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地域在住高齢者における高次生活機能と身体活動量との関連性に関わる研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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背景 日本において高齢者人口が激増しており、2014 年で は総人口に占める割合が史上最高の 25.1%に至っ

(平 成 26 年版厚生労働省、高齢社会白書).Lawton1) 高齢者の生活機能について、単純なものから複雑な順に、 生命維持、機能的健康度、知覚・認知、身体的自立、手 段的自立、状況対応、および社会的役割からなる7 段階 の階層モデルを提唱している.その中では、手段的自立 (Instrumental Activity of Daily Living;IADL)、知的 能動性、社会的役割は高次生活機能と定義された. Fujiwara et al.2)は、地域在住高齢者を対象に、加齢に 伴う高次生活機能の低下を追跡調査した結果、社会的役 割、知的能動性、IADL、基本的日常生活動作能力の順 で、高次な機能から低下することを報告している. 高次生活機能の低下において,高齢者は自立した生活 を営むには困難となり,メンタルヘルスの低下や生活習 慣病の発症リスクを高める可能性も含まれる 3).したが って,介護認定や要支援・要介護高齢者も増え,高齢者 福祉に現在より重い負担を背負する可能性も高くなる. ゆえに,高次生活機能を維持するには,生活の質を重視 し,寿命を延ばす.そして健康で自立して暮らすことが できるは有益なことである. 田中ら 4)の研究により,身体活動量の低下が生活習慣 病を助長する原因であることを報告した.高齢者が日常 生活において歩行運動を積極的に行なうことは、高次生 活機能低下のリスクに対する予防因子として有効である ことが報告されている5).客観的評価による身体活動量 は主観的質問紙と比較すると,想起バイアスは少ない, より身体活動との関連性をより正しく評価できる.身体 活動量の増加は高次生活機能への改善効果を有すること は認められているが、客観的に評価による強度別身体活 動量や総身体活動量と高次生活機能の関連性に関する研 究が少ない事に加え、知的能動性や社会的役割との関連 性に関してもまだ不明なままである6) 目的 身体活動と IADL の関連についた研究はいくつか存在 していたが,高次生活機能と客観的に評価された強度別 の身体活動量並びに座位行動の関連性に関する研究が少 ない.また,下位尺度である知的能動性や社会的役割と の関連性に関する研究は 1 つでもある.本研究の目的は, 地域在住高齢者と対象として,高次生活機能および各下 位尺度機能と客観的に評価された身体活動量およびに座 位時間との関連性を検討することであった. 方法 1) 研究デザイン 本研究は2011 年から開始された前向きコホート研究 である篠栗町研究より,ベースライン調査データを用い た横断研究である. 2) 対象者 対象者は,福岡県糟屋郡篠栗町に居住し,2011 年 1 月末時点で 65 歳以上の要介護認定を受けていない高齢 者 4,979 名の中から,調査に参加することを同意が得 た高齢者2,629 名を調査対象者とした.パーキンソン病 および認知症を有する人が 10 名,まだ認知機能を評価 するであるミニメンタルステート(MMSE)調査票得点が 18 点以下および回答に欠損値がある人 544 名は,解析 対象から除いた.活動量計の装着時間は規定により4 日 間未満,もしくは欠損値がある人384 名を解析対象から 除いた.さらに,高次生活機能に関する欠損値がある人 14 名,および Body Mass Index (BMI),教育状況など ほかの解析項目の有効回答を得られなかった人 46 名も 解析対象から除いた.解析対象者は1641 名であった. 3) 測定項目

(1) 高次生活機能の評価

高 次 生 活 機 能 は 老 研 式 活 動 能 力 指 標 ( Tokyo Metropolitan Institute of. Gerontology Index of Competence; 以下,TMIG-IC)7,8)を用いて測定した.本 尺度は,高次生活機能を評価するため開発された自己回 答質問紙である.各項目については,回答は「はい」を 1 点,「いいえ」を 0 点と評価する.三つの下位尺度にお いては,「手段的自立」は 5 項目(得点範囲 0-5 点),「知 的能動性」は 4 項目(得点範囲 0-4),「社会的役割」は 4 項目(得点範囲 0-4 点)で,最後に[高次生活機能]合計得 点(得点範囲 0-13)を,それぞれ 5,4,4 点の満点を取

