ライフスタイル研究における規範概念の位置づけに関する研究 : 男性ファッションの変容からの考察
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(2) ライフスタイル研究における規範概念の位置づけに 関する研究. 一男性ファッションの変容からの考察一 Study of normative conduct in l ifes1二ylθ study. −Consideration from change of men’ s fashion一. 関西学院大学大学院 商学研究科. 博士後期課程. 圓丸哲麻.
(3) 目次. 第1章 序論 第1節 問題の所在. 第2節論文の構成 第2章 マーケティング研究におけるライフスタイル概念の再考 第1節 ライフスタイル概念誕生の背景 第2節社会学におけるライフスタイノレ概念. 第3節心理学におけるライフスタイル概念 第4節マーケティングにおけるライフスタイル概念 第5節複合的システム概念としてのライフスタイル概念 第3章 マーケティング研究における規範概念の位置づけ. 第1節 社会心理学における規範概念の定義とその所在 第2節 実証社会学研究における集団規範概念. 第3節マーケティングにおける規範概念 第4節 総括一マーケティング研究において規範概念を研究するために一. 策4章 消費者行動研究における生活者の価値観形成 第1節 ライフスタイル分析における価値観類型 第2節 政治学における価値観形成研究 第3節 社会学における価値観形成研究 第4節 消費者行動研究の系譜と価値観視点の欠如 第5節 消費者行動と二種類のライフスタイル志向性. 第5章男性ファッション消費における2種類のライフスタイル志向性 第1節 衣類のもつ役割と多様性 第2節 日本における野性ファッション消費の経緯. 第3節男性ファッション市場における規範戦略 第4節男性ファッション消費における2種類のライフスタイル志向性 終章 ライフスタイル概念における規範の位置づけ. 第1節複合的ライフスタイル概念の再考 第2節 日本における規範の変容と消費の変化 第3節 コミットメントと消費の変容 第4節 規範に基づくマーケティング戦略の重要性と今後の課題.
(4) 第1章 序論 第1節 問題の所在 近年、多くのマーケティング研究において、日本の消費者は多様化・個性化していると議論さ れ、一般的にも周知のことのように認識されている。また消費者は、生活を能動的・主体的に設 言十するようになり、ライフスタイル概念はそのような消費者の多様化・個性化の基礎となる概念. として議論されている。そして既存のマーケティング研究において、ライフスタイル概念は、心 理学研究に則り個人の消費行動を規定する概念であると議論されたり、あるいは社会学研究の観 点から市場を区分するための分類軸として議論されていたりする。 しかし、マーケティング研究におけるライフスタイノレ概念は村田・井関・川勝(1979)が主張. するように、そもそも「多面的な生活システムを包括的に捉える複合概念」であり、個人消費行 動に影響を与える外的要因としてライフスタイルのみを議論の対象とすることや、あるいは市場 セグメンテーションの分類軸としてのみ議論されるべきではない。加えて、「日本伝統のライフ スタイル」や「大学生のライフスタイル」など社会や集団が共有するライフスタイルに関して、 既存のマーケティング研究を踏襲し上で理論的な議論が行われなければならない。 しかしながら、マーケティング研究における“集団が共有するライフスタイル”に関する議論 は、心理学的観点からライフスタイル概念を検討する研究者が主張するように、「個人のライフ スタイルの集合体」であるという議論や、一方杜会学的観点に立った研究者が主張する「市場セ グメンテーションの結果」であるという議論しかなく、本来の社会学で議論されているような「社. 会や集団で共有された価値観」としてのライフスタイル概念を議論してはいない。 そこで本研究では、以上のようなライフスタイル概念に関する研究上の不備を背景とし、既存 のライフスタイル概念を概観しその問題点を明らかにすることで、個人の価値観に基づくライフ スタイルと社会(集団)の価値観に基づくライフスタイルの概念的位置づけを検討する。そして、. 「個人の消費を制限する」概念であると想定される社会的ライフスタイル概念について、社会心. 理学において数多く議論されてきた規範概念を用いて議論する。 また個人の価値観に基づくライフスタイル概念と、集団の価値観に基づくライフスタイル概念 の相違を明確に提示した後、近年の男性ファッション消費の事例を鳥鰍することで、購買行動と ライフスタイル概念の関係を考察し、消費者行動研究を基礎としたマーケティングにおけるライ フスタイル概念の位置づけを明らかにする。. 加えて、わが国における「消費の多様化・個性化」の現象が、社会環境の変化と、それに伴う 2つのライフスタイルの変化を起源とすることを明らかにする。. 第2節 論文構成 第2章では、近年では日常会話においても使用されるようになった、「ライフスタイル」に関. 3.
(5) する概念整理を行った。「ライフスタイルにあったファッション」あるいは「ライフスタイル提 案企業」など、様々なメディアにおけるコピーに見受けられるように、“ライフスタイル”を志 向とするマーケティング戦略は多くの企業で採用されている。また、それらのマーケティング戦 略が市場に根付いたということもあり、消費者も自分たちの生活を能動的・主体的に設計すると いうという、まさにライフスタイノレを謳歌しようとする時代となっている。. しかしながら、マーケティング研究において、「ライフスタイル概念」が扱われたのは、何も. 最近のことではない。その誕生は、1960年と早く、そして80年代にピークを迎え、むしろ最近 まではあまり研究はなされないようになってきていた。. ライフスタイル概念が議論されなくなった背景には、ライフスタイル分析が人々の行動の規定 諸要因および諸プロセスを相互に関連させ、そして統合するために見取り回として役に立ってき たものの、分析としては多々不十分な結果であったことが挙げられる。加えて、ライフスタイル 概念、それ自身においても、議論への関心の高まりとともにいくつかの概念規定上の意見の相違 が見られるようになり、議論が複雑化してしまったことが、ライフスタイル概念がマーケティン グ研究において日の目を当たることがなくなった原因である。. よって、再びライフスタイル概念を検討するために、主に村田・井関・川勝(1979)の研究に 依拠しながらライフスタイル概念の整理・考察を行い、その多義性を明らかにし、そしてライフ スタイル概念の使用に対する示唆を行った。. 第1節では、ライフスタイル概念がなぜ必要とされたかについての、社会的背景を考察した。 そして、ライフスタイノレ・アプローチが、マーケティングにおいて必要とされた事情を4っ提示 した。. それは、消費者行動の新しい説明モデルを求める動き1、市場細分化のより有効な基準への 期待、社会的傾向あるいは生活意識動向の予測2、「生活」発想による商品開発及びマーケティ ング戦略立案のための思考枠組の4つの要因である。以上のような問題意識をべ一スとするライ フスタイル・アプローチは、市場把握のための、あるいは顧客理解のための、さらに対応戦略立 案のための、新しい思考法と、改良された有効な諸技法のセットであることがわかった。 第2節では、社会学におけるライフスタイノレ概念の定義を整理・考察し、初期のライフスタイ ル概念の系譜を検討した。Weber(1968)、Duncan(1969)、Feldman&Thie!bar(1975,村田・. 井関・川勝(1979)の引用による、以下同じ)らの研究を概観すると、社会学者たちはライフス タイル概念を特定の集団や階層が共有するものとして「集団的」な意味で議論していることが明 らかになった。. 第3節では、心理学におけるライフスタイノレ概念の既存研究を概観し、その系譜を検討した。. そして「ライフスタイル」概念は、社会学や心理学でそれぞれ異なった意味合いで研究が行われ. てきたことが明らかになった。しかし、それらの相違とともに、2つのライフスタイル概念には 共通の含意があることが明らかになった3。それはまず、 「ライフスタイル」とは、個人の、あ るいは集団のそれを問わず、“統合機能’’を示しているということである。加えて、両ライフス. タイル概念は共に、独自性、創造性、価値意識、目標志向性を意味し、それぞれの嗜好・選好と 4.
