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幼児の日常的な自然体験尺度の作成:保育士による評定に基づく検討

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Academic year: 2021

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(1)             幼児の日常的な自然体験尺度の作成              一保育士による評定に基づく検討一                               専攻  学校教育学専攻                              コース  幼年教育コース                             学籍番号  M09017G                               氏名  村上史子           問題           指針の分析を行った。自然体験の中で生じる心的  近年、幼児期からの自然体験の減少が懸念され  過程に着目し、以下の11分類を見出した。〈①自 ている。それを補うように実践としてキャンプや  然の中でからだを思いっきり動かして遊ぶ体験〉 自然教室などでの自然体験を保障している。    〈②自然の中で、五感の働きを豊かにする体験〉  こうした現代的課題を反映して、自然体験を扱   〈③季節の変化に気付く体験〉〈④自然に直接触. う研究も増加しつつある。そこでは、主として、 れる中で、心が安らぐ体験〉〈⑤自然の大きさ、 火体験、本体験など、現代の幼児にとって日常生  美しさ、不思議さなどに感動する体験〉〈⑥自然. 活のなかでは失われつつある原体験の重要性が  の中で様々な発見をし、興味や関心をそそられる その効果と共に説かれている。         体験〉〈⑦身近な自然物を使って、考えたり工夫  しかし、従来の実践や研究の中で着目されてき  したりして遊ぶ体験〉〈⑧身近な自然物や自然事 た自然体験は、幼児にとって日常的なものと言え  象に関わる中で、数量・文字に対する感覚を培う. るだろうか。幼児期の学びや育ちは日常的な生活  体験〉〈⑨自然物の性質や自然事象の仕組みにっ や遊びによるところが大きい。幼稚園教育要領や  いて疑問をもったり、調べたりする体験〉〈⑩身 保育所保育指針にも示されるように、自然と関わ  近な動植物に関わることを通して、生命を大切に り幼児にとって非日常的な体験より日常的な体  する気持ちを育む体験〉〈①友達と一緒に身近な. 験の重要性が提示されている。         動植物を大切にすることで、公共心が養われる体  しかしながら、幼児の日常的な自然体験につい  験〉である。. ては理念的にも実証的にも十分に検討されてい   次に、この11分類に沿って、現場の保育上か ない(井上,2010)。さらに幼児期の発達特性を踏  ら、重視している自然体験について具体例を収集. まえると、身近な自然の中で幼児がいったい何を  した。具体的で回答者数が多かった内容を幼児教. 体験しているのか、その心的過程に着目する必要  育にかかわる専門家2名、研究生1名、院生3名. があるように思われる。           で協議した。記載されていた対象物や言い回しに  以上から本研究では、保育士の評定に基づいて、 ついては、地域の特徴に偏りすぎないように調整 幼児の日常的な自然体験の構造について、実証的  し、53項目を抽出した。. に検証し、それに基づいて日常的な自然体験を評          研究1I 価する尺度を作成することを試みる。       保育所(園)に在職の保育士に、研究Iで作成し.          研究I          た53項目の重要度を尋ね、「幼児の日常的な自然  幼児の日常的な自然体験を構造化することを  体験」の尺度を開発することを目的とした。2010 目的とした。まず、幼稚園教育要領と保育所保育  年9月下旬から10月上旬、11の保育園で勤務す. 皿42一.

(2) る保育士計243名から回答を得た。. な自然体験の因子である。それらの因子から成る.  『I.典型的体験活動』『II.季節感』『皿.協. 評価尺度を作成することが可能だろう。しかし今. 働心』『1V.身体感覚』『V.収穫・飼育体験』『Vl.. 回行ったのは保育所であったため、幼児全般の日. 好奇心』『W.五感』の7因子を抽出した。. 常的な自然体験とは言えない。そこで、今後の課.  『I.典型的体験活動』は、1O項目で、どの保. 題5点を以下に挙げる。. 育園でも行えるような活動が集まっている。他の.  まず、第一に幼児の日常的な自然体験尺度につ. 6つの因子とは違い、手にとれる自然物を使った. いて妥当性を高めることである。幼稚園で53項. 遊びや出会いがある項目群になった。『皿.季節. 目の重要度について調査し、再度因子分析を行う。. 感』は8項目で、季節による情景や事象の変化に. 幼稚園と保育所の結果を比較検討し、幼児の日常. 関する体験である。これらの体験を通して様々な. 的な自然体験を構成する因子構造を確証してい. 感情や認識を示す項目群となった。『皿、協働心』. きたい。. は6項目から成り、飼育・栽培活動を中心として.  第二に、自然体験尺度をもとに、その効果を調. いるが、背景には「みんなで」行うことを重視し. べることである。先行研究を参考に自然体験の効. た項目群となっている。一つのめあてや目標を持. 果について仮説を立て検証する。詳細は尺度作成. って、思考や感情を共有するような意味合いを持. 後に検討する。. っている。『lV.身体感覚』は4項目が挙がった。.  第三に原体験項目との比較である。今回、先行. 内容は、飛んだり走ったり、はい上がったりする. 研究から幼児の日常的な自然体験を捉えた尺度が. ような大まかな項目であるが、複雑な地形を有す. 見あたらず、独自の尺度開発を試みることとなっ. る体験として、思考や身体感覚が養われる項目群. た。現時点では自然体験を原体験で捉える研究が. である。『V.収穫・飼育体験』は6項目から成. 多い。そこで、今回作成した尺度が原体験項目と. り、『皿.協働心』と同様に飼育・栽培活動を中. の違いについて、吟味する必要があるだろう。. 心としている。違うのは個人が能動的に関わり、.  第四に日常と非日常の自然体験について考察を. その中で思考や道徳性、感情を育む機会になって. 深めることである。心的過程に着目し体験を考慮. いる点である。『Vl.好奇心』は4つの項目から. すると、非目常的な体験と日常的な体験に共通す. 成っている。『I、典型的体験活動』の項目より. る要素が見られる。日常生活とつなげるかたちで、. も、個人的な興味や関心を持って、積極的に関わ. 非目常的な体験を位置づけることで幼児にとって. るというように一歩踏み込んだ体験内容になっ. より有意義な自然体験を提供できるものと考える。. た。『V皿.五感』は五感のうち嗅覚、聴覚、触覚.  第五に削除した項目についての再考察である。. に特化した体験内容が挙がってきた。視覚につい. 今後の保育の質の向上や改善のために課題とし. ては改めて視覚を重視する項目は挙がってこな. て取り組んでいく必要性があるであろう。. かったが、人間は視覚的動物であることから、多.  以上が本研究を通して見えてきた課題である。. くの行為が視覚によって先導されていると考え. これらを踏まえて、今後の研究につなげたい。. る。さらに、これらの感覚は外界の情報を知る窓.         主任指導教員 足立 正 教授. 口となり、認識に影響を与えうるものであろう。.         指導教員 石野 秀明 准教授.  以上が本研究で明らかになった。幼児の日常的. 一43一.

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