土木学会論文集 E1(舗装工学), Vol.69,No.3(舗装工学論文集 第 18 巻), I_87-I_94 , 2013.
高性能床版防水工に適合した
橋梁レベリング層用混合物に関する研究
加藤 亮
1・佐藤正和
2・神谷恵三
3 1正会員 ㈱高速道路総合技術研究所 舗装研究室主任研究員 (〒194-8508 東京都町田市忠生 1-4-1) E-mail : [email protected] 2 正会員 ㈱高速道路総合技術研究所 舗装研究室長 (〒194-8508 東京都町田市忠生 1-4-1) 3正会員 工博 ㈱高速道路総合技術研究所 舗装研究担当部長 (〒194-8508 東京都町田市忠生 1-4-1) 昨今,高速道路橋で顕在化している高性能床版防水工上の舗装早期損傷について,模擬橋面舗装供試体を用 いた室内試験を実施し,その損傷メカニズムの解明を試みた.その結果,低温舗設基面と低温 SMA の組合せ によって,防水工と SMA の接着不良が発生することが判明した.接着不良は,低温条件によって防水工との 間に小さな間隙群が形成されることにより発生する.この”Cavity”と命名した間隙が水の滞留空間となり,SMA の砂利化に至るということが判明した.また,アスファルト混合物による Cavity 形成抑制対策を試みた結果, 連続粒度を有する密粒度系の混合物が Cavity 形成の抑制に効果的であることが判明した.Key Words : SMA, Cavity, temperature dependability, MPD, continuously graded
1.はじめに 東日本高速道路㈱,中日本高速道路㈱及び西日本高速 道路㈱(以下,「NEXCO」)では,1990 年代後半より橋 梁コンクリート床版に床版防水工を敷設してきた.しか し,従来採用してきた床版防水工では十分な防水機能を 果たしていないケースが見受けられたことや,近年の橋 梁保全についての意識の高まりを背景に,2010 年より防 水性能,遮塩性能,耐引張・せん断性能,ひび割れ追従 性等についての要求水準を大幅に高めた「高性能床版防 水」を導入した.現在までに新東名高速道路を含む新設 橋梁のコンクリート床版約 240 万㎡において,この高性 能床版防水工(以下,「防水工」)が採用されている(2012 年 10 月時点). 写真‐1 高性能床版防水上の舗装損傷 しかし,この防水工を施工した橋梁部で損傷が頻発し ている.損傷は写真‐1 に示すような,舗装のポットホ ールとして発生している.NEXCO では橋梁レベリング 層用混合物に SMA を用いているが,損傷発生箇所付近 の SMA は砂利化し,スコップでも容易に取り除ける状 態で,開通後最初に迎える夏季に顕在化するケースが多 い.本報文では,この損傷の原因を明確にし,対応策を 提案すべく実施してきた種々の調査・試験により確認さ れた防水工上の舗装損傷メカニズムと,高性能床版防水 工に適合した橋梁レベリング層用混合物について述べる. 2.床版防水工と損傷実態 2012 年 10 月時点において NEXCO の基準を満足する 高性能床版防水は表‐1 に示す 3 タイプに分類される. 防水層は塗膜系の反応樹脂タイプのものとアスファルト シートタイプのものに分かれる.防水層とレベリング層 用混合物を接着させる層である「舗装接着層」は,熱可 塑性樹脂のタイプと瀝青材系のタイプに分かれる.防水 層が反応樹脂タイプの場合は,防水層の上に別途舗装接 着層を敷設する構成となっている.一方のアスファルト シートタイプの場合は,防水層が舗装接着層としても機
能し,別途舗装接着層の敷設を必要としない構成となっ ている.なお, NEXCO での採用実績は,表‐1 の Type A が全採用数の約 85%を占め,最も多い. 顕在化している高性能防水工施工箇所の橋梁舗装損傷 の形態は,以下に示す 2 つのパターンに大別される. ①コンクリート床版と防水工間の接着不良 ②防水工と SMA 間の接着不良 そして,損傷形態の比率は図‐1 に示す通りである.一 見してわかる通り①のケースは稀で,②の「防水工は健 全だが SMA が砂利化している」といった状態や,「防水 工と SMA の間に水が浸入している」という損傷形態が 大半を占めている状況にある. また,②の損傷形態箇所を観察またはその近傍で建研 式引張試験機により引張試験を実施すると,以下の 2 種 類のどちらかの状態であることが確認される. ②‐1 :舗装接着層が未溶融で,防水工と SMA が接着 していない(写真‐2(左):ポットホールから脱出 してきた,原形を留めた状態の舗装接着層). ②‐2 : 防水工と SMA は接着し,引張接着強度も所定 の値を満足しているにもかかわらず,防水工とSMA の層間に水が浸入している(写真‐2(右):現場で 調査用にコアカットした直後より,防水工と SMA の層間から水が差し滞水した状況). 