(6) それに相応する選択を通じて、みずからの生活を能動的、主体的に形成しようとしている行動主 体を前提としていることであった。心理学と社会学におけるライフスタイル概念を整理、考察し、. それらの大きな違いは「個人」か「集団」かの視点の違いであることがわかった。. 第4節では、既存のマーケティング研究におけるライフスタイル概念を整理・概観した。マー ケティングにライフスタイル概念を初めて導入した、Lazer(1963)、Levy(1963)、Moore(1963). らの研究を概観すると、個人から社会全体にいたるまで様々なレベルで取り上げられていること がわかった。. というのは、Lazer(1963)はライフスタイルを、社会におけるある特異なセグメント機軸と して捉え、Levy(1963)は個人の自己形成の枠組みと捉えライフスタイルを議論しており、そし. て、Moore(1963)は“家族”といいう限られた小集団を対象とし、その限られた社会における 規定要因や環境をライフスタイルと捉え議論している。. 心理学、社会学、そしてマーケティング研究におけるライフスタイル概念の整理を行った村 田・井関・川勝(1979)も、それぞれの研究を踏襲し、自らもライフスタイル概念の規定を行っ ている。彼らはライフスタイルを、「生活の維持と発展のための生活課題を解決し、充足する過 程で、みずからの独白な欲求性向から動機づけられ、みずからの価値態度、生活設計によって方 向づけられ、外社会(企業、政府、地域社会など)が供給する財・サービス、情報、機会を選択 的に採用、組み合わせ、社会・文化的な制度的枠組からの制約のなかで、日々、週、月、年ある いは一生のサイクルを通して、能動的、主体的に設計し、発展させていく、生活意識と生活構造. と生活行動の3つの次元から構成されるパターン化したシステムである」4と定義している。 そしてこの定義を要約し、 「ライフスタイルとは、生活課題の解決および充足の仕方である」 と主張する。. 以上の議論から、マーケティング研究における「ライフスタイル」概念も、統一的な見解は存 在せず、研究者の視点によって、その概念範囲や意図するところは異なっていることがわかった。. そして、そのことが、ライフスタイル概念を多義的にし、その理解を複雑化していると指摘され た。. また第4節では村田・井関・川勝(1979)が提唱し、ライフスタイル概念を前提としている、 既存の「消費者」とは異なる消費像、「生活者」概念に焦点をあて議論した。村田・井関・川勝 (1979)は、生活者を、「単一商品の市場」ではなく、「多数の商品(生活資源)」を自らの生. 活目標と生活設計に従って意図的に相互関連させ、組み合わせて、能動的・主体的に1つのライ フスタイルを形成・演出するもの」5として議論している。そして、彼らの研究に依拠し、社会 学、心理学、マーケティングにおけるライフスタイル概念と生活者概念の概観を総括すると、ラ イフスタイル概念とはまさに「生活意識と生活行動パターン」あるいは「日々の生活課題の解決」. であることがわかった。加えて、「生活者」に関するライフスタイルの分析とは、人々の行動の 規定諸要因や諸プロセスを明らかにする分析方法であることがわかった。. 第5節では、第2章の総括として、複合的システム概念としてのライフスタイル概念について 検討した。そして、ライフスタイル概念には、個人の価値観に基づく側面と、社会・文化的価値.
(7) 観に基づく側面があることが明らかになった。また、社会・文化的な側面に関する研究の不備を. 指摘し、ライフスタイルを2つの側面、つまり「個人の価値観に基づくライフスタイル」と「社 会的価値観に基づくライフスタイル」から議論することの必要性を主張した。. 第3章では、ライフスタイル概念の社会・文化的側面として、社会心理学における規範概念か ら議論した。北折(2000.2007)、佐々木(2000)の研究に依拠し、社会心理学および実証社会 心理学における規範概念である社会規範概念及び集団規範概念を整理、概観した。. 第1節では、北折(2000.2007)の研究に依拠し、既存の社会心理学研究における規範概念を 検討した。そして、「何に対して規範が準拠する拘束力なのか」という規範の所在は、社会心理 学において一意でないことが明らかになった。加えて社会規範には“外在化された基準”と“内. 在化された信念”という2つの主張が存在することがわかった。そして規範概念は、他者と共有 されていることが前提となる概念であり、つまり外在化された基準であることがわかった。また、. 既存研究の多くでは規範概念の基礎概念として当為概念を位置づけていることを明らかにした。 しかし一方で、Cialdini,Kagren&Reno(1991)らの研究をみると、すべての規範概念が当為. 的であるといえないことがわかった。そして、彼らの議論を踏襲し、規範概念は、命令的規範 (injunctive norm)と記述的規範(descriptivθnorm)との2つの規範に分けて議論すべきと の示唆した。前者は、多くの人々がとるべき行動とか、望ましい行動と評価するであろうという、. 個人の知覚に関する規範であり、当為概念を基礎概念とする。そして後者は、多くの人々が実際 にとっている行動であるとの知覚に基づく概念であり、周囲の他者がとる行動を、その状況にお. ける適切な行動の基準であるとの認知に基づく規範である。この2つの起源を異なる概念を同一 視してしまったことが、既存研究における規範概念の多義性を生み、そして理解を複雑化させて いた要因であることを明らかにした。. 第2節では、より規範概念に対する考察を深めるべく、佐々木(2000)の研究を礎とし、実証 社会心理学の観点から集団規範概念を概観した。実験社会心理学の既存研究においても、規範概 念は研究者の関心によってその定義、位置づけは異なっており、その結果、多義的に扱われてい ることがわかった。. そして、実証社会心理学では、社会学における当為概念の代わりに、社会的圧力という概念を 用いて議論されていることがわかった。. 社会的圧力概念に焦点を当てた議論は、Festinger,Schachter&Back(1950, Ro㎜etveit(1955);佐々木(2000)の引用による、以下同じ)のいう“group standard”の議論. に見受けられるように、場理論(field theory)6と親和的であるとされており、その代表とし て、集団規範の定量的測定をグラフ化したJacks㎝(1960)の研究を概観した。. また、規範概念を直接的に扱ってはいないものの、規範を取り扱っている、Deutsch&Gerard (1955)、Cartiwright&Z㎝der(1960)らの研究を概観し、実証社会心理学における議論の複雑. 性を指摘した。加えて、佐々木(2000)の研究を概観し、規範の構造特性の規定要因として3つ の概念的変数をあることを議論した。3つの変数とは“集団が従事している活動の性格”、“リ ーダーシップ・タイプ”、“集団の凝集性”である。そして、それらの規定要因の変化が、集団.
