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LINE における「依頼」の談話的特徴を記述・分析する(2)─トークの単位分類をめぐるノート― 利用統計を見る

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(1)

LINE における「依頼」の談話的特徴を記述・分析

する(2)─トークの単位分類をめぐるノート―

著者

三宅 和子

著者別名

MIYAKE Kazuko

雑誌名

文学論藻

94

ページ

122(19)-105(36)

発行年

2020-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00012173/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

LINEにおける「依頼」の

談話的特徴を記述・分析する( 2 )

─トークの単位分類をめぐるノート─

三 宅 和 子

1 .はじめに

 本研究は、2018年から継続的に行っているLINE( 1 )における「依頼」 談話の研究の一部を占めるものである。三宅(2019a、2019b)において、 LINEのトーク会話を一定の意味機能を担った発話単位に分けて「機能的 要素」とし、その上位概念として「コミュニケーション機能」、それを談 話全体の流れを把握するために「談話構造」としてまとめ分析した。し かし、紙幅の関係から分類の基準や分類された発話の実例などを詳しく 示して考察することができなかった。この分類は研究のベースとなる重 要な部分であり、分類の仕方が異なると結論も異なるため、今後の研究 の進展や参照のためには十分な議論と説明が欲しいところである。そこ で本稿では、「機能的要素」、「コミュニケーション機能」、「談話構造」に 分けて分類した意図を詳述し、各分類の具体的な実例を示して解説する。 これは三宅(2019b)で提示した簡潔な表(表 1 )の詳細な説明として も機能する。  本稿の構成はまず、モバイル・メディア上の依頼談話を分析する目的 を説明し、次に依頼談話の内容の分析方法を先行文献を参照しながら議 論する。最後に本研究のデータの取り扱い方に関する基本姿勢とデータ の分類表を提示する。

2 .モバイル・メディアの「依頼」談話を分析する目的

 「依頼」は、「自分の利益になることを相手の行為による行動によって 叶えられるように働きかける表現行為」(蒲谷他1993:53)と定義される。 「依頼」については、これまでも「勧誘」や「断り」などとともに、社会 二 二 二

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言語学や語用論、日本語教育などの分野において多く取り上げられ、ロー ルプレイや質問紙法、談話完成テストなどの方法を用いて研究・分析が 行われてきた。しかし、対面会話や電話会話での「依頼」の研究は蓄積 があるものの、電子メディアを介した「依頼」のコミュニケーションに ついては研究が進んでいない。日本では、2000年前後からモバイル・メ ディア利用が加速し、それから20年ほどの間に使用の主流がフュー チャーフォン( 2 )からスマートフォンへと移行し、現在ではシフトがほ ぼ完了している。その間、コミュニケーションや言語表現、語彙など様々 な側面で変化があったが、言語研究の立場からの論考はいまだに少ない。 現代のコミュニケーションが電子メディア、特にモバイル・メディアに 大きく依存することを考えると、この方面のコミュニケーションの研究 や言語変化を丁寧に辿る研究が充実することが期待される。  「依頼」の研究はある程度の蓄積があると先に述べたが、相互行為とし ての依頼談話(依頼場面における依頼者と被依頼者のやりとりの談話) を研究したものは実は多くはない。「依頼」の研究は1980年代から発話行 為論や語用論の研究(Blum-Kulka et al eds 1989など)に触発されて論 考が増えていったが、研究はもっぱら依頼する側や 「依頼」 された側の 発話行為の種類やストラテジーを扱うものであった。近年、談話展開や 談話構造を視野に入れた研究(井上編2014など)が行われるようになっ てきている。日本語母語話者と学習者の依頼談話を比較する研究(猪崎 2000、アクドーアン・大浜2008、柳2012、生天目他2012など)や、携帯 メール上の依頼を学習者と母語話者で比較したもの(阿部2014、渡邉2015 など)も出てきているが、本格的な研究はこれからといえよう。  そこで本研究では、LINEのトーク機能を使用した談話の特徴を様々な 角度から追究する目的で、「依頼」という談話行動を取り上げている。そ して、モバイル・メディアのコミュニケーションがどのような特徴をも ち、対面や電話などの「依頼」とどのように異なるかを解明すること、そ こから電子メディアを介するコミュニケーション分析一般に応用できる 観点を見出すこと、そしてこのようなコミュニケーションが言語使用や 対人関係のあり方にどのような影響を与えるかを探っている。 二 二 二

