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鋳鋼 による超硬合金粉末の鋳 ぐるみとその組織および硬 さの評価

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鋳鋼 による超硬合金粉末の鋳 ぐるみとその組織および硬 さの評価

岡 田 和 彦,*池 之,**後 治,***

夫,***小 成 ***

StudyonMierostruetureandHardnessofHardAlloyPowderLayer lnsertedbyMoltenCastSteel

KazuhikoOKADAT,HiroyukiIKE††,ShojiGoTO†I SetsuoAso††andYoshinariKoMATSU†

AbstFact

lnordertoimprovewearresistanceofcaststeel,hardalloypowderlayerwasinsertedby moltencaststeelat1843K. TheverticalcrossSectionoftheinsertedlayerwasexaminedonthe microstructureandthehardness. Theresultsobtainedareasfollows. Soundinsertedlayerof3 mm inthicknesswasconfirmedtobeformedwithoutanydefectsonthesurfaceofcaststeel. Areactionlayerwithsomelumpshapedparticleswasformedintheinterfacebetweentheinserted layerandthemothermetal(caststeel).ThelumpshapedparticleswereidentifiedtobeFe3W3C phasewhichhadacubicstructurewithalatticeconstantofll.1094×10 8cm. Theparticleswere consideredtobeformedbyareactionbetweentheCobondphasedissolvingWC inhardalloy powderandthemoltenirondissolvinglow concentrationofCinmoltensteel. Thehardnessof caststeelwasaboutHv300,whiletheinsertedlayerexihibitedhighhardnessofHv600to800.

Especially,thereactionlayershowedpeakhardnessofHv1800,butthelayerwasnotbrittle. The toughnessofthereactionlayerwasconsideredtobeduetoamixedstructureoftoughbainiteand retainedaustenitearoundthehardFe3W。Cparticles. Thepresentmethodusingtheinsertedhard alloypowderlayeristhereforetobeveryeffectiveoneforlocalhardfacingofcaststeel. KqvWords:insert,Surfacehardening,caststeel,tungstencarbide,Ⅹ‑raydiffraction,

hardalloy,Fe3W3C

1.緒言

金属材料の表面改質法の一つ として鋳 ぐるみ法が知 られてい る19)。 これは液体金属溶湯 をそれ とは異 なる優 れた機能性 を 有す る固体物質上に注湯 し,凝固によ り一体化 して表面 に優れ た機能性 を付与す る金属基複合部材 の製造方法79)である。 こ の方法では固体物質 とそれを鋳 ぐるむ液体金属 とのぬれ性や反 応性な どの関係か ら,それ らの問に完全な結合状態が生 じず ボ イ ドや空隙などが発生 した り,固液界面で強い反応が生 じてぜ い弱 な層 を形成 し固体物質 が は く離す ることも報告 されてい る2)。 すなわち固液界面 における反応性が鋳 ぐるみ部材 の性質 を大 きく左右す ることになる。

著者 らは ), これまでにきわめて硬質 な超硬合金粉末層 を鉄

平成14130日受付

*自動車鋳物株式会社 商品開発 セ ンター

〒3000015茨城県土浦市北神立町4‑2

**岩手県工業技術 セ ンター 企画情報部

〒0200852盛岡市飯 岡新 田3‑35‑2

***秋 田大学工学資源学部材料工学科

〒0108502秋 田市 手形学 園町1‑1

†AutomobileFoundryC0.,Ltd.,42Kltakandatsu‑machiTsuchiura clty30000151barakiprefectureJapan

千千IwatePrefecturallndustrialResearchInstitute3352110kashinden Moriokaclty0200852IwateprefectureJapan

千†千FacultyofEngineerlngandResourceSclenCe,AkitaUnlVerSity,11 TegataGakuennchoAkitacity0108502AkitaprefectureJapan