上記②‐1 については,低温の SMA,水をはじめとす る異物の介在などにより生じると考えられる.この場合, SMA は防水工と完全に分離している状態であり,交通荷 重によるせん断力に耐えることができない.また,防水 工と SMA の層間が空間となっているため,ここに水が 浸入すれば舗装損傷に至ることは容易に想像できる.し かし,②‐2 のケースについては一見してもその損傷メ カニズムを想像しにくい.実際のところ,SMA の砂利化 が発生した箇所の多くは舗装接着層が溶融し,SMA と接 着していた痕跡を残しているにもかかわらず水浸しの状 態である.そこで,この②‐2 の形態が如何にして構築 表‐1 NEXCO が使用する高性能床版防水のタイプ 図‐1 損傷形態の比率(2012.10 時点) されるのか,損傷メカニズムは如何なるものか,如何に して損傷を防止するかを検討することとした. 3.損傷メカニズムの推察 アスファルト混合物は,グースアスファルト混合物や 配合・施工を工夫した混合物などを除き,その表面の仕 上がりは平滑でない.特に敷均しや転圧作業が適正温度 を下回った状態で行われた場合には,その混合物は密度 が低く,表面は凸凹とした仕上がりとなる.舗装工事の 温度管理というと,混合物の表面温度や内部温度,そし て外気温に注意が向く傾向にある.しかし,橋梁レベリ ング層の場合,レベリング層用混合物である SMA は, 外気と同時に床版に敷設された防水工面とも接触する. この防水工面の温度(つまり,舗設基面温度)は,冬季 などは気温と同じく低温状態であり,ここに直接触れる SMA の底面は相当な温度低下を来しているものと想像 される.その結果,SMA 下層部分は適正な施工温度を下 回り,低密度の状態となると考えられる.このとき,SMA と防水工の接着は面ではなく「点接着」となり,SMA 底 面の凹部と防水工との間に小さな間隙群が形成されるこ ととなる.この間隙群のことを「Cavity」と呼ぶことと した(図‐2).SMA と防水工との層間が図‐2 の理想形 の様に,隙間なく面接着していれば,舗装表面から鉛直 方向の水の浸入があっても,SMA と防水工の層間に浸水 することは物理的に発生し得ない.NEXCO では,橋梁 レベリング層に用いる SMA について,水利用アスファ ルト混合物と同程度の水密性を求めており 1),施工事前 に試験舗装にて透水係数 1×10-7 cm/sec 以下を確認する よう義務づけている 2).しかし,実際には転圧しにくい 箇所や舗装の施工継目,壁高欄地覆,伸縮装置部との境 界といった水の浸入しやすい部分が存在する.こういっ た鉛直方向の水の浸入口と,水が滞留・水平方向に拡散 写真‐2 (左) 未溶融の舗装接着層 (右) 滞水 図‐2 Cavity の概念図 Type 防水層 舗装接着層 A 塗膜系反応樹脂 熱可塑性樹脂シート B 塗膜系反応樹脂 瀝青材系 C アスファルトシート 瀝青材系 0% 20% 40% 60% 80% 100% 各損傷箇所数/全損傷箇所数 (%) ①床版と防水工間の不良 ②防水工とSMA間の不良 ③その他 ① 4.1% ② 95.1% ③ 0.8%
Cavity
SMA 高性能防水工 理想形 (各層密着) 実際 (Cavity形成) コンクリート床版しうる Cavity の存在が重なると,SMA と防水工の層間 へ水は容易に浸入し水平方向に拡散し,SMA 下部は水浸 状態となり,交通荷重と相まって,特に気温の高い夏季 に SMA の砂利化として橋面舗装の損傷が顕在化するも のと推察される. 4.検証試験 (1) 試験Ⅰ:SMA と防水工の接着と温度の関係 a) 試験方法 どのような温度条件の時に Cavity が形成されるのか, また,Cavity は水の滞留・水平方向への拡散空間となり 得るのかを確認することを目的として,図‐3 に示す橋 面舗装供試体を作成し,①~⑤の手順で試験を実施した. ① 30×30×6cm のコンクリート平板(図‐3)に,防水 工を敷設.NEXCO での採用実績を考慮し,表‐1 の Type A の 1 製品(以下,「製品 A‐1」),Type C の 2 製 品(以下,「製品 C‐1」「製品 C‐2」)の計 3 種類の防 水工製品を試験対象とした. ② 表‐2に示す防水工面温度条件で①を5時間以上養生 図‐3 橋面舗装供試体の概要 表‐2 試験条件等 表‐3 試験Ⅰ,Ⅱ,Cavity 抑制試験用アスファルト混合物 ③ 上記②の床版供試体上に表‐2 に示す各温度の SMA (表‐3)を厚さ 4cm で舗設 ④ 常温まで冷まし,表‐2 の引張接着試験3)を実施 ⑤ 引張接着強度,破断面位置及び破断面状態(Cavity 形成の有無等)を確認 b) 試験Ⅰの結果 結果を表‐4 に示す.Cavity の形成が確認された場合 は網掛けで示し,引張接着強度が不足(0.6 MPa 未満)4) していた場合は白抜き文字で示している.