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五井蘭洲『萬葉集詁』中(翻刻)

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(1)

萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

  萬葉集詰 四 五 六       と有。いはひは                                         ︵ 内扉題︶      ︵一オ︶               草 木穀菜       なといふ草の冬は赤くて春は青くなる類か。 いつもの花仙云、いつはほむる詞。藻の花也。見    いはとかしは 石と柏と也。諸説分明ならす。石の   一         安 云、出藻。       異名といふ説まされり。      87

 いつしは 市柴又櫟柴又五柴とも書。いつかと云に  は はる 春ははりつ﹀秋はちり来ると有。木の葉也。   一    かけたり。いちひの柴なり。      はりは木の芽のはり出る也。此寄木の葉をいはうつきあふ 草木の露霜にそむるなり。      すしてかく詠り。は小すけ 岩根に生する菅也。       はき 秋はきとも、さのはきとも。榛の字用ひたるちしの花 契云、蓬菓也と。いちこの事也。これ      ははりの木なり。ものを染る物也。芽子の字用     仙説也。季云、八雲抄羊蹄といへり。和名しふ      ひたるは常のはき也。これも衣にすりつくる也。     草 又 し也。愚案に、今俗其根をしのねといふ。      又紫草と書たる有。これ又染草也。又今俗よめはつな 石綱と書。諸注分明ならす。愚案一種の      のはきといふも寄に詠るとみえたり。甚混して ものx名なるへし。下のつ﹀きは又わかえつ㌔     分明ならす。 五 井 蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶

(2)

五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶ はなちらふ 花のちりかふなり。      はまひさき 濱にある椴也。又古木をいふとも。                                       ︵ 一 ウ︶    はまな 礒菜と同し。 はたす・き 穂に出てなひくか旗のこときなり。    はまつxら はき原榛原と書。はりの木也。東国にてはんの木    はなつま 花の間也。     といふ。       はれる柳 芽のはる柳也。 はまゆふ みくまの﹀浦の濱ゆふも﹀えなる。     はなえみ 花のひらく也。 はまおき 神風のいせの濱荻とつ﹀<。       ホ にのをなす 凡種の出る時、すこし赤き故いふと也。 はねす 色のうつろひやすきとつx︿。はねすは未    につ﹀し 赤きつ﹀しなり。

詳。朱花といへり。朱花は蓮也。紅蓮は白にう      ︵ニウ︶   一     つりやすき故にいふか。采要云、木芙蓉と有。    にこくさ いつれにも柔なる草也。花とも詠り。十   88 はなかつみ 菰也。愚案、菰には花なし。花菖蒲な      六巻に詠るは萩ならんと契云。      一     らん。       にほひ 秋の葉のにほへる時と有。秋の木の葉の色 はなつま 萩の花也。鹿によせていふ也。鹿のため      つく也。いにしへは色あるをにほひと云。又春     に 萩 はつまのことし。      花の匂ひさかへて、又秋のはのにほひにてれる はつもみち 初紅葉也。       とも。                                       ︵ ニオ︶  保 ほむけ 穂のむかふ也。秋田のほむけのよすると はなす﹀き 契云、おほくはたすxきと詠り。はな      つx<。     す﹀きとはた﹀一首あり。      ほたち 秋の田のほたちと有。稲穂の立也。 はなくはし 草木の花をほむることは也。        ほたて ふるからとつ﹀く。蓼の古きからより生す

(3)

       る也。      いふは神仙の境を云言にて其実事は上国をさ     ほよ 山のこぬれのほよとると有。季云、寄生とい     す。只唐也。        へり。葛なとのやとりたる也。かつらの類也。       ︵三ウ︶        かさしにすると有。       ち ちりのまかひ 花のちりまかふ也。     ほ﹀かしは 厚朴也。      ち﹀の実 ち﹀といふ木あるよし也。仙云、楊梅に                                          ︵三オ︶     似てくるみの実のことき実ありといへり。父を と ときしくのかくのこのみ ときしくは非時と書。時      いはん奥のことなり。        わかぬこ﹀ろ也。かくは香はしき也。橘也。   於 をみの木 もみの木なり。

とかの木のいやつきく とかはとこと同し。とか    をにのしこ草鬼の醜はかさね詞也。こxは忘草を   一        といふ木にかけてかはらぬことをいふ。        しかる言なり。わすれ草にはあらておにのしこ   89

ときわ 契云、常盤なれはときは也。橘をほむるな      草なるかえ忘れぬと也。しこほとxきす、しこ   一     れは、とこは成へし。は﹀葉也。常に葉あるゆ      のますら男、皆同し。 へなり。       をはき 春野のをはきつみてにらしもと有。うはき とこはな 橘はとこはなと有。常に花さけかしと願     ともよめははき也。     ふ 也。       おふくさふし さを鹿のおふくさふしと有。 とをのたち花 たち花の数多き也。季云、遠方の橘    おもひ草契云、此草たしかならす。先は竜臓とい     故 也

と。      ふに

とふさたて あしから山とつ﹀く。      ︵四オ︶ とこよものこの橘 とこよの物也。すへてとこよと      よると。 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(4)

五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶ おほゐ草 大藺草といふ心か、しからは蒲のことか      ても同し。仙云、かきつはたといへり。     と契説也。愚案、今つくもと云草あり。是なる    かしのみのひとり かしの木の実は、からにひとつ     へ し。       のもの也。故にひとりといはんとていふなり。 おとこをみなの花 ものxふのをとこをみなの花と    かけくさ 山かけくさ、又岩、又水かけくさの類也。     有。仙云、おほとちと云草也。是を男女郎花と      もの﹀陰なる草なり。     云 とあり。袖中云、おほとちは、花をみなへし    かへ草 壁に生する草也。季云、諸説かきにすへき     に似て白し。されはおとこへしともいへり。      草と也、外に正義ありと。 お ﹀り 花さきお﹀りと有。花のさきおほひかさな       ︵五オ︶     るなり。      かり菰苅也。契云、菰をむしろとするより直に名 和   わ かたち 萩のわかたちと有。末のわかき葉也。萩     つく。      90

に て い へり。       かたかこの花 不詳。かたかしといへるは誤りと契   一     わさ田かりかね 早田をかるころ雁の来れはなり。     云り。季云、つ﹀しに似たりといふ。     わさほのかつら 早稲の穂のなかくてかつらのこと    かたらひ草 態藝門。         き也。       かりそけ 同右。                                           ︵ ウ︶    かふご 轟部。 加 か