(8) 規範の変容を導くことを示唆し、更に社会学における規範概念の概観を総括し、集団内における コミュニケーションを通じて構築されるものであることを明らかにした。その結果、規範は集団 と個人との情報のやり取りによって発生し、また個人に内在化されるプロセス描く概念であるこ とがわかった。. また集団から得られる情報は、当然のことながら集団によって多種多様であり、また個人の集 団への関心の違いによって、その個人が内在化する情報も変化することが指摘された。 第3節では、Fishbein&Ajzen(1975.1981)の研究における規範概念を考察し、マーケティン グ研究における規範概念の定義と所為を明らかにした。Fishbein&Ajzen(1975.1981)は、行動. 意図モデル(合理的行為の理論)7に基づいて議論を展開し、「ある対象に対する人々の態度と 行動の相関を、既存研究における概念整理や、新たな要素を組み入れることで両者が密接な関係. にあること」を提示した。そして、行動意図は2つの基礎的な決定因によって導かれると議論し ている。1つは、個人的要因であり、「行動に対する態度」は、と呼ばれるものであり、行動を 遂行する事の当事者の個人的肯定・否定の評価、また評価的信念である。. もう1つは、社会的影響に基づく概念であり、ある状況において、考慮されている問題行動の 遂行に関して、その人にとって重要である他者がどのように考えているのかということに対する、 その個人白身の知覚、信念である。しかし、彼らの研究における規範概念は当為概念に基づく議 論のみであり、社会心理学で議論されている、「個人は、他人が何を正しいと考えているかに基 づいて物事が正しいかどうかを判断する」という、社会的証明(social proof)に基づく、記述 的規範の視点が欠如しているのがわかった。それは、Sheppard,Hartwich,Warshaw(1988)の研 究にみられるよう、「態度と主観的規範からの意図の予測に対する相関の数値の違いから、意図. から行動を予測する結果が研究によってかなり違う」8という、規範の測定に伴う潜在的な問題 とともに、Fishbein&Ajzen(1975.1981)らの研究における問題であることを指摘した。. 第4節では、消費者行動研究において、規範概念と近しい概念、あるいは規範概念を内包する 概念のように議論されている準拠集団の研究を整理・概観した。そして、多くの研究で社会心理 学における命令的規範と記述的規範と同様の議論がなされていることがわかった。しかしながら、. ただ規範概念と準拠集団との違いは、規範概念が集団と個人とのインタラクションから形成され るのに対して、準拠集団における規範は、集団における個人に対する影響力として、また個人に 対する集団からの拘束力として、一方通行的に議論がなされている。規範概念を考察するにおい て、規範の変容というものは切っても切り外せないトピックスであり、その点を考慮すると、準 拠集団における規範は、個人が集団の規範を変容させることを対象としておらず、その意味で規 範概念を完全に網羅できていないことが指摘された。. 第5節では、第3章の総括として、規範概念を再考した。その結果、規範概念の所在は外在化 しており、それが個人に内在化されてはじめて効果をなすことが分かった。しかしその一方で、 規範概念は、準拠集団概念とは異なり、個人が集団から影響を受けるだけでなく、個人が集団に 影響を与えることが明らかにされた。このことは、規範概念が一方通行の情報のフローではなく、. 個人と集団がインタラクションすることで価値を形成するという、コミュニケーション概念であ. 7.
(9) ることを意味する。. 第4章では、第2章、第3章の議論を踏襲し議論するため、「消費者はそもそもどのようにし て価値を認識するのか」ということ、そして「価値観をもった消費者(生活者)がどのように規 範概念などの社会的価値観の影響をどのように受けるのか」ということを明らかにするため、生 活者の価値観形成について検討する。. ライフスタイル概念に関する研究は、特に近年の研究においては、消費者情報処理モデルの研 究を踏襲せず議論されており、価値形成に関する議論がなされていない。また、マーケティング 研究における価値概念の考察も研究者の関心によってさまざまであり、統一的見解が存在しない のが現状である。. そこで「便益の束」としての価値を生活者がいかに判断するのかという疑問を解消すべく、ラ イフスタイル概念における価値観形成について検討した。そして、複合的ライフスタイノレ概念を. 提唱すべく、消費者行動研究において現在まで議論されてなかった「価値観」概念について、政 治学、社会学における価値観形成に関する研究を概観し検討した。. 更に、生活者の価値観形成、社会環境と個人的価値観、また社会的価値観と個人的価値観との 関係を考察した。. 第1節では、ライフスタイル分析の1つである、VALSにおける価値観の類型に関する飽戸(1986). の研究を概観した。そしてVALSの9つの類型は、市場を分析しセグメンテーションした結果で しかなく、つまり価値観を検討したとはいえず、市場における“傾向”を提示した研究でしかな いことがわかった。. 第2節では政治学におけるI㎎1ehart(1977.1981)の「物質志向一説物質志向」を概観し、 社会環境の変化と個人的価値観の形成プロセスを検討した。Inglehart(1977.1981)は個人の価 値観の形成に焦点を当てた研究を行い、価値観の変容のプロセスは、「社会環境の変化→個人の 価値観の変化→政治の変化(社会的価値観の変化)」であると議論する。また彼の議論は、Mas1ow (1954)の欲求階層説とBe11(1973)の脱工業社会論に基づいて議論されており、個人の価値観. が「物質志向(materialism)」から「脱物質志向(post−materia1ism)」への変化は階層的に 移行すると主張されており、社会における経済の安定を必要所兼とするとする議論であった。そ して、社会的価値観の変化とは、個人的価値観の社会における分布の割合に基づくと議論し、個 人の価値観の変化が結果として社会的価値観の変容を導くとことが示唆された。 第3節では社会学におけるYankelo.ich(1982,板坂9)の“ニュールール”を概観し、社会的 価値観と個人的価値観形成に関して検討した。彼は、社会環境に伴う社会的価値観の変容こそ個 人の価値観を規定するものであるとして、社会学における価値観形成のプロセスを、「社会環境 の変化→社会的価値観の変化→個人の価値観の変化」であると議論した。そしてアメリカにおけ る社会的価値観が、不況に始まる社会環境の大きな変化に伴い、 「自己犠牲」から「自己充足」. へと変化したと主張し、そしてその社会倫理の変化こそ消費者の変化を誘発させたと議論する。 彼の議論の特徴は、Maslow(1954)の欲求階層説に基づき、昨今わが国におけるライフスタイ ルに関する議論において言われているような、「豊かな社会になったからこそ、人々は自己を充.
(10) 品させるような生活観へと移行する」ということが必ずしも当てはまらないことを、不況におけ る価値観の変容から議論しているところである。そしてその基底にある社会的価値観こそ「自己 充足」であるとし、彼は、Mas1ow(1954)のいう「自己実現」と異なり、「自己充足」とは、「自. 分の可能性を活かさなければならない」という社会規範によって規定される概念であると議論す る。また、彼は、個人の価値観形成はコミュニティヘのコミットメントからなると議論する。 そして「自己犠牲」の社会においては個人が最もコミットメントしていたコミュニティとは社 会(アメリカ社会)であったが、自己充足への変換により、そのコミットメントの対象を、主体 の身近な集団(家族、友人、同僚など)へと変換させたと主張する。その結果、集団間の価値観 の違いが、個人の価値観の違いに反映され、市場が多様化すると議論した。. 第4節では消費者行動研究の系譜について概観し、価値観に関する理論的研究が行われてこな かった背景を検討した。そして、包括的消費者モデルも、情報処理モデルも、消費者行動の全て を、「情報」や「知識」から説明しようとする理論体系であり、その為、「生きがい」や「信念」. といった意図を規定する個人的価値観や、個人の行動を制限、あるいは画一化する社会的価値観 がとしての規範概念などが議論されてこなかったことが明らかになった。. そして第5節では、総括として生活者の価値観形成において、I㎎1θhart(1977.1981)や Yankelovich(1982,板坂)の議論から、そもそも個人的価値観は社会的価値観からっまり、規範. の中で醸成されるものであるということを主張する。更に第3章で議論したことを踏まえると、 ライフスタイル概念を検討するにおいて、個人的価値観と規範(社会的価値観)の2つのライフ スタイル概念を根幹とし議論することの重要であるといえ、個人的価値観を形成される前提とし て規範概念(社会的価値観)が議論されなければならないことが示唆された。. 第5章では、個人の価値観にのっとった「こだわり」と、社会・文化的な制約である「規範」 が特に並存する、ファッション消費に焦点を当て議論した。第1節では、富澤(2003)の研究に 依拠し、衣類のもつ役割と、その変化と多様性について議論した。そして、衣類の役割には、形 態で集団差を表す役割、状況に機能的に対応するという役割(防寒、動きやすさ等)、個人の表 現方法としての役割があることがわかった。そして、高度成長経済を経験し、消費者が一定所得 水準を持ってはじめて、ファッション・ビジネスが形成されることがわかった。. 第2節では、我国におけるファッションの系譜を概観する。ここでは、明治以降の、西洋ファ ッションの大衆への到来以降に焦点を当て議論する。そして、近代までの男性のファッションの 変容を概観した。その経緯から、男性ファッション消費において、社会的価値観としての規範が 常に存在していたことがわかった。. 第3節では、ユナイテッドアロースの商品戦略と、阪急メンズ館のMD戦略をインタビューと 資料から検討し、その2社の戦略から、規範に基づく戦略アプローチとして、「既存の規範への 対応」と「新しい規範の創造」があることが考察された。. 第4節では、第2章で議論したライフスタイル概念と、第3章で議論した規範概念から、男性 ファッションにおけるライフスタイル概念を考察した。そして、男性ファッションにおける「こ だわり」とは、「トレンド」や「文化」といった社会的価値観から醸成されるものであり、ある.
