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部材の耐力劣化を考慮した複合・合成構造超高層建築物の巨大地震に対する損傷特性評価 [ PDF

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Academic year: 2021

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54-1 1. 序  現行の耐震設計では P-  効果の影響は無視されてい る.しかし巨大地震発生時に超高層建築物に大変形が 生じた場合,P-  効果の影響は大きくなると考えられ る.その結果,一方向への変形累積が進み不安定応答と なったり,超高層建築物の下層部で複数層にわたって 弓なりに変形が進行していく下層部変形集中現象が報 告されている1 ).さらに部材の耐力劣化によってこの現 象が大きく加速する恐れがある.超高層建築物の耐震 余裕度を評価するためには,P- 効果や部材の耐力劣化 を適切に考慮した解析モデルにより想定レベルを超え た地震動に対する検証を行う必要がある.  本論では複合・合成構造として,鉄骨鉄筋コンクリー ト造(以下 SRC 造),および鉄筋コンクリート柱・鉄骨 梁混合構造(以下柱 RC・梁 S 造)超高層建築物を対象 とした時刻歴応答解析を行い,損傷特性について検討 を行う. 2 .解析手法の概要  解析は有限要素法に基づく弾塑性解析であり,鉛直 荷重による P- 効果を考慮する.SRC 造部材の材長方向 には柱梁端部に剛域2),塑性域3) ,4)を設けており,部材 断面は曲げを加える方向に対して直交する方向に微小 要素に分割している.柱 RC・梁 S 造部材の材長方向の

部材の耐力劣化を考慮した複合・合成構造超高層建築物の

巨大地震に対する損傷特性評価

林 晃平 分割は 3 章で後述する.  応答解析は Newmark 法5)(=1/4)による微小時間増分に 対して行い,減衰は架構モデルの 1 次固有モードに対し て,SRC 造は減衰定数が 3%,柱 RC・梁 S 造は減衰定数 が 2% となる剛性比例型とした.  図 2 に鋼材とコンクリートの応力-歪関係モデルを示 す.H 形鋼の局部座屈,主筋の座屈,コンクリートの歪 軟化にそれぞれ起因する耐力劣化を,応力-歪関係モ デルに負勾配を与えることにより考慮している. 3.柱 RC ・梁 S 造のモデル化  柱 RC・梁 S 造の柱梁接合部に剛域を設けた場合,十 字型架構の初期剛性を大きく危険側に評価するとした 報告がある6)ため,図 1(b)に示すように柱端部に新た に接合域を設けている.接合域内のコンクリートはふ さぎ板等による拘束効果が見込まれるため,接合域の 断面は RC 柱断面の被りコンクリートの部分にも,コア コンクリートの応力-歪関係を適用したモデルとして いる.モデル化の詳細は既報7)に準じている.このモデ ル化に対する解析精度の検証のため,既往の柱梁接合 部実験8),骨組実験9)に対してシミュレーション解析を 実施した.図 3 に比較結果を示している.どちらも実験 をよく追跡できており解析精度の妥当性を確認するこ とができた. 4 .超高層骨組の解析計画 4.1 SRC 造骨組の設計  既存 SRC 造超高層建築物の代表例となる骨組作成を 目指し,図 4(a)に示す SRC 造 30 層平面骨組を作成し た.ここで骨組は,柱に内蔵された鉄骨が十字形鋼のモ デル(略称:SRC30-2H)とH 形鋼のモデル(略称:SRC30-1H)を作成している.  設計条件としてSRC30-2HとSRC30-1Hの各層の剛性,柱     (a )鋼材        (b )コンクリート  図 2  応力-歪関係のスケルトンモデル c Ec 劣 化 無 視 劣 化 考 慮 c 圧 縮 側  (a)S R C 造     (b )柱 R C ・梁 S 造 図 1  材長方向の分割 -800 -400 0 400 800 -4 -2 0 2 4 6 解析結果 実験結果 R [%] Q [kN] -180 -90 0 90 180 -90 0 90 180 解析結果 実験結果 R [mm] Q [t]   (a )柱梁接合部実験      (b )骨組実験  図 3  荷重-変形関係における実験との比較 塑性域 0.25D1 剛 域 D2 D2 D1 D1 0.25D2 D3 塑 性 域 接 合 域 Db Dc 0.5Db 0.5Db Dc Db Es m m -y -u 劣 化 考 慮 劣 化 無 視 圧 縮 側 引 張 側

