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トラウマ体験における症状認知と対処行動に関する検討

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Academic year: 2021

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ト ラ ウ マ 体 験 に お け る 症 状 認 知 と

対 処 行 動 に 関 す る 検 討

2 0 1 9

兵 庫 教 育 大 学 大 学 院

連 合 学 校 教 育 学 研 究 科

学 校 教 育 実 践 学 専 攻

( 兵 庫 教 育 大 学 )

瀧 井 美 緒

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目 次

1 章 トラウマに関する研究動向と課題 第1 節 トラウマ概念と外傷後ストレス症状... 1 第1 項 トラウマ体験と外傷後ストレス症状 ... 1 第2 項 トラウマと外傷後ストレス障害 ... 1 第3 項 外傷後ストレス障害の疫学とトラウマ ... 4 第4 項 PTSD における Comorbidity と外傷後ストレス反応 ... 6 第5 項 トラウマ体験の致死性の有無 ... 8 第2 節 トラウマ体験者の対処行動 ... 10 第1 項 心理教育による支援の重要性 ... 10 第2 項 トラウマ体験者の受診・相談行動 ... 13 第3 項 ソーシャルサポートの重要性 ... 15 第3 節 本研究の目的と意義 ... 16 第1 項 本研究の目的と意義 ... 16 第2 項 本研究の構成 ... 17 第2 章 トラウマ体験の違いによる外傷後ストレス反応,身体症状, 抑うつ症状,不安感受性の差異についての検討【研究 1】 第1 節 本章のねらい ... 20 第2 節 方法 ... 22 第3 節 結果 ... 27 第4 節 考察 ... 33 第5 節 本章のまとめ ... 35 第3 章 外傷後ストレス症状および対処行動に対する認識について の検討【研究 2】 第1 節 本章のねらい ... 36 第2 節 方法 ... 37 第3 節 結果 ... 42 第4 節 考察 ... 56 第5 節 本章のまとめ ... 60

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4 章 トラウマ体験者における外傷後ストレスへの対処方法に ついての検討【研究 3】 第1 節 本章のねらい ... 62 第2 節 方法 ... 64 第3 節 結果 ... 69 第4 節 考察 ... 78 第5 節 本章のまとめ ... 85 第5 章 トラウマを体験した者を適切な支援と心のケアへつなげる 予防的心理教育の実施 第1 節 本章のねらい ... 88 第2 節 行政機関の支援職を対象とした実施【研究 4-1】 ... 89 1.方法 ... 89 2.結果 ... 94 3.考察 ...106 第3 節 学校教育現場を対象とした実施【研究 4-2】 ...107 1.方法 ...107 2.結果 ... 111 3.考察 ... 117 第4 節 本章のまとめ ...118 第6 章 総合考察 第1 節 本研究で得られた結果と臨床的示唆...122 第2 節 今後の課題と展望 ...126 引用文献 ...130 謝 辞 ...139 付録目録 ...141

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1 第 1 章 トラウマに関する研究動向と課題 第 1 節 トラウ マの概念と外傷後ストレス症状 第 1 項 トラウマ体験と外傷後ストレス反応 こ れ ま で 欧 米 を 中 心 に ト ラ ウ マ に 関 連 し た 介 入 や 研 究 が 行 わ れ て き たが , 近 年, 多 発 す る自 然 災 害や 事 件 ・ 事故 な ど によ り , 本 邦に お いて もト ラ ウ マに よ る 心 身へ の 影 響に 注 目 が なさ れ て いる 。 一 般 的に 心 身的 な不 快 を もた ら す 要 因を ス ト レス と 呼 ぶ が,Selye(1956 杉・田多井・ 藤井・竹 宮 訳 1974)はストレスを生物学的系の内部に,非特異的に生ぜ しめ ら れ た, あ ら ゆ る変 化 よ りな る 特 異 的症 状 候 群 で 発 現 さ れた あ る状 態と 定 義 して い る。スト レ ス が非 常 に 強 い心 的 な 衝撃 を 与 え る場 合 に は, その 体 験 が過 ぎ 去 っ た後 も 体 験が 記 憶 に 残り , 精 神的 な 影 響 を与 え 続け るこ と が ある 。 こ の よう に し ても た ら さ れた 精 神 的な 後 遺 症 を特 に 心的 なト ラ ウ マ( 外 傷 ) と呼 び , それ に よ る 精神 的 な 変調 を ト ラ ウマ 反 応, 外傷 後 ス トレ ス 反 応 (Posttraumatic Stress Reaction:以下 PTSR)と呼ぶ (金 ,2001)。PTSR の多くは一過性に経過し,症状の程度も軽いものが 多い が , 一部 に は 慢 性化 し , その 後 の 社 会生 活 に 少な か ら ぬ 苦痛 を 残す こと が あ る( 金,2001)。それらのトラウマによって生じる疾 患として外 傷後 ス ト レス 障 害 (posttraumatic stress disorder:以下 PTSD)がある。

第 2 項 トラウマと外傷後ストレス障害

PTSD とは,精神疾患の診断・統計マニュアル 第 3 版(Diagnostic and statistical manual of mental disorders (3rd edition) : DSM-Ⅲ , American Psychiatric Association, 1980:以下 APA)において,不安障害の下位カテ

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ゴリ ー に “心 的 外 傷 後ス ト レ ス障 害 ” と して 概 念 化さ れ た 疾 患で あ る。 現在 は ,精神 疾 患の 診断・統 計 マ ニ ュア ル 第 5 版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th edition):DSM-5,APA,2013)や世界保 健機 関 (WHO)の国際疾病分類第 10 版(ICD-10)において“外傷後ス トレ ス 障 害”,“ 心 的 外傷 後 ス トレ ス 障 害 ”と 訳 さ れて い る 。

精神 疾 患 の診 断・統 計マ ニ ュ アル 第 4 版テキスト 改訂版(Diagnostic and statistical manual of mental disorders (4th edition text revision) :DSM-Ⅳ-TR, APA,2000)では,不安障害の下位カテゴリーとして位置づけられ,PTSD を構 成 す る主 な 症 状 には ,再 体 験・侵 入 的想 起 症 状(基 準 B),回避・麻 痺症 状( 基準 C),過覚醒症状(基準 D)の 3 つが挙げられていた。しか し ,19 年ぶりの全面改訂により ,DSM-5(APA,2013)では大幅な診断 カ テ ゴ リ ー の 変 更 が 施 さ れ て お り ,PTSD についてはこれま での「不安 障害 」のカ テ ゴリ ー から ,「 心 的外 傷 お よび ス ト レス 因 関 連 障害 群 」と い う 新 た な カテ ゴ リ ー に変 更 さ れて い る 。 診断 基 準 にお い て も 変更 が 行わ れ て お り ,DSM-Ⅳ -TR(APA,2000) で議論された致死性の有無に関す る A 基準の明確化が行われ,テレビなどの映像を通した曝露の除外,侵 入症 状 に おけ る 思 考 の反 す う の除 外 , 回 避マ ヒ 症 状が 分 類 さ れ, 認 知に 関す る 新 たな 診 断 基 準の 設 定 な ど の 変 更 点が 挙 げ られ る 。 DSM-5(APA,2013)の診断基準によると,PTSD を構成する主な症状 には , 侵 入( 再 体 験 )症 状 ( 基準 B),刺激の持続的回避(基準 C),認 知と 気 分 の陰 性 の 変 化( 基準 D),覚醒度と反応 性の著しい変化(基準 E) の 4 つが挙げられる(表 1-1)。侵入(再体験)症状とは,トラウマ体験 に関 す る 記憶 が よ み がえ っ た り, フ ラ ッ シュ バ ッ ク, 悪 夢 と して 繰 り返 され , 動 悸や 発 汗 な どの 身 体 生理 反 応 が 生じ る こ とを さ す 。 刺激 の 持続 的回 避 と は, ト ラ ウ マ体 験 を 想起 さ せ る でき ご と や状 況 を 避 けた り ,感

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3 A. 1) 心的外傷的出来事を直接体験する。 2) 他人に起こった出来事を直に目撃する。 3) 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または 危うく死にそうになった出来事の場合,それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない。 4) 心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に,繰り返しまたは極端に曝露される体験をする。 B. 1) 心的外傷的出来事の反復的,不随意的,および侵入的で苦痛な記憶。 2) 夢の内容と感情またはそのいずれかが心的外傷的出来事に関連している,反復的で苦痛な夢。 3) 心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる,またはそのように行動する解離症状。 4) 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する,内的または外的なきっかけに曝露された際の強烈な または遷延する心理的苦痛。 5) 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する,内的または外的なきっかけに対する顕著な生理学的 反応。 C. 1) 心的外傷的出来事についての,または密接に関連する苦痛な記憶,思考,または感情の回避,または回避しよう とする努力。 2) 心的外傷的出来事についての,または密接に関連する苦痛な記憶,思考,または感情を呼び起こすことに結びつ くもの(人,場所,会話,行動,物,状況)の回避,または回避しようとする努力。 D. 1) 心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能(通常は解離性健忘によるものであり,頭部外傷やアルコール,また は薬物など他の要因によるものではない)。 2) 自分自身や他者,世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予測。 3) 自分自身や他者への非難につながる,心的外傷的出来事の原因や結果についての持続的でゆがんだ認識。 4) 持続的な陰性の感情状態。 5) 重要な活動への関心または参加の著しい減退。 6) 他者から孤立している,または疎遠になっている感覚。 7) 陽性の情動を体験することが持続できないこと。 E. 1) 人や物に対する言語的または身体的な攻撃性で通常示される,(ほとんど挑発なしでの)いらだたしさと激しい怒り。 2) 無謀なまたは自己破壊的な行動。 3) 過度の警戒心。 4) 過剰な驚愕反応。 5) 集中困難。 6) 睡眠障害。 F. G. H. 表1-1 外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準(DSM-5) その障害は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,またはほかの重要な領域における 機能の障害を引き起こしている。 その障害は,物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。 実際にまたは危うく死ぬ,重症を負う,性的暴力を受ける出来事への,以下のいずれか1つ(また はそれ以上)の形による曝露 心的外傷的出来事の後に始まる,その心的外傷的出来事に関連した,以下のいずれか1つ(または それ以上)の侵入症状の存在 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避。心的外傷的出来事の後に始まり,以下のいずれか 1つまたは両方で示される。 心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化 し,以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される。 心的外傷的出来事と関連した,覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化 し,以下のいずれかの2つ(またはそれ以上)で示される。 障害(基準B,C,DおよびE)の持続が1カ月以上。