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3 .依頼談話のデータ

 本研究で2018年に収集したデータについて簡単に解説する。研究協力 者の学生25名が依頼者となり、LINEのトーク機能を使って、負担の軽重、 親疎差のある男女の相手 8 名ずつに「WEBアンケート調査に答える」と いう「依頼」のやりとりを行った。文言や展開については依頼者に任せ、 被依頼者にはやりとりそのものがデータとなることについては知らせて いないため、自然に近いデータとなる。依頼が承諾されるとURLが伝え られる。相手方がそこに行くと依頼のやりとり自体がデータになる旨が 説明され、改めて調査協力の可否が問われる。協力する場合はフェイス シートの基本情報(男女、年齢、LINE使用歴など)に答え調査終了とな る。今回は依頼を受けた全員が協力を表明した。  分析対象となった200件の依頼談話には2,487の機能的要素(後述)が 認められた。 1 つの依頼談話は最長で36、最短で 6 の機能的要素で構成 されていた。   データ収集時期:2018年 7 月~10月   データ内容:若者が取り交わした依頼トーク   データ量:200件のトークデータ        2,487件の機能的要素   調査者:25名(女16名、男 9 名)が 8 名の相手に依頼   参加者:200名(女128名、男72名)   調査者・参加者年齢:21~23歳男女   親疎関係:親しい友人(男女)vs. あまり親しくない友人(男女)    依頼内容:ゼミの活動で若者のLINE使用に関して簡単なWEBアン ケートをすることになったので協力してほしい(選択方 式で 2 ~ 3 分/自由記述式で10分)。

4 .LINEにおける「依頼」談話を分析する手順

4 - 1 .LINEのことば  LINEのトーク機能を使ってのやりとりは、その伝達の即時性や利便性 二 二 一

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などから、対面の会話のようだと受け取られがちである。「LINEで話し た」、「いつも(対面会話で)話しているように自然に話す」などと口に する若者も少なくない。しかし、メディア上のことばは、くだけていた り会話をしているようにみえたりしても、「話された」ことばではない。  昨今、メディア上のことばは「打ちことば」と称されることがある。文 化審議会国語分科会(2018:13)は、電子メールやSNS、チャットなど の媒体におけることばは「程度の差はあるが双方(書きことばと話しこ とば、筆者注)の性質を備え持つ」と説明し、それを「打ち言葉」( 3 ) している。しかし、「書きことば」、「話しことば」というとき、私たちは 何を想定しているのだろうか。「書きことば」、「話しことば」が何を指す かが明確でない限り、「打ちことば」の意味はさらに曖昧にならざるを得 ない( 4 )  「話しことば」とは「話された」ことばと同義だろうか。「話しことば」 という表現からは、しばしばおしゃべりやカジュアルな話し方が想起さ れる。しかし、ニュースや講演なども「話された」ことばである。「話し ことば」というとき、私たちは何を指しているか明確ではなかったりお 互いに異なることを指していたりすることがある。同様に、「書きこと ば」が「書かれた」ことばと同義であるとすれば、「書きことば」という 表現から想起される論文や新聞記事などのほかに、メモや走り書きなど も「書きことば」であるはずだが、私たちはその真意を確かめることな く文脈の中で理解(誤解)しながら話を進めることがある。  さらには、口語、文語という表現がある。前者をいわゆる「話しこと ば」、後者を「書きことば」と同義に使われることが多いようだが、学生 や教師の発言からは、現代語と古典語の区別として使われる場合もある ことを確認している。辞書類を紐解いても現代語と古典語の区別として の記述がある(例えば日本国語事典や広辞林)。「話しことば」、「書きこ とば」、「口語」、「文語」をどのような意味で使っているかについて、電 子メディア上のことばを扱う研究では特に、書き手も読み手も自覚的で ある必要がある。  本研究では今後、「話しことば」、「書きことば」と呼ぶことで生じる混 乱を回避するため、「書きことば」ではなく「文字言語」(文字を媒介す 二 二 一