なお,0.6 MPa とは,過去に旧建設省土木研究所にて実施された試験結 果に基づく値である5).また,表中の「防水工面温度」 とは,SMA 舗設直前の防水工表面の温度(舗装基面温度) であり,SMA の温度は混合物内部の温度である. どの防水工製品も,SMA と防水工面がそれぞれ低温で ある程,Cavity の形成や引張接着強度不足といった接着 不良が発生する傾向にあることが確認された.更に注目 すべき現象として,引張接着強度 0.6 MPa 以上を満足し ても,Cavity が形成されているケースが多数確認された. また,この試験からは,現在 NEXCO で採用実績の多 い防水工製品について,転圧直前の SMA 温度が 140℃以 上であれば,舗設前の防水工面温度が 0℃の条件でも接 着不良は発生しないという結果が得られた. 写真‐3 は製品 A‐1 の引張接着試験後の破断面であ る.左写真は SMA120℃・舗設前防水工面温度 0℃の条 件の供試体であり,SMA と防水工の界面で破断した.破 表‐4 温度~引張接着強度・破断面状態確認試験結果 写真‐3 引張接着試験後の破断面 (左)Cavity 有 (右)Cavity 無(コンクリート部破壊) アスファルト混合物 30cm×30㎝×4cm コンクリート平板 30cm×30㎝×6cm 防水工(各製品) 引張接着試験用カット φ10cm a a' a-a'断面 平面 熱電対 各種条件・方法等 防水工面温度※ 0,10,20,30℃ アスコン舗設温度 100,120,140,160℃ (製品A-1は130℃も実施) 使用アスコン 表‐3の混合物を使用.製品A-1はSMA,低空隙 SMA,密粒Aを,製品C-1とC-2はSMAのみ使用. 試験方法 引張接着試験3) 試験温度 23℃ 強度基準値 0.6 MPa 4), 5) 確認事項 引張接着強度,破断面位置,破断面状態 ※防水工を施したコンクリート平板を各温度で5時間以上養生 単位 合成粒度
SMA 低空隙SMA 密粒A
19.0 100 100 100 13.2 98.9 98.2 99.3 4.75 42.4 46.5 62.6 2.36 30.3 34.2 42.4 0.6 24.2 20.8 25.3 0.3 16.7 15.1 15.5 0.15 10.9 12.7 9.1 0.075 9.6 9.8 5.8 - 改質Ⅱ型 % 5.3 5.6 5.8 % 2.5 2.2 4.0 項目 ふる い 通過百 分率( % ) % アスファルト種別 アスファルト量 空隙率 製品A-1 単位:MPa 転圧直前SMA内部温度(℃) 100 120 130 140 160 0 - 0.55 1.02 1.16 1.07 10 0.30 1.00 0.82 0.84 -20 0.54 0.81 0.92 1.05 -30 0.62 0.91 - - -製品C-1 転圧直前SMA内部温度(℃) 100 120 130 140 160 0 0.71 0.85 - 0.96 1.06 10 0.38 1.02 - 1.06 1.08 20 0.79 1.02 - 0.98 1.06 30 0.92 0.99 - 1.10 1.06 製品C-2 転圧直前SMA内部温度(℃) 100 120 130 140 160 0 0.37 0.70 - 0.98 1.24 10 0.48 1.11 - 1.27 1.25 20 0.60 1.34 - 1.54 1.36 30 0.59 1.21 - 1.51 1.54 :Cavityあり 白抜字 :引張接着強度 0.6 MPa未満 防水工 面温度 (℃) 防水工 面温度 (℃) 防水工 面温度 (℃) スラッジ浸入跡
断面が霜降り状に見えるが,黒い部分は SMA と防水工 が接着していた跡であり,それ以外の部分は SMA と防 水工が触れていない部分,即ち Cavity である.右写真は SMA140℃・舗設前防水工面温度 20℃の条件の供試体で あり,コンクリート部分で破断した. 写真‐3(左)はコアカットの際に発生したスラッジが Cavity 内に浸入し,白く残存している状態が確認できる. 即ち,低温 SMA と低温防水工面の組合せにより Cavity が形成され,且つこの空間は水が浸入する空間となり得 ることが確認された. 以上の通り,引張接着強度を満足しても,Cavity が形 成されていては SMA と防水工の接着状態は完全ではな く,引張接着強度のみで接着状態の良否は判断できない ことが分かった. また,今回の試験では,防水工の舗装接着層の違いに よる温度~引張接着強度関係及びCavity の形成状況に明 確な差は見られなかった. (2) 試験Ⅱ:橋面舗装供試体での防水工面温度推移 更に,舗設中の防水工面温度と SMA 温度の関係を把 握すべく,使用実績の多い防水工製品 A‐1 を用いて, 舗設前の防水工面温度として最も条件の厳しい 0℃養生 橋面舗装供試体の防水工面に熱電対を設置し(図‐3), SMA 舗設前から転圧終了までの間の防水工面温度を測 定した.