(11) 制約のもと、自らを表現するという消費であることがわかった。. 終章では、本研究の総括をおこない、ライフスタイル概念における規範概念の位置づけを考察 する。そしてその議論を踏まえ、問題意識に掲げた「消費者は本当に多様化・個性化しているの. か」を議論する。第1節では、本研究の議論から、消費者行動研究を踏襲した上で、ライフスタ イル概念における規範概念の位置づけを議論する。加えて、消費における他人指向性および、消 費者の消費の画一性(大衆化)の根底に規範概念があることを明らかにし、複合的ライフスタイ ル概念を再考し、その概念図を提示する。. 第2節では、Yankelovich(1982,板坂)の「自己犠牲」と「自己充足」の議論を用いて、近年 いわれている消費の多様化・個性化を検討した。そして、高度経済成長まで消費者が実感してい た、一億総中流という共通認識が、バブル崩壊を契機とし崩壊したことにより、国民が共有して いた価値観、つまり「自己犠牲」の社会規範が崩壊し、近年の消費傾向に見受けられるように、 自らが関係する集団規範、「自己充足」の価値観を重視するようになった。そして、その集団間 の規範の違いこそ、消費者の違いの最たる原因であると指摘された。. また第3節では、「自己充足」の時代における主要概念であるコミットメント概念を、組織論 研究における田尾(1997)の議論と、マーケティング研究における久保田・井上(2004)の研究 を参考に、関係性マーケティング研究におけるコミットメント及び組織論におけるコミットメン トについての整理を行った。そしてその概観から、コミットメント概念には、「情緒的」一「功. 利的」という、2つの側面があることを明らかにした。加えて、第3節では、そのコミットメン トの2側面から、わが国の消費の多様化・個性化を考察し、近年の消費傾向の大前提として、生 活者のコミュニティヘの情緒的コミットメントが大きく関わっていることを議論した。. 第4節では、規範に基づくマーケティング戦略を提唱すると共に、本研究の課題を提示した。 まず、規範に基づくマーケティング戦略を、第5章の男性ファッション市場における、ユナイテ ッドアロースと阪急メンズ館のマーケティング施策を参考に、「既存の規範への対応」と「新し. い規範の創造」の2つからなる戦略の重要性を提唱した。またその一方で、本研究における課題 を大きく4つ提示した。. 1つは新たな分析手法への課題であり、1つはさらなる市場調査の必要性に対する課題であり、. 1つは本研究で提示した複合的ライフスタイルモデルの諸要因と消費行動との関係に対する課 題であり、そして1つは規範に基づくマーケティング戦略のよる具体的な提示であった。. 10.
(12) 第2章 マーケティング研究におけるライフスタイル概念の再考. 近年、ライフスタイルという言葉は、ごく一般的に使用されるようになった。rライフスタイ ルにあったファッション」あるいは「ライフスタイノレ提案企業」など、また様々なメディアにお. けるコピーに見受けられるように、“ライフスタイル”に主軸を置いたマーケティング戦略は、 数多くの企業で採用されるようになってきている。またそれに伴い、市場における消費者観も変 革し、消費者が自らの生活を能動的・主体的に設言十しようとする時代、まさにライフスタイノレを. 謳歌しようとする時代へと、近年のわが国は変化している。 昨今のこのようなライフスタイルブームは、当然のことながらマーケティング研究にも影響を. 与えている。その1つの傾向として、市場をセグメンテーションするための分類軸としてライフ スタイルを用いる研究が近年増加していることであり、そこでは“好み”や“趣向”などの生活 行動のパターンの総体として「ライフスタイル」を議論している。つまり、市場を類似的なライ フスタイルのパターンごとに小集団へと分類し、その集団における消費者の動向を明らかにして いこうとする研究である。. また別の近年注目されているライフスタイル研究として、青木(2008)の研究に見受けられる ように、女性の消費ライフスタイルを、一生涯という長期的な時間軸をべ一スに議論している「ラ イフコース」10の研究などがある。. しかしながら、マーケティング研究において「ライフスタイル概念」が扱われ始めたのは、何. も最近のことではない。そもそもマーケティング研究におけるライフスタイル概念の採用は 1960年と早く、そしてそれは80年代にピークを迎え、むしろ最近まではあまり研究はなされな いようになってきていた。. ライフスタイル概念が議論されなくなった背景には、ライフスタイル分析が人々の行動の規定 諸要因および諸プロセスを相互に関連させ、そして統合するために見取り回として役に立ってき たものの、分析としては多々不十分な結果であったことが挙げられる。 加えて、ライフスタイル概念、それ自身においても、議論への関心の高まりとともにいくつか の概念規定上の意見の相違が見られるようになり、議論が複雑化してしまったことが、マーケテ ィング研究においてその研究分野が下火となった原因である。. よって、ここにきて再びライフスタイル概念を再検討するならば、既存のライフスタイル概念 を今一度整理し、その多義性を認識したうえで議論しなければならない。 そこで本稿では、既存のライフスタイノレ概念を、主に村田・井関・川勝(1979)の研究に依拠. しながら整理・考察を行い、多義性を明らかにする。そしてその一方でライフスタイル概念が、 人々の行動の規定諸要因および諸プロセスを、相互に関連させ、そして統合する、複合的システ ムであるということを明らかにする。. 本章では、まずライフスタイル概念がなぜ必要とされたかについて、その社会的背景から考察 する。次に、社会学と心理学における初期のライフスタイル概念の定義を概観する。ここでは、 社会学で議論されたライフスタイル概念と、心理学で議論されたライフスタイル概念の、その定. 11.