素材物性学雑誌

系溶湯で鋳 ぐるみ,安価で鉄鋳物 に比較 して耐摩耗性が飛躍的 に向上 した耐摩耗性鋳 ぐるみ部材 の開発 に関す る研究を行 って いる。 その中で超硬合金粉末 を鋳 ぐるんだ鋳鋼材 は,超硬合金 の硬 さと鋳鋼母材の延性や靭性を合わせ持 った衝撃 に強い耐摩 耗複合材料 として期待 されている10)。 この鋳 ぐるみ鋳鋼材では 超硬合金粉末層 と鋳鋼母材問に反応生成層が生 じ,かっ同層内 には矩形状 の粒子が晶出す ることが知 られている10)。 この こと は,超硬合金粉末鋳 ぐるみ鋳鋼部材の実用化 において きわめて 重要 な ことである。そ こで本研究では,超硬合金粉末鋳 ぐるみ 鋳鋼部材 に発生 した反応生成層 に関す る知見を得 るために,同 部材の組織,硬 さおよび構成成分元素の拡散状況 について調べ, かつ矩形状の粒子の同定を行 った。

2.実験方法 2.1供試材

実験 に用 いた超 硬 合 金粉 末 (Hardalloy (G2))WC‑

6mass%Coの化学組成か らな り, ‑270meshの粒径 を有す る ものである。 これをWC粉末 と略記す る。 この粉末 にポ リ酢 酸 ビニルを少量添加 した後, メタノールに溶か してスラリ‑状 に した ものをFigurelに示す鋳型下面 に約3mmの厚 さで平 滑 に塗布 し,十分 に乾燥をさせた。鋳型 は4種頬 の大 きさの試 験片が同時に得 られ るようになってお り,試験片 の寸法 は底面 を50×50mmとし,高 さを40mmか ら100mmまで4段階 に変 え る こ とで 塗 布 したWC粉 末 と鋳 込 ん だ 溶 湯 の 容 積 比

15 1号 (20026月)

(2)

(CapacityRate:CR‑(塗 布WC粉 末/溶湯体積)×100%) 変化 させた。本実験 で は塗布厚 さを約3mmと したので,CR 値 は試験片高 さ100,66,50,40mmに対 してそれぞれ3,4.5, 6,7.5%に相 当す る。 鋳鋼 溶湯 は,C:0.35,Si:0.45,Mn:1.30 mass%の組成 にな るよ うに鋼屑, 黒鉛粉,FeSi合金 お よび FeMn合金 を配合 し,100kgを高周波誘導電気炉 で溶製 した。

この溶湯 を上述 の鋳型 に1843Kで注湯 して試験片 を得 た。 試 験片 はWC粉末 を塗布 した面 に対 して垂 直 に切 断 し, その断 面 を研磨 して組織観察,硬 さ測定,Ⅹ 線分析 お よびEPMA よ る成分元素 の分布状況 を調査 した。 なお,EPMA分析装置 には島津製作所製EPMA‑8705を用 いた。測定条件 は加速電圧 15kv,照射電流20nAとし,分析 に使用 した元素 の特性 Ⅹ線 は Wで はLα,FeおよびCで は線 とした。

2.2 X線分析

次章で示す よ うに,WC粉末鋳 ぐるみ層 と鋳鋼母材 の界面 に 150‑200〟mの幅 を有 す る反応生成層 が生 じ, かつ同層 内 には粗大 な矩形状 の粒子 の存在が認 め られた。 この矩形状 の粒 子 を同定す るために以下 の方法で微小領域 Ⅹ 線 回折 を行 った。

分析試料 は炭素 などによる汚染 を防止す るために,試験片表 面 をェ ミリー紙で#1200まで研磨後 アル ミナ粒子でバ フ研磨 し,

ダイヤモ ン ド粒子 によるバ フ研磨 を経て さ らに流水 によるバ フ 研磨 を施 し, その後直 ちに ドライヤーで熱風乾燥 した。 また反 応生成層 を中心 と してMo製 の単孔 メ ッシュ (¢300/Jm) 貼 りつ け,基地であ るWCおよび鋳鋼 中のFeの影響 を極力低 減す るよ うに心 が けた。 微小領域 Ⅹ 線 回折装置 には理学電機 社製RINT‑Rapidを用 いた。 ただ し,使用 Ⅹ線 にはCuKα を用 い, 管電圧40kv, 菅電流36mAと し,平行 ビームを用 い FT法で測定 したⅩ 繰 ビーム直径 は約100FLmで ある。 なお, 検 出器 にはイメー ジングプ レー トコ リメー ター (¢100FLm) を用 いた。

3.実験 結果

3.1鋳 ぐるみ層 の形成状況

Figure2に鋳 ぐるみ によ って得 られ た試験片 断面 にお け る 鋳 ぐるみ層部近傍 のマクロ組織 の一例 を示す。試験片表面部 に

LE.

