も種 々検討 されてお り, その比率 によ り鋳 ぐるみ特性 も異 な るとの報告 もあ る(5)。 そ こで, ここCe r me tc hi p
( 2 5. OX臥OX8 . O m画
Fi gur e1 Vi e wo fc e r me tc hi psa ndt hr e egr a de so ft hec r us he dpo wde r
第
1 6
巻 第1
号( 2 0 03
年6
月)白鋳鉄 による粉砕サーメ ッ ト粒子の鋳 ぐるみ性評価
で は被鋳 ぐるみ材 と して <
1 . 4mm
のサ ーメ ッ ト粒子 のみ1 0g
一定 と して鋳型 内底部 に充填 し,鋳型 の内径及 び高 さをFi g‑
ur e2
に示す よ うに変化 させ た。 その結果 の一例 をFi gur e4
に 示 す。Fi gur e4
は下側鋳型 の底部 高 さ2 0mm
と して直径 を4 5 mm
と4 0mm
と した例 を示す。 ここで試験片 の径 が大 き くな ると容積比率( Capac i t yRat e ; CR
‑(粉末体積/溶湯体積)×
1 0 0%
) が大 き くな り,CR
値 は鋳型径が¢2 5‑ ¢4 5
で約1 3. 3‑
2. 5%
と変化 す る。CR
値 が大 きい¢2 5 ( CR‑1 3. 3%)
の例 はFi gur e3 ( C )
に見 られ るよ うに, ほ とん ど複合化 で きない こ とが分 か って いる。 そ して,Fi gur e4
の¢4 0( CR‑4
.4
%) の 場合,底面か ら観察す ると接合 していないサーメ ッ ト粒子 も部 分 的 にみ られ る。 しか し, ¢4 5( CR‑2. 5%)
の場合で はほぼ サーメ ッ ト粒子全体 を白鋳鉄溶湯が覆 ってお り,鋳 ぐるみ複合 化 で きることが分か った。以上 の ことよ り被鋳 ぐるみ材 として¢2 番〜4 8 Mol t e nwhi t ec as ti r .t I
Fi gur e2 Cas t i ngmol dandar r ange me ntofc e r me t powde r.
Bo t t oms u r f ac e Cr os ss ec t i on ( a )>3Amm
( 也)1 . 4‑3. 4mm
Fi gur e3 Ef f e c tofc e r me tpowde rs i z eonmor phol ogyof i ns e r t e dl aye r.
添加す るサーメ ッ ト粒子径 のみでな く,鋳 ぐるみの際の容積比 率 も鋳 ぐるみ複合化 に影響 を与え る大 きな要素であることが本 実験 で も確認で きた。
3 .3
金属粉末同時添加の効果次 に本実験 に先だ って行 ったモデル実験(1)で鋳 ぐるみ性が良 い と判 断 された
Ni
粉末及 びCr
粉末 をバ イ ンダー と して複合 添加 した場合 につ いて検討 した。Fi gur e5
は, <1 . 4mm
の粒 度 のサ ーメ ッ ト粒子 にNi
及 びCr
粉末 をそれぞれ5 0vo
1.%添 加 した粉末材 を鋳 ぐるんだ試験片 の底部 と鋳 ぐるみ部近傍 の断 面 マ クロ組織 であ る。Ni
粉末 を同時添加 した場合,母材 と鋳 ぐるみ層 とは良 く接合 して,かっ鋳 ぐるみ層内 も被鋳 ぐるみ材 の複合化が促進 してお り,明 らか にサーメ ッ トのみの場合 に比 較 して複合化 は進んでいることがわか る。 しか し,鋳 ぐるみ層 内はポー ラスで多 くの間隙が散見 され,鋳 ぐるみ層 と母材 との 接合部 に も間隙が多 く観察 された。一方,Cr
粉末 を同時添加Bottom surface
Cr os ss e c t i on
Fi gur e4 Ef f e c tofmol ddi ame t e ronmor phol ogyofi n‑
s e r t e dl aye ri nt hec as eofc e r me tpowde rs i z e
< 1 . 4mm andc e r me tpowde rmas sl og.
