はじめに ... 3
従来型ハードドライブの課題 ... 3
これらの課題を克服するソリッド ステート ドライブ ... 3
性能と容量 ... 4
典型的なエンタープライズ製品との読み込み性能比較 ... 5
典型的なエンタープライズ製品との書き込み性能比較 ... 6
まとめ ... 7
図
図 1. SSDとHDDのIOPS比較 ... 4
図 2. 読み込み性能の向上率 ... 5
図 3. 書き込み性能の向上率 ... 6
詳細
DELL SSD ドライブ
2009 年 5 月 3
はじめに
デルはこのほど、エンタープライズ クラスのストレージ媒体として業界最速の「ソリッド ステート ディスク(SSD)ドライ
ブ」を特定のPowerEdgeサーバに導入しました。ストレージ媒体に、従来の回転ディスクではなく、ソリッド ステート
(半導体素子)のNAND型フラッシュメモリを使うというアイディア自体は、決して目新しいものではありません。たとえ
ば家電は、もう20年以上にわたって小容量の部品にNAND型フラッシュを利用してきました。これまでNAND技術
は割高なうえ容量に限りがあったため、大容量ストレージ デバイスの実用に向かないとされてきました。しかし近年
になって容量が増え、コストも下がってきたため、回転ディスクを凌ぐNANDフラッシュ特有のメリットを活用すべく、大
容量媒体ソリューションとしての実用化が進んでいます。
従来型ハードドライブの課題
ハードディスクドライブ(HDD)とは、プラッタ(円盤状の磁性体)を回転させる電子機械装置のことで、データは各プ
ラッタ表面に帯状に並んでいます(これをトラックと呼びます)。ハードドライブには、機械仕掛けの作動装置が組み
込まれており、データを読み書きするときは、回転している媒体上を記録ヘッドが行き来します。このヘッドを動かす
時間(シーク タイム)と、ヘッド直下に目的のデータを位置付ける時間を合計して「レイテンシ」(待ち時間)と呼んで
おり、これが、HDDで出し得る最高性能のボトルネックとなります。ハードドライブ メーカーは、このメカニック上の制
限を克服するため、プラッタ回転速度の向上とシークタイムの短縮を図り続けてきました。
たとえば今日では、15,000 RPMの小型(2.5インチ)SAS HDDがその適例です。回転速度は、典型的なノート
ブック ハードドライブ(5,400 RPM)の3倍近くになり、15,000 RPMのトラッキング能力に対応するためドライブ内の
媒体プラッタ自体も2.5インチから1.8インチに縮小されました。これにより、目的のデータに記録ヘッドを位置付ける
シーク距離も短くなっています。このように機械設計の飽くなき改善が功を奏し、ハードドライブの最高性能は向上し
続けていますが、IOPS(1秒あたりのI/O処理数)要件の厳しいアプリケーションを満足させるには高価な手段である
ことも確かです。
これらの課題を克服するソリッド ステート ドライブ
SSDには機械仕掛けの部品がありません。したがって、作動装置によるシーク タイムやレイテンシが発生することも
ありません。このため、SSDは、NANDフラッシュからデータを読み取るや否や、すぐにデータを転送します。データへ
のアクセスが瞬時とはいかないまでも、過酷なランダムI/O要件を課すユーザ アプリケーションでSSDを使えば、エン
タープライズ クラスの15,000 RPMハードドライブより、性能が40~50倍向上します。高いIOPSを要求するアプリ
ケーションの場合、ハードドライブよりはるかに少ないSSD数で、求められる総合IOPS性能が達成できるため、
TCO(総所有コスト)もSSDの方が有利です。ハードドライブとの比較で特にSSDのメリットが際立つのは、データの
ランダム アクセスが集中するユーザ アプリケーションです。しかし、シーケンシャル データが多い場合は、ハードドラ
イブとSSDに大きな差が出ません。
可動部品がないというSSDの特性上、障害時の対応もハードディスクと異なります。ハードドライブは、唯一のヘッド
がクラッシュしてしまうと即座に壊滅的障害となりますが、SSDの場合は、たとえ複数のセルが劣化しても許容できま
すし、しばらくはフェールオーバーでしのげるため、すぐにユーザへの影響が出るわけではありません。
エンタープライズ クラスのSSDは、ハードドライブを凌ぐ高性能のみならず、信頼性も高くなっています。エンタープラ
イズ クラスのSSDは、MTBF(平均故障時間)が200万時間とされており、エンタープライズ クラスのSASハードド
ライブ(10,000および15,000 RPM)の160万時間を上回っています。
図 1. SSD と HDD の IOPS 比較
性能と容量
SSD性能を決める第一の要因は、ユーザ アプリケーションの書き込み/読み込み比率です。書き込み性能は、フ
ラッシュ メモリへの書き込み(ライト)頻度と、再書き込み(リライト)頻度によって変わってきます。リライトは、まずフ
ラッシュメモリの一部を消去するという低速な処理を行ってから、新しいデータに更新する必要があるため、より時間
がかかります。したがって、書き込み時にフラッシュメモリへのリライト処理が発生しなければ、はるかに素早くデータが
記録されます。
デルのエンタープライズ向けSSDは、このリライト性能問題を改善するため、オーバープロビジョニングという手法を取
り入れました。これは、ユーザがアドレスできる領域以外にもフラッシュ容量を確保しておくことで、書き込み性能の低
下を解消する技術です。この場合、フォアグラウンド操作では、データをオーバープロビジョニング領域(「隠し」ブロック)
に直接書き込みます。また、バックグラウンド操作では、データをこの「隠し」領域からユーザ領域に移すクリーンナップ
作業が行われます。
消去によってブロックを空にするクリーンナップ作業はバックグラウンドで実行されるので、ドライブへのほとんどの書き
込み操作が、低速な消去手順を踏まないセクターへのライト作業だけで済みます。SSDで利用できる「空き」ブロッ
クの「隠し」容量を増やせば、書き込み性能が飛躍的に向上します。
DELL SSD ドライブ
2009 年 5 月 5
典型的なエンタープライズ製品との読み込み性能比較
下記のグラフは、デルの25 GB SSDを業界標準の代表的な32 GB SSDと比べ、その優れた性能を示したもので
す。このDell SSDの総容量は、比較した業界標準32GB SSDと同じですが、前述のとおり、書き込み性能を向上
するオーバー プロビジョニングにより、実際にユーザが使える容量は78%ほど(25GB)になります。下記のテスト
データは、DellエンタープライズSSDを、他の業界標準エンタープライズSSDと比較したものです。今回テストした業
界標準エンタープライズSSDは、オーバー プロビジョニング採用のDell SSDと同様、基本的なモデルを選びました。
テスト環境は、6個のSSDドライブでRAID環境を構成し、典型的なエンタープライズ ワークロードを実行しました
(RAID待ち行列の長さ=16)。下記は相対比較グラフのため、たとえば、性能向上率=0%のときは、Dellエンター
プライズSSDの性能が他方の業界標準エンタープライズSSDと同等であることを意味し、性能向上率=100%のと
きは、DellエンタープライズSSDの性能が100%上回ることを示します。
図 2. 読み込み性能の向上率
典型的なエンタープライズ製品との書き込み性能比較
図 3. 書き込み性能の向上率
ソリッド ステート ドライブ内のMLCフラッシュ対SLCフラッシュ: 現在、ソリッド ステート ドライブに採用されている
NAND型フラッシュには、SLCとMLCの2種類があります。SLCは、Single‐Level‐Cell(シングルレベル セル)の略
で、1つのNANDメモリ セルに1ビットの情報を保存します。一方MLCは、Multi‐Level‐Cell(マルチレベル セル)の
略で、1つのNANDメモリ セルに2ビット以上の情報を保存します。
MLC NANDフラッシュはSLCよりはるかに安価で、たとえ同じサイズでも、利用できる総容量が大幅に増えます(同
等のナノメータ技術で比較した場合)。デルが第一世代と第二世代のSSDをリリースする際、SLCベースのNAND
フラッシュを採用した主な理由は、SLC NANDフラッシュの方がはるかに書き込み処理への耐性が高いからです。セ
ルあたりの書き込み耐用回数はSLCの場合100,000回ですが、MLCは5,000~10,000回しかありません。
このようにDellエンタープライズSSDは、24時間365日対応の企業環境で書き込み処理が継続しても耐えられる設
計となっています。現時点でのSSD技術を検討した結果、デルは、過酷なエンタープライズ環境要件に合致する
SLCを選びました。さらにDellエンタープライズSSDは、厳しいビジネス要件により確実に応えるため、「ウエア レベリ
ング技術」も取り入れています。これは、書き込み操作をSSD全体にバランス良く分散させ、寿命を最大限に延ば
す技術です。ただし、MLCベースのNANDフラッシュも将来のソリューションとして有望視されているため、エンタープ
ライズ市場での実用化に向けて現在調査中です。
DELL SSD ドライブ
2009 年 5 月 7
まとめ
デルのエンタープライズ向けソリッド ステート ドライブ技術は、非常に厳格な設計基準に従い、エンタープライズ ク
ラスの高性能・高信頼性を達成すべく開発されました。DellエンタープライズSSDは、読み込み/書き込みのいずれ
が集中するアプリケーションでもSSDのメリットが得られるよう、フラッシュ容量にオーバー プロビジョニングを施してい
ます。エンタープライズ環境でSSDが威力を発揮するのは、データへのランダム アクセスが集中発生するアプリケー
ションです。一方、シーケンシャル アクセスが集中する環境には、あまり向きません。ディスクドライブに代わるスト
レージとして、エンタープライズ環境により多くのDellエンタープライズSSDを導入すれば、総ディプロイメント コストの
削減が果たせます。