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第1章 序論

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Academic year: 2021

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卒業論文

消費税の逆進性の検証

学籍番号:

043186

氏名: 山内 智草

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消費税の逆進性の検証

目次

第1章 序論 第2章 消費税について 2-1 消費税のしくみ 2-2 消費税のメリット 2-3 消費税の増税に関する議論 2-4 諸外国の消費税率について 2-5 消費税の目的税化の議論 2-6 消費税の軽減税率の導入についての議論. 2―7 高齢化社会での税制改革の方向 第3章 消費税の逆進性の問題 3-1 逆進性とは 3-2 逆進性があるかの検証 3-3 消費税が増税されたと仮定したときの検証 3-4 消費支出に対する食費の割合の検証 第4章 年齢階級別の消費税の負担について 4-1 年齢階級別の消費税の負担についての検証 第5章 検証の結果について

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043186 山内 智草 第1章 序論 消費税率のあり方については、わが国の消費税は、平成元年に3%の税率で導入された 後、平成9年4月に5%に引き上げられ、現在に至っている。この消費税率は、ヨーロッ パ等の諸外国と比較すると低い水準にあり、少子高齢化が進展する中で社会保障給付の増 大に対応するためにも消費税を増税することが議論されている。そこで第2章では消費税 の仕組みから消費税のメリットや問題点、消費税の増税に対する近年の議論に触れ、消費 税の目的税化の議論、消費税の軽減税率の導入についての議論についてふれていく。そし て消費税がこれからの高齢化社会にどのような役割をするかを明らかにする。第3章では 消費税の増税に対して問題になっていくであろう逆進性が本当にあるかどうかを検証によ って明らかにする。そして消費税を実際にどのくらい負担しているのか、また消費のうち どれくらいを食費に当てているかによって生活必需品に対して消費税をどれくらい負担し ているかを明らかにする。また第4章では年齢階級別の消費税の負担について高齢者がど れくらい消費税を負担しているかを調べ、社会保障制度の世代間の公平のためにはどのよ うな影響を与えているか、高齢者の世代はどれくらいの負担をしているか示す。そして第 5章では検証についての結果を示す。 第2章 消費税について 第2章では消費税のしくみやメリットや特徴、今議論されている問題についてふれる。 2-1 消費税のしくみ この節では消費税のしくみを示す。消費税は、特定の物品やサービスに課税する個別 間接税とは異なり、消費に広く公平に負担を求める間接税である。間接税とは税を納め る義務のある人と、実質的にそれを負担する人が異なる税をいう。この消費税は、生産及 び流通のそれぞれの段階で、商品や製品などが販売される都度その販売価格に上乗せさ れてかるが、最終的に税を負担するのは消費者となる。消費税の税率は4%である。ま た、消費税のほかに地方消費税1%相当課税されることから、これらを合わせた税率は 5%となっている。消費税の納付税額は、課税期間ごとに売上げに対する税額から、仕 入れに含まれる税額を差し引いて計算する。 2-2 消費税のメリット この節では消費税のメリットを示す。消費税は原則としてすべての財貨、サービスの国

