• 検索結果がありません。

M蛋白を有するが骨病変を伴わないCrow-Fukase症候群の1例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "M蛋白を有するが骨病変を伴わないCrow-Fukase症候群の1例"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

臨床報告

〔書編揖35鐸護調錦

M蛋白を有するが骨病変を伴わない

Crow−Fukase症候群の1例

東京女子医科大学 ナカムラ テツオ オクダ

中村 哲夫・奥田

消化器内科(主任:小幡 裕教授) ヒロァキ サイトウ アキコ オバタ ヒロシ

博明・斉藤 明子・小幡 裕

(受付 平成元年6月30日)

ACase of Crow・Fukase Syndrome with M・protein and without Bone Lesion Tetsuo NAKAMURA, Hiroaki OKUDA, Akiko SAITO and Hiroslli OBATA Division of Internal Medicine, Department of Gastroenterology,

Tokyo Women’s Medical College

We describe a patient(41−year−old woman)with edema, ascites, polyneuropathy, general lymphadenopathy, hyperpigmentation, hepatosplenomegaly, endocrinopathy and M−protein. Radiographic skeletal survey revealed no bone lesion. During the treatment with prednisolone and cyclophosphamide, disappearance of ascites, shrinkage of lymphnodes and improvement of

polyneuropathy were observed. Isotopic lymphography indicated that the edema of the lower limb was

not lymphedema but venous edema. The M−component was IgA(λ), but monoclonal proliferation of

plasma cells was not found either in lymph nodes or in bone marrow.

緒 言 Crow−Fukase症候群は,形質細胞増加,γ一 globulin異常を伴い,多発神経炎,皮膚病変,浮腫, 内分泌異常,肝脾腫,リンパ節腫脹,等の全身症 状を有する症候群1)で,1956年,Crowの報告2)以 来,国内で約!00例,国外で約170例の報告がある. 我々は,cyclophosphamide, prednisoloneによる 化学療法が,神経病変を含めて著効した,M一蛋白 を有するが,骨病変を伴わないCrow−Fukase症 候群の稀な1例を経験した.我々は,本症例にみ られた乳頭浮腫,腹水,下腿浮腫が,plasma cell dyscrasiaと関連した血管透過性促進物質と関連 していると思われる若干の知見を得,またリンパ 節内血管増生の病態解明の目的で,angiogeninの 測定を行ったので報告する. 症 例 患者:41歳,女性,主婦, 主訴:歩行障害,倦怠感,食欲不振. 家族歴:父;腎不全,母;肝機能障害. 既往歴:39歳時,脱肛の手術(輸血なし). 現病歴:昭和61年2月,腋窩リンパ節腫脹,下 腿浮腫,腹部膨満感が出現した.同年6月上記症 状が増悪したため,溢出に入院した.腹部超音波, CT検査にて,腹水,肝脾腫を認めた.利尿剤投与 にて下腿浮腫,腹水は,軽度改善したが,原因不 明であった.入院中より倦怠感,食欲不振が出現 し,婦人科疾患の精査目的にて同年7月他院へ転 院した.婦人科的には異常なく,下肢異常知覚が 出現し,歩行不能となり,腹水増加が認められ同 年8月当科へ紹介入院となる. 入院時現症:体格中等度.全身皮膚に軽度の色 素沈着,剛毛.両側脛骨前面,足背に浮腫.両側 腋窩,嵐径部に数mm∼1cm大で表面平滑,圧痛 のないリンパ節を多数触知.肝,脾3横指触知. 腹水(+),乳頭浮腫(+),下肢遠位伸筋群の筋 力低下,軽度萎縮.両側上下肢深部反射消失.両 一1354一

(2)