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る言語)、「話しことば」ではなく「音声言語」(音声を媒介する言語)と 呼ぶことにする。「文字言語」とすれば、それがくだけた場面や表現であ ろうが、かしこまっていようが、文字を媒介したことば全般を指すこと ができ、「書きことば」という呼び方がまとっているイメージと「書かれ た」ことばとのズレを避けることができる。同様に、「音声言語」とすれ ば、それがおしゃべりであろうとニュースや講演であろうと、音声を媒 介したことば全般を指すことができる。電子メディア上の言語は、これ まで特定のイメージをもって使われてきた「書きことば」とも「話しこ とば」とも異なる側面があることが指摘されている(三宅2005、2011、田 中2010など)。本研究でLINE上の言語コミュニケーションの特徴を追究 することは、対面のやりとりとの異なりのみではなく、「文字言語」と 「音声言語」の使われ方との異なりをも明らかにすることにつながる。絵 文字やスタンプなどのヴィジュアルな表現を例にとれば、これまでの「文 字言語」の概念を超えたものであることや多用される意味についても考 える必要がある。 4 - 2 .LINEの依頼談話の単位  ここでは、今回得られたデータを分析するために、ひとつひとつのトー クをどのような単位に区切っていったかについて解説する。 LINEのトークは参加者の発言が吹き出しに現れる形で連続している。そ のため、視覚的には吹き出しごとに分けてひとつのターンとして分析す るのが最も簡単な方法である。しかし吹き出し内には「ええっ?」のよ うに非常に短い言語単位のものもあれば、文あるいは節と捉えられるよ うなものが複数含まれることもある。これらを同じ単位として扱うこと には問題があろう。  談話分析では、意味のあるまとまりを「発話」と呼ぶ。日本語の談話 分析では「文字言語」でいうところの文(句点で区切られた意味的ひと まとまり)ではなく、節の単位を発話のベースにする方法が適している 場合が多い。節は述語を中心としたまとまりであり、意味的にもある程 度完結した単位である(高梨他2004、丸山他2010)。節の単位で発話を分 けると、言いさしや体言止めなどだけでもひとつの発話として扱うこと 二 二 一

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ができる。  本研究では発話が意味的なひとつのまとまりをもつだけではなく、談 話を進行させる上で「一定の意味機能を担っている」ということに注目 して「機能的要素」と呼ぶ。熊谷・篠崎(2006)は、依頼のデータに現 れた回答を「相手に対する働きかけの機能を担う最小部分と考えられた 単位」に分類し「機能的要素」と呼んでいる。同研究ではさらに、「依頼 の言語行動においてどのような役割を担っているか」という観点から、 「機能的要素」をグループにまとめ「コミュニケーション機能」という上 位概念を設けている。本稿もこれに倣い、複数の「機能的要素」を「コ ミュニケーション機能」の中にまとめた。ひとつの吹き出しは、ひとつ の「機能的要素」で構成されることも、複数の「機能的要素」で構成さ れることもある。熊谷・篠崎(2006)論文では「コミュニケーション機 能」は 6 つに分かれているが、本研究では以下のように 8 つに分けられ た(詳しくは後述)。なお「機能的要素」は、Takahashi & Beebe(1987) などの研究でいう意味公式(semantic formula)とほぼ同義と考えてよ いだろう。 「A.きりだし」、「B.状況説明」、「C.効果的補強」、「D.行動の 促し(依頼)」、「E.行動予定」、「F.対人配慮」、「G.話題挿入」、 「H.その他」  本研究が研究対象とした「依頼」は、熊谷・篠崎(2006)の「依頼」 とは大きな異なりがあることに留意する必要がある。後者は1992~1996 年度と1994~1998年度に行われた 2 件の国立国語研究所の研究において 作成された調査データを対象としている。調査は面接とアンケートを用 いて行われているが、 3 種の異なる場面(荷物預け、往診、釣銭確認) において依頼者が被依頼者にどのように依頼するかを調査したものであ る。本研究との大きな違いは、依頼者側からのいわば一方通行の言語表 現を分析したものである点である。また、対面の談話場面を想定した意 識調査であり、実際の言語行動を観察したものではない点である。本研 究の場合は、依頼者と被依頼者の間に交わされた双方向のやりとりを分 二 二 一