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4 情反 応 が 収縮 す る な ど精 神 活 動の 低 下 が みら れ る こと を さ す 。認 知 と 気 分の 陰 性 変化 は 体 験 の一 部 を 思い 出 せ な い, 自 責 ,他 者 不 信 ,精 神 活動 性の 低 下 など を さ す 。覚 醒 度 と反 応 性 の 著し い 変 化と は , 少 しの 刺 激に 対し て ひ どく 脅 え る よう な 精 神 的 緊 張 状 態と な っ たり , 過 剰 な警 戒 心を 抱 い た り , 集 中 困 難 や イ ラ イ ラ , 不 眠 な ど が 生 じ る こ と を さ す 。 ま た DSM-5 では,6 歳以下の子どもの診断基準も示されている(表 1-2)。 第 3 項 外傷後ストレス障害の疫学とトラウマ PTSD は,外傷的出来事を体験した者す べてが発症するとい うわけで はな い 。Kessler, Sonnega, Bromet, Hughes, & Nelson(1995)による大規 模研 究 に よる と ,PTSD の生涯有病率は男性 5.0%,女性 10.4%であった。 日本 に お ける PTSD の生涯有病率は 1.3%,12 か月有病率は 0.7%である と報 告 さ れて い る (Kawakami, Tsuchiya, Umeda, Koenen, Kessler, & The World Mental Health Survey Japan, 2014)。Kawakami et al.(2014)による と,ト ラウ マ の 生涯 経験 率 は 約 60%で,死亡や他害に関する経験や目撃, 暴 力 や 災 害 や 事 故 が 比 較 的 多 く ,PTSD の発症リスクの高い 出来事とし て身 体 的 暴力 や 子 ど もの 深 刻 な病 気 , 個 人的 な 出 来事 な ど が 挙げ ら れて いる 。Kessler et al.(1995)の報告では,外傷的出来事への曝露率は男性 60.7%,女性 51.2%であり,性別や外傷的出来事の種類により PTSD の 発症 率 が 異な っ て い るこ と が 示さ れ て い る。 種 類 別発 症 率 で は, レ イプ で男 性 65.0%,女性 45.9%,身体暴力で男性 1.8%,女性 21.3%,戦闘 で男 性 38.8%,武器による脅迫で男性 1.9%,女性 32.6%,事故では男 性 6.3%,女性 8.8%,火災を含む自然災害で男性 3.7%,女性 5.4%であ った 。 こ れに よ る と ,レ イ プ や戦 闘 で は PTSD 発症率が高く,事故や自 然災 害 で は低 い 傾 向 がみ ら れ てお り ,出 来事 に よ って は 男 性 では 低 い が,

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5 1) 心的外傷的出来事を直接体験する。 2) 他人,特に主な養育者に起こった出来事を直に目撃する。 3) 親または養育者に起こった心的外傷的出来事を耳にする。 B. 1) 心的外傷的出来事の反復的,不随意的,および侵入的で苦痛な記憶。 2) 夢の内容と感情またはそのいずれかが心的外傷的出来事に関連している,反復的で苦痛な夢。 3) 心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる,またはそのように行動する解離症状(このような反応は1 つの連続体として生じ,非常に極端な場合は現実の状況への認識を完全に喪失するという形で現れる)。このよ うな心的外傷に特異的な再演が遊びの中で起こることがある。 4) 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する,内的または外的なきっかけに曝露された際の強烈な または遷延する心理的苦痛。 5) 心的外傷的出来事を想起させるものへの顕著な生理学的反応。 C. 1) 心的外傷的出来事の記憶を喚起する行為,場所,身体的に思い出させるものの回避,または回避しようとする努 力。 2) 心的外傷的出来事の記憶を喚起する人や会話,対人関係の回避,または回避しようとする努力。 3) 陰性の情動状態の大幅な増加。 4) 遊びの抑制を含め,重要な活動への関心または参加の著しい減退。 5) 社会的な引きこもり行動。 6) 陽性の情動を表出することの持続的減少。 D. 1) 人や物に対する(極端なかんしゃくを含む)言語的または身体的な攻撃性で通常示される,(ほとんど挑発なしでの)いらだ たしさと激しい怒り。 2) 過度の警戒心。 3) 過剰な驚愕反応。 4) 集中困難。 5) 睡眠障害。 E. F. G. 表1-2 6歳以下の子どもにおける 外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準(DSM-5) その障害は,物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。 刺激の持続的回避 認知の陰性変化 6歳以下の子どもにおける,実際にまたは危うく死ぬ,重症を負う,性的暴力を受ける出来事へ の,以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露 心的外傷的出来事の後に始まる,その心的外傷的出来事に関連した,以下のいずれか1つ(または それ以上)の侵入症状の存在 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避,または心的外傷的出来事に関連した認知と気分の 陰性の変化で示される,以下の症状のいずれか1つ(またはそれ以上)で存在する必要があり,そ れは心的外傷的出来事の後に発現または悪化している。 心的外傷的出来事と関連した覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化し ており,以下のうちの2つ(またはそれ以上)によって示される。 障害の持続が1カ月以上。 その障害は,臨床的に意味のある苦痛,または,両親や同胞,仲間,他の養育者との関係や学校活動にお ける機能の障害を引き起こしている。

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女性 で は 高い 発 症 率 を示 す も のが あ っ た こと が 指 摘さ れ て い る。 有 病率 につ い て は ,DSM-5 に改訂されたことにより,変化がある可能性もある。 Kilpatrick, Resnick, Milanak, Miller, Keyes, & Friedman(2013)によると, DSM-5 の基準によるトラウマへの曝露率は 89.7%であるが,生涯有病率 は 8.3%,12 か月有病率は 4.7%,6 か月有病率は 3.8%であり,DSM-Ⅳ-TR 基準 よ り わず か に 低 い傾 向 で あっ た と 報 告し て い る。 戦闘 ス ト レス や , 犯 罪被 害 , 性暴 力 被 害 ,自 然 災 害な ど , さ まざ まな 種 類 の 外 傷 性 ス ト レ ス に 関 し て 量 - 反 応 関 係 が 示 さ れ て お り ,March (1993)によると,ストレッサー強度とストレス症状との関係に言及し た 19 の研究のうち 16 が量-反応関係の存在を認めている。よって,ス ト レ ッ サ ー 強 度 が 高 い ほ ど ,PTSD の発症率は高くなり,ま た衝撃の強 さそ の も のが 発 症 に 大き く 影 響す る が , スト レ ッ サー 強 度 が 低い 場 合に は ,PTSD 発症率は低くなり,また発症 にはもともとの脆弱 性が大きく 影響 す る もの と 考 え られ る 。 第 4 項 PTSD にお ける Comorbidity と外傷後ストレス反応 PTSD の多くは他の精神 疾患を合併し ており,対象集団の 種別やスト レッ サ ー の内 容 , 臨 床群 か 非 臨床 群 か , 診断 方 法 ,診 断 面 接 者の レ ベル な ど の 如 何 に 問 わ ず ,PTSD には共通して高い割合で合併精 神疾患が認 めら れ て いる 。ま た ,こ れ ら の症 状 に つ いて は“Comorbidity”という概 念で 説 明 され て お り ,併 存 疾 患と い う 位 置づ け と なっ て い る 。こ れ は, どち ら が 先に 生 じ た もの か と いう 問 題 を 区別 す る こと が 難 し く, 明 らか とな っ て いな い た め であ る 。 しか し , 併 存し て い る疾 患 は , 取り 巻 く 症 状 を 悪 化 させ た り , 持続 さ せ たり す る こ とも 考 え られ る た め ,決 し て無 視す る こ とは で き な いと 考 え られ る 。

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7 Kessler et al.(1995)によると,男性では,PTSD との合併が認められ たの が 全 体の 88.3%を示しており,アルコール依存 51.9%,うつ病 47.9%, 行為 障 害 43.3%であった。さらに女性では全体の 79.0%に合併が認めら れ, う つ 病 48.5%,アルコール依存 27.9%,薬物依存 26.9%であった。 飛鳥 井 (2011)によると, 本邦においても PTSD と診断された者はそう でな い 者 と比 較 し て 抑う つ 症 状 の 合 併 が 見ら れ , それ が 回 避 ,過 覚 醒と の関 連 が ある と い う 結果 か ら,外 傷 体験 後に 生 じ る大 う つ 病 ,不 安 障害 , 恐怖 症 な どの 病 態 の 多く は PTSD 症状と併発したものであり, PTSD 症 状を 経 過 中に 病 態 が 発展 す る こと は む し ろ少 な い 可能 性 を 指 摘 し て い る。 また ,9 歳から 15 歳の子どもにおいても, PTSD と抑うつ症状は高い合 併率 を 示 して お り(Thabet, Abed, & Vostanis, 2004),PTSD の発症が 児童・ 思春 期 で も起 き る の と同 様 に ,抑 う つ 症 状の 合 併 につ い て も 児童 ・ 思春 期 で も 起 きて い る と いう こ と が考 え ら れ る 。