(13) 義、位置づけが異なることを明らかにする。そして次に、マーケティングにおけるライフスタイ ル概念を考察する。そして伝統的マーケティングにおけるライフスタイル概念と、ライフスタイ ル分析の既存研究を検討し、その特性と問題点を議論する。. 次に、村田・井関・川勝(1979)が主張した「生活者」という概念に目を向ける。この生活者 概念は、近年見られる“ライフスタイノレ’’を謳歌する消費者に相当する概念である。そこで、マ. ーケティングにおける「消費者」と「生活者」との位置づけの違いを議論し、「生活者」を対象 としたマーケティングの必要性を主張する。. 更に、村田・井関・川勝(1979)が提唱した、ライフスタイル概念に基づく消費者行動の理論 体系を検討し、ライフスタイル概念が複合的システムであることを明らかにする。しかしその一 方で、本章の最後では、彼らが提唱したライフスタイル体系の問題点を指摘し、その問題点を補 い、真の意味で複合的なシステムとなる新たなライフスタイル概念の再考を促す。. 第1節 ライフスタイル概念誕生の背景. 図表2−1:ライフスタイル・アプローチが、マーケティングにおいて必要とされた事情 ① 消費者行動の新しい説明モデルを求める動き. ②市場細分化のより有効な基準への期待 ③社会的傾向あるいは生活意識動向の予測 ④ 「生活」発想による商品開発及びマーケティング戦略立案のための思考枠組み 出典:村田 昭治・井関 利明・川勝 久(1979)、『ライフスタイル全書:理論・技法・応 用』 ダイヤモンド社、pp4−7より作成。. そもそも、ライフスタイル・アプローチが、マーケティングにおいて必要とされた事情は大き. く4つある(図表2−1参照)。 1つは、“消費者行動の新しい説明モデルを求める動き”という事情からである。消費者の行 う商品選択、店舗選択、銘柄選択の差異は、従来、人口学的諸要因(年齢、性別、居住地域など). か社会経済的諸要因(所得、学歴、職業など)によって、十分に説明されるものと考えられてき た。ところが、最近の消費者たちの意識と行動は、人口学的要因や社会経済的要因ではもはや必 ずしも十分に説明できないことが研究の発展とともに明らかになってきた。 こうした背景は、消費者行動のより有益な説明原理を求める要請を活発化し、その結果クロー ズアップされた分析方法こそ、ライフスタイル分析である。そしてこのアプローチは、サイコグ ラフィック変数やライフスタイノレ変数を操作して、消費者行動のみならず、投票行動や就業選択 をも、さらに人間行動一般をも説明しうるよう期待されていた。. また1つは、“市場細分化のより有効な基準への期待”という事情である。マーケティングに おけるマーケテイング・セグメンテーション(市場細分化)戦略の定着と、人口学的要因や社会 12.
(14) 経済的要因を基準とする細分化の限界を背景とし、標的とされた特定タイプの消費者・顧客層(セ グメント)へのより有効的な細分化手法の基準として、ライフスタイノレ変数を用いた細分化が有 力視された。. 1つは、‘‘社会的傾向あるいは生活意識動向の予測”という事情である。1970年代を皮切り に、企業環境の変化を探知、観測する試みは、客観的な経済指標や社会指標の動きのみに向けら れるのではなく、むしろ消費者あるいは生活者がそれらの環境変化をどのように受け止め、そこ からどのような生活意識や消費態度を形成しているか、に向けられるようになった。つまり、市 場の動きを、購買意識や購買態度の変化として捉えようとした。 この立場のからの関心は、 「社会的傾向分析(socia1trends ana1ysis)」あるいは「ライフ. スタイル趨勢分析」と呼ばれ、企業活動にとってもっとも重要な環境要因である、人々の価値観 や生活様式の変化を、新しいライフスタイルの形成と拡大という視点から、マクロ・レベルで分 析しようとするものであるI1。この分析方法は、 「人々は、客観的な環境に直接反応するもの ではなく、むしろ環境について抱いている主観的なイメージに従って行動を起こす」という行動 科学の視点を前提にしており、ライフスタイルの心理的要素が効果的に測定され、そして分析さ れるならば、社会・経済的変化や環境変化の方向をさぐるのに相応しい方法であると考えられて いた。. 1つは、“「生活」発想による商品開発及びマーケティング戦略立案のための思考枠組み“と いう事情である。従来、メーカーにおける新製品や関連商品の開発計画、小売業における関連販 売や品揃え計画などは、もっぱら企業サイドから行われることが多かった。しかしながら、この ような企業サイドからの発想が、生活者たちの「商品はなれ」を促進し、消費停滞の一因となっ た。そこで注目されたのが、ライフスタイル志向のマーチャンダイジングである。 それは、企業の提供する製品やサービスを選択し、使用して、欲求を充足し、日々の生活課題 を解決するプロセスにおいて、どのような価値・態皮、活動のパターンをつくり出しているかを 分析しかつタイプ分けをする、加えて新製品や関連商品などの発想を求めそれらの潜在的需要基 盤を発見しようとする一連のマーチャンダイジング方法である。言い換えれば、市場をライフス タイルに基づいてセグメントしようとする試みである。. 近年では、消費者から生活者へと質的転換をした相手に対し、物品を製造し販売するだけでは 十分に対応しきれないとし、ライフスタイルそのものの提供こそがこれからの企業戦略であると 強調されている。. 以上のような問題意識をべ一スとし、ライフスタイル・アプローチは、市場把握のための、あ るいは顧客理解のための、さらに対応戦略立案のための、新しい思考法と、改良された有効な諸 技法のセットとして議論されてきた。すなわち、それは、井関(1979)が主張するように、「消 費者についての見方の転換から始まり、新しい説明原理、分析の諸技法を含み、さらにはその分 析結果にもとづいて、消費者ライフスタイルの形成と発展に積極的に貢献・参与しようとする企 業側のマーケティング活動までもカバーするもの」12である。 このような4つの事象から、元々社会学や心理学において研究されていた議論を導入する形で、. 13.
(15) マーケティング研究におけるライフスタイノレ概念は誕生した。. 次節では、社会学と心理学におけるライフスタイル概念の定義を整理・考察し、ライフスタイ ル概念の本質を検討する。. 第2節 社会学におけるライフスタイル概念. 「ライフスタイル」概念は、そもそも社会学者Weber(1968)と、精神分析学者であったAdler (1969,村田・井関・川勝(1979)の引用による、以下同じ)によって、生み出された概念であ. る。Weber(1968)は、社会階層を、経済的関係、特に生産体制への参与の型からのみ理解する のは極めて不十分であるとして、 「階級(c1ass)」のほかに「地位グループ(status group)と. いうコンセプトを提案した13。それは、財の消費様式、職業、養育と教育のパターンによって 形成される階層であり、生活様式、生活態度、人生観などの点で類似性があるという意味で、特 定のrライフスタイル(sty1e of life,1ife sty1e)」を共有していると考察された。 しかしながら、社会学者のDuncan(1969)は、Weber(1968)の提唱する「ライフスタイル(style. of life,1ife style)」が、単なる嗜好や態度を意味するにとどまらず、さらに社会生活にお. ける1つの統合原理であると主張し、「ライフスタイル」と英訳されるべきものであると主張し た14.Duncan(1969)の議論において、 「ライフスタイル」のrスタイル」とは、それを表現 する行為者にとって「主観的な意味」をもつばかりでなく、そのスタイルが共有されている集団 にとっても「客観的意味」を持つ表現や様式である。よって、彼が主張する「ライフスタイノレ」. とは、集団に所属する人々にとっては同調すべき規範であると同時に、それを代表するシンボル を意味する。. また、Feldman&T㎞ie1bar(1975,村田・井関・川勝(1979))は、アメリカ社会の多様性 と、そのなかでの類似性を整理するために、「ライフスタイル」概念を活用した。彼らは、「ラ イフスタイル」概念の曖昧さを認知しながらも、この概念の網羅する範囲を次のように要約した 15. D. 1つは、“ライフスタイルは、1つの集団現象である’’という、「様々な社会集団への参加や. 重要な影響者との関係から形成されるものである」ということ。1つは、“ライフスタイルは、 生活の多側面、多領域に浸透していく”という、「ある個人が生活の1領域でどのように行動す るかを知れば、他の生活領域でどのように行動するかを予測できる」ということ。1つは、“ラ イフスタイルは、「生きがいまたは価値観(central life interest)」を含んでいる”という、. 「生活の中心となる特定の価値や関心や活動が、そのライフスタイルをシンポライズし、他の関. 心や活動がそれによって強く影響される」ということ。1つは、“ライフスタイルは、いくつか の社会学的変数に応じて、変異を示す“という、「経済的条件や所得水準が同じであっても、地 位と役割に応じて、さらに年齢、性別、人種、宗教、居住地域に応じて、異なったライフスタイ. ルがありうる」ということ。そして1つは、”アメリカン・ライフスタイルは、アメリカ文化と 社会の反映である”という、「アメリカの市民たちは、単にアメリカ人であるというだけで、多. 14.