B o t
toms u r f a c e Cr o s ss e c t i on
t l l l ヽi l 州、 、 . d e
l.Fi gur e5 Ef f e c tofaddi t i onale l e me ntonmor phol ogyofi n‑
s e r t e dl aye r .
1 0
池 浩之 ・後藤正治 ・勝負葎善行 ・麻生節夫 ・小松芳成 ・小西信夫 した場合 も,サーメ ッ ト粒子単独で鋳 ぐるんだ場合 に比較 して複合化 は進んでいる。 しか し,鋳 ぐるみ部 と母材 とが剥離 して お り
,Ni
粉末添加 の場合 に比較す ると, ほとん ど複合化が進 まないことが分か った。 この理 由は,本研究の場合,母材溶湯 と被鋳 ぐるみ材が接触 した際に溶湯側か ら十分な熱量 の供給が なされなか ったために,接触界面および鋳 ぐるみ層内部での拡 散反応時間が短 く,拡散反応が十分 に行われなか った ものと考 え られ る。つま り, モデル実験 の場合(1), 白鋳鉄溶湯 を室温か ら3 . 6ks
で1 6 7 3K
まで昇温,その後炉冷で室温 まで冷却 してい る。 したが って, この場合 は母材 と被鋳 ぐるみ材 との界面及 び 鋳 ぐるみ層内部で充分 に拡散反応が終了す るのに必要 な熱量が 電気炉内で供給 され ることになる。 したが って,Ni
粉末やCr
粉末をバイ ンダーとして添加す ると健全 な鋳 ぐるみ層が得 られ た ものと考え られた。 そこで,溶湯か らの供給熱量を増加 させ るために鋳型‑の白鋳鉄溶湯の注湯温度を1 7 7 3 K,1 8 2 3K
と上 昇 させ,同 じ粉末材 を鋳 ぐるみ,複合化実験を行 って注湯温度 の効果 について調べた。 しか し,鋳 ぐるみ郡および断面 ともにFi gur e5
に示 した結果 とほとん ど違 いはなか った。 これ は本 研究の実験範囲内で は,容積比率( CR
値)が大 きかったため に注湯温度を高 くして も十分 な熱量 を鋳 ぐるみ層 に供給す るこ とはがで きなか ったと考え られる。4.
考 察4.1
鋳型への粉末添加方法サーメ ッ ト粒子を白鋳鉄溶湯で鋳 ぐるみ,複合化す るために は,溶湯 とサーメッ ト粒子が十分 に接触 し,サーメッ ト粒子間 隙を溶湯が流動侵入 しやす くす る必要がある。そのためには自 鋳鉄溶湯 とサーメ ッ ト粒子 の濡れ性を向上 させ, サ‑メ ット粒 子径や容積比率を最適 な条件 に設定す ることが必要であること が確認で きた。 そこで白鋳鉄溶湯 と被鋳 ぐるみ材を鋳型内で十 分 に接触 させ ることができるように
,Fi gur e 6
に示すようにス テ ンレス鋼( SUS3 0 4 )
製 の網 を用 いて被鋳 ぐるみ材 を鋳型内 底部で空中に保持 した状態で鋳 ぐるみを行 った。 なお, ここで 用 いたサーメ ッ ト粒子 は<1 . 4mm
の粉末であるが, このよ う な方法で鋳 ぐるみ複合化を行 うと,被鋳 ぐるみ材 は鋳型内でそ のまま保持 され、被鋳 ぐるみ材全体を自鋳鉄溶湯で覆 うことが 可能 となることが分か った。その際 に得 られた鋳 ぐるみ試験片Fi gur e6 Me t hodf ors us pe ndi ngc e r me tpowde ri nt he mo l d.
