Author(s) 狐崎, 創; 小森, 理絵; 春本, 晃江
Citation 数理解析研究所講究録 (2006), 1472: 129-138
Issue Date 2006-02
URL http://hdl.handle.net/2433/48126
Right
Type Departmental Bulletin Paper
Textversion publisher
129
ゾウリムシの生物対流実験
奈良女子大学・大学院人闇文化研究科 狐崎 創 (So Kitsunezaki) Graduate School of Human Culture, Nara Women’s Univiversity
徳島文理大学・香川薬学部 小森 理絵(Rie Komori)
奈良女子大学・理学部 春本 晃江(Terue Harumoto)
概要
水中を遊泳する微生物が高密度状態になると、 微生物の運動と流体の流れの柏互作用 によって自発的に$\dot{\mathrm{X}}^{\mathrm{L}}\mathrm{J}\backslash$流が発生することが知られている。 ここでは Hele-Shaw cell 中で
Pammecium tetraurelia (ヨヅヒメゾウリムシ) の生物対流の時間発展と個体運動を調べ る実験を行った。P. tetraurelia では対流パターンは、 容器の底付近から現れて徐々に自 由界面に向かって発達し、
十分に時聞が経っても非定常なロール構造が観察される。
こ のような生物$\mathrm{X}^{\iota}1\mathrm{L}$流はゾウリムシ自身の消費によって生じた酸素の欠乏が原因になってい
る可能性が高い。1
Introduction
生物$\neg \mathrm{X}\backslash$ 流(bioconvection) は、微生物が水面近くに作った個体密度の高い層が流体力学
的不安定性を通して対流を起こし、結果的に集団運動を発生させる現象である。
Rayleigh-B\’enard (RB)対流に類似したパターンが運動性のある微生物で広く観察されており、
繊 毛虫の $Tetrahymena_{\backslash }$ 鞭毛虫の $Chlamydomonas_{\text{、}}$ バクテリアの Bacillus subtdis などで詳しい実験が行われている $[1, 2, 3, 4]_{\text{。}}$ これまで提案された対流発生のメカニズムは、 (1)
微生物自身の上昇運動によって水面付近に個体密度の高い層が自発的に形成され、
(2) その層がRayleigh-Taylor(RT)
不安定性により水平な状態を保てなくなり適当な間隔で下
降流が生じる、 という点で基本的に一致している $[5, 6, 7]_{0}$
微生物の上昇運動の原因は、
oxygentaxis(
酸素勾配に対する走行性
)
$\text{、}$ phototaxis(光に対する走行性)、gyrotaxis に起因する geotaxis (重力に対する負の走行性) など生物の種 類によって異なる。
このような微生物の運動をドリフトを伴う個体密度の拡散方程式で
表し、 Navie Stokes
方程武と組み合わせた形の数理モデルがいくつか提案され、
線形及び弱非線形解析が行われている $[8, 9, 10, 11, 12, 13]_{0}$ また数値計算により、$\mathrm{R}\mathrm{B}$ 対流と同
様に水深とほぼ同じスケールの$\neg \mathrm{x}\backslash$流ロール構造が発達することが示されている $[14]_{\text{。}}$
本研究では、P.
