152 （59） 氏名（生年月日） 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
スミ ヨシ テツ ヤ住吉徹哉（昭和22
医学博士 乙第873号昭和63年1月22日
学位規則第5条第2項該当（博士の学位論文提出者）
経皮的冠動脈形成術後の再狭窄検出における負荷心筋シンチグラムの意義 （主査）教授 広沢弘七郎 （副査）教授 重田 電子，教授 白坂 龍瞳論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年，経皮的冠動脈形成術（PTCA）は，器具の改 良と技術の進歩に伴い適応の対象が大幅に拡大され， また初期成功率も向上してきており，虚血性心疾患の 新しい治療法としてその有用性は一段と高まってい る．一方，本法成功後の追跡症例が増加するにつれ， 再狭窄の出現が予想以上に高頻度であることが判明 し，その適応や長期的な治療効果を論ずる上で最も重 要な問題の一つとなっている．本研究では，PTCA成 功例に対して経時的に負荷心筋シンチグラムを施行 し，再狭窄の非観血的な検出法として，その有用性を 検討するとともに，再狭窄の出現時期の調査から，最 も効率の良い検査時期を決定することを目的とした． 方法 対象はPTCA成功後，6ヵ月以上経過した後，また は狭心症状の再発のため冠動脈造影を再検した73例 （完全血行再建例45例，部分血行再建例28例）である． Thallium－201負荷心筋シンチグラムを原則として PTCA直前，直後，3ヵ月および6ヵ月後に施行し， 運動時の胸痛出現（CP），心電図のST変化（ST），心 筋イメージ上当該領域の再分布（RD）の有無を判定し た．運動負荷は自転車エルゴメータを用いた多段階負 荷を行い，RDはROI法により定量解析し10％以上の 再分布度をもって有意とした．造影上の再狭窄の定義 は，開大成功部位において再び75％以上の狭窄に進行 したものとした． 結果および考察 6ヵ月以上の観察期間を経過した例の再狭窄率は 29％であった．狭心症状の再発時期はPTCA施行後平 均2．4±1．9ヵ月の早期であり，3ヵ月以内が83％を占 めた．一方，負荷心筋シンチグラムでRD陽性例の77％ が3ヵ月目までに検出された．狭心症状が再発する前 に既にRDが陽性となっていた4例を含めて，再狭窄 の検出に対するRDの感度，特異度は各96％，88％で あり，CPの59％，85％およびSTの74％，82％に比べ て優れていた。また部分血行再建例で，RDの認められ る部位を考慮することにより他の冠動脈枝の残存狭窄 との鑑別が可能であったり（9例），複数枝のPTCAに 成功した例で再狭窄枝が同定できる（5例）など，特 に多枝病変例においてその有用性は明らかであった． 結論 PTCA後の再狭窄の検出に対して負荷心筋シンチ グラムは，感度，特異度共に優れており，再狭窄の出 現を部位の同定も含めて確実に診断する非観血的検査 法として極めて有用である．また臨床症状からみた再 狭窄の出現時期は3ヵ月以内の早期がほとんど占めて おり，スクリーニングとして検査を施行する時期は術 後3ヵ月目が最も効率が良い． 一816一153
論文審査の要旨
経皮的冠動脈形成術（PTCA）は，開胸手術を行うことなく冠狭窄を開くことがでぎるということ
で，急速に流行してきた治療法であるがその真相は未だ良く知られていない，本研究は核医学的方法を用いてこのPTCAの効果を時間軸を踏まえて論じたもので，臨床心臓病
学にとって価値ある論文である． 主論文公表誌 経皮的冠動脈形成術後の再狭窄検出における負荷心 筋シンチグラムの意義 東京女子医科大学雑誌 第57巻 第11号 1384～1392頁（昭和62年11月25日発行） 副論文公表誌1）Evaluation of clinical factors involved in onset of myocardial infarction（心筋梗塞発
症に関わる臨床的諸因子の検討） Jpn Circ J 50 （2） 164～】．73 （1986） 2）不安定狭心症と治療 臨床と研究 58（5）1532～1537（1981） 3）狭心症の病態分類と基礎冠病変 治療学 15（1）38～42（1985）