素材物性学雑誌
の断面組織 を
Fi gur e 7
に示す。 しか し, このよ うな方法で鋳 ぐるみを行 って もサーメ ット単独の場合 は,サ‑メッ ト粒子層 (鋳 ぐるみ層) 内部 までは十分 に複合化が進 まず,鋳 ぐるみ層 には未複合化部分の隙間が多 く観察 された。すなわちサーメ ッ ト粒子全体を溶湯で覆 って も,サーメ ッ ト鋳 ぐるみ層内部 まで 複合化を促進するほどの十分な熱容量が,白鋳鉄溶湯側か らサー メッ ト粒子へ供給 されなか ったものと考え られる。 この結果 は, 鋳 ぐるみモデル実験 においてサーメ ッ ト粒子のみを白鋳鉄溶湯 で複合化 して もサーメ ッ トは全 く鋳 ぐるむ ことができなか った 結果 と一致 して いる。 そ こで, <1 . 4mm
のサーメ ッ ト粒子 にNi
およびCr
粉末 を5 0 v o
l.%添加 した粉末材 を,上述 の方法 と 同様の条件で鋳 ぐるみ複合化を行 った。 その際に得 られた鋳 ぐ るみ試験片 の鋳 ぐるみ層近傍 の光学顕微鏡組織 をFi gur e8
に 示 した。 その結果 によれば, この場合 も鋳 ぐるみモデル実験の 結果 と同 じで,鋳 ぐるみ層内部 に全 く間隙 は観察 されず,サー メ ッ ト粒子 は完全 に鋳 ぐるみ複合化 され ることが分か った。 こ れは次の理 由によるものである。すなわち,サーメッ ト粒子 はTi CN
などの硬質粒子 をNi
粉末 と混合 したのち焼結 して製造 された もので,Ti CN
粒子同士がNi
相で結合( Ni
結合相) さ れた構造 を有 して いる。 そのために, サーメ ッ ト粒子粉末 にNi
やCr
粉末 を同時添加 した ことによ り, 白鋳鉄溶湯 と被鋳 ぐるみ材 の濡 れ性が向上 し,Ni
粉末添加 の場合 は, サーメ ッ ト中 のNi
結 合 相 の量 が増 加 す るため, 結 合相 中 に多 くのTi CN
や( Ti ,Mo)CN
粒子が溶解 し鋳 ぐるみが促進 したもの と考 え られ る。 またCr
粉末添加 の場合 は,Cr
と白鋳鉄溶湯 及 びサーメ ッ ト中のNi
や( Ti ,Mo)CN
粒子 などの合金化が 進み被鋳 ぐるみ材の複合化が促進 した(1)ことに加え, ステ ンレ ス鋼製綱を用いて鋳型内に被鋳 ぐるみ材を保持 し十分 に被鋳 ぐ るみ材全体を白鋳鉄溶湯で覆 うことがで きた ことで,鋳 ぐるみ 層内の複合化 を促進す るために十分な熱量が供給 されたと考えられ る。
4.2
サーメ ッ ト粉末圧縮成形の効果これまでに,超硬合金 チ ップ自体を鋳鉄溶湯で鋳 ぐるむ こと は容易であることは著者 らによって確め られている。 したが っ
Fi gur e7 Mi c r os t r uc t ur eofi ns e r t e dl aye rwi t hc e r me t powde rs i z eof < 1 . 4mm,whi c hwaso bt al ne d byus i ngt heme t J hodofFi g.6.
第1
6
巻 第 1号( 2 00 3
年6
月)白鋳鉄 による粉砕 サーメ ッ ト粒子 の鋳 く・るみ性評価
て,サーメ ットチ ップ自体を鋳型中で保持す るためには,超硬 合金チ ップの鋳 ぐるみ技術を応用すれば,鋳造現場で も応用 は 可能 と考え られる。 しか し,鋳造現場でサーメッ ト粉砕粉末を 鋳 ぐるむ ことによって複合材料を得 る際,粉末を鋳型内に中空 で保持す るのは極 めて困難な作業である。 そ こで鋳型内底部 に 配置 しただけでサーメッ ト粒子を含む被鋳 ぐるみ材を鋳 ぐるむ 際の鋳 ぐるみ性 を向上 させ るためには,①
Ni
やCr
粉末 に比 較 して濡れ性が良 く低融点の粉末成分を同時添加す る。② また は母材溶湯 との濡れ性が良 く,少ない熱量で十分 に焼結で きる 成分粉末 を同時添加す る。③Ni
やCr
粉末 を含 む被鋳 ぐるみ 材の鋳 ぐるみ層中の焼結を促進 させるなどの方法が考え られる。①②の内容 についてはさ らに適正な粉末成分を見っけるために 今後検討す ることとし, ここでは被鋳 ぐるみ材粉末を金型中で 圧粉成形 し,被鋳 ぐるみ材の焼結性を高 める方法 について検討
した。
粉末冶金法で粉末の焼結を促進 させ る場合,粉末 はプ レス機 を用 い金型等で
,1 0 0‑3 0 0MPa
の圧力で圧縮成型 した後、焼 結す る(6)。すなわち添加す る粉末同士の隙間距離 は短 いほど焼 結 は進 行 す る。 そ こで, < 1 . 4mm
の サ ー メ ッ ト粒 子 に5 0
( a )Ce r me tpo wde r
<1 . 4mmandNipo wde r
( b )Ce r me tpo wde r<
1.4mJ nandCrpo wde r
Fi gur e8 Mi c r os t r uc t ur eofi ns e r t e dl aye rwi t h( a)mi x‑
t ur eofc e r me tpowde randNipowde r ,and( b) mi xt ur eofc e r me tpowde randCrpowde r ,whi c h we r eobt ai ne dbyus i ngt heme t hodofFi g.6.
