(東京女医大回第26巻第9号頁441−444 巨召禾031年9月)
動物組織における焦性ブドウ酸の脱炭酸ご
酸化の機構について
東京女子医科大学生化学教室(主任松村義寛教授)助教授
細
ホソ谷
や憲
ノリ政
マサ(受付 昭和31年8月20日)
焦性ブドウ酸(ピフレビン酸)CH3。CO e COOHは 糖質代謝の中間に生ずる重要な物質である。無酸素状 一こおいて筋肉を収縮させるような場合,云い換える と動物組織によって酸素を消費しないで糖の分解現象 が起る場合には解糖(glycolysis)の結果生ずる焦性 ブドウ酸は乳酸となる。酸素が存在し,酸化現象が見 られる場合には,焦性ブドウ酸はクエン酸回路(又は Tricarbox亨lic Acid Cycle略してTCA−cycle)には いって炭酸ガスと水とに迄完全酸化されてしまう。ビ ール酵母にみられる糖の醗酵現象では,焦性ブドウ酸 から脱炭酸してアセトアルデヒドを生じ,更に還元さ れてエチルアルコールになる。また細菌においては焦 性ブドウ酸から酢酸,オキザ・酢酸,ギ酸,アセトイ ン等が生ずることが観察されている。筆者は歴史的経 過を略述すると共にここ数年聞(CoAの発見以後)急 速に進歩した焦性ブドウ酸の代謝過程及び機構を筆者 の得た鄭見を併せて記述したい。 アセトアルデヒドの生成(carboxylaseの作用) 焦性ブドウ酸が生体によって代i謝されることを始め て観察したのはNeuberg, K:arczag(1911)である。 焦性ブドウ酸がビール酵母により脱炭酸されてアセト ァフレデヒドを生ずる。この反応を触媒する酵素をピー 7レ酵母中に見出して,Carboxylaseと名づけた。 CH3.CO e COOH一一>CH3 e CHO十COL,Anhargen (,1932)はビール酵母をアルカリ性燐酸塩 で洗うとCarboxylase作用が消失し,あとに酵素の 蛋白部分のみが残り,源條によって失われるものは, Mg++と鮒熱性有機化合物であることを確め,このも のを翻えると酵素活性が復活することを観察した。そ してこの耐熱性の有機化合物をCocarboxylaseと名 づけた。Simola(1932)はこのものにビタミンB]作用 のあることを見出したが,Lohmann, Schuster(1937) 2)は結晶状に取り出し,ビタミンBlのピ・燐酸エス テル(Thiamine・pyrophosphate TPPと略す)であ ることを明らかにした。
N=C−NHo H
・・焉E畷:ユ。_。瓢覧.
N−CH 1 [i II
CH, O O
この仕事は水溶性ビタミンがBaseとなり,これに 燐酸がNucleotlde様}こエステt)レ結合して,酵素の助 酵素になるという現在の酵素化学の先駆となった。 酵母Carboxylaseの精製はGreenら(1941)5), Kubowitzら(1941)4)によって行われた。ピー7レ酵母 から純粋の状態にとり出され,0.46%のTPPと0,13 %のMg++を含む蛋白質で,分子量約7S, eoo, Aag H−19原子がTPP19分子と蛋白質部分との結合を媒介
している複合蛋白質であると考えられた。 しかし焦性ブドウ酸を脱炭酸してアセトアルデヒド を生ずるCarboxylaseは酵母に証明され,きらに植 物界にも証朋されたが,動物組織には証朋されていな い。 ケトールの生成(Carbo!igaseの作用)Greenら(1942)はCarboxylaseが動物界に見ら
れないことから,動物体ではこのような反応はあって も脱炭酸された結=果はアセトアルデヒドが生ずるので はなく,別のものが生ず.るのであろうと考えた。焦性 ブドウ酸が無酸素的反応で脱炭酸がおこるときは,ケNorimasa HOSOYA (Dept. of Biochemistry, Tokyo Women’s Med. Coll.) : Mechanism of Decarbox− ylation and Oxidation of Pyruvic Acid in Anirnal tissues.