さ ら に ,Jakupcak, Osborne, Michael, Cook, Albrizio, & McFall (2006) は復 員 軍 人 の PTSD 患者を対象とし,身体症状と不安感受性,抑うつ 症 状 に 関 す る 検 討 を 行 っ て い る 。 結 果 ,PTSD 症状と身体症状 の関係の重 要性 よ り も, 併 存 し てい る 抑 うつ 症 状 の 重篤 度 と 不安 感 受 性 によ っ て身 体 症 状 を 説 明 す る こ と が で き る と 報 告 し て お り ,PTSD 症状を軽減させ るた め に は, 不 安 感 受性 や 併 存し て い る 抑う つ 症 状, 身 体 症 状に つ いて 検討 す る べき で あ る と考 え ら れる 。 さ ら には , 成 人 の PTSD 患者におい て , 身 体 症 状 は PTSD 症 状 と と も に 起 こ っ て い る と い う 報 告 も あ る (Asmundson, Coons, Taylor, & Katz, 2002)。 し か し Hensley & Varela (2008)は今まで, PTSD における身体 症状は不安や抑うつ 症状に次ぐ

第 2 の症状として位置づけられ,トラウマ体験によって起こる症状とし

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8 中 谷 (2002)は, PTSD における侵入 症 状,過覚醒症状が身 体症状と関 連し , 回 避・ 麻 痺 症 状が 抑 う つ 症 状 と 関 連し て い ると い う 結 果を 示 して い る 。 ま た , 身 体 症 状 の 背 後 に 侵 入 症 状 が 隠 れ て い る 可 能 性 や ,PTSD に抑 う つ 症状 だ け が 注目 さ れ る可 能 性 が ある と 指 摘し て い る 。Hensley & Varela(2008)は PTSD 症状と身体症状の単独および,相互的な予測因子 とし て 特 性不 安 と 不 安感 受 性 を位 置 づ け ,調 査 を 行っ て い る 。し か し, 特 性 不 安 に つ い て は ト ラ ウ マ 体 験 の 強 度 に 関 係 な く ,PTSD 症状を予測 す る も の だ と い う 報 告 が な さ れ て い る (Weems, Watts, Marsee, Taylor, Costa, Cannon, Carrion, & Pina, 2007)。よって,不安感受性が PTSD 症状, 身体 症 状 ,お よ び 特 性不 安 を 緩和 す る 要 因に な る こと が 考 え られ る 。さ らに , こ れら の 指 摘 につ い て 検討 し て い く上 で は , ト ラ ウ マ 体験 に よる 心 理 的 変 化 を 捉 え る 上 で ,PTSD という疾患についての範囲 だけではな く, さ ら に広 い 範 囲 でト ラ ウ マ体 験 後 の PTSR 自体を捉える必要が ある と考 え ら れる 。 第 5 項 トラウマ体験の致死性の有無

PTSR を検討する際には,Shapiro & Forrest(1997 市井監訳 2006)は, そ の 出 来 事 が 致 死 性 を 有 し て い る か ど う か で は な く ,PTSR をもたら す 出来 事 こ そが ト ラ ウ マで あ る と指 摘 し て いる 。 金 (2001)も同様に ,主 観的 な 苦 痛が あ れ ば どの よ う な出 来 事 も トラ ウ マ にな り 得 る と考 え られ る と 指 摘 して い る 。 また , 外 傷後 ス ト レ ス反 応 に つい て , 慢 性 PTSD 患者と何らかの外傷 体験 を 経 験し た 一 般 大学 生 に おい て 比 較 した と こ ろ, 傾 向 に 差が な いこ とが し め され て お り(大 澤・加 茂・坂 野 ,2007),外傷体験想起時に対す る認 知 的 評価 と 対 処 方略 に お いて も ,傾 向に 差 異 がな い こ と から 臨 床 群,

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非臨 床 群 を問 わ ず 広 く捉 え る こと が 重 要 だと 考 え られ る 。

Mol, Arntz, Metsemakers, Dinant, Vilters-Van Montfort, & Knottnerus (2005)は, A 基準を満たさない慢性疾患や配偶者との不和,失業など の出 来 事 を体 験 し て いる 者 も PTSD 症状は高く示し,さまざまな要因を 統制 し て も 事 故 や 災 害な ど の 出来 事 を 体 験し た 人 々 と 同 等 か それ 以 上の PTSD 症状を示すことを報告している。 さら に ,Kawakami et al.(2014)によると,本邦において,トラウマ 体験 と し て報 告 さ れ た出 来 事 の中 に は 子 ども の 重 病や 重 要 な 他者 の トラ ウ マ 体 験 , 個 人 的 な 出 来 事 と い っ た 報 告 が み ら れ ,PTSD 発症リスクに おい て も 子ど も の 深 刻な 病 気 は高 い リ ス クを 示 し てお り , 文 化的 背 景と して , 日 本は 両 親 , 特に 母 子 関係 の 親 密 さ か ら , 子ど も の 重 大な 病 気な どが ト ラ ウマ 体 験 と なり 得 る こと を 指 摘 して い る 。しか し ,DSM-5(APA, 2013 高橋・大野監訳 2014)の PTSD 診断基準においてはこれらの出来 事 は A 基準には合致しないと判断される。 この よ う な議 論 が 続 く中 で , 佐藤 (2005)はトラウマを広義のトラウ マ, 狭 義 のト ラ ウ マ に区 別 す るこ と を 提 案し て い る。 佐 藤 (2005)によ る広 義 の トラ ウ マ と は,「経 験 当 時と 同 じ 恐怖 や 不 快感 を 当 該 個人 に もた ら し 続 け る 出 来 事 」 と 定 義 し て い る 。 一 方 狭 義 の ト ラ ウ マ と は ,PTSD の診 断 基準 A に合致するような致死性を有する出来事を指している。 そこ で ,本 研究 に お いて も ,ト ラウ マ を PTSD の診断基準 A に合致す る狭 義 の トラ ウ マ だ けで な く ,広 義 の ト ラウ マ と 狭義 の ト ラ ウマ に 区別 し て 検 討 する こ と が 必要 で あ ると 考 え ら れる 。 先 行研 究 に お いて ト ラウ マ の 性 質 を ト ラ ウ マ 体 験 の 致 死 性 の 有 無 に よ っ て 定 義 付 け し て い る 伊 藤・鈴 木(2009)を参考に,広義のトラウマ は DSM-Ⅳ-TR(APA,2000 高橋・大 野・染 谷 監 訳 2003)における PTSD 診断基準 A「生命をおびや

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10 かす 危 険 性を 持 ち ,強い 恐 怖 感を 伴 う 出 来事 」,DSM-5(APA,2013 高 橋・ 大 野 2014)における PTSD 診断基準 A「実際にまたは危うく死ぬ, 重傷 を 負 う, 性 的 暴 力を 受 け る出 来 事 」 に合 致 し ない 出 来 事 を 定 義 し , 狭義 の ト ラウ マ を 診 断基 準 A に合致する出来事と定義する。 第 2 節 トラウマ体験者の対処行動 第 1 項 心理教育による支援の重要性 トラ ウ マ に関 す る さ まざ ま な 介入 法 に お いて , 外 傷体 験 後 の 心理 教育 の重 要 性 につ い て 指 摘さ れ て い る( 杉 村・冨 永・高 橋・本 多 ,2009)。心 理教 育 と は, 疾 患 の 成り 立 ち や治 療 法 な どの 情 報 を当 事 者 と シェ ア リン グす る こ とに よ っ て ,治 療 者 ―当 事 者 間 の信 頼 関 係を 構 築 し ,治 療 やケ アを よ り 発展 的 に 進 めよ う と する も の で ある ( 前 田・ 金 ,2012)。 PTSD の治療的介入に関する研究は,欧米で多くなされており,PTSD 治療 に 関 する さ ま ざ まな ガ イ ドラ イ ン 等 も整 備 さ れて い る 。 国際 ト ラウ マテ ィ ッ クス ト レ ス 学会 に よ る予 防 と 治 療の ガ イ ドラ イ ン(International Society for Traumatic Stress Studies,2018)では, 児童青年 の場合には, トラ ウ マ 焦点 化 認 知 行動 療 法 や EMDR( Eye Movement Desensitisation and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)を第一選択 とすること, 成人 の 場 合 に は 薬 物 療法 の ほ か, 認 知 処 理療 法 や 認知 療 法 ,EMDR,ト ラウ マ 焦 点化 認 知 行 動療 法 , 持続 エ ク ス ポー ジ ャ ーセ ラ ピ ー を第 一 選択 と す る こ とが 明 記 さ れて い る 。ま た , 早 期予 防 介 入や 早 期 介 入で は 心理 教育 の 重 要性 が 指 摘 され て お り, 第 一 選 択と し て 推奨 さ れ て いる 治 療的 介入 の ほ とん ど に PTSD の心理教育が含まれている。さらに,2018 年に 改訂 さ れ た英 国 に よ る治 療 ガ イド ラ イ ン (National Institute for Clinical