表1 検査成績 尿 糖 蛋白 沈渣 ’ 末血像 白血球 赤血球 Hb Ht 血小板 網状赤血球 骨髄像 有核細胞数 形質細胞 髄 液 圧 細胞数 蛋白 糖 IgG index 比重 腹 水 リパルタ’ 蛋白 細胞診 血清・生化学 T・Bil GOT GPT LDH ALP BUN Cr UA (一) (一) 赤血球 2−4 6300/cmm 441×104/cmm 12.2g/dl 36.6% 40×104/cmm 14%。 16.7×104/cmm 8.4% 190rnmH20 9/3 210mg/dl 68mg/dl O.52 1.026 (一) 4.89/dl class I 0.6mg/dl

5KU

2KU

gl mU/m1 9.9KAU 21.4mg/d1 1,1mg/d1 9.7mg/dl Ca P CRP ESR TP A/G Alb Globα1 α2 β γ IgG IgA IgM 腎機能 24hr Ccr PSP:(15分) (1時間) レノグラム: 内分泌系

T3

T4

TSH

神経伝達速度 9.5mg/d1 5.8mg/dl (一) 10/21mm 6.7g/d1 1,63 62% 3.8 10,5 14,2 9.5 997mg/d1 584mg/dl 316mg〆d1 32.8m1/min 15% (30分) 25% 38% (2時間) 61% 両腎,軽度機能相の平低化. 末梢運動 左.尺骨神経 23,9m/sec 左.腓骨神経 測定不能 左.腓腹神経 一 右.腓骨神経 測定不能 右.腓腹神経 一 筋電図 前山骨筋 神経原性変化 大腿四頭筋: 〃 免疫電気泳動(血清): 36ng/d1 4.2μg/d1 8.4μU/ml 末梢知覚 32.5m/sec 33.5m/sec 32.8m/sec IgA(λ) 下肢L5S1領域の全知覚低下. 入院時検査(表1):末血において血小板軽度増 加.骨髄像では形質細胞の増加,2核,核小体を 持った形質細胞がみられた(写真1).生化学検査 ではBUN, UA, Pの軽度上昇, IgA高値を認め

た.腎機能検査では,24hr Ccr低値, PSP排泄障 害がみられた.血清免疫電気泳動では,M蛋白と して,IgA(λ)が検出された.自己抗体は陰性.. 内分泌検査では甲状腺機能低下がみられた.髄液 検査では初圧の軽度上昇,蛋白細胞解離がみられ た.腹水は漏出液であった.神経伝達速度測定に て下肢運動神経優位の末梢神経障害,筋電図にて 大腿四頭筋,前脛骨筋の神経原性変化を認めた. リンパ節生雪像:HE染色(写真2)では,ろ胞 の過形成,胚中心に硝子様物質の沈着を伴う血管 内皮細胞増生,ろ胞間血管増生を認めた.抗λ抗 体染色(写真3)では,単クローン性の形質細胞 増殖はみられなかった.骨レ線像,骨シンチグラ ムでは異常はみられなかった.足趾間への9脇Tc一 レニウムコロイド皮下注入後のlymphoscinti− gramでは嵐径リンパ節描出良好で漏出はみられ なかった.また,angiogeninのbioassayを行った が陰性であった. 入院後経過:リンパ節腫大の増強,全身症状の

悪化を認め,prednisolone 40mg/day p.o.4日間,

(3)

歪 雪1 拳 浄 ダ聖 ・瓢 紳

つ學

写真1 骨髄像(H・E×200) 左:2核の形質細胞,右:核小体を有する形質細胞

雛撰

歌 藪

。灘搬、錨騰墜欝

写真2 厳径リンパ節,H−E染色像(×200) 硝子様物質が沈着する胚中心に向かい穿通する樹枝状 血管,およびろ胞間に細血管増生が見られる, 難 .騨 無蝦

慈灘

ぎ寧, 影き、

㌔義

嘱 騒鷲

8鍮

写真3 厳径リンパ節免疫染色像(抗λ抗体,×200) ろ胞間,ろ胞内に単クローン性の形質細胞の増加は 見られない. 写真4 縦隔CT像 上:化学療法前,下:化学療法後 化学療法後,縦隔リンパ節の著明な縮小がみられる. 与を行い全身症状の改善,浮腫,腹水の消失,表 在,腹部,縦隔リンパ節の縮小(写真4)を認め た.上記治療を原則として月1回継続中であるが, 一1356一