Y

Figure1 Moldforhardfacingofcaststeel

素材物性学雑誌

鋳 ぐるみ層が形成 していることが確認で きる。 また鋳 ぐるみ層 は塗布 したWC粉末 の粒子形状 を とどめてお らず, マ クロ的 には均質 でなめ らかな層 を形成 している。 しか し,後述す るよ うに この部分 は ミクロ的 にはWC粒子,Co吉合相,鋳鋼 か ら な って い る。 本実験 で行 ったCR‑3,4.5,6,7.5%のすべ て の条件 にお いて,Figure2と同様 にマ クロ的 には均質 で健全 な鋳 ぐるみ層 が得 られ ることが明 らか とな った。 またFigure 3に鋳 ぐるみ層 と鋳鋼母材 との界面 にお ける拡大組織写真 を示 す。同界面 には白色 の矩形状 の粗大粒子 を含む反応生成層が生

じていることが認 め られ る

3.2硬 さ分布 と組織

Figure4CR値 の異 な る各試 験片 にお け る鋳 ぐるみ層 か ら鋳鋼母材 にか けての ビッカース硬 さ分布 を示す。 いずれの場 合 にお いて も,鋳鋼母材 の硬 さがHv300程度 で あ るの に対 し

Figure2 TypicalmacrostructureofthespeclmenOfCR

3%.

Figure3 Typicalmicrostructureofbondingregioninthe specimenofCR‑3%.

第15 1 (20026月)

(3)

鋳鋼 による超硬合金粉末 の鋳 ぐるみ とその組織 および硬 さの評価 3 鋳 ぐるみ層部 の硬 さは約Hv800と高 く, 鋳 ぐるみ による表面

硬 さの改善 が明瞭 に現れている。 ここで鋳 ぐるみ層部 の硬 さ分 布 に対す るCR値 の明確 な違 いは見 られないよ うであ る。すな わち, この ことはCR値 が7.5%以下 で あれ ば健全 な鋳 ぐるみ 層の形成が可能であることを意味 している。 なお, いずれの場 合 に も鋳 ぐるみ層 と鋳鋼母材 の界面 には硬 さが最大 でHv1800 に も達 す る鋭 い ピー クが見 られ る。 これ は前節 のFigure3 見 られた,反応生成層内に晶出 した矩形状 の粗大粒子 によるも ので あ る。 す なわ ち同粒子 はWC粒子 よ りも高硬度 であ る こ とが推察 され る。

Figure5に反応生成層部 における成分元素の分布状況をCR‑

4.5%の場合 につ いてEPMA観察 した結果 を示す。 図 よ りCo が鋳 ぐるみ層側か ら反応生成層 と鋳鋼母材 の界面 まで拡散 して い るとともに,Feが鋳鋼母材側 か ら鋳 ぐるみ層 内部 まで拡散 して いることがわか る。 このよ うな成分元素 の相互拡散が健全 な鋳 ぐるみ層の形成 に大 き く寄与 しているもの と推察 され る。

一方 , 反応 生成 層 内 に見 られ る突巨形状 の粗大粒子 はW Fe の特性 Ⅹ 線強度 が強 く検 出 されてお り, これ らの元素 で構成 されていることが推察 され る。

>H.

SSauPJeH

‑2 1

0

1 2

DistancefrombondingLEne.D,mm

Figure4 Vickershardnessofinsertedlayerand mothermetalinthespecimensofCR‑3, 4.5,6and7.5%.

