Title
高齢者の歩行に関する研究 1) 高齢者の歩行 - 肉眼的観察と
ポリグラフ記録による検討 - 2) 高齢者の歩行 - 歩行分析に
よる検討 -( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
白戸, 弘道
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1120号
Issue Date
1997-05-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15153
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 且 白 戸 弘 道(岐阜県) 博 士(医学) 乙第1120 号 平成 9 年 5
月
21日学位規則第4粂第2項該当
高齢者の歩行に関する研究
り高齢者の歩行一肉眼的観察とポリグラフ記録による検討-
2)高齢者の歩行一歩行分析による検討-(主査)教授宮
田 英 雄 (副査)教授 伊藤
和 夫 教授 坂 井 昇 論 文 内 容 の 要 旨 高齢化社会が進むにつれ,高齢者のめまい・平衡障害例を経験する機会が増えつつある。これらの症例を診療 するためには,平衡機能への加齢の影響を検討しておくことが必要である。当教室では,今までに平衡系に及ぼ す加齢の影響を検討する目的で,平衡機能の基本検査で,静的体平衡である直立検査と動的体平衡の「つである 偏椅検査(音字・足踏み検査)を高齢者に行い,加齢の影響を認めることを報告している。しかし,とくに高齢 者でほ日常の生活における活動能力や体平衡を総合的に把撞するためには,日常生活の中心である歩行を観察す ることが適当である。また,身体障害者福祉法による平衡障害診断には歩行検査がとりいれられていることから, 歩行ほ動的体平衡としての平衡機能を把撞するのに大切である。これらの観点から高齢者の歩行検査を行い,肉 眼的観察,ポリグラフ記録.コンピュータ分析をすることによりその特徴を検討した。 研究方法 (1)歩行の肉眼的観察:日常生活での歩行に近い状態を観察することを目的に,10mの自由歩行(開眼と開眼) を行った。観察項目は,①定性的には接床・離床の歩行リズム.上肢の交互の振りの円滑さについて観察した。 ②定量的には10m自由歩行の所要時間,歩数,歩隔,偏椅距離を測定し,平均歩幅(10mを歩数で割った値), 歩調(1分間あたりの歩数)も算出した。有意差検定はt検定を用いた。 (2)歩行のポリグラフ記録とコンピュータ分析:①ポリグラフ記録は被験者に3個の直線加速度計を3軸方向 に装着したヘルメットをかぶせ,歩行中頭部に現れる上下,左右.前後方向の運動を記録した。同時に左右ひら め筋に表面電極を装着して筋電図を記録した。さらに左右の靴の中敷きに感圧ゴムセンサーを装着し・接床・離 床を捉え記録した。これら7現象を日本電気三栄製ポリグラフ360システムを用いて同時記録するとともに.頭 部動揺と左右ひらめ筋の積分筋電図の5現象をデータレコーダーに記録した。②コンピュータ分析は記録データ をantialiaslowpassfilterを通し10Hz以上をカットし,AD変換器を通して20Hzでサンプリングした後・ コンピュータ(DEC製PDPll/34)のディスクに保存した。次いで岐阜大学動揺解析プログラムの標準法 (Goertzel法を用いてフーリエ変換しパワースペクトル,相関関数などを求める分析法)を用いて,パワースペ クトル,自己相関分析を行った。 以上得られた65歳以上の高齢者の成績を健康青壮年の成績と比較した。 研究対象 (1)肉眼的観察の対象はめまい・平衡障害の既往と訴えのない65歳以上の高齢者111名(男性38名,女性73 名)である。年齢構成は65∼69歳では18名(男9名,女9名).70歳代は46名(男12名,女34名),80歳以上 は47名(男17名,女30名)である。対照は20∼30歳代の健康青壮年22名である。 (2)ポリグラフ記録とコンピュータ分析の対象は.上記111名中ポリグラフ記録を行い得た19名である。年齢 構成は65∼69歳4名(男2名,女2名),70歳代11名(男6名,女5名),80歳以上4名(男2名,女2名)で ある。対照は(1)と同じである。 結果と考察 (1)肉眼的観察について ①定性的観察では,加齢とともに接床・離床の歩行リズムは不規則化し,上肢の交互の振りの円滑さは不良になっー105-た。この憐向は開眼歩行より閉眼歩行で若しかった。しかし,その不規則さには個人差があった。