乱流の擴散現象について
五
味
丸
典
1.緒 言
乱流の拡散現象についてはG.1.Taylor(1)[;・2)以來
多くの人(3)(4)によつて研究されていて、此の拡散現
象の測定により乱流の乱れの強さ及びscaleを知るこ
とが出來る。乱流は白金線を用いた熱線風速計により
精密に測定することが出來るが、この方法は増幅装置
等相当複雑な装置となるので、上述のような拡散現象
を利用して測定すれば精度の点では劣るかも知れない
が極く簡軍に測定出來る利点がある。流体が水の場合
には水と同一の密度をもつ水に不溶性の液体を細滴状
にして注入しとの拡散現象を調べ、若し空気の場合に
はニクロム線を一本気流中に張り、これに電流を流し
てその後流中の温度分布を測定して熱の拡:散現象を調
べるのが普通のようである。
2.実験装置及び方法
第1図 実験装置
本実験では第1図のような短形断面の風洞吹出口
(180mm×615mm)に=.クロム線を気流方向に直角に
張り渡し、気流にさらされている時に微かに赤熱され
る程度の電流を通し、その後流中の温度分布を銅コソ
スタソタソの熱電対にて測定した。漁淀箇所はニクロ
ム線の位置から23cm離れた断面より始めてユ24cm後
方まで10cm間隔毎とした。ニクロム線にもつと近い
所まで測りたいわけであるが、こYではニクロム線自
身の乱れの影響が入る上に,熱電対に輻射線の影響が
入つて來るために測定結果が信用出來ないと思われた
からである。乱流理論によれば気流の風速は乱れの強
さの割合やscaleに無関係となるので、なるべく風速
を下げて実瞼を行う方が好都合で本実験では約10m/s
位で行つた。気流中の渚渡分布は主流の温度との差で
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測るのでこの温度差は数度以ドの程度で、熱電対の起
電力をガルパノメータで読むとき振れて値を定めにく
い欠点がある。この振れの原因として考えられるもの
は、主流の温度が場所によつて異ることや、ニクロム
線や熱電対の振動などで、零接点は必ず主流内に置き
而もなるべく後流に近い処に置く必要がある。本装置
ではニクロム線の位置を中心として熱電対支持レバー
を回鱒させて園孤上の断面の値を読んだものである
が、熱後流の巾はレバーの回鱒牛径に対して極く小さ
いのでこれをそのまふ主流に無直な断面内の温度分布
と見倣した。
風洞吹出口の入口は第1図のようにlm×1mの正
方形断面でこれを絞つて前記の寸法としたもので、正
方形の部分に30メツシの金網を入れた場合(A)と更に
この金網の直前に40cm巾の木をピッチ80cmに並べ
た格子を入れて乱れを増加させゾこ場合(B)について測
定したムニクロム線は矩形の短辺の方向に強り、これ
と直角方向の熱拡散を測定したが、ニクロム線を長辺
の方向に張つた場合も測定した、後者の場合は前者の
場合と殆んど差異がなく、乱れはほぼ等方性になつて
いることを確認した。爾後者の場合は測定精度が不充
分であつたのでこxでは述べないこと1・.する。
3.実騎結果とその考察
Yπnm
第2図 温度分布(A)
(A),(B)の場合について溜度分布の代表的のもの
を夫々第2図、第3図に示してある。ニクロム線から
測定断面までの距離をXとし、主流方向およびニクロ
ム線に直角の方向をYとした。温度分布6°Cに理論
的にガウスの誤差曲線になつているものであるが、測
昭和29年7月
山梨大学工学部研究報告
第 5 号
30 20 ’0 0 ’0 20 30
Ymm
第3図 温度分布(B)
定結果をみてもこのことが認められる。しかしこの分
布曲線と誤差曲線との差異を論ずるにはまだ測定精度
:b:充分でない。これが誤差曲線でおらわされるものと
すれば
θ・=θ.・,. exLP(−Y2/2γ2) ・…・…<1)
となる。θW,。はθの最大値を示す。乱流の拡散理論に
よれば分子の熱運動に基く拡散と同様に、流体の小塊
が最初Y=0に集積されていたものが或時間の後に到
達する距離を「とし、沢山の小塊の移動距離の自乗の
卒均をY2で示している。各測定曲線の1/2 eenantのと
きのYの値をYI 2とすれば、レ/i丙=0.85 Y,2として
求めたものを第4図、第5図に示してある。
m
B
掃6
邪m
4
第4図 Y2及ゾ戸の値(A)
80
亨
60bm・
20 60 80 ’00 /20 ’40
X crn
主流の速度をσ,Y方向の乱れの速度をVとし、流
体の小塊がγ=0を通過して時ll担後の速度Vt,t+ξ
後の速度をVt+S.とすればLagrange相関係数1∼ξは
Rξノ:;+ξ 一…・(2)
であらわされる。V2は乱れの速度の自莱干均で、この
場合はXに無関係に一定と見倣した。凱ち乱流格子か