るかやのつかの間時候門に出す。    田たま藻江海の藻をほむる詞也。

    か つら わかxつらきと有。楓の字をかつらとよむ。   たまかつま     か らあゐの花      たむけ草草にあらす。松にても神に手向るをいふ。     か ほはな 野邊の容花と有。一名ならす。いつれに      凡草といへは木をこむるなり。

(5)

たえの穂 契云、たえは白き也。穂はあらはれ出た    つまxの木 まつといふより、妻をまつと解り。一     るを云。白く       種の木の名にあらす。                                       ︵五 ウ︶    つみ さ枝とつx<。契云、桑也と。       ハマこ     みゆる也。こ﹀は霜をいふり。愚案、白き穂也。   つまx 不詳何木。     す xきならん。       つき草 うつろひやすきと有。物にすりいれてさて た まもなす なすは如也。玉藻のことくなり。        外の物へうつすにうつりやすし。又かりなる命まかつら みならぬとつ﹀︿。玉かつらは実のな      とつ﹀︿。契云、月草は朝に咲て晩にしほる﹀     らぬ物とみえたり。又影ともつ﹀く。かつらを      故かりなるといへり。愚案、月草はあゐ花也。     置たる姿のうつくしき也。又たゆることなくと     紙にうつし置て外へうつす故、かりに染て置也。         も。      早くしほむをかりとは云へからす。季云、此花   田

たまxつかえ 松を賞していふ。       月影にさけは月草といふと有。朝露をさきすさ   一 津  つらくつはき こせ山のつらくつはきつらく      ひたる月草のひたくるともにけぬへくおもほゆ         は、連る也。つはきの花は、おほくつらなる故       ︵六ウ︶         なり。      はやくしほむ故かりといふも可也ともいはむ     つきの木槻の字なり。      か。     つちはり 草也。物を染る草也。和名に王孫也と。  奈 なゆたけ 柔竹也。女竹也。とをよるとつx<。た     つほすみれ       はむ故なり。                                           ︵六オ︶    なき うえこなきと有。又なきのあつものとも。延     つ はなぬく 浅茅かはらとつ﹀く。      喜式には供御にそなふと有。今の水あふひの事 五井蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶

(6)

五井蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶     といふなり。      むくらふ むくらのしけりたる也。 なてしこ 石竹と書り。      宇 うえ木 こまとつ﹀<。前に植る木也。こまは木の な﹀ふ菅 七相菅と書。見安云、姿斜なる菅也。又      間也。     天 によそへていふ。      うつ麻苧 麻を打てほそくするなり。服食門。 なのりそ 又ひつき野邊なるなのりその花とも有。    うはき 草の名なり。契云、これはよめかはき也。     契云、花は春さくか、必しも海底に生するもの     季云、義なり。をはきともよむ。     にあらさるか。      ︵七ウ︶ なはのり 縄海苔と有。       うれわ﹀らはに 末のわか葉也。わx誤り也。わく なつそひく うなかみかたとつ﹀く。うは苧也。夏      らは也と契云。         に成て      く くさむさす 草の生せぬなり。むすは生也。      92

︵七オ︶    ︿xめり 梅もく﹀めりと也。又ふくめりとも、又    一         麻 を引ぬくなり。      ふ﹀めりとも、つほみの事なり。     なからへちるは 花のちるを水のなかる﹀心にいへ   く﹀たち 蔓蕎の茎のたちたる也。かみつけのさ         り。       のx<xたちおもはやしと有。 む むらさき あかねさす紫とつ﹀く。紫も赤き類なる  や 山すけのみならぬ 山菅の実ならす也。         故 かくつつけたり。又花ともつxく。但これは    山たちはな 平地木の類也。俗にやふかうしと云。         別 也。萩をいふなりと。       やなきの眉 柳のわか葉をいふ。     むすひまつ 有馬皇子賜死時の故事也。        やまちさ 仙云、田舎人はつさの木といふといへり。     む すき杉の名なり。      季云、いほたに似たる木也と見安にいへりと。

(7)

                                           ︵八オ︶  こ こつみ 木屑と書。ちえの浦わのこつみなすと有。 ま まつか枝のさかへ 松柏の栄へ也。       又糞の字を用ゆれと尿にはあらす。木のきりく     まきのつまて つまては木のうつくしきなり。       すこけら也。浪にゆらる﹀もの也。     まきさく 木をさくなり。      こちくの枝 つきの木のこちくの枝とつ﹀<。     まきたてる 大木のみことにしけり立る也。木の名      こちくは、をちこちの枝なり。季云、ことく         にあらす。       くの枝也。     まゆみ あた﹀らまゆみと有。陸奥の名所。      こたるまて 木の枝のふりてたる﹀なり。     まこ枝木の小枝なり。      こむら 木の茂りたる也。草むらに同し。 ふ﹀りたりとも 花のつほみたりとも也。       こい草態藝門に出。      一     ふ せ 木 をしふみと有。山中の倒たる木ををしなへ       ︵九オ︶   93

行也。又ふせに禁の字を用ゆ。しかれは人を    こぬれか下 樹木のおほき下也。木末の下也、季説。   一     通 さぬ防禁の木のあるをかまはすとをりゆくと    こすけ おき中のとをちの小菅と有。     もいふへし。      こぬれ花さき 木のうれ花咲也。うれは上也。木末 ふ か みる 海底のみるなり。       と書。                                        ︵八ウ︶    こぬれかくれ こぬれは木村也と季云。 ふちなみの思ひまとふ 藤つるの木にまとふより云    このまたちくき ほと﹀きすの木の間をとひく﹀る     詞 也。       なり。ゆ木上にふる雪と有。冬葉の落たる木なり。又    このてかしは 児手のこときかしは也。又やひらて     冬木の梅ともあり、葉の落る木なれはなり。       ともいふ。西行の寄に、このてかしはの花咲に 五井蘭洲﹁萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(8)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂中︵翻刻︶        けりと詠るは別物なりと季説也。愚案に、かし    あえたちはな 契云、今の花柚のことをいふかと、        はは裾也。やひらて同し。葉の形手のひらに似      袖中抄に云        たり。神の供物をのするもの也。延喜式に乾裾      ︵一〇オ︶       青裾と有。このてかしはx葉の小なる也。すへ     食経云、榿和名安倍太知波奈似柚而小者也。又        て裏表のもやう同しき葉也。今聲家物産家側柏      格物論を引て榿橘属樹高枝葉不類別橘又有刺大        といふも誤り也。柏は       者如杯苞黄皮厚香氣複郁可以薫衣可以漬密真佳                                         ︵ ウ︶     果也。又あゆるみとも有。是橘の実を云。仙云、       皆 檜の類なり。      たへたる実なり。たちはなは次の年花さくまて

