立位姿勢における下腿筋の力量感覚に関する研究

理学療法学 　第 25巻 第 5 号　 283

〜

291 頁 （ユ998イ_の

1996

_年度

研 究助

成論文

立

位

姿

勢

に

お

け

る

下 腿 筋

の

_{力 量 感}

_覚

に

_関

_す

る

研

究

＊

森

岡

　

周

）

宮 本 省

rD

高

田

　

祐

2〕

敷

地

雄

一

1）

弘 瀬

大 士

2）

口

高

み ど り

2） 要 旨

　 本

研

究

の _目

_的

は， 立

位姿勢時

にお け る足 底か らの

負荷

に

対

す る

一

卜

腿 筋

の

_筋活動

量 と平

均

パ ワ

ー

_{周 波 数}の_経

_時的変化

を

分析

し， それ らの

結

果か ら

筋

の 力 量感

覚

にっ い て

考察

するこ とで ある。 対 象は

，

健 常 者

5

名

，

片 麻 痺 患 者

5

名と し た。 方 法は

，

、

7

：位 姿勢 時におい て反 力を増 大さ せ る

自作

装 置 を 用い

，

表 面 筋 電 計に て

240

秒 間

，

前 脛 骨 筋 と腓 腹 筋の筋 放 電 を 記 録 し

，

5

秒 間 毎の積 分 値と

’

［え_均パ ワ

ー

_{周 波 数}を求め

，

変 化 形 態を観 察し た。 健

常者

におい て

，

前 足

部負荷

に お け る

腓

腹 筋の変

化

は

，測

定 開 始 値に比べ _{最 終 値}の筋 活 動 量が増 加 し

，

平

均

パ _ワ

ー

周 波 数は減 少 し た。

後

足

部負荷

にお け る前 脛

骨筋

の

変化

は， 測

定

開

始値

に比べ 最

終値

の

筋活

動轂 が

増

加し

，

平

均

パ ワ

ー

_{周 波}

数

は減

少

し た。 こ れ らの

結

果は

，筋疲労

によ り， 同

一

一

_負荷

_量 を重 く感じたこ とに よる筋の 力 量感 覚 調 節 要 因と問 接 的に示 唆され た。 し か し

，

片 麻 痺 患 者 におい て は

，

前 足

部負荷，後

足

部負荷

と もに

筋活動

量

，

’

IZ

均

パ _ワ

ー

_周

_{波 数}の _変

_化

は み られ な く

，

卜腿 筋の力 鼠感 覚が障 害されて い る こと が推 測さ れ た。 キ

ー

ワ

ー

ド

　

ウ

．

位 姿

勢

，

ド

腿

筋

， 力 量感

覚

は じ め に 　 我々 ヒ ト は

，

重いと か軽いとい っ た

“

蠱 さ

”

を 感 じ と り，

常

に抵 抗 力に拮 抗 する筋 出 力 を 調 節し てい る。 特に

，

姿 勢 保 持に関 して も床か らの

抗

力 や反 力に対 し

，

適 切な筋 出 力を発 揮 する こ とに よ り対 応して い る

。

こ の よ う な適 切な筋 出 力を発 揮 し

，

iF

しい

_動

_作を

行

う ため に は， そ れに必

要

な

努

　v

　

’

‘

Sense　 of 　Eff（冫rt

”

　りf　Tibialis　Antcrior　 aiid 　Gas

．

　 t「ocnernius 　M 凵scLcs 　irL　UprightSしaエlding 　PostLlre

i） 高 知 医 療 学 院 　工凵どγ療 法 学 科

　 〔〒 781

−

〔〕27〔〕尚知 リ1匙高 知 市 長 浜6012

．

−

1）

　 Shu　Morのka

，

　 R1γT

，

　Shozu　Mjyヒlrnol

．

o

，

　RPT

，

　Yuichi

　 S

．

　hiltichi

，

　 RPT ： Dept

，

　of　Physical　 Therapy

，

　 Koehi

　 School

　

of

　

AIlied

　

Ilealthand

．

X

’

ledica且Professions

2）愛 右 病院 　リ

ハ

ビリテ

ー

シ ョ ン科

　 Yu　Takata

，

　RPT

，

　Taishi　Hirese

，

　RPT

，

　Midα

’

i　Hidaka

，

　 RPTIDept

．

　of　Rehubilltation

，

　Aしage 　HuspitcaE

力の大き さ を

iE

確に知 覚 し な け れ ば な ら ないk）。 こう した運 動 制 御は

，

物 体の

“

重さ

”

