192 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(35) コン ドウ チ サト近藤千里(昭和2
博士(医学) 乙丸1282号平成4年7月17日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
1)etection of coronary artery stenos韮s i蹴ch∬dren with Kawasaki disease. Usefulness of pharmacologic stress 201Tl myocardia豆tomography (川崎病による冠状動脈狭窄の検出.薬物負荷タリウム心筋断層法の有用性) (主査)教授 門間 和夫 (副査)教授 重田 郎子,澤口 彰子論 文 内 容 の 要 旨
目的 川崎病に続発する冠状動脈狭窄を非観血的に検出す る方法は,これまで確立されていなかった.本研究で はジピリダモール負荷を加えたタリウム心筋断層法の 冠狭窄検出の臨床的有用性を調べるために,小児にお ける正常値,安全性,冠狭窄の診断精度について検討 ’した. 対象と方法 まず,正常冠状動脈を有する23名(うち11名は9歳 以下(平均年齢6歳),12名は10歳以上(平均年齢14歳)) の検討から,小児におけるタリウム心筋シンチグラ フィの正常パターンを年齢別に求めた.ついで,これ らの正常値をもとに冠動脈に病変を有する川崎病患者 49名(冠動脈瘤のみ15名,狭窄合併34名)の心筋シン チグラフィ上の正常,異常を判定し,冠状動脈造影の 結果と比較した. 負荷の方法は,心電図,血圧の持続的監視下で,0.56 mg/kgのジピリダモールを4分間かけて静注し,症 状,心電図変化のない場合には更に0.14mg/kgを終了 1分後に追加し,計0.70mg/kgを投与した.開始9分 目に塩化タリウム2ないし3mCiを静注,さらにその 2分後に,ジピリダモールの効果を打ち消すためにア ミノフィリン3ないし5mg/kgをゆっくり静注した. 回転型ガンマカメラを用いて作製したタリウム像の 判定は視覚的方法のほかに,タリウムの空間的分布を 2次元的な分布像として表示するブルズァイ法を用い て定量的判定を行った. 結果 1.ジピリダモール負荷の安全性 ジピリダモール注入による血行動態上の変化は軽微 であった.胸痛または虚血性心電図変化は冠動脈狭窄 を有する患者の56%に認められたが,いずれもアミノ フィリン注入により速やかに消失した. 負荷検査にともなう重篤な合併症(不安定狭心症, 心筋梗塞,死亡)は認められなかった. 2.小児におけるタリウム心筋分布の正常パターン ブルズアイ表示法で検討した正常対象のタリウム分 布パターンは成人の所見と異なり年齢依存性が認めら れた.9歳以下の小児では左室前側壁が他の部位より もタリウムの取り込みが相対的に低く,10歳以上では 下後壁も取り込みが低下し成人に類似したパターンと なった. 3.冠動脈狭窄例のタリウム心筋断層法による検出 精度 冠狭窄検出の診断精度はタリウムの視覚的判定で 91%,定量的判定で88%であり,心電図の53%に比べ 有意に高かった.タリウムの視覚的判定,定量的判定 を比較すると,後者では前者に比べて鋭敏度は低下せ ずに特異度が改善し,その有用性が認められた. 考察と結論 本研究からジピリダモール負荷心筋シンチグラフィ は小児において安全に施行でき,「冠狭窄を高い精度で 一826一193 検出しうる方法であることが示された.本法は川崎病 患者の冠狭窄進行の経過観察に臨床的に応用しうると 考えられる.