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内における販売、提供など及び輸入取引に対して課税される課税ベースの広い間接税であ り、特定の財、サービスに偏ることなく消費一般に広く公平に負担を求めることができ、 消費選択などの経済活動に対して中立的であるという優れた特徴を有している。また消費 税のメリットとして高齢世代にも課税されることが挙げられる。社会保障給付制度のバラ ンスからも、急激な人口構造の変化の中で、制度の持続可能性や将来の負担増に対する現 役世代の不安を解消するためには、高齢世代にもある程度負担を求めたほうが現役世代と 高齢世代間の公平性確保に役立つと言われるからである。 2-3 消費税の増税に関する議論 この説では近年言われている消費税の増税に関する議論について示す。消費税はヨーロ ッパの付加価値税に値する。「付加価値税15%以上」が、EU 加盟の条件である。日本は 2007年現在で5%の消費税であるが、一方で、欧州では10%以上の国が多くあり、 スウェーデンとデンマークにいたっては25%である。多くの政治家や知識人はこの数値 を取り上げて消費税増税を正当化している。また経団連も度々消費税増税を主張している。 ただし、イギリスにおいては食料品等の日用品が非課税であること(種類別に税率が分け られている例もある)や、高い消費税を取っている国は教育費が無料であるなど福祉が充 実している。しかし、日本では本税導入以来、バブル崩壊とともに貧富の格差が拡大した ことについて、消費税導入がその原因であり、かつその導入と増税について、彼ら富裕層 に有利な「格差社会」を政策的に作り出すという企みがあったという事実を指摘する専門 家も多い。また1997年に5%に値上げした際、値上げにより消費者が消費を手控えた ことで需要が狭まり、回復軌道に乗りかかっていた景気が消費の落ち込みで一気に不景気 のどん底に陥った前例があり、個人消費が低迷から抜け出せていない時点での大幅増税は 景気回復に水を差しかねないという意見もある。生活必需品の消費は不可避であり、格差 が広がった今、奢侈品(必需品以外の物。ぜいたく品)が値上がりによって需要減となる ことは少なく、そもそも1997年の時点でこれによって景気が悪くなったのではないと もいわれる。数字上の値上げよりも、むしろ価格高騰によって消費者の間に「不要品の購 入を控える」という“雰囲気”ができることが需要を抑える(→景気悪化)効果を発揮してい るから、価格の多少の変化に消費者が動じなければ景気が悪化することはないとして、価 格の変化と市場の雰囲気とを分けて捉える見解もある。

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2-4 諸外国の消費税率について この節では諸外国の消費税率を見る。 世界各国の消費税の税率一覧 世界の国々の消費税率比較表 国名 消費税率(%) 食料品の消費税率(%) イギリス 17.5 0 フランス 19.6 5.5 イタリア 20 10 ドイツ 17 6 オランダ 19 6 アイルランド 21 0 ポルトガル 19 5 スペイン 16 7 スイス 7.6 2.4 ノルウェー 24 12 スウェーデン 25 12 デンマーク 25 25 オーストラリア 10 0 メキシコ 15 0 出所:WEB金融新聞 上の表を見ると先進国の大半では、消費税税率をひとくくりにせず、食料品などの生活必 需品とそうでない商品とでは、税率を分けて設定している。イギリスやアイルランド、メ キシコ、オーストラリア等の国々では、食料品の消費税はゼロ(無税)に設定している。 贅沢品と生活必需品の税率をきっちり分けている国のほうが、世界的にははるかに多いの である。