(16) かれ少なかれ、ある類似のライフスタイノレを共有している」ということ。. この5つの事象が、Feldman&Thie1bar(1975,村田・井関・川勝(1979))が提唱するラ イフスタイル概念の、概念的範囲である。. 以上のように、社会学者たちがライフスタイル概念を、特定の集団や階層が共有するものとし て「集団的」な意味で用いたのに対して、精神分析学者のAdler(1929,村田・井関・川勝(1979)). は、「個人」の観点からこの概念を議論する。. 第3節 心理学におけるライフスタイル概念 Adler(1969,村田・井関・川勝(1979))は、 「行為主体としての個人は、外部の刺激に対 する単なる反応者ではなく、能動的で、目標志向的でありかつ自己統一性をもった存在である」. と主張する16。そしてこのことを前提として、過去における生活環境への対処経験あるいは生 活課題の独白な解決方法と、将来に向けた目標志向努力のなかに、個人の自己一貫性と統一性が 読み取られ、その全体性を「ライフスタイル」と定義づけた。. Ad1er(1969,村田・井関・川勝(1979))の「ライフスタイル」概念の系譜に属する研究者 は、Allport(1965)や.Coleman(1964)などを挙げることができる。Allport(1965)は、ライ フスタイル概念を、「生活の過程でしだいに形成されてくるもので、個人の生活処理のすべてを、. あるいは少なくともその大半を、日々方向づけ、統合するもの」と規定する17。一方Coleman (1964)は、「各個人の知覚、思考、行動の一貫した仕方」をライフスタイルと規定し、「各個 人は、独自の比較的首尾一貫したライフスタイノレを確立する傾向を持つ」と主張したユ8.. Adler(1969,村田・井関・川勝(1979))、A11port(1965)、Coleman(1964)等の、心理 学におけるライフスタイノレ概念を概観すると、そのどれも個人の自己一貫性と統一性から議論し. ていることが分かった。そして、前節で議論した社会学におけるライフスタイルが「集団」に焦 点を当てて議論されていたのに対し、心理学におけるライフスタイル概念は「個人」の内なる価 値観として議論されていることがわかった。しかし、その一方で、それらには共通の含意も存在 する。. 村田・井関・川勝(1979)は、社会学と心理学におけるライフスタイル概念を整理し、社会学 ではライフスタイルの行為主体が「集団」を前提として議論されていることを、加えて、心理学 においては行為主体が「個人」を前提として議論されていることを明示した。しかし彼らは、そ. れらの相違を指摘しつつも、2つのライフスタイル概念には共通の含意があることも主張してい る19。. それはまず、 「ライフスタイル」とは、個人の、あるいは集団のそれを間わず、“統合機能” を示しているということである。加えて、両ライフスタイル概念は共に、“独自性”、“創造性”、 “価値意識”、“目標志向性”を意味し、それぞれの嗜好・選好とそれに相応する選択を通じて、 みずからの生活を能動的、主体的に形成しようとする“行動主体”を前提としている。井関(1979). は以上のような論理から、「どちらのライフタイノレ概念においても、その主体たる人間は、環境. 15.
(17) と相互作用している、首尾一貫した目標志向の統一体と想定されている」と主張する20。 このように村田・井関・川勝(1979)の研究に依拠しながら、心理学と社会学におけるライフ スタイル概念を整理、考察してきたが、それらの大きな違いは「個人」か「集団」かの視点の違 いであり、本質としてはどちらも「自らの生活を能動的、主体的に形成しようとしている行動主 体」という前提を暗黙に持っていることがわかった。. 次節においては、マーケティングにおけるライフスタイル概念の定義と、その系譜について考 察する。. 第4節 マーケティングにおけるライフスタイル概念. 本節では、マーケティング研究におけるライフスタイル概念を考察する。まず初めに、マーケ ティングにおける、初期のライフスタイル研究を考察する。そして次に、ライフスタイノレ分析の. 経緯を検討し、その特徴を議論する。そして村田・井関・川勝(1979)が提唱した、新しい消費 者観である生活者発想と、ライフスタイル概念に基づく消費者行動の理論体系の試みを検討する。. (1)マーケティング研究におけるライフタイル概念の発芽. 前述したように、マーケティング研究において、ライフスタイル概念が登場したのは1960年 代初頭であり、その概念が一躍注目を浴びるようになったのは、1963年のアメリカマーケティ ング協会(AMA)の冬季大会における、「ライフスタイノレの影響と市場行動」をテーマにした シンポジウムであった。そのシンポジウムのなかで、Wi11iamLazer,SidneyJ.Levy,DavidMoore. の3人は、三者三様の概念規定を行った。. Lazer(1963)は、ライフスタイル概念を「社会全体の、あるいは社会のなかのあるセグメン トに特有な他から区別される特徴的な生活様式」と規定した21。彼の概念においては、消費者 が購入する財やサービスの組合せとその総量、それらが消費される仕方は、社会の、あるいは特 定セグメントのライフスタイルを反映している。. Levy(1963)は、個人のライフスタイルを取り上げ、それが多くの生活資源の組合せや、個々 の活動が暗示するサブ・シンボノレから合成された複合シンボルであり、「個人のセルフ・コンセ プト」に近いものであると主張する22。村田・井関・川勝(1979)が指摘するように、Levy(1963). の議論は、先に述べたAdler(1969,村田・井関・川勝(1979)))の系列に属する議論である と考察できる。. 一方、Moore(1963)の定義は、Le.y(1963)の定義と異なり、家族のライフスタイルに焦点 を当てており、その意味では社会学のライフスタイル概念の系列に属すると考察できる。という. のは、Moore(1963)のライフスタイル概念は、r“パターン化された生活様式”であって、家 族成員が、様々な商品や出来事や資源を、それを目指して適合させていくもの」と規定されてい. る23。つまり、消費者が商品を購入するのは、「ライフスタイル・パッケージ」の中身を満た 16.