②定量的観察 ではt 高齢者は65歳以上で所要時間は加齢につれ延長傾向を示し,70歳以上で歩乱 歩幅.および身長で補正 した歩幅は減少傾向を示し,80歳以上で身長で輔正した歩幅は増加傾向を示し.開閉眼歩行ともに割士年と比べ て有意差(P<0.01)を認めた。高齢者では歩行が不安定になるが,これに対して歩幅を減少さサ,特に歩隔を 増大して,ゆっくり歩くことで安定させるように代償していると考えられる。開眼歩行では歩隔への影響が最も 大きく.次いで歩幅,歩調の順に影響が小さくなった。歩行超勤は垂心の前方への移動を合理的に行うための運 動であるが,歩行因子のなかで歩隔は前後運動よりも左右運動に関与し,歩行中の直立維持に関係が強く,閉眼 の影響をうけるのが他の歩行因子より大きかった。 (2)ポリグラフ記録とコンピュータ分析 者壮年のポリグラフ記録は開閉眼歩行ともほぼ同じ所見を示すので,開眼歩行の所見を示す。東部上下・前後 運動は歩行1周期に2回の規則的な運動として認め,左右超勤は歩行周期に一致した運動として認められている。 頭部上方運動は足の接床により始まり,引き続いて起こる他足の離床による前方への蹴り出しと接床脚の伸展に より上方運動のど-クを生じ 下方運動はそれに続く接床脚の屈曲により生じている。左右運動は右傾は右足接 床時に.左傾は左足接床時に生じている。前後運動ほ片足の按床時には後向さ加速度が加わり,接床脚の伸展に よる上方運動のピークを墳に前向き加速度が加わっている。ひらめ筋活動は接床時から離床時まで認められ,立 脚期の後半に増強が認められる。すなわち,頭部運動,ひらめ筋活動は足の接床・離床に応じて一様なリズムが 保たれている。コンピュータ分析は.頭部上下・前後運動は1.8∼2.OHz.左右連動は0.9∼1.1Hzの周期性を 持つ正弦波過程を示した。ひらめ筋活動は両側とも0.9∼1.1Hzの規則的運動を示した。高齢者では,肉眼的観 察が開眼歩行で接床・離床の歩行リズムが規則的な者と不規則な者に大別できた。規則的な者では頭部運動は. 開閉眼歩行ともに上下・前後運動は1.4∼2Hz,左右運動は0.7∼1Hzで青壮年よりやや遅い周波数の運動を示 すことが多かったが,開眼歩行では頭部の左右運動の振幅が青壮年より大きく.不規則な早い前後運動を認める 例があった。一方,不規則な者では.ポリグラフ記録とコンピュータ分析で開眼で頭部左右・前後運動の振幅増 加,特に前後運動の不規則化を示す例や上下運動の振幅低下,不規則化する例が多く認められた。ひらめ筋活動 は開眼歩行においては頭部左右運動とほぼ等しい0.7∼1Hzのやや遅い振幅の大きな運動を示す例が多く認め られたが,70歳代後半から訊活動の周波数に左右差を認める例もあった。80歳代では開眼歩行で歩行のリズム はある程度保たれているが,開眼歩行ではひらめ筋活動の左右差が増加する例や筋活動の規則性や周期性を認め なくなる例があった。また.全般に立脚相時間の延長により筋活動時間の延長が認められる傾向にあった。 以上,高齢者の歩行は頭部左右運動の振幅が増大するが,これはより安定して歩こうとする歩隔の増加と関連 がある。また.前後方向への早い頭部運動を示すが,自己受容性姿勢制御系への加齢による影響が大きいと考え られる。また,高齢者では開眼歩行で比較的按床・離床の歩行リズムが保たれているのは,中枇の歩行リズム形 成機構への加齢の影響が個人差はあるが大きくなくて,歩行時の衝立姿勢への自己受容性制御の寄与が低下し, 青壮年より視覚への依存度がより大きくなっているためと考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者 白戸弘道は,高齢者のめまい・平衡障害例の診療評価のために,平衡機能への加齢の影響を把握して おく必要があり,その一つとして歩行につき.肉眼的紺賂 ポリグラフ記録.コンピュータ分析を行い検討した。 その結果.高齢者では歩行時に頭部左右遊動の振幅か増大するが.これは歩隔の増加と関連があった。また.前 後方向への早い頭部運動を示したが自己受有性姿勢制御系への加齢による影響が大きいためと考えられた。その ために,青壮年より視覚への依存度が大きいことも示された。この知見は,高齢者の平衡神経科学の進歩に少な からず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 高齢者の歩行に関する研究 1)高齢者の歩行一肉眼的観察とポリグラフ記録による検討一 平成5年11月発行 耳鼻と臨床 39(2):821∼828 2)高齢者の歩行一歩行分析による検討一 平成9年2月発行 Equilibrium Res 56(1):86∼99