トドル(アセトイン)CH3。CO・CHOH・CH3
を生ずることを確めた。しかし,この反応は以前から 酵母や細菌では見られていた。 最初にこの反応を記載したのはNeuberg(1921) で,酵母により焦性ブドウ酸とベンズアルデヒドとか らphenyl−acetylcarbino1の生成を証明し,この反応 は焦性ブドウ酸にcarboxylaseが作用して発生機の アセトアルデヒドを生じ,これがベンズアルデヒドと 縮合するものと考え,この後者の反応を触媒する酵素 をcarboligaseと名ずけ, carboxylaseとは異なるも のと考えた。CH3・CO・COOH→〔CH3・CHO〕十CO2
(CH3’CHO)十C6Hr,“CHO.CH3.CO.COCH.C6H.r しかし,この種の反応はベンズアルデヒドに限ら ず,一般のアルデヒドともケトールを生ずる,焦性ブ ドウ酸とアセトアフレデヒドとからアセトインを生ずる のみでなく,2分子の焦性ブドウ酸からもアセトイン を生成する。cH3.co.cooH十cH3.cHo−cH3.coecHoH.cH3
十CO2 2.CH3・CO・COOH→CH3・CO。CHOH。CH3十2 CO2 Dirscherl(1930)はCarbojigaseの存在を否定し た。そしてCarboligaseなる特殊酵素が存在するか. 否かは多くの研究者によって論争されて来たが,今日 では一般に焦性ブドウ酸からケトールの生成を触媒す る酵素をCarboligaseと考えている。 Green ら (1942)5)は動物組織にはCarboxylaseは なくCarboligaseの存在することを確めたのである。 しかし,この酵素もCarbOXylaseと同じ様に助酵i素 としてTPPを必要とし,またMg++をも必要とする ことを立証した5)6)。 酢酸の生成(酸化的脱炭酸) 実際動物体内では酸素が存在して酸化される場合に は焦性ブドウ酸は炭酸ガスと水とになってしまう。こ の意味で焦性ブドウ酸の酸化現象が観察され,この時 にはまず酢酸が生ずるであろうと考えられていた。 Barron, Miller(1932)7)は淋菌浮游液につき,焦性ブ ドウ酸が酸化されるときに,メチレン青(M,B.)が還 元されて・イコメチレン青(L.M。B。)になることを 観察し,この反応を触媒する酵素を焦性ブドウ酸脱水 酸素Pyruvic dehydrogenaseと呼んだ。CH3.CO.COOH十>60,一CH,.COOH十CO,,
CHB.CO.COOHx /MB
lCH3.COOH /i X>,LMB
CO2 Krebs, Johnson(1937)8ノは動物組織においても焦 性ブドウ酸の酸化的脱炭酸によって酢酸と炭酸ガスと の生成することを認め,このとき好気的条件下では酸 素が,嫌気的条件下では焦性ブドウ酸そのものが水素 の受容体になると述べたQCH3.CO.COOH十r260,一CH3.COOH十CO2
2cH30co.cooH十H20一.cH3eCOoH十CO2
十cH,.cHoH.cooH
しかしこの酵素がCocarboxy工aseを必要とする B1酵素であるかどうかは分らなかった。 こうした時にLipmann(1941)9は…ダや人である ために祖国ドイツを追われ,オランダ・フランスを転 々として米国に落付くまで,様に実験も出来なかった が,今迄の生化学の業績をよく勉強して考えた。そし て生物体内の化学変化には熱力学の第一法則しか適用 出来なかったのを,ATP*を中心とした高=ネフレギ ー燐酸結合の存在を提唱し,熱力学の第二法則も生物 体中で成立することを説明し,生体内の化学変化を熱 力学的に解明出来ることを立証した。このことは生化 学という学問の様相をも変え,現在生化学の急速な進 歩の最大な要因となった。この説明にLipmannは焦 性ブドウ酸の酸化と高エネルギー性燐酸結合との関係 を上げているQ彼はLactobacillus delbrttckiiにおい て,Mg++, Mn++, Co++,燐酸, TPP, FAD** (Flavin−adenine−dinucleotide)の存在のもとに次の 様な反応がおこると考えた。 この反応では水素受容体はFADであり,生じた還 元型FADは好気的条件下では酸素により,嫌気的条 件下では焦性ブドウ酸によって再酸化される。またメ チレン青(M.B.)は酸素にかわって水素受容体となり * ATP=Adenosine triphosphate Adenine−ribose一一(Drv(DtvO 匹有磯塩基)(五単三l adenosineIuh,i
adenosine−mono−phosphate =AMPiwh l
adenosine−di−phosphate=ADP ** FAD==Flavine−Adenine−Dinucleotide Flavine−ribitol−G−e−ribose−Adeninel一一.一1
Ribofiavine ビタミンB2 adenosine−tri−phosphate=ATP ⑪二燐酸 ∼㊥;高エネルギー燐酸結合 一 442 一CH,, CH3