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11 Excellence,2018:以下,NICE ガイドライン)では,介入の要素として, トラ ウ マ に対 す る 反 応や 過 覚 醒や フ ラ ッ シュ バ ッ ク, 安 全 確 保な ど の心 理教 育 が 明記 さ れ て いる 。 心 理教 育 は 心 理的 介 入 と比 較 し , 費用 対 効果 が臨 床 的 に非 常 に 高 いこ と が 示唆 さ れ て おり , 介 入の 一 部 と して 心 理教 育を 行 う べき で あ る とし て い る。 子 ど も に対 す る TF-CBT( Trauma- Focused Cognitive Behavioral Therapy)では,トラウマとなった出来事に 対す る 子 ども と 親 の 反応 を 通 常起 こ り 得 るこ と だ と説 明 し , 起き た こと を正 確 に 認知 で き る よう に す るよ う 心 理 教育 を 行 って い る。(Coen, Mannarino, & Deblinger, 2006 白川・菱川・冨永監訳 2014)。

また , 心 理教 育 は 治 療的 介 入 のみ な ら ず ,行 わ れ てい る 。 ト ラウ マ体 験に よ っ て引 き 起 こ され る 初 期の 苦 痛 を 軽減 す る こと , 短 期 ・長 期 的な 適応 機 能 と対 処 行 動 を促 進 す るこ と を 目 的 と し た ,サ イ コ ロ ジカ ル ファ ース ト エ イド(National Child Traumatic Stress Network and National Center for PTSD,2006 兵庫県こころのケアセンター訳 2009)では, 8 つの活 動が 提 唱 され て お り ,対 処 に 役立 つ 情 報 の提 供 の 部分 に お い て, ス トレ ス反 応 に 関す る 基 本 的な 情 報 を提 供 す る こと や , トラ ウ マ や 喪失 に 対す る一 般 的 な心 理 的 反 応に つ い て説 明 を 行 うと い う 心理 教 育 を 取り 入 れて い る( 表 1-3)。さらに,米国の薬物乱用・精神衛生管理庁( Substance Abuse and Mental Health Services Administration:SAMHSA)が掲げる,トラウ マ・イ ン フォ ー ム ド ・アプ ロ ーチ(SAMHSA,2018)では,①トラウマ の多 岐 に わた る 影 響 と回 復 の 可能 性 を 理 解す る ,② クラ イ エ ント・家 族・ スタ ッ フ ・そ の 他 の 関係 者 に おけ る ト ラ ウマ の サ イン や 兆 候 に気 づ く, ③ト ラ ウ マの 知 識 を 政策 ・ 手 続き ・ 慣 行 に至 る ま で支 援 分 野 にい き わた らせ る , ④再 ト ラ ウ マ化 を 防 ぐ手 立 て を 探す , か ら成 っ て い る。 ど の概 念に お い ても ト ラ ウ マに 関 す る心 理 教 育 的な 視 点 が重 要 と さ れて い るこ

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活動

目的

1. 被災者に近づき,活動を始める 被災者の求めに応じる。あるいは,被災者に 負担をかけない共感的な態度でこちらから手 をさしのべる。 2. 安全と安心感 当面の安全を確かなものにし,被災者が心身 を休められるようにする。 3. 安定化 圧倒されている被災者の混乱を鎮め,見通し がもてるようにする。 4. 情報を集める ―いま必要なこと,困っていること 周辺情報を集め,被災者がいま必要としてい ること,困っていることを把握する。そのう えで,その人にあったサイコロジカルファー ストエイド(PFA)を組み立てる。 5. 現実的な問題の解決を助ける いま必要としていること,困っていることに 取り組むために,被災者を現実的に支援す る。 6. 周囲の人々との関わりを促進する 家族・友人など身近にいて支えてくれる人 や,地域の援助機関との関わりを促進し,そ の関係が長続きするよう援助する。 7. 対処に役立つ情報 苦痛をやわらげ,適応的な機能を高めるため に,ストレス反応と対処の方法について知っ てもらう。 8. 紹介と引き継ぎ 被災者がいま必要としている,あるいは将来 必要になるサービスを紹介し,引き継ぎを行 う。

表1-3 サイコロジカル・ファーストエイドの8つの活動内容

(National Child Traumatic Stress Network and National Center for PTSD,2006

兵庫県こころのケアセンター訳

2009)

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13 と が 示 唆 さ れ る 。 こ れ ら の こ と か ら ,PTSD やトラウマに関 する治療的 介入 や 支 援を 行 う う えで は , 心理 教 育 的 なア プ ロ ーチ は 不 可 欠で あ ると 考え ら れ る。 第 2 項 トラウマ体験者の受診・相談行動 PTSD の診断基準を満たす 者のうち,発 症から一年以内に受 診や相談 をし て い る者 は 7.1%に過ぎず, 約半数が,発症から平均 12 年経過して も未 受 診 であ り , 自 身の 症 状 に気 付 い て いて も , 病院 や 相 談 機関 な どを 利 用 す る 者 は 少 な い こ と が 指 摘 さ れ て い る (Wang, Berglund, Mark, Pincus,Wells, & Kessler, 2005)。これは受診や 相談をすることで,自分が 体験 し た トラ ウ マ に つい て 向 き合 わ な け れば な ら ず, 症 状 そ のも の を否 定す る こ とで , 受 診 や相 談 行 動に 至 ら な い可 能 性 が考 え ら れ る。 ま た, トラ ウ マ を体 験 し , 外傷 後 ス トレ ス 反 応 やそ の 他 の関 連 症 状 を呈 し てい ても ,それ ら の 症状 がト ラ ウ マ由 来 の 症 状で あ る と認 識 し て いな け れ ば, 適切 な 対 処行 動 を 取 るこ と は 難し い 可 能 性が 考 え られ る 。 し かし , トラ ウマ 体 験 者自 身 は 何 らか の 症 状や 反 応 に よっ て 日 常生 活 に 影 響を 及 ぼし てい る 可 能性 が あ る 。Van Der Kolk, McFarlane, & Weisaeth, (1996 西澤 監 訳 2001 ) は DESNOS ( Disorder of Extreme Stress Not Otherwise Specified)を提唱し,慢性化,複雑化したトラウマの場合 DESNOS によ って 説 明 でき る こ と が示 唆 さ れて い る 。DESNOS の主症状の一つに記憶 をめ ぐ る 調節 障 害 と して 解 離 と健 忘 が 挙 げら れ て いる 。 慢 性 化, 複 雑化 した ト ラ ウマ を 体 験 した 者 の 中に は 日 常 生活 で 支 障を き た し てい る 場合 があ る 。 藤森 ・ 青 木(2016)は,トラウマ症状 の多くは,表面に現れる現象の みで は ト ラウ マ 体 験 によ る 反 応で あ る こ とが , 本 人や 周 り に もわ か りに

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14 くい こ と が多 い こ と を指 摘 し てい る 。 回 避症 状 の ため に 引 き こも っ てい たり , 不 登校 に な っ てい た り ,過 覚 醒 症 状に よ る 睡眠 障 害 を 呈し て いた りす る 場 合で も , 本 人が ト ラ ウマ 体 験 と の関 連 性 を自 覚 し て いな い 場合 や自 覚 し てい て も あ えて ト ラ ウマ 体 験 に つい て 語 らな い 場 合 は, 治 療者 や支 援 者 も, こ れ ら の症 状 が トラ ウ マ 反 応で あ る と気 付 け な いこ と が多 い 。 大規 模 災 害の 発 災 時 や学 校 で 起き た 事 件 ・事 故 な どの 際 に は 日常 にお いて も 周 囲や 支 援 者 がト ラ ウ マを 体 験 し た者 の 変 化に も 目 を 向け や すい だけ で な く, 集 団 介 入を 行 い やす い と 考 え ら れ る が,PTSD 発症のリス クが 高 い 性被 害 や 個 別性 の 高 い事 件 ・ 事 故の 場 合 には , 自 ら 支援 を 求め る必 要 が ある 。 し か し, 個 別 性の 高 い ト ラウ マ 体 験の 場 合 は ステ ィ グマ に関 す る 問題 が 存 在 する 。Kawakami et al.(2014)は,本邦での PTSD 発症 の リ スク が 高 い とさ れ る 性被 害 に つ いて ,15.6%が体験しており, 条件 つ き リス ク は 5.6%とされ,他国と比較し,生涯有病率が非常に低い こと を 報 告し て い る 。Dussich(2001)は,日本人は性被害について非常 に偏 見 を 帯び た 体 験 とと ら え てお り , 出 来事 を 重 大に 受 け 止 め て い な か った り , 被害 者 が 若 年で あ っ たり , 警 察 に雑 に 扱 われ る の で はな い かと 考え て い たり , 犯 人 に復 讐 さ れる の で は ない か と 考え た り , 自分 や 周囲 のも の を トラ ブ ル に 巻き 込 む ので は な い かと 考 え るこ と で,通報 や 相 談, 報告 を し ない こ と を 指摘 し て いる 。 こ れ らの こ と から ,Kawakami et al. (2014)における報告においても,個別性の高いトラウマ体験について は過 少 報 告さ れ て い る可 能 性 が考 え ら れ る。 こ れ は, 詳 細 な 情報 を 求め ない 「 個 人的 な 出 来 事」 に よる PTSD の有病率が高いことからも,トラ ウマ を め ぐる ス テ ィ グマ や 認 識の 仕 方 に つ い て 文 化的 な 配 慮 が求 め られ てい る と 示唆 さ れ る 。