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2-5 消費税の目的税化の議論 この節では近年議論されている消費税の目的税化について示す。最近では、「消費税の福 祉目的税化(年金保険料による賦課方式の廃止と消費税の年金財源化)」などの議論も活発 になってきている。消費税が高額所得者に優しく低額所得者に厳しいといわれているが、 消費税が福祉目的税化(基礎年金の財源化)されれば非正規雇用の低額所得層や年金未納 期間が長くなりがちな貧困層は「年金保険料支払(老後資金の一部)の自己責任」が実質 免除されることになる。その為、年金財源化された消費税は、必ずしも弱者にだけ大きな 負担を強いる税金とは言えなくなり、消費税は「逆進税」として富裕層に有利な税金であ ると同時に、「部分的な老後保障(生存権・社会権の実質的な保障)」として低額所得層に も恩恵のある税金となるのではないだろうか、という議論がある。 2-6 消費税の食料品等への軽減税率の導入についての議論 この節では消費税の食料品等への軽減税率の導入についての議論を示す。今後、消費税 率を引き上げるにつれて、低所得者層の負担が相対的に重くなっていく可能性がある。現 在、その逆進性の問題に有効な手段と考えられているのが軽減税率の導入がある。軽減税 率とは、消費税率が二桁に達している諸外国などで導入されており逆進性を軽減すべく食 料品などの日常品についての消費税率を軽減するという制度である。しかし複数税率を採 用した場合は、消費税制度は現行と大きく変わることとなる。軽減税率の採用は、現行の 消費税制度に大きな影響を与え、制度全体を複雑化させることとなる。そのため、事業者 及び課税庁双方の事務負担が増大することとなる。負担軽減という観点からの諸措置を設 けることも必要である。同時に執行体制の大幅な見直しが必要になるといわれている。軽 減税率の採用を検討する場合には、税率の問題だけではなく消費税制度全体を考慮した議 論が必要であるといわれている。 2―7 高齢化社会での税制改革の方向 この節ではこれからの高齢化社会にむけて必要になってくるであろう税制度の改革につ いてみていく。高齢化社会は、労働者の比率が低下し、年金を含む資産保有者の比率が高 まる社会となる。このためこれまでのような賃金に大きく依存した所得税制や社会保険制 度の歪みがいっそう大きくなる。日本では労働分配率(付加価値に対しての人件費の割合 を示す指標であり、会社が新たに生み出した価値のうちどれだけ人件費に分配されたかを 示す指標)は長期的に上昇傾向にあったが、高齢化社会では、この傾向が逆転し、財産所 得(金銭・有価証券・土地・建物などの資産を所有・運用することから生じる所得)の比 率が再び高まる恐れもある。こうした状況の中で、高齢化社会にふさわしい税制改革が求

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められている。消費税の活用については、一般消費税は高齢者ほど累進的に多くの税を負 担するという「垂直的な公平」には欠けるものの、所得源泉にかかわりなく、同一所得者 には同一課税という「水平的な公平」には優れている。またキャピタルゲイン(債券や株 式など資産の価格の上昇による利益)等の個別の所得税の把握もれをカバーすることがで きる。この意味では消費税と逆の特質をもつ累進的な個人所得と一定の比率で組み合わせ ることが望ましいといわれている。日本では消費税等の間接税と比べた直接税の比率、(い わゆる直接比率)が国際的にみれば著しく高い点が問題視されている。しかも高齢化社会 で傾向的に高まる社会保険料は、強制的に徴収される点で、事実上、個人所得税と類似し た負担と考えれば、その傾向はいっそう強まることになる。このように、税・社会披見負 担を合わせて考慮すれば、それだけ個人所得への課税ベースを広げるための消費税の役割 は大きなものとなる、といわれている。消費税の公的年金等、福祉の財源として考えれば、 高所得者ほど比例的に多くの消費税を負担するという「応能負担」の要素も含まれており、 しかも家族の数にほぼ比例した負担となることから、専業主婦が共働きの就労形態の差に 中立てきな個人単位の課税に望ましい性質をしている。また、この場合、豊かな高齢者の 負担で貧しい高齢者の福祉給付の財源を確保できるという面もあるといわれている。もっ とも、消費税率の引き上げは物価スライド(物価に応じて年金支給額を調整する制度)を 通じて年金給付の増額となることから、この効果は実質的にきわめて限定されたものとな らざるをえないといわれている。

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第3章 消費税の逆進性の問題 第2章まででは消費税にはどのような問題やメリットがあるか、これからの高齢化社会 に向けてどのような税制改革が議論されているかについてふれた。第3章では税制改革で 消費税を増税することによって問題になってくるであろう逆進性が本当にあるかどうかを 検証したい。また食料品などへの軽減税率化の導入が議論されているが、わたしたちは支 出の中でどれくらいを食料品に当てているかを検証して実際に軽減税率の導入が必要なの か検証したい。 3-1 逆進性とは 経済格差を緩和する「所得の再分配」の役割も持つ税制には、高額所得者ほど高い税率 を課す「累進税」と所得の大小を問わず同じ税率を課す「比例税」があるが、全ての商品 に同じ税率をかける消費税は一見比例税に見えて、実質的には高額所得者ほど負担(平均 税率)が小さくなる「逆進税」である。もちろん、所得と資産が大きい富裕層ほど、高額 な商品やサービスを消費するので消費税の相対的な支払額は大きくなるが、「所得に占める 消費税の割合」では富裕層よりも低額所得者層のほうが大きくなる、ということである。 これが消費税には逆進性があるといわれる所以である。