醗 1言;胆1即
CH, /\還元型FAD
ll:)(器品
6〈/g. 得るし,過酸化;水素が酸化に利用され得る。とくに重 要なことは中聞に高エネルギー燐酸結合であるアセチ ル燐酸を生じ,ATPの生成されることを証朋したこ とである。Lipmannはこの様な反応機構をPhosph− oclasticな反応と呼び, Escherichia coliやClostri. dium butylicum中にも同様な酵素系のあることを報 告した。しかし動物組織ではアセチル燐酸の生成は全 く見られない。 またこのようなPhosphoclasticな反応は細菌にお いても常に認められるものではない。Stumpf(1945) 10,はProteus vulgarisの焦性ブドウ酸酸化に際して 無機燐酸の存在も必要とせず,中立産物としてもアセ チノレ燐酸の生じないことを認めている。 動物組織についてはGreenら〔1947)11)がノ・トの胸 筋の焦性ブドウ酸を酸化する酵ii饗が,無機燐酸, FA D,ATP, Cytochrom C*等の存在がなくても, TPPの存在において焦性ブドウ酸を活性化し,分子 状の酸素,フェリシアン塩,メチレソ青と反応して酢 酸を生ずるとi報告した。さらにGreenら(1948)12)は TCA・cycleの酵素系の研究において,上述の酵素と同 じものがウサギの腎,肝,心,脳,筋に存在すること を報告し,TCA・cycleの酵素系の存在は焦性ブドウ 酸を完全に炭酸ガスと水とにまで酸化することを:立証 し,焦性ブドウ酸の酸化する酵素を焦性ブドウ酸酸化 酵素Pyruvic oxidaseと名付けた。 CH3・CO・COOH十H20 十2 Fe+++一cyanide→ CH3。COOH十CO2十2 Fe’++一cyanide十2H+ Jagannathan,Schweet(1952)!5)はハトの胸筋から この酵素を精製している。 活性酢酸(アセチノレ・Coenzyme A)の生成 焦性ブドウ酸の酸化において酢酸のみを生ずるので はおかしい。なぜならばTCA・cyc]eの存在において 先づ第一に出来るものはクェン酸であり,このものは 炭素数が6ケである。 TCA・cycleの最:後のものであ るオキザ・酢酸は炭素数が4ケである。オキザ・酢酸 と焦性ブドウ酸とからクエン酸が出来るならば,焦性 ブドウ酸は脱炭酸されるのだから炭素数が2ケのもの となり,このものがオキザ・酢酸と縮合してクエン酸 を作るのであろうと考えた。しかしこの炭素数2ケの ものがいかなる型のものか全く解らなかったので,C2 化合物,あるいは活性酢酸と呼んでいた。 Liprnann(1945)!4・によってこのものがパントテン 酸の誘導休であることが分り,彼はこのものをパント テン酸の誘導体である助酵素A(Coenzyme A,酪し てCoA)**に酢酸が高エネルギー結合の状態に結合 したアセチル。助酵素Aであると提唱した。このアセ チルーCQAが実際パン酵母細胞からLynenら(195/) 16♪により取り出されるに及び,この劃期的な仕事は第 二次大戦に惨敗した敗戦国ドイツの化学の意気を示す と共に,焦性ブドウ酸酸化の代謝過程の研究.1こ急速な 進展をもたらした。Ochoaら(195!)17)はEscherichia coliの焦性ブドウ酸酸化系につき, Green門下のLi− ttlefie]d, Sanadi(1952)18はハトの胸筋の精製焦性ブ ドウ酸酸化酵素について,筆者ら(1954)19・20)は犬心 筋の焦性ブドウ酸酸化酵素について研究した。 焦性ブドウ酸はTPPとMg÷+との関与によりこの 酸素の作用を受けて脱炭酸し,CoAの存在においてD PN***を水素受容体として酸化きれてアセチルーCoA を生ずる。CoAは一SH基を持っており,アセチル基 はこの一SH基と高エネルギー結合をしている16L。焦 性ブドウ酸からアセチルCoAを生ずるまでの反応を 触媒している酵素が単一のものであるかどうかは疑わ しい。むしろ酵素系と老える方が妥当であろう。TPP,Mg”
CH.gtcO.cOOH十CoA十DPN一一一一Y
(CoA−SH)CHaeCOtvS−CoA十DPNHL,十2e
出来たアセチルーCoAはオキザロ酢酸と縮合してク エン酸を生じ,TCA−cycleに入って酸化され,また 生体内にて脂酸,コレステリンが,合成される場合に *鉄ポルフィリγ蛋白体で,酸化現象において電子の伝達に重要な役割をしている。 **助酵素A,Coenzyme A:Ochoaら(1954)15)によって構造式が明らかにされた。 Adenine−ribose−Ot..一([E)一pantothenic一 ( B−mercapto−ethanol−aT.nine)1 acid
② パントテン酸*** DPN==Diphospho pyridine nucleotide. nicotinlc amide−rlbose一(1i)一〇t.一ribose−adenine.