図‐4 は転圧直前の SMA 温度と防水工面の最高 温度の関係を示した図である. 測定の結果,前段で確認された舗設前の防水工面温度 が 0℃の条件において接着不良が発生しない限界温度で ある「転圧直前の SMA 温度が 140℃」のとき,防水工面 は最高で 83℃に達していた.即ち,SMA 舗設時に防水 工面が 83℃以上となれば,接着不良は発生しないという こととなる.また,言い換えるとこの結果は「SMA と防 水工の界面は 140℃の SMA が上載されている状態でも 80℃程度にしか至らない」ということも示している.室 内試験結果ではあるが,実に SMA 内部と 60℃もの開き があり,SMA 下部は低温状態となることが裏付けられた. NEXCO の使用する SMA は,バインダーにポリマー改 質アスファルトⅡ型(以下,「改質Ⅱ型」)を用いること から2),多くの場合,初期転圧温度は 150~155℃程度を 図‐4 SMA 温度と防水工面最大温度関係 基準に±10℃程度で管理される.よって,混合物の温度 管理が適正になされていれば,防水工との接着不良が生 じる可能性は低い.しかし,混合物管理温度の下限値と 接着不良が発生しない限界温度がほぼ同じであること, 試験結果は室内試験結果であることから,結果を活用す る場合には,十分な安全率を考慮する必要がある. (3) 試験Ⅲ:実橋での防水工面温度推移 次に,試験Ⅱで実施した防水工面温度推移測定を新規 建設中の高速道路本線橋のレベリング層舗設現場にて実 施した.使用した混合物は NEXCO が定める SMA であ る 2).舗設前の防水工(製品 A‐1)面に熱電対を 10m 間隔で 3 点設置し(測定点 1~3),SMA 敷均し前から概 ね仕上げ転圧完了までの間の温度推移を測定した.当日 の天候は晴れ,測定中の外気温は 15~18℃,敷均し直後 の SMA 内部温度は約 170℃であった. 図‐5 を見ると測定点ごとに最高到達温度に若干ばら つきが見られるが,測定点 2 の場合,SMA 内部温度より 約 70℃もの温度低下を来していたことが分かる.室内で 実施した試験Ⅱでは,防水工面温度が 0℃の条件で 60℃ の温度低下であったが,図‐5 に示されている通り,こ の実橋での試験Ⅲにおいて,舗設直前の防水工面温度は, 外気温とほぼ同じ 20℃程度であった.防水工面の温度は, 試験Ⅱよりも好条件であったにもかかわらず,約 70℃も の温度低下が確認された.実際の現場では防水工面の埃 や結露といった温度上昇を阻害する因子により,SMA か ら十分な熱伝達が成されないといったケースや,実橋は 室内試験用の模擬床版よりも床版厚が厚いことから, SMA はより多くの熱量を奪われ,更に風による影響等も あり,大きな温度低下を示したものと思われる. 5.混合物による Cavity 抑制対策検討 (1) Cavity 抑制試験 a) 混合物の選定 SMA と舗設前の防水工面の温度と接着状態の関係は,引 図‐5 実橋での防水工面温度推移測定 60 70 80 90 100 80 100 120 140 160 180 SM A 舗 設 時 の 防 水工面 最高 温度 (℃ ) 転圧直前のSMA温度(℃) 83 116.5℃ 101.9℃ 121.2℃ 18.0℃ 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 20 40 60 80 100 120 140 実 橋の 防水工 面温 度 (℃) 経過時間 (min) 測定点1 測定点2 測定点3 外気温
張接着強度の不良が発生し始める温度よりも,Cavity が 発生し始める温度の方が高いことが試験Ⅰ(表‐4)によ り確認された.しかし,実際の工事現場において,舗設 直前の防水工面温度が低温であった場合に,その日のレ ベリング層舗設工を急遽取り止めることは困難である. こういった実情を踏まえ,防水工とレベリング層用混合 物の接着状態が温度に左右されにくく,かつ Cavity が形 成されにくい混合物の検討を行うこととした.試験方法 は前出の試験Ⅰと同じであるが,表‐3 に示す「SMA」, 「低空隙SMA」,「密粒A」の3種類の混合物を使用した. 低空隙 SMA とは,空隙率 2.2%となる時のアスファルト 量を OAC とした低空隙かつ高飽和度の SMA で,従来の SMA よりも上方粒度とすることにより施工性の改善を 図った,NEXCO の一部地域で使用されている混合物で ある.密粒 A とは,骨材が最密充填される粒度を狙った 連続粒度の混合物である.