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フッ素系高分子強誘電体における構造欠陥に関する 研究

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Academic year: 2021

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フッ素系高分子強誘電体における構造欠陥に関する 研究

著者 前田 一彦

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 14

ページ 180‑182

発行年 1993‑03‑25

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1732

(2)

氏名。

(本

籍 )  前          彦  (東 京都

)

学 位 の種 類 博 士 (工 学

)

学 位 記 番 号    工博甲第   67   号 学位授与の日付   平 成 4年 3月 25日 学位授与の要件    学位規則第 4条 1項 該当

研究 数 の名称    電子科学研究科   電子材料科学専攻

学位論文題ロ    フッ素系高分子強誘電体における構造欠陥に関する研究 論文審査委員   (委 員長

)

教 授   稲 垣 訓 宏         

教 授 岡 本 尚 道   教 授 秋 山 鉄 夫 助教授   石     賢   司     助教授   田   坂     茂

論 文 内 容 の 要 、旨

一般に ,天 然高分子では規則正 しい一次構造

(化

学構造及び配列順序 )に よって高次構造が決定 さ れ ,様 々な機能が発現する。 しか し ,合 成高分子では ,重 合の際に一次構造に欠陥が生 じ ,物 理的性 質が変化 してしまう。たとえば ,結 晶性のフッ素系高分子 は ,共 重合によって極性結晶が安定化する ために強誘電性が発現するが ,こ の場合 も一次構造上の欠陥がその性質に大 きく影響する。特に ,連

鎖秩序の乱れは強誘電性を支配する大 きな要因と考えられる。 しか し ,こ れまで構造欠陥と強誘電性 の関係は ,ほ とんど明 らかにされていない。

本論文の目的は ,積 極的に欠陥

(共

重合成分 )を 導入することによって ,フ ッ素系高分子の強誘電 性に及ぼす構造欠陥の影響を明 らかにすることである。このような結晶性の共重合体は ,そ の種類に よって ,両 成分が結晶性の場合に共結晶化を引き起 こし単一の結晶をつ くる同形現象型 と ,主 成分の 結晶性を共重合成分が阻害する結晶性低下型の 2つ に分類できる。 したがって ,こ 2種 の観点か ら 結晶内および結晶外の構造変化 と強誘電性の関係を検討 した。

第 1章 では ,結 晶性高分子の高次構造発現の要因 ,共 重合体の結晶構造の研究に関す る歴史的背景 およびフッ素系高分子の性質 と強誘電性の発現について概説 し ,本 論文の着目点および研究の流れを 明確にした。

第 2章 では ,ま ず同形現象型 として従来から研究されてきた P(VDF― TrFE)に おいて ,連 鎖分 布が強誘電転移現象に及ぼす影響を考えた。その結果 ,モ ノマーの連鎖分布によってキュリー点は

20

℃以上変化 した。この考えを基本 として ,キ ュリー点を持つ新 しい強誘電性高分子の分子設計を行 っ

‑180‑

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た。すなわち ,ヨ ンフォメーションを変化させずに結晶のパ ッキングを低下させるといづた構造制御 をフッ化 ビニル (VF)系 高分子に応用 した。その結果 ,P(VFttTrFE)に おいて約 50/50の 組成域 でキュリー点 (2次 の相転移 )を 伴った強誘電性が見い出された。キュリー点を持つ高分子強誘電体 としては VD聴 終に次 ぐ発見である。

第 3章 では ,PVDFの 高次構造における異種分子の影響をヘキサフルオロアセ トン (HFA),  ヘキ サフルオロプロピレン (HFP)を 用いて検討 した。 P(VDF― HFA)は ラジカル重合性 として も興 味深 く ,反 応性比および一次構造上の HFAの 配列状態を考えた上で結晶性 について検討 した。その 結果 ,HFAが 結晶中に取 り込まれ部分結品化 しやすい不安定な状態をつ くることがわかった。 これ に対 して P(VDF一 HFP)で は ,積 極的に HFPが 結晶中に内包された。これ らの共重合系 は ,結 晶 性低下型に分類され比較的透明性が高いため ,ブ レンドすることによって光学的に均一構造 をとる。