に対 して適 用す る

カ

の 量 を 認

識

す る感 覚に

依存

してい る。 こ れは， 筋の力 雛感 覚， ある い は努 力 感 覚 （sense of　_{effort ） と呼 ば れ}

，

_{運 動 感 覚 　（}

kinesthestic

sensibility _）の_遠心性メ カニ ズム の _中に位1晋づ け ら れ て い る2），，

　一

方

， Roland

ら3）は

，

いわ ゆ る深 部 感 覚 を（

1

）

受動的

運

動

感 覚， 〔

2

）

能

動 的

筋

運

動

の 感 覚， 鋤空

問

における肢の位 置の感 覚

，

  随 意 収 縮 時に認 識さ れ る力の_{感 覚}の

4

型に分

類

して い る。 その

中

で

第

4

［天

1

_子は scnsc 　of　

force

あ るい は apprcciation of　heaviness 　and 　resistancc と も呼ば れてお り，

筋の力 量 感 覚に柑 当す る と考え ら れて い る。

NII-Electronic Library Service

284

理学療法 学　第

25

巻 第5号 置づ け られ な が らも，

未

だに 理

学療法分野

におい て の報 告は な く

，

深 部 感 覚の評 価の中に も存 在 し て い ない_。 そこで

今

回我々 は，

健常者

と

片麻痺

患 者を対 象に， 特に立位 姿 勢 時の 前 脛 骨 筋と腓 腹 筋 の力 量 感

覚

に限 局 し

，

以下の _{実 験}を行っ た_。 対 象と方 法

　健常男性

5

名 （

20 〜 25 歳）

と

補装具

な しで

長

時 間南位 可 能な片

麻痺患者

5

名

（

50

〜

73

歳

） を 被 験 者とした。 健 常 男 性の 平 均 身 長は

173

　cm

，

平

均体

重は

70．

6kg

で あ り，

片麻痺

患

者

の

平均身

長は 玉

56

　cm

， 平均体重

は

54．

2

　

kg

であっ た_。 　 実 験 課題は静 止立 位 姿 勢 時の_{足 底}か らの _{負 荷}に

対

す る

等

尺

性収縮

に よ る連

続

的な筋の力量調

節

で あ る。

　健常者

は閉眼 によ る

10cm

開

脚

立

位，

　 片

麻痺

患 者は装 具 非 装 着

，

開 眼に よ る

10cm

開 脚 立 位を とり， テ コ の原理 を も とに

考案

し た

特

殊な 実 験 装 置 （図

1

）を用い

，

足 底か ら負 荷 する よ う に した。

　実験

に

使

用 し た

板

は

長

さ

90

　cm ，

　幅 15

cm

_，

_高さ

2cm ，

重さ Ikg の ベ ニ _ヤ

製

の もの で ある

。

なお

，

足 部の 定 点か ら重 りの中心まで の距 離は

60cm

と

定

め た。

実験

は

前

足

部負荷 （

図

1−

a_）と後 足 部 負 荷 （図 レ

b

）の

2

条 件と した。

　健常

者に劃 する負 荷 量は被 検 側に

7kg

と規 定 し， 非 被 検 側に はヘ ル ス メ

ー

_タを置き ，

被験者

は 測 定 期 間 中

，

常 時左右 均 等の

_荷

_重量 を

維持

するよ うに努め

，

左 右の重 心 移 動を行 わない よ うに した

。

ま た

，

片 麻

痺患者

に

刻

す る

負荷

量 は， ヘ ル ス メ

ー

タに て体 璽の

’

卜分を維 持で き た 上で立 位 保 持 可 能 な

最

大の重 最 としたc， なお

，

こ の際の重 心 移 動に 関 して は

，

予 備 実 験 と して， 実 験 装 置 下に重心動

揺計

を

置

き上 記 実 験 を

1

分 間

，

前後

，

左 右の時 間

ヘ

ル ス メ

ー

a ： ・ ンピ

_i

−

_L2

「A

−

D変換

L

− 　 EMG

』

具

コ

：後足部負 ｛lr 図 1　 実 験 設 定

＿

’

ヘ

ル ス メ

ー

タ

的変

化を追っ た が

，

ヘ _{ル スメ}

ー

_タで

体

重_の

楽分

_を 維

持

すれば， ほ ぼ前 後左右の足 圧 中 心の変 化が な い こと を健 常 者

1

名で確 認 した。

　

筋 活 動の

_導

出 に は，

表

面 筋 電 計

Mega

　

