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ヒーリングタッチにおける国内の研究動向と課題に関する文献研究

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28 群馬保健学研究 41:28-35,2020

ヒーリングタッチにおける国内の研究動向と

課題に関する文献研究

桐 山 勝 枝

1, 2)

,岡 美智代

3) (2020 年9月 30 日受付,2021 年2月8日受理) 要旨: [目的] 国内におけるヒーリングタッチの研究動向を概観し , その現状と課題を明らかにする。 [方法]方法は文献研究であり,データベースは医中誌 Web を用いた。検索キーワードは「ヒー リングタッチ」とし,設定条件は「会議録除く」とした。解説や総説など,医中誌上で原著論 文でないものは除外した。 [結果]ヒーリングタッチの研究は 2013 年から発表されており,2020 年 7 月までに発表され た論文は 7 編で全て介入研究であり , うち無作為化比較試験2編,準無作為化比較試験1編, 実験研究2編,事例検討1編,実態調査1編であった。対象は,健康な成人が 6 編,患者を対 象とした論文は1編であった。今後の課題として,対象者数の少なさと介入期間や回数の少な さが述べられていた。 [考察]2010 年に日本語でヒーリングタッチの正規のプログラムを受講できるようになったこ とにより受講者が増え,研究発表がされるようになった。今後の課題として,適切なサンプル サイズの検討,継続した介入による研究が必要であることが示唆された。 キーワード:ヒーリングタッチ 文献研究 1) 高崎健康福祉大学 2)群馬大学大学院保健学研究科博士後期課程科目等履修生 3) 群馬大学大学院保健学研究科 Ⅰ.はじめに  ヒーリングタッチは,1980 年代にアメリカ人看護師 ジャネット・メントゲン(Janet Mentgen, RN)によっ て開発された健康増進と癒しのために気の層を整える エネルギーセラピーのひとつである1)。施術者の手か ら送られる気(エネルギー)によって人間のエネルギー システムの清浄とバランス回復を図ることで,全人的 レベルでのセルフヒーリングを促す補完代替療法の中 のエネルギー療法の一つであり,施術者の手と慈しみ の心で相手を癒す技術である。効果としては,リラク ゼーション効果や不安の軽減2)3),疼痛緩和2)3)4), 生活の質の向上5)などがある。ヒーリングタッチは , ジャネット・メントゲンが 1980 年代後半に,アメリ カホリスティック看護協会の依頼を受け,試験的に2 つの看護大学で講座を開いたのがきっかけとなり,そ の後正式な看護継続教育として全米に広がり6),アメ リカ看護資格認定センターからヒーリングタッチ認定 プログラムとして認可された。現在では,看護師だけ ではなく他の医療従事者や一般の人たちにも広く公開 された世界レベルの認定プログラムとして,日本も含 めた世界 34 カ国に広まり 10 万人以上の人たちが学ぶ プログラムとして成長を続けている。アメリカホリス ティック看護協会も引き続きヒーリングタッチ認定プ ログラムをホリスティック看護教育の一つとして推奨 している。また,2004 年にアメリカ国立資格認定機 関(NCCA)からエネルギー療法として初めての国家 資格として認可を受けている7)。  外国の研究動向では,1950 年代から論文が散見し 1970 年代から欧米を中心に自然治癒力の向上と心身 の苦痛の緩和やリラクゼーション効果等多く発表され