(18) すためであり、また家族信念体系の具体化のためであると議論している。 このようにマーケティング研究における最初のライフスタイル議論は様々であり、Lazer(1963). はライフスタイルを社会におけるある特異なセグメント機軸として捉え、Levy(1963)は個人の. 自己形成の枠組みと捉えライフスタイルを議論し、そしてMoore(1963)は“家族”という限ら れた小集団を対象とし、その限られた社会における規定要因や環境をライフスタイルと捉え議論 している。つまりマーケティング研究における初期のライフスタイル概念は、個人から社会全体 にいたるまで様々なレベルで取り上げられているといえる。. 次項では、本章の第1節で議論した事情を背景とし、一時期、マーケティング研究における分 析アプローチの一大潮流となったライフスタイル・アプローチの系譜を概観し、ライフスタイル 分析についての理解を深める。. (2) マーケティングにおけるライフスタイル・アプローチの経緯. マーケティングにおけるライフスタイル研究は、1960年代半ばに、Lazer(1963)等により導 入されたのが最初であると議論したが、その分析方法としては、モティベーション・リサーチと、. パーソナリティ研究を合わせる形で誕生した。. モティベーション・リサーチとはそもそも、Dichter(1964)がフロイトの精神分析学を基礎と して、消費者行動を解明しようとした研究であり、人間の動機づけに焦点を当てた研究である24。 そのモティベーション・リサーチがマーケティング研究にもたらした貢献とは、意識を、「意識」、. 「潜在意識」、「無意識」に分割し、無意識の部分を明らかにしようとした点であり、従来の研 究では測定できなかった、感情的で非合理的な行動を説明しようと試みたことである。 しかしながら、その測定された数値の解釈に主観的側面が強く導入されすぎてしまうため、同 じ現象を説明するのでも研究者により解釈が全く異なり、普遍性が低いという特徴を持っている。. そのため、マーケティング研究におけるこの分野の研究は1960年代を境に急速に減少していっ た。加えて、すべての行動の根元を、フロイト研究の学者が導く人間の性的な欲求に深く侵入し すぎるという道徳面での問題、調査に時間がかかるためサンプルが限られてしまうという問題か ら、仮説構築のための理論とみなされ、結論を導くための理論ではないと批判された25。. 以上のような理由から、80年代には精神分析学のコンセプトを消費者行動に適応することは 無意味だという議論が高まり、モティベーション・リサーチ研究は現在ではほとんど行われなく なっている。. また一方のパーソナリティ研究とは、モティベーション・リサーチと同様フロイトの精神分析 学を基礎とした研究であり、人間の無意識な本質の探究を試みた研究である。しかしながら、モ ティベーション・リサーチとパーソナリティ研究の違いは、前者が研究者の主観に基づく判断を していたのに対して、後者は、精神病患者を測定する客観的な尺度でそれを探求しようとした点 である。. 清水(1999)が指摘するように、「パーソナリティ研究の消費者行動への導入は、 17.
(19) Koponen(1960)26による喫煙とパーソナリティの研究が最初とされており、彼の研究以降、パー ソナリティ研究は、ブランド・ロイヤルティとの関係、貯蔵性向、広告への反応など、多くの消 費者行動研究で用いられてきたものの、それら結果から得られた知見は、パーソナリティが、消 費者行動を説明しない」27という事実である。 つまりパーソナリティ研究で問題とされている点は、尺度の妥当性であり、C P I,G P P,. TT Sなどの測定尺度があるものの、それぞれはそもそも精神科の患者を探るために作成された. 尺度であるため、そのまま消費者行動研究に適応することに疑問が出されている。また、 Nakanishi(1971,清水(1999)の引用による)が主張するように、測定尺度の妥当性をあげるた. めに、消費者の行動を時系列で捉えるべきだという議論も存在している28.1970年半ば以降も 細々ではあるが、パーソナリティの研究は行われているものの、残念ながら現在に至るまで、妥 当性のあるパーソナリティ尺度は開発されていない。. 重複するが、上記のモティベーション・リサーチとパーソナリティ研究をもとにライフスクイ 分析は、消費者行動研究において提唱された。ここでいうライフスタイルとは文字通り、消費者 の生活スタイルヘの考え方を示す概念であり、モティベーション・リサーチの持つ質的研究と、 パーソナリティ研究の持つ量的な研究を併せ持ち、消費者に対して既存の文献などから作成され た質問項目から質問を行い、それをデモグラフィック要因の分析と同様に、数量的に処理できる ようにしたのが、このライフスタイル分析の特徴であり、実際の分析では、デモグラフィック要 因と併用されることが多い。. 測定尺度としては、AI0やVALSなどがあり、Wells(1971)等によりAI0項目に従った分析が 有効であることが示されて以来29.!970年代を通じてその項目にデモグラフィック要因を加え た分析が多数行われ、多くの研究成果をあげた30。. ちなみにAI0項目とは、Activities(消費者はどのように時間やお金を使っているのか)、 Interests(自分の周りに存在するもののうち、何を重要と考えているのか)、0pinions(自分 やその周りの人のことをどう感じているか)から構成される尺度であり、Activitiesでは仕事、. 趣味、バケーション、ショッピングが、IntereStSでは家族、仕事、ファッション、メディアな ど、0pini㎝では社会問題や経済、文化などがあげられている。. AI0に削った分析は、消費者の活動、関心、意見を用いるという大枠はあるものの、その個々 の項目の内容については、結局は研究者に任されているため、精緻化を求めようとすると非常に 質問項目が多くなる、という実務上の問題点と、そのようにして作成された質問項目には妥当性 がない、という学問的間題点が生じると議論されている31。. 一方VALSは、スタンフォード大学で開発された指標であり、基本的にはMas1owの欲求階層説 に準拠し、設計されている。VALSの特徴としては、1980年代のアメリカにおけるライフスタイ. ルを9つのセグメントに分類したことである。この9分類については、第4章にて飽戸(1986) の研究を概観し検討する。. VALSも一般的なライフスタイル尺度として多くの研究で用いられてきたが32、清水(1999) 指摘するように、外部志向性のセグメントが多く、その他のセグメントをターゲットとする意味. 18.
(20) に疑問が出されたこと、また欲求階層説に準拠しているということもあり、デモグラフィック要 因の影響が強く反映されるという指摘がなされている33。 このようにライフスタイル分析は、マーケット・セグメンテーションの切り口として有効であ ったため、消費者行動研究においてその分析が広く成功をおさめたものの、その実態は、消費者 の動機付けなどの感情的で非合理的な行動を明確にしている研究とは言いづらい。というのは、 消費者が動機付けられそして購買するまでの一連のプロセスを加味した上で「ライフスタイル」 は研究されておらず、そもそもライフスタイル概念自体について明確に規定をしている研究もほ とんどない。こういった事象と、上述したように、研究者各自の主観によりライフスタイル概念 が研究されているということも相まって、清水(1999)も指摘するように、その位置づけ及び測 定に関しての妥当性が疑問視される34。. ライフスタイル分析の近年の傾向としては、一般的なライフスタイル尺度を作成するのではな く、目的に応じたライフスタイル尺度を作成する傾向がみられている。このことは、一般的なラ イフスタイル尺度は、汎用性が高くても、個々の商品選択などにはあまり良い結果を導かないた めに考え出されてきた。. そして、このような狭義のライフスタイル研究ともいえるライフスタイル分析の研究は、汎用 的なライフスタイル・セグメンテーションを形成する研究と、ライフスタイル要因を用いてセグ. メンテーションを行う際の妥当性確保の、大きく2つの流れで研究がなされてきた。汎用的なラ イフスタイル・セグメントは対象商品ごとのセグメンテーションや、時代の流れに合わせたセグ メント形成を目指す方向で研究がなされているのに対し、一方妥当性の確保に関する問題は、清. 水(1999)35が指摘するように、主観的な項目を対象に調査していることもあって未解決な部 分が多い。. 以上のように、既存のライフスタイノレ分析の多くを概観すると、それは人々の行動の規定諸要. 因および諸プロセスを相互に関連させ統合するために見取り回として役に立ってきたものの、分 析としては多々不十分な結果であったことが指摘される。. また、ライフスタイル概念、それ自体においても、各研究者によって集団的であったり、個人 的であったりなど、研究者の主観によってその位置づけは相違している。そしてその違いこそ、 ライフスタイル概念の特質である多義性をより複雑化させ、ライフスタイルに関する議論の理解 をますます難しいものにしてしまったと考察される。. その他にも、井関(1979)が指摘しているように、消費者行動研究の理論体系を考慮せずライ フスタイル概念を議論する研究が多く、今後は蓄積されたデータを用いて、消費者の購買行動を 念頭におき理論化することが必要であると指摘される36。 以上のようなライフスタイル研究の不備を補うため、本節の最後では、村田・井関・川勝(1979). が行った、消費者行動研究に基づくライフスタイル概念の理論モデルを検討する。 しかし、その前に、ライフスタイル研究における消費者像について理解しておく必要があろう。. それは第2節において社会学の、第3節において心理学のライフスタイル概念の概観からも明ら かしたように、ライフスタイル研究が対象とする主体は、「自らの生活を能動的、主体的に形成. 19.