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析するものである。また研究対象がモバイル・メディア上で交わされた 自然に近い談話(被依頼者はやりとりの間は調査とは知らされずに会話 をする)である。特に一方方向の談話と双方向で進められる談話を対象 とすることにおける違いは大きい。したがって本調査においては、談話 がどのような構造を担っているかを含めた独自の分析枠組みを考える必 要がある。 4 - 3 .依頼談話の談話構造  ザトラウスキー(1993)は 「勧誘」 の談話のやり取りを談話展開に注 目して分析した日本語の談話分析の早期の貴重な研究である。2000年以 降に現れてきた依頼談話の研究では、ザトラウスキー(1993)の談話構 造の分析方法を使って談話を分類していったものが多い。日中韓の電話 における依頼談話の展開パターンを考察した生天目他(2012)、日韓の依 頼談話の談話の構造とストラテジーの対照研究を行った柳(2012)、携帯 メールにおける勧誘と依頼の分析を行っている渡邉(2015)は、いずれ も研究の基本的な枠組みとしてザトラウスキー(1993)を参考にしてい る。  一方アクドーアン・大浜(2008)は、日本語とトルコ語の依頼行動の 比較を行っているが、Beebe, Takahashi & Uliss-Welts(1990) の意味公式 を利用して依頼者と被依頼者の行動を分析している。また「依頼」の主 要部のみの分析で、依頼談話の全体の展開については扱っていない。  井上編(2014)は方言談話の地域差と世代差に関する研究であるが、 ロールプレイによる方言談話を収集し、「依頼」や「勧誘」を含む談話の 分析を行っている。この研究では、篠崎・熊谷(2006)を参考に「依頼」 の機能的要素を分析しているが、談話構造と談話展開の分析に関しては ザトラウスキー(1993)を参考にしている。しかしこの研究報告の中で は、談話構造と機能的要素が別々に示されているため、相互にどのよう に関わっているかがみえにくい。  以上のように、依頼談話の研究は増えてきているものの、機能的要素 や意味公式のような発話の単位が談話の構造の中でどのように現れてい るかをみた研究や、どのような関係にあるかを明確に示した研究はほと 二 二 一

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んど見当たらない。そこで本研究では、機能的要素、コミュニケーショ ン機能が依頼談話の全体構造「開始部-主要部-収束部-終了部」の中 でどのように現れるかを関係づける分析が可能になる枠組みを探った。  談話には一定の構造があることはSchegloff(1968)、Schegloff & Sacks (1973)の古典的研究以来、日本語の分析においても基本的な考え方とし て定着している。「開始部-主要部-終結部/終了部」とすることが多い が、本研究では「開始部-主要部-収束部-終了部」と 4 分類した。収 束部は、主要部の依頼がいったん達成された(はっきりと結論が出た) 後に談話を収束に向かわせる部分をいい、終了部は談話の終了を示す部 分である。分類の詳細は以下の 5 に譲る。

5 .分類

5 - 1 .談話構造とコミュニケーション機能  まずは全体の談話構造として、開始部-主要部-収束部-終了部に分 け、各部の性質を考え、そこにどのようなコミュニケーション機能が入 るか考えた。コミュニケーション機能の具体的な要素である「機能的要 素」については 5 - 2 で解説する(表 1 参照)。 開始部:依頼の具体的な内容に入る前の談話部分。コミュニケーション 機能としては「きりだし」がここに入る。 主要部:依頼の具体的な内容や説明をめぐるやりとりの部分で、依頼が 成立するところまでとする(被依頼者の承諾を受けて依頼者が感謝する ところがひとつの区切り)。コミュニケーション機能としては「状況説 明」「効果的補強」「行動の促し(依頼)」が入る。 収束部:依頼が承諾された後、補足情報(Webの情報を送るとか、今後 の予定をいうなど)の部分は、収束に向かっての補足や調整の部分だと 考えて収束部とした。コミュニケーション機能としては「行動予定」が 入る。情報として不可欠とはいえないまでも付加的情報を含むため主要 部に入れることも考えられるが、今回のLINEの依頼では終了に向かって 進んでいる部分と捉えて、主要部とは別にたててある。 終了部:収束部の後で、談話が終わることを示す部分。すでに依頼は終 二 二 一