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29 ている。2020 年7月現在 “Healing Touch” の検索で 150 編以上の学術論文が発表されており,医療施設で のランダム化比較試験も多く,小児から高齢者まで対 象とし,主に痛みやストレスの軽減の援助として臨床 で実現可能な技術であることが示唆されている4)8)  日本では 2007 年に日本人主催の外国人講師によ る「Healing Touch Tokyo(2017 年より特定非営利 活動法人日本ヒーリングタッチ協会設立)」によって ヒーリングタッチの講習会が始まった。2010 年には アメリカ在住の日本人看護師により「Hearing Touch Japan 」が設立され,米国ヒーリングタッチ認定プロ グラムの正規のカリキュラムを日本語で学べるよう になった9)。講習会の初回は国立大学法人大学の保健 学研究科で開催され,看護系の大学教員や大学院生, 臨床看護師の受講生が多く,この時から一気に看護師 に広がっている。2020 年現在,Healing Touch Japan による講習会は 60 回以上,受講者は 800 人以上となっ た6)。しかし,国内でのヒーリングタッチに関する研 究は歴史が浅く,臨床で活用するまでのエビデンスが 充足されていない。今後厳密な研究を遂行するため に,ヒーリングタッチの研究を概観し現状と課題を明 らかにすることが必要である。 Ⅱ.研究目的  国内のヒーリングタッチの研究動向を概観し,その 現状と課題を明らかにすることが目的である。 Ⅲ.研究方法 1.論文の検索  1)データベース:医中誌 Web  2)検索キーワード:「ヒーリングタッチ」  3) 収録誌発行年: 国内でのヒーリングタッチの 歴史は短く,研究の動向を把握することが目的 であるため,過去に発行された期限は設定せず 2020 年7月までに発行された論文を対象とし た。  4) 医中誌 Web の絞り込み条件:設定は「会議録 除く」とした。  5) 除外条件:解説や特集など,医中誌 Web 上で 原著論文でないもの。 2.分析方法  対象文献を分析するための項目は,著者名・出版年・ 論文タイトル,原稿種類,目的,研究デザイン,対象 者・対象数,ヒーリングタッチの種類と方法,評価指 標,結果,限界と課題とした。 Ⅳ.倫理的配慮  本研究は文献研究であり,研究対象論文の著作権の 遵守と,公平で明確な引用に努めるよう,著者の記載 した文章をなるべく崩さないよう留意した。 Ⅴ.結果 1.研究発表の年次推移と原稿種類(表1)  医中誌 Web で「ヒーリングタッチ」で検索した結 果 51 編が抽出された。そのうち,会議録と解説や特 集等は除外し,原著論文とされている 7 件を分析対象 とした。実際の原稿種類の内訳は,原著論文1編,研 究報告3編,原稿種類の記載がないものが3編であっ た。 表1 研究発表の年次推移と原稿種類 表 1 . 研 究 発 表 の 年 次 推 移 と 原 稿 種 類 原著論文 研究報告 記載なし 2013 1 2014 1 2 2015 1 1 2016 2017 2018 2019 1 2020 合計 1 3 3 年 原稿の種類 (7編)

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30  ヒーリングタッチの研究発表は 2013 年から始まっ て お り,2013 年 1 件,2014 年 3 件,2015 年 2 件, 2016 年から 2018 年の3年間と 2020 年は発表がされ ていなかった。 2.研究対象論文の概要(表2)  1)目的  ヒーリングタッチの効果や有効性に関する論文は 6 編10-15),ヒーリングタッチを実施する上で必要な 施術者の意識の集中に関する論文16)が 1 編であっ た。  2)研究デザイン  介入研究 7 編(無作為化比較試験 2 編12)14),準 無作為化比較試験 1 編13),実験研究 2 編15)16), 事例検討 1 編10),実態調査 1 編11))であった。質 的研究を主とした論文はなく,補完的に短時間の面 接や自由記載等で感想や気づきをまとめた研究が4 編11)13-15)であり,混合研究までは至っていなかっ た。  3)対象者・対象数  各論文で,健康な成人を対象とした研究は4編13-16) (6名,20 名,26 名,42 名)で,軽い心身の不調を もつ成人を対象とした研究は1編(14 名)10),就 労後の看護師を対象とした研究は 1 編(76 名)12), 患者を対象とした研究は 1 編(1 名)10)であった。  4)ヒーリングタッチの種類と方法  チャクラコネクション 2 編13)14),セルフヒーリ ング 1 編15),集中(ヒーリングタッチ前段階)1 編16),種類の記載なし3編10-12)16)であった。  5)評価指標と結果   ①心理的指標