骨材が密に充填可能な粒度分 布であれば,混合物表面も裏面も,マクロ・テクスチャ 6)の小さい平滑な面となりやすいものと考えた.Fuller に よると,最大乾燥密度が得られる粒状材料の粒度は式(1) により与えられる7)としている. 100 ⁄ . ここに :ふるい目 における通過質量百分率% , :任意のふるい目mm , :最大粒径 mm である. 密粒 A は,この式により算出した各ふるいの通過百分 率を目標粒度とした.その結果,舗装設計施工指針の密 粒度アスファルト混合物(13)の中央粒度とほぼ一致す る粒度となった.NEXCO では密粒度系混合物を使用す る場合,空隙率を 3~5%として配合設計する2)ことを参 考に,OAC は空隙率 4%となる時のアスファルト量とし た.なお,使用するアスファルトには,動的安定度の向 上及び耐水性を意図して改質Ⅱ型を用いた.また,防水 工は使用実績の最も多い製品 A‐1 を用いた. 表‐5 Cavity 抑制試験の結果 b) Cavity 抑制試験の結果 Cavity 抑制試験の結果を表‐5 に示す.レベリング層 に用いる混合物によって,防水工との接着状態の温度に よる影響に明らかな違いが見られた.接着状態の温度に よる影響は,SMA が最も鋭敏で不良を生じやすく,逆に 連続粒度の密粒 A は,低温条件でも比較的良好な接着状 態を維持することが確認された. 図‐6 は,各混合物について,表‐5 に示す全温度条件 の引張接着強度の平均値と標準偏差を示したものである. SMA は標準偏差が最も大きく,温度に対して鋭敏な挙動 を示す特性がこの図からも確認できる.逆に密粒 A は引 張接着強度平均値が最も大きく,標準偏差は最も小さい. 即ち,密粒 A は引張接着強度が高く,温度条件の変化に よる引張接着強度の変動が小さい混合物であると言える. 図‐7 は各混合物の粒度特性及びアスファルトモルタル の割合を比較したものである.ここで,「粗粒度」とは粗 骨材量の指標で,値が大きいほど混合物中の粗骨材の割 合が多いことを示すもので,ここに式(2)の通り定義した. また,「アスモル率」とは,各混合物全質量に占めるアス ファルトモルタル(細骨材,石粉,アスファルト)の質 量割合を示す指標としてここに定義した.この値が大き いほど,混合物中のアスファルトモルタルの割合が多い ことを示す. 表‐5 と図‐7 を見比べると,粗粒度が小さくアスモ ル率が大きい混合物ほど,防水工との接着状態が安定し 粗粒度 ∑ 13.2, 4.75, 2.36 各ふるい累積残留質量百分率 100 (2) 図‐6 混合物毎引張接着強度の平均値と標準偏差 図‐7 各混合物の粗粒度・アスモル率 製品A-1・・・SMA 単位:MPa 転圧直前SMA内部温度(℃) 100 120 130 140 160 0 - 0.55 1.02 1.16 1.07 10 0.30 1.00 0.82 0.84 -20 0.54 0.81 0.92 1.05 -製品A-1・・・低空隙SMA 転圧直前SMA内部温度(℃) 100 120 130 140 160 0 0.31 0.89 - 0.98 0.98 10 0.38 0.89 - 1.00 0.82 20 0.58 0.84 - 1.03 0.92 製品A-1・・・密粒A 転圧直前SMA内部温度(℃) 100 120 130 140 160 0 0.58 1.09 1.24 1.24 0.93 10 0.86 1.11 1.23 1.23 1.14 20 0.97 1.07 1.15 1.15 1.23 :Cavityあり 白抜字 :引張接着強度 0.6 MPa未満 防水工 面温度 (℃) 防水工 面温度 (℃) 防水工 面温度 (℃) 0.0 0.1 0.2 0.3 0.0 0.5 1.0 1.5
SMA 低空隙SMA 密粒A
標準偏 差( M Pa ) 引 張接着強 度平均値 (M Pa ) 引張強度平均値 標準偏差 0 10 20 30 40 50 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4
SMA 低空隙SMA 密粒A
アス モ ル 率 (% ) 粗粒度 粗粒度 アスモル率 (1)