ME

3000P

を用い_{， 前}

_処

_置し た前 脛 骨 筋 と腓 腹 筋の

筋腹 ．

Ll

（

健常者

は石 側

，

片

麻輝

患

者

は

_麻痺側）

に 表 面 電 極 を貼 付 し，

240 秒間 （

サ ン プ リン グ周

期

1000msec

） 記 録し た。 さ らに

，

健常 者の 分 析で は〒

E

規 化 （normalize ）

　

し た

値

にて比

較

す る た め に

， 5

秒

間

の

_徒手抵抗

に よ る最 大 等 尺 性 収 縮 量 （maximal 　voluntary contraction ；　以

一

ド

f

｝厘

．

　

V

．

C ）

も

E

’

U

録 した

、

，

ま た，

被験者

の 主

観的

な感 覚 変

化 も観

察

し た。

　分

析 は得ら れ た波 形か ら

， 5

秒 闇 毎の _{積 分 値}

（

lntegrated

　

Electromyography

_；以 下

LE ．

　

M ．

G ）

と

高

速フ

ー

リエ

変

換によ る平均パ _ワ

ー

_{周 波 数}

（

Mean

　of　_power 　

frequoncy

_{；以 下}

M ．

P．

F ）

_を

求め

，

さ らに

健常者

の

LE

．

M

．

G

につ い て は，　

M ．

V ．

C

を 100 ％ と し 正規 化 （％ ）　した、， そ の際

，

測 定 開 始

5

秒 間の値を開 始 値

， 235 〜 240 秒

間の 値 を 最 終 値 と した。 結 果

1 ．

前 足 部 負

荷

1 ） 健常者の _{筋 活 動 量}と

M ．

P．

F

（表

1

）

　

腓 腹 筋の変 化のみ認め ら れた。

腓

腹

筋

の

変化

は， 健 常 者

A

では

1．

E ．

M ．

　

G

を 正 規

化

し た

開始値

に

対

し

，

最

終

値は

5，

4

倍 筋 活 動 量が増 加し

，M ．

P ．

F

は

82

　

Hz

_{減 少 し怠}

、

_{健 常 者}

B

_{で は開}

_始値

_に

_対

_し ，

最

終値

は

2．

2 倍筋活動

量が

増加

し

，

MP

，

F

は

39

　

Hz

減 少し た。 健 常 者

C

では開 始 値に対 し

，

最

終値

は

3

．

4 倍

筋 活

動

鼠が増 加

r

し，

M

．

P

．

F

は

61

　

Hz

減 少 し た。 健 常 者

D

で は開 始 値に対 し， 最 終 値は

2．

4

倍筋

活

動

匿が増 加 し

， M ．

P ．

F

は

27

　

Hz 減少

_した_。 健 常 者

E

では開 始

値

に

対

し， 最

終値

は

2．

O 倍筋

活

動

量 が

増加

し

，

M

．

P

，

F

は

24

　

Hz

_{減 少} し た。

　

これ ら

5

名の 平 均 値で は

，

開 始 値 に対 し

，

最 終 値は 2

．

5

倍 筋 活 動 吊が増 加 し

， M ．

P ．

F

は

45

　

Hz

_{減 少し} た。 なお

，

平均 値の経 時 的 変 化 を 図

2

に示す。

　

主観 的な感 覚 変

化

と して は

，

5

_名

と も測

定

開

始

N工 工

一

Eleotronio _Library

285 立位 姿勢に お け る ト腿 筋の力 量 感覚に関する研究

．

ゆ 絶 P 韋 e 誕 禽 鴎 癌 卜 誰 調 継 滋 掣 潔 畷 　 　

．

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鴎

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NII-Electronic Library Service 286 理学 療法学 　第

25

巻第

5

弓 ％ 前 足 ・。 部

負

荷

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_{晶 島 誌 主島晶 島}

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　 　 　 　 畧 爲累 咢 躊＄ 揮 鴇田 雷凋 畧鶉講黒 雲 輯輯 雪 昌澱 禺 　 　 　 前 脛 骨 筋

一

｛ 一 _{筋 活蝋} 　 　 　

一一一

m

−一

_平士勾ノXワ

ー

−

1剤打艾数 図 2　健 常 者の筋 活 動 量と平均パ ワ

ー

周波数の_平均値の_{経 時 的変化} 後 約

2 〜 3

分 後か ら

‘

徐 々 に重く なっ て きた

”

と い っ た言 葉に よ る表 現が み られた

。

2 ）

片

麻痺

患

者

の

_筋活

_{動 量}と

M

．

P

．

F

（

表

2

）

　 片 麻 痺 患 者

A

， B

の前 脛 骨 筋と腓 腹 筋の

LE ．

M ，

G

お よ び

M ．P ．

　