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わっており、依頼の具体的な内容や補足情報をいう場所でもない。終了 部に入るコミュニケーション機能は「対人配慮」である。しかし対人配 慮の機能は開始部、主要部、収束部、終了部のいずれにも入るため、表 ではまとめてFとしてある。  終了部は対面や電話の会話などには必須の部分だが、今回のデータは この部分がないものが大半である。ここにもLINEのトークの特徴が現れ ている。トークの談話は吹き出しで示されるが、時間の経過とは関係な く吹き出しはそのまま残るので、LINEでは切れ目なくつながっている感 覚がある。いわゆる「出会いの挨拶」が対面や電話会話のように行われ ないことも少なくなく、「別れの挨拶」も少ない(三宅2019b)。「収束部」 で終わっていることが多いのである。本研究で「収束部」の設定が必要 と判断したのはこのためである。  この他、表 1 には「その他」があり、ここには「その他」と「他の話 題の挿入」が含まれるが、詳細は 5 - 2 で説明する。 5 - 2 .コミュニケーション機能と機能的要素  次に各コミュニケーション機能にどのような機能的要素が含まれてい るかを解説する。 <開始部> A.きりだし 「依頼」の主要部の会話に入る前の、談話の口火を切るときの機能である。 挨拶、呼びかけ、注目喚起、現況確認、用件などのやりとりが含まれる。 用件には、「頼みがある」「お願いがあるんだけど」のような、用件が依 頼であることを示す前置き的な発話が含まれる。 <主要部> B.状況説明 「依頼」をする理由や説明となる「大学のゼミでアンケートを採るんだけ ど」などの背景の説明である。ほとんどのトークにはこれが含まれる。 二 二 一

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C.効果的補強 主要部では、「依頼」を相手に受け入れてもらうために様々なストラテ ジーが現れる。補償「名前を出さないから」や、ほめ、激励のように、依 頼を受けてもらいやすいように依頼者が補強することが多いが、被依頼 者が補償を要求したり依頼者の補償提案内容を評価したりすることなど も、効果的補強のやりとりの一部としてここに含まれる。 D.行動の促し いわゆる「依頼」の中心部分である。依頼と依頼受諾のやりとり以外に も、依頼者による依頼説明をすることの許可願いや、依頼が受諾された ときの反応なども含まれる。被依頼者による依頼内容の了解や条件付き の受諾など、「依頼」にまつわるやりとりがここに含まれる。 <収束部> E.行動予定 依頼受諾後には、依頼者が今後の予定を説明したり、被依頼者が予定の 説明を要求したり自分の予定を説明したりするなど、今後起こることに 関する打合せややりとりが行われる。 F.対人配慮 「おひさ~」や「突然ごめん!」などは開始部に現れ、「よろしく」や 「じゃあね」などは収束部や終了部に現れやすい。しかし感謝「ありがと う!!!」や「悪いね」は主要部などにもしばしば現れ、開始部にもみ られることがある。これら対人配慮として総括できるものは談話構造の どこに現れるとは特定できないコミュニケーション機能である。表 1 で も分かるように、機能的要素もきわめて多様なヴァラエティがある。ま たスタンプなどのヴィジュアル要素(後述)が単独で使用されることも 多々ある(三宅2019b)。 <その他> G.その他 談話構造のどことは特定できないところに現れた、フィラーやあいづち などの反応、非難などをここに集めた。数は多くなく雑多な集まりであ るため、今回は分析の対象としていない。 二 二 三

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H.他の話題挿入 「依頼」のトークが行われている間に他の話題が挿入されたり、「依頼」 の話題がある程度の収束をみているときに急に話題が切り替わったりす ることがある。これも数が少なく、談話構造に関連しないものであるた め、今回の分析には含めていない。 5 - 3 .ヴィジュアル要素の扱い  モバイル・メディアにおける視覚に訴える表現は「ヴィジュアル表現」 としてケータイメール時代からたびたび研究の俎上に上げてきた(例え ば三宅2004、2005など)。ヴィジュアル表現はSNSのコミュニケーション が主流になってきた近年においてますますその存在感を増している (Miyake 2020)。ケータイメール時代からどのようなコミュニケーショ ン上の変化が起こっているのか、LINEを特徴づける一大要素であるスタ ンプや、従来からある絵記号(絵文字・顔文字・記号)の変化などに注 目してみていく必要がある。  ここではヴィジュアル表現の分類についても、解説を加える。 スタンプ:文字付きと文字なしを区別した。文字付きスタンプの場合、機 能的要素番号の後に「Sw」を加え、文字なしスタンプの場合は機能的要 素番号の後に「S」加えた。例えば、「感謝」を示す文字が付いたスタン プは「f 1 _Sw」、文字なしスタンプの場合は「f 1 _S」となる。 絵記号:絵文字の場合はギリシャ文字のファイ(Φとφ)、顔文字の場合 はラムダ(Λとλ)、記号の場合はプシー(Ψとψ)で分類した。吹き出 し内で単独使用されるものと文字と共に使用されるものを区別し、単独 使用の場合は大文字、文字と共に使用される場合は小文字に分けて分類 した。絵記号はどのような機能的要素としての役割を担っているかが明 確に分からないものもあるので、文字と共に使用された場合は機能的要 素番号を付与せず、絵記号が付いていることを示す「+」を加えた。例 えば、「感謝」を示すと解釈できる絵記号の単独使用の場合は「f 1 _Φ」 「f 1 _Λ」、「f 1 _Ψ」とし、感謝を意味する文字と共に使用された場合は 「f 1 +φ」「f 1 +λ」、「f 1 +ψ」とした。 二 二 二