l l γ o l . %Ni
粉末 を添加 した被鋳 ぐるみ材粉末2 0g
を¢2 5×3 0
の 超硬合金製金型 に投入 しプ レス機で1 0 0MPa
の圧力で成形 し,¢2 5×5mm
の圧粉体を作製 した。 これを鋳型内に充てん し,1 7 7 3K
の温度 で 白鋳鉄溶湯 を注湯 した。 その結果 をFi gur e9
に示す。 これよ り被鋳 ぐるみ材を鋳型内底部 に配置 しただけで も,被鋳 ぐるみ材 はほぼ完全 に鋳 ぐるまれ,鋳 ぐるみ層の形成 には溶湯か らの熱が充分 に内部 まで伝え られ るために,液相焼 結 の原理 を利用す ることで完全 な鋳 ぐるみ層が得 られ ることが 分か った。5. まとめ
サーメッ ト粒子を単独粉または他の金属粉末 との混合粉 とし, これ らを被鋳 ぐるみ材 と して
,2 7%Cr
白鋳鉄溶湯で鋳 ぐるみ を行 った結果,以下の結論が得 られた。1
. 粒径が3. 4mm
以上 のサーメ ッ ト粒子 を用 いた場合 は, サーメ ッ ト粉末単独で も組織的に良好 な鋳 ぐるみ層が得られる。
2 .
粒径が3 . 4mm
以下 のサーメ ッ ト粒子 は,空 中に保持 し て鋳型 と接触 させずに充填保持す ると,溶湯が粒子の周 囲に流れ込み, 白鋳鉄母材 と接合 し易 くなる。 さらに,Ni
やCr
粉末 を添加 す るとほぼ完全 な接合体が得 られる。
3.
サーメ ッ ト粉末 に5 0 vol . %Ni
粉末を添加 した混合粉末を あ らか じめ加圧成型 して圧粉体を作 り, これを鋳 ぐるむ と,鋳型内底部 にそのまま充填 しただけで も良好 な鋳 ぐ るみ複合化組織が得 られ る。参考文献
1) 池 浩之,麻生節夫,後藤正治,勝負津善行,小西信夫 : サーメ ッ ト粉末鋳 ぐるみによる
2 7mas s %Cr
白鋳鉄の表面 硬化,鋳造工学,投稿中。2)
麻生節夫,後藤正治,池 浩之,勝負揮善行,小西英二, 小西信夫 :2 7%
クロム白鋳鉄 による超硬合金 の鋳 ぐるみ と 組織評価,鋳造工学,7 0( 1 9 9 8)8 7 8‑8 8 3 .
3 )
鈴木 寿,林 宏爾, 山本 勉 :Ti c‑ Mo2 C‑ Ti N‑ C
o合金 の強度, 日本金属学会誌,41( 1 97 7 )4 32 ‑4 3 7.
4 )
鈴木 寿,松原秀彰,林 宏爾 :窒素 を含むTi C‑ Ni
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池 浩之 ・後藤正治 ・勝負津善行 ・麻生節夫 ・小松芳成 ・小西信夫の高温酸化, 日本金属学会誌