tetraurelia
を用いて生物$\mathrm{x}\gamma_{\backslash }$流の実験を行い、Hele-Shaw cell 内での準2
次元的な$\urcorner \mathrm{x}\backslash$流の形成過程と時間発展を調べた。 これまで定量的な生物
$\mathrm{x}\neg\backslash$
流の実験が行わ
る。
ゾウリムシは壁や他の個体と衝突すると、後退運動をして回避行動をとる性質があり
その運動は基本的に拡散的であるが、 様々な刺激に対して複雑な応答する。thermotaxis,
glavanotaxis, chemotaxis, oygentaxis, rheotaxis などの様々な走向性を示すことが知られ
ており、gyrotaxis が見られるという報告もある $[15, 16, 17]_{\text{。}}$ ここでは、 個体運動の顕微
鏡観察の結果と合わせて P. tetmurelia の生物$\mathrm{x}^{\iota}1[perp]$
流のメカニズムについて調査した。
2
実験方法
実験には P. tetmurelia の wild-type, stock
51
を用いた。 低温$(15^{\mathrm{o}}C)$ で保存しているゾウリムシを、 餌となるバクテリアを豊富に含む溶液
1
$(\mathrm{f}\mathrm{f}\mathrm{l}\backslash 400\mathrm{m}1)$ に移して、 実験前に$25^{\mathrm{o}}C$ で 3\sim 4 日分培養し個体数がほぼ一定の状態(stationary phase) になるまで増殖さ
せる。 この状態でゾウリムシの個体数は $10^{3}\mathrm{c}\mathrm{e}11\mathrm{s}/\mathrm{m}1$ 程度であり、 餌が十分でもこれ以上 密度が高$\langle$ なることはない。個体密度をさらに上げるために、 濾過してごみを除いた後、 遠心分離機を使って濃縮する。
遠心分離は培養液中で一回行ったあと、
沈殿部分のみを 生理的塩類溶液 SMBIII[20]に移してもう一度遠心分離する。沈殿した部分を取出し再び
濾過して得られた個体密度 $10^{5}\mathrm{c}\mathrm{e}11\mathrm{s}/\mathrm{m}1$程度の溶液痢 $1\mathrm{m}1$ を実験で用いる原液とした。実 験前に原液を 1/40 倍に希釈した$5\mu l$ の液滴を 15サンプル作り、実体顕微鏡で個体数を計 測し個体数密度$n_{0}$ を決めた。実験は原液作成から半日以内に行っている。原液中ではゾ ウリムシは増殖しておらず、 各実験ではほぼ個体数が保たれていると考えられる。 以下では、 実験容器として平行な2
枚スライドガラスからなる Hele-Shaw cell を用い た。 容器のサイズは幅 $W=66.7\pm 0.1mm_{\text{、}}$ 厚み $D=1.23\pm 0.05mm$で、 水深$H$は容 器に入れるゾウリムシの溶液の体積 $V$で決まる。個体密度$n_{0}$ を低くする場合は、原液を SMBIIIで希釈した。実験では、ゾウリムシの溶液を細いステンレスワイヤーで撹絆して個体密度を一様にした後、温度 $26\sim 28^{\text{。}}C$の室内で放置して容器内を観察した。 Hele-Shaw
cell の壁の問隔が狭いため、溶液を入れただけでは表面張力で水面は水平にならないが、 撹搾の際にほぼ水平な水面ができるようにしている。 容器全体は暗室中で後ろから低消 費電力の白色蛍光痔で均一に照明し、 $\mathrm{X}^{\backslash }1\mathrm{A}$ 流パターンはデジタルカメラ (Canon EOSIOD) を用いたインターバル撮影で、 また個体の運動状態は実体顕微鏡 (wraymer SW-700TD) で動画撮影した。
3
$P$.
tetraurelia
の生物対流パターン
垂直に置いた容器で$\mathrm{x}\backslash [[perp]_{-}$流パターンの形成過程を観察した。溶液の底と側面は固定境界 で、 上は空気と接する水面である。 図 1 は体積$V=1\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{O}\mu l$ のゾウリムシの溶液を入れ、 一定の時間間隔で撮影したグレースケール画像である。 ゾウリムシの個体が照明で白く 写るので、 個体密度が大きい場所ほど明るく見えている。10.5%phosphate-buffered wheatgrasspowder (Pines Int., Inc.,Lawrence,$\mathrm{K}\mathrm{S}$)infusionsupplemented with 0.5$\mathrm{m}\mathrm{g}/1$ stigmasterol andinoculatedwith Enterobacter aerogenes 2-3 daysbefore use $[18, 19]$
.
131
図 1: $\mathrm{X}\urcorner\backslash$流パターンの形成過程、 画像横の数字は砂子後の経過時間 (秒)
$V=1000\mu l$
.