地域在住高齢者における高次生活機能と身体活動量との関連性に関する研究

キーワード:身体活動 座位行動 IADL 知的能動性 社会的役割 行動システム専攻 王 浩偉

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った対象者を「機能維持群」(以下は「維持群」),それ 以下の得点を取った対象者を「機能低下群」(以下は「低 下群」)と定義した.高次生活機能の総得点の特性を示す ため,総得点が 11 点以上の対象者を「維持群」群),10 点並びに 10 点以下の対低下群」群と定義した. (2) 客観的な身体活動および座位行動の評価 客観的に身体活動および座位行動の測定を評価するた め,3 軸加速度センサー内蔵活動量計(Active Style Pro HJA-350IT,オムロンヘルスケア社)を用いて,7日間 連続装着を対象者に依頼した.活動量計は腰部に装着し, 睡眠時,水中活動を除いて起床時から就寝時まで装着す るように対象者に依頼した.1 日あたりの装着時間が 600 分以上かつ4 日以上のデータのみを採用した.得られた データから,座位行動(Sedentary behavior,SED)は 1.5 メッツ以下と定義し,座位時間(Sedentary time, ST)として評価した.客観的な低強度の身体活動(Light physical activity, LPA)は 1.6 メッツから 2.9 メッツ と定義した,客観的な中高強度の身体活動(Moderate to Vigorous physical activity, MVPA)は 3 メッツ以上 と定義した9),装着時間は時/日,1 日あたりの客観的な 座位時間と低強度身体活動は時/日,客観的な中高強度の 身体活動は分/日として評価した. (3) 調整因子 人口統計的および教育的因子については,性別,年齢 は調査開始時に町から情報を提供します.そのほかの調 整因子に関しては,自己回答質問紙を用いて調査を行っ た.教育年数は教育を受けた合計年数を計算した.ほか の生活習慣と健康状況因子については,BMI は体重÷身 長²(kg/m2)によって算出した.趣味の有無およびひと り暮らし状況については,2 件法で回答を得た.飲酒状 況は「現在飲酒していない」を0,「現在飲酒している」 を1とカテゴリ化した.喫煙状況は「現在喫煙していな い」を0,「現在喫煙している」を1 とカテゴリ化した. 認知機能に関する調査はMMSE 検査質問紙を用いた. 総得点は連続変数として使用し,認知機能を評価した. うつ症状・不安障害の評価については, Kessler 6(K6) を用いて評価した.得点は5 点以上の対象者は精神健康 障害ありと判断した.健康状況については,高血圧,脳 卒中,心臓病,糖尿病,高脂血症,呼吸器疾患,胃腸・ 肝臓・胆のうの病気,腎臓・前立腺の病気,筋骨格の病 気:外傷,悪性新生物,血液・免疫の病気,うつ病,認 知症,パーキンソン病,目の病気,耳の病気,そのほか. 以上挙げた疾病から,2 種類以上罹患歴ありもしくは後 遺症が残った場合は,罹患歴を「あり」と認定した. 4) 統計解析 全ての統計解析はSAS ver.9.3 を用いた. 連続変数 は平均値±標準偏差の形で,t検定を行った.カテゴリ 変数は数と割合で表し,カイ二乗検定を用いて解析した. 客観的評価による LPA,MVPA および ST と高次生活機 能と各下位尺度との関連を検討するために,高次生活機 能ならびに各下位尺度を従属変数とし,①MVPA,②LPA, ③ST をそれぞれ独立変数とした多変量ロジスティック 回帰分析を用いて,オッズ比(odds ratio,OR)と 95% 信頼区間(confidence interval,CI)を算出した.調整 変数は,性,年齢,BMI,教育状況,ひとり暮らし状況, 疾病罹患歴,趣味,MMSE 得点,K6 得点,喫煙状況, 飲酒状況,活動量計装着時間であった.LPA と ST の独 立性を検討するため,MVPA も投入された.MVPA に ついては,モデル1では性,年齢,BMI,教育状況,活 動量計装着時間を調整因子として投入した.モデル2 で はモデル1に加え,ひとり暮らし状況,疾病罹患歴,趣 味,MMSE 得点,K6 得点,喫煙状況,飲酒状況を調整 因子として投入した.LPA および ST の独立性を検討す るため,モデル3ではモデル2 に加え,客観的評価され た MVPA を調整因子として投入した.統計的有意水準 は5%とした. 結果 本研究の分析対象者の属性は Table1 で示す.男性は 625 名(38.1%)であった.平均年齢は 73.3±6.0 歳, 教育年数は11.1±2.5 年であった. IADL 障害の有無, 知的能動性障害の有無,社会的役割障害の有無,高次生 活機能障害の有無の区分によって 維持群および低下群の諸特性比較の結果を Table2 で示 した.総体的によると,低下群に比べて,維持群では男性 の割合が少なく,年齢は低く,教育年数は長く,疾病罹 患歴ありのは少なく,趣味ありのは多く,MMSE 得点は 高く,K6 得点 5 点以上を得た人は少ない,以上同様な関 連性が認めました.一人暮らし状況,BMI,喫煙状況, 飲酒状況および活動量計装着時間は場合によって各下位 尺度では,有意な関連が認められなかった場合が存在し ている. 多変量ロジスティック回帰分析を用いて,LPA および MVPA と高次生活機能および各下位尺度の関連を検討 した(Table.3).高次生活機能障害については,LPA と間で負な関連が認められた.LPA は毎日 1 時間を増加 すると,高次生活機能の機能低下率が14%下がることが 判明した.(OR: 0.86, 95%CI: 0.76-0.96,P<0.01).IADL については,すべての推測された交絡要因を調整しても, LPA および MVPA の身体活 動時間と IADL 機能低下の