えたもとを、に 枝のたはむ也。こxは萩にて云。     堪てあるこのみといへり。あゆるは交る也。実   一    えく 菜の名。契云、芹也。新六帖えくに半夏と書。     のおほくて交るなり。       94

 えの実 わか門のえの実と有。榎樹の実なり。      あきの穂 稲穂なり。      一 安  あし引の木の間 あし引を直に山とせり。       あきかしは ぬるや川邊と有。秋柏とあるを契沖は     あはをによりて 玉の緒をあはをによりて、水の泡      あさかしはと詠り。ぬるといふは、葉のしほみ       はむすふゆへあはをと云。契云、あはをといふ      いることか。朝いまた葉のひらかぬなり。        一名かと云。季云、あはせたる緒也。       あしに 大舟にあし荷かりつみと有。芦を苅て舟に     あしひ なすさかへし君かと有。仙云、あしひとい      つみ        ふ木あり、能さかへる木也といへり。又あしひ      ︵一〇ウ︶        の花とも有。あせみなりといへり。第七巻にあ      たるなり。       しひとあるは別か。      ありますけ

(9)

    あをやなき 翠柳也。      と。     あさ菜朝に菜をとる也。       さくら麻桜さくころ種まく麻也。をうとつΣ<。     あをな 蔓蓄と書り。       麻と苧との縁なり。     あしつき 注に水松也といへり。       さす竹 契云、さ﹀竹のことか。季説同意十五巻寄     あから橘 たち花の実の赤き也。あかる橘也。うす     に大宮人とつ﹀<。此季注に此集の秘訣なりと。        にさしつxとあり。      さすやかん さすは小竹也。さxをたき物にするは さ さねかつら 後もあはんとつ﹀く。かつらは色く      貧家なれはこや        にはひゆきて後には又一所にもなるものなり。       ︵=ウ︶ さき草 中にを寝んと有。三枝也。其中にいぬると     と受たり。     なり。又      さきをせる 花のさかりとなる也。         弱

 ︵=オ︶    さにつらうもみち さには赤土也。朱也。つらふは   一     春まつさき草と有。季云、桧木也。さい草とも     助語也。赤き紅葉といふ事なり。    いふ。      さき竹 そかひにねしそとつ﹀く、そかひはそむく さしすき くるすとつxく。直に立たる杉也。指進     なり。さき竹は、竹をわれはうしろあはせにな     とかけり。杉にはあらすともいへり。季云、さ     るとや。うしろむきて男女のいねたる也と季説。     しつくとす。栗の縁也。       さきをせる 花さきをせる也。季云、さく事をする さね木 契沖云、真木と云心、又さね木の花と有。      也。愚案、さきからむらせる也。     諸木の花也と、季云、さね木の花はねむの木也    さ わか草をとれると有。さは草也。     と。又ちいさき枝ともするなり、又季云、柳也    さすやなき 根はると受たり。柳の枝をさせはよく 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹂中︵翻刻︶

(10)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶         つきて       くさ花とも有。                                         二 ニ オ︶    みつ枝さし 木は左右へ枝さし中に身木ありて三枝         根 のはるゆへなり。さし柳とも。       也。さいくさとは是なり。季云、わかき枝と云。 きはむ木の葉 秋山にきはむ木の葉。         みつくり 栗の実は多く三つありて中なるか大な 由 ゆう花 木綿花と有。見安云、木綿花といふ木あり、     り、故に中といふ枕ことはに用ゆ。         花如芙蓉如朱杯子、童蒙抄云、同上。       みつかけ草 水邊の草なり。     ゆうかけ草 暮ころかけろひたる所の草なり。      みつ蓼 穂つみとつ﹀<。     ゆたねまき あらきの小田と有。種ものをぬる湯に    みかさにぬへる菅

漬 まけは生しやすき也。季云、ゆは五百也。種々      ︵一三オ︶    一         のたなものなり。又ゆたけき種とも。       みしますけ       96

ゆきあひのわせ 凡両方より出合ふ事を行合とい    みよし野﹀みくまか菅       一         ふ。両人して植たる稲田か。      みる 海松菜也。又ふかみるとも、又またみるとも     ゆさ﹀ ゆは、い・をの合せたる也。五百也。おほ     有。ふかはふときなり、または岐のおほき也。         き詞也。さは小竹也。       之 しのを﹀しなみ しのは繁き也。しけく押並て也。                                         ︵=︸ウ︶      しのにといふへきにをといふは古語の例也。又 米  めさまし草 目に見てよろこふ草也。暁の目覚くさ      しのは小竹也。小竹を押ふせしきものとすとも         と有。一草の名にあらす。      みるへし。     みくさ 真草也。草を賞していふ。みくさかる信濃    しらゆう花 器財門に出す。         ともあり。又諸草とも、すxきともいふ、又み    しのすxき くめのわかことつxく。

(11)

しらつ﹀し 白螂燭也。       君にごひしなへうらふれなとxあり。 しつ菅 河の静菅と有。川水の深き所に生したる也。   しの 夏山の梢のしのとあり。繁の字を用ゆ。梢の                                     ︵ =ニウ︶      茂み也。 しの﹀め 築の上なり。       しきみか花 おく山のしきみか花と有。しくくと したり柳       云を受たり。 したひ 秋山のしたひか下とつ﹀<。紅葉にてひか  比 ひとよ 花の一重なり。     る也。      ひさき 木の名。去年さきしと有。一説に、古く久 しり草 契云、藺なるへし。仙云、鷺の尻刺といふ     しき木なりと。     草なり。藺の一名なり。       ひえ 稗也。稲にましりて生するも長するま﹀にえ した草軒の下くさと有。契云、しのふ草也。愚案     らひぬかる﹀なり。       97