F

の

_著

_明な

変化

は認め ら れ な かっ た_。 ま た

，

残る

3

例におい て は 中途で課 題 遂 行 不 可 能 と な

っ

た （片 麻 痺 患 者

C

：_{測 定}

_開始後

47

秒

， 片麻

痺 患 者

D

：測 定

_開

始 後

48 秒

_，

_片麻痺

患者

E

：測

定

開

始後

ll

秒）

。

2

．

後 足 部 負 荷

1

） 健 常 者の筋 活 動 量と

M ，

P ，

F

（表

3

）

　前

脛

骨筋

の

_変化

の み 認め ら れ た。

前

脛

骨筋

の

変

化は

，

健 常 者

A

では開 始 偵に刻 し

，

最 終 仙は

1．

5

倍筋

活 動 最が増 加 し

， M ．

P ．

F

は

29

　

Hz

減

_少

_{し た} 。 健

常者

B では開 始 値に

対

し， 最

終値

は 1

．

5 倍筋活

動量 が増加 し

， M ．

P ．

F

は

45

　

Hz

_{減 少}し た、， 健 常 者

C

で は開 始 値に対 し， 最 終 値は

L8

倍 筋 活 動 量 が増 加 し

， M ．

P．

F

は

21

　

Hz

_{減 少し}たc， 健 常

者 D

では開

始値

に

_対

し， 最

終値

は

2，

2

倍 筋 活 動 量が増 加し，

M ，

P ．

F

は

15Hz

減 少 した。 健 常 者

E

で は

開始値

に

対

し， 最

終

値は

2．

1

倍 筋 活 動 量が増 加 し

，

M

．

P

．

F

は

25

　

Hz

減 少し た

。

これ らの

Y

均 値で は

，

開 始 値に対し，

最終値

は

1．

7

倍筋活動

量 が増 加 し

，

M

．

P

．

F

は

27

・

Hz

_{減 少し た} 。 なお

，

平 均 値の経 時 的 変 化 を 図

2

に示 すc

，

　

主

観的

な感

覚変

化と しては，

5

名とも前 足 部 負

荷

と同じく測

定

開 始 後 約

2 〜 3

分 後か ら

“

徐々 に 重 くな っ て き た

”

とい っ た言 葉_に よ る表 現が み ら れ た。

2

） 片 麻 痺 患 者の筋 活 動 量 と

M ．

P．

F （表 4 ）

　

片 麻 痺 患 者

A

，

B

，

C

の

前

脛

骨筋

と

腓腹筋

の

1

．

E

．

M

．

G

お よ び

M ．

P ．F

の著 明な変 化は認め られな かっ た。 残る

2

例に おい ては巾途で

課

題 遂

行

不 可

能

と な っ た

（

片

麻 痺 患 者

D

：_{測 定 開 始 後}

107

_秒

_，

J

　’r

』

麻痺

患

者 E

：_{測 定 關 始 後}

42

_{秒 ）。}

考

察

　随

意 運

動

に よ る

身休

の

_保持

や

移動

とい っ た運 動 制 御には筋の _{収 縮 力}が必 須であるが

，

環 境に適 応 N工 工

一

Eleotronio _Library

287 立 位 姿勢にお ける

．

．

卜腿 筋の力 量 感 覚に関す る研究 …

臣

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齪

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．

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，

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NII-Electronic Library Service 288 理学療法学 第

25

巻第

5

号 した筋 山 力を発 揮 する神 経 生理学 的 背 景に は意 図 的な努 力

，

すな わち筋の 力量 感 覚が存 在 して い る と考え ら れてい る。 その

際

， 重 力や

外

的

抵抗

に

対

して筋 出 力 を どの程 度 発 揮 すべ _きか といっ た力 量 を見

積

も る と き

，

その運

動指令

は運

動

記

憶

を

前提

と しており

，

筋 出 力 応 答 と して は予 測 的なフ ィ

ー

ドフォ ワ

ー

ド制 御 と回 帰 的な フ ィ

ー

ドバ _{ッ ク制 御} の _{両 者}が関与す る4）。

　

こ の

_筋

の力 量 感

覚

を司る神

経

生理学

的根拠

と し ては

，

筋 紡 錘

，

ゴル ジ腱 器 官

，

皮 膚 受 容 器の_{寄 与} が判 明して いる。

「

そ して， そ れ らの 入 力

信

号は二 っ の用 途に使 われるとされてお り，

一

_{つ は現 在 進}

行

して い る

筋

活 動 を 調 節 し

，

も う

一

方は将 来 実 行 する た めに運 動 記 憶の

一

部に

蓄

え ら れ る と

考

え ら れて き た5

−

8）。

　