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15 トラ ウ マ 体験 者 が 受 診・ 相 談 行動 に 至 る ため に は トラ ウ マ 体 験後 には どの よ う な反 応 が 起 こり 得 る のか と い う こと や 病 院や 相 談 機 関な ど が利 用可 能 で ある と い う こと を 認 識し て い る 必要 が あ るの で は な いか と 考え らえ る 。 第 3 項 ソーシャルサポートの重要性 これ ま で のス ト レ ス 研究 に お いて , 周 り の人 か ら サポ ー ト が 受け られ る可 能 性 が高 く , 同 時に サ ポ ート が 有 効 であ る と 認識 し て い る場 合 には スト レ ス 反応 が 緩 和 する こ と が示 さ れ て いる( 嶋田 ,1993)。外傷的出来 事を 経 験 した 後 に , トラ ウ マ 体 験 者 が 家 族や 友 人 ,専 門 家 や 行政 機 関か らサ ポ ー トが 得 ら れ ると 症 状 が 緩 和 す る 可能 性 が 指摘 さ れ て おり ,PTSD の症 状 改 善や 心 理 的 スト レ ス 反応 の 消 去 を考 え る 際に は , ソ ーシ ャ ルサ ポー ト シ ステ ム の 確 立が 必 要 であ る こ と が指 摘 さ れて い る( 坂野・嶋 田・ 辻内 ・ 伊 藤・ 赤 林 ・ 吉内 ・ 野 村・ 久 保 木 ・末 松 ,1996)。 NICE ガイドライン(2018)によるケアの原則の 1 つとして PTSD 患者 の家 族 や 支援 者 に 対 する サ ポ ート が あ る 。こ れ は トラ ウ マ 関 連の 心 理的 お よ び 行 動 的 な 問 題 へ の 治 療 や 管 理 に つ な が り ,PTSD がどのような影 響を 及 ぼ して い る か を話 し 合 った り , 治 療拒 否 や 治療 中 断 時 に治 療 につ なぐ た め の支 援 方 法 につ い て 説明 し た り ,必 要 に 応じ 家 族 や 支援 者 を 治 療 に 関 与 させ る こ と など が 挙 げら れ て お り, 家 族 内に も PTSD 患者がい る場 合 に は一 緒 に 心 理教 育 を する こ と な どに つ い ても 述 べ ら れて い る。 また ,PTSD 患者の受診・相談行動を促進させるため,PTSD が治療可能 であ る こ とや 支 援 の 方法 や 利 点な ど を 伝 える こ と など も 挙 げ られ て い る。 しか し 藤 森・ 青 木 (2016)が指摘しているように,本人が症状とトラ ウマ 体 験 との 関 連 性 を自 覚 し てい な い 場 合や 自 覚 して い て も あえ て トラ

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16 ウ マ 体 験 につ い て 語 らな い 場 合は , 治 療 者や 支 援 者も , こ れ らの 症 状が トラ ウ マ 反応 で あ る と気 付 け ない こ と が 多い こ と や, 文 化 的 なス テ ィグ マが 存 在 する こ と(Dussich,2001)を考慮すると,トラウマ体験者を適 切な 支 援 や心 の ケ ア につ な ぐ ため に は , まず は 支 援者 側 に 対 して ト ラウ マに 関 す る知 識 や 認 識に つ い て心 理 教 育 を行 う こ とが 有 効 で はな い かと 考え ら れ る。 第 3 節 本研究の目的と意義 第 1 項 本研究の目的と意義 本研 究 は ,以 下 の 2 点を主な目的とする。第 1 に広義のトラウマを含 めた ト ラ ウマ 体 験 者 の症 状 の 差異 や ト ラ ウマ 症 状 や対 処 に 関 する 認 識, トラ ウ マ 体験 者 が 実 際に 行 っ た対 処 行 動 につ い て 検討 を 行 う こと を 目的 とす る 。 そし て 第 2 に,支援者に対する トラウマに関する予防的心理教 育 を 実 施 する こ と を 目的 と す る 。 本研 究 の 意義 は , こ れま で の PTSD やトラウマに関する研究は出来事 が起 こ っ た後 に 行 う 心理 的 ア プロ ー チ や 脆弱 性 の 問題 に 焦 点 を当 て られ るこ と が 多か っ た 中 で, ト ラ ウマ 体 験 者 の認 識 や 対処 行 動 を 明ら か にす るこ と で ,予 防 的 な 心理 教 育 につ な が る 示唆 が 得 られ る と 考 えら れ る 。 本邦 に お いて は , 自 然災 害 な ど大 規 模 な トラ ウ マ 体験 以 外 で はト ラ ウマ に関 す る 検 討 が 少 な いの が 現 状で あ る。これ は Dussich(2001)が述べて いる 通 り , 日 本 人 に 特有 の 文 化的 な ス テ ィグ マ が ある こ と も 一つ の 要因 であ る 可 能性 が あ る 。 し か し ,前 節 で も 述べ た と おり , そ も そも ト ラウ マを 体 験 した 当 事 者 や周 囲 の サポ ー ト 源 にな る 者 が 症 状 と ト ラウ マ 体験 との 関 連 性を 認 識 し てい な か った り , 適 切な 対 処 行動 を 知 ら なけ れ ば,

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17 有効 な 心 理的 ア プ ロ ーチ に つ なが る こ と 自体 が 難 しい と い え る 。 こ のこ とか ら も 本邦 で ト ラ ウマ 体 験 者の 対 処 行 動の 現 状 を検 討 す る こと は 重要 であ る と 考え ら れ る 。 また ト ラ ウマ 体 験 者 にお け る ソー シ ャ ル サポ ー ト の重 要 性 か ら, 支援 者を 対 象 とし , ト ラ ウマ に 関 する 知 識 や 認識 に つ いて 予 防 的 な心 理 教育 を行 う こ とで メ ン タ ルヘ ル ス リテ ラ シ ー の向 上 や 対処 効 力 感 の向 上 が期 待で き る と考 え ら れ る。 支 援 者に 対 す る 支援 を 行 うこ と に よ り, ト ラウ マ体 験 者 を適 切 な 支 援や 心 の ケア に つ な ぐ一 助 と なる と 考 え られ , 臨床 的な 意 義 があ る と 考 えら れ る 。 第 2 項 本研究の構成 本研 究 の 構成 は 図 1-1 で示した通りであ る。研究の背景となる外傷後 スト レ ス 症状 に 関 す る従 来 の 研究 に 基 づ いて ,今後 の 課 題を 明ら か に し, 本研 究 の 目的 と 意 義 につ い て 論じ た 本 章 を受 け , 広い 範 囲 で PTSR 自体 を捉 え る べき で あ る とさ れ て いる に も 関 わら ず , トラ ウ マ の 性質 と 諸症 状と の 関 連に つ い て 十分 に 検 討さ れ て い ない こ と から , 第 2 章では,広 義の ト ラ ウマ を 含 め て,ト ラウ マ 体 験の 違い に よ る外 傷 後 ス トレ ス 反 応, 身体 症 状 ,抑 う つ 症 状, 不 安 感受 性 の 差 異に つ い ての 検 討 を 行う ( 研究 1)。 第 3 章では, 症状がトラウマ体験と結びついていなければ ,受診や相 談な ど の 適切 な 対 処 行動 を 取 るこ と は 難 しい 可 能 性が あ る の では な いか とい う 課 題か ら , 外 傷後 ス ト レ ス 症 状 お よび 対 処 行動 に 対 し てど の よう な 認 識 を 持っ て い る かに つ い て 検 討 を 行 う( 研究 2)。さらに,本邦では 文化 的 な ステ ィ グ マ によ っ て 受診 や 相 談 行動 を と って い な い 可能 性 が指 摘さ れ て いる た め , トラ ウ マ 体験 者 が 実 際に 行 っ た対 処 方 法 につ い て明

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18 図1-1 本研究の構成 第6章 総合考察 第4章トラウマ体験者における外傷後 ストレスへの対処方法についての検討 【研究3】 第3章外傷後ストレス症状および対処行動に 対する認識についての検討【研究2】 第1章 トラウマに関する研究動向と課題 ①広い範囲でPTSR自体を捉えるべきであるとされているにも関わらず,トラウマの性質と諸症状  との関連について十分に検討されていない→第2章 ②症状がトラウマ体験と結びつけられていなければ,受診や相談などの適切な対処行動を取る  ことは難しい可能性がある→第3章 ③②に加え,文化的なスティグマによって受診や相談行動をとっていない可能性→第4章 ④PTSDの症状改善や心理的ストレス反応の消去を考える際には,ソーシャルサポートシステムの  確立が必要であると指摘→第5章 第2章 トラウマ体験の違いによる外傷後ストレス反応,身体症状,抑うつ症状,不安感受性の 差異についての検討【研究1】   第5章 支援者の「トラウマに関するメンタルヘルスリテラシー向上」を目的とした       予防的心理教育の実施   【研究4-1】【研究4-2】

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19 らか に す る必 要 が あ る。 そ こ で 第 4 章では,トラウマ体験者における外 傷後 ス ト レス へ の 対 処方 法 に つい て の 検 討を 行 う (研 究 3)。 研究 3 でトラウマ体験者の対処方法について明らかにした後,坂野他 (2006)が指摘しているように,ソーシャルサポートシステム確立につ なが る た めの , 支 援 者に 対 す る予 防 的 な 心理 教 育 が必 要 で あ ると 考 えら れる 。 支 援者 の メ ン タル ヘ ル スリ テ ラ シ ー が 向 上 ,ト ラ ウ マ 体験 者 に対 する 適 切 な支 援 や 心 のケ ア に つな が る の では な い かと 考 え ら れる た め, 第 5 章では,支援者の「トラウマ に関するメンタルヘルスリテラシー向 上」 を 目 的と し た 心 理教 育 に つい て 検 討 する 。 第 2 章から第 5 章までの研究結果を受けて, 第 6 章において,それぞ れの 研 究 をま と め , 総合 的 に 考察 を 行 い ,最 後 に 本研 究 の 課 題と 今 後の 展望 に つ いて 考 察 を 行う 。

