IRUCAA@TDC : 損傷部分を含む神経幹内における健常部分から損傷部分への軸索の進入 腰神経切断モデルを用いた検証
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(2) 損傷部分を含む神経幹内における健常部分から損傷部分への軸索の進入−腰神経切断モ デルを用いた検証−. 新井健. 東京歯科大学市川総合病院リハビリテーション科 〒272-8513 千葉県市川市菅野 5-1-13 Tel 047(322)0151 Fax 047(325)4456 E-mail : [email protected]. Axonal regeneration from intact part into impaired part in peripheral nerve trunk - An experimental study on rat damaged lumbar nerve plexus-. Takeru Arai, Department of Rehabilitation Tokyo Dental College Ichikawa General Hospital. 5-11-13 Sugano, Ichikawa Chibaken 272-8513 Japan. キーワード:Nerve regeneration 神経再生, end-to-side neurorrhaphy 神経端側吻合または神経端 側縫合, axonal sprouting 軸索発芽, nerve-plexus injury 神経叢損傷, peripheral nerve damage 末 梢神経障害. -1-.
(3) 【目的】 末梢神経の端側吻合では、中枢との連続性を断たれた移植神経に再生軸索が進入する 1)3)4)7)8). 。一方、末梢神経の部分損傷や腕神経叢損傷などでは、損傷部位より末梢の神経. や神経叢内で、中枢と連続性の断たれた神経の損傷部分が、健常部分と接する部位が存 在している。このとき、端側吻合の場合と同様に、健常部分から損傷部分に再生軸索が 進入する可能性がある。そこで、腰神経の1つを切断することにより腰神経叢内で損傷 部分と健常部分が接する状態(腰神経切断モデル)を作製し、これを検証した。また、 健常部分から損傷部分に進入した再生軸索が、標的組織を再支配するかどうかについて も検討した。 【方法】 Wistar 系 rat の背側をネンブタール麻酔下に展開し、左第 5 および第 6 腰神経を温存 しつつ第 4 腰神経をなるべく中枢で切断した。切断末梢端は、外部からの神経が進入し ないように、長さ 10mm、内径 1mm のシリコンチューブにて被覆した(腰神経切断モデル、 非剥離群)(図 1a)。12、24、48、72 時間、1、2 週間後(各 n=4)および 4 週間後(n=12) に腰神経叢を採取し、免疫組織学的に経時的な neurofilament、macrophage の変化を観 察し、損傷部分および第 4 腰神経への再生神経の進入をみた。免疫組織学的検索は、凍 結縦断切片を作製後、抗 neurofilament 抗体(DAKO、Denmark)、抗 macrophage ED1 抗体 (Serotec、England)、を 1 次抗体とし、biotin-avidin systemR(Vector、USA)を用いて 染色し、観察を行った。4週モデルは、epon 包埋後、横断薄切切片を作製し、光顕およ び電顕による検索も行った。 次に、腰神経叢末梢の坐骨神経に神経上膜を温存したまま第4腰神経の合流部より1cm 末梢で神経上膜周囲の剥離を加えた剥離群(n=12)と、神経上膜および神経周膜に尖刃で 約 1mm の切開を加えた切開群(n=12)を作製し、同様に評価を行い比較検討した。対照群 として、第4、第5、第6腰神経すべてを切断したものを作製した(n=8)。非剥離群、剥 離群、切開群間の再生有髄神経数の比較は、第 4 腰神経横断面において、各横断切片(直 径約 0.8mm)につき上下左右および中央の5カ所で、光学顕微鏡 1000 倍鏡視下における 1視野あたり(直径約 0.23mm)の軸索数を求め、ANOVA 及び Fisher’s PLSD 法による多 重比較検定を用いた統計処理を行った。 さらに、切断した第 4 腰神経末梢断端に、切断した同側大腿神経の末梢断端を端々吻 合し、吻合部を長さ 10mm、内径 1mm のシリコンチューブにて被覆し(大腿神経接合モデ ル) (図 1b)、8 週間後にネンブタール麻酔下に電気生理学的検索を行った(n=10)。その 後、外側広筋を採取し NADH-tetrazolium reductase を用いて染色を行い、筋線維タイプ -2-.