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  絵文字=<ファイ> Φ(単独使用)、φ(文字と一緒に使用)   顔文字=<ラムダ> Λ(単独使用)、λ(文字と一緒に使用)   記号=<プシー> Ψ(単独使用)、ψ(文字と一緒に使用) <具体例>    「ありがとう☀」=「f 1 +絵文字」=「f 1 +φ」、    「ありがとう(泣)」=「f 1 +顔文字」=「f 1 +λ」    「ありがとう☆」=「f 1 +記号」=「f 1 +ψ」   なお、絵文字・顔文字・記号が連続して記載されているときは、その 数だけ分類記号を表示することとした。   「おひさ~ ☀」 → 「a 1 +φφ」   「おひさ~笑笑w」→ 「a 1 +λλλ」   「おひさ~☆☆♪」→ 「a 1 +ψψψ」  記号として考えられうる「? ! ~」などは,携帯メールの時代から 使用されてほぼ定着しているため、今回は記号として数えないことにし た。 「笑」「(笑笑)」「w」「www」など、本来「かっこ文字」であったもの から派生したものは、扱いが難しいが、今回は数が多くないこともあり、 「(^^)」と同様に「顔文字(Λ、λ)」として扱っている。

5 .分類結果

 以上のような考え方を用いてデータを「談話構造」、「コミュニケーショ ン機能」、「機能的要素」に分類したものを以下表 1 に示す。 表 1 .LINEにおける依頼の談話構造・コミュニケーション機能・機能的 要素の分類表 談話構造 コミュニケーション機能 機能的要素 開始部 A.きりだし a 1  挨拶「おひさ~」「ひさしぶり~」「突然ですがお久 しぶりです!」「突然ですが!」 a 2 謝罪的挨拶「突然ごめん!」 二 二 二

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a 3  呼びかけ「(ねえ)もえちゃん~」 a 4  注目喚起「あのさ~」「ねえ~」 a 5 現況確認「何してんの」「いまだいじょうぶ?」 a 6 現況認識「楽しそ」 a 7 用件 「頼みがある」「お願いがあるんだけど」 「ちょっとお願いがありましてご連絡しました、、 %U+ 1 F 3 FB%」「まじちょい」 ar 1  挨拶応答「こんにちは」「おひさしぶり」 ar 2 呼びかけ・注目喚起への応答「は~い」「ほ~い」 「なんでしょう」 ar 3 現況報告「球技大会」「いま勝ってるよ」「水ジェ リーファンデ私の大量の汗で流れた。」「勝った。」 ar 4 用件への応答「どうしたの」「なぜ」「どんくらい」 主要部 B.状況説明 b 1  背景説明「いま大学のゼミで、若者を対象にした LINEのアンケートをやってるんだけど」 「前言ってた、ゼミでやるLINEアンケートのことなんだ けど」 C.効果的補強 c 1  補償「名前とか全部消してレポートだけに使うか ら」 c 2  ほめ「Xちゃんならできる」 c 3  激励「ほら、やる気出して」 c 4  種明かし「っていうのが・・・」 cr 1  補償要求「欲いうと名前っぽくいってもらいたい」 「セブンの杏仁豆腐でやってやろう」 cr 2  補償評価「意外と安いな」 cr 3  補償要求充足「ありがたや~」 D.行動の促し d 1  依頼説明許可願い「説明させてもらっていいかな …!」 d 2  依頼説明許可への感謝「[スタンプ](+Thank you ♪)」 d 3  依頼内容説明「webで回答する選択方式で、2 ~ 3 分以内で終わるやつなんだけど」 d 4  依頼「やってもらってもいいでしょうか…!」「ご 協力いただけますでしょうか」 d 5  依頼内容訂正「あっまちがえた!選択方式だった( ; ; )」 d 6  依頼受諾伺い「大丈夫?」「頼める?」 d 7  依頼受諾確認 「とりあえずオッケーってことでよ ろしいでしょうか…!」 d 8  依頼充足不安の解消:「ノイズにはならんので安心 してくださいw」 d 9  依頼内容への不安解消「大変ではないけど、一応依 頼だから...」 d10 依頼受諾への反応 「ほんと!?」「やったー」 dr 1  依頼説明許可「いいよ!」 dr 1 _Sw 依頼説明許可[文字付スタンプ] dr 1 _S 依頼説明許可[文字無スタンプ] dr 2  依頼への不安「データノイズになりそうだが構わ んかね?」「そんなに了解得ることが大変なやつなの ……?」「どうしよっかなあ」 二 二 一