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3-2 逆進性があるかの検証 まず本当に消費税には逆進性があるのかを調べたい。『総務省の家計調査(平成 18 年度 版)』より総務省の家計調査総世帯を年間収入の低い順に並べ、それを調整集計世帯数(抽 出率を調整した世帯数)で五等分して五つのグループを作る。各グループを低いほうから 順次第Ⅰ、第Ⅱ、第Ⅲ、第Ⅳ、第Ⅴ五分位階級という。 第Ⅰ階級・・・実収入が{~351万円}までの勤労者世帯の階級 第Ⅱ階級・・・実収入が{351~494万円}までの勤労者世帯の階級 第Ⅲ階級・・・実収入が{494~653万円}までの勤労者世帯の階級 第Ⅳ階級・・・実収入が{653~865万円}までの勤労者世帯の階級 第Ⅴ階級・・・実収入が{865万円~}までの勤労者世帯の階級 とする。階級別の実収入と可処分所得(個人所得から非消費支出(税金や社会保障費)な どを差し引いた所得)、消費支出、食費の月額平均数値を表1に示しその値を図表1にグラ フで表す。 表1 可処分所得 (円) 実収入(円) 消費支出 (円) 食費(円) 第Ⅰ階級 204143 230503 163200 39957 第Ⅱ階級 295646 341853 221042 52548 第Ⅲ階級 370850 432532 269632 61322 第Ⅳ階級 464398 552893 327561 72138 第Ⅴ階級 665649 823061 443850 86544 出所:総務省・家計調査(平成18年度) 図表1 0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 可処分所得 実収入 消費支出 食費

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図1のグラフからわかるように全ての項目で比例的に第Ⅰ階級から第Ⅴ階級まで値が上 がっている。所得が多いのに比例して消費支出も増加することが明らかとなった。表1に 実際払っている消費税という項目を作って{消費支出×5%}で値を出して表2を作った。 第Ⅰ階級から第Ⅴ階級まで実際払っている消費税の値を図表2のグラフで表した。 表2 月平均 可処分所 得(円) 実収入 (円) 消費支出 (円) 食費(円) 実際払っている消費税 (円) 第Ⅰ階級 204143 230503 163200 39957 8160 第Ⅱ階級 295646 341853 221042 52548 11052.1 第Ⅲ階級 370850 432532 269632 61322 13481.6 第Ⅳ階級 464398 552893 327561 72138 16378.05 第Ⅴ階級 665649 823061 443850 86544 22192.5 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表2 実際払っている消費税(円) 0 5000 10000 15000 20000 25000 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 実際払っている消費 税(円) 図表2のグラフからわかるように所得の多い世帯ほど多く消費税を払っていることが明ら かとなった。次に可処分所得に対して実際払っている消費税の各階級の割合を出して表3 とする。そして表3を図表3にグラフであらわす。

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表3 月平均 可処分所 得(円) 実収入 (円) 消費支出 (円) 食費(円) 実際払っ ている消 費税(円) 可処分所得に 対する実際に 払っている消 費税の割合 第Ⅰ階級 204143 230503 163200 39957 8160 0.039972 第Ⅱ階級 295646 341853 221042 52548 11052.1 0.037383 第Ⅲ階級 370850 432532 269632 61322 13481.6 0.036353 第Ⅳ階級 464398 552893 327561 72138 16378.05 0.035267 第Ⅴ階級 665649 823061 443850 86544 22192.5 0.03334 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表3 可処分所得に対する実際に払っている消費税の割合 0.03 0.032 0.034 0.036 0.038 0.04 0.042 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 可処分所得に対す る実際に払ってい る消費税の割合 図表3のグラフからわかるように可処分所得に対して実際払っている消費税の割合は図 表2のグラフの実際払っている消費税の値を表していたグラフとは逆に第Ⅰ階級の値が大 きく反比例的に下がっていることが明らかとなった。よって所得が高い階級ほど実際の消 費税への負担は低くなっていることがわかった。よって消費税には逆進性があるというこ とが示された。