(21) しようとしている行動主体」と暗黙的に想定され議論されている。. このような主体の特性は、それまでの伝統的なマーケティング研究においては想定されておら ず、むしろ既存研究では刺激に対して受動的な消費者を前提とすることが一般的であった。しか し、消費者行動研究の研究潮流が包括的消費者行動モデルから消費者情報処理モデルヘパラダイ ムシフトするに伴い、マーケティングにおける消費者像も一変することとなる。村田・井関・川 勝(1979)が提唱したライフスタイル概念を検討するにあたっても、その前段階として、新しい 消費者像を議論する必要がある。. 伝統的マーケティング研究における行動主体に対する前提の限界と、第1節で議論したような マーケティング戦略におけるシーズ志向の限界などの事象を背景とし、消費者行動における情報 処理モデルを踏襲した上で、村田・井関・川勝(1979)が提唱した人間観こそ、「生活者」発想 に基づく新しい消費者像である。. (3)マーケティングにおけるr生活者」発想. ライフスタイル概念のマーケティング研究への導入は、また既存のマーケティング研究におけ る消費者の見方、つまり人間観の転換を促すものであった。それは、ライフスタイル・アプロー. チの議論が花咲いた1970年代、日本国内の市場が成熟化するにつれ、人間観や福祉観や価値観 の転換が語られたことを背景にする。. その偏りを受け、企業活動の最終対象者である「消費者」についても、その見方を変える必要 が指摘されてきた。そこで出てきた概念が、既存の「消費者」とは異なる消費像、「生活者」概 念という新しい人間観の誕生である。生活者と消費者について、村田・井関・川勝(1979)は次 の図表2−2に観られるよう、対極にあるものとして議論している。 既存研究における「消費者」とは、経済の総循環過程における依存的かつ受動的な「消費単位」. として扱われており、一定の所得水準・購買力を持った「単一商品の市場」として議論されてき た。しかし一方「生活者」は、多数の商品(生活資源)を自らの生活目標と生活設計に従って意 図的に相互関連させ、組み合わせて、能動的・主体的に1つのライフスタイルを形成・演出する、 と議論されている37。. つまり、「生活者」とは、受け身的な企業にとっての単一商品に対する最少規模の市場という 「消費者」とは異なり、主体性を持ち、企業に対して能動的にアプローチし、自ら「市場」を選. 択するものであり、消費者行動研究における情報処理モデルの議論に基づく概念といえる。 以上のような、企業活動の最終対象者である「消費者」から「生活者」への見方の転換は、今 日のマーケティング研究で大きく取り上げられている、マーケティングにおける刺激一反応型か ら関係性へのパラダイムシフトの根幹をなす議論である。. というのは、刺激一反応型パラダイムにおいて消費者は対象者、つまり受け手であった。しか. し、和田(1998)38や嶋口・石井(2000)39を代表とする研究者が近年特に重要であると議論 する関係性のパラダイムにおいて、消費者は企業と主体的にインタラクションを行う能動的な消. 20.
(22) 費者であり、まさに「生活者」の消費者像を前提に議論がなされているといえ、すなわちこの新 しい消費者観は、現代のマーケティング戦略において重要な示唆を与えてくれるものであると位 置づけることができる。. これまでの議論を振り返ると、ライフスタイルとはまさに「生活意識と生活行動パターン」、 あるいは「日々の生活課題の解決」である、ということがわかった。そしてそれらを分析しよう と試みるライフスタイル・アプローチにおいて、「生活者」概念は、市場における消費や購買を 分析するときに前提となる「発想の枠組」や「視点の設定」を齋してくれる概念であるといえる。. 逆説的にいうならば、「生活者」に焦点を当てたライフスタイルの分析とは、人々の行動の規 定諸要因や諸プロセスを明らかにする分析方法であると位置づけることができる。しかしながら、 先述したように既存のライフスタイル分析は、生活者の行動のプロセスを明らかにする研究と言 うよりも、市場をセグメンテーションするためにライフスタイノレ要因を用いる研究であった。. 以上のことからマーケティングにおける既存のライフスタイル研究を概観すると、消費者が動 機付けられそして購買するまでの・連のプロセスに焦点を当てたライフスタイノレ概念の議論は 存在せず、またその概念自体を明確に規定する議論もほとんどないことがわかった。そして、そ のライフスタイル研究における消費者行動に関する視点の欠如ゆえに、村田・井関・川勝(1979). は、生活者の購買行動を踏まえたうえで理論化することが必要であるとし、社会学、心理学、お よび伝統的マーケティング研究におけるライフスタイル概念と、ライフスタイル分析の諸研究を 整理・概観した後、ライフスタイルに基づく新たな消費者行動研究の理論体系を提唱した。 次項では、本節の総括として村田・井関・川勝(1979)が試みた、ライフスタイル概念に基づ く消費者行動研究の理論体系を概観する。. 21.
(23) 図表2−2:生活者と消費者に違い 従来の「消輿考」イメージ. 新しい「生潜者」イメージ. 経済金体の中での「消 ?P位」. 人間的個億,生命およ. ム生活文化の「生産単 ハ」. 単一商品の買い乎. 多数の商品を組み合わ ケて「ライフ・スタイ 求vをつくる主体. 一定水準の所得・購買 ヘが影響する. 複雑な欲求,価値態度 カ活目標が影響する. 受身できまりきった生. 主体的に生活設計をす. ?. 驕F. する;同調型. 企業側の働きかけに受 ョ的に依存している対. ロ. 企業活動に逆に働きか ッ,評価する能動的な・. 蜻フ. 生活環境や商品を使う. 況に鈍感. 「生産と労働の諭理Jあ 驍「は「経済の諭理」に. ]う. 生活環境や商品を使う. 況に敏感. 独自な「生活の諭理」「レジャーの諭理」を. 烽ツ. 出典:村田 昭治・井関 利明・川勝 久(1979)、『ライフスタイル全書:理論・技法・ 応用』 ダイヤモンド社、p18。. (4)村田・井関・川勝(1979)のライフスタイル概念. 井関(1979)は、ライフスタイルを「生活の維持と発展のための生活課題を解決し、充足する 過程で、みずからの独白な欲求性向から動機づけられ、みずからの価値態度、生活設計によって 方向づけられ、外社会(企業、政府、地域社会など)が供給する財・サービス、情報、機会を選 択的に採用、組み合わせ、社会・文化的な制度的枠組からの制約のなかで、日々、週、月、年あ るいは一生のサイクルを通して、能動的、主体的に設計し、発展させていく、生活意識と生活構. 造と生活行動の3つの次元から構成されるパターン化したシステムである」40と定義する。 そして、この定義を要約し、「ライフスタイルとは、生活課題の解決および充足の仕方である」. 22.
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