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dr 3  依頼受諾「うちでよければ全然やるよー」 「ぱっと 見違和感なけりゃ答えるよ」「そんなら問題に答えたく ない項目がなければちゃんと協力するよってことで。」 「任せときー(`・ω・´)」 dr 3 _Sw 依頼受諾[文字付スタンプ] dr 3 _S 依頼受諾 [文字無スタンプ] dr 4   受諾理由「ひまだから」 dr 5  依頼内容了解「記述ってそゆことね」 dr 6  条件付依頼受諾「仕事終わったらでいい?」 収束部 E.行動予定 e 1  今後の予定「あとでURL送るので、お願いしま す!!!」 「あとでURL送るのでご回答お願いしますm(_ _)m」  URL送付 e 2  事後説明約束「それもあとで説明しまする!」 e 3  行動質問への応答「あっううん! ACEではない!」 e 4  待機願い「ちょっと待ってて」 er 1  行動質問「ACEとかに載ってるの?」「あ、webな のね。」「URLないやんけー」 er 2  予定了解「りょーかいです!」「ほい。」「あい!」 er 3  説明要求「そのかわり、何のために調査をするの か、(終わったでいいけど)どういうデータが欲しいのか はちゃんと説明してね。」 er 4 受諾後の予定「仕事行ってくるから返信遅れる」 開始部 主要部 収束部 終了部 F.対人配慮 f 1 感謝「あーありがとうーー!!」「ありがとう!!!」 f 1 _Sw 感謝[文字付スタンプ] f 1 _S 感謝[文字無スタンプ] f 2 謝罪「ごめん遅れた」 f 2 _Sw 謝罪[文字付スタンプ] f 2 _S 謝罪[文字無スタンプ] f 3  挨拶「じゃあね」「よろしくです」 f 3 _Sw 挨拶[文字付スタンプ] f 3 _S 挨拶[文字無スタンプ] f 4 愛情表現「好き」 f 5  恐縮  f 5 _S 恐縮[文字なしスタンプ] f 6  気遣い「眠かったら寝てて」 fr 1  感謝への応答「ぜんぜんいいよ」「お役に立てたみ たいでよかったです」 fr 1 _Sw 感謝への応答[文字付スタンプ] fr 1 _S 感謝への応答[文字無スタンプ] fr 2  謝罪への応答:「全然大丈夫」 fr 2 _Sw 謝罪への応答[文字付スタンプ] fr 2 _S 謝罪への応答[文字無スタンプ] fr 3 挨拶への応答「じゃあね」 fr 3 _Sw 挨拶への応答[文字付スタンプ] fr 3 _S 挨拶への応答[文字無スタンプ] fr 4  愛情表現への応答「やった」 その他 G.その他 g 1  フィラー「えっと」「うーん」 g 2  反応「ほ、ほう。」「ほう」「ふむふむ」「うむ。」 二 一 一

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g 3  評価「はやい」「無能」「わ~~むじゅかしい」「ちょっ と抜けてるとこも可愛いやで」「なんかそのノリが久し ぶり!!」 g 4  非難「てめぇ」 gr 1  評価への反応「そんなつもりなかったわ 笑笑」 H.他の話題挿 h 1  勧誘の談話「山Pのコンサートいこう」「10月にしよう」「いついく?」「10月か11月のやつ」「どっちも神 奈川ね」「申し込んじゃうから笑」「いいよ笑」勧誘の 受諾「いいよ~」 h 2  会う約束の談話 h 3  前回の出会いの感想 