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54-2 構造種別 骨組名 1次固有周期 [s] 備考 SRC30-2H 3.03 柱十字形鋼 SRC30-1H 3.05 柱H形鋼 RCS20eq-FA + 2.39 RCS20eq-FA - 2.38 RCS20eq-FB 2.36 RCS20long-FA+ 2.36 RCS20long-FA - 2.34 RCS20long-FB 2.33 均等スパン ロングスパン SRC造 柱RC・梁S造 表 1  解析対象骨組と 1 次固有周期 注  表中の番号①~④は図7の番号に対応 継続時間 [s] PGA [m/s2] PGV [m/s] 備考 ① C-SAN EW 327.7 1.86 0.49 予測波 ② MYG004 NS 300.0 27.00 1.53 観測波 ③ UMT23D06-EW 40.95 8.86 1.63 ④ UMT32A02-EW 40.95 3.87 1.18 163.8 4.67 0.64 120.0 3.56 0.80 60.0 4.70 0.55 80.0 3.50 0.60 予測波 模擬 地震波 地震動名 Art-Hachi BCJ-L2 JSCA Kobe Yokohama 表 2  検討地震波の諸元 図 5  速度応答スペクトル の断面寸法,主筋の本数,および劣化考慮の応力-歪関 係において劣化勾配に起因する内蔵鉄骨の幅厚比は概 ね等しくなるように設計しており,内蔵鉄骨の形状お よび柱断面の鉄骨比(SRC30-2H:3.6~5.1%,SRC30-1H:2.0~2.6%) が相違点となっている.ここで設計レベルの地震動で は解析対象骨組のSRC30-2HとSRC30-1Hは,概ね等しい解 析結果となっていることを確認している. 4.2 柱 RC・梁 S 造骨組の設計  柱 RC・梁 S 造の構造的な特徴や実例を踏まえ事務所 ビルを想定し,基準モデルとして図 4(b)に示すスパ ンが均等なモデル(略称:RCS20eq)と,より一般的なモ デルとして図 4(c)に示すように事務所ビルの執務室に あたる空間のスパンを大きくしたロングスパンモデル (略称:RCS20long)を解析対象骨組とした.また梁に使用 する H 形鋼を解析変数とするため,それぞれの骨組に 対して,梁部材の部材ランクが FA ランクの中でもより 幅厚比が小さいもの(略称 FA+:4.5<B/t f<6.0),FA ランク の中で幅厚比が大きいもの(略称 FA-:6.0<B/t f<7.7),梁部 材ランクが FB のもの(7.7<B/tf<9.4)の 3 種類の骨組を作    (a)SRC30 (b)RCS20eq (c)RCS20long 図 4  解析対象骨組の軸組図 5@6.4m=32m 4 .5 m 9 1 .5 m 2 9 @ 3 .0 m = 8 7 .0 m 4@10m=32m 8 1 m 1 9 @ 4 .0 m = 7 6 m 5 .0 m 16m 8m 16m 成することとし,どの骨組においても柱梁耐力比 COF は 2.0 以上となるようにしている.設計は,靭性保証型耐 震設計指針10)に基づいた静的設計とレベル 1(PGV=0.25m/ s),レベル 2(PGV=0.5m/s)地震動による動的設計を行い, どのモデルに対しても各段階ごとのクライテリアを満 たすことを確認している. 4 .3  時刻歴応答解析の計画  部材の耐力劣化が骨組の終局挙動に及ぼす影響を考 察するために,劣化を考慮した骨組と劣化を無視した 骨組の 2 通りの解析を行う.図 6 に代表部材に対して 行った静的解析の結果を示す.  時刻歴応答解析は長周期地震動,長周期パルス地震 動,および IDA により行う.長周期地震動は予測波であ る C-SAN EW 波11)と観測波である MYG004-NS 波12),長周 期パルス地震動は予測波である UM T23D06-EW 波と UMT32A02-EW 波13)を採用する.これら 4 波は原波に対し て解析を行い,性能判断基準表14)による安全限界に基づ いた考察を行う.IDA では長周期領域で速度応答スペク トルがほぼ一定となる模擬地震動を用いることとし, Art-Hachi 波15),BCJ-L2 波16),JSCA Kobe波17),Yokohama 波18)