(4) の分布を調べた(n=8)。また、腰神経叢および大腿神経を採取し、光顕による検索(n=4) および免疫組織学的検索(n=4)を行った。 【結果】 1、経時的変化 Neurofilament 染色 損傷部分内の neurofilament 陽性線維は、Waller 変性に伴い術後 1 週間までに一旦消 失し、2 週間以降、再生軸索と考えられる陽性線維が出現し、経時的に増加した(図2) 。 4週間で第4腰神経および坐骨神経損傷部位内に多くの陽性線維を認めた(図 3) 。一方、 対照群では、陽性線維を認めたものは免疫染色を行った4例中2例で、認めた線維も微細でごく わ ずかであった。 Macrophage ED1 染色 Macrophage ED1 陽性細胞は、損傷部分内で 2 週まで経時的に増加しその後4週まで大 きな変化はなかった(図 2)。 電子顕微鏡像 4週間で第4腰神経内に、有髄および無髄の再生神経が認められた (図 4)。 2、神経周膜剥離または切開の効果 有髄軸索数 切断第 4 腰神経末梢部の横断切片組織像において、対照群では再生神経を示す小神経 束群はほとんど認められなかったのに対し、すべての実験群で多くの小神経束群が認め られた。再生有髄軸索数は、非剥離群(n=6)71.5±44.6、剥離群(n=6)109.8±46.5、切 開群(n=6)178.9±29.9、対照群(n=4)1.9±2.6(平均±標準偏差)本であり、非剥離群 に対し剥離群および切開群が有意に多かった。 Neurofilament 染色 Neurofilament 染色では、すべての実験群で第4腰神経末梢端内に縦走する陽性線維が 認められたが、陽性線維の密度は、非剥離群に比して剥離群および切開群が高く、切開 群が最も高密度であった(図 5)。 Macrophage ED1 染色 Macrophage ED1 染色では、健常部には陽性細胞は僅かしか認められなかったが、第4 腰神経内と坐骨神経内の損傷軸索の存在する部位に陽性細胞が多数認められ、剥離群お よび切開群では、剥離部または切開部で高密度に認められた(図 6) 。 3、大腿神経接合モデル 電気生理学的評価 -3-.
(5) モデル作製後 8 週間で、第 4 腰神経を腰神経叢の分岐部付近で切断し、その縫合部に 近い断端を電気刺激することにより、10 例中 8 例で大腿筋の収縮が認められ、外側広筋 から M 波を記録することができた(図 7c)。M 波が記録できなかった 2 例は、端端吻合部 での神経の連続性が肉眼的に認められず、術後縫合部が離開したものと考えられた。 NADH-tetrazolium reductase 染色 M 波を記録することができた左側の外側広筋全例で、再生神経による再支配を示す fiber type grouping を認めた(図 7d)。 光顕および電顕による組織学的評価 M 波が記録できた第 4 腰神経、端々吻合部および大腿神経において、再生神経を示す 小神経束像が多く認められた(n=4)(図 7a)。 Neurofilament 染色 第4腰神経から大腿神経末梢まで、全長にわたって再生軸索を示す neurofilament 陽 性線維が認められた(n=4)(図 7b)。 【考察】 切断中枢端から再生軸索が進入しないように切断した第 4 腰神経末梢端内に再生軸索 が確認でき、腰神経叢以遠で、神経の健常部分から損傷部分に軸索が発芽し伸張してき たものと考えられた。切断中枢端や筋組織内の神経から発芽した再生軸索が末梢端に進 入した可能性は否定できないが、対照群の結果を考慮すると、あっても僅かであると考 えられた。また、腰神経叢の末梢での神経剥離操作や神経周膜切開により第 4 腰神経内 に再生軸索の増加が認められ、これらの刺激が発芽を促進したことも示唆された。 ひとつの神経内に損傷部分を含む病態は、神経の不全損傷や腕神経叢損傷のみならず、 神経根損傷や絞扼性神経障害など、臨床上ごくありふれた外傷や疾患においても存在す ると考えられ、健常部分から損傷部分に再生軸索が発芽伸長する可能性を今回の結果は 示している。このことは、これまでの予測に反した回復あるいは回復不全、さらには予 想外の異常知覚などの病態理解に繋がる可能性があると考えている。 Macrophage は不要構造物の貪食とともに、サイトカインや増殖因子などを放出する ことにより神経再生に関与すると考えられている 2)5)6) ことから今回検索を行ったが、 剥離操作や神経周膜切開を行った部位には macrophage の増加が認められ、これらの操 作による組織の損傷、出血や炎症などが macrophage を刺激することによって再生軸索 の発芽を促進した可能性を示していた。 また、大腿神経接合モデルにおいて、健常部分から損傷部分に進入した再生神経が標 的組織を機能的に再支配したことから、健常部分から損傷部分に進入した再生神経を機 -4-.