 Profile of Mood States( 以 下 POMS)11)13)15) と Visual Analogue Scale(以下 VAS)12-14)が各3 編で使用されていた。POMS は【怒り-敵意】【混 乱-当惑】【抑うつ-落ち込み】【疲労-無気力】【緊 張-不安】【活気―活力】【有効】の7尺度と,ネ ガティブな気分状態を総合的に表す「TMD 得点」 から,所定の時間枠における気分状態を評価する 尺度である。VAS は視覚的アナログ尺度で,痛 みの程度を線上に示してもらい測定する。100㎜ の直線状で 0 を痛みが無い状態,100 をこれまで 経験した中でいちばん強い痛みの状態とする。他 に基本的属性16)や NANDA-1 看護診断を基にエ ネルギー診断10),Numerical Rating Scare 尺度 (以下 NRS)11),介入後の自由記述14)が使用さ れていた。NRS は数値的評価尺度であり,痛み の強さを 0 ~ 10 までの 11 段階として,痛みの強 さを数字を用いて答える方法である。POMS の 3編での結果は,介入群で気分の改善に有意差の みられたものが1編12),両群間の有意差が見ら れなかったものが1編13),音楽療法で全項目有 意な低下があったがヒーリングタッチ介入群では 「活気」が有意に上昇し,他の項目は有意に低下 したものが1編15)であった。VAS の2編での 結果は,疲労感で両群間の有意差がみられたもの は1編12),全ての項目で有意差がみられなかっ たものが1編13),気分の良さで介入群のみ有意 差がみられたものが1編14)であった。  ②生理的指標  心拍の周期変動の周波数による,高周波成分(Hi Frequency,以下 HF),高周波成分 / 低周波成分 (Hi Frequency/Low Frequency 以下 LF/HF)が

4編12)14-16)で使用され,脈拍・血圧・呼吸数 が1編13)で使用されていた。HF はおもに副交 感神経活動, LF/ HF は交感神経機能の指標とし て用いられ,自律神経機能のバランスを計測する ストレス指標である。HF と HF/LF の有意差が みられなかったものが 2 編12)15),群間比較で介 入前と介入中で HR が低下し HF が高くなり,介 入群の LF/HR は介入後に全員低下したが,対象 群は 3 名低下した研究が 1 編14)であった。脈拍数, 血圧,呼吸数の評価では,介入群で脈拍数のみ有 意な低下がみられた研究が 1 編13)であった。  ③面接や自由記載からの気づき  短時間の面接や自由記載等から,感想や気づき をまとめた研究は4編11)13-15)であった。その うち3編13-15)が意味内容の類似性に基づきカテ ゴリー分類されている。山本ら13)の研究では, 身体的感覚として「身体症状が軽減された感覚」 「接触して行っているような感覚」「心地がよくな るような感覚」,精神的感覚として「精神的なス トレスが改善された感覚」「気持ちが落ち着いた 感覚」「説明できないような不思議な感覚」「人の 気配を感じる感覚」がカテゴリー化されており, 田口ら14)の研究では,「体の力が抜ける」「心地 よくなる」「触られている感じがする」「あたたか くなる」「エネルギー(気)を感じる」「不快症状 の出現」「眠たくなる」「気分が晴れる」「楽になる」 (1つのコードのみのカテゴリーは割愛)がカテ ゴリー化されていた。岡本ら15)の研究では,リ ラックス反応として「リラックスする」「スッキ リする」「落ち着く」「心地よい」「眠くなる」「温

