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著〕 (東京女医大剛・第25巻第5号頁171−176。日召禾030年5月)クロロマイセチン耐性腸チフス菌に就て
東京女子医科大学細菌学教室(主任 平野憲正教授) 緒 言 小 コ 林 パΨシ 千 チ 鶴 ズ (受イ寸 昭和30・年1月10日)クPロマイセチン(以下CMと略)はBurkh−
older等(1947)により発見されて以来,グラム 陰性及び陽性菌の双方に効果ある新抗生物質とし て多数の学者によって研究され,臨床的にも数々 の疾患に効果のある事が知られてきた。しかし抗 生物質の予想される運命として耐性菌の問題があ る。既に多くの入・々によりこの問題は検討されて 来たが私も試験管内でCM耐性腸チフス菌をつく り,これに似て種・々研究したので以下実験の結果 を報告する。 実験材料 実験に用いた菌は当教室保存の腸チフス菌相原株 (VW型)で使用培地は山羊血清培地及び普通ブイヨン である。CMはPark−Davis社製のものである。 実験方法及び案験成績 1. 感性試験 各種細菌のCM感性に就てR. M. Smith(1)はE. coli O.33一一一〇.5”g/ml, S. schottmulleri O.33
t一一〇.5LLg/ml, S. paradysenteriae O.33,cLgf.ml, Dip.
pneurnoniae O.25・vO.33,tLg/ml, Staph. aureus
1.0μ9/m1と報告している。又寺田,設楽(2)はS. typhi 10∼20 7/ccと報じてv、る。 私は山羊血購培地(無菌的に採取した山羊血塊 を滅菌蒸溜水でユ0倍にうすめ100℃15分滅菌した もの。以下血清培地と略)及び普通ブイヨンを用 いて腸チフス菌のCMに対する感性を測定した。 CMは滅菌蒸溜水でユmg/cc∼5007/ccにな厨叢 に稀釈し,100。C30分重:湯煎で加熱し:更に滅菌蒸 溜水で稀釈して.血清培地には1CC,ブ■ヨンには 0.5cc加えて所定濃度になる様にした。培地の総 量はいすれも5ccである。菌は相原株の斜面培養 を血溝培地及びブイヨンに夫k“ 3代継代し,これ からCMを所定濃度に含む培地に一白金目(渦巻) 宛移植した。かくして10日聞培養し培地の溺濁し たものを発育と見徹した。その結果は第一表の如 くゴ昆清培地に於ける相原株の感性は57であリブ ■ヨンに於ける感性は10 ・/であった』但し菌ば 100 7/cc含有の.[fi.T.清培地巾でも発育を阻T.1:された のみで伺生存していた。 第一表腸チフス菌のCMに対する感性
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5. 耐性株の運動性及び鞭毛 前と同じ耐性株に就て運動性を懸滴標本で比較 した結果,原株の運動が非常に活譲であるのに比 して,耐性株では殆ど運動が見られなかった。 0.7%半流動寒天に穿刺培養を行った結果,原論 は穿刺線に沿う強v・漏濁は勿論,周囲にも強v・溺 濁を示したが,507耐性株は周囲の酒濁が原株に 比してすっと少く300γ耐性株では殆んど穿刺線 に沿う発育を示したにすぎなかった。鞭毛染色 (Lδffler氏子)では原株が周囲多毛性の長v・鞭毛 を多数有しているのに反して50γ耐性株は殆ど鞭 毛を認めす稀にもっているものがあっても短く2 ∼3本程度であった。 6.耐性株の免疫学的性状 チフス菌のCM耐性株の抗原構造の変化に去て 設楽(3及び4)はH抗原の消:失を報じている。私は原 品及び血清培地の50γ耐性株11代の生菌及び1000 C1時閥加熱菌による家兎免疫血清を作りその各 汝に就て凝集反応,交叉凝集反応,吸収試験を行 った。 (i) 抗体吸収を行わざる交叉凝集反応 原株及び50.γ耐性株の生菌及び死菌免疫血清に 対する凝集反応は第三表の如くである。即ち生菌 及び加熱菌免疫血清に対する凝集価は原株と耐性 株との間に著しい差は認められなかった。 第三表 吸収試験を行ぽざる交叉凝集反応 1.原画生菌免疫血清について Itt−tt”’ti[iooti.ki−io16原酬柵
