Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese Physioal Therapy Assooiation理 学 療 法 学
第
41
巻 第2
号102
〜
103
頁 (2014
年)
平成
24
年 度
研 究 助成 報
告 書表 1
基 本
属性
慢 性 閉塞 性 肺 疾 患 患 者
に お け る
運 動
前
の
随 意 的 な換
気
量
の
増 加 が
運 動 中
の
呼吸 困
難 お よ
び
運 動 耐 容 能
に
及 ぼ す
影響
大島
洋 平1),
玉木彰2)
,
長谷 川 聡3),
佐 藤晋1)4)
,
室繁 郎4)
,
三嶋
理 晃の,
柿 木 良 介1〕,
松円秀一
1) D 京 都 大 学 医 学 部 附 属 病 院リハ ビ リテー
ション部 2 )兵 庫 医 療 大 学リハ ビ リテー
ション学 部 3) 京 都 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 人 間 健 康 科 学 系 専 攻 4) 京 都 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 呼 吸 器 内 科 学 症 例 (人 ) 性 別 男/女 (人) 年 齢 (歳)
BMI
(
kg
/m2)
GOLD
stage ;1
/H
/ 皿 /IV
(人)MMRC
scalegrade:
O
/l
/2
/3
/4
(人 ) %VC
(%)FEVI
% (%) %FEV1 (%) 平 地快 適 歩 行 速 度 (km
/h
)17
15
/2
65
.
5
±10
.
9
20
.
4
±3
,
8
0
/5
/10
/2
0
/0
/5
/12
/0
94
,
6
±14
.
6
3
&9
±102
43,
0 ± 12.
83
.
6
±0
.
6
GOLD
:The
Global
Initiative
for
Ch
エonicOl
)structiveLung
Disease
MMRC
scale:The
Mod
面 edMedical
Research
Councn
Dyspnea
翫 ale要 旨1慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 (
COPD
)
患 者で は気 流 制限 に よっ て 生じ る呼吸 困 難 や 運動耐 容能の低下 が 問 題 と な る。
本 研 究の目 的 は,
運 動前の随 意 的 な 換 気 量の増 加 が,
運 動 中の呼吸 困難 お よ び 運動 耐 容 能に 及 ぼ す 影響を検証 す る こ と で あ る。
対象 は 安定期COPD
患 者17
名 と し,
自 由呼吸 下 での定速度歩
行 試 験(
control−
walkingC
−
W
)
お よ び歩
行 前に随 意 的 に換 気 量 を増 加 した呼 吸 下で の定 速 度 歩 行 試験 (voluntary hyperventilation−
walkingVHV
−
W
) に お ける 歩 行 時 間 を比 較 した。
測 定 中 は 呼気 代 謝 測 定 装 置とパ ル スオ キシ メー
ター
にて呼 吸 循 環 動 態 をモ= タリング した。
その結 果,
C
−
W
と比 較 してVHV
−
W
で は,
歩 行 前の分 時 換気量,
二酸化炭素排 出 量 お よ び 酸素摂取量 が増加 し,
呼 気 終 末二酸 化 炭 素 分圧の低下 と経 皮 的 酸 素飽和 度の上昇を認 め た。
VHV−
W に おい て歩 行 中の呼 気 終 末二酸 化 炭 素 分圧 は有 意に低 値,
経 皮 的 酸 素 飽 和 度は有 意に高 値,
呼 吸 困 難の程 度は 有 意に低 値 を示 し た。
歩 行 時 間 はVHV
−
W
で有 意に延 長 し た。
運 動 前の随 意 的 な換 気 量の増加 は,
COPD
患 者 に お け る運 動 中 の呼 吸 困難 や 運 動 耐 容 能の改 善 に有 効であ ると考 え られたv キー
ワー
ド:COPD,
呼 吸 困 難,
運動 耐 容 能 は じ め に慢 性 閉塞性 肺 疾患 (chronic obstructive pulmonary
disease
; COPD ) 患 者では気 流 制 限 やガス交 換 障 害,
動 的 肺 過 膨 張1) 等によっ て運 動 中に高二酸 化炭 素血症お よ び低 酸 素血症が進 行 し,
化 学 受 容 器 か らの求 心 性 入 力の増 加2)3)とそ れ に 伴 う呼 吸 運 動 出 力の増 大4)に よ る呼 吸 困難が 生 じや すい 。そこで我々 は,
運 動に先立っ て随 意 的に換 気 量を増 加し,
酸 素 摂 取お よ び 二酸 化 炭 素 排 出の促 進を図れ ば,
運動 中の呼
吸 困 難や 運動耐容
能の改 善に つなが るの では ないか と考
えた。
本 研 究の目的は,
COPD
患者に おける 運動 前の随 意 的 な 換 気 量の増 加が,
運 動 中の呼 吸 困 難を軽 減し,
運動 耐 容 能を改 善さ せるかどうかを検 証 するこ とである。
対
象 と方 法1
.