(4)

治療開始半年後に自力歩行可能となり,!年後の 神経伝達速度測定では知覚神経障害にも改善がみ られた.2年経過した現在も悪化はみられていな い. 考 察’ 本例は浮腫,腹水,皮膚色素沈着を伴う多発神 経炎を主徴とし,肝脾腫,全身リンパ節腫大を伴 い,髄液蛋白細胞解離,甲状腺機能低下,M蛋白 を認めCrow−Fukase症候群と診断した. M蛋白を有するが,骨病変を伴わないCrow− Fukase症候群の報告は,調べ得た限り国内33例, 国外2例の報告があるのみで稀な症例である3). 国外での報告が少ない原因としては,同一の疾患

をmulticentric angiofollicular lymph. node

hyperplasiaとして分類する傾向が強いことによ ると思われる4). Crow−Fukase症候群のリンパ節生検像に関し ては佐久間ら5)が詳細に検討し報告している.本 例の場合,リンパろ胞の増生が著明で胚中心に好 酸性の硝子様物質が沈着し,この胚中心に向かっ て樹枝状を呈する血管の穿通がみられ,ろ胞間に も細血管増生のみられる,Kellerらの分類6)にお けるhyaline−vascular typeであった. 本館では,M蛋白としてlgA(λ)が認められ たが,抗λ抗体染色ではリンパ節内に単クローン 性の形質細胞増殖はみられず,骨髄でも同様で あった.このことは単クローン性を示す形質細胞 増殖巣の検索という点で興味深い. 我々はCrow−Fukase症候群の腫瘍性格的側面

(plasma cell dyscrasia)に注目し,大腸癌,悪性

黒色腫等,腫瘍細胞より分泌されるangiogenin がリンパ節内血管増生を引き起こしている可能性 を考え,患者血清を限外浜過にて!0倍に濃縮した

液を用いJamesら7)の方法に従いbioassayを

行ったが陰性であった.しかしこのbioassayは, ニワトリ9日胚のchorio−allantoic membraneを 用いる原始的な方法であり,angiogeninのアミノ 酸配列8>が決定された現在より確実なassay法の 確立が望まれる. 中川ら9)は本症候群の発作性血圧変動とヘマト クリット値の相関より,浮腫の原因として血管透 過性を充進させる液性因子を想定し,中原ら10)は 血管透過性充進に対する,キニンー血液凝固系の 関与を示している.小川ら11)は高度のリンパ節腫 大によるリンパ流のうっ滞が浮腫の一成因となり 得る可能性を示している.我々はStewartら12)の

方法に従い99mTc−rhenium sulphide colloidを用

いlymphoscintigraphyを行ったところ,足趾間 に注入したcolloidは,30分後には高率に厳径リ ンパ節に取込まれ,下腿浮腫はlymphedernaでは なくvenous edemaであることが判明し,原因と してはリンパ節腫大によるリンパ流のうっ滞では なく,血管透過性充進を引き起こす液性因子の存 在が想定された. 本症候群の治療に関しては,放射線照射,副腎 皮質ホルモン,cyclophosphamide等の単独ある いは併用療法13)が試みられているが,効果が認め られるのは約1/4でその効果は一時的であること が多い.我々は,本例に対し,cyclophosphamide (1日目,4日目500mg i.v.), prednisolone(40mg/ day p, o.4日間)による化学療法を行い,利尿剤 でコントロール不能であった難治性腹水・浮腫の 消失,リンパ節の縮小,多発神経炎の改善を認め, 月1回,同治療を継続中であるが,発症後3年経 過した現在,症状の増悪はみられず社会復帰して おり,同治療法は,本症候群に効果が期待できる ものと思われる. 結 語

M蛋白を有するが骨病変を伴わないCrow−

Fukase症候群の稀な一例を報告した.末梢神経 障害を含めてcyclophosphamide, prednisolone による化学療法が著効した.下腿浮腫,腹水,乳 頭浮腫の原因として血管透過性促進物質の存在が 示唆された.リンパ節内血管増生の原因物質とし てangiogeninのbioassayを試みたが陰性であっ た. リンパ節の免疫染色をしていただき,御助言をいた だいた東京大山雪科学研究所,病理,森 茂郎先生に 深謝いたします. 本論文の要旨は,第371回日本内科学会関東地方色 において発表した.