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間で有意に負な関連が認められた.MVPA 時間は毎日 1 分を増加すると, IADL の機能低下率が 1%下がるこ とが判明した.(OR: 0.99, 95%CI: 0.98-1.00,P<0.05). LPA は毎日 1 時間を増加すると, IADL の機能低下率 が 19%下がることが判明した.(OR: 0.81, 95%CI: 0.70-0.93, P<0.01).知的能動性については,すべての 推測された交絡要因を調整してから,強度別身体活動と の関連性が認めなかった.社会的役割については, MVPA との関連性が認められなかったが,LPA とは有 意に負な関連性が示した.LPA 時間は毎日 1 時間を増加 すると,社会的役割の機能低下率が15%減少することが 判明した (OR: 0.85, 95%CI: 0.79-0.92, P<0.01). ST と高次生活機能および各下位尺度の関連を検討し た(Table.3).すべての推測された交絡要因を調整して から,高次生活機能についても,ST は高次生活機能低 下の間で有意に正の関連性が認められた.ST は毎日 1 時間を増加すると,高次生活機能の機能低下率が17%増 加することが判明した (OR: 1.17, 95%CI: 1.05-1.31, P<0.01).知的能動性は,ST との関連性が認めなかった. 社会的役割については,ST とは有意に正の関連性が示 した.ST は毎日 1 時間を増加すると,社会的役割の機 能低下率が 17%増加することが判明した(OR: 1.17, 95%CI: 1.08-1.27, P<0.01). 考察 本研究は,地域在住高齢者を対象として,客観的に評価 された身体活動量および座位時間と高次生活機能との間 の関連性を検討した横断研究である.その結果,MVPA の時間と高次生活機能低下との間に,社会的要因,BMI および活動量計装着時間を調整すると,有意な関連性が

Table 2. Characteristics of subjects by impairment in higher-level functional capacity and subcales

Impairment in Higher-Level Functional Capacity Impairment in IADL Impairment in Intellectual Activities Impairment in Social Role