今正月に用る山草をしたといふ、形大小の違ひ    ひる 蒜なり。      一     に てよく似たり。こ㌔のしたは下の字の心にあ  も もと葉 萩のもと葉は色つきにけりと有。もと葉の     らす、しだなり。かれは山にあるした草なり。      紅葉とも有。     是 は人家の軒にあるしたくさなり。       ︵一四ウ︶ しなひ 萩のしなひと有。枝たはみたる也。藤のし   もかり舟藻を苅とる舟也。     なひ、柳のしなひと同し。こ﹀は女子の姿の島    もゆる 春の柳は萌にけるかもと有。     梛 たるにたとふ       もみつる楓 もみちする楓なり。かへるてともよめ                                     ︵ 一 四オ︶      り。蛙の手に葉の似たれは也。もみてるとも有。     又萎をしなひとよむ、しなびしほたれたるなり。   もみたす 紅葉する也。もみたひにけりとも、又も 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(12)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶     み つとも。       すけの実 是は山菅也。饗門冬なり。 もすの草くき 奥義抄の説用ゆへし。はやにえとは   すゑつむ花くれなゐのすゑつむ花と有。紅花なり。     別也。       ︵一五ウ︶ もxさ㌔ 小竹のおほきなり。       鳥獣轟魚 もいつく 殖の字也。多くふゆる也。        以 いさな とり海邊とつ﹀<、又あふみとも。いさは もくさく 岩つxしもくさくと有。もくは茂く也。      勇なり、なは魚也、海中湖中の大魚也。鯨にか     契沖云、もくは木工と書り。季云、もくは仙覚     きらす、勇魚とも書り。季説に礒菜取と義をと     点也。古点にこくさくと有、色の濃くさく也と      る所有。     云。又夫木集後九条      いるし﹀の 心をいたみとつ﹀く。人に射られたる                                                                                                         ﹁                                     ︵ ↓ 五 オ︶      鹿也。       98

殿 寄に、       いそ貝 あはひ貝也。からの片ζある故に片恋とい   一         秋 の日のいその浦わの海士人はきくさく道に塩     ふに詠り。         やくむらん       いかるか 鳩の類なり。         となり。是は木工をきくと讃故也。かたくう    いをつとりたて 朝猟にいをつとりたて暮狩にちと         たかはしきなり。文選の中に茂の字をしけくと     りふみたて         はよますして必もくとよめり、片山のもむ楡と    いとらかこゑ 季云、うつらの声なりと。         有。このもむも茂のこ﹀ろ也といへり。      ︵一六オ︶       マこ     もxよくさ 月草也。百夜花さくゆへなり。    半 はふれにちらす 鳥に羽にふれて花のちる也。 すかの根のねもころ      はなちとり はなち飼いにかふ鳥なり。

(13)

    はねきる 鴨そはねきると有。羽たxきをする也。    とあみ 鳥をとるあみなり。     は いま 早馬也。はいま路とつ﹀<。駅馬なり。   ぬ ぬえことり こは助字也。怪鳥也。かたこひのつま     はふり 鳴鴨を詠り。羽をふるひなく也。      又のとよひをるともつx<。     はつこゑ ほと﹀きすのはつ音なり。      ︵一七オ︶     はつかりの使 人倫門。       を をちもかやすき 鷹の鳥をうつことのやすきなり。     はつとかり 態藝門。      をまにふつまに 牝馬肥馬也。ふつはふとなり。 保

ほつたか心に得たきと欲する鷹也。     をしとたかへ

と とひく﹀ 鳥の飛く﹀るなり。       わ わかゆ わかき糸魚也。わかゆつるとつ﹀<。

とりか鳴 あつまとつ﹀<。袖中云、東南の天難初    わすれ貝 三津の濱なるわすれかひと有。        一         て                                           加  かりしもの 隔也。折木四芙之と書。契沖の説也。   99

二 六ウ︶    かまめ 鴎鳥也。かもめなり。      一         なくに、天下の鶏みな鳴といへは、東国をかく    かもしもの しものは助語也。只晃といふことは也。         つ ﹀けたり。      かもの羽かひ かいは羽の上を云。今もかいかたと     とかり 態藝門。      いふ也。     とりへなす 鳥の飛ふことく也。      かほとり まなくしは鳴とつ﹀<。何の鳥ともしり     とくらたて 凡鳥のすむ所也。又ゆひともつx<。      かたし。見安云、むしはみと云り。てらつxき     とりをしも 契云、を﹀しものと讃へし。鳥は馬の      なり。         誤 りなり。をのこしきものにて婦人のことく小      ︵一七ウ︶        児をいたくなり。       かけのたれを 庭つ鳥かけのたれをのしたりをと 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(14)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶         つ x<。      愚案、寄人の家に偉受といふなれは何の鳥とも     か こ 海中にかこそ鳴なると有。鹿子と書。舟中に      しらぬとてすむ事也。契沖、長流ともに何の鳥         て 鹿 を聞なり。一説かこは鳥の名、鴨とも、又     ともいはぬは尤さあるへき事也。それはそれに         舟子の寄なりとも有。      して此鳥は鳩なり。春に定むるは泥みなり。     かこしもの 鹿弼也。しもは助字也。かことはかり      大伴郎女吾に、         も。      よのつねにきくはくるしき呼子鳥声なつかしき     か た山きxす 山側推也。       時にはなりぬ     か ㌔なく鷲 わしのなく声也。季云、わひ鳴也、又      とあり。しかれは季をもたぬ鳥なり。         こxら鳴也。      よこゑ 杜鵠の夜鳴声なり。

も おきつ鳥かもといふ舟と有。水に淀もの故舟      ︵一八ウ︶   ⋮⋮

の 異名とす。      よからす 夜鴉也。       一     か ふ ご 桑子也、誓なり。       よこもり 態藝門。     かけろふ ゆふへとつ﹀<。蜻蛉は夕をまたぬゆへ  太 たかへ 鴛鳶とたかへと有。小売也。         也。又一説天象門に出。       たつのま 竜馬なり。                                         ︵ 一 八オ︶    たつかねの 鶴の鳴声也。今朝なくなへにとつ﹀<。 与 よふことり 契云、この鳥万葉にあまた出たり。古    たちこも さはきとつ﹀く。起党也。         今集は春部に入て只一首あり。寄人傳受するこ  つ つなし とる比美の江と有。魚名。         と也とそしりて扱何の鳥ともいはす。長流云、    つるむら 鶴群也。あまのつるむらと有。         こは付字也。人をよふことく鳴鳥也といへり。  南 なつらす 魚つるなり。

(15)