(左)no $=0.61\pm 0.22\mathrm{x}10^{5}\mathrm{c}\mathrm{e}11\mathrm{s}/\mathrm{m}1$, (右)n0 $=0.21\pm 0.03\mathrm{x}10^{5}\mathrm{c}.\mathrm{e}11\mathrm{s}/\mathrm{m}1$従来報告されている生物$\mathrm{x}^{\mathrm{t}}1[perp]$
流では最初に個体の上昇運動により水面付近の個体密度が
大きくなるのに$\mathrm{X}^{\overline{\backslash }1}[perp]$
して、 P. tetraurelia の生物$\mathrm{X}^{\backslash }1\mathrm{A}_{-}$
流は、 撹絆後にむしろゆっくりとした沈 殿が起り、 その後、 個体密度の高い帯状の領域 (以下フロントと呼ぶ) が容器の底付近に でき水面に向かって徐々に進行する。 フロントの後ろには$\mathrm{X}^{\overline{\backslash }1}[perp]$流パターンが形成され、フ ロントが進むにつれてロール構造が大きくなる。 フロントの形成および上昇にかかる時 問は、 個体密度$n_{0}$及び水深$H$が増加すると減少する。 フロントの移動は水面付近に達すると止り、 フロントの後ろに形成された$\mathrm{X}$] $[perp]\backslash$ 流領域は 長時間そのまま維持される。
表面付近から個体密度の大きい下降流が所々に生じ、
その 他の領域では表面へのゆっ $\langle$ りした上昇流が観察される。 1 つの実験で一定間隔に撮影 された一連の静止画像から、容器の底から一定の高さ $y$ の水平線に沿って画素を切出し、時間順に並べて
1
つの画像(space-time image と呼ぶ) を合成すると、$\urcorner \mathrm{X}\backslash$流パターンの時間発展を視覚的に捉えることができる。 図2 は同じ密度で、 水深が2倍異なる
2
つの試 料についての space-time image である。画像の縦軸が時間で、 下が撹押直後である。撹押直後からフロントが上昇してくるまで一様な密度が保たれているが、
フロントが通過して複数の下降流が発生すると画像上に模様が現れる。体積
$1000\mu l$ の場合 (図左) では、下降流が頻繁に発生しては互いに徐々に近づいて合体を繰り返して、
XL-‘1流ロール構造が 生成消滅を繰り返す。一方、水深が浅い体積$500\mu l$ の結果 (図右) では、 下降流の生成と 合体は少なく、 同じロール構造が長時閥保たれている。図 2: space-time images
$n_{0}=0.61\pm 0.22\mathrm{x}10^{5}\mathrm{c}\mathrm{e}11\mathrm{s}/\mathrm{m}1$, 左は$V=1\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{O}\mu l,$ $y=0.75H_{\text{、}}$ 右は $500\mu l,$ $y=0.5H_{\text{。}}$
発生した下降流同士が徐々に接近し合体することは、 Harashima らが $H$
.
akasiwo の生物対流に$\neg \mathrm{x}$$\backslash$ して提案した数理モデルの数値計算と一致するが
$\mathrm{x}\mathrm{J}[perp]\backslash$流構造が定常にならな
い点で異なる $[14]_{\text{。}}$
以上のような非定常な時間発展の原因はまだ明らかではないが、表面
付近で発生する下降流の間隔が $\mathrm{R}\mathrm{T}$ 不安定性により粘性と密度差でほぼ決まるのに
$[perp] \mathrm{x}^{\overline{4}}\mathrm{f}$ し て $[5, 6]_{\text{、}}$ 時間発展後に選択される大域的な$\mathrm{X}^{\overline{\backslash }1}[perp]$流ロールの間隔は水深に比例するため、 両
者の不一致に由来するのではないかと予想される。 水深が小さい場合はこの
2
つの間隔 が近くなり、 $\mathrm{x}\urcorner\backslash$流のロール構造が次々に発生する下降流によって大きな摂動を受けるこ
となく長時間維持されると考えられる。4
フロントの形成要因