No (n=1405) Yes (n=236) No (n=1504) Yes (n=137) No (n=1201) Yes (n=440) No (n=990) Yes (n=651)

Male, n (%) 521 (37.1) 104 (44.1)* 524 (34.8) 101 (73.7)* 478 (39.8) 293 (66.6)* 327 (33.0) 298 (45.8)* Age, years 72.9 (5.8) 75.4 (6.8)* 73.1 (5.9) 73.3 (7.4)* 73.0 (5.9) 73.8 (6.3)* 72.7 (5.7) 74.2 (6.4)* Education, years 11.3 (2.4) 10.1 (2.4)* 11.2 (2.4) 10.6 (2.8)* 11.5 (2.4) 10.2 (2.2)* 11.3 (2.4) 10.9 (2.5)* BMI, kg/m2 23.2 (3.1) 23.1 (3.4) 23.2 (3.1) 23.0 (3.1) 23.1 (3.1) 23.4 (3.3) 23.2 (3.1) 23.1 (3.2) MMSE, points 27.8 (2.0) 26.9 (2.5)* 27.8 (2.1) 27.1 (2.5)* 27.9 (1.9) 27.1 (2.5)* 27.9 (2.0) 27.4 (2.3)* Living Alone, n (%) 180 (12.8) 37 (15.7) 210 (14.0) 7 (5.11)* 139 (11.6) 78 (17.7) 133 (13.4) 84 (12.9) Multimorbidity, n (%) 642 (45.7) 135 (57.2)* 697 (46.3) 80 (58.39)* 550 (45.8) 227 (51.6)* 441 (44.6) 336 (51.6)* Psychological distress (K6 ≥5), n (%) 358 (25.5) 110 (46.6)* 415 (27.6) 53 (38.7)* 310 (25.8) 158 (35.9)* 240 (24.2) 228 (35.0)* Hobby, n (%) 1235 (87.9) 146 (61.9)* 1277 (84.9) 104 (75.9)* 1064 (88.6) 317 (72.1)* 906 (91.5) 475 (73.0)* Current drinker, n (%) 553 (39.4) 89 (37.7) 576 (38.3) 66 (48.2)* 484 (40.3) 158 (35.9) 375 (37.9) 267 (41.0) Current smoker, n (%) 101 (7.1) 20 (8.5) 101 (6.7) 20 (14.6)* 84 (7.0) 37 (8.4) 76 (7.7) 45 (6.9)

Accelerometer registered time, hours/day 13.9 (1.6) 13.6 (1.9) 13.8 (1.7) 13.7 (1.8) 13.9 (1.7) 13.8 (1.8) 13.9 (1.6) 13.7 (1.8)*

LPA, hours/day 5.6 (1.6) 5.0 (1.8)* 5.6 (1.6) 4.6 (1.7)* 5.5 (1.6) 5.6 (1.8) 5.8 (1.5) 5.2 (1.7)*

MVPA, minutes/day 46.7 (35.1) 35.5 (29.7)* 46.2 (35.0) 33.2 (27.4)* 46.1 (35.5) 42.2 (31.8)* 47.8 (33.8) 41.0 (35.4)*

ST, hours/day 7.5 (2.0) 8.0 (2.4)* 7.5 (2.0) 8.5 (2.3)* 7.5 (1.9) 7.5 (2.3) 7.4 (2.0) 7.8 (2.1)*

Note: Data are represented as mean (SD) or n (%).

* Statistical significance based on chi-square tests or t-tests, as appropriate.