3.3 矩形状粗大粒子 の同定

前節で述べたよ うに,矩形状 の粗大粒子 を含 む反応生成層 は きわめて高 い硬 さを示 す ことが わか った。Figure6に これ ら の矩形状 の粗大粒子 を村上試薬 によって腐食 した組織 を示す。

矩形状 の粗大粒子 の部分のみが強 く食刻 されていることか ら, 同粒子 はWC粒子 とは異 な る何 らか の炭化物相11)で あ る こと が推察 され る。 そ こでEPMA分析 お よび微小領域Ⅹ線 回折 に よ り矩形状 の粗大粒子 の同定 を行 った。

まず最初 にW,FeおよびCの定性分析 を行 った。分析 で は 矩形状粒子,WC粒子 および標準試料 と して金属 タ ングステ ン (W),金属鉄 (Fe), グ ラフ ァイ トカーボ ン (C)につ いて特 性 Ⅹ 線 強度 を求 めた。Tablelに3個 の矩 形状 粒子,2個 の WC粒子 お よび各標準試料 の特性 Ⅹ 線 強度 を示 す。金属元素 と してWお よびFe, さ らにCが検 出 されて い ることよ り, 矩形状粒子 はW‑Fe系炭化物 で あ ることが示 唆 され る.次 にW お よびFeの組成比 をそれ らの標準試料 との相対強度比 を基準 に定量補正計算 (ZAF補正) してTable2にま とめた.

この結果 よ り, これ らの矩 形状粒子 の金属元素 の組成比 は 74W‑25Fe(mass%,原子比:W/Fe‑47/53)であることが明 らか とな った。 したが って, この矩形状粒子 の金属成分 の組成 比 か ら推定 され るFeW 系炭化は Fe3W3C もしくは Fe6W6C であると考 え られ る1㌔ そ こでWC粒子 を基準試料 として,矩 形状粒子が どち らの炭化物 に近 いか確認す るため,Cの半定量 分析 を行 った。WC粒子 中のC濃度 は6.13mass%であ り, こ の濃度 に対 してCの Ⅹ 線 強度 はTablelよ り約1200cpsで あ る。一方,矩形状粒子 のCの Ⅹ 線強度 は約345cpsであ る。 こ れ よ り矩 形状粒 子 のC濃度 は6.13×345/12001.76mass% な る。 これ に対 して,Fe3W3C と仮定 した場合 の C濃度 は12/ (183.85×3+55.85×3+12)1.64mass%,Fe6W6Cと仮定すれ ば同様 に計算 して0.83mass%とな る。 以上 の結果 よ り,矩形 状粒子 はFeW3Cに近 い組成 を有す る もの と推測 され る。 そ こ で この結果 を裏付 けるために, 微小領域 Ⅹ 緑 回折法 によ り格 子面間隔値 (d値) を測定 した。

Figure7 (a)お よび (b)は反応生成層 をMo製 単 孔 メ ッ シュで マスキ ング し,2箇所 の領域 を測定 して得 られ た Ⅹ 線

Figure5 SEM crosssectionalimageandEPMAlnthespecimenofCR‑4.5%,whichshows(a)SEM image, (b)W map,(C)Comapand(d)Femap.

素材物性学雑誌 第15 第 1号 (20026月)

(4)

Figure6 Microstructureoflargelumpshapedparticlesin bondingregionetchedbypotassium ferricyanide solution.

(sLlun.qLe)^1lSualuH

Table1 IntensityofcharacteristicX‑raysoflumpshaped particles,WCparticlesandreferencematerials.

IntensityofcharacteristicX‑rays(eps)

W Fe C lum pshapedparticle l 2219 3987 344

2 2244 4095 366

3 2260 3995 324 WCparticle 1 2983 660 1214

2 2913 824 1164 referencematerial W 3229

Fe 12468

(C)Fl e3Wl

3 C l l1.

.▲ ▲ 1.

11 1

.1 .

11

▲ ▲

(d) M o

A

1 A A

(e)W C

30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

D actionAng一e,2a(deg,)

Figure7 Microbeam X‑raydiffractionpeaksfor(a),(b)ofregionsincludinglargelumpshapedparticles, (C)Fe3W3C,(a)Moand(e)WC.

素材物性学雑誌 15 第 1号 (20026月)

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鋳鋼 による超硬合金粉末 の鋳 ぐるみ とその組織および硬 さの評価

Table2 Resultsofquantitativeanalysisforlumpshaped particles.

W Fe

chaⅩ‑racrtaeysristic mass% atomic% charX‑acrtaysedstic mass% atomic%

lumpshapedparticle1 0.687 73 47 0.320 25 53

2 0,695 74 47 0.328 26 53

Table3 Latticespacingsforregion1,2inreaction layerandreferencematerialsofWC,Fe3W3C andFe6W6C.