はアセチルーCoA・が出発点とな.り,また『リンにアセ チル基を転移してアセチフレコリンを作り,また薬物を アセチル化して解毒作用を行う重要な物質である。 焦性ブドウ酸酸化の代謝過程 焦性ブドウ酸からアセチルーCoAを生成する反応は 焦性ブドウ酸酸化酵素によって行われる。この場合脱 炭酸にはMg++あるいはMn++とTPPが必要である。 山村らはCarboligaseとpyruvic oxidaseとは別の 酵素であると云うが,筆者ら1920)や,Green一派18)の 研究ではpyruvic oxHaseの申にCarboligaseよう の作用がみられる。すなわち嫌気条件で,電子受容.体 を添加しない場合,焦性ブドウ酸から脱炭酸してアセ トインを生ずる。筆者らによれば19)20)この反応は重 曹緩衝難中では非常に弱く,燐酸緩衝液中では酵素も 保護され,アセトインを生成するがアセトアルデヒド を添加すると数倍に増量する。しかし,アセトアルデ ヒドのみからはアセトインが出来ない。 電子受容休としてKuFe(CN)6, D P N,メチレン 青を添加すると酸化的に脱炭酸がみられ酢酸を生成す る。この場合は燐酸緩衝液を用いる場合よりも重曹, 炭酸緩衝液を用L.}る場合の方がよい。 故に焦性ブドウ酸は動物組織では脱炭酸されて, まつアフレデヒドー酵素一複合体(aldehyde−enzyme− comp王ex)を生成するものと考えられ,電子受容体あ るいは水素受容体が存在すれば,酸化が起って酢酸を 生じ,存在しないときには遊離のアセトアフレデヒドと 縮.合してアセトインを生成するものと思われる』
CoAが存在し,電子受容体としてDPNを用いる場
合,焦性ブドウ酸からの炭酸発生と,アセチルーCoA の生成量を観察した。アセチフレニCoAはオキザ・酢酸 を添加し,縮合酵素によってクエン酸を生成し,その クエン酸を測定した2ユ。反応系にCoAを添加し.て一 定旧聞反応させた後でDPNを添加したもは,その逆 に添加した場合よ.りもクエン酸の生成量が多い。故に 焦性ブドウ酸から脱炭酸して出来るアルデヒド酵素複 合体はCoAが存在するとア7レデヒド基が転移してAc− etyj−CoA hydrideの型になり., D P Nの存在のもと に酸化されてアセチルーCoAになるものと考えられる。 iTPP Mg” ’・H、・・…H曲・・H。←一一・H、・・H・一一→/・HバC−S−C・A)
アセ・トイン C.Ha. 。CO・COOH(焦性ブドウ酸)CHO.CH3
燐酸
k 〕HS執§H〕
(灘ア7,レデヒド)ォR,翫㍑MB●.↓・・N
CHg. .CO−S−CoACH3・COOH(酢酸)
/ (アセチフレーCoA)cooH一一co−cH,rcoofl oH gt
( ザ撃CO冊1設論OH
l. ・ (クエ卵
/ x
CO2 02
(TCA−cycle) 最近焦性ブドウ酸からアセチ7レーCoAの生成過程に ついて電子転移体としてlipoic acidとTPPとの結 合したものが問題になっているが,このものは大腸菌 の様な細菌においてみられ,動物体中では問題になら ないし,反応過程も複雑であるので省略する*。 ビタミンB1の活性基について 一体活性アルデヒド,アルデヒド酵素複合体(alde− hyde−enzyme complex)とはいかなるものであろう か,CoAが未発見の時に,アセチルーCoAを’!activeacetate「/または「!acetate enzyme complex’iと云って
いたように,この複合体をaldehyde−cocarboxy]ase (TPP)cOmplexと考えたい。何故ならば,焦性ブ ドウ酸の脱炭酸に必要な,ビタミンの誘導体である
nucleotideようのものはTPPのみであるからであ