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3-2 消費税が増税されたと仮定したときの検証 この節では仮に消費税20%になったときの消費者に与える影響について検証する。消 費税が20%になったときの実際に払う消費税の値を表4に出してみる。そしてその値を 図表4にグラフで表す。 表4 各階級の 値 可処分所得 (円) 消費税が 20% になったときに 実際に払って いる消費税 (円) 消費税が 20%に なったときの可処 分所得に対する 実際に払ってい る消費税の割合 可処分所得に対す る実際に食費に払 っている消費税の 値の割合 第Ⅰ階級 204143 32640 0.159888 0.009787 第Ⅱ階級 295646 44208.4 0.149532 0.008887 第Ⅲ階級 370850 53926.4 0.145413 0.008268 第Ⅳ階級 464398 65512.2 0.141069 0.007767 第Ⅴ階級 665649 88770 0.133359 0.006501 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表4 消費税が20%になったときに実際に払っている消費税(円) 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 90000 100000 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 消費税が20%になっ たときに実際に払って いる消費税(円) このときの可処分所得に対する各階級の実際に払っている消費税の割合を表5に示しその 値を図表5にグラフで表す。

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表5 各階級の値 可処分所得(円) 消費税が 20%にな ったときに実際に 払っている消費税 (円) 消費税が 20%になった ときの可処分所得に対 する実際に払っている 消費税の割合 第Ⅰ階級 204143 32640 0.159888 第Ⅱ階級 295646 44208.4 0.149532 第Ⅲ階級 370850 53926.4 0.145413 第Ⅳ階級 464398 65512.2 0.141069 第Ⅴ階級 665649 88770 0.133359 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表5 消費税が20%になったときの可処分所得に対する実際に 払っている消費税の割合 0.12 0.1250.13 0.1350.14 0.1450.15 0.1550.16 0.165 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 消費税が20%に なったときの可処 分所得に対する実 際に払っている消 費税の割合 やはり5%のときと同様第Ⅰ階級の値が大きく反比例的に下がっていることがわかる。 可処分所得に対する負担は所得が少ない階級のほうが大きくなることがやはり示された。 次に消費税が5%のときと20%のときの可処分所得に対する消費税の負担を比べて図表 6にあらわす。

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図表6 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 可処分所得に対す る実際に払ってい る消費税の割合 消費税が20%に なったときの可処 分所得に対する実 際に払っている消 費税の割合 図表6をみると傾きの大きさが5%のときより20%ときのほうが大きくなっているこ とがわかるので逆進性は消費税の税率が上がると大きくなってしまうことが明らかにされ た。 3-4 消費支出に対する食費の割合の検証 次に消費支出に対する食費の割合を見てみる。この検証をすることによって消費不可避 である食費にどれくらい消費税を負担しているかが検証される。『総務省の家計調査(平成 18年度版)』から第Ⅰ階級から第Ⅴ階級まで月に平均いくらを消費に当てているかを調 べ表6に示す。その値を図表7に表す。 表6 可処分所得(円) 実収入 (円) 消費支出 (円) 食費(円) 第Ⅰ階級 204143 230503 163200 39957 第Ⅱ階級 295646 341853 221042 52548 第Ⅲ階級 370850 432532 269632 61322 第Ⅳ階級 464398 552893 327561 72138 第Ⅴ階級 665649 823061 443850 86544 出典:総務省・家計調査(平成18年度)