$\mathrm{x}1[perp]\backslash$流パターンの発生には重力による流体力 学的不安定性が関与している。 実際、 Hele-Shaw cell 容器に細いワイヤーを水面に沿っ て渡すと、 空気 (およびワイヤー) と接する ほぼ直線的な水面を維持したまま、 容器を水 平にしたり、 逆さにしたりすることができる が、 いずれの場合も前節で見たような持続的 な$\mathrm{X}^{\overline{\backslash }1}[perp]$ 流は現れなくなる。 一方、 図3
の写真にあるように、 フロント の形成とその後のゆっくりした進行自体は、 図3:
容器が水平な場合のフロント。上 容器を水平にした場合にも観察される。$\mathrm{x}1[perp]\backslash$流 に写っているのはワイヤー $(0.3\mathrm{m}\mathrm{m}\phi)_{0}$ を伴わずフロントの形状もやや異なるが、 フ ロント領域では密度が高く、 フロントが空気一水界面に向かって移動するという特徴は 同じである。従って、 フロントの形成の原因は geotaxis (重力に$\mathrm{X}^{\iota}1[perp]$ する負の走行性) では133
図 4: 窒素中での実験 ないと考えられる。 容器が垂直な場合でも、 水面を蓋して固定境界に替えると持続的な$\mathrm{X}^{\backslash }1[perp]$流パターンは現 れなくなる。そこで空気の影響を調べるために、空気を窒素に置換する実験を行った。 図 4の写真は1
回の実験で撮影されたスナップショヅトを時間順に並べたもので横に経過時
問を分で表示してある。 この実験では Hele-Shaw cell 容器自体を透明な密閉容器にいれ、空気$arrow$窒素$arrow$空気$arrow$窒素 $arrow$ 空気、 と 2回窒素置換をおこなった。 写真の横のグレー
の線は、 環境が窒素である時刻を示す。
実験の結果から、 窒素中では持続的な$\urcorner \mathrm{X}\backslash$流は現れず、$\mathrm{X}^{\backslash }1[perp]$
流が起きていても消えてしま うことがわかる。 ただし、 1 回目の窒素置換の結果からわかるように、 $\mathrm{X}^{\backslash }1L$ 流のフロント が容器の底付近にある時に空気を窒素で置換しても、 フロントはそのまま上昇を続け、$\mathrm{y}$] $[perp]\backslash$
流が消えるのはフロントが水面に達した直後である。
また、 窒素中では$\mathrm{x}\urcorner\backslash$ 流がなくなり ゾウリムシがほぼ一様に拡散した状態になるが、 そこで再び空気を入れた場合は底から のフロントの形成は起らず、従来報告されている生物$\mathrm{y}\mathrm{J}\mathrm{L}\backslash$ 流の形成過程と同様に、水面付 近の個体密度がすぐに大きくなって$\mathrm{x}\neg\backslash$流パターンが再生される。 これらの結果は、 フロントが水中の空気 (おそらく酸素) 濃度が欠乏した結果として、 酸素濃度が豊富な領域との填界付近に形成されること、 及び、 空気中では高密度のゾウ0.3
air
0.2 0.1 $\mathrm{N}_{2}$ $0_{0}$ 0.2$\mathrm{s}\mathrm{p}^{0.4}\mathrm{e}\mathrm{e}\mathrm{d}$$(\mathrm{m}^{06}\mathrm{n}\vee \mathrm{s})$
0.8 1 図 5: サイズ分布 図
6:
速度分布リムシの集団自身の酸素の消費がフロント形成の原因になっていることを示唆して
$\mathrm{t}\mathrm{a}$ る と思われる。5
ゾウリムシの個体運動
空気の有無でゾウリムシの個体運動はどのように変化するであろうか。
最初に、 前節の実験と同様に密閉容器を用いて、 空気中と窒素中でのゾウリムシの運 動を実体顕微鏡で観察した。 ここでは、 底面にカバーガラスを貼った内径$22\mathrm{m}\mathrm{m}$の円筒 形のアルミ容器を用い、 ゾウリムシの原液(密度$n_{0}=1.9\pm \mathrm{O}.26\mathrm{x}10^{5}\mathrm{c}\mathrm{e}11/\mathrm{m}1$) を 1/40 に 希釈した溶液800\mu
詠使った。
容器内での水深は平均$2.\mathrm{l}\mathrm{m}\mathrm{m}$である。攬絆後4分静置し てから、 真上から実体顕微鏡で動画を撮影した。 撹搾直後は、 どの個体も単独で活発に泳いでおり、 空気中と窒素中で動きに差異は見 られない。 時間が経つと、窒素中ではゾウリムシ同士が衝突してクラスターが多く形成