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20 第 2 章 トラウマ体験の違いによる外傷後ストレス反応,身体症状, 抑う つ 症 状, 不 安 感 受性 の 差 異に 関 す る 検討 【 研究 1】 第 1 節 本章のねらい March( 1993) に よ る と , さ ま ざ ま な 種 類 の 外 傷 性 ス ト レ ス に 関 し て 量― 反 応 関係 が 示 さ れて お り ,ス ト レ ッ サー 強 度 が高 い ほ ど PTSD の発 症率 は 高 くな り , 衝 撃の 強 さ その も の が 発症 に 大 きく 影 響 し ,さ ら に発 症に は も とも と の 脆 弱性 が 大 きく 影 響 す るも の と 考え ら れ る 。 脆 弱 性 要 因 の 一 つ に 不 安 感 受 性 が 挙 げ ら れ る 。 不 安 感 受 性 (anxiety sensitivity:以下 AS と略す )とは,不安症状に対する恐怖であり,不安 に伴 う 感 覚が ネ ガ テ ィブ な 身 体的 , 社 会 的, 心 理 的結 果 を 意 味し て いる とい う 個 人の 認 知 に 基づ い た もの で あ る (Reiss, 1991)。PTSD 患者にお い て AS が高いことで身体症状を過度に 脅威的 に解釈することにより, ト ラ ウ マ 関 連 刺 激 に 過 剰 に 反 応 し ,PTSR が維持さ れる場合 や,トラ ウ マ関 連 刺 激を 恐 れ 回 避行 動 が 増加 す る こ とで PTSR が改善しない場合が 考 え ら れ る (Fedoroff, Taylor, Asmundson, & Koch, 2000 )。 Bernstein, Zvolensky, Stewart, & Comeau(2007)は,AS を,不安関連障害のリスク を 増 大 さ せ る よ う な 特 性 的 な 認 知 的 要 因 で あ る と 指 摘 し て い る 。PTSD に お い て AS は PTSR の危険性を増す脆弱性要因や長期化させる維持要 因で あ る と も 報 告 さ れて い る(Kilic, Kilic, & Yilmaz, 2008)。Jakupcak et al. (2006)は復員軍人の PTSD 患者を対象 に,身体症状と AS,抑うつ 症状 に 関 す る 検 討 を 行 っ て お り ,PTSD 症状と身体症状の関係の 重要性より もむ し ろ ,併 存 し て いる 抑 う つ症 状 の 重 篤度 と AS によって身体症状を 説 明 す る こ と が で き る と 報 告 し て い る 。 つ ま り ,PTSD 症状を軽減させ

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る た め に は ,AS や 併存 し てい る 抑う つ 症状 , 身体 症 状に つ いて 検 討す る 必 要 が ある と 考 え られ る 。 しか し Hensley & Varela(2008)は今まで, PTSD における身体症状は不安や抑うつ症状に次ぐ第 2 の症状として位 置づ け ら れて い た た め, ト ラ ウマ 体 験 に よっ て 起 こる 症 状 と して 見 逃さ れ て き て い る と 指 摘 し て い る 。 廣 幡 他 (2002)は,PTSD における侵入 症 状 , 過 覚醒 症 状 が 身体 症 状 と関 連 し , 回避 ・ 麻 痺症 状 が 抑 うつ 症 状 と 関連 し て いる 結 果 を 示し て い る。 ま た , 身体 症 状 の背 後 に 侵 入症 状 が隠 れ て い る 可 能 性 や ,PTSD に抑うつ症状だけが注目される可 能性がある と 指 摘 し て い る 。 そ の た め ,PTSR を 低 減させる ためには , 反応自体 に 焦点 を 当 てる だ け で なく , 他 の要 因 に 対 して も 検 討し ア プ ロ ーチ し てい く必 要 が ある と 考 え られ る 。 さ ら に ,March( 1993) が 示 し て い る よ う に , 体 験 へ の 直 面 の 程 度 に 応 じ て PTSD 発 症 率 や 重 症 度 は 増 加 す る こ と が 見 い 出 さ れ て い る が , Gold, Marx, Soler-Ballio, & Sloan(2005)は,致死性のないトラウマ体験 者は 致 死 性の あ る ト ラウ マ 体 験者 と 比 較 して PTSR を高く示したことを 報 告 し て い る 。 よ っ て , 致 死 性 を 有 し て い る 出 来 事 で な く と も ,PTSR をも た ら す出 来 事 で あり , 体 験し た 本 人 にと っ て 主観 的 な 苦 痛が あ れば どの よ う な出 来 事 で もト ラ ウ マに な り 得 る( 金 ,2001)ことが指摘され て お り , ト ラ ウ マ 体 験 に よ る 心 理 的 変 化 を 捉 え る 上 で ,PTSD という疾 患に つ い ての 範 囲 だ けで な く ,さ ら に 広 い範 囲 で PTSR 自体を捉える必 要が あ る と考 え ら れ る。 し か しト ラ ウ マ の性 質 と 諸症 状 と の 関連 に つい ての 検 討 は十 分 に 実 施さ れ て いな い 。 以上 の こ とか ら , 第 2 章では広義のトラウマと狭義のトラウマを区別 し,ト ラ ウマ 体 験 の 違い に よる PTSR と AS,身体症状,抑うつ症状の差 異を 検 討 する こ と を 目的 と す る。 こ れ ら が 明 ら か にな る こ と によ っ て,

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22 PTSR を示す 者に対 してより 焦点化し た 介入が可 能になり , これまで の DSM-Ⅳ-TR(APA,2000 高橋他監訳 2003)で示されているような PTSD の三 大 症 状だ け で な く, 併 存 する 抑 う つ 症状 , 身 体症 状 に つ いて 考 える 一助 と な ると 考 え ら れる 。 ま た, 今 ま で 見逃 さ れ てき た 可 能 性の あ る, PTSD 診断基準 A に合致しない者についても,どのような介入が効果的 であ る か 検討 す る 基 礎資 料 と なる と 考 え られ る 。 第 2 節 方法 1. 調 査対 象 者 A 県専門学校生,B 県大学生,C 県大学生・大学院生の合計 598 名に 質問 紙 を 配布 し , 回 答に 不 備 のな か っ た 581 名(男性 246 名,女性 333 名 ,性 別 未 記入 2 名)を対象とした。平均年齢は 23.89 歳(SD=8.31)で あっ た 。 なお , 回 答の 不 備 に つい て は 二重 回 答 や 回答 ミ ス など に よ る もの であ り , 特 定 の項 目 に お いて 回 答 がな い な ど , 回 答 不 備の 偏 り は 一切 み られ なか っ た 。 2. 調 査時 期 調 査 は 2010 年 5 月~8 月に実施された。 3. 調 査材 料 1) フ ェイ ス シ ート 年齢 , 性 別に つ い て 回答 を 求 めた 。 2) 身 体症 状 尺 度 ( 廣幡 他 ,2002)

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23 廣幡 他 (2002)によって作成された外傷 体験後に現れやすい身体症状 を評 価 す る自 記 式 質 問紙 で あ る。 地 下 鉄 サリ ン 事 件で 用 い ら れた 質 問紙 を基 に , 廣幡 他 (2002)が,サリン後遺症に特化した項目(眼症状)か ら全 身 の 身体 症 状 を 満遍 な く 問う 形 に 再 構成 さ れ てい る 。 身 体症 状 に関 す る 26 項目について過去 1 週間の症状強度を「0:全くない~4:非常に」 の 5 件法で自己評価する構成となっている。 廣幡他(2002)は,尺度の 信頼 性 に つい て 検 討 して お り ,項 目-全体相関分析で相関係数が .40 を下 回っ た 2 項目「下痢をしやすい」「 便秘 をし て い る 」を 除 外 して い る 。し かし , 本 研究 に お い て は , 身 体症 状 に つ いて 広 く 評価 す る た め, こ の 2 項目 を 除 外し な い 26 項目 5 件法で回答を求めた。

3) 不 安 感 受 性 尺 度 ( Anxiety Sensitivity Inventory : 以 下 , ASI) 日本 語 版 (村 中 ・ 坂 野,2001)

村 中 ・ 坂 野 (2001) に よ っ て 作 成 さ れ た , Reiss, Peterson, Gursky, & McNally(1986)の Anxiety Sensitivity Inventory(ASI)の日本語版であ り ,AS を測定する尺度である。 ASI 日本語版は 16 項目, 1 因子構造で 構成 さ れ てお り ,「0:全くそう思わない~4:非常にそう思う」の 5 件法 によ っ て 回答 を 求 め た。 村 中 ・坂 野 (2001)によって,十分な信頼性・ 妥当 性 が 確認 さ れ て いる 。

4)Beck Depression Inventory-Ⅱ (以 下, BDI-Ⅱ) 日 本 語 版 ( 小 嶋 ・ 古川 ,2003) 小 嶋 ・ 古川 (2003)によって作成された抑うつ症状の重症度を判定す る た め の ,21 項目からなる自記式質問調査票である。 DSM-Ⅳの診断基 準に 基 づ いた 抑 う つ 症状 の 有 無と そ の 程 度の 指 標 とし て 開 発 され て お り, 臨床 的 確 定診 断 を 目 的と は し てい な い 。 質問 紙 は ,過 去 2 週間の状態を 尋ね る 21 項目 4 件法( 0~3 点)で構成されている。