の 4 波に対して検討を行う.地震動倍率は =1 から 0.5 刻 みで各骨組が崩壊に至るまで増分する.ただし本論で の崩壊とは,解析中に数値が発散するか,残留変形角が 0.05[rad]を上回った場合とする.図 5 に検討地震波の速度 応答スペクトル,表 2 に諸元を示す. 5.SRC 造 30 層骨組の解析結果  図 7 に SRC30-1H の長周期地震動,長周期パルス地震動 に対する応答結果を示す.どの地震動に対しても劣化 -0.08 0 0.08 R [rad] M [kNm] 0 8000 -8000 劣化無視 劣化考慮 2FL外梁 -0.08 0 0.08 R [rad] M [kNm] 0 8000 -8000 劣化無視 劣化考慮 2FL外梁   (a)S RC 30 - 2H     (b)RCSeq-FA+[B/t f=4.69]  (c)RCSeq-FB[B/tf=8.00] 図 6  代表部材の静的解析による荷重-変形関係 0 1 2 3 4 5 C-SAN EW MYG004-NS UMT23D06-EW UMT32A02-EW Art-Hachi BCJ-L2 JSCA Kobe Yokohama 0 1 2 3 4 5Sv [m/s] 周期[s] 減衰定数 h=0.05 -0.08 0 0.08 R [rad] M [kNm] 0 12000 -12000 劣化無視 劣化考慮 1F外柱

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54-3 の影響はほとんど見られなかったが,C-SAN EW 波の梁 塑性率(安全限界値=5.0),UMT23D06-EW 波とUMT32A02-EW 波の最大層間変形角(安全限界値 R=1/75[rad])と梁塑 性率で安全限界値を超える結果となった.ただし, SRC30-2H と SRC30-1H の骨組の違いによる応答結果の違い はほとんど現われなかった.  IDA の結果を図 8,図 9 に示す.図 8 には地震動レベ ルと耐力劣化の関係を示しており,横軸は PGV,縦軸に は耐力劣化を考慮したモデルの応答値を耐力劣化を無 視したモデルの応答値で除した値としている.最大層 間変形角では劣化の影響が現れる PGV が 2.0~3.0m/s 程度 であるのに対し,柱塑性率では概ね 1.0m/s を超えた程度 で劣化の影響が現れている.つまり層の変形として劣 化の影響が現れていなくても,局所的な損傷に着目す れば,耐力劣化が生じている部材もあるということが 確認できた.図 9 には,SRC30-1Hが崩壊に至ったYokohama 波の =5.0 に対する 1 層外柱の層間変形角の時刻歴応答 を示している.SRC30-2H は劣化の影響が見られるがまだ 安定的な振幅を繰返しているのに対して,SRC30-1H では 一方向に変形が累積し崩壊に至っていることが確認で きる.これは P- 効果の影響とともに,柱内蔵の鉄骨形 状の違いによる軸力比の差の影響が顕著に現れたと考 えられる.    (a)最大層間変形角 (b)残留層間変形角  (c)梁塑性率 図 7 SRC30-1H の解析結果(①~④は表2 の番号に対応)   (a )最大層間変形角 (b )柱塑性率 図 8  S R C 3 0 - 2 H における耐力劣化の影響 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 0 1 2 3 4 Art-Hachi BCJ-L2 JSCA Kobe Yokohama ○ □ △ ◇ PGV [m/s] 劣化考慮 劣化無視 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 0 1 2 3 4 PGV [m/s] Art-Hachi BCJ-L2 JSCA Kobe Yokohama ○ □ △ ◇ 劣化考慮 劣化無視 図 9  Yokohama 波 =5.0 に対する 1 層外柱の時刻歴応答 0 6 12 劣化考慮 劣化無視 0 0.005 0.01 劣化考慮劣化無視 R res[rad] 0 0.015 0.03 劣化考慮劣化無視 R max[rad] 6.