される。 ただし、 クラスターになった個体は運動をやめるわけではなく、 クラスターの 大部分は単独の個体に比べてかなり遅いがランダムに動いている。一方、 空気中ではク ラスターはほとんど作られないが、 単独で運動をやめてほとんど動かなくなる個体が多 く見られる。 図5,図6
に、5
秒間の動画から画像解析ソフト ImageJ 2 を用いて、 個体やクラスター を判定し、 そのサイズと移動速度の分布を解析したグラフを示す。 サイズ分布には、 空 気中、 窒素中とも 1 個体に相当する面積でグラフにピークが見られるが、 大きなクラス ターは窒素中でしか形成されない。 速度分布は、 空気中、 窒素中とも $0.1\sim 0.2\mathrm{m}\mathrm{m}/\mathrm{s}$付135
図 7: フロント付近の実体顕微鏡写真 近が最大であるが、 0 $3\sim 0.6\mathrm{m}\mathrm{m}/\mathrm{s}$付近で動く個体が空気中より窒素中で多いことがわ
かる。 このように、空気が欠乏するとゾウリムシが活発に運動する状態になり、
同時にクラ スターが形成されやすくなる。ただし、 クラスター形成に関しては、酸素の欠乏によって衝突時の回避運動が生理的に損なわれているのか、
単に活発な運動が衝突回数を増やし運動論的にクラスターの形成が
a
されているのか、
この実験結果から判断はできない。次に実際に空気中でフロントが形成されている時のゾウリムシの個体運動を観察した。
図7はフロント付近の下降流ができている場所を実体顕微鏡で撮影したスナヅプショット
である。フロントの付近ではゾウリムシは密集して渋滞状態になっており、
個別的な拡 散運動とは異なる。 また、小さなクラスターがフロント内で形成され沈降していく様子
も観察される。 容器中央の 1箇所を選び実体顕微鏡で定点観察を行い、
フロント通過の前後でゾウリムシの個体運動を調べた。一般にフロント通過前は、止って
$\mathrm{t}^{\mathrm{a}}$る個体やクラスターになっ ている個体が多いが、フロントが通過後に残っている個体はほとんどが活発に運動して
いる。図8 に動画から50
個体選んで調べた 1 秒間の運動の軌跡を、 始点を一致させて書 いたデータを示す。50
個体の 1 秒間の平均変位を黒丸で、 共分散楕円を点線で示した。 ただし、クラスターに含まれる個体は講別しにくいためこの解析の
xL-‘1
象からは除かれて
いる。 左側のグラフは、容器が垂直の場合のフロント通過前
(上) と通過後 (下) の解析結 果である。フロントの通過前には個体運動に上昇運動の傾向は見られず、
むしろ、わず かに下降しているように見える。 これに対して、 フロントが通過し$\mathrm{x}^{\mathrm{t}}1[perp]$流が生じた部分で は、ゾウリムシは上方に直線運動をする傾向が見られる。
この観察位置は $\mathrm{x}^{\iota}1[perp]$流パターンの中で下降流と下降流の中問地点にあり、
水の流れ自体も上に向かっている。左側の図容器が水平な場合 容器が垂直な場合
$1\mathrm{f}\mathrm{f}\mathrm{i}^{\text{、}}\lrcorner]\text{、_{フ}\subset l^{\text{、}ト}}\backslash \text{フロ^{、}},/\text{ト}\underline{\ovalbox{\tt\small REJECT}}\mathrm{f}\check{\mathrm{f}\mathrm{l}}|\mathrm{f}\underline{\mathrm{f}\mathrm{i}}_{1}^{\text{、}}\underline{\ovalbox{\tt\small REJECT}}\not\in\ovalbox{\tt\small REJECT}_{l}\underline{0.1\mathrm{m}\mathrm{m}}.’|1t^{\prime\backslash }\vee\sim--1^{\mathrm{i}}|||-’\backslash r^{1},\backslash \grave{\mathrm{t}},$
$\ovalbox{\tt\small REJECT}_{l^{J’}}\backslash _{-}’\ovalbox{\tt\small REJECT}^{\prime^{J’}}-\backslash -,\nearrow’\backslash \prime^{\prime^{\prime^{-\backslash }}\backslash }--\backslash _{\backslash }|^{\wedge^{\prime’}}’$
, $t’$ $\sim$ $\backslash$ . 1 $\vee$
!
