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教師と子どもの信頼関係に関する研究
人 間 教 育 専 攻 幼年発達支援コース 森 藤 由 喜 子
1 .研究の目的
教育という営みの中で、教師と子どもの 信頼関係が大切であるということは多くの 教師が思うことではないだろうか。
本研究では、教師と子どもとの信頼関係 を築くかかわりの観察・分析、子どもの教 師への信頼感と、子ども自身の自尊感情や 自己肯定感、周囲との人間関係の変容につ いて調査し、考察することを目的とする。
2.研究方法
①子どもの自尊感情の測定
質問紙法 SOBA・SET(近藤,2013)使 用。 A県B市C小学校3年児童対象に 2015年7月と 12月の全2回実施し、自 尊感情の変化を調査する。
② 子どもの自己肯定感に関する調査 質問紙法:井上(2011)の自己肯定感に 関する質問紙使用。同小学校児童対象に 2015年9月と 12月の全2回実施し、自 己肯定感と周囲の人間関係の変化につい て調査する。
③ 教師の行動・態度と信頼感に関する 調査
質問紙法:
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小学生における担任教師に 対する信頼感と担任教師の行動・態度に ついてJ(村上,2013)を使用。同小学校児 童対象に 2015年9月に実施。④ 教師に対する信頼感調査
質問紙法:
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小学生の担任教師に対する 信頼関係に関する調査J(村上,2012)を使指導教員 浜 崎 隆 司
用。同児童対象に 2015年 12月に実施。
⑤ 教師のかかわりエピソード記録 観察法:筆者による教師Tと子ども達 のかかわりの観察。期間:2015年4月
"‑' 12月の各月 1週間の約6週間。記録 を選択理論心理学的観点で考察する。
⑥ 教師へのインタビュー
インタビュー法:観察学級担任である T先生への筆者によるインタビュー。期 間:観察期間中適宜。インタビュー内容 を逐語録し、 KHCoderによって抽出語 や共起関係にある Keywordが含まれる 文を抽出し、選択理論心理学観点と自尊 感情の理論の観点で考察する。
3.結果と考察
T教師への観察やインタビューから、選 択理論心理学の「人間関係を築く 7つの習 慣」の「傾聴するJ
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支援するJr
励ます」「尊敬するJ
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信頼するJr
受容するJr
意 見の違いについて交渉する」を大切にした かかわりが多く見られた。逆に、「人間関 係を壊す 7つの習慣Jである「文句を言うJ
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脅すJr
責めるJr
罰を与えるJr
批判 する Jr
褒美で釣る Jr
ガミガミ言う」など の他人の行動を変えようとするためにとる 言動が見られなかった。12月の「教師に対する信頼の質問紙調 査」では、子どもの教師に対する信頼感平 均値は3.53/4の高い数値が算出され、教 師に対する信頼感が確認された。
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「自己肯定感に関する調査」の結果(図 1.2)
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先生から大切にされている」と感じ る子は、 9月は87%、12月は97%という 結果からも、このクラスの学級の子ども達 のほとんどが、「先生から大切にされてい るJと感じていることがわかる。さらに、先生に大切にされていると思う子の増加に 伴い「学校で仲良くしてくれる友達がい る」と思う子は、 84%から 97%に増加し ている。先生に大切にされていると感じら れるようになった子ども達は、自分が先生 にしてもらったかかわり方で友達に接し、
良好な関係が築かれ続けていることが推察 される。また、自己肯定感に関する項目
「自分のことが好き」と思う子は 65%か ら81%と増加を見せている。これは、教 師や友達に大切にされていると感じる経験 や、近藤(2013)の自尊感情の理論を取り入 れ、共有体験の積み重ねたことで増加した
と考えられる。
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図2 自己肯定感に関する調査 02月)
さらに、 SOBA‑SET(近藤,2013)の測定 により、子ども達の自尊感情の状態がrSBJ r sBJ rSbJ r sbJの4タイプで把握できた(図 3.4)。その子に応じた関わり方をすること で、より自尊感情の安定化を図ることがで き、自尊感情そのものが高まっている。承 認により社会的自尊感情が高まり、学級の での共有体験(体験や感情を共有する)積み 重ねにより、自尊感情の要である基本的自 尊感情に高まりがみられたと考えられる。
図3 自尊感情SOBA‑SET結果 (7月)
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図4 自尊感情SOBA‑SET結果 02月)
4.結檎と今後の課題
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教師と子どもの信頼関係には、選択理論 心理学と自尊感情の理論を活かした関わり が有効であることがわかった。また、教師 と子どもの信頼関係の高まりに伴い、自己 肯定感、自尊感情の高まりもみられた。
今後、学級での子ども同士の相互の信頼 関係を築けるような発展的研究を課題とし たい。