    なくとひとつく ほとxきすなくとひとつくと有。       ︵一九ウ︶ む   むさ﹀ひ      こもり声になくなり。                                          ︵一九オ︶  く くそふな 鮒の一種也。     むなわけ さほ鹿のむなわけと有。草を分る鹿をい  や やかたをのおほくろ 白ぬりの鈴とりつけてと有。         ふ。      鷹をいふ也。季云、矢に似たる尾のあるをいへ う うまそつまつく 人にごひらるれは乗たる馬のつま     り。一説八の字の形のふのある尾の鷹なるへき         つくなり。      か。大黒はたかの名なり。     うまたきゆき たきはたくる也。馬のたつなをたく  ま まとり すむうなてと有。まとりはしまつ鳥也。鵡         り行なり。       也。麦は海とつxく。

うち羽ふり難の羽たxきなり。         不 ふつ馬 ふとむまなり。肥る也。      皿

うらへすへ亀もなやきそ ト部をまうけて亀トをす    ふた 夫駄と有。荷馬也。是は音を用ゆ。いかxと   一         るに及はぬとなり。       おもへとかxるものには和訓なくて漢語を用る     うまつからしに 往来に馬のみつかれてせんなきな      例おほし。         り。      ふもたし 器財門。     うくひすのをと 鶯の声なり。      ︵二〇オ︶     うけ 器財門に有。       己 こふるとり いにしへにごふる鳥と有。時鳥をいへ     うえをふせ置 同右。      り。 の のとよひ ぬえ鳥ののとよひと有。鶴の声はのと声    こまをり 器財門。        

とて      ことひ牛雄牛也。

五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(16)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶     こふこのまゆこもり 篁繭にこもる也。      こ﹀うか、契云、敵を見たるなり。     こまのつめいつくきはみ 馬蹄のあとつくかきりな    あひき 漁人の網引なり。         り。      あちむら 小売也。今もあち鴨と云。千万群をなす     このまたちくき 杜鵠の木の間をとひくxるなり。      もの也。又いさとつ﹀<、友をさそふ也、又さ

あみとり網にてとりたる鳥なり。      はきともつx<。

    あさふますらん 朝に馬をあゆませ行なり。      ︵二一オ︶     あはひの貝 片おもひとつ﹀く。鰻は軍殻なり。     あゆこさはしり 小鮎也。さは助字。     あしかに 葦間にすむ蟹なり。       あきつ 見安云、村鳥の名也。     あかく 吾こまのあかくとあり。足にてかく也。こ    あらくま 猛熊なり。 まのあゆむ事       あさからす 夜あけからすなり。      皿

 ︵二〇ウ︶  さ さかとり 坂をとひごゆる鳥也。       一     なり。又青こまのあかきのはやみとも。       さはへなす さはくとつ﹀く。五月蝿のことくなり。 あやしき亀 文負る神亀と書。洛書の事也。       さのつとり 野の鳥なり。 ありかよふ 蟻の同し道を行通ふ也。それを人の往  み みなわた みなと云貝は腸の黒き故髪にいひかけた     還 茂 きに比していふ也。又とりはなすあり通ひ      り。此説契沖とらす、しかれとも又分明ならす。     つ xとも。       みすみのつほ 鹿の耳は御墨の増といへり。 あし すむすさの入江と有。八雲云、鰺といふ魚也、   みかさのはやし 鹿の角を用ることくみえたり。は     又一説に鳥の名。      やし あたみたるとら ほゆると有。あたみたるはにらむ       ︵二一ウ︶

(17)

        は用ゆること也。つみはやしみはやすのこ﹀ろ      ことはとする也。季云、此時はみなかとりと古         賞するなり。季云、林の字の注分明ならす。      点の通りによむと云。新点はしなかにて、仙説     み ゆ み の ゆはす 爪を弓の頚に用ゆるか。         は猟者の名なるへしといへり。     み は このかは 鹿の皮を御筥にきせるとみへたり。    し﹀くしろ よみといふにつ﹀きたり。肉奇也。に     み ふ て の 林 鹿毛を御筆の毛に用る也。      くの味のよきなり。     みなまの林 鹿肉は御謄に用る也。肝をも用ゆとい    しこほと︾きす うれたきやしこほとxきすと有。         へ

り。      橘を

    みしほの林       ︵二ニウ︶     みなとのすとり      ほとxきすのちらすをにくむ寄也。きのとくな

み かもなす ふたりとつx︿。水晃のことくふたつ     る事成にくきほと﹀きすか花をちらすと也。し   皿

ならふとなり。      こは、醜の字を用ゆ。      一 之  しひつる 鮪釣也。又しひつくとも。       も もふしつかふな 藻にふしかくるx也。つかは手一                                         ︵ 二 ニ オ︶      束はかりのたけなる鮒なり。     しxみ 蜆也。すみのえのこはまのし、みあけもみ    もちとり 又ほつ枝にもちひきかけとも有。もちは         す と有。       粘也。鳥は、もちにか﹀るものなり。     しめ 鳥の名なり。      もxちとり 榎の実もりはむも﹀ちとりと有。     した﹀み 小さき螺に似たる貝也。      もりはむ 榎のみもりはむと有。群がり食ふ也。     しなかとり 安房とつ﹂く枕詞也。水中鳥と書。水  寸 すたち 鳥のたまこのかへりてはしめて巣を出るな         中の鳥は水の泡のことくなる故、あはのまくら     り。 五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶

(18)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂中︵翻刻︶ すかる こしほそのすかると有。蜂のことなり。     はまつと 海邊よりのみやけなり。                                     ︵オ︶    はり目 わかせこかきせる衣のはりめおちすと有。 すとり州に居る鳥也。又みさごをいふとも。       針の縫 すxかけぬはいま 駅路鈴なき早馬也。しかれはわ      ︵二四オ︶     たくしのはや馬なり。       目ことに吾おもひを入ておとさぬとなり。 すたく 集るなり。野もさはに鳥すたけりと。     はねかつら 花かつら也。童女の髪のかさりなり。 すなとれる 態藝門に出たり。      はいさす 紫ははいさすと有。灰をさし入て染る也。                                     ︵ 二 三 ウ︶     灰はつはきの灰也。故につはいちとつ﹀けり。

