生 徒 ・ 教 師 ・ 保 護 者 が 一 体 と な っ た 学 校 づ く り 一心のつなぎを中心とした積短的な生徒指導の充実ー 高度学校教育実践専攻 学校・学級経営コース 瀬 川 英 樹 1.問題の所在と研究の目的 実習校は,生徒数 366名, 14学級の学校規 模である。実習校のある I町は古くは阿波と讃 岐を結ぶ交通の要所であり,農業も盛んな農村 地帯で、あったが,近年,高速道路のインターチ ェンジができ,地域環境も大きく変化してきた。 実習校には,家庭環境が厳しく基本的生活習 慣が十分に身についていない生徒もいる。その ような生徒の中には,学校生活になじめず,無 気力感があり学習意欲や学力の低下傾向がみら れる者もいる。また,仲間とのコミュニケーシ ョンがうまくとれずに学校での集団生活に適応 できなくなった生徒が,問題行動をおこしてし まうこともある。まわりの生徒たちも,このよ うな生徒とうまくコミュニケーションがとれず に, トラブツレにおちいる場合や,かかわりをも たないようにする場合がある。 現在,実習校における生徒指導は,かつての 学校全体が不安定な状態から,安定した状態へ と変化しつつある。このような状況のときこそ, 積極的に学校運営を生徒指導の視点から見直 し,指導体制の改善を図ることができると考え た。 本研究は,意図的に結んだ心のつながりであ る「心のつなぎ」を中心とした積極的な生徒指 導の充実を図り,生徒・教師・保護者が一体と なった学校づ、くりを目指すことを目的とする。 -1 -実 習 責 任 教 員 兼 松 儀 郎 実 習 指 導 教 員 久 我 直 人 積極的な生徒指導の充実は生徒の自己指導能 力の育成を目指すものであり
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心のつなぎ」 を中心とした生徒・教師・保護者の良好な人間 関係の構築が必要である。この自己指導能力の 育成を図るために,生徒指導の3つの機能(自 己存在感を高める,共感的な人間関係を育成す る,自己決定の場を与える)を作用させること が重要である。 また,保護者と教師はともに生徒の成長を願 っており,協力し合える人間関係を築いていく ことにより信頼関係が深まり,学校運営の改善 にもつながると考えられる。そこで,学校運営 を生徒指導の視点から見直すため,実践研究課 題を「生徒・教師・保護者が一体となった学校 づくり 心のつなぎを中心とした積極的な生徒 指導の充実 」とした。2
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実践研究の枠組み[
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つの視点] 本研究においては,生徒一人ひとりを中心に 個人から見る視点と,生徒・教師・保護者が一 体となった学校づくりという全体から見る視点 が必要であると考えた。 視点、①・(個人から見る視点)r
心のつなぎ」を 一人の生徒を中心として見ることが,社会性を 身につけていく中学生期においては,重要であ ると考える。視点②:(全体から見る視点)
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心のつなぎ」を 「生徒・教師・保護者が一体となった学校づく り」という視点から見る。生徒・教師・保護者 の三者が「心のつなぎ」で結ばれ一体となるこ とで,生徒の成長を促すような生徒指導や支援 を必要とする生徒に対する,きめ細かな指導を 行うことが可能となる。 [ 5つの仮説] 以下の5つの仮説を設け,これに基づいた実 践に取り組むことにより,生徒・教師・保護者 の聞に「心のつなぎ」を生み出し,積極的な生 徒指導の充実を図ろうとした。 仮説①:r
保護者団覧板Jの実施により,保護 者と保護者,教師と保護者,保護者と生徒,生 徒と教師の聞に接点が生まれ,信頼関係を深め る機会となるだろう。 仮説②・「学年教師の5分間シェアリング」の 実施により,教師聞に接点が多くなり,生徒の 情報を共有することで生徒理解が深まり,教師 聞に協働の意識が高まるだろう。 仮説③:r
教室環境へのメッセージの導入」に より,担任の思いが生徒に伝わりやすくなり, 共感的な人間関係が生まれ,生徒が互いにサポ ートし合える人間関係づくりにつながるだろ フ。 仮説④ rQ-Uテスト・構成的エンカウンター の取組Jにより,生徒の自己存在感の高まりや 共感的な人間関係の深化につながり,学級集団 に対する帰属意識や安心感の醸成を促すことが できるだろう。 仮説⑤ 「生徒による「チョボラ活動JJの実施 により,生徒は自己決定の機会が得られ,自分 にできるよい行動を体験することで自己存在感 が高まり,生徒自身の自己指導能力の育成を図 ることができるだろう。 -2-3
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データによg
課題の明確化 学校評価の分析,生徒・教師・保護者へのア ンケート,教師・保護者へのインタビュー,生 徒指導を視点とした生徒・教師・保護者の観 察, Q-Uテスト等によりデータによって課題 の明確化を図った。実態把握にっとめ,課題を 明らかにし,個人から見る視点と全体から見る 視点の 2つの視点から生徒を中心とした生徒 .教師・保護者の三者における人間関係につい て調査し,実践を考えた。4