柱 RC ・梁 S 造 20 層骨組の解析結果  長周期地震動,長周期パルス地震動のうち最も応答 値が大きかった UMT23D06-EW 波に対する応答結果の塑 性ヒンジ図を図 10 に示している.塑性ヒンジの分布や, 劣化無視に対して劣化を考慮した場合の塑性率が増大 したヒンジ位置を比較すると,RCS20eq-FB と RCS20long-FB で 同様の傾向となっていることが確認できた.  IDA の結果を図11,図 12 に示す.図11 では RCS20long崩壊に至った Yokohama 波 =6.5 に対する応答結果を示し ているが,残留変形角では部材ランクが最も高い FA+ 応答値が最大となっている.これは FA+が最も劣化が生 じにくいモデルとなっているため,いったん下層部で 劣化が生じてしまうと,FA-や FB のように上層まで劣化 の影響が進行せず,下層部に損傷が集中しやすくなっ ているためだと考えられる.ただし,この FA+の応答値 が最大となる現象は Yokohama 波に対する IDA でしか見 られなかった.図 12 に示す JSCA Kobe 波に対する残留変 位の推移では,地震動倍率が小さい場合は負側に残留 しているが,地震動倍率が大きくなるにつれて徐々に 正側に残留変位が移っており,また劣化の影響により 下層部に変形が集中していることも確認できる. 7 .構造種別ごとの耐力劣化に関する耐震余裕度  ここでは既報19)にある S 造,RC 造骨組と,前章まで に検討した SRC 造,柱 RC・梁 S 造骨組の耐震余裕度に ついて比較を行う.S 造は柱梁全部材が FA ランクの 20 層骨組(S20-cFA-bFA)と梁のみFBランクの20層骨組(S20-cFA-bFB)の 2 体を対象とし,RC 造は柱梁部材のせん断 補強筋比がそれぞれpw=0.5%,pw=0.85%,pw=1.2% の 30 層骨 組 3 体を対象としている.比較は,Art-Hachi 波を用いた IDA の応答結果から,最大層間変形角において耐力劣化 が現れる地震動レベル(PGVdet),および崩壊に至る地震 動レベル(PGV col)を定め,  ① PGVdet/ PGVlv.2 ,② PGVcol/ PGVlv.2 を評価し検討を行う.①はレベル 2 地震動(PGVlv.2=0.5m/ s)に対する耐力劣化までの余裕度,②はレベル 2 地震 動に対する崩壊までの余裕度を意味している.       ( ⅰ) 劣化考慮 ( ⅱ) 劣化無視 ( ⅰ) 劣化考慮 ( ⅱ) 劣化無視          (a )R C S 2 0eq- F B        (b )R C S 2 0long- F B 図 10  U MT 23 D0 6- EW 波に対する塑性ヒンジ図 ① ② ③ ④ ① ② ③ ④ ① ② ③ ④ -0.07 0 0.07 0 20 40 60 80 100 T [s] R [rad] -0.05 SRC30-2H劣化考慮 SRC30-1H劣化考慮 SRC30-2H劣化無視 塑性率 ×:1 ~ 2   :2 ~ 4   :4 ~ 7   : 7 ~