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表 2 . 研 究 対 象 論 文 の 概 要 文献 番号 著者名 (出版年) 原稿種類 目的 研究 デザイン 対象者 対象数 ヒーリングタッチの 種類と方法 評価指標 結果 16) 小林ら (2013) 記載なし ヒーリングタッチの初歩 段階として「集中する」 手技について施術者の主 体反応を解析し,集中する 状態になり得ているかを 検討する。 実験研究 ヒーリン グタッチ 熟練者3名 初心者3名 6名 座位にて1分間安静 の後3分間集中し, その後プラセボヒー リングタッチ(シリ アルセブンズ法)を 行う。 ・基本的属性 (年齢性別) ・HFとLF/HF HFとLF/HF:熟練者は集中時 において心拍数が減少してお り,瞑想状態の集中時と一致し ていた。熟練者,初心者ともに自 律神経系にリラックス状態の変 化はみられなかった。 10) 中ら (2014) 記載なし パーキンソン氏病を発症 した患者に対するヒーリ ングタッチの効果を検討 すること。 事例検討 パーキン ソン氏病 患者 1名 毎週ほぼ1回,1時間 の訪問で実施し,介 入後エネルギー診断 を行う。 ・NANDA-1 看護診断を基 にエネルギー 診断 幻視妄想が改善し,精神が安定 した。表情が穏やかになり不穏 な発言が減少した。 11) 中ら (2014) 記載なし ヒーリングタッチを実施 し,事前と事後の比較で その効果を測定すること により日本における在宅 看護での緩和ケアとして の有効性を検証する。 問診票を用 いた実態調 査 希望者 14名 男3名 女11名 ヒーリングタッチの 実施(方法記載な し) ・Numerical Rating Scare (NRS)尺度 ・感想文 半数以上の参加者に効果が見ら れた。 スピリチュアリティ―尺度は3 分の1の参加者に効果がみられ た。 12) 吉江ら (2014) 研究報告 就労後看護師の疲労感軽 減にヒーリングタッチが 有効であるか検討する。 無作為化比 較試験 就労後看 護師 76名 介入群 +対象群 ヒーリングタッチ群 とプラセボ群に20分 間介入し,前後に3 分間の安静時間を設 けた。プラセボ群に はシリアルセブンズ 法を行った。 ・VAS ・POMS ・HFとLF/HF VAS:疲労感で有意差が見られ た。 POMS:総合的な気分の改善に 有意差が見られた。 HFとLF/HF:有意差がみられ なかった。 13) 山本ら (2015) 研究報告 ヒーリングッタチ単独の 効果を明らかにするた め,基礎研究として健康 な成人を対象に介入群と 対照群における実施前後 の気分の変化や身体的お よび精神的な変化につい て比較検討すること 。 準無作為化 比較試験 健康な成 人20名 介入群10 名 対象群10 名 チャクラコネクショ ンを20分間。 疑似ヒーリングタッ チ群には20分かけて 時計回りで被験者の 周りを一周する。 ・POMS ・VAS ・脈拍数 ・血圧 ・呼吸数 ・面接5分 ・他質問 POMS:両群間の有意差がみら れなかった。 VAS:両群間の有意差がみられ なかった。 脈拍数,血圧,呼吸数:脈拍数 のみ有意な低下がみられた。 14) 田口ら (2015) 原著論文 ヒーリングタッチによる 心身への影響を生理学的 指標および主観的指標の 分析に基づいて検証する こと。 無作為化比 較試験 健康成人 男女 26名 介入群 +対象群 30分のチャクラコネ クション ・VAS ・HFとLF/HF ・チャクラの 変化 ・介入後の自 由記述 VAS:介入群のみ介入後に気分 が有意に上昇した。 HFとLF/HF:群間比較では, 介入前と介入中のHRが低下 し,HFが高くなる傾向であっ た。介入群のLF/HFは,介入後 に全員低下したが,対象群では 3名(27%)が上昇を示した。 チャクラ:介入群は上半身の開 放が有意に解放された。 15) 岡本ら (2019) 研究報告 看護学生、看護教員健常 者を対象にセルフヒーリ ングタッチ・音楽聴取が もつ元氣効果について, ストレス指標と心理状態 の変化の二面性から量 的・質的に調査し,今後 のヒーリングタッチの研 究の方向性を探ること。 実験研究 健康な成 人女性 42名 セルフヒーリング タッチ 同一の被験者に音楽 療法とセルフヒーリ ングタッチを各1回 行った。 ・POMS ・HFとLF/HF ・心理的な変 化や気づきの 自由記述 POMS:音楽で全項目の有意な 低下があり,セルフヒーリング タッチでは「活気」が優位に上 昇,他5項目は優位に低下する というリラックスと精神的な高 揚が共存する状況が認められ た。 リラックス反応:両方に認めら れた。 HFとLF/HF:優位差がみられ なかった。 表2 研究対象論文の概要