裾 …!・…6・・32・・1.E’・・1・28・・256・・5・2・・!・対照 構 柵 帯 搬 十 十離剃柵
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4.耐性株加熱菌免疫血清について菌・Pt清「四郷[…1…
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(ii) 抗体吸収試験 原株生菌:免血清を耐性株生菌で吸収した揚合そ の上清は原株を3200倍迄凝集したが,耐性株生菌 免疫血清を子株生菌で吸収した場合その上清は耐 性株を凝集しなかった。又第四表2に示すように 原株加熱菌免疫血清を耐性株で吸収した場合その 上清は二二を凝集せす,耐性株加熱菌免疫血清を 稲株で吸収した場合もその上清は耐性株を凝集し ながった。原子生菌免疫血浩を耐性株生菌で吸収 した場合,その上清が原株を凝集するのは,耐性 第四表 抗体吸収後の交叉凝集反応 1.生菌免疫血清について吸収婦吸収菌
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株に於てはH抗原が減少しているためと考えられ るのでd因子血清との凝集反応を行ってみた。即 ち戸田の100。C2時間加熱菌にて原株生菌免疫一血 清を吸収し,その一上清で耐性株及び原株の凝集反 応を行った。その結果原株は1600倍凝集されたが 耐性株は凝集されなかった。即ち耐性急に於ては d抗原の消:失若しくは減少が推定されるa 7.耐性株のマウスに対する毒性 13∼159のマウスを1群4匹とし,原株及び耐 性株の18時間斜面培養を0.05mg,0.1 m£,0.2 mg,0.7 mg宛腹腔内に注射し3日半襯察した。 その結果は第五表の如く耐性株の毒性は二二に比 して著しく低下してv・たことを認めた。 8. 耐性株の発育曲線 中塚等(りによれば腸チフス菌のCM耐性菌の発育は1ag Phaseが延長しlogarithmic phase
第五表 CM耐性菌のマウスに対する毒性 72時間後の窪霧・
葡鍵藤原劉璽灘・…耐麟
O.2 mg’ O.1 mg 3 4 ’4’ ‘s“’ 4’ ’li’” ”i て∼万 一2・T .チ. 旦 4 o.osmg 1 一1一一rv2 蔓 .塁. 、∫し 5 .p. 4 旦4 の抑制延長が認められ24時間後も原株と同一程度 にならないとv・う。私は原株と耐性株との発育曲 線を光電比色計(東方電機501型)を以て比較し た。電流計の読みはoptical density(O. D=2− log T.)を用いた。測定価は比色計用均質試験管 にブイヨンを入れ,0.D=0とし,次に可検試験 管をいれその示す0.D・を以てした。同一試験管 の価は二度の測定価の平均をとり同一実験には同 じ条件のものを2本宛使用した。原野と50γ耐性 26代株の普通ブ■ヨンに於ける発育曲線は第1図 の如くで原肥では約2時間後に109.phaseにな Jl,6∼7時間でstationary phaseになるが,耐 性株では約3時間後にlo9. phaseになりstat. phaseになるのに7・)8時間かかりその0. D.は原 株より遙かに低かった。叉耐性株をCM 50 7/㏄ 入ブイヨンに培養した場合の発育曲線はIo9. ph−aseが非常に延長し, log. phaseに入るのに約 5時聞を要しstat. phaseに於ける0。D.は耐性 株の普通ブイヨンに於けるよりは:更に低かった。 これによってみるとCM耐性株は依存菌になり 難V、様に、思われる。 第1図 CM耐性腸チフス菌の発育曲線(光電比色計による) F)