食 器 財

 つは市は大和の地名なり。       一 以  いは舟 さくめかいは舟とつ﹀<。      はな縄 牛の鼻をさす縄也。はな縄はくれと有。<   四

い か

りをうしとつー・碇なり・     れはあたゆるなり・       一

    い なむしろ 稲のわらむしろ也。藻の名と別也。    はりふくろ 衣ぬふ針也。旅立人にをくるなり。     い くし串に幣をはさみたる也。いは五也。おほき   はしむかふ ふせのみこと﹀つ﹀<。兄弟二人なり。         心。      箸はふたつあるゆへなり、箸向と書。     いはひへ いはひほりすへと有。見安云、酒いるx  二 にきたまの衣 季云、にきたへの衣と同し心也。や         か め也といふ。しかれは神に捧る酒とみえたり。     はらかにほそく         此 説いか﹀あらん。斎戸とあれはものいみする      ︵二四ウ︶         室 なるへし。      玉の衣といふなり。見安云、和魂也ときこえた 羽  はしゆみ はしの木の弓なり。      れとも衣とつ﹀けは通しかたし。

(19)

保 ほかもはれる帆をはれるか也。はるは今いふかく  ぬのかた衣貧者の服なり。わたもなき布かた衣と        るに同し。      もあり。     へ にもともにも 大舟のへにもともにもと有。舟の  乎 おほみけ 天子の御膳也。         前後也。      おほ舟の思ひたのみて 又たのみし君とも。大舟に     へ む かる舟 舟の膳の向ふ也。      乗れは安堵する故也。又たゆたふとも有。た﹀ 戸  とも矢たはさみ 諸矢也。袖中云、小指にはさむ矢      よふ也。大舟は急にゆかぬ也。         をいふと。      をつの 吹なせるをつのと有。小角也。軍中の吹も     ときころも みたれてとつ﹀<。ときはなしたる衣      の也。契云、小角和名くたのふえと讃。         なり。又ときあらひ衣とも。       おほきみのしほやく 天子御膳に用る塩をやくな                                                                                                          一     とあみ 鳥をとる網なり。       り。      05       

ともし火をつく夜になぞへ 燈を月夜の光になそら    をけ 麻笥と書。       一        へて也。      ︵二五ウ︶        ママ  ち ちから車七くるま ちから車は牛馬を用ひす人力に    をけかたのふたあやうらくつ         て      おきつもの 海中の物のこ﹀うかと川子説。                                        ︵二五オ︶  和 わさみの 季云、よき管にてつくれる蓑也。それを         をす車也。それを七なり、おもきをいふ。季云、     遠江のわさみ野によせたり。         只 重 荷をつむ車といへり。      わさいゐ 早稲の飯なり。 奴 ぬきす竹のすなり。盟に置事あり、人に水のか﹀   わかめ今の和布藻也。和名集にきめと云。         らぬため也。      わさほのかつら 早稲の穂の長くてかつらのことき 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(20)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂中︵翻刻︶         也。      か﹀い 舟こくかい也。かxいの音とあり。 可 かち 防人の寄に、まかいしxぬきと、かちひき折    かしふりたて 舟を水中につなく也。今はかせとい         と二を一首によめり。しからは、かちは舵なる     ふ。         事明也。かいは揖、嵩・櫓の類とわかつへし。    かたのまよひ 麻衣かたのまよひは誰かとりみんと         畢 寛むかしはかち・かいの差別なかりしとみえ      詠り。衣の肩のやふれたる也。衣の古くてやふ         たり。かち引       れんとするをまよひと云。又是をよるともいへ                                         ︵ 二 六オ︶      り。旅客の衣服にことたらぬをいふなり。         引折、契云、此集かちと云も櫓の事也。櫓を引    かふら 響矢と書り。鳴鏑也。         たをりて舟に横にやる也。又ほり江漕なるかち    かけはきのをたち 懸侃之小剣と書。太刀は帯取の

音とあり。      緒にかけてはく故なり。       瑚

ちま 舟の梶とる間なり。       かつらかち 桂漿也。今も東国かつらの木といふは   一     か たみ 人の死して後にのこれるもの也。      水にくさらぬ木とて用るなり。     か み しまち酒 醸しまち酒とあり。       ︵二七オ︶     かたもい 食物をもる椀なり。       かさのかりて 笠のいた﹀きのわにひもをつくる所     か す ゆ酒 貧者の酒也。糟を湯にてときたる也。       なり、よりてわさみのとつ﹀<。     か にはまきつくる舟 桜皮と書て、かにはと讃。い    かはの衣 蛾羽の衣と書。蛾の羽に似たる吊なり。         まのかばのことなり。      かとり 鎌の字を用ゆ。六花集にかとりはす﹀しと     か せ   うみ苧かくといふとあり。今のかせのこと也。     いふ、しからは蚊をとると云こ﹀うか。                                         ︵ 二 六 ウ︶    から帯 韓帯とあり。

(21)

るはす 諸説分明ならす。季云、かる矢をいふと、     とくにてすこしそり     しからは今いふからはす也。但からうすの転せ       ︵二八オ︶    るか。       たるものなり。らうす 碓子と書り。       かちから 梶柄と書。かちの手ににきる所なり。ま﹀ろ 鎌のこと也。まろは付字の例也。       かたいと かたこ糸也。あはさぬいと也。も おきつ鳥かもといふ舟と有。水にうくものゆ    かさし 髪にさすなり。 へに       与 ようつ﹀き 萬の貢物也。                                     ︵ 二 七 ウ︶  太 たまたすき かけてといはん枕ことは也。竹取の寄

舟の異名とす。       に母にいたかれたまたすきと有。是は権横の字    一 かはの衣きて角つきなから      をかけり、よりて仙云、児を負ふ衣といへり。   ㎜りて 人に物をかりたる債也。こ﹀ははたこやと     又たまたすきうねひの山とつ﹀<。玉はほむる   一    ちんのことなり。路費をもたすしてなかき冥途     詞、田をすくこと也。ゆへに畝とつxくと也。     をゆくとなり。      愚案、うはをに通すれは苧とつ﹀くるか、たす かたしほ 盛なり。潮とまきる﹀故乾きしほといふ。     きは苧にてつくる故に。     か らしほとあるも同し、辛きにてはなし。       ︵二八ウ︶な 弓削の河原とつ㌔<。ゆみをむらする刀なり。   たなxし小舟 無欄小舟と書。欄は今のかきたつの     木をけつるかんな也。まかなと有。まはほむる     事ならん。かきたつなけれはたつもなし。しか     ことは。かなは、かたな也。今のかんなは後人      らは扁舟の事か。     の 作 也。むかしはやりかんなとて平刃やりのこ    たまくしけ を﹀うとつxく、又見んとも、又おく 五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶

(22)