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32 表3 研究の限界と課題 もりを感じる」「身体症状が軽減する」,自己への 関心では「自分の状態に気づく」「自分の気持ち の変化に気づく」がカテゴリー化されていた。 3.研究の限界と課題(表3)  7編のうち6編10)12-16)が研究の限界と課題を明 記し,6編とも対象者の少なさを述べていた。時間の 短さや時間帯については3編12)15)16)であった。単 発でなく複数回必要であると記載されたものは 1 編13) であったが,事例検討 1 編10)以外の6編全ての論文12-16) が単発研究であった。 Ⅵ.考察 1.研究発表の動向  国内におけるヒーリングタッチの研究は,2020 年 までに論文の他に解説 / 特集や会議録を合わせても 51 編と少ないが,外国では 200 件以上発表されている。 国内の研究が少ない理由として,ヒーリングタッチが 日本に入ってきた時期が遅かったことが考えられる。 ヒーリングタッチは米国で 1980 年代に開発され実践 や研究がされているが,日本で初めてヒーリングタッ チのプログラムを受講できるようになったのが 2007 年であった。当時は医療従事者以外の受講生が多かっ たが,2010 年に国立大学法人大学の保健学研究科で, 看護師である大学教員のコーディネートにより開催 したことで,看護系の教員や大学院生に広がった。研 究活動をしている受講生が増えたことが,2013 年よ り研究発表が始まった理由と考えられる。また,米国 在住の日本人看護師であるヒーリングタッチ・ジャパ ン創設者の橋本ルミ氏により,日本で初めて日本語で ヒーリングタッチの正規プログラムを受講できるよ うになったことも,急速に受講者が増えた理由と考え られる。  2016 年から 2018 年の3年間に研究発表がないが, 科学研究費助成事業データベース17)では,2013 年か ら 2020 年までの間に4件ヒーリングタッチの研究が 採択されている。これらの研究は学会発表にとどまっ ているが,今後論文として発表される可能性がある。 このことより,ヒーリングタッチの研究が科研費獲得 により大規模な研究に向かっていることが示唆され る。 2.研究デザインの動向  7編のうち全て介入研究で,量的研究であった。質 的研究を主とした論文はなく,補完的に短時間の面接 や自由記載等で感想や気づきをまとめた研究が4編 11)13-15)であり,混合研究までは至っていなかった。 量的研究が多く研究されている理由として,ヒーリン 表 3 . 研 究 の 限 界 と 課 題 内容 文献番号 ・対象数が少ない 10),12),13),14),15),16) ・介入時間や回数,間隔による検証が必要 12),16) ・対象が健康な成人である。疾患からの苦痛緩和の検討が必要 12),15) ・性差による違い。 13),15) ・対象が1施設で一般化できない。 12) ・対象が看護師の場合,勤務の状況に分けて分析する 12) ・従来の「タッチ」と「ヒーリングッタッチ」との効果の比較検討 13) ・単回実施のみでなく複数回実施による効果の検討 13) ・ミックス法を用いた継続研究が必要 14) ・研究デザインや評価指標の再検討 14) ・同じ環境を維持することが困難 14) ・セルフヒーリングタッチを行う際の誘導の影響 15) ・本当に必要としている人に実施する必要 15) ・個々のクライエントに合ったヒーリングタッチを実施することでヒーリン グタッチの独自の効果を測定する必要 13) ・どのようなエネルギーの動きがそこでおきているのかを可視化できるよう な研究が必要 13) ・シリアルセブンズ法で引き算をすることが,その人にとって与える影響が 異なること。 16)