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小嶋 ・ 古 川(2003)によると,21 項目による重症度の基準点は 13 点 以下 が 異 常な し ,14~19 点が軽度,20~28 点が中等度,29 点以上が重 度の う つ 病に 相 当 す る。

5)出 来 事 チェ ッ ク リス ト( Events Check List:以下 ,ECL)(金 ,2001) PTSD 臨 床 診 断 面 接 尺 度 ( Clinican-Administered PTSD Scale for DSM-IV:以下 CAPS,飛鳥井・西園,1998)に付属する Event Check List (ECL)を使用した 。ECL は,自然災害,火事,爆発事故,交通事故, 有害 物 質 曝露 ,性 的 暴行 な ど 15 種類の出来事を例示しながら,直接の体 験回 数 や もっ と も 強 いス ト レ スと な っ た 出来 事 の 種類 に つ い ての 自 己報 告尺 度 で ある 。本 研 究で は ,既 存の 15 種類の出来事に加え,いじめを加 え た 16 種類の出来事について,体験回数については回答を求めず,体験 した こ と があ る も の につ い て 複数 回 答 を 求め , そ の中 で も っ とも 強 いス トレ ス と なっ た 出 来 事に つ い ても 回 答 を 求め た 。 いじ め は 身 近な 危 機で あり , 物 理的 い じ め や身 体 的 いじ め , 心 理的 い じ めが , 継 続 して 行 われ るこ と は 心身 に 大 き な影 響 を 及ぼ す と 言 われ て い る 。冨 永・高 橋・吉 田 ・ 住 本 ・ 加 治 川 (2002)は,いじめ被害 が ,PTSD にかかわる ストレス反 応を 引 き 起こ す こ と を示 唆 し てい る 。 よ って , 本 研究 で は 広 義の ト ラウ マと し て も考 え ら れ るい じ め を出 来 事 の 種類 に 含 める こ と と した 。 本研 究に お い て,ECL に示される 16 種類の出来事は広義のトラウマ体験と し ,1 種類以上の出来事を報告した者を広義のトラウマ体験者とした。 6)PTSD 診 断 基準 A に関 す る チェ ッ ク リ スト ( 飛 鳥井 ・ 西 園 ,1998; 長江 ・ 増 田・ 山 田 ・ 金築 ・ 根 建・ 金 ,2004) ECL で報告される出来事は広義のトラウマ体験であるが, PTSD 診断 基 準 A に該当する場合には,狭義のトラウマ体験であると定義する。そ こで , 図 2-1 の手続きの通り分類を行った。 ECL でもっとも強いストレ

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25 図 2-1 狭義のトラウマと広義のトラウマの分類の手続き (注)長江他(2004)のチェックリストはDSM-Ⅳ-TRを基に作成されているた め,DSM-5の診断基準Aに合致する情動喚起を伴わない狭義の出来事に ついても広義のトラウマに分類されている。 ECLにおいて1か月以上経過した トラウマ体験1つ以上報告 最も強いストレスになった出来事について A基準に関するチェックリスト 左記以外の回答 広義のトラウマ 外傷性を問う項目1つ以上と 情動喚起を問う項目1つに「はい」と回答 狭義のトラウマ

(29)

26

ス と な っ た 出 来 事 に つ い て ,PTSD 臨 床 診 断 面 接 尺 度 ( Clinician -Administered PTSD Scale for DSM-IV:CAPS)(飛鳥井・西園,1998)を 基に , 長 江他 (2004)によっ て作成さ れた出 来事の外 傷性 と対象者の情 動喚 起 の 程度 を 問 う 2 種類の計 4 項目を用いた。まず外傷性を問う質問 項目 と し て,「 そ の 出来 事 は あな た( も しく は 他 者)の生 命 を脅 か す もの でし た か ?」,「 そ の 出来 事 に よっ て あ な た( も し くは 他 者 ) は大 け がを 負い ま し たか ? 」,「 その 出 来 事は あ な た (も し く は他 者 ) の 身体 保 全の 脅威 と な るも の で し たか ? 」 と尋 ね , さ らに 情 動 喚起 を 問 う 質問 項 目と して ,「 そ の出 来 事 の最 中 や 直後 に 強 い 恐怖 感 ,無 力 感,恐 れの い ず れか を感 じ ま した か ? 」 と尋 ね た 。回 答 は 2 件法で「はい, いいえ」で回答 を求 め た 。 長 江 他 (2004)に従い,外傷性を 問う項目 1 つ以上と情動喚 起を 問 う 項 目 1 つに「はい」と答えた者を狭義のトラウマ体験者として, その 他 の 者を 広 義 の トラ ウ マ 体験 者 と し た。

7)改 訂 版 出来 事 イ ンパ ク ト 尺度(IES-R,Asukai, Kato, Kawamura, Kim, Yamamoto, Kishimoto, Miyake, & Nishizono-Maher, 2002;金, 2001)

Asukai et al.(2002)によって作成された, Weiss & Marmar(1997)の IES-R の日本語版である。PTSD の再体験症状,回避マヒ症 状,過覚醒症 状 の 3 症状について 22 項目で構成されており,災害や犯罪ならびに事 件・ 事 故 の被 害 な ど ,ほ と ん どの 外 傷 的 出来 事 に つい て 使 用 可能 な 心的 外傷 後 ス トレ ス 症 状 のス ク リ ーニ ン グ 尺 度で あ る 。ECL でもっとも強い スト レ ス とな っ た 出 来事 に 関 して ,この 1 週間の状態を尋ねており,「0: 全く な し ~4:非常に」の 5 件法で回答を求めた。日本語版では,心的外 傷性 ス ト レス 症 状 の ハイ リ ス ク者 を ス ク リー ニ ン グす る 目 的 では ,24/25 点の カ ッ トオ フ ポ イ ント が 推 奨さ れ て お り ,25 点以上である場合,PTSD の 発 症 リ ス ク が 高 い とみ な さ れ る 。

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27 4. 倫 理的 配 慮 ① 調 査 対象 者 の 対 し, 調 査 目的 , プ ラ イバ シ ー の保 護 を 書 面と 口 頭で 伝え た 。 ②調 査 に おい て , 実 施中 お よ び実 施 後 , 調査 対 象 者が 不 調 を 訴え た場 合に は 個 別に 対 応 を 行う こ と を伝 え た 。 ③① と ② につ い て 理 解 を 得 た うえ で , 研 究に 対 す る同 意 の 得 られ た者 につ い て ,質 問 紙 調 査に 参 加 して い た だ いた 。 ④す べ て の調 査 は 無 記名 式 で 実施 し た 。 個別 に 封 筒に 入 れ 回 収を 行 い, その 場 で 回答 を 行 う こと に 抵 抗が あ る 者 は後 程 提 出い た だ い た。 ⑤研 究 の 参加 の 有 無 を問 わ ず ,調 査 協 力 を 依 頼 し た方 全 員 に , 臨 床 心 理士 の 資 格を 持 ち ト ラ ウ マ を 専 門 と す る 大学 教 授 の指 導 の 下 ,筆 者 が作 成し た ト ラウ マ 心 理 教育 の リ ーフ レ ッ ト (瀧 井 ,2014)を配布した。 5. 分 析方 法 統 計 解 析に は ,SPSS Statistics 19.0 を用いた。 第 3 節 結果 1. 対 象者 の 基 本属 性 ECL の回答から,調査対象者の外傷体験の内容(複数回答可)ともっ とも 強 く スト レ ス と なっ た 出 来事 の 内 容 (出 来 事を 1 つのみ選択)の人 数を 算 出 し , さ ら に 広義 ・ 狭 義の ト ラ ウ マに 該 当 して い る 者 につ い ての 外傷 体 験 の内 容 ( 複 数回 答 可 )と も っ と も強 く ス トレ ス と な った 出 来 事 の 内 容 ( 出来 事 を 1 つのみ選択)の人数を算出した( 表 2-1)。 調査 対 象 者の 平 均 年 齢は 23.89 歳(SD=8.31)であり,有効回答 581 名

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28 人数(全体%) もっとも 強い ストレス 選択者% 人数(全体%) もっとも 強い ストレス 選択者% 人数(全体%) もっとも 強い ストレス 選択者% 1 自然災害(洪水,台風,地 震,津波,噴火,土砂崩 れなど) 233 40.10 87 37.34 95 53.98 32 33.68 138 57.50 55 39.86 2 火事や爆発事故 23 3.96 5 21.74 14 7.95 2 14.29 9 3.75 3 33.33 3 交通事故(自動車,船舶, 電車,飛行機などによる 事故) 198 34.08 96 48.48 86 48.86 38 44.19 112 46.67 58 51.79 4 有害物質曝露(毒物,危険 な化学物質,放射能など による被害) 7 1.20 3 42.86 3 1.70 1 33.33 3 1.25 2 66.67 5 その他,仕事や家庭の中,あるいは余暇活動中 に起きた深刻な事故 45 7.75 22 48.89 21 11.93 10 47.62 24 10.00 12 50.00 6 殴る蹴るなどのひどい暴 35 6.02 11 31.43 24 13.64 8 33.33 11 4.58 3 27.27 7 刃物や銃などの凶器を用いた暴行 12 2.07 1 8.33 11 6.25 1 9.09 1 0.42 0 0 8 監禁(誘拐,人質,捕虜など) 6 1.03 2 33.33 5 2.84 2 40.00 1 0.42 0 0 9 性的暴行(力ずくや暴力の 脅しによる) 16 2.75 9 56.25 12 6.82 7 58.33 4 1.67 2 50.00 10 その他,意に反した,き わめて不快な性的体験 37 6.37 17 45.95 20 11.36 4 20.00 17 7.08 13 76.47 11 子供の頃の身体的虐待 16 2.75 9 56.25 13 7.39 8 61.54 3 1.25 1 33.33 12 戦争体験(戦闘,従軍,空 襲など) 1 0.17 0 0 0 0 0 0 1 0.42 0 0 13 殺人,自殺,災害,事故 などで,人が死んだりひ どいケガをした現場を目 撃した 53 9.12 25 47.17 30 17.05 13 43.33 23 9.58 12 52.17 14 家族や身近な知人が, No.1-13の各項目のような 出来事にまきこまれたこ とを知って,強いショッ クを受けた 76 13.08 23 30.26 53 30.11 16 30.19 23 9.58 7 30.43 15 その他,ほとんどの人は 体験しないような,ひど いショッキングな出来事 50 8.61 27 54.00 32 18.18 16 50.00 18 7.50 11 61.11 16 いじめ(身体的,精神的な ものなど) 116 19.97 79 68.10 45 25.57 18 40.00 71 29.58 61 85.92 なしNo.1-16のいずれの出来事 も体験なし 165 28.40 表2-1 調査対象者の外傷体験の内容(複数回答可)ともっとも強くストレスとなった出来事の内容 Total(n=581) 狭義(n=176) 広義(n=240) 出 来 事 No.

