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栄養状態が虚弱高齢者の身体機能・認知機能・日常生活活動へ与える影響

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 152 43 巻第 2 号 152 ∼ 153 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 25 年度研究助成報告書. 栄養状態が虚弱高齢者の身体機能・認知 機能・日常生活活動へ与える影響 ─パス解析による検討─ 加茂智彦 1),西田裕介 1),若林秀隆 2),石井秀明 1),髙山慶太 3) 図1. 1). 聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科. 2). 横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科. 3). 聖隷藤沢愛光園 ケアサービス課 合が多く,栄養状態と身体機能の関連についての報告もわずか. 要旨:【目的】高齢者にみられる低栄養は生理的機能の低下と. である 3)。そのため,現在栄養状態の悪化が ADL に直接影響. ともに身体機能の低下を引き起こす。このようにリハビリと栄. を与えると考えられている。そこで,本研究では,栄養状態が. 養は相互関係になっており,切っても切り離せない関係であ. ADL に直接与える影響と身体機能や認知機能を介して,間接. る。しかし,リハビリの視点から栄養を捉えた研究は少ない. 的に与える影響をパス解析を用いて検討していく。. のが現状である。そこで本研究では栄養状態が ADL に直接与. 方  法. える影響と身体機能や認知機能を介して,間接的に与える影.   対 象 は 地 域 在 住 高 齢 者 178 名 と 施 設 入 所 高 齢 者 184 名 の. 響をパス解析を用いて検討していく。【方法】対象は地域在住. 計 362 名 と し た。 測 定 項 目 は, 年 齢,BI,MMSE,MNA,. 虚弱高齢者 178 名と施設入所高齢者 184 名の計 362 名とした。. SPPB,AMM とした。四肢骨格筋肉量は生体電気インピーダ. 測定項目は,年齢,BI,MMSE,簡易栄養状態評価表(以下,. ンス法,NIRS 法にて測定した。. MNA),SPPB(Short Physical Performance Battery) ,四肢. 1.統計学的手法. 骨格筋肉量(以下,AMM)とした。四肢骨格筋肉量は生体.  統計学的分析には SPSS と AMOS を使用した。栄養状態が. 電気インピーダンス法,NIRS 法にて測定した。【結果】地域. ADL に直接与える影響と身体機能や認知機能を介して間接的. 在住高齢者の年齢は 84.7 ± 7.6 歳,身長は 149.3 ± 7.7 cm,体. に与える影響を検討するために,パス解析を行った。栄養状態. 重は 46.9 ± 9.1 kg であった。MNA が BI に直接影響を与える. が ADL 能力に直接与える影響と,身体機能や認知機能を介し. 指標である標準化直接効果は 0.22 であった。また,MNA が. て ADL 能力に与える影響を標準化直接効果と標準化間接効果,. SPPB を介し,BI に間接的に与える影響を示す指標である標準. ふたつを総合した標準化総合効果にて検討した。仮説モデルの. 化間接効果は 0.33 であった。MNA が BI に直接与える影響と,. 適合度の基準には,CFI,AGFI,RMSEA を使用し,先行研究. SPPB を介して影響を与える間接的影響を総合した標準化総合. より CFI が> 0.95,AGFI が> 0.90,RMSEA が< 0.05 をモデ. 効果は 0.55 であった。施設入所者の年齢は 86.6 ± 7.6 歳,身. ルの適合度がよいと判断した 4)。有意水準は危険率 5%とした。. 長は 151.1 ± 6.3 cm,体重は 43.0 ± 7.8 kg であった。MNA の. 結  果. BI に対する標準化直接効果は 0.23 であった。また,MNA の.  地域在住高齢者の年齢は 84.7 ± 7.6 歳,身長は 149.3 ± 7.7 cm,. BI に対する標準化間接効果は 0.42 であった。MNA の BI に対. 体重は 46.9 ± 9.1 kg,BI は 91.2 ± 16.7 点,MMSE は 22.8 ± 5.4. する標準化総合効果は 0.66 であった。【考察】地域在住高齢者,. 点,MNA は 23.9 ± 3.4 点,SPPB は 7.2 ± 3.4 点,握力は 17.4. 施設入所高齢者ともに栄養状態が ADL 能力に直接与える影響. ± 6.2 kg であった。MNA が BI に直接影響を与える指標であ. よりも,身体機能を介して間接的に与える影響の方が大きいこ. る標準化直接効果は 0.22 であった。また,MNA が SPPB を介. とが明らかになった。今後は理学療法においても栄養状態を考. し,BI に間接的に与える影響を示す指標である標準化間接効果. 慮していく必要があると考えられる。. は 0.33 であった。MNA が BI に直接与える影響と,SPPB を介. キーワード:栄養状態,パス解析,間接効果. して影響を与える間接的影響を総合した標準化総合効果は 0.55 であった。モデル適合度の指標として使用した GFI,AGFI,. はじめに. RMSEA の値は,それぞれ,0.97,0.88,0.11 であった(図 1) 。.  高齢者にみられる低栄養は生理的機能の低下とともに身体 機能の低下を引き起こす. 1). 。また,身体機能の低下は ADL 低.  施設入所者の年齢は 86.6 ± 7.6 歳,身長は 151.1 ± 6.3 cm, 体 重 は 43.0 ± 7.8 kg,BI は 39.9 ± 30.3 点,MMSE は 11.9 ±. 下を引き起こし,死亡率の増加,QOL 低下を招くことになる。. 9.6 点,MNA は 17.2 ± 3.9 点,SPPB は 1.4 ± 2.6 点, 握 力. 先行研究では,栄養状態と ADL に関連があると報告されてい. は 7.6 ± 7.1 kg であった。モデル適合度である GFI,AGFI,. るが 2),リハビリの視点から考えると,低栄養が ADL の障害. RMSEA の値は,それぞれ,0.96,0.89,0.10 であった。MNA. を引き起こすのではなく,低栄養が身体機能の低下を引き起こ. の BI に対する標準化直接効果は 0.23 であった。また,MNA. し,その結果 ADL 能力の低下を引き起こすと考えられる。し. の BI に対する標準化間接効果は 0.42 であった。MNA の BI に. かし,現在の理学療法において,栄養状態を考慮していない場. 対する標準化総合効果は 0.66 であった。MMSE と SPPB が BI.

(2) 栄養状態が身体機能・認知機能・ADL に与える影響. 153. た。先行研究から,栄養状態の悪化が ADL 能力を低下させる ことが報告されているが,本研究の結果から,栄養状態の悪化 が身体機能の低下を引き起こし,その結果 ADL 能力の低下を 引き起こしていることが明らかになった。 文  献. 図2. に与える標準化総合効果はそれぞれ 0.38,0.53 であった(図 2) 。 考  察  栄養状態が ADL 能力に直接与える影響よりも,身体機能を 介して間接的に与える影響の方が大きいことが明らかになっ. 1)Fried LP, Tangen CM, et al.: Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001; 56: 146‒156. 2)Cereda E, Valzolgher L, et al.: Mini nutritional assessment is a good predictor of functional status in institutionalised elderly at risk of malnutrition. Clin Nutr. 2008; 27: 700‒ 705. 3)Chevalier S, Saoud F, et al.: The physical functional capacity of frail elderly persons undergoing ambulatory rehabilitation is related to their nutritional status. J Nutr Health Aging. 2008; 12: 721‒726. 4)Browne MW, Cudeck R: Alternative ways of assessing model fit. Sociol Methods Res. 1992; 21: 230‒258..

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参照

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