五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹂中︵翻刻︶     ともつ﹀<。おくはそこ也と季云。      りたることをかみさふるといふ。 たまも玉裳也。ほむることは也。         たかつ杖手に握る杖也。 たまたれのこす      たすき 白たへのたすきと有。手の助也。 たまとこ 玉床なり。      たとへのあしろ 宇治人のたとへのとつx<。 たくなは 長きとつ﹀<。海上のたくる縄也。古今    たふて つふて也。飛礫をいへり。     集に、あまのなはたきとも有。童蒙抄云、あみ       ︵二九ウ︶     の手縄也と。      たまき 玉釧也。たまたまきは玉指環也。くしろと たまかつら 草木部に出す。       もいふ。 たひ 今のてうちん也。古はたいまつならん、又茶    たまゆら 玉響と書。玉のなる音なり。

毘にて       た﹀みこも へたてあむとも、又かさねあむとも   朋

三九オ︶   っー・         一

    火 葬の火ともみゆ。       たxり うみをのた﹀りと有。契云、和名集絡探を たくひれ たくは白き也。白巾也。又一説見事なる      た﹀りとよめり、是なりといふ。     也。      たま﹀きのをかい 玉纒之小撒と有。 たかたま し﹀にぬきたれとつ﹀く。[①]        たふさき 檀鼻揮也。 た まころも さひくしとつxく。さひくは衣の    たかつき 高杯也。した・みといふ貝をあへ物にし

     圏

    鳴る音也。       てたかつきにもるといへり。 たまくしけなるたまくし めつらしけんもと有。契    たつかゆみ 手に握る所ある故にいふ。     云、かみさひけんもとよむへしと有。すへてふ    たまつさのこと ふみの言なり。

(23)

                                      ︵三〇オ︶      おろすなり。     たかび 太刀の柄也。やき太刀のたかひと有。      そや をひそやと有。背におふ征矢也。そよと受た     たかたま 竹を管にきりていくつもつらぬき神に奉      り。        るものといへり。      そてつき衣 宮人の袖つき衣と有。袖と身とに文彩 そ 袖かへし 袖をたかひにさしかゆる也。      のかはりたる也。又童子にも詠り。これもつき     袖つくはかり ひろせ河袖つくはかりあさしと有。      くの衣の類か、又はいまた袖を長くせぬか。       水 底にそてのつくほとなり。      つ つけまくら 黄楊木の枕なり。     袖つく 袖をつく也。七夕に詠り。男女の袖をつら    つかふるいろ 名つけくる紫とつ﹀けたり。凡官人        ぬる也。      の服色なり。

 そぎいた もてふけるいたまのあはされはと有。季    つるきたち みとつ㌔<、又名ともつ㌔<。契云、   珊

云、へき板にやといへり、又一説をあけて杉板      かちの名      一        かとあり。      三=オ︶ そつ彦まゆみ 葛城のそつ彦まゆみと有。季云、葛      をほる故といへり。愚案、なは刃也。やいはを       城 襲 津 彦 は仁徳帝の后の父なり、しかれは弓を     云。又ときし心ともつ﹀<。男子の心をいさき        つ       よくもつなり。                                        ︵三〇ウ︶    つけのをくし 髪硫之小櫛と書、又黄楊之小杭とも       くる人にあらす。弓を能射たる人ゆへかくいふ      書。又つけくし、又日の本のつけの小くしとも        かと。      つ﹀けたり。 ぞうさし 櫃にそうさしと有。そうは鎖也。さすは    つくえ 今の食机也。只ぜん。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(24)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶ つまよるをと 梓弓つまよるをと﹀つx<。つまよ  む むすふかた衣ひつりにぬひて     るは、矢をこxろむること也。梓弓にはいか﹀    むかはき 行縢なり。     あつさゆみといひて、扱矢をつまよるといふ事      ︵三ニオ︶     か、つまよるといへは直に矢のことなりと心得  宇 うつ麻苧麻を打てほそくする也。仙云、うつはほ へし。       むることは。と みやけなり。こxに山つとxあり。        うはに おもき馬荷にうはにうつ。ら、にうけり舟の連りて淀ひたるなり       うきくさ ぬくことくとつ﹀<。展なり。                                     ︵三一ウ︶    うみをなす 長柄とつ﹀く。苧をうめは長きゆへな つ ら 弓の弦なり。      り。えたらす つえは杖也。杖は一丈也。故に八尺と   うけ すみのえの津守あひきのうけの緒とあり。う   抽

 つ﹀けたり。       かひゆかんとつ﹀けたり。網を海へ入てしるし    一 南  なには管かさ きふるしとつ﹀<。著すにをいてふ      に上にうけて置ものなり。         るくなりたる也。      うえをふせおき 山川にうえをふせ置と有。筍也。     なくるさ 投る矢也。射はなつ矢也。一本になけく      ふせて置也。魚とる篭なり。         さと詠り。又なくやとも有。季云、投る稜とい    うす染衣 くれなゐのうすそめ衣と有。         へ り。      うす 冠のかさり也。日本紀に釦花と書。季云、か     なれ衣 褻衣也。いもかきせてしなれ衣とあり。       むさしの     な﹀くさのたから 七宝也。       ︵三ニウ︶     なる矢 響矢とあり。鳴鏑也。      ことxいふ。

(25)

   うつくつ 長流云、うつくしき沓也と。契沖是を信      つ有。延喜式にあり、米をつく多少なり。         せ す、みやけとつ﹀くにわけあらんとのみいへ  や やまたつ こ﹀に山多都祢とあり、本注に山多都者         り。季云、うつくしき沓也。みやけにはつxか      今造木者也。季云、山たつねとは山たつの也。         す、下の句のあとをつらねてにつxくといへり。     ね・の通し用ゆとなり。鐘和名たつき廣刃斧な     うつたへ へてをる布とつ﹀︿。うつくしくたへな      り。こ﹀はき文字を略して山たつといふ也。又         る布也。      やまたつのむかへまいらんと詠り、 久  くるへき 長流云、糸をかくる器也。糸をよりあは      ︵三三ウ︶         するもの也。契沖云、詩経弄之瓦の瓦にくるへ     分明に人の事ならん。本注造木者とあるも斧斤