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54-4 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 15) 16) 17) 18) 19) 上谷宏二他:梁降伏型骨組の動的崩壊過程における変形集中現象,日本 建築学会構造系論文集,第483 号,pp.51-60,1996. 日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説,2010. 山田哲他:局部座屈を伴う箱形断面鋼部材の劣化域を含む終局挙動,日 本建築学会構造系論文集,第444 号,pp.135-143,1993.2. 山田哲他:局部座屈を伴うH形断面鋼部材の劣化挙動,日本建築学会構 造系論文集,第 454 号,pp.179-186,1993.12.

N.M.Newmark:A Method of Computation for Structural Dynamics,ASCE Journal of Engineering Mechanics,Vol.85,No.3,pp.67-94,1959.7. 日本建築学会:鉄筋コンクリート柱・鉄骨梁混合構造の設計と施工, 2001. 林晃平他:部材の耐力劣化を考慮した解析モデルによる超高層建築物の 損傷特性評価(その3.),日本建築学会九州支部研究報告,第54号,2015.3 竹田拓司他:柱RC梁S構法における柱断面のスリム化に関する実験的 研究(その 1),日本建築学会大会学術講演梗概集,2014.9. 山本俊彦他:混合構造(柱RC・梁S)実大架構の弾塑性挙動(その1~ その3),日本建築学会大会学術講演梗概集,1994.9. 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針 (案)・同解説,1997. 国土交通省中部地方整備局ほかコンソーシアム:名古屋三の丸地区にお ける地域特性を考慮した耐震改修のための基盤地震動の作成(概要版), 2004.7. 防災科学技術研究所:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震によ る強震動,2011. 大阪府都市整備事業管理課:大阪府平成19年度想定標準地震動,2007.3. 北村春幸他:性能設計における耐震性能判断基準値に関する研究,日本 建築学会構造系論文集,第 604号,pp.183-191,2006. 北村春幸他:時刻歴応答解析結果をもとにエネルギーの釣合に基づく耐 震設計法を適用した建築物の耐震性評価法の提案,日本建築学会構造系 論文集,第 632 号,pp.1755-1763,2008.10. 建築研究所,日本建築センター:設計用入力地震動作成手法技術指針 (案),1992.3. 日本建築構造技術者協会:建築構造の計算と監理,2002. 横浜市建築局建築審査課:横浜模擬地震動の特徴について, 2010.pp.181-190,2013.3 江頭翔一等:部材の耐力劣化を考慮した超高層建築物の時刻歴応答解 析,(その1~その 3),日本建築学会大会学術講演梗概集,2012.9.  図 13 に各骨組の耐震余裕度を示しており,横軸が耐 力劣化までの余裕度,縦軸が崩壊までの余裕度を表し ている.どちらの余裕度も S20-cFA-bFA が最も大きい評 価となった.耐力劣化までの余裕度は R C S 2 0e q- F B , RCS20long-FB,RC30-0.5% の 3 体が同値で最小であった.た だしRC30-0.5%に比べるとRCS20eq-FB,RCS20long-FBの崩壊ま での余裕度は大きく,劣化の影響が現れてからの応答 に違いが生じており,RC30-0.5% の脆弱性がうかがえる. 柱部材が解析変数となっている SRC30,RC30 では断面性 能が悪い骨組になるほど,崩壊までの余裕度が急激に 低下している.一方で梁部材のみが解析変数となって いる RCS20,S20 では,梁の部材ランクが悪くなると,耐 力劣化までの余裕度は大きく低下するが,崩壊までの 余裕度は僅かな低下にとどまっていた.  また RC 造→ SRC 造→柱 RC・梁 S 造→ S 造と,梁断面 において履歴吸収エネルギー量に優れる鋼材の占める 割合が高い構造種別ほど,崩壊までの余裕度が大きく なっていることが確認できた.ただし,図 14 にそれぞ れ残留変形角が 0.03~0.04[rad]程度となった地震動倍率時 の残留変位図を示しているが,RC 造,SRC 造に比べ柱 RC・梁 S 造,S 造の方が下層部変形集中現象が顕著に現 れており,その点には注意が必要であると思われる. 8 .結  本論では SRC 造,柱 RC・梁 S 造超高層骨組の巨大地 震に対する損傷特性の検証を行った.  長周期地震動,長周期パルス地震動に対する応答で は,予測波の原波に対しても安全限界を超えるものが あることを示した.また柱 RC・梁 S 造では,部材ラン クによっては耐力劣化が生じていることも確認できた.  IDA に対する検討では,骨組の終局挙動や耐力劣化が 0 5 10 15 20 -2000 -1000 0 1000 2000 story 残留変位D [mm] 0 5 10 15 20 -2000 -1000 0 1000 2000 story 残留変位D [mm]    (a )劣化考慮       (b )劣化無視 図 1 2  J S C A K o b e 波に対する残留変位の推移 RCS20eq-FA+【 =1.0 ~ 8.0】 0 5 10 15 20 0 0.02 0.04 0.06 0.08 story R res [rad] FA+ FA -○ 劣化考慮 劣化無視 FB ◆ 0 5 10 15 20 0 10 20 30 40 story FA+ FA -○ 劣化考慮 劣化無視 FB ◆ (a )残留層間変形角  (b )梁塑性率 図 11 RCS20longの Yokohama 波 =6.5 に対する解析結果 生じる地震動レベルを確認した.その際,SRC 造では P- 効果の影響と柱断面の違いによる顕著な一方向への変 形累積が確認できた.柱 RC・梁 S 造では,地震動倍率 が大きくなるにつれ,劣化の影響に伴う下層部変形集 中現象が生じた.また地震波によっては部材ランクが 良い骨組の方が終局時の変形が大きくなっていた.  IDA により,構造種別ごとに劣化や崩壊に対する余裕 度を評価した. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 PGV det/PGVlv.2 PGV col/PGVlv.2 SRC30-2H SRC30-1H SRC30 RC30 ▲ pw=0.5% pw=0.85% p w=1.2% (a)SRC30 と RC30    (b)S20 と RCS20eq,RCS20long 図 1 3  耐震余裕度の比較検証 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 PGV det/PGVlv.2 PGV col/PGVlv.2 S20-cFA-bFB RCS20eq S20 ◆RCS20 long ▲ S20-cFA-bFA FA+ FA+, FA -FA -FB FB 【参考文献】 0 10 20 30 -1500 -750 0 story 残留変位D [mm]SRC30-2H RC30-1.2% △ 0 5 10 15 20 -1500 -750 0 story 残留変位D [mm]RCS20 eq-FA + △ RCS20 long-FA + S20-cFA-bFA ◇ (a)SRC30 と RC30     (b)S20 と RCS20eq,RCS20long 図 1 4  各構造種別の残留変位図

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