これに

対

し て

McCloskcy

は

，

　

自 身が被 験

者

と な り

，

足 趾の

_長母指

_屈

_筋

_を

_麻

_{酔 下}で 切 断し

，

そ の腱に糸を か け

他動的

に

伸張

し た

際

腱

が

切

り

離

さ れ

動

かないにもか か わ らず

，

母 趾が 曲 げら れ た よ う な錯 覚が生じ た とい う

実験結

果を

報

告した9）。

　

これは関 節 運 動が発 現 し なくともそ の筋が

生

体

内

で

伸張

さ れ れば，

筋

紡 錘か らの運 動 感 覚が意 識さ れ るこ と を意

味

してい る。

筋紡

錘の la

_群

イ ン パ ル スが 運 動

感覚

に

寄

与してい る こと は

Goodwin

ら1°）に よっ て も明らかに されて いる が

，

実 際 的に

Ia

群の

変

調に

対

し

， 外部

環

境

の

_抵

抗 変

動に伴 う変 調 分を取 り 除 く必 要 性か ら

，

McCloskey

ら1】）は，　

fusimotor

　

drivc

レ ベ ル か

らの

_随伴

発 射 （corollary 　

discharge

）

が

大

脳

皮

質の_{運 動 野}か ら

感覚

野へ

伝

達_{さ れ}

，

この運 動 指 令 と末 梢か らフ ィ

ー

ドバ ッ ク さ れ る

Ia

群イ ン パ ル ス との 間で減 算 処 理が な さ れて い るの で は ないか と す る

筋

の

_力

_{量 感 覚}の メ カニ ズム を発 表して いる。 さらに

，

随 伴 発 射に関 しては

，肢

の運

動覚

や

位置

覚

へ の

_寄与

も推 察さ れており9 ）

，

重さ は皮 膚の圧 感 覚 信 号と と もに，

筋

や腱 愈 覚 信 号や運 動 指 令の 随 伴 発 射との _兼ね合い で不 平 衡

知覚

さ れて い る1）。 つ ま り， ヒ ト は こ の身 体 各 部 分の 不 平 衡 感

覚

を

統

合して， 身 体 中 心の空 間 位 遣を認 知 して いる 12）_と 考え ら れ る。 し た がっ て

，

立 位 姿 勢 調 節とい う抗 重 力 位で 平衡を保つ

場合

に も

筋

の _{力 量 感 覚}は欠か せ ない要 因であるといえる。

　

McCloskey

ら13）は

，

今 回の 我々の 実 験 とほ ぼ

似

た

形

で

筋

の _{力 量 感}

_覚

にっ い て

報告

してい る が

，

彼 ら は上 腕二頭 筋に対 し持 続 的な等 尺 性 収 縮 を加 え た

場合

，

筋

は

疲労

を起こ し， な お も

負荷

を

続

け た と き， その負 荷に対し持 続 する力 を発 生させ続 けるため に は随 伴 発 射 を 伴っ た運 動 指 令が時 間 と ともに増

_強

し， その た め同

一

_重

暈

め

物体

が

重

く

感

ずる ようにな ること と

，

そ

_れ

に対 応し た

_形

で

_筋活

動 量 が 増 加 するとい _{う結 果 を得}てい る

。

本 実 験に お け る正

常

入の

_結果

にお い て も， 同

一

_負荷

_量の 反 力に対して 411

_徐

々

た

_{重 く}な っ て き た

”

とい う主 観 的な意 識 変 化

1

こ_{対 し}

，

_{結 果 的に筋 活 動 量 を 増 加さ}

 