ている傾向が見られる.粗粒度が大きいと,粗骨材が作 り出すマクロ・テクスチャが卓越し,仕上り面は凹凸の 大きい状態になると考えられる.一方,アスモル率が大 きいと,粗骨材が構築する骨格構造の間隙に充填される アスファルトモルタルの量が十分に存在し,仕上り面に ついても粗骨材が作り出す凹凸を埋め,平滑な状態を構 築する効果を発揮するものと思われる.この様な表面形 状の特性が今回の試験結果に結びついたものと思われる. 以上から,Cavity 形成抑制及び接着状態改善に低粗粒 度・高アスモル率の混合物が有効であることが分かった. (2) 低粗粒度・高アスモル率混合物の検討 a) 混合物の選定 この配合特性を踏まえ,更にCavityが形成されにくく, かつ温度低下の影響を受けにくい配合の検討を行った. 低粗粒度・高アスモル率の配合とするには,合成粒度を 細粒化させる必要があるが,安易な細粒化は耐流動性の 低下や,微細な連続空隙の形成による水密性の低下が懸 念される.よって,合成粒度は,寒冷地域における NEXCO の高速道路で使用実績のある細粒系の密粒度混 合物の粒度範囲2)を参考にした.更に,NEXCO の高速 道路の橋梁レベリング層の標準厚さは 40mm である8)こ とから,骨材のトップサイズは,これまで検討してきた SMA や密粒 A と同じ 13mm とした.これらの基本方針 から,表‐6 に示す 2 混合物を定めた.この 2 混合物は 同じ合成粒度で,OAC の決め方を密粒 B‐1 は空隙率4%, 密粒 B‐2 は空隙率 3%となるアスファルト量とした. 粗粒度・アスモル率を算出すると,図‐8 に示す通り となった.密粒 A よりも更に低粗粒度・高アスモル率の 表‐6 更なる低粗粒度・高アスモル率混合物 図‐8 粗粒度・アスモル率 混合物であることが分かる. b) 試験結果 まず,混合物の基本性状の確認を目的として,ホイー ルトラッキング試験(以下,「WT 試験」)を行った. 表層に用いる高機能舗装の動的安定度は 3,000 回/mm 以上である.その下層に動的安定度の小さい混合物を用 いると,供用後にひび割れなどの損傷の発生が懸念され ることから,NEXCO では表層の動的安定度とバランス をとることを目的として,橋梁レベリング層用混合物に 対して動的安定度 1,000 回/mm 以上を求めている1),2).今 回試験を実施した混合物は全てアスファルトに改質Ⅱ型 を用いたこともあり,この基準値を十分に満足する結果 を示した(図‐9).特に密粒 A,密粒 B‐1 については, 6,000 回/mm を上回る結果であった.密粒 B‐1 と密粒 B ‐2 は同じ合成粒度であるが,アスファルト量が前者は 5.9%,後者は 6.6%である.これに伴う飽和度の違いが動 的安定度の差に現れている.また,SMA,密粒 A を含め ても,飽和度と動的安定度に相関があることが分かる. どの混合物も十分な動的安定度を有していることが確認 された. また,各混合物について加圧透水試験も実施した. 30cm×30cm×5cm のWT 試験用供試体を室内にて作成し, ここからφ10cm の加圧透水試験用供試体を採取した.結 果は,密粒 B‐1 のみ 3.7×10-9 cm/sec という値を示した が,極めて微小な値である.他は全て「不透水」であり, どの混合物も十分な水密性を有することが確認された. 次に,各混合物の Cavity 形成状態を定量的に把握する ために,室内で作成した WT 試験用供試体の「裏面」の マクロ・テクスチャを測定することとした.通常,WT 試験用供試体作成の際,型枠を転圧温度+5℃程度に加熱 して使用する.しかし今回は Cavity の形成を促すために 型枠を加熱せず,約 20℃の状態で使用した.転圧温度は, 各混合物に使用した改質Ⅱ型の最適締固め温度の 163℃ とした.この供試体を各混合物について 4 枚作成し,裏 返した状態で 2 枚×2 枚の正方形に並べ,CT メーターで 混合物裏面の MPD を測定した.結果を図‐10 に示す. 裏面の MPD は SMA が最も大きく,最も値の小さか った密粒 B‐2 の 2 倍以上を示した.この試験に供した 混合物は図‐8 の配合特性を有していることから,裏面 図‐9 各混合物の動的安定度 単位 合成粒度 密粒B-1 密粒B-2 19.0 100 13.2 98.1 4.75 74.9 2.36 57.9 0.6 36.0 0.3 24.3 0.15 11.6 0.075 7.6 - 改質Ⅱ型 % 5.9 6.6 % 4.0 3.0 項目 ふる い通過百分率 (% ) % アスファルト種別 アスファルト量 空隙率 20 30 40 50 60 70 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 SMA 密粒A 密粒B-1 密粒B-2 アス モル 率( %) 粗粒度 粗粒度 アスモル率 72 74 76 78 80 82 84 86 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 SMA 密粒A 密粒B-1 密粒B-2 飽和度 (% ) 動的安定度( 回/mm) 動的安定度 飽和度