10‑8cm)

WC Fe3W3C Fe6W6C lattice RegLOnl Lattice Region2 lattice P6m2 Fd3m Fd3m plane constant corLStant a=2.9062 a=11.1094 a‑10.958 (1kl) forFd3m forFd3m

C‑2.$378

(25‑1047) (4ト1351) (23‑1127)

2.1380 2.1000 511 2.1323 ll.0g 2.1417 ll.13 1.9639 1.9340 440 I.9588 ll.08

1.8840 1.8800 I.8802

1,8516 1,8200 442 1.8608 10.85

1.7566 1.7270 620 1.7514 ll.08 1.7515 ll.08 1.6748 I.6460 622 1.6681 ll.07

I.5556 1.5320 551 I.5515 ー1.08

1,4540 1.4529

1.4463 1.4260 553 1.4421 ll.08 1.3572 13380 733 1.3540 ll,0等

1.3093 1.2900 822 1.3061 ll.08 I.3080 ll.10

I.2940 1.2917 1.2934

1.2360 1.2361 1.2356

1.2194 1.2020 911 1.2166 日.08 1.1510 1.1495 I.1504

1.0894 I.0740 862 1.0$67 ll.08 1.0902 ll.12

回折 チ ャー トである。図中には各回折 ピーク上 に測定 した格子 面間隔値を示 してお り,比較 のために(C),(d),(e)に基準 と なるFe3W3C,Mo,WCの回折 ピーク位置 を併記 した。 ちな みにMoの回折 ピーク位置を示 したのは,Mo製単孔 メッシュ が回折強度 に影響 を及 ぼす と想定 されたか らである。Table3 にこのように して測定 した領域および可能性 のある物質の格子 面間隔値 を示す。測定 した領域 で はWC (ASTMカー ド番号 251047)の回折 ピークが認 め られ,WCの各結晶面 の格子面 間隔値 との差 は最大で0.004×10 8cmであった。 したが って測 定 された矩形状粒子 の格子面間隔値 も0.01×108cm程度 の誤 差で判別 され るもの と考え られ る。 そ こで上述 したEPMA 析の結果を参考 に して回折 ピークか ら可能性 のある化合物を検 索 した結果,Fe3W3C (41‑1351) とFe6W6C (23‑1127)が選 別 された。両炭化物 は立方晶であるが,格子定数 の差が0.151

×10J8cmであるために区別 は可能であると考 え られ る。 そこ で測定 された領域の格子面間隔値の中か ら矩形状粒子相 と考え られ る回折 ピークを選択 し,それぞれについて立方晶 (Fd3m) と しての格子定数 を計算 した。 その結果,Table3に示す よう に矩形状粒子 の格子定数 は約11.08×10 8cmとな り,Fe3W3C (立方晶) の格子定数11.1094×108cmに近 い値 を有す ること

素材 物性学雑誌

が判明 した.ちなみに,類似の格子定数 を有す る化合物 として, FeW金属間化合物 のFe7W6(42‑1209)およびFeW‑B化合 物 のFeWB (23‑307)が挙 げ られ るが,回折 ピーク位置が合 致 しなか った。

4.

4.1鋳 ぐるみ材 にお ける反応生成層の適合性

前章 で示 したよ うに,本実験 におけるWC粉末鋳 ぐるみ層 と 鋳鋼母材の界面 には矩形状粒子を含む硬質 な反応生成層が生 じ ることがわか った。 このような反応生成層 は硬質な単一層か ら な り,ぜい弱なために微小 な応力負荷や熱衝撃 などによって ク ラックを発生 し,鋳 ぐるみ層のは く離 を生ず ることが多い。 と ころが本実験の場合,反応生成層 は ビッカース硬 さがHv1800 ときわめて高い値を示す にもかかわ らず,鋳 ぐるみ後の急冷 に よって もクラックやは く離などが生 じなか った。 この ことは次 のように説明できる。