ら十分離}τているので時間的に変化しないと考えた。
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η舵 tO
6
4
第5図 酉及ゾ吾iの値(B)
0 20 40 60 80 ∫00 ’20
x (m
予
而㎡
(2)式よりただちに次の関係が求められる。
躍2一み∫IRξ碇 ………(3)
ξ=0なるときはRξ=1で、ξを増せばRξは減少し十
分に大きいξに対して’t* Rξ・・0と見倣せるから、t=
X/σなることを舗して・∫1曜針分大き・・te:
対しては韻となるから∫,°° Rξd4 ・= x・/σとおける・
Xoは長さの軍位をもつ定数で乱れのscaleをあらわ
している。この関係を(3)に入れて
芸一2芸X・ ………(4)
部ち十分大きいままたわXに対してはY2はXに比例
する。
これに対して若しt’またわXが小さいときは1∼ξは
1に近いから(3)式より
躍一2謀 …一(5)
從つてゾ戸はXに比例する。第4図、第5図にこの
ことがよく認められるが、Xの更に大きいときの実験
値があれば借一層明瞭になつたことX思われる。Xの
小さいときの測定は温度分布が急激に変化していて測
定しにくい△
(3)式より
Rξ芸霊 ………(6)
部ちRξは冶y2/dX2に比例する。第4図、第5図の
曲線より図式的にd2Y2/dX2を求め、 X=0のとき
Rξ=1とすれば〃2/σ2の値が未知でもRξを求めるこ
とが出來る。第6図にこの値を示しているが、X=O
乱流の拡散現象について
06
R}
04
第6図 Rξの値
60 80
Xanm
r20ノ
の附近のy2の値が正確に定められぬので多少の誤差
は免れ得ない。(A)の場合に比して(B)の場合は乱れ
のscaleが少し大きくなつていることが認められる。
(6)式より
シ豆一/轟爵 ………(7)
(7)式より乱れの張さゾア/σが求められる。(A)の
場合は1・3%,(B)の場合は2・6%位の値が得られた。
ニクロム線の方向に軍位長さの厚みをもつ断面を通
して軍位時間に運ばれる熱量をQ,室気の密度をρ,
比熱をCpとすれば
Q−2∫:・Cμ4γ ………(8)
であるから、ρおよびCvを一定と見倣せばσは一定
であるからQは∫:・alYに比例する・試嗣Qは一
定に保たれるから∫:・dYも一一・」Eとなり第2図・第3
図の面積を求めてみた結果もこれとほX“一致してい
る。創ちこの温度分布がガウス分布になつていれば、
θmαeとゾ亨とは反比例しているわけである。第7図、
第8図はゾ亨の代りに1/輪脳を縦軸にとつたもので
あるが、Xの小さい間はユ/θ撒。はXに比例し、 Xの
tx6
4
長3
%2
第咽蕊及志の値(A)
60 80
xcm
30θha
た
20
云κ’60
第8図
蕊及▲。の値(B)
i20
θ』
loo
必
80
16弓
∫4L
/z
/G
⊥θPt,t
81’
6
4
2
020aoOO X ,§Ol°°i2°
十分大きい処では1/θ2徽オがXをこ比例していることが
認められる。
4.結 語
本実験は装置があまりよくなかつたことふ、熱電対
で気流中の温度分布を測定することのむつかしさのた
めに十分精度のよい実験値を得ることが出來なかつた.
が、装置を改善すれば更に信頼出來る測定が可能と思
われる。債吹出口が短形であることが等方性乱れの仮
定にどの程度影響するかが十分つかめなかつた。また
乱れの強さがXに無関係になつていたかどうかは更に
検討する必要があるものと思われる。
i熱拡散は乱流によるものの他に分子運動によるもの
も含めて測定しているわけであるが、後者は無硯して
もさしつかえのない程度のものである。
本実験は東大岡崎助教授の御指導の下に筆者と商船
大学の土居助教授と共同で行つた実験の一一一99)であるこ
とを附記して深甚の感謝を表します。
言じ(1) Taylor I) iffusion by continuous move−
ments. Proc. London Math.
Soc. A20,1921
(2) Taylor Statistical thory of turbulence・
Parts I−IV. Proc. Roy. Soc.
Aユ51,1935
(3) Kal inske and Fien Eddy diffusion・
Industrial and Engineering Chemistry
Vol.36, No。3,1944
(4) D.C. Co田s The dif知sion process in
turbulent flow.1〕ivision of Aeronaut−
ics. Report A.55
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