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29 のう ち 416 名(71.6%)が何らかのトラウマを体験していた。何らかの トラ ウ マ を体 験 し た 者の 平 均 年齢 は 24.85 歳(SD=8.92)であった。その う ち 狭 義 の ト ラ ウ マ を 体 験 し た 者 は 176 名 で , こ れ は 調 査 対 象 者 の 30.29%にあたり,何らかのトラウマ体験者の 42.31%にあたる(女性 104 名,男性 72 名;平均年齢 26.81 歳,SD=9.92)。もっとも強 いストレスと な っ た 出 来事 と し て 選択 率 が 高か っ た の は, 性 的 暴行 , 子 ど もの 頃 の身 体的 虐 待 であ っ た 。 広義 の ト ラウ マ を 体 験し た 者は 240 名で,これは調査対象者の 41.31% にあ た り,何 ら かの トラ ウ マ 体験 者 の57.69%にあたる結果(女性 131 名, 男 性 109 名,不明 1 名;平均年齢 23.41 歳,SD=7.83)であった。もっと も強 い ス トレ ス と な った 出 来 事と し て 選 択率 が 高 かっ た の は ,い じ め, 意に 反 し たき わ め て 不快 な 性 的体 験 で あ った 。 さ ら に , IES-R 得 点 の 平 均 値 は ト ラ ウ マ 体 験 者 全 体 で は 18.33 点 (SD=18.44)であ り, Asukai et al.( 2002)による IES-R 得点のカット

オフ ポ イ ント 25 点を越えている者は 133 名であり,狭義のトラウマ体験 者 で 63 名(調査対象者の 10.8%),広義のトラウマ体験者で 70 名(調 査 対 象 者 の 12.0% ) で あ っ た 。 次 に , BDI-Ⅱ で は , 平 均 値 は 13.58 点 (SD=9.11),身体症状尺度では,平均値は 22.33 点(SD=16.64)であっ た 。 2. ト ラウ マ 体 験に おけ る 各 尺度 得 点 の 差異 ト ラ ウ マ体 験 の 違 い( 狭 義 ・広 義 ) の 2 群において,身体症状, AS, 抑う つ 症 状, 再 体 験 ,回 避 マ ヒ , 過 覚 醒 の差 異 を 検討 す る た め, そ れぞ れの 得 点 につ い て t 検定を行った( 表 2-2)。その結果,トラウマ体験の 違い に お いて 再 体 験 ,回 避マ ヒ にお い て 有意 差 が みら れ た(t(414)=2.16,

(33)

30

狭義

(SD )

広義

(SD )

t値

p 値

身体症状

22.99 (17.20)

21.84 (16.24)

0.69

.49

不安感受性

16.4 (9.33)

14.55 (9.65)

1.96

.05

抑うつ症状

14.41 (9.37)

12.96 (8.88)

1.61

.11

再体験

7.25 (7.51)

5.68 (7.20)

2.16

.03*

回避マヒ

8.76 (7.46)

7.14 (7.34)

2.20

.03*

過覚醒

4.67 (5.28)

3.79 (4.89)

1.76

.08

Note. SD =standard deviation

*p <.05

(34)

31 p<.05)(t(414)=2.20, p<.05)。 3. ト ラウ マ 体 験の 違い と AS に よ る身 体症 状 , 抑う つ 症 状 ,外 傷 後 スト レス 反 応 の差 異 ト ラ ウ マ体 験 の 違 い( 狭 義 ・広 義 ) と AS による身体症状,抑うつ症 状, 外 傷 後ス ト レ ス 反応 へ の 影響 を 検 討 する た め ,各 症 状 得 点を 従 属変 数と し ,独立 変 数 に ト ラ ウ マ 体験 の 違 い( 広義・狭 義),お よび AS 得点 (平 均 点±0.5SD を基準とし 3 群に分類 )としたトラウマ体験の違い(広 義・狭 義)×AS(低群・中群・高群)の二要因分散分析を行った( 表 2-3)。 身体 症 状 を従 属 変 数 とし た 二 要因 分 散 分 析で は , 交互 作 用 は 見ら れ ず, AS 得点による主効果のみが見られた (F(2,415)=19.94, p<.01)。Tukey 法に よる 多 重 比較 の 結 果 ,AS 低群< AS 中群<AS 高群( p<.01)で得点が有 意に 高 い 結果 が 得 ら れた 。 さら に ,BDI-Ⅱを従属変数とした二要因分散分析においても 交互作用 は見 ら れ ず ,AS 得点 による主効果のみが見られた (F(2,415)=21.20, p<.01)。 Tukey 法による多重比較の結果, AS 低群< AS 中群<AS 高群( p<.01) で BDI-Ⅱの得点が有意に高いことが示された。 次に ,IES-R の各下位尺度を従属変数とした二要因分散分析において も交 互 作 用は 見 ら れ ず,3 下位尺度それぞれで AS 得点による主効果の みが 見 ら れ, ト ラ ウ マ体 験 の 違い と AS 得点での交互作用,およびトラ ウ マ 体 験 の 違 い に よ る 主 効 果 は 見 ら れ な か っ た 。Tukey 法に よる多重 比 較の 結 果 ,再 体 験 で は,AS は F(2,415)=10.28, p<.01 で主効果が見られ, AS 低群< AS 中群( p<.01),AS 中群< AS 高群( p<.05)であった。回避 マヒ で は ,AS が F(2,415)=8.55, p<.01 で主効果が見られ, AS 低群< AS 中群 (p<.01),AS 中群< AS 高群(p<.05)であった。過覚醒では, AS

(35)

32 A S 低 群 A S 中 群 A S 高 群 A S 低 群 A S 中 群 A S 高 群 (n = 87 ) (n = 85 ) (n = 68 ) (n = 48 ) (n = 71 ) (n = 57 ) FFF 値 ( SD ) ( SD ) ( SD ) ( SD ) ( SD ) ( SDppp 値 16 .0 0 21 .7 4 29 .4 4 16 .7 9 22 .4 6 28 .8 6 0. 08 19 .9 4 0. 04 (1 2. 71 ) (1 4. 15 ) (1 7. 92 ) (1 2. 71 ) (1 5. 88 ) (2 0. 14 ) .9 27 n .s . .0 00 * ** .8 46 n .s . 10 .6 0 12 .4 8 16 .5 9 9. 65 14 .7 3 18 .0 4 1. 22 21 .2 0 1. 10 (8 .3 8) (7 .1 6) (1 0. 30 ) (6 .0 4) (7 .9 9) (1 1. 44 ) .2 96 n .s . .0 00 * ** .2 94 n .s . 3. 71 5. 89 7. 93 5. 52 6. 61 9. 51 0. 23 10 .2 8 3. 62 (6 .1 2) (7 .3 6) (7 .6 7) (7 .4 9) (6 .9 3) (7 .7 8) .7 93 n .s . .0 00 * ** .0 58 n .s . 5. 39 7. 09 9. 44 7. 06 8. 42 10 .6 0 0. 04 8. 55 3. 62 (6 .8 9) (7 .4 9) (7 .1 9) (6 .8 1) (6 .7 1) (8 .5 4) .9 60 n .s . .0 00 * ** .0 58 n .s . 2. 40 3. 76 5. 59 2. 67 4. 38 6. 72 0. 25 17 .1 5 1. 88 (3 .7 7) (4 .8 6) (5 .6 4) (3 .5 3) (4 .7 1) (6 .4 1) .7 81 n .s . .0 00 * ** .1 72 n .s . N ot e . S D = st an da rd d ev ia tio n, n .s .= no t s ig ni fi ca nt * ** p < .0 01 表 2-3 ト ラ ウ マ 体 験 の 違 い と A S に よ る 各 症 状 得 点 の 差 異 過 覚 醒 広 義 群 (n = 24 0) 狭 義 群 (n = 17 6) ト ラ ウ マ 体 験 の 違 い の 主 効 果 身 体 症 状 抑 う つ 症 状 再 体 験 回 避 マ ヒ A S の 主 効 果 交 互 作 用

表 3-2   調査対象者の基本属性
表 5-2   研修前後に有意差がみられた外傷後ストレスに対する認識 項目5 .003 .60 項目18 .012 .50項目8.016.48 項目30 .020 .47 項目38 .001 .66項目14.004.58項目6.008.53
図 5-8  ト ラ ウマ 対 応を 行 う 場合 の 情 報 収集 源

参照

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