BMI, body mass index; K6, Kessler 6 psychological distress scale; MMSE, Mini Mental State Examination; ST, sedentary time; MVPA, moderate-vigorous physical activity. Table 3. Association between physical activites with Higher-Level Functional Capacity and subscales

Model Odds ratio (95% confidence interval )

MVPA (minutes/day) LPA (hours/day) Sedentary time (hours/day)

IADl Model 1a 0.99* (0.98-1.00) 0.77* (0.68-0.89) 1.29* (1.14-1.45) Model 2b 0.99* (0.98-1.00) 0.79* (0.69-0.90) 1.26* (1.12-1.43) Model 3c 0.81* (0.70-0.93) 1.24* (1.08-1.43) Intellectual Activities Model 1a 1.00 (0.99-1.00) 0.99 (0.91-1.07) 1.04 (0.96-1.11) Model 2b 1.00 (0.99-1.00) 1.03 (0.94-1.12) 0.99 (0.92-1.07) Model 3c 1.04 (0.95-1.13) 0.96 (0.88-1.05) Socia Roles Model 1a 1.00 (0.99-1.00) 0.83* (0.77-0.90) 1.17* (1.11-1.25) Model 2b 1.00 (0.99-1.00) 0.85* (0.78-0.92) 1.15* (1.07-1.23) Model 3c 0.85* (0.79-0.92) 1.17* (1.08-1.27)

Higher-Level Functional Capacity

Model 1a 0.99* (0.99-1.00) 0.81* (0.73-0.90) 1.23* (1.12-1.35) Model 2b 1.00 (0.99-1.00) 0.84* (0.75-0.93) 1.18* (1.07-1.30) Model 3c 0.86* (0.76-0.96) 1.17* (1.05-1.31) Note: * Significant at p <0.05.

a Adjusted for sex, age, years of education, BMI,wearing time as covariates.

b Model 1 plus other confounding factors (living status, multimorbidity, K6, MMSE, hobby, drinking and smoking, habit) as covariates.

c Model 2 plus MVPA (adjusted for wearing time) as a covariate.

BMI, body mass index; MMSE, Mini Mental State Examination; K6, Kessler 6 psychological distress scale; MVPA, moderate-vigorous physical activity.

Table 1. Characteristics of all subjects All subjects (n=1,641) Male, n (%) 625 (38.1) Age, years 73.3 (6.0) Education, years 11.1 (2.5) BMI, kg/m2 23.2 (3.1) MMSE, points 27.7 (2.1) Living Alone, n (%) 217 (13.2) Multimorbidity, n (%) 777 (47.4) Psychological distress (K6 ≥5), n (%) 468 (28.5) Hobby, n (%) 1381 (84.2) Current drinker, n (%) 642 (39.2) Current smoker, n (%) 121 (7.4) Accelerometer registered time, hours/day 13.8 (1.7) LPA, hours/day 5.5 (1.6) MVPA, minutes/day 45 (34.6) ST, hours/day 7.5 (2.0) Note: Data are represented as mean (SD) or n (%).

BMI, body mass index; MMSE, Mini Mental State Examination; K6, Kessler 6 psychological distress scale; LPA, light physical activity; MVPA, moderate-vigorous physical activity; ST, sedentary time.

(4)

認められたが,それらに生活状況を加えて調整した後で は,有意な関連性が認められなかった.さらに下位尺度 との関連性を検討すると,IADL 低下との間にのみ有意 な負の関連が認められた.LPA および ST は高次生活機 能低下との関連性において,上記すべての調整因子に加 えMVPA を投入した後でも,有意な関連が認められた. さらに下位尺度を検討して,IADL 低下および社会的役 割低下との間で有意な関連性が認められたが,知的能動 性低下との関連性は認められなかった.