欝
O.2 ec O.1 旨 。} 一一一一…一 エ:株 50騰挫ヒ24佳 一;.==.一一eL一一一一O i 2 3 4 5
培養 時
9.耐性株のマウスに対する免疫原性 ’ 耐性株は前述の様にH抗原の減少を示すがこの 菌でウサギを免疫した場合H抗体を産生するので マウスに対する免疫原性を原株とエ00γ耐性7代 に就て比較した。免疫方法は原株及び耐性株の普 通寒天斜面24博聞培養により菌液をつくり13∼・ 159のマウスの腹腔内に注射した。1回免疫群で は原株致死:量の1/10:量の菌を1回だけ注射し, 2∼3回免疫群では1週間隔で漸次増量して注射 しk。攻撃は最後の免疫より7証拠目に致死量 の1.5−2.5倍の原株を腹腔内に注射した。攻撃後/!㌔一一博0踊徽24代の
C凹ノへ7イヨンt;nc けみ発育曲線6 ワ 8 , 24
画 5日以上生存したマウスの数の比を求めて原株と 耐性株の比較を行った結果,第六表に示す様に, 1回免疫群では明らかに原株の免疫力が強かった が,2回3回と免疫回数を重ねるにつれて耐性株 も相当多量の攻撃に耐える事が出来原株と略同様 の免疫力を示した。 10.耐性株の復帰に就て CM耐性株の復帰に関して宮川絢は, E. coli のCM 500γ耐性株は普通寒天に30代継代しても 原株感性(2∼ユ0γ)の5∼10倍迄しか復帰しなが った事を報じ,叉鵜飼(6)はパラチフスA菌のCM 一 J74 一第六表 CM耐性株のマウスに対する免疫原1性 原点とCM 100γ耐性株との比較 電 撃 菌 畑 原 株 免
鋼毯盤株免疫判
疫 第1回 菌 量:第・回「第3回
菌馴菌重
第1回菌量
第3回当量
生存率
O.3 mg 1 O.02 mg 5f7 O.02 5/7
2っ 10.05
「一l6
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1.0 1 O.Ol ’1’ ’”’”’ ’ P 一一’ O.05 .1 5/7tv7f7 1 O.05 .一L一一. ヒ .i
O/7t−3/7 Of7 O.05 6f7 O.Ol 1 O.05 Of7 3/7 2.0’@1 O.02
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5/5 O.02 O.3 5f5o.ol 1 o.03 1 o.1 0.ol 1 o.03 [ o.1
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4/6 3/6 s.o 1 o.02 ..LO.3 2.0 3f5 o.o?. O.3 2.0 3/4
第七表 CM50γ耐性36代言の復帰の感性
培地
CM
復帰代数x
余手 面 507Xcc 1 40r/cc ,1 30Ai/cc ブ イ ンliEtlllJ7EET4511J711ET{16i/cc 407/cc l 301Jl,IEETIcc l 251」7/EEccTlt16107一/tYslll]i/7EEmucc 1
1 代
5 代
10 10flO 10flO 10/10 十十 10/10 10flO 10/10 十十 F・”P前口
甘」++陪
一 15 ト 1一?9 30 代 15/15代115/15
15f15 [ 15f15 ,15f15 1 15f15 一 1 十十 暑1 ..++ 代 10flO 10/10 10flO+・1「朴「H
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代「・/・・巨・/・・ 2flO i 10/1015f20
10flO ± 十十34 代
40 代
10/10 ± 15f20 1 20/20 +・@+引・H.