た と

yy

う

再

現

性

の

_高

い _現

_象

を

Closed

−

kinetic

な

状

態

で の

．

．

ド腿 筋で認めた。 しか しなが ら

，

本 実 験 ス タ イル に おいて は

，

あ くまで も表

面筋

電

計

に よ る

筋放

電の

_変化

とい う現

象

か らの

_筋

の

_力

量感

覚

の変 化と しか捉える こ と ができない こと か ら

，

末

梢

メカニ _ズ ムで あ る

筋紡

錘か らの

la

_群

お よ び

fi

群 感 覚 人 力 信 号や中枢メ カニ _ズム であ る随 伴 発 射 の頻 度 を 明らかにすること は困 難であり解 析

．

ヒの

限界

が あっ た_。 こ の

点

に

関

して は_，

末梢

メ カ ニ ズ ム であ る

筋紡

錘か らの 人

_力信号

が

極

め て

_複雑

な

自

動 調 節 機 構 （サ

ー

ボ機 構 ）に よ り調 節されて おり

，

筋

の力 量 感 覚 という

…

種の意 識 判 別 を 伴う心理的 要 因との _関

_連

_性を筋

放

電か ら

解析

することの限 界 と捉え るこ ともで きる。

．

一

一

方

，

中枢メ カニ ズ ム と さ れ る

前述

し た

随伴

発

射

と

末梢

か らの イ ンパ ル ス との閙 に発 現 する減

算 処

理

機 構

に関 して も

，

KelsoL4

）_{に よ} りフ ィ

ー

ドフ ォ ワ

ー

ド制 御として の 運

動野

か ら感

覚野

へ

向

_{か う}

出

力 と_γ

系

を

介

_{し た}

筋

紡錘 か らの

_自

己

受容性

回 帰フ ィ

ー

ドバ ッ ク との減

算

処 理

概

念が提

案

されているが

，

これ も無 意

識

下 で の

自動

調

節機構

であ り， 現

時点

で は

仮説

の

域

を 出 ず

，

本 実 験で の立 証は困 難であっ た_。 し た がっ て_，

_今

回の

_結果

は筋の力 量 感 覚の メ カニ _ズム の実 証 とい う よ りも

，

その_{力 量 感 覚}の_{経 時 的 変 化}を聞

接的

に

捉

え た

知

見であ る とい え る。 し か し

，

こ の 意 味が明ら かにさ れるた めに は， さ らに筋 疲 労と の区 分 ヒの曖 昧さがク リア される必 要がある。 N工 工

一

Eleotronio _Library

立 位 姿 勢にお ける下 腿 筋の力 量 感 覚に関 する研 究

289

　

通

常，個人

が

持

ち

得

て い る最 大 筋 力 を 発揮 しな い うちに

，

長 時 間の持 続 収

縮

のた め

筋疲労

が

出

現 し た

場合

，

多

くの運 動 単 位の動 員が起 こる可 能 性 がある15 ）。 ま た

，

ff

巻ら 16＞ は

最

大 以 下 負 荷での随 意 運 動で は

，

筋の構 成す る すべ _{て の運}

_動単位

_が

_活

動 参 加 して い るの で は な く

，

負 荷 強 度に見 合っ た 動 員 が 行 われてい る と

述

べ _てい るこ と か らも，

本

実験

に お ける長 時 間の

持続収縮

によ る

筋

活 動 羅：の

増加

は， 運 動

単位

の 動 員が さらには か ら れ たこと によるものと考え ら れ た。

Easoni7

） ，　

MQritani

ら18）正9）， そ して

， Bigland20

）_は

_，



_{M ，}

_{V ．}

_C

_{まで に} 達さ ない課 題におい て，

長時間

の連 続 的な筋 収 縮 を

行

い筋 疲

労

が出現 した場 合には，

筋

活

動

量の 増 加 が 認 め ら れ る と報

告

し て い る。 ま た

，

Moritani

ら19）21）や

Walter22

）の _{報 告}で は連 続 的

負荷

を続け る と

M ．

P ．

F

の減 少が認め ら れて い る。 今 回の

iF

．

_常

人の

_結

果 か らは

，

特 殊な課 題 下でぐノ

．

位 姿 勢を保 持 （等 尺

性収縮）

し た場

合， M ．

P ，

F

の

低

．

ドと筋 活 動 量の増 加とい う前 述 し た先の

_報告

と 同 様の結 果を

得

た。

　

これ らの こ と から

， M ．

V ，

C

までに達さ ない課 題におい て， 長

時

間の 連

続的

な 筋 収

縮

を

行

い

_筋

_{疲 労}が出現 し た場 合に は

，M ．

P．

F

の低

下

と，

筋活

動 量の 増 加が認め られ る といえ る。 し た がっ て

，

正 常 人では

筋疲労

と

筋

の

_力

_{量 感}

_覚

と が

高

い

桐関関係

にあることが 強 く示 唆 さ れた。

　一

方

，

本 夷 験にお け る

片麻痺

患

者

の

_結

果では

，

正

常

人で

再

現 性の高か っ た経 時 的な筋 活 動量の

増

加や

M

．

P．F

の

_低下

が 認め ら れ な か っ だ_， この

知

見は， 負 荷 量や

保持時闘

お よび 健 常 者 との条 件 設

定

上の

_問

題はあるもの の

，

少な くと も

筋

の

_力

_{量 感} 覚 の 異

常

を

示

唆 して い る と考 え ら れ た。

Holmes23

）24 ）_も

_古典

_的な

_論

_{文で 実 験 設 定は異な る} もの の

_{， 巾}

枢 神 経 疾 患の患 側は重さに

対

応す る

筋

収 縮の見 積もりが

TF

．

常

な 場 合に比べ _{過 剰}であっ た と

報告

して い る。 こ の ように，

中枢神経

疾 患を来 し

，

痙 性 等に より

筋収縮

の見 積 もりが不

iE

確な

状

態で は

，

安 定し た立 位 姿 勢 保 持は困 難である こと が予 想さ れ る。

　