る。それならばTPPのどこ. ニ結合して複合体を作る のだろうか。 三井(1946)22.は,かつて大豆のCatboxyJaseが焦 性ブドウ酸,TPPとMg++を中心として不安定な錯 .化合物を作って作用すると考えられたが,焦性ブドウ 酸酸化酵素の活性基もやはりTPPに求めで考えなけ ればならぬ。 ビタミンB1の同族体について生理作用と化学播造 との関係をしらべ℃みると,ピリミジン部の4t位に 一NH2が存在すること(一〇Hがついているとanti− vitamin作用を示す)。 * :文献1を参照されたい。 一 444 一N二こC−NH2 H
・Hガ
P:ili÷一CH叩く繧.CH、.。H,。H
N!工CH
ビタミンB1 1CH,
H OH
N==C−NH2 ×/
・Hボ
撃戟雌?FユCH,.CH,。H
N−CH I
CH.? Pseudobase型・恥
二Nぐ隔ゴ。 H
N−CH l
CH2
Thiol型 チアゾドル部の2位1( 一H,5位にβ一オキシニチル 基が存在すること,e” 1)ミジン部とチアゾール部とが メテソ橋で結合していることが必’要である。 水原(1951)25)はチアゾー一 7レの3位のNがPseudo− baseを形成し,活性アルデヒド生成の活性基となっ ていると考えている。一方松川ら(1953)24)はチアゥ ール核が容易に開環するζと「から,開環によって生ず るThio1型の一SHに活性基を求めている。 筆者ら20)25)はまつ阻害剤によって検べてみた。犬 心筋の焦性ブドウ酸酸化の反応系に阻害剤を加えてみ たが阻.害翻の影響はみられない。酵素蛋白に一SH阻 害剤を作用させた後に,反応系を組立ててみると阻害 効果がみられるので,酵素蛋白.部分では一SH基が複 合体を作るのに必要なものであろう。TPPを氷冷しながら一時pH10にして,チアゾー
7レを開環させ, モノ沃度酢酸, P−chloromercuribenz− oate(p−CMB)を結合させたのち,中性にもどし,助 酵素として作用をしらべると,犬心筋の焦性ブドウ酸 の酸化的脱炭酸活性の低下をみた。故に松川らの云う ようにチアゾール核の一SH基も活性である。またT PPをライネッケ塩と共に作用させて,焦性ブドウ酸 酸化系に,助酵素として加えてみてもやはり活性度は. 低下するので,水原の云うようにPseudobaseも活性 基であると思う。またOxythiamine pyrophosphate も助酵素としては作用がないので,ピリミジン部の 一NH2も活性基であると思う。 また筆者5)はTPPわよびBエに一SH阻害剤であるp−CMBを結合させたものをchromatographycally
に取り出し,このものについて,TPP作用のないこ と,また水原の行った実験条件でB、作用のないこと をも一覧)ナこ25)o結局のところTPP,ビタミンBJの活性基として
はピリミジンにつく一NH2,チアゾールの開環によっ て出来る一SH, Pseudo baseの≡…点であろう。 筆者の考えでは26,,ビタミンBlのチプゾール部5 位のβLオキシエチル基に・燐酸がピ・燐酸の型に列び, Mg++を介して酵素蛋白の一SH基と結合して酵素を 形成する。三点の活性基は互に共q嘱し合っており,基 質が存在すると容易に三点で結合し,不安定な錯化合 物を作って作用するものと思う。だから反応系に阻害 剤を入れても,活性度の低下は見られない。 この活性基の問題の解決,さらに活性プルデヒドが 酸化されて’活性酢酸すなわちアセチルーCoAへの生成 過程の詳細な機構の解明は今後の研究の焦点である。 最後に本題に関する研究に対し,御指導,御援助下 さった東京大学医学部生化学教窒島薗順雄教授に対 し,深甚なる感謝の意を蓑し.ます。また研究に協力下 さった共同研究者の倉富一興,青島雄吾,真野嘉長, 掘江滋夫,田原芳馬,石川晋次君らに厚く感謝致しま す。 文 献 1)島薗順雄,細谷憲政;生体の科学,6,254∼262 (1955)2) Lohinann, K. u Schuster, Pk.:Biochem. Z., 294, 188 (1937)
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