44 代 2/20 . 3/20 20/20+■+・ +・ 什
臣・代L… 乙・5Ll・位.Lニーr⊥一+・]+・,+・…
匝一生L∴〔・・/・5L51・5L二L二⊥三工」豆〕丑.f−1「i
.原塗L.P.. 一・_9」二1=1.ニレL=L土∵…
10/10……平板に分離した集落10ヶについて耐性度を見た所,10ヶ全部がよく発育した事を示す 十1………1Nで澗濁した事を示す 耐性菌について略同様の威績を発表している。又 設楽(4)は2GOγ耐性腸チフス菌は3十三30代でH 抗原が復帰したと報告している。私は血清培地の 50γ耐性36代株を普通早天斜面に24時聞培養し, 以後全くCMを含まない斜面に継代して5代毎に 感性を測定した。1代の培養時間は約20時間であ る。感性測定の方法は三代の斜面培養からブ■ヨ ン20時間培養をつくり,この1白金耳を各種濃度 のCM入ブイヨンに移植培養iする方法と,斜面培 養の菌を寒天平板に分離して集落10(・20ケを三 三し,夫k’のブ・イヨン培養に就て各種濃度のCM 入斜面にそれを塗抹する方法とを用いた。成績は 第七表の如くで,判定は大体72時聞後のものであ る。ブイヨンで測定した揚合は約20代で耐性度が 一ノtP一一低下し始め,復帰55代では原株感性の倍迄低下し た。単個集落に就て斜面で測定した場合1日目は 陰性でも2日,3日と培養すると1∼数10ヶの小 さい集落を生じたものがあり,ブイヨン測定の揚 合より復帰が遅かった。 叉試験管内のみの復帰だけでなくマウスの体内 通過による復帰実験も行ってみた。即ちSOγ1耐性 53代,100γ耐性7代株をブ・イヨンに1白金耳宛 うえ,その20時間培養の0.5ccを139前後のマウ スの腹腔内に注射し,翌日麗死したマウスの心臓 より菌を分離しこれをブイヨンで増殖して2代目 のマウスに注射し,同時に分離した菌の耐性度を 測定した。0,5ccで死なない揚合はエーテルで殺 して直ちに菌を分離した。その結果tli 507耐性株 では20代よIJ,100γ耐性株では19代より耐性が 低下し始めたが試験管内に於ける復帰の揚合との 間に差は認められなかった。 伺50γ耐性U代の復帰35代株に就て形態,生 物学的性状を検査したのに,集落にはR型が多く 一般に大きく,耐性株特有の小さib S型は少なか った。菌体はやや膨大し,染色性は一様ではない が,L6ffler氏鞭毛染色により原株と略同様の周 囲多毛性の鞭毛を認めた。運動は懸滴標本で比較 した結果,原株、と同程度に活濃であ1,0.7%半 流動寒天に穿刺培養を行った結果,強い溺濁を示 した。糖分解試験では原株と同様にソルビットを 分解しグリセリンの分解も速くなった。 総括及び結講. 1. CM耐性腸チフス菌は雑株に比して菌体がや や膨大し両端やや濃染し,運動性著しく弱まIP且 つ鞭毛は減少するか若しくは消失する。 2。 耐性株は糖分解試験に於てソルビットを分解 せす且つグリセリンの分解が遅れる。 3.蓋耐性株は抗体吸収試験によりH抗原が減少し ていると思われ,る。 4.耐性株は発育が悪く,Iag phaseが延長し, stationary phaseに於ける発育も原株の約65 % である。集落は一般に小さく透明である。 又耐性株はCM入培地でも普通培地より発育悪 く依存菌になP難いと思われる。 5.耐性株のマウスに対する毒性は原株より弱 V)0 6. 耐性株のマウ.スに対する二免疫原性は1回免疫 では原株よIP劣るが高度に免疫すれば原株と同程 度に高くなる様に思われる0 7. 507耐性菌の復帰は普通寒天斜面に継代した 揚合理20代で始まり,55代でも省原株感性の2倍 を有している。単個集落に就ての復帰は集落間に 相当な差が認められる。マウスの体内通過による 復帰は約20代で始』まったがそれは試験管内に於け る復帰との間に差を認められない。 8. 復帰株は鞭毛を再現し活露な運動を行い,生 物学的性状も原口と同様となった。 終りに臨み,終始御懇篤な御指導と御校閲を賜わり ました平野教授,並びに種々御助力を賜わりました中 西助教授に衷心より感謝致します。 〈1) (2) C3) C4) (5) {6) 文 献 R. M. Smjth:J. Bact. 55, 425. (1949) 寺田,設楽:東京医事新誌68,3,7.(昭26) 申塚,荒谷1ペニシリンと抗生物質皿∼13,834. 設楽:’恆蜴G誌66,3,63.(昭27) 宮’li :慈大渠筐誌66,3.18. (日当27) 鵜飼:慈大雑誌66,3.96.(昭27) 一一 176 一一