Figure8に反応生成層領域 におけるSEM拡大組織写真を示 す。矩形状粗大粒子のまわ りの組織 は靭性のあるベーナイ トと 一部 マルテ ンサイ ト化 した残留オーステナイ トか らなっている ことがわかる。すなわち矩形状粗大粒子 自体がたとえ硬 く脆 い ものであ って も,それを とり囲んでいる靭性 のある組織が反応 生成層全体の靭性を補 っているものと考え られる。 さらにこの 組織 はWC粉末層 および鋳鋼母材 に対 して も密接 に一体化 し てお り,両者の結合性向上 に大 きく寄与 しているものと推察 さ れ る

4.2矩形状粗大粒子の生成条件

本実験結果 より,WC粉末を鋳鋼溶湯で鋳 ぐるんだ場合 には 反応生成層が生 じ,その中に矩形状の粗大粒子が晶出す ること がわか った。一方著者 らは,WC粉末を鋳鉄溶湯で鋳 ぐるんだ 場合 にはこれ らの矩形状粗大粒子 は全 く晶出 しないことを報告

している23)。 この違 いについて次 に考察す る。

一般 にFeW‑C系合金 は含有す る成分組成 の違 いによって, M3C,M23C6,M7C3(ここでMは金属元素を示す) などの種々 の炭化物 を晶出す ることが知 られている1314)。 これ らの炭化物 の組 成範 囲 を示 すFeW‑C三 元 系状 態 図12)の一 例 と して,

Figure8 TypicalSEM imageofreactionlayerinthe specimenofCR‑3%.

第15 1号 (20026月)

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973Kの場合 の ものをFigure9に示す。 この中でFe3W3C相 は 非常 にせまい組成範囲に位置 してお り,Wが少なす ぎた り,C が多す ぎた りす ると晶出 しない ことがわか る。 ところで,超硬 合金粉末 はWC粒子 とそれ らを結合するCo相か らなっている。

またCo結合相 中 にはWCが固溶 してい る。 したが ってWC 粉末をCの少 ない鋳鋼溶湯やCの多 い鋳鉄溶湯で鋳 ぐるむ場 合 には, これ らの溶湯がWCを固溶 したCo結合相 と溶融相互 拡散 して反応す るもの と考え られる。鋳鋼溶湯および鋳鉄溶湯 中のC濃度 はそれぞれ0.35mass%,3.84mass%である。鋳鉄 溶湯中のC濃度 は鋳鋼溶湯中のそれ に比べて10倍以上高 い。

すなわちCo結合相 中に固溶 したWCC濃度 の少 ない鋳鋼 溶湯 と反応 してFe3W3C相 を晶出す るものの,C濃度の多 い鋳 鉄溶湯 と反応 して もその反応生成層の組成がFe3W3C組成か ら C量 の高 い領域 に大 きく偏移す るために,Fe3W3Cを含む炭化 物相 を晶出 しないと推察 される。

本実験 のよ うにWC粉末 を鋳鋼溶湯 で鋳 ぐるんだ場合,超 硬合金 中のWC粒子 も鋳鋼溶湯 と直接反応 してWC粒子 自体 も鋳鋼溶湯 に固溶す ることも考 え られ るが,WCの融点がCo 結合相 の場合 に くらべてはるかに高 いので この効果 はきわめて 小 さい もの と思 われ る。 ところで超硬合金 中の結合相であ る Coに固溶 したWCが鋳鋼溶湯 と反応 してFe3W3C相が生成す るためには次の反応が考え られ る。

C,mass%

Figure9 Phasediagram fortungstensteeliso‑thermally transformedat973K (Ref.12).

素材物性学雑誌

3Fe+3WC‑ Fe3W3C+2C

したが って反応後 には余剰 のCが生ず ることにな る。 これ ら の余剰Cの一部 はC濃度 の少 ない鋳鋼母相へ拡散 してゆ くも の と思 われ るが,大部分 のCFe3W3C相周辺 のベーナイ ト や残留オーステナイ ト組織の形成 に寄与 しているもの と推察 さ れる。 ちなみに,C濃度 の多い鋳鉄溶湯で鋳 ぐるんだ場合 には 常 に余剰Cが存在す るために片状黒鉛粒子 と して晶出す るこ

とが報告 されている23)