(6) 能再建などに応用することが可能であると考えられた。 【結論】 腰神経切断モデルにおいて、術後 2 週間までに再生軸索の発芽と損傷部分への進入が 起き、剥離や切開操作により増幅されたことが示唆された。Macrophage も再生軸索の発 芽と伸長に関与した可能性が示唆された。また、大腿神経接合モデルにおいて、損傷部 分に進入した軸索が、大腿神経支配筋を再支配したと考えられた。 【 文献】 1) al-Qattan MM, al-Thunyan A: Variables affecting axonal regeneration following end-to-side neurorrhaphy. Br J Plast Surg, 51: 238-242, 1998 2) Dahlin LB: Prevention of macrophage invasion impairs regeneration in nerve grafts. Brain Res, 679: 274-280, 1995 3) Kanje M, Arai T, Lundborg G: Collateral sprouting from sensory and motor axons into an end to side attached nerve segment. NeuroReport, 11:2455-2459, 2000 4) Lundborg G, Zhao Q, Kanje M, et al.: Can sensory and motor collateral sprouting be induced from intact peripheral nerve by end-to-side anastomosis? J Hand Surg [Br], 19: 277-282, 1994 5) Monaco S, Gehrmann J, Raivich G, et al.: MHC-positive, ramified macrophages in the normal and injured rat peripheral nervous system. J Neurocytol, 21: 623-634, 1992 6) Perry VH, Brown MC: Role of macrophages in peripheral nerve degeneration and repair. Bioessays, 14: 401-406, 1992 7) Tarasidis G, Watanabe O, Mackinnon S, et al.: End-to-side neurorrhaphy resulting in limited sensory axonal regeneration in a rat model. Ann Otol Rhinol Laryngol, 106: 506-512, 1997 8) Viterbo F, Trindade JC, Hoshino K, et al.: A. Latero-terminal neurorrhaphy without removal of the epineural sheath. Experimental study in rats. Rev Paul Med, 110: 267-275, 1992. -5-.
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(8) Neurofilament 12h. Macrophage ED1 12h. 72h. 72h. 2w. 2w. (×200). (×200). 図2 経時的観察. Neurofilament 染色像および macrophage ED1染色像。腰神経叢末梢の健常部分と損傷部分の接触部位。 損傷部分内のneurofilament陽性線維は、Waller変性に伴い術後1週間までに一旦消失し、2週間以降、再生軸索と考えられ る陽性線維が出現し、経時的に増加している。 Macrophage ED1陽性細胞は、損傷部分内で2週まで経時的に増加しその後4 週まで大きな変化はない。. 1.
(9) Neurofilament - 4w. L5. L4. 第4腰神経拡大像 (×100) 図3 腰神経切断モデル、非剥離群 4週。 に多くの陽性線維を認める。. 坐骨神経拡大像 (×100). Newrofilament染色像。 第4腰神経および坐骨神経損傷部位内. 2.
(10) 2μm. 図4 腰神経切断モデル、非剥離群作製後4週の電子顕微鏡像。第4腰神経横断像。再生神経を示す小神経束 群が認められる。. 3.
(11) 非剥離群 剥離群 L4腰神経 X100. 剥離群 非剥離群 L4腰神経 X100. 切開群. 切開群 L4腰神経 X100. 図5、機械的刺激の影響の観察: Newrofilament染色像、4週。 剥離操作を加えたもの(剥離群)と、 切開を加えたもの(切開群)は、加えなかったもの(非剥離群)に比較して多くの陽性線維を認める。. 4.
(12) 非剥離群. 剥離群. 切開群. 図6 機械的刺激の影響の観察: Macrophage ED1染色像、4週。 健常部には陽性細胞は僅かしか認 められないが、第4腰神経内と坐骨神経内の損傷軸索の存在する部位に陽性細胞が多数認められ、剥 離群および切開群では、剥離部または切開部で高密度に認められる。. 5.
(13) 第4腰神経. Toluidine blue 8w. 第5腰神経. 第6腰神経. 切断中枢端 腰神経叢. 坐骨神経. 電気刺激 silicone tube. 第4腰神経末梢端. 外側広筋. 7a. 大腿神経中枢端. 大腿神経. NADH-tetrazolium reductase. Neurofilament 8w. type2B. M - wave. 2mV 2ms. 7b. type2A. type1. 7c. 7d. 図7 標的組織再支配の検討。大腿神経接合モデル作製8週間後の接合部の横断組織像(7a)、接合部より末梢の neurofilament染色像(7b)、外側広筋より導出したM波(7c)、外側広筋のNADH-tetrazolium reductase染色像(7d)。 接合部での再生神経像、大腿神経内でのneurofilament陽性線維、外側広筋におけるM波、NADH-tetrazolium reductase染色にてfiber type groupingを認める。. 6.
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