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実践研究の実施 生徒・教師・保護者の人間関係に焦点をあ て 1年生を対象として 5つの仮説に基づいた 実践に取り組んだ。 (1)保護者回覧板・生徒のよさに視点をおい て,生徒・教師・保護者の聞に接点を生み出し, 信頼関係を深める機会として,保護者回覧板第 1号を計画し配布した。保護者回覧板第 1号に 対する保護者からの意見として,学校での子ど もの姿を知りたいというニーズがあったため, 第 2号では教師からの情報をもとに,学校での 生徒たちの姿を家庭に発信した。保護者回覧板 を通して,家庭からの情報発信と,学校からの 情報発信を行うことで,家庭と学校とが相互に 呼応し合うものとなった。保護者回覧板実施後 の第1回,第2回のアンケートの結果,保護者 回覧板に対する意見は肯定的なものが多く,継 続を支持する意見が多かった。 ( 2)学年教師の 5分間シェアリング:生徒の よさを教師が共有し,生徒理解を深め,協働の 意識を高めることを考え,シェアリングを計画 した。フィーノレドワーク Iでは,放課後に職員 室で実施することとした。しかし,放課後には 部活動の指導もあり,放課後といえどもシェアリングを行うタイミングの取り方が難しかっ た。そこで,フィールドワーク Eでは,給食後 に,生徒の身近な場所に教師が集まりシェアリ ングを実施することにした。生徒の身近な場所 で給食後に設定することにより,担任は給食指 導から連続してシェアリングができ,その後の 昼休みの生徒指導にもつなげることができた。 生徒や担任の動きに合わせることで,複数の教 師で生徒を見守る動きにつながった。 (3)教室環境へのメッセージの導入:学年全 体での実施計画からモデ、ル学級での実施へと変 更した。担任の思いを生徒に伝え,共感的な人 間関係を生み出し,生徒がサポートし合う意識 を醸成することを目指した。担任の思いが,日 常生活につながるメッセージとなり,生徒の中 には行動に移せる者もいた。実習期間終盤では 生徒自身からメッセージの言葉が提案されるな ど,一部の生徒には興味をもって受け入れられ た。しかし,学習に関するメッセージについて は拒む傾向が見られた。また,担任には,生徒 にメッセージを発信することで生徒を注意深く 見つめる機会が増えるなどの変化も見られた。
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テスト・構成的エンカウンターの 取組目Q
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テストの実施により,観察法や面 接法では見えなかった生徒の内面を客観的に捉 え,学級集団への帰属意識や安心感の醸成を促 すため計画した。フィールドワーク IにおいてQ
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テストを実施し,生徒の満足度から学級 の状態を理解しようとした。フィールドワーク Eでは,Q
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テストの結果をもとに,実施に 向け必要な資料を選択し担任に配布した。しか し,実習期間中に学級での実践までには至らな かった。 (5 )生徒による「チョボラ活動J:生徒に自 己決定の場や活躍する機会を与えることで,自 己指導能力の育成を図ることを考え計画・実施 した。生徒会役員,生徒会執行部員を中心とし た朝のあいさつ・朝の清掃を実施した。この生 徒の活動は,管理職を含む教師の登校指導とあ わさり,教師と生徒双方にとって励みとなった。 フィールドワーク Iでは,一部の部活動生徒に よる草抜きへと拡大が見られた。フィールドワ ーク Eでは 3年生中心の活動から 1・2年生 中心の活動へと引き継ぐため,朝のあいさつ・ 朝の清掃の体験期間を設定した。活動に参加し た 3年生の生徒からは,友人との人間関係があ ったから継続できたという意見があった。5
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成果と課題 (1)保護者回覧板後の第1回,第2回保護者 アンケートの結果では,保護者団覧板の実施に ついて,肯定的意見が寄せられたことから,保 護者が学校に対する関心をもっきっかけづくり になったと言える。また,保護者のもっている 情報を吸い上げる機会にもなった。学校や家庭 における生徒のよさを,教師と保護者が共有す ることで,信頼関係を深める機会になったと考 える。しかしr
保護者回覧板のことを保護者 間で話題にするようになると思うjでは否定的 な意見も多くあり,保護者回覧板が保護者と保 護者を結びつけるものになるのかは明らかにな らなかった。 -3 -( 2)シェアリングによって教師閑でコミュニ ケーションをとる機会になった。シェアリング を通じて生徒の情報を共有することによって, 複数の教師が生徒のよさを認める機会ができ, 生徒の自己存在感を高めることにつながった。 シェアリングの場所を生徒の身近に設定し,ま た,担任の負担を考え昼休みに実施したことに より,教師聞に協働の意識が高まりつつある。(3 )学級にメッセージを導入することによっ て,担任の思いが生徒に伝わり共感的な人間関 係の育成につながった。また,生徒自身がメッ セージを考えるなどの動きがあり,自己決定の 機会にもなったと考える。しかし生徒と生徒の サポートし合う人間関係づくりにまでは至らな かった。 (4) Q-Uテストの実施により,学級や生徒 の状況については分析できた。生徒理解には有 効であり,日常の指導において,きめ細かな指 導が可能となった。しかし,構成的エンカウン ターの実施については準備にとどまった。 (5)チョボラ活動の実施については,活動に 参加した生徒は活動に対して肯定的な意見を示 した。実際の活動において,生徒は自己決定す る場面や共感的な人間関係を促す機会があり, 活動に参加する生徒と登校してくる生徒の両者 が自己存在感を得る機会となったと言える。