そこで ,応 用 として P(VDF― HFA)・ アクリル酸エステル混合系の相溶性を検討 した。その結果

,

相分離温度 と混合系のガラス転移点の間に一定の関係が得 られた。

第 4章 では ,異 種分子の導入を VDF一 TrFE共 重合体に対 して行 い , 3元 共重合体 の強誘電性 に ついて考えた。この際 ,Ruland法 によって無秩序パ ラメータを算出し ,強 誘電性 と結晶性の関係を 考察 した。その結果 ,HFAは VDF一 TrFE結 晶中に存在できないが ,HFPI瑞 晶中に取り込まれキュ リー点を低下させた。この場合 ,HFA系 の無秩序パラメータは P(VDF― TrFE)よ りもわずかに低 下 したが ,HFP系 では増加の傾向を示 し結晶の秩序性が低下 していることがわか った。 このような 分子結合性の強誘電体では ,成 分の体積の効果カツト 常に大きいことが明 らかとなった。

第 5章 では ,本 研究で使用 した材料の応用研究 として ,透 明性の向上による光ファイバー鞘材およ びキュリー点の低い強誘電体による排熱発電の将来的な可能性を示 した。

本研究を強誘電性高分子の立場から見ると , a)P(VDF― TrFE)に おいて連鎖分布が強誘電性 に大 きく影響する。 b)新 しい強誘電性高分子 :P(VF一 TrFE)の 発見 , C)HFPに よつて強誘電 転移点が大 きく低下できるなどが明確になった。また ,本 研究をフッ素系の結晶性高分子の構造制御 の立場か ら見ると ,フ ッ素系高分子は欠陥の導入によって多彩な構造制御が可能であり ,同 形見象Щ 結晶性低下型の 2種 類の結晶変化を積極的に取 り入れることで多様な機能発現が期待できることがわ かった。

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論 文 審 査 結 果 の 要 旨

この論文は ,フ ッ素高分子強誘電体においてこれまで不明瞭であった一次構造欠陥と結晶の性質と しての強誘電性の関係を系統的に研究 したものである。

結晶性高分子における一次構造欠陥と高次構造の関係は ,従 来より研究されていたが ,本 質的に高 分子結晶内には欠陥が多いため X線 口析等では十分に評価することはできなかった。強誘電性高分子 では ,キ ュリー点 ,誘 電異常等で結晶の状態を熱的および電気的に評価でき ,し たがうて構造と機能 の向自からアプローチできる利点がある。

論文では ,ま ず第 1章 で ,結 晶性高分子の高次構造,こ れまでの共重合体の結晶性高分子の研究概 要およびフッ素系高分子強誘電体について概説し ,高 分子強誘電体の開発の指針と,こ の理論的背景 を論 じている。特に ,共 重合による一次構造欠陥が結晶高次構造に及ぼす効果を指摘 し ,そ の効果を 同形現象型と結晶性低下型に分類 して議論 している。

第 2章 から第 4章では ,同 形現象型 ,結 晶性低下型の共重合体を合成し順次検討を進めている。ま ず ,フ ッ化ビニルデンートリフルオロエチレン (VDF― TrFE)共 重合体において連鎖分布が強誘電 性に及ぼす効果を明らかにしている。従来よリキュリー点が明確に示される高分子強誘電体は VDF

系共重合体のみであったが ,欠 陥の導入による結晶構造制御の結果フッ化 ビニル系共動創本において

,

キュリー点を伴った強誘電性を見い出している。次に ,PVDFの 高次構造に対 して ,異 なる繰 り返

し単位からなる一次構造欠陥の量と質がどのように効果を発揮するか明らかにしている。この手法を VDF一 TrFE共 重合体に対 しても発展させ ,Ruland法 による結晶の質の評価か ら構造欠陥と強誘電 性の関係を考察 している。これらの実験より ,強 誘電性には ,欠 陥分子のサイズ ,結 合長 ,配 列が大

きく作用することを明らかにしている。さらに ,新 しい強誘電性高分子の開発に成功 している。

第 5章 では ,本 研究で使用 した材料の応用研究として ,焦 電センサー ,光 ファイバー鞘材 ,お よび 排熱発電フィルムヘの可能性を示 し,ま た第 6章 では本論文を総括 している。

以上 ,本 論文は高分子強誘電体の一次構造欠陥が ,結 晶性や強誘電性にどのように作用するかを系 統的にまとめたものである。これらの結果は ,高 分子強誘電体の強誘電性発現機構に重要な知見を与 えるだけでなく ,一 般の結晶性高分子でさえ ,欠 陥分子による機能性制御が有用であることを示 して いる。よつて ,本 論文は博士論文として十分価値のあるものと認定する。

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参照

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