こ う し た筋の力 量 感 覚は， 理

学療

法の対 象 とな る多 くの疾 患で障 害されてい る可 能 性が高 く， こ れ らの異 常が明 確にされて い くことに より

，

中枢

神経疾

患に

対

する

体

重

負荷

訓

練

や整

形

外 科 系 疾 患

に対 する closed

−

kinetic

　 chain 　exercise の

_指標

にな り う る可 能 性 を 秘めて い る。 今 後はさ らに具

体的

な

筋

の _{力 羅感}

_覚

の評 価

方

法 を 検

討

し

，

運 動 感 覚として統 合 的に深 部感 覚を分 析す るこ と が必 要 で ある。 文

1

） 伊 藤 文 雄： 筋感覚か ら み た運動制御

．

名 占屋大 学 　

1

．

H

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，

　

1989，

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，

　

1982．

6）

Gandevia

　

SC ，

　Hall　

LA

：

Proprioceptive

　sensa

−

　 t｛on　at　the　terminal　

joint

　of　the　middle 　firlger

．

　

JPhysiol

　355：5〔｝7

−

517

，

1983

．

7）

Aniss

　

AM ，

　

Gandevia

　

SC

：

Changes

　

in

　_perceived

　

heaviness

　and 　rnotQr 　commands 　produced 　

by

　 cutaneQus 　reflexes 　in　man

．

　

J

　Physiol　335：113

　 　126，　1988

．

8）McCloskey 　DI

，

　Macefield　

G

； Sensing　position

　 and 　moveInents 　of　the　

fingers

．

　News 　in　Physi〔〕l

　

Sci

　

2

：

226− 230，

　1987

．

9

）McCloskey 　DI

，

　

Cross

　

MJ ，

　eg　al

．

：

Sensory

　effects

　 of　puliing　or　vibratjng 　expQsed 　ten〔孟ons in

　 marl

．

　

Brain

　

106

：21　37

，

1983

．

lO）

Goodwin

　GH

，

　McCloskey 　D工lThe 　contribution

　 of　muscle 　afferents 　to　

kinesthesia

　shown 　

by

　vi

−

　

bration

　

induced

　

i

_｝

lusions

　of　movement 　and 　by

　 the　effects　of　paralysing　

jo

呈rlt　affererlts

．

　

Brain

　 95：　705

．

　748

，

　1972

．

11）McCioskey 　Dl

，

　

Colebatch

_∫G

，

　et　at

．

：

Judgement

　 　about 　orlsct　of　rapid 　v〔，luntary　movement

．

s　

in

　 　man

．

　

J

　Neurophysiol 　49：851

−

863

，

₁₉₈₃

．

12）Nashner 　LM ：

Vestibular

　_posture 　cQntrol 　modeL

　 　

Kybernet

｛

k

　

IO

：

IO6 ．

．

11（）

_，

1972

，

13）　McCloskey 　DL　Ebeling　P

，

　et　a

．

：Estimation　of

　 　weights 　and 　tensions　and 　apParent 　involve

−

　 　ment 　of　a

“

serlse　ofeffort

”

，

　Exp 　Neuro ［42：220

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，

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Moritani

T,

Muro

M,

et aL:

Electromechanical

changes

during

electricalry induced and

mal voluntary contractions;

Siirfacc

and

tramuscular

EMG

responses

during

sustained

rg

25

tseg

5-Fi

maximal voiuntary contraction, Exp

gy

88:

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T, Muro M: Electromechanical changes

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electrically

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and

mal voluntary contractions;

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cal symptoms of cerebellar disease and their

interprotation.

Lecture

IV.

Lanceti

111-115, 1922.