MVPA と高次生活機能および各下位尺度との関連性 について,大須賀ら10)は高齢女性を解析対象として強度 別身体活動量と高次生活機能との関連性を検討した.そ の結果,MVPA と高次生活機能との間での関連性は認め られなかったが,下位尺度の中で,IADL との関連性の みが認められた点は本研究と一致する結果が報告されて いる.高井ら11)は地域在住する高齢者32 名を対象者と して, MVPA と高次生活機能および各下位尺度との間 に有意な関連性は認められなかったことを報告している. その原因として以下の2 点が考えられる.まず対象者数 が少ない点,次に身体活動量が一日間のみ測定されたた め,正確的に日常の身体活動量を評価できていない可能 性がある.高齢者は加齢に伴って,不可逆的な全身機能 の低下が生じる.身体機能はすべての生活機能を支える 基礎である. MVPA と高次生活機能低下およびそのほ かの下位尺度との間での関連性が認められなかったのは, 身体歩行活動の量だけでなく活動範囲が関連していると 考えられる.MVPA と高次生活機能低下およびそのほか の下位尺度との間での関連性が認められなかったのは, 身体歩行活動の「量」だけでなく「活動範囲」が関連し ていると考えられる.一定量のMVPA を定期的に行っ ていても,他人と接触せず,活動範囲も狭ければ,高次 な生活機能に良好な影響を及ぼさない可能性が示唆され た. LPA と高次生活機能低下との間には有意な負の関連 性が認められた.下位尺度では,IADL 低下および社会 的役割低下との間で負の関連性は認められたが,知的能 動性低下との間には有意な関連性は認められなかった. 高井ら11)LPA と高次生活機能との間の関連性を検討 し,本研究と同様の結果を得た.大須賀ら10)は高次生活 機能の階層性と強度別身体活動量の間での関連性を検討 したが,本研究と同様な結果を得られなかった.その原 因として,以下の2 点が考えられる.一つは,彼らの対 象者は女性のみであったことから,性差が主な原因だと 考えられる.さらに,彼らは1 軸活動量計を用いたが, 3 軸活動量計は LPA の評価に関してその精度が高いと考 えられる.高齢者を対象とした場合,高強度の運動を行 うには心血管疾患への安全性を考慮しなければならない が,LPA は比較的安全に行うことが可能である.さらに, 高次生活機能の低下には,身体活動の量より,身体活動 の内容に関連すると考えられる.本研究ではLPA は, MVPA も調整した後でも,高次生活機能と有意な関連性 が認められた.従って,LPA は MVPA と独立して高次 生活機能に影響することが示された. 本研究においてST は高次生活機能低下,下位尺度で あるIADL および社会的役割との間で有意な正の関連性 が認められた.さらに,MVPA を調整した後でもその関 連性が認められた.従ってST と高次生活機能低下, IADL および社会的役割との関連は,MVPA の影響から 独立したものであった.しかし,知的能動性低下との間 での関連性は認められなかった.高井ら11)の研究では, 本研究と一致している結果が報告されている.ST と高 次生活機能との間での関連性に関する研究は少ない.今 後の研究では,さらにST を高次生活機能低下の危険因 子を特定し,特に慢性疾患,障がいを有する人には, MVPA を増やし,座位行動を減少させることで,より効 率的に高次生活機能維持また向上しうる可能性が示唆さ れた. 本研究の解析によると,LPA および ST は,幅広く高 次生活機能とMVPA から独立して関連していることが 認められた.よって,LPA の増加および ST の減少によ る健康利益の可能性が示唆された.今後は,前向き観察 研究を定論することで因果関係を検討すると共に,その メカニズムを解明することが課題として残された. 引用文献 1) 厚生労働省: 平成 27 年版高齢社会白書, 2015. 2) Fujiwara Y, et al: Gerontology, 54:373–380, 2008. 3) 厚生労働省: 平成 18 年度医療制度改革関連資料,

2009.

4) 田中喜代次: 高齢期における生活習慣病, 長寿科学 振興財団, 169-176, 2012.

5) 下妻晃二郎: 行動医学研究, 21:4-7, 2015.

6) Lawton MP et al: Gerontologist, 9:179-186, 1969. 7) 古谷野亘: 日本公衆衛生雑誌, 34:109-114, 1987. 8) 古谷野亘: 日本公衆衛生雑誌, 40:468-474, 1993. 9) Healy GN, et al: European Heart Journal,

32:590-597, 2003.

10) 大須賀洋祐: 体力科学, 61:327-334, 2012. 11) 高井逸史: 大阪物療大学紀要, 3:41-47, 2014.

Table 3. Association between physical activites with Higher-Level Functional Capacity and subscales

参照

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