5. 結

超硬合金粉末 を鋳型 に3mmの厚 さで塗布 し,数種 の溶湯 容積比か らなる鋳鋼溶湯で鋳 ぐるみ複合化 した。得 られた試験 片の組織,硬 さ,EPMA分析 および Ⅹ線回折 を行 った結果, 次の系吉論が得 られた。

(1) いずれの溶湯容積比 において も,鋳 ぐるみ層 は塗布 した粉 末の形状をとどめてお らず,均質で健全 な層を形成す る。

これには超硬合金中のWCを固溶 したCo結合相 と鋳鋼溶 湯中のFe元素 の相互拡散が大 き く寄与 しているもの と推 察 される

(2) 鋳 ぐるみ層 と鋳鋼母材 との界面 には矩形状の粗大粒子を含 む反応生成層が生 じる。矩形状の粗大粒子 は立方晶であり, そ の格 子 定 数 は約11.08×10 8cmで あ った。 この値 は Fe3W。C(立方晶) の格子定数11.1094×10 8cmにきわめて 近 い値を有 していることが判明 した。

(3) 反応生成層郡 は硬質 のFe3W。C粒子が存在す るためにHv 1800のきわめて高 い硬 さを示すが,ぜい弱で はない。 これ Fe3W3C粒子のまわ りの組織が靭性 のあるベ‑ナイ トと 一部 マルテ ンサイ ト化 した残留オーステナイ トか らな って

いることによると推察 された。

(4) 鋳鋼母材 の硬 さがHv300程度で あるのに対 し,鋳 ぐるみ 層の硬 さはHv600‑800と高 く,鋳 ぐるみによる表面硬 さ

の改善が明瞭に現れている。

(5) 超硬合金粉末を鋳鋼溶湯で鋳 ぐるむ とFe3W3C粒子が晶 出 するのに対 し鋳鉄溶湯で鋳 ぐるむと晶出 しない理由として, 鋳鉄溶湯 中のC濃度が鋳鋼溶湯 の場合 よ りも約10倍 も高

いことに起因す ると推察 される。

(6) 以上の ことにより,超硬合金粉末を用 いた鋳 ぐるみ法 は鋳 鋼の局部表面硬化 にきわめて有効である。

1)岡田和彦,出津新也,後藤正治,麻生節夫,小松芳成 :潤 失模型法を用 いた球状黒鉛鋳鉄 による超硬合金粒子粉体 の 鋳 ぐるみ,鋳造工学73(2001)493‑498

2)麻生節夫,中西 誠,後藤正治,池 浩之,勝負揮善行: WC粉末 による鋳鉄 の表面硬化,鋳造工学73 (2001)155

‑1600

3)麻生節夫,後藤正治,池 浩之,勝負揮善行,小西英二, 小西信夫:27mass%Cr白鋳鉄 による超硬合金 の鋳 ぐるみ

と組織評価,鋳造工学70(1998)878‑883

4)渡辺貞四郎 :金属被覆鋳造法,鋳物55(1983)381‑3870 5)小林 武,佐治智之 :凝固過程 で放出され る熱を利用 した

鋳鉄 の直接表面硬化処理 に関す る研究,鋳物61(1989)717

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Tabl e3 Lat t i c es pac i ngsf orr e gi on1,2i nr e ac t i on l aye randr e f e r e nc emat e r i al sofWC,Fe3 W 3 C andFe6 W 6 C.

参照

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4.シュー皮のテクスチャー  シュー皮の破断応力の測定結果を表4に、図3に破 断記録曲線を示した。

しかるに今 l 叫 まヤ ソグ呼の向 Lがそれ ほ ど認 め られ なか ったのは,Si C ウィスカーの分散が軌待 されたほ ど均一 にならなか ったか らであ ると思われ る.伸 びと絞

乾式流動N鋳型 445 滋; ′項 ヽ∴ 妻板 (ポンプケーシング 図14 製 確Ⅶ転 ど戊 鋳鉄重量650kg) 11 ロH (l二作億円部品:鋳鉄重量4,500kg) 図15

452 村和43年5月 日 図3 造型 中 の 下 型 立 評 論 図4

SKDll 相当の化学組成を有する高炭素・高クロム鋳 鋼品を製造するにあたり,炭化物生成傾向が Cr より強 い合金元素として V