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Yamanashi Nursing Journal Vol.16 No.1 (2017)
特別講演
職場のメンタルヘルス — 挑戦と支援 —
若者の成長のために
一般社団法人 医学と社会・連携支援機構 伏見・長東伝クリニック
小林 章雄
KOBAYASHI Akio
平成 29 年 7 月 14 日
山梨大学臨床大講堂
いう考え方(マインドセット)とは,a)人の能力は生来の
ものであり,鍛えて伸ばせるものではないと考える(固
いマインドセット)のか,b)良い習慣と行動は才能を超
える(しなやかなマインドセット)と考えるのか,また,
人の仕事のモチベーションなどについての 2 つの異なる
信念や持論,すなわち,a)命令と統制で人は動く(X 理論)
と考えるのか,b)自己管理,自己統制,自己実現が重
要(Y 理論)と考えるのか ということである。ただし,
最も重要な点は,どちらが正しいかということではなく,
管理者がどのような考え方・持論を持つかによって,管
理のあり方が左右されるということについて,管理者は
自覚的であるべきだという点である。第 2 に,管理者は,
性格や能力などの個人の特性や,積極性や自主性などの
「心の内面」に問題行動の原因を求め,過度に働きかける
ことをせず,改善し増やしたい行動そのものを具体的に
明確にした上で,それぞれを弱化・消去,あるいは強化
する行動科学的な背景要因を理解して働きかけるという
方向からのアプローチが重要である。
非力で使い物にならない若造を含んで,「組織の弱点
であるその若造をみんなで守る,なんとか生き延びさせ
る」という目的を設定すると組織のパフォーマンスが劇
的に向上することが経験則として知られている(内田
樹)。山梨大学の明確なミッションとビジョンの下,職
場のメンタルヘルス向上の試みが職場全体で一体となっ
て展開され,挑戦と支援の中で若者も管理者もそれぞれ
に豊かに成長することを期待したい。
新しく仕事をしはじめた若者は,当然のことながら
様々な困難に遭遇する。そうした時,若者が苦境から逃
げずに挑戦することには,どのような意義があるのか?
そのさなか,自分を支え,立て直すにはどのようしたら
よいのか?それを支援すべき管理者は,何に留意し,ど
のように振る舞うべきかなどについて考えてみた。
仕事に習熟していく過程で「ひと皮むけた」と実感する
ことがある。それは,達成感,有能感,成長感,フロー
な経験を伴うものであったり,レジリエンスと呼ぶにふ
さわしい強靭さの獲得であったりもする。Maier &
Seligman(2016)は,ラット脳におけるセロトニンレベ
ルの検討から,強力で十分な不快なイベントとそれを回
避できた体験の 2 つが存在するとき,はじめて神経回路
の形成促進が生じ,ストレス存在下においても,背側縫
線核におけるセロトニンの放出が抑制されることを説明
した。ある企業において自らの営業成績が振るわない中
で苦闘する新入社員の事例や,筋トレを 2 年間継続した
自験例(66 歳)の成長ホルモンレベルの推移からも,「限
界までやる。その結果を受け入れる」ことの中に成長の
可能性はあり,それを持続させる「やり抜く力」が重要で
あると考える。
若者が挑戦を続けていく上で留意すべき点として,1)
落ち込みや抑うつにつながりやすい認知の歪みを修正す
べきこと,例えば,①ものごとを極端に白か黒かで考え,
少しでもミスがあれば完全な失敗と考えてしまう「全か
無か思考」や,②事実と違った悲観的な結論を一足飛び
に出してしまう「心の読みすぎ」や「先読みの誤り」などに
ついて,極端な認知の歪みを妥当なものに修正していく
ことが必要である。2)子どもの強さから大人の強さへの
考え方の転換 3)落ち込んでいるときや怒りにふるえる
時の収め方 4)アプリを使ったリラックス 5)特に休日
の睡眠力を高める過ごし方 などについて種々の工夫を
するべきである。
一方,若者の挑戦を支援すべき職場の上司(管理者)に
求められることとしては,まず,管理者として,第 1 に,
1)自己の考え方(マインドセット)と,2)信念(持論)につ
いて自問し,見つめること,さらに部下について,組織
についても自問し,見つめることが重要である。ここに