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図表7 消費支出に対する食費の割合 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 消費支出に対する 食費の割合 図表7からわかるように第Ⅴ級よりも第Ⅰ階級にかけて消費支出に対する食費の割合が 大きくなっていることがわかる。やはり所得が低い階級のほうが食費にかけなければいけ ないお金が多いということがわかる。消費支出に対する食費の割合をエンゲル係数という。 エンゲル係数は近年ではどのような変化をみせているのだろうか、通信及び教育娯楽費と ともに家計消費の移り変わりをみてみる。 出典:総務省統計局ホームページ 一般的に,エンゲル係数が低いほど生活水準が高いとされている。消費支出の構成の変 化をみると,エンゲル係数は,昭和40年には38.1%だったが,生活水準の向上に伴

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い低下が続き,54年には30%を下回り,平成18年には23.1%となった。また, 消費支出に占める通信及び教養娯楽の割合は,昭和40年は7.7%でしたが,平成18 年には14.1%となり,ほぼ倍増となっている。図2-1を見ると、生活水準の向上に 伴い消費支出に占める食料費の割合は下がって、その代わりに通信・教育娯楽に使うお金 は増えたことがわかるので昭和40年頃に比べて生活水準は上がっていることがわかる。 次に第Ⅰ階級から第Ⅴ階級まで食費に対して実際に払っている消費税の値出し表7に示す。 その値を図表8に表す。 表7 月平均 可処分所得 (円) 消費支出 (円) 食費(円) 消費支出に 対する食費 の割合 食費に対して 実際に払って いる消費税の 値(円) 第Ⅰ階級 204143 163200 39957 0.244835 1997.85 第Ⅱ階級 295646 221042 52548 0.237729 2627.4 第Ⅲ階級 370850 269632 61322 0.227428 3066.1 第Ⅳ階級 464398 327561 72138 0.220228 3606.9 第Ⅴ階級 665649 443850 86544 0.194985 4327.2 総務省・家計調査(平成18年度)参照 図表8 食費に対して実際に払っている消費税の値(円) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 食費に対して実際に 払っている消費税の 値(円)

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次に可処分所得に対する実際に食費に払っている消費税の値の割合出して表8に示す。 その値を図表9に表す。 表8 月平均 可処分所 得(円) 消費支出 (円) 食費(円) 消費支出 に対する 食費の割 合 食費に対 して実際 に払って いる消費 税の値 (円) 可処分所得に対 する実際に食費 に払っている消 費税の値の割合 第Ⅰ階級 204143 163200 39957 0.244835 1997.85 0.009787 第Ⅱ階級 295646 221042 52548 0.237729 2627.4 0.008887 第Ⅲ階級 370850 269632 61322 0.227428 3066.1 0.008268 第Ⅳ階級 464398 327561 72138 0.220228 3606.9 0.007767 第Ⅴ階級 665649 443850 86544 0.194985 4327.2 0.006501 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表9 可処分所得に対する実際に食費に払っている消費税の値の 割合 0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012 第Ⅰ 階級 第Ⅱ 階級 第Ⅲ 階級 第Ⅳ 階級 第Ⅴ 階級 可処分所得に対す る実際に食費に 払っている消費税 の値の割合 図表9を見るとわかるように可処分所得に対する実際に食費に払っている消費税の値の割 合は第五階級よりも第Ⅰ階級のほうが大きくなっていることがわかる。これは消費支出に 対する食費の割合に類似する。所得が少ない階級のほうが食費にあてなければならない消 費税の値が大きいことが検証された。よって消費税を増税するにあたって食費を軽減税率 にする必要があるとみられる。