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グタッチが可視化できないエネルギーヒーリングで あることが考えられる。エネルギーヒーリングはエネ ルギー(気)やチャクラ(エネルギーの出入り口)を 整えることにより,心身の状態を最良に導く補完代替 療法であるが18),身体に触れないでエネルギーを調 整することに対し,宗教色が濃く日本では臨床での導 入が困難と考えられる19)。そのため,客観的に評価 する手段として数値で証明する量的研究が積極的に されてきたと考える。しかし,量的研究で明らかな効 果を示す論文が少ない中,面接や自由記述などの感 想では肯定的な意見が多いことから,ヒーリングタッ チは客観的な数値に表れない効果が明らかにあるこ とがわかる。今後,量的研究の結果が飽和状態になる ことにより,質的研究が増えていく可能性が示唆され る。 3.方法と評価指標の結果  ヒーリングタッチによる効果について,7編の論 文から導き出された心理的・生理的指標の結果は様々 で現時点での一般化は難しい。また,本来ヒーリング タッチは対象のエネルギーをアセスメントし,対象に 合わせた介入方法(テクニック)を選択し施すもので ある。例えば,痛みを排出させる「ペインドレイン」 や急性疼痛によくみられるエネルギーの隆起を和ら げる「マグネティックパス」等があり20),頭痛への 介入でも頭痛のタイプ(緊張,副鼻腔炎,偏頭痛,頭 部外傷)によって介入方法が異なる。  日本のヒーリングタッチの研究は,対象をアセスメ ントし必要なヒーリングタッチのテクニックを選択し ている研究は皆無に等しく,本来のヒーリングタッチ を施している研究は,1 名を対象とした事例研究10) のみである。ヒーリングタッチの効果が明らかな数値 で表れにくい理由は,エビデンスレベルに固執するあ まり,本来のヒーリングタッチができていないこと と,対象者が健康な成人が多いことが考えられる。不 安や痛みなど心身に苦痛がある対象者ほど,ヒーリン グタッチ介入後の変化を評価しやすいが,健康な学生 や教員を対象としている研究が多いことも,数値的に 有意な効果を示すことができない理由と考えられる。  面接や自由記述からの主観的な感想のカテゴリー では「リラックスする」「心地よい」「落ち着く」等の リラックス反応がみられている。しかし,これらの反 応はヒーリングタッチ以外の補完代替療法(リラク セーション法,アロマセラピー等)でもおこりうる 反応であるため,「説明できないような不思議な感覚」 「エネルギー(気)を感じる」のカテゴリーに着目し, ヒーリングタッチ特有の反応について今後模索して いく必要がある。 4.ヒーリングタッチ研究の限界と課題  多くのヒーリングタッチの研究で対象者数が少な いことを限界と課題としている。また,継続して複数 回ヒーリングタッチを施していないことも述べられ ている。対象者数が少ないことや複数回継続して関わ ることが困難な理由として,ヒーリングタッチの研究 は主に介入研究であるため,施術者と対象者の施術時 間や施術する場所の確保等で調整が多いことが考え られる。また,ヒーリングタッチの施術経験が十分あ る者が多くない為,一度に多くのデータ数が採れない ことも原因と考える。  患者を対象とした論文が1編と少なく健康な成人 が多い理由は,著者らの身近な学生や教員を対象とし ていることが健康な成人に偏った理由であると推察 される。また,課題として疾患を持つ患者に対して ヒーリングタッチを行うことが述べられているが,困 難になっている理由は,患者に接することの倫理的問 題と時間や労力を確保することが困難であることが 推察される。 Ⅶ.本研究の限界と課題  国内での研究数が少ないため,システマティックレ ビューのような厳密な文献研究方法で分析すること ができていない。  日本においてはヒーリングタッチの研究が始まっ て8年間という短い期間であるため,本研究では明ら かな動向が確認できず現状の確認にとどまっている。 また,掲載した内容はごく一部の情報で不確かであ る。今後は外国の文献研究を行い,外国でのヒーリン グタッチの現状や効果を明らかにし,国内の研究との 相違や課題などの示唆を得ることにより,ヒーリング タッチが臨床でも安全に活用される方法を模索する ことが今後の課題である。  本研究は JSPS 科研費 JP20K10611 の助成を受けた ものである。 Ⅷ.文献

1)Healing Touch Program. 橋本ルミ訳 . ヒーリングタッ チプログラム レベル1.Hashiba Institute.2011;2:4. 2)Malntyre, B., Hamilton, J., Fricke, T.,et al. The

Efficacy of Healing Touch in Coronary Artery Bypass Surgery By Recovery: A Randomized Controlled Trial. Alternative Therapies in Health and medicine 2008; 14 (4)

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: 24-32.

3)Anderson, G.A., Suchicital, L. Lang, M., et al. The Effects of Healing touch on Pain, Nausea, and Anxiety Following Bariatric Surgery: A Pilot Study. EXPLORE. 2015; 11: 208-216.

4)Wardell, D.W., Decker, S.A., Engebretson, J.C. Healing touch for older adults with persi stent pain. 2012 Jul-Aug; 26 (4): 194-202.

5)Jain, S., McMahon, G.F., Hansen, P., et al. Healing Touch with Guided Imagery for PTSD inReturning Active Duty Military.A Randomixed Controlled Trial. MILITARY MEDICINE 2012; 177: 1015-1021.

6)橋本ルミ.Healing Touch Japan.http://healing touch-japan.org/(2020 年 8 月 1 日検索)

7)橋本ルミ . 代替補完療法の効果と看護での実践ヒーリン グタッチ . EB Nursing 2004; 4 (3) : 25-32.

8) Wong, J., Ghiasuddin, A., Kimata, C., et al, The impact of healing touch on pediatric oncology patients. Integr Cancer Ther. 2013 Jan; 12 (1) : 25-30.

9)Rumi, H. Finding the Jewels Within the Treasure Box of Healing Touch. Enerugy Magazine. 2014; July August: 29-32.

10)中ルミ,天野博,いとうたけひこ.在宅看護におけるヒー リングタッチの効果に関する事例検討 パーキンソン氏 病の女性の疼痛と心理的苦痛と不眠の軽減効果.Journal of International Society of Life Information Science 2014; 32: 34-43.