(5)

文 献

1)Nakanishi T, Sobue I, Toyokura Y:The

Crow−Fukase syndrome:Astudy of 102 cases in Japan. Neurology 34:712−720,1984

2)Crow RS:Peripheral neuritis in myeloma・

tosis, Br Med J 2:802−804,.1956

3)中西孝雄:Crow−Fukase症候群..日内会誌 74:

1205−1209, 1985

4)Dennis DW, Bharat NN, Carl DE:

Multicentric angiofollicular lymph node hyper・

plasia. Hum Pathol 16:162−172,1985

5)佐久間秀夫,小島 瑞:多発神経炎と内分泌症状

を伴うplasma cell dyscrasiaの組織病理学的所

見特に,リンパ節病変について.厚生省末梢神

経の変性と再生過程に関する研究報告.187−195,

1982

6)Keller AR, Hochholzer L, Castleman B:

Hyaline・vascular and plasma・cell types of giant lymph node hyperplasia of the medias−

tinum and other locations. Cancer 29:670−682, 1972

7)James WF, Daniel JS, Roy RL:Isolation

and characterization of angiogenin, an an一

giogenic protein from human carcinoma cells.

Biochemistry 24:5480−5486,1985

8)Daniel JS, James WF, Roy RL;Amino acid sequence of human tumor derived angiogenin. Biochemistry 24:5486−5494,1985 9)中川正法,才川貞厚,井形昭弘:全身色素沈着, 浮腫などを伴った多発性神経炎における発作性症 状.神経内科 13:375−377,1980 10)中原啓一,法化図陽一,佐野雄二:Crow−Fukase 症候群,補体系および血液凝固系異常の検討。臨 床神経学 25:755−759,1985 11)小川道子,川又敏男,遠山育夫:高度の後腹膜リ ンパ節腫を伴ったCrow−Fukase syndromeの1 例.臨床神経学 25:716−719,1985

12)Stewart G, Judith IG, Croft DN:Isotope

lymphography, a new method of investigating the role of the lymphatics in chronic limb

oedema, Br J Surg 72:906−909, 1985

13)See A, Cerf M, Rigaud I):Treatment of an abdominal type of Castleman’s disease with

chemotherapy. Ann Gastroenterol Hepato1

参照

関連したドキュメント

11 Chhen SR, Landing BH, Isaacs H, King KK, Hanson V: Solitary plasmacytoma of the larynx and upper trachea associated with systemic lupus erythematosus... Extramedullary

4 Hopwood JJ, Elliott H: Detection of Morquio A Syndrome using radiolabelled substrates derived from keatan sulphate for the estimation of galactose 6- sulphate sulphatase.. 6 Doman

PHA-P; Phytohemagglutinin-P Con A;Concanavalin A PWM ;Pokeweed mitogen PPD ;purified protein derivative NWSM ;Nocardia water-soluble mitogen.. 免疫系 の中枢器 官であ

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

混合液について同様の凝固試験を行った.もし患者血

(注妬)精神分裂病の特有の経過型で、病勢憎悪、病勢推進と訳されている。つまり多くの場合、分裂病の経過は病が完全に治癒せずして、病状が悪化するため、この用語が用いられている。(参考『新版精神医

Wach 加群のモジュライを考えることでクリスタリン表現の局所普遍変形環を構 成し, 最後に一章の計算結果を用いて, 中間重みクリスタリン表現の局所普遍変形

に関して言 えば, は つのリー群の組 によって等質空間として表すこと はできないが, つのリー群の組 を用いればクリフォード・クラ イン形