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インスリン抵抗性 ―虚血性心疾患から糖尿病発症予防へ―

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Academic year: 2021

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インスリン抵抗性

虚血性心疾患から糖尿病発症予防へ

私が研究の手ほどきを受けたのは, 昭和 52年 (1977 年) 朝日生命成人病研究所の藤井 潤先生でした. 研究 のデータの取り方, まとめ方等を教えて頂きました. 毎 日, 新宿のど真ん中, 京王百貨店の向いのビルの地下室 でウサギの血圧を測ることで 1日が始まりました. 第一 回 高血圧学会」での発表をさせて頂き,「Goldblatt型高 血圧家兎の慢性期血圧維持機構」が私の学位論文 となり ました. 心電図・ベクトル心電図, 大動脈石灰化 (動脈 化) などの臨床研究もここからはじまりました. 当時の 所長は 谷信貞先生という糖尿病の大先生でしたが, 糖 尿病は斜め読みで終わってしまいました. 昭和 54年に第二内科に帰局し, 村田和彦教授の下, 「心電図・ベクトル心電図」を中心に臨床研究を継続し ましたが, 高脂血症薬の治験のため, 糖尿病外来の手伝 いを始めましたが, ここから糖尿病と向き合うことにな りました.そのころ,群馬大学でも冠動脈造影 (CAG)が 始まり,大学でしか CAG ができなかったため,県内の殆 どの狭心症・心筋梗塞 (以下 IHD) の患者が大学に集ま りました. 当時は, 血清コレステロールが「first ki1ler」 といわれ, IHD の一番の危険因子とされていましたが, 「HDL コレステロールと動脈 化の関係」が話題とな り始めていました. 折よく, 中央検査部で, Beckman Lipoprotein Profiling Systemを用いた HDL, LDL コレ ステロール 画の測定が試験的に開始され, 鈴木 忠先 生のご指導で, 冠動脈病変との関係を検討しました. そ れらのデータの発表の場として, 村田教授のご推薦で 「動脈 化学会」に入りました. 当時の動脈 化学会は 「血管のない動脈 化を研究している」といわれたよう に, 殆どの方が血清脂質または肝臓の専門家で, 循環器 の先生は殆どおられず, 実際の冠動脈 化と脂質の関係 の発表は私だけでした. 今思うとウソのようです. 国立高崎病院に勤務していた 1981年当時, 非常勤講 師の板倉弘重先生に, 血清脂質について教えて頂き, 発 売早々のアポ蛋白測定キットを紹介されて, CAG との 関係を検討しました. レムナントリポ蛋白も動脈 化の 危険因子として注目されており, 鈴木 忠先生の仲介で, 高崎にある日本抗体研究所で開発されたリポ Z (後に RLP: remnant like particlesと改名) を中島克行先生に 測定して頂き, 動脈 化との関係を検討することができ ました. 一方, 欧米では糖尿病には IHD 発症が多い事が知ら れており, CAG 施行者全例に 75gOGTT を行い, 検討を 重ねておりました. 当初は高血糖を始めとする代謝異常 が大きな原因と えていましたが, 1988年 Reavenが syndrome X の概念 (耐糖能異常, 高血圧, 脂質異常症な どの動脈 化の根底にはインスリン抵抗性がある) を発 表し, 私にとって「インスリン抵抗性と糖尿病, 動脈 化」が大きなテーマになりました. 1989 年, 河津捷二先生が赴任され, それまで, 午前中 「糖尿病外来」午後は「心臓外来」と二足の草鞋を履い ていたのですが,以後「糖尿病」に大きく傾斜することに なりました. 尿中微量アルブミン (U-alb) の測定が始 まった頃で,研究会で「U-albと大動脈脈派伝導速度」の 73 Kitakanto Med J 2012;62:73∼74 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科看護学講座 平成23年11月22日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科看護学講座 伴野祥一

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関係を発表した際, 小坂樹徳先生から「それは本当のこ とですか?」と質問され, びっくりしたのを覚えており ます. 今思うと, 細小血管障害と大血管障害の橋渡しの ような話で, 重大な事であったかと思います. 今では U-alb と動脈 化の関係はほぼ認められているかと思いま す. 保 学科に赴任してからは, 古巣の糖尿病グループも 消滅し, 1人で何をしようかと悩んでいた時, 茂原重雄先 生から, 教育学部保 体育教室の柳川益美先生を紹介さ れ,群馬町での「運動指導による生活習慣予防」に参加す ることになりました. 以後, 県内各地で 75gOGTT を行 い, 保 体育教室による地域住民への運動指導と耐糖能 や血清脂質への効果を検討してきました. 参加者は, 12 市町村に及び, 700人余となっています. 群馬町では 11 年継続していますが, 同一人での介入期間 5年での耐糖 能の改善に, インスリン抵抗性の改善が大きかったこと を糖尿病学会誌に報告 したところです. 任期も少なくなりましたが, 食事や運動を中心とした 生活習慣病の予防に取り組んでいるこの頃です. 文 献 1. 伴野祥一. Goldblatt型高血圧家兎の慢性期血圧維持機 構, 2つの型の腎血管性高血圧の Metabolic Study. 北関 東医学 1981; 31: 1-11. 2. 伴野祥一,古谷雅子,桜井明美ら.冠動脈 化と血清脂質 : アポ蛋白と他の危険因子について.動脈 化 1985; 13: 641-648. 3. 伴野祥一, 河津捷二, 清水美津夫ら. 糖尿病患者の Rem-nant Like Particles(RLP)についての臨床的検討.糖尿病 1994; 37: 739-746.

4. Tomono S,Kawazu S,Kato N et al. Uptake of remnant like particles (RLP) in diabetic patients from peritoneal macrophages. J Atherosclerosis and Thrombosis. 1994; 1: 98-102. 5. 伴野祥一, 宇都木敏浩, 加藤典弘ら. インスリン 泌能と 冠動脈 化病変. 糖尿病性合併症 1991; 4: 233-240. 6. 伴野祥一, 河津捷二, 宇都木敏浩ら. 冠動脈性疾患患者に おける耐糖能異常とインスリン抵抗性の存在. 糖尿病 1999 ; 42: 895-902. 7. 伴野祥一, 柳川益美, 上條 隆ら. 運動を中心とした生活 習慣介入によるインスリン抵抗性と耐糖能の改善 : 5年 間の経過. 糖尿病 2011: 54: 795-799. インスリン抵抗性 私の臨床研究の流れ 74

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