図‐10 各混合物の裏面 MPD 図‐11 転圧温度〜裏面 MPD 関係 MPD は,低粗粒度・高アスモル率の混合物ほど小さいと 言える.ここで改めて低粗粒度・高アスモル率の混合物 は,Cavity 形成抑制に効果的であることが確認された. 続いて,裏面 MPD が小さかった密粒 B‐1 と密粒 B‐ 2 について,裏面 MPD の温度依存性を確認することとし た.前出の図‐5 で示した通り,防水工面と接するレベ リング層用混合物の底面は,大きく温度が低下している. このような温度低下が,Cavity の形成へどう関係するか, また,混合物による違いはあるのかを確認することした. 試験は,混合物の転圧温度について,標準的温度である 163℃の他に 120℃,100℃という条件を追加して作成し た供試体の裏面 MPD を測定した.比較用に,現行の橋 梁レベリング層用標準的混合物である SMA についても 同じ試験を実施した.結果を図‐11 に示す. どの混合物も転圧温度が低温であるほど,裏面 MPD の値が大きくなる傾向にあった.どの転圧温度条件にお いても,SMA の値が最も大きく,SMA >密粒 B‐1>密粒 B‐2 の傾向は変わらない.今回の混合物検討は,「Cavity が形成されにくい混合物」の抽出が目的の一つである. 密粒 B‐1 並びに 密粒 B‐2 は,現在の標準混合物であ る SMA より,どの転圧温度においても裏面に形成され るマクロ・テクスチャが小さいことが分かった.よって, Cavity が形成されにくい混合物であるといえる. もう一つの目的として,「温度変化の影響を受けにくい こと」が求められる.温度変化の影響を受けにくい混合 物は,転圧温度が低温であっても,その時の裏面 MPD は通常の転圧温度で供試体を作成した時の裏面 MPD に 対して変化が小さいはずである.そこで,各混合物につ いて,転圧温度 100℃のときの裏面 MPD と 163℃のとき の裏面 MPD の差をΔMPD として図‐12 に整理した. 図‐12 各混合物のΔMPD 図‐13 供試体作成時転圧温度と透水係数の関係 密粒 B‐1 並びに 密粒 B‐2 のΔMPD は,SMA より も約 30%小さいことが分かった.則ち,密粒 B‐1 並び に 密粒 B‐2 は,最適締固め温度を下回るような転圧条 件であっても,SMA に比べて裏面形状の変化が小さい. 試験に供した各混合物は,図‐8 に示した配合特性であ るので,低粗粒度・高アスモル率の混合物の裏面形状は, 温度の影響を受けにくいことが確認された. しかし,Cavity の形成が抑制されても,混合物の性能 が低下していては橋梁レベリング層用混合物として不適 である.そこで,重要な性能の一つである水密性につい て,転圧温度を 163℃,120℃,100℃として作成した WT 供試体から採取したφ10cm の供試体を用いて,加圧透水 試験にて確認することとした.試験結果を図‐13 に示す. 裏面 MPD の値が最も大きかった SMA は,転圧温度 100℃でも不透水という結果であり,転圧温度によらず安 定して高い水密性を保持することが確認された.SMA の ようなギャップ粒度の混合物は,骨材が密に組み合わさ る連続粒度混合物と異なり,粗骨材主体で形成される骨 材間隙にアスファルトモルタルが充填されることにより, 水密性の高い構造を構築している.転圧温度が低下する ことにより,転圧時のアスファルトモルタルの動きは緩 慢となるものの,透水係数を増大させるような連続空隙 が形成されにくい性状は保持され,今回の結果を示した ものと推察する. また,密粒 B‐2 は転圧温度 100℃で 2.8×10-8 cm/sec と いう微量の透水が見られ,密粒 B‐1 は他の混合物に比 して水密性に劣り,転圧温度の低下とともにその傾向は より顕著になることが確認された.密粒 B のグループは 細かめの連続粒度配合であることから,低温転圧でも仕 上り面は平滑となりやすい.その一方で,アスファルト 20 30 40 50 60 70 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 SMA 密粒A 密粒B-1 密粒B-2 アス モ ル 率( %) 16 3℃転圧 裏面M PD (m m) MPD アスモル率 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 90 100 110 120 130 140 150 160 170 裏面M P D (m m ) 転圧温度(℃) SMA 密粒B-1 密粒B-2 30 40 50 60 70 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 SMA 密粒B-1 密粒B-2 アス モ ル 率( %) ⊿M PD (mm) ⊿MPD アスモル率 0.E+00 1.E-06 2.E-06 3.E-06 4.E-06 5.E-06 90 100 110 120 130 140 150 160 170 透水 係 数 150k P a (cm/s ec) 転圧温度(℃) SMA 密粒B-1 密粒B-2