$r^{1}$ $|$ 図 8: 1 秒問のゾウリムシの軌跡$($目盛$0.1\mathrm{m}\mathrm{m})_{0}$ 中の白丸はゾウリムシより小さな浮遊物の 1 秒問の平均的な変位を解析した結果で、 こ れはこの地点での水の流速の指標と見なせる。 このようにフロント通過後は、$\dot{\mathrm{x}}1$ 」 $\backslash$ 流が生 じ、 その方向とゾウリムシの運動方向はほぼ一致しているが、平均速度は水よりゾウリ ムシの方が数倍大きいことがわかる。 一方、 右側のグラフは、 図3 のように容器を水平 にした場合のフロント通過前 (上) と通過後 (下) の同様のデータである。 速度の分散 がやや大きくなる点は同じであるが、 容器が垂直な場合と異なり、 プロント通過後にも 個体運動に方向性は見られない。 フロントの通過とともにゾウリムシの運動が活発になることは、 先に述べた窒素中で の振る舞いと一致しており、 フロントが通過した領域で酸素の欠乏が起きてるという朗 節の仮説を支持する結果と考えられる。$\mathrm{X}^{\mathrm{t}}1[perp]$流が生じている場所で観察された上昇運動は、137
水平に容器を置いた場合は見られないので、 酸素勾配に$\mathrm{x}\neg\backslash$ する走行性というより、 $\mathrm{x}\neg\backslash$ 流 によって生じた水の流れに$\mathrm{x}\urcorner\backslash$する走行性 (rehotaxis) によって生じている可能性が高い。6
結論
本研究では、高密度に濃縮した P. tetraureliaの溶液で観察される生物$\mathrm{x}\urcorner \mathrm{J}\backslash$流を Hele-Shaw
cell を用いて調べた。
P. tetraureliaの生物$\mathrm{X}1[perp]\backslash$流は、
XA-‘f
流パターンの形成が容器の底付近から表面に進む密度の高いフロントの進行とともに生じるという特徴がある。窒素を用いた実験、
および、個体運動の解析結果から、 ゾウリムシ自身の消費によって生じた酸素の欠乏により、個体運
動が活発になることがこのフロントの形成の要因であると推定される。
酸素欠乏がゾウ リムシの運動の性質にどう影響するのかに関しては、 生理機能も含めた個体レベルの研 究が待たれるが、 P. tetraureliaの生物$\mathrm{x}^{\overline{\mathrm{t}}}1[perp]$流に$\mathrm{X}^{\overline{\backslash }}1\mathrm{A}$しては、 酸素勾配や重力にX\perp -‘lする走行性
(oxygentaxis, geotaxis) は大きな寄与をしているようには見えず、何らかの oxygenkinesis
が主因になっていると考えられる。 フロントの通過前後の個体運動の解析は、 ゾウリムシの水流走性が上昇運動を促進し ていることを示唆している。 また、
密度の高いフロントではゾウリムシが凝集したクラ
スターが形成されては沈降する様子が見られるが、 このような水流走性やクラスター沈降が対流に与える効果は今後検討する必要がある。
発達した$\mathrm{x}\neg\backslash$流パターンは、一般に下降流の生成と合体が繰り返される非定常なロール構
造を作る。非定常な弱気発展の原因は、
$\mathrm{R}\mathrm{T}$ 不安定性の波長と選択されるロール構造のス ケールの不一致にあると推測されるが、 この点は数理モデルによる研究の課題であろう。7
謝辞
本研究は著者の狐崎が高密度のゾウリムシの溶液に見られるパターンについて高木
由臣氏 (現奈良女子大学名誉教授)と共著者の小森氏に聞いたことに始まっています。高
木氏には、研究を進める上で不可欠な、 ゾウリムシについての多くの知識と実験試料や 設備も提供して頂きました。 また、 窒素置換の実験は、 奈良女子大学物理科学科の狩俣 氏、 石井氏の協力で行われました。参考文献
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