11)中ルミ,天野博,いとうたけひこ.在宅看護にいかす エネルギーフィールドへのケアヒーリングタッチの効 果.Journal of International Society of Life Information Science 2014; 32: 228-236. 12)吉江由美子,小林たつ子.ヒーリングタッチによる就 労後看護師の疲労感に対する効果の検討.日本看護科学 会誌 2014;34:255-262. 13)山本晴美,森田久美子.ヒーリングタッチ実施前後に おける身体的・精神的変化 二重盲検法による準ランダ ム化比較試験.日本看護技術学会誌 2015; 14: 174-184. 14)田口豊恵,中森美季.健康成人に対するヒーリングタッ チ効果の検証 自律神経系の変動および主観的指標から の分析 . 京都看護 2015;1:17-30. 15)岡本裕子,高橋登志枝,竹山広美,坂村八恵.看護教 育の場におけるヒーリングタッチの元氣効果の検討.看 護・保健科学研究誌 2019;19:10-19. 16)小林たつ子,前澤美代子,梶原睦子,西沢三代子,西 村明子,中橋淳子,吉江由美子,小林美咲,河野恵,新 藤裕治,長澤江里.ヒーリングタッチ介入技法の初段階 「集中する」ことの施術者の生体反応の検討.山梨県立大 学看護学部紀要 2013;15:23-35. 17) 科 学 研 究 費 助 成 デ ー タ ベ ー ス.KAKEN.https:// kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=%E3%83%92%E3%83%BC %E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%BF%E 3%83%83%E3%83%81(2020 年 8 月 1 日検索) 18)Ryburn, S.J.【エネルギーヒーリング 実証研究を伴っ た代替医療の例として】エネルギーヒーリングの理論的 基礎.Quality Nursing 2000;6:740-748. 19)川出富貴子.【エネルギーヒーリング 実証研究を伴っ た代替医療の例として】エネルギーヒーリングを講演会 参加者はどのように受け止めたか 三重県立看護大学公 開講演会を実施して.Quality Nursing 2000;6:773-775. 20)橋本ルミ,柴田カトリーナ.疼痛管理テクニック.ヒー リングタッチプログラム レベル1. USA:Hashiba Institute,2011:20-21.

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A Study of Literature on the Trend and Issues in

Research on Healing Touch in Japan

Katsue Kiriyama

1, 2)

,Michiyo Oka

3)

Abstract:

Aim: To observe the trend in research on healing touch in Japan, and shed light on the current situation and issues.

Methods: A literature study was conducted using the Japanese database Ichushi-Web. In searching for literature, the keyword “healing touch” was used with the condition “exclude meeting minutes.” Also, articles other than original papers, such as commentaries and overviews, were excluded.

Results: Healing Touch studies have been published since 2013, with 7 articles published by July 2020, 7 intervention studies (2 randomized controlled trials, 1 quasi-randomized controlled trial, 2 experimental studies, 1 case study, and 1 fact-finding survey). Of these, six studied healthy adults, and one studied patients. Issues identified in the literature were as follows: limited numbers of subjects; short intervention periods; and limited numbers of interventions.

Conclusion: In Japan, the first official program on healing touch was launched in 2010, which is provided in Japanese. Since then, an increasing number of people are attending the program, and studies on healing touch have been conducted and published. Findings from this study suggested that it is henceforth necessary to identify an appropriate sample size, and conduct research through continuous interventions.

Keywords: healing touch, literature study

1) Takasaki University of Health and Welfare

2) Gunma University Graduate School of Health Sciences Doctor’s Program Course students 3) Graduate School of Health Sciences, Gunma University

表 2 . 研 究 対 象 論 文 の 概 要 文献 番号 著者名 (出版年) 原稿種類 目的 研究 デザイン 対象者対象数 ヒーリングタッチの種類と方法 評価指標 結果 16) 小林ら (2013) 記載なし ヒーリングタッチの初歩段階として「集中する」 手技について施術者の主 体反応を解析し,集中する 状態になり得ているかを 検討する。 実験研究 ヒーリングタッチ 熟練者3名初心者3名6名 座位にて1分間安静の後3分間集中し, その後プラセボヒーリングタッチ(シリアルセブンズ法)を行う。 ・基本的属性(

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