にコーティングされるべき骨材の比表面積が大きく,ま た微細な連続骨材間隙が構築されていると思われる.温 度低下に伴うアスファルトの動粘度の増大に加え,この 様な粒度特性が,骨材のコーティングや骨材間隙へのア スファルトの浸潤に影響し,水密性の低下を示したもの と推察する. 以上の通り,Cavity の形成抑制及び防水工との接着状 態や裏面 MPD の温度変化による影響の受けにくさにつ いては,密粒 A,密粒 B‐1 並びに 密粒 B‐2 といった 連続粒度で低粗粒度・高アスモル率の混合物が有効であ ることが確認された.一方で,橋梁レベリング層用混合 物の重要な性能である水密性については,温度の影響を 受ける傾向にあることも分かった.橋梁レベリング層用 混合物には,他に「ひび割れ耐性」なども要求される. 混合物検討にあたっては,これらについても温度影響の 確認をする必要がある. 6.まとめ 今回の研究で得られた知見を以下にまとめる. ◎ 低温合材と低温床版の組合せでCavity が形成される. ◎ 引張接着強度を満足しても,Cavity は形成される場合 がある. ◎ 今回の室内試験で,SMA の転圧直前温度が「140℃以 上」,舗設による防水工面最高温度が「83℃以上」の条 件では,接着不良は発生しないことが確認された. ◎ 連続粒度の低粗粒度かつ高アスモル率の混合物は Cavity 形成の抑制に効果的である. ◎ 混合物に求められる橋梁レベリング層用混合物とし ての性能の温度変化による影響を確認する必要がある. 本検討により高性能床版防水工上の舗装早期損傷原因 を特定すると共に,Cavity が形成されにくい混合物を見 出すことができた.ここで得られた知見をもとに,現場 で安定して使用することが出来る橋梁レベリング層用混 合物を引き続き検討していく. 謝辞:三菱樹脂㈱様をはじめ,その他防水工メーカー各 社様には種々ご協力頂きました.深く感謝申し上げます. 参考文献 1)七五三野茂,佐藤正和,皆方忠雄:砕石マスチックアスファ ルトの床版防水層への適用性に関する検討,舗装, Vol.34.10,pp15-20.1999 2)東日本高速道路㈱:舗装施工管理要領,pp.17-21,2012 3)日本道路協会:道路橋床版防水便覧,pp.128-131,2007 4)東日本高速道路㈱:構造物施工管理要領,pp.2-298 - 2-317,2012 5)(社)日本道路協会:道路橋鉄筋コンクリート床版防水層設 計・施工資料,pp73-80,1987 6)市原薫,小野田光之:路面のすべりとその対策,技術書院, pp.35-38,1997 7)日瀝化学工業:アスファルト舗装講座Ⅱ,pp.226-230,1978 8)東日本高速道路㈱:設計要領第一集舗装編,pp44-108,2012
A STUDY ON BRIDGE LEVELING AC MIXES TO LAY ON HIGH PERFORMANCE
WATERPROOFING
Ryo KATO, Masakazu SATO and Keizo KAMIYA
Focusing on early distress problems on bridge pavements that are laid on high performance waterproofing for protecting the bridge deck, the damage mechanisms were probed by simulating SMA leveling mixes laid on the materials in laboratory. As a result, it was revealed that combinations of low temperatures of the SMA and those on the materials are key factors to loosen the bonds between the two interfaces. The non-bonding is caused by small air voids between them. The air voids named "cavity" develop spaces for retaining water, which will lead SMA to disintegration. Judging from AC mixes testing as countermeasures to prevent the cavity, it was also found that continuously graded AC mixes can effectively inhibit the creation of the undesirable air voids.