きとつけたり、又枕草紙を引てくるへきは今の      の類ひにあらし。山守なとの材木をこるものに    一

すりうす也と、されはくるくとまはるものと      や。       m

見えたり。季云、わくといふ物に似て大きなり   やきたち かとうちはなつとつ﹀く。契説分明なら   一    と。       す。たちはやきてうつ故にいふ。                                     ︵三 三オ︶    やふねたき 八舩たき也。たきは引也。おほく舟を くしろ 季云、袖中抄に内典云在指日鎧在腎日釧と      ひくなり。     あり。只釧なり。契云、肱まきなり。        やしほの衣 くれなゐの八塩と有。やしほはいくた くほ舟 木をほりくほめて舟とする也。今のうつほ     ひも染たる也。このくれなゐに呉藍の二字を用     ふ ねなり。       ひたり。 くろくつ ぬひしくろくつとつ﹀く。くろ履とあり。    やそかxけ 八十乃揖をかけてなり。 くろきしろき 黒神酒白神酒也。大嘗會にこのふた    やそかぬき 八十の梶ぬきなり。これら皆櫓揖の類 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(26)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂中︵翻刻︶         也。舵にあらす。      つ﹀けたり。 満 まとかた ゐるまとかたとつ﹀<。的形也。       まちさけ 人をまちまうけたる酒なり。                                         ︵三 四オ︶    まい 幣の字を用ゆ。月に幣をさxけてこよひをな     まくらつく 宮室部に出。       かくしてたへとねかふ也、又道の神たちまいは     まかち しけぬきとも、又しxぬきともつ﹀<。お      せんとも。旅中の幸をいのるなり。賄の字あた         もかち、とりかち両方なり。凡ふたつそろへた      れり。この字邪曲にかきらす凡人にものを贈る         るをまといふ。両方に櫓を立たるなり。まかひ      をいふ。         も同し、舵にはあらす、又まかひかけとも。     まゆみ あた﹀らまゆみと有。陸奥の名所なり。又     まそゆう 真苧にてつくるゆふは短きゆへ、みちか     かつらきのそつ彦まゆみとも。                                                                                                             一

ゆふと云。      まそころも 是は旋頭寄なれは此一句七字によむへ   m

まそかxみ 磨しとつx<、又、はふりらかいはふ      し。季云、真苧衣也。馬乗衣と書たれは馬上の   一         み むろのまそかxみと有。みむろは神祠也。か﹀     衣か。     み をかくる故也。又まそみかxみとも。       ︵三五オ︶ まくらかたさり 長流云、こ﹀はかたさらすならん    まそて まは左右也。両袖なり。     といふ。かたさらすは、まくらを離れぬなり、    まさけ もちとつ﹀<。まさけは鈴の事なり。     又 枕からさすとも。      またらふすま 斑会なり。                                     ︵三 四ウ︶   まかこ矢神代紀。 またまつく 玉をつ﹀くる也。玉をつxくるは緒に    まくらたち 枕太刀也。寝文のことし。     て つら貫、よりてをと受るなり。季云、こしと    まくらうこく いねすしてまくらのいろくとなる

(27)

        也。      ふなたな 舟のはたに用ゆる板也。今もいふことは け けころも 裏也。季云、見安にけはけはれのけなり、     なり。         こ﹀は春をいはんまくらことはなり。       ふなかさり 舟をかさるなり。     けにもる 飯とあり。けは笥也。         己 ころもにきなし 契云、是はあやまり也。きぬにつ     けのころも褻衣也。いさや河けの衣とつ﹀く。契     くなすと         云、川の音のたつといふごxうにて思ひのせつ      ︵三六オ︶         なるをいふと。      よむへし。なすは如也。きぬにつき如也。                                           三孟ウ︶    こまつるき 高麗剣也。わさみか原とつxく。 ふ ふくし 草をほるもの也。こてのことし。       こまくら 木の枕なり。たさや 刃物をふたついる﹀家也。下に只家と    ころもてのわくこよひ わくは別る﹀也。男女わか   田

つ ﹀く。      れさるなり。      一 ふなはり 舟の梁也。是に坐して揖をつかふ故にゐ    こまをり 駒牢也。馬柵と書。柵のことくに木をた     か い の まくらことはなり。      てx馬を入置なり。こまをりのしめゆひしと有。なよそひ 舟をこしらへかさる心也。         こしき 飯をむす甑也。いにしへは飯を皆むしたり、 ふ み 木  はたもの・ふみ木と出り。機をxる時足に     唐もしかり。     ふ む木なり。      ことのしたひ 箏の腹の穴のある所なり。る衣 旧くてすてたる衣なり。       こまにしき 高麗錦なり。もたし 馬にこそふもたしかくもと有。ほたしを    こそめの衣 くれなゐのこそめの衣と有。こそめは     かくる也。      濃く染たる也。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶

(28)

五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄中︵翻刻︶                                        ︵三六ウ︶    あさふすま なごやか下にふすとつ﹀<。厚套也。         くれなゐのうす染衣ともあり。       あつきふすまはやはらかなれはなり。 亭  てたまあしたま 女子の手足にかくる環也。       あはをによりて たまのを﹀あはをによりてと有。 安 あらたへ あらき布也。藤原とつx<、又衣とも有。     水の泡はむすふゆへあはをと云也。契云、あは         藤 布あるゆへなり。       をと云一名かと云。季云、あはせたるをといへ     あつまとののさきのはこのにのを 坂東より新嘗の      り。         米を箱に入て馬にのせ来る也。其荷の緒也。荷    あさふすま 貧者のふすま也。         前の使は諸社へ初穂の米をつかはさるxなり。       ︵三七ウ︶     あつさゆめつるをとりはけ 梓弓弦をとりはけ也。    あゆひ 足袋の類也。足をまくもの也。又きやはん                                                                                                           一

あつさ弓音にき、つ、 弓の音なり。       の類とも見ゆ。旅立の体によめり。        取

あさのころも 白たへの麻の衣。凶服也。       あしはや小舟 舟のあしのはやき也。         一     あらとこ そ﹀うなる床也。       あをふすまきて 青衿と書。                                        ︵三七オ︶    あきさり衣 秋の衣也。春服の例なるへし。     あしろ木 網代の木也。      あきつはの 袖ふる又あきつはの匂へる衣とも有。     あちこり季云、美味のあつまるこ﹀ろ也。国をほ     愚案、碧羅衣なり、蜻の羽にたとふ。        むることは也。       あらき 弓也。ぬりも巻もせすうちおろしたるま﹀     あけのぞほ舟 丹をぬりたる舟なり。       のゆみ也。こ﹀は弓力のつよきにもちゐす。     あさて 麻也。葉の人の手に似たるよりいふ。庭に    あやむしろ もやうのある席也。        立とよめり。農家は庭にも麻をうゆ。       あかもすそ引紅裾を曳なり。

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