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第4章 年齢階級別の消費税の負担について 4-1 年齢階級別の消費税の負担についての検証 この章では『総務省の家計調査(平成 18 年度版)』の世帯主の年齢階級別家計収支(二 人以上の世帯のうち勤労者世帯)について世帯主の年齢が30歳未満、30~39歳、4 0~49歳、50~59歳、60歳以上の5階級に分ける。それぞれの可処分所得を比べ どの年齢の世帯の可処分所得が多いのかみてみる。その値を表9に示し、図表10に表す。 そして消費税にあてている金額を出し、第2章で述べた社会保障給付制度のバランスから も、急激な人口構造の変化の中で、制度の持続可能性や将来の負担増に対する現役世代の 不安を解消するためには、高齢世代にもある程度負担を求めたほうがよいという議論との 関係性について考える。 表9 月平均 可処分所得(円) 30歳未満 322433 30~39歳 407209 40~49歳 487300 50~59歳 487337 60歳以上 332215 総務省・家計調査(平成18年度)参照 図表10 月平均の可処分所得(円) 0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 30歳 未満 30~ 39歳 40~ 49歳 50~ 59歳 60歳 以上 月平均の可処分所得 (円) 図表10をみると可処分所得は30歳未満から50~59歳にかけて上がっていき60 歳以上は30歳未満と同じくらいの可処分所得まで落ちるということになっている。次に

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各階級の消費支出をみてみる。可処分所得と合わせて値を出して表10に示し、図表11 にグラフで表す。 表10 月平均 可処分所得(円) 消費支出(円) 30歳未満 322433 249165 30~39歳 407209 274365 40~49歳 487300 342162 50~59歳 487337 352050 60歳以上 332215 304376 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表11 0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 30歳 未満 30~ 39歳 40~ 49歳 50~ 59歳 60歳 以上 可処分所得(円) 消費支出(円) 図表11を見てみると可処分所得の変化に比べて消費支出は違った変化を示している。 消費支出は世帯主の年齢が60歳以上の階級は50~59歳の階級に比べて下がってはい るものの可処分所得ほど消費支出は減っていないことがわかる。これは今までの貯蓄を消 費に当てているからだろう。次に各階級が実際に払っている消費税の値を求めて表11に 示し図表12にグラフで表す。

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表11 月平均 可処分所得(円) 消費支出(円) 実際に払っている消 費税(円) 30歳未満 322433 249165 12458.25 30~39歳 407209 274365 13718.25 40~49歳 487300 342162 17108.1 50~59歳 487337 352050 17602.5 60歳以上 332215 304376 15218.8 出典:総務省・家計調査(平成18年度) 図表12 実際に払っている消費税(円) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 30歳 未満 30~ 39歳 40~ 49歳 50~ 59歳 60歳 以上 実際に払っている 消費税(円) 図表12をみると実際に払っている消費税の値は消費支出と同じ動きをしていることが わかる。可処分所得と比べてみると30歳以下の若い世代はあまり所得がなくて消費税も 比較的負担してないが、60歳以上の世代は所得が30歳以下の世代並みにも少ないにも かかわらず消費税は比較的負担が大きいとゆうことがわかる。この結果をみると若年世代 よりも高齢世代のほうが消費税の負担が比較的大きいことが検証されたので社会保障制度 の世代間の公平のためにはプラスの結果であるといえる。

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第5章 検証の結果について 消費税については第1章では消費税の問題点を第2章では消費税の仕組みや増税を含 め、軽減税率化などの議論や高齢化社会に対しての税制改革の議論のことにふれた。3 章の検証から、消費税には逆進性があることが明らかにされた。またそれは消費税率が 高くなるにつれて顕著になるということが示された。これから消費税率の引き上げが問 題になるにつれて重要な課題となるだろう。また消費支出のうちどれぐらい食費にあて ているかをみることによって最低限必要な支出に対しての消費税の負担を考えなければ ならないことが示された。所得が低い家計ほど食費に対する支出が多いことが3章の検 証でわかったのでこれもまた消費税の引き上げをする中で軽減税率化を含めた問題とな るだろう。また高齢者層については4章の検証で消費税への負担が比較的大きいことが わかり、社会制度の世代間の公平のためにはプラスとなる結果になるといえるだろう。 しかし所得が低い高齢者にとっては消費税の引き上げに対しては負担が大きくなるとい う問題がある。 参考文献 ・ 八代尚宏(2000)『少子・高齢化の経済学』東洋経済新報社 ・ 『総務省家計調査(平成18年度)』 参考資料 ・ WEB金融新聞

参照

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