、

7

位 姿 勢における ド腿 筋の力 量 感 覚に関 する研究 291

＜

Abstract ＞

‘

ら

_Sense

　of　

Effort”

of　

T

苴

bialis

　

An

_{重erior 　and} 　

Gastrocnemius

　

Musc

_｝es

　　　　　　

in

　

Upright

　

Standing

　

Posture

Shu

　

MOR

正

OKA

，

　

RPT ，

　

Shozo

　

MIYAMOTO

，

　

RPT

，　

Yuichi

　

SHIKICHI

，

　

RPT

Z

）_綴）t

’

（）

f

　

PhysiCat

　

7

丶

hexaP

_コノ

，

　

Kochi

　

School

　

q

_プ

Altied

　

ffealth

　and 　

MediCal

　

ProfessiOns

Yu

　

TAK ．

ATA ，

　

RPT ，

　

Taishi

　HIROSE

，

　RPT

，

　

Midori

田

DAKA

，　

RPT

／丿e_／）

t，q

_プ／〜2habi ！

ilation

，

　

A

　tagて）

UO

∫_力

ital

　　　The

　

purposes

　of　this　study 　wcre 　to　assess 　the　continuous 　change 　of　

integrated

elcctromyography _〔玉

．

E ．

MG

_）and 　mean 　of　_power 　

frequency

_（

M ．

P．

F

_＞of　

IQwer

　

Iimb

muscles 　against 　

the

玉oad 　

from

　sole　

in

　upright 　standing 　

Posture，

　_and 　

to

　

discuss

　

the

ら

‘

_Sensc

　of　effor _じ

’from

　resu _畳

ts

　obtaincd

，

“

Sense

　_of　effort ” _was 　

difined

　that　_relnark 　the

subje ¢

tive

　required 　

tQ

　maintain 　weigllts 　 with 　

it

　are　

inoreased

　 whcn 　 _a　muscle 　

is

fatigue〔

i．

　　　The

　subjects 　were 　

fivc

　

healthy

　males 　and 　

five

　

hen

ユ

iplegic

　paticnts　

following

strokc

．

　

We

　analyzed 　

E ．

M ．

G

　of 赱

he

　

gastrocnemius

　and 　thc　tibialis　anterior 　muscies

fQr

　

240

　sec　

in

　upright 　standing 　

posture．

　

The

　task　

is

　

to

　maintairl 　

in

　upright 　standing

posture

　

against 　reaction 　

fQrce

　

by

　

the

　

Iord

　

from

　

anterlor 　sole　or　

postcrior

　sole

．

　

、Ve

recorded 　

I

．

E

．

M

．

G

　and 　

M 、

P，

F

　evcry 　

five

　seconds

．

　

In

　all　

heal

ζ

hy

　rnales

，

　as 　compared with 　

initial

　value

，

　

the

　

final

　value 　

increased

　

in

　the　

LEM

，

G

，

　and 　

decreascd

　

ill

　

MP

．

Fas

to

　

gastrocnemius

　muscle 　when 　

the

　

load

　was 　app 王

ied

　

frorll

　anteri ぐ）r　sole

．

　

Also，

　as

compared 　with 　

irlitial

　value

，

　

the

　

final

　value 　

increased

　

in

　the　

I，

E ．

M

．

　

G

　and　

decreased

in

　

M ．

P．

Fas

　to　tibialis　anterior 　muscle 　when 　the　

lord

　was 　apPlied 　

from

　_postcrior　sole

．

However ，

　the　stroke 　patients　

did

　not 　recogllize 　the　same 　

phenornellon

　samc 　as

healthy

　males 　changed

．

　 These

　results 　

indicatc

　that　the　

healthy

　subject 　muscles

showed 　

the

　

distinctive

　nlark 　of

‘

‘

sense 　of　effort

”

_，

　

but

　sense 　of　effort 　may 　

be

　

damaged

in

　

the

　stroke 　patients

．

＜

コ メン

F

＞

　　こ の研 究は

，

筋の 力 量 感 覚の存 在を EMG を用い て 間 接的に確 認 し た もの で あ る

_、

_，

対 象は健 常

．

占

．

と片 麻 痺 患蒼

．

で あるが

，

その 2 群_間で は_{実験 条件}に_相違が あ り

，

よっ て 今

liil

の結

．

果か ら は

，

片麻 痺患者で筋の 力量感 覚 に

1

璋害が あるか につ いて は推 測の域を脱 するこ と がで き な か っ た_。 　　しか し なが ら

，

現 在まで こ の力量感覚につ い て理学 療 法 的 視 点で研 究されたこ と は な く

，

そ うい っ た意味 か ら今 回の研 究は意 義 が あると思 わ れる。 ま た

，

力量 感 覚の メ カ ニ

ー

ズ ム _まで 言及 さ れて い るこ と か ら考え れ ば

，

構 成 因子に対 する変 調を試み て考 察 すれ ば

，

さ ら に興 味 深い論 文 と なっ たで あろ う

、

_，　 　 （研 究 開発部 ）