6 .おわりに

 本稿はLINEというモバイル・メディア上における「依頼」の談話を分 析するためのデータの分類について検討し、具体的な分類を提案した。全 体を開始部-主要部-収束部-終了部と分け、コミュニケーション機能 と機能的要素が談話構造と展開の中でどのように現れるかを示した。機 能的要素の中には、開始部-主要部-収束部-終了部の談話展開の流れ の中に収まらない「対人配慮」のようなコミュニケーション機能もあっ た。これについては処理の視点を変えてどこにでも現れうる機能である ことを示した。「その他」や「他の話題の挿入」は、モバイル・メディア 上の談話の特徴のひとつとして興味深いものであるが、本データでは数 が少なかったことと談話展開の中には位置づけられない性質のものであ ることから、分析対象としなかった。談話構造と機能的要素は分類の視 点が異なるため、完全な関連づけはできないところがある。しかし、今 回のような分類をすることにより、談話展開のどこかの位置に収まらな い機能的要素があることが明確にみえてくることも大切だと考えた。  今回は比較的負担の少ない「依頼」の談話を対象としたが、負担の大 きな「依頼」の場合には交渉のやりとりなどの別の要素が加わり、談話 はさらに複雑な様相をみせることが予想される。さらに「勧誘」のよう な談話においては、「依頼」とは別の機能的要素が必要になるだろう。今 回の分類の試みは、モバイル・メディア上の相互行為としての談話を分 析するための枠組みを考えたものであった。今後の研究の「たたき台」 として利用できればと願っている。 二 一 一

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1 .LINE株式会社が提供するSNSである。SNS(Social Networking Service) とは、人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する会 員制のオンラインサービス。ソーシャルメディアとも呼ばれる。LINEはス マートフォンやフィーチャーフォンなどの携帯電話やタブレット、パソコン などに対応したインターネット電話やテキストチャットなどの機能を有す るが、利便性で最も適合するスマートフォンを使っている利用者が多い。 2 .フィーチャーフォンは通話のみの機能をもつベーシックフォンとパソコン 並みの機能をもつスマートフォンの間に分類される多機能携帯端末。スマー トフォン以外の携帯電話端末を総称することもある。日本のフィーチャー フォンは独自の進化を遂げたため、ガラパゴス諸島の生物になぞらえてガラ ケー(ガラパゴス携帯)と呼ばれることもある。 3 .本稿の引用内の表記は、引用先で記述されていたままの表記を用いる。引 用箇所「書き言葉」が本稿での表記「書きことば」と異なっているのはその ためである。 4 .三宅(2019b)では「話しことば」「書きことば」「打ちことば」という表現 を使っている。本稿ではこれを批判的に考え直した。 参考文献 阿部響子(2014)「留学生の日本語による依頼メールの文章産出過程 ―文章  産出過程に影響を与える要素の分析―」『接触場面における言語使用と アクドーアン,プナル・大浜るい子(2008)「日本人学生とトルコ人学生の依 頼行動の分析 -相手配慮の視点から-」『世界の日本語教育』18: 57-72.東 京:国際交流基金.

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ずれ」『日本語教育』104: 79-88. 蒲谷宏・川口義一・坂本恵(1993)「依頼表現方略の分析と記述―待遇表現教 育への応用に向けて―」 『早稲田大学日本語教育センター紀要』 5 :52-69 熊谷智子・篠崎晃一(2006)「依頼場面での働きかけ方における世代差・地域 差」『言語行動における「配慮」の諸相』19-54. .国立国語研究所. 丸山 岳彦・高梨 克也・吉田 奈央(2010)「対話研究にふさわしい統語的単位 の認定基準-対話節単位の設計-」『言語処理学会第16回年次大会発表論文 集』387-390 三宅和子(2004)「『規範からの逸脱』志向の系譜-携帯メールの表記をめぐっ て-」『文学論藻』第78号 pp.1-17. 東洋大学 三宅和子(2005)「携帯メールの話しことばと書きことば-電子メディア時代 のヴィジュアル・コミュニケーション」『メディアとことば』第 2 巻 pp.234-261. ひつじ書房 三宅和子(2011)『日本語の対人関係把握と配慮言語行動』東京:ひつじ書房. 三宅和子(2019a) 「LINEにおける「依頼」の談話的特徴を記述・分析する( 1 ) -メディア特性とモバイル・ライフの反映を探る-」『文学論藻』93号  pp.31-47. 東洋大学 三宅和子(2019b) 「モバイル・メディアにおける配慮-LINEの依頼談話の特徴 -」山岡政紀編『日本語配慮表現の原理と諸相』pp.163-180. くろしお出版 Miyake, K. (2020) Evolution of emoji and beyond: A diachronic observation of

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参照

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