対象
酸 素 療 法 を行ってい ない安 定 期COPD
患 者17名 (男性15
名,
年 齢:65
.
5
±1
α9
歳 ) と した。
GOLD
重 症 度 分 類5)は,
stageH
:5
名,
stage 皿 :10
名,
stage IV :2名であっ た。2
.
方法
1
)
測 定 手 順 各対象に おい て ト レッ ド ミル (Sport
Art
社)を 用い た 定 速 度歩行 試 験 を 同 口 に2
回 実 施 し た。
1
回 目 は,
自由呼吸 下 での歩
行 (control−
walking ;C
−
W
>
と し,
2
回 目は,
歩
行 開 始1
分 前より随 意 的 に 換 気 量の増 加 を指 示 し た 条 件 下で の歩 行 (voluntary hyperventilation−
walking ;VHV
−
W
) と した。
な お,
VHV
−
W
にお け る換 気 量 増 加の 指 示 は 「息苦し さを 感じ ない 程 度に意 識 的に大 き くたくさん呼 吸 を して下 さい」と 口頭にて行い,
事 前に呼気 代 謝 測定 装 置 (ミナ ト医科 学社)のモ ニ ター
画 面 で 換 気 量 が 増 加 す る こ と を確認 し た。
ま た,
VHV
−
W
で は歩
行中の低換 気 を予防 す る た め に 適宜 大き な呼吸 を促 す声かけを行った。
トレッ ド ミル の設 定 は 平 地 快 適 歩 行 速 度に15
% 上 り傾 斜をつ けた。
歩
行 試 験は 十分な安 静の後に行い,
自 覚 的 な 呼 吸 困 難の程 度 が 修 正BQrg scale に て段 階5
“
強い”
に到 達 した時 点で終 了 した。2
) 測 定項 日自 覚 的 な 呼 吸 困 難の程 度
,
歩
行 時 間,
経 皮 的酸
素飽和度
(
SpO2
)
,
脈
拍 数 (PR)
,
分 時換気
量(
VE
)
,
呼
吸 数(
f
)
,一
回 換 気量(
VT
)
,
二酸化炭素排 出 量(
†
CO2
)
,
酸 素摂 取 量 (†
02
),
呼 気 終 宋二酸 化 炭素分 圧(
ETCO2
>
と し た。
呼吸 困 難 の 程 度 は修正Borg
scale (BS
)に てbaseline
と歩
行 開始直 前で聴
取 し,
その後はBS の段 階 変化 毎の時 間を 記 録 し た。
SpO2
とPR
につ い てはパ ル スオ キ シ メー
ター
(NONIN
社)
と解 析ソ フ ト(
ス ター
プロ ダ ク ト社)
を 用い て1
秒毎
に 記 録 し た。
換 気 指 標であ る亨
E,
f
,
VT
,
マ
CO2
,
†
02
,
ETCO2
につ い て は,
呼 気 代 謝 測 定 装 置 を使用 し てbreath
−
by
−
breath
法に て計 測 した。
3
)
統 計解 析各
測定項 目 はC
−
W
とVHV
−
W
間 で比 較し,
歩 行 時 間 以 外 の項 目 に 関 し て は 「baseline
」,
「歩 行開始 直 前 」,
「歩 行 中 (isotime
)」の3
時 点 で そ れ ぞ れ 比較し た。
な お,
「baseline
」は 安 静 状 態で呼吸循 環指標が安定 し た 時 点,
「歩 行中 (isotime
)」 はC
−
W
あるい はVHV
−
W
のど ち ら か が先に歩 行 試 験を終 了し た時点 (
歩行
開 始 後の 同時 刻 点 )と し た。
な お,
解 析に はソ フ ト(
SPSS
社)
を使 用 し,
正 規 性 を認 め た項 目 は 対 応のあるt検 定
を用い,
正 規 性 を認 め な かっ た項 目はWilcoxon 符 号 付順 N工 工一
Eleotronio LibraryJapanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese Physioal Therapy AssooiationCOPD
患 者の換 気量増 加が呼吸 困 難 お よ び 運 動 耐 容能に 及 ぼ す影 響103
表
2
呼 吸循 環指 標
と歩 行 時 間
baseline
歩 行 開始 直 前 歩 行 中 (isotime)C
−
W
VHV
−
W
C
−
WVHV
−
W
C
−
WVHV
−
WVE
(1
/min )f
〔bpm
)VT
(ml)VCO2
(m レminlVO2
(m レ min)ETCO2
(mmHg )SpO2
(
%} PR(
bpm
)BS
10
.
6
±2
,
7
18,
5
± 4.
8
617
,
0
±173
.
2
201.
9 ± 52.
8207
.
7
±55
.
5
31
.
4
±4
,
3
96
、
1
±0
.
9
92
.
0
±9
.
70.
0
±0.
0
10
.
5
±2
,
5
19,
2± 4.
7
583
.
4
±147
.
6
190.
5 ± 52.
5216
.
7
±59
.
5
30
,
7
±4
,
5
95
.
7
±L3
91.
5
±9
.
9
0.
0
±0.
0
10
.
9
±2
,
4
20,
0
± 4.
9
582
.
4
±146
.
6
201.
7± 49.
5210
.
5
±54
.
0
31
.
1
±4296
.
2
±0
,
9
93,
0
±9,
9
0
.
0
±0
.
0
16
,
0
±3
,
6
*
*
202 ±6
ユ861
,
2
±274
ユ* * 288ユ ± 69.
7* *2594
±64
.
9
*
*
27
,
0
±3
,
4
* *97
,
2
±0
,
8
* *93,
7
± 10,
20
.
0
±0
.
0
29
ユ ±10
.
0
30
,
0
±5
.
9
1005
,
0
±418
.
4
720.
9 ± 312.
1795
.
7
±316
.
4
36
.
8
±5
.
6
89
ユ ±3
,
8
123.
1
±13
.
7
4
.
9
±0
.
2
28
.
8
±12
.
2
26
.
4
±8
.
2
1134
.
9
±374
.
7
701.
7±341
.
9
7779
±363
.
1
34
.
8
±6
.
0
*90
.
8
±4
.
4
*122
.
1
±14
、
2
3
.
4
±1
.
1
* * 歩 行 時間(s)
C
−
W
VHV
−
W
l10
.
1
±60
.
8
123
,
4
±58
.
5
*
* * :pく0
,
05
* * :pく0
.
01
位 検 定 を用い た。
有 意水 準は5
%とし た。
4) 倫 理 的 配慮本 研 究は京 都 大 学 医の倫 理 委 員 会の承 認 を得て おり
,
各
対象
者には本 研 究の説 明 を 十 分に行い,
署 名に よ る同 意 を得 た。
結 果 (表2
)L
baseline
C
−
W
,
VHV
−
W
間におい て各
項 目に有 意 差 を認めなかっ た。
2
.
歩 行開始 直 前C
−
W
と 比較し て,
VHV
−
W
で は 全 例 に て†
Eの増 加 を 認 め,
VT
,
寸
CO2
.
†
02
,
SpO2
は有意 に 高 値 を 示 し,
ETCO2
は有意に低 値を 示 し た
。
f
,
PR
,
BS
は 有 意 差 を認め な かった。
3
.
歩 行 中(
isotime
)
C
−
W
と 比 較し てVHV
−
W
で はSpO2
が有
意に高 値
を示し,
ETCO2
お よびBS
は有 意に低 値 を示 し た。
ま た,
VE
,
f
,
VT
,
†
CO2
,
†
02
,
PR
は有 意 差 を 認めなかった。
.
4
.
歩 行 時 間 C−
W :llO.
1±60
.
8
(s),
VHV
−
W
:123
.
4
±58
.
5
(s)で あ り,
VHV
−
W
で有 意に高値であった。
考 察 本 研 究より,
COPD
思 者に お け る歩行中 の呼吸 困 難 や歩行時 間 は歩行 前の換 気 量 増加に よっ て改 善することが 明 ら か と なっ た。
Vitacca ら6)は
,
COPD
患 者に おける安 静 時の換 気 量増
加が,
高二酸 化 炭 素 血 症 や 低 酸 素 血 症 を一
時 的に改 善 させると報 告し てい る。
本 研 究に おい ても歩 行 前の換 気 量 増 加に よっ て,
二酸化炭素排
出 量 お よ び酸 素 摂 取量の増 加を認め,
呼 気 終 末二酸 化 炭素分
圧の有意
な低
下や経 皮 的 酸 素 飽 和 度の有 意 な 上昇 を 認め た こ と か ら,
C
−
W と 比較して VHV−
W で は低二酸 化 炭 素かつ 高 酸 素血症の状 態で歩行 を 開 始 する ことがで きていた もの と推 察さ れ る。
VHV
−
W では,
歩 行 中に換 気 量を意 識 的に増 加 する よう
に適 宜 口 頭 指示を与えて いた が,
分 時 換 気 量,
呼 吸数一
回換 気 量,
二酸
化 炭 素 排 出 量,
酸 素 摂 取 量はC−
W
とVHV
−
W
間で有 意 差 を認め な かっ た。 し かしな が ら,
歩 行 中 は呼 気 終 末二酸 化 炭 素 分 圧 の 上 昇 や 経 皮 的 酸 素 飽 和 度の低 下 がVHV
−
W
に おい て有 意に抑 制さ れ て おり,
呼 吸困難の軽 減と歩 行時 間の延 長 を認め た。
先行
研究
より,
呼
吸 困 難の発生 に は呼
吸運 動 出 力の増 大の や高二酸化
炭素
血症2)お よ び低酸素
血症
帥等
が関 与し てい る と考
えら れ て おり,
呼
吸 運動
出力
は一
般 的に換 気量 と相 関する と考
えら れ る。
本
研究
で は,
C
−
W
とVHV−
W 間で歩 行
中の換気
量や呼
吸数
に有 意
差を認め な かっ たこと か ら,
呼 吸 運 動 出 力に関しては両群間で明ら かな差はなかっ た と考 え られるが,
C
−
W
に 比べ て VHV−
W では呼 気 終 末二酸 化 炭 素 分 圧 およ び経 皮 的 酸 素 飽 和 度が良 好であっ たことか ら,
歩行 中の高二酸 化 炭 素血症お よ び低 酸 素血症の進 行 が 抑 制 さ れ,
呼 吸 困 難の軽 減に つ ながっ たので はないかと考 え られ た。
運 動 前に換 気 量 を増 加 する手 法は,
COPD
患 者の日常 生 活 内 や運 動 療 法 施行 中に応 用できる可 能 性 が あ る が,
設 定 換 気 量や 運 動負 荷量,
重 症度の違い な ど今 後さ らに詳